(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る環境予測装置1を含む走行支援装置10について、図1〜図6を用いて説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明に係る環境予測装置1を含む走行支援装置10の機能構成を示したブロック図である。
走行支援装置10は、図1に示すように、環境予測装置1と走行支援部7とを備えている。また、環境予測装置1は、車両状態検出部(自車両位置取得手段)2、環境状況取得部(障害物情報取得手段)3、道路情報取得部(道路情報取得手段)4及び車両制御ECU(Electronic Control Unit)6を含んで構成されている。
車両状態検出部2は、車両の位置情報、車速情報などを検出する車両状態検出手段として機能するものであり、例えば、GPS(Global Positioning System)や車輪速センサ等が用いられる。GPSは、車両の位置情報を取得する。車輪速センサは、例えば、車両のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度を取得する。車両状態検出部2は、車両制御ECU6に接続されており、取得した位置情報や車輪速度情報等の車両状態情報を車両制御ECU6へ出力する。
環境状況取得部3は、自車両81の周囲の環境状況情報を取得する環境状況取得手段として機能するものであり、例えば、車車間通信装置、路車間通信装置、ミリ波やレーザを用いたレーダセンサ等が用いられる。車車間通信装置、路車間通信装置を用いる場合、他車両82の位置情報、車速情報を取得することができる。また、ミリ波レーダセンサ等を用いることにより、他車両82及び進路上の障害物の位置情報、相対速度情報を取得することができる。環境状況取得部3は、車両制御ECU6に接続されており、取得した自車両81の周囲の環境状況情報を車両制御ECU6へ出力する。
道路情報取得部4は、車線、交差点といった道路構造の位置情報、道路構造別の規制、走行優先順位、また、世間一般に共有されているマナー等の交通ルールといった道路情報(道路に関する情報)を取得する手段である。なお、道路情報取得部4は、自車両に搭載された記憶部(図示せず)に格納された道路データベースから道路情報を取得してもよいし、通信装置を介して外部のサーバ等に格納されたデータベースから道路情報を取得してもよい。後述する予測期間設定部62は、これらの道路情報を取得することにより、例えば、「自車両の位置は、交通ルールから逸脱している」といった情報を得ることができる。
ここで、上記道路データベースの一例について、図2を用いて説明する。図2は、道路データベースの内容を模式的に可視化した例である。道路データベースは、後述する予測期間設定部62からの要求に対して、指定された位置及び時間に対応した交通ルールを出力する。地図データベースの内容は、同一の交通ルールが適用される領域情報(矩形で表現する場合は、各頂点の位置(X,Y))と、当該交通ルールで構成されている。交通ルールには、当該領域の進行方向、制限速度、停止の可否、横断歩道の有無、停止線の有無等が含まれている。図2に示す道路で説明すると、道路Aは、{A1,A2,A3}という3つの領域で定義されている。そして、例えば、領域A1の制限速度は、50km/h、進行方向は図中の白矢印の方向、停止は不可、横断歩道無し、停止線無し、と言ったように交通ルールが定義されている。さらに、地図データベースは、領域A1,A2,A3間の遷移の可否も定義されている。例えば、図2で示すように、領域A1から領域A2への遷移は不可、領域A2からA1、領域A1からA3への遷移は可であると定義されている。
図1に戻り、車両制御ECU6は、走行支援装置10の装置全体の制御を行うものであって、例えば、図示しないCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。車両制御ECU6は、車両状態検出部2、環境状況取得部3、道路情報取得部4及び走行支援部7と接続されており、車両状態検出部2、環境状況取得部3、道路情報取得部4から各種情報の入力が行われ、走行支援部7に各種情報を出力する。また、車両制御ECU6は、自車両位置予測部(自車両位置予測手段)61と、予測期間設定部(予測期間設定手段)62と、進路生成部63とを有している。
自車両位置予測部61は、所定時間後の自車両81の位置を予測する。好ましくは、図4に示すように、予測進路a1,a2を生成する。自車両位置予測部61は、車両状態検出部2から入力される自車両81の位置、速度、向き等の状態に関する情報等から自車両81の未来の位置、速度、向き等の状態を予測する。自車両位置予測部61は、予測した自車両81の位置、好ましくは、図4に示すような予測進路a1,a2を予測期間設定部62に出力する。なお、ここでいう「進路」とは、時間、速度等の時間的要素を含む概念をいい、これら時間的要素の概念を含まない「経路」とは異なる。
予測期間設定部62は、道路情報取得部4によって取得された道路に関する情報と、自車両位置予測部61によって取得された予測位置とに基づいて予測期間Tを設定する。具体的には、例えば、図4に示すような予測進路a2の場合、領域A2(交通ルールから逸脱した状態)を完全に通過するまでの予測期間Tを算出する。すなわち、道路情報取得部4において、「本線(領域A2)を走行する他車両82は右折する自車両81よりも走行するにあたっての優先順位が高い」という情報が取得された場合、予測期間設定部62は、自車両81の予測位置が、領域A2を完全に通過するまで期間を延ばし、領域A2上で予測を打ち切らないように予測期間Tを算出する。このとき、予測期間設定部62は、車両状態検出部2から検出した自車両速度vに基づいて領域A2の通過時間を計算し、予測期間Tを算出する。予測期間設定部62は、このように算出された予測期間Tを進路生成部63が進路を生成する際の期間として設定する。
進路生成部63は、予測期間設定部62によって設定された予測期間Tに基づいて、物体ごとに時間および空間から構成される時空間上の進路を生成する。
なお、車両制御ECU6に設けられる自車両位置予測部61、予測期間設定部62及び進路生成部63は、コンピュータにプログラムを導入することで構成してもよいし、個々のハードウェアによって構成してもよい。
走行支援部7は、図1に示すように、自車両81の走行支援を行う手段である。走行支援部7は、車両制御ECU6に接続されており、車両制御ECU6の制御信号を受けて自車両81の運転走行、例えば、走行駆動、制動動作及び操舵操作を行う。走行支援部7としては、例えば、エンジンのスロットルバルブの開度を調整するアクチュエータを制御する走行駆動用ECU、ブレーキ油圧を調整するブレーキアクチュエータを制御する制動用ECU、操舵トルクを付与するステアリングアクチュエータを制御する操舵用ECU等が該当する。
次に、走行支援装置10の動作について、図3を用いて説明する。図3は、走行支援装置10が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
まず、車両状態検出部2は、自車両81の状態(位置、速度等)を取得する(S01)。そして、車両状態検出部2は、取得した情報を車両制御ECU6に出力する。
次に、環境状況取得部3は、自車両81周辺にある他物体の位置および状態を取得し(S02)、取得した情報を車両制御ECU6に出力する。以後、他物体の位置は、他物体の中心の値であるとし、他物体の状態は、位置、速度等によって特定されるものとする。
次に、自車両位置予測部61は、車両状態検出部2から入力される自車両81の位置、速度、向き等の状態に関する情報等から自車両81の未来の位置、速度、向き等の状態を予測する。例えば、図4に示すように右折可能な道路Aを走行する場合について説明すると、自車両位置予測部61は、道路Aを直進する予測進路a1と道路Aを右折する予測進路a2とを生成する(S03)。
次に、予測期間設定部62は、道路情報取得部4から交通ルール等を含む道路情報を取得する(S04)。以下、すなわち、予測期間設定部62が、道路情報取得部4から「本線(領域A2)を走行する他車両82は右折する自車両81よりも走行するにあたっての優先順位が高い」という情報を取得したとして説明を行う。
予測期間設定部62は、ステップS04において取得された道路情報と、自車両位置予測部61によって取得された予測進路a1,a2とに基づいて予測期間Tを算出する(S05)。具体的には、予測期間設定部62は、図4に示すような予測進路a1,a2のそれぞれについて予測期間T1、T2を算出する。ここで、予測期間設定部62は、交通ルールから逸脱した状態のときに予測を打ち切らないように予測期間T1、T2を算出する。予測進路a2を例に説明すると、上述したように、予測期間設定部62は、自車両81が領域A2を完全に通過した位置に移動するまで予測できるように予測期間T2を算出する。このとき、予測期間設定部62は、車両状態検出部2から検出した自車両速度vに基づいて横断時間を計算し、この横断時間に基づいて予測期間T2を算出する。一方、予測進路a1については、自車両81が交通ルールを逸脱することはない。この場合には、予め設定された予測期間T0(例えば、5秒)を予測期間T1とする。
次に、予測期間設定部62は、複数の予測進路についての予測期間T1、T2を算出したので、統計的に処理して予測期間Tを算出する。統計処理には、最大値、最小値、平均値、中央値等を採用することができるが、ここでは安全を考慮して最大値を取得することが好ましい。例えば、予測進路a2の予測期間T2が予測進路a1の予測期間T1よりも長い場合には、予測進路a2の予測期間T2を進路生成部63が進路を生成する際の時間(予測期間T)として設定する(S06)。
ところで、以下の工程で実行する進路を生成する演算を行う際、自車両81が予め設定された場所(目的地もしくは目的地に類する中間的な場所)に到達したか否かではなく、所定の期間で予測演算を打ち切る構成とすることは技術思想上重要である。一般に道路上では、事前に安全が保障されている場所はない。例えば、図5に示すように、3車線の道路Rdを走行する自車両O1が予め設定された場所Q1、Q2、Q3へ順次到達するとして予測を行うとき、その設定された場所に向けて自車両O1が同じ車線をほぼ直進していく場合を考慮に入れると、他車両O3が進路B3を取ることによって危険を回避するために進路B2をとって、他車両O2が自車両O1の走行している車線に進入してくるおそれがある。このように、従来の進路予測演算では、自車両O1が予め設定された場所へ走行するのが安全であるということまでは事前に保証されない。
本実施形態においては、自車両O1が到達すべき目的地等の場所を予め定めることなく、その都度最適な進路を判断しているため、図5と同じ状況下で、例えば、図6に示すような進路B1を自車両O1の進路として選択することができ、自車両O1が走行する際の危険を適確に回避して、安全性を確保することが可能となる。
次に、進路生成部63は、ステップS06において設定された予測期間Tに基づいて、物体ごとに時間および空間から構成される時空間上の進路を生成する(S07)。なお、上記進路を生成するにあたっては、環境状況取得部3で取得した物体の総数(自車両を含む)をKとし、一つの物体Ok(1≦k≦K、kは自然数)に対して進路を生成する演算をNk回行うものとする(この意味で、kおよびNkはともに自然数)。また、進路を生成する時間(予測期間)をT(>0)とする。なお、上記進路は、公知の方法によって算出することが可能であり、例えば、特開2007−230454公報に記載される方法によって算出することができる。なお、進路の生成方法は、これに限るものではない。
次に、車両制御ECU6は、例えば、各物体がとりうる進路の確率と自車両81と他車両82との間の干渉度とに基づいて、最適進路の選択を行う(S08)。なお、ステップS08における具体的な最適進路は、例えば、特開2007−230454公報に記載されている内容に基づいて選択することができる。なお、進路の最適進路決定方法は、これに限るものではない。
次に、走行支援部7は、ステップS08において選択された最適進路に従って、自車両81の運転走行、例えば、走行駆動、制動動作及び操舵操作を行う(S09)。
以上に説明したように、本実施形態の環境予測装置1によれば、道路情報取得部4によって取得された道路情報と自車両位置予測部61によって取得された自車両81の位置とに基づいて予測期間Tが設定される。上記実施形態では、予測期間設定部62は、自車両81が交通ルールを逸脱している間に位置予測を打ち切らないような予測期間Tを算出している。これにより、自車両81が他車両82の進路を干渉している状態で予測が打ち切られることを防止することができ、適正な走行支援をするために十分な自車両周辺の物体挙動の情報を取得することが可能となる。
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態の環境予測装置1によれば、予測期間設定部62は、自車両位置予測部61から得られる自車両81の位置を取得するにあたって、自車両81の進行方向における障害物の有無を考慮しない例を挙げて説明した。しかし、本実施形態はこれに限るものではなく、例えば、予測期間設定部62は、環境状況取得部3によって検出される自車両81周辺にある障害物の位置および状態に基づいて、予測期間T3の設定を行ってもよい。
以下、上記障害物の情報を用いた場合の予測期間T3の設定方法について、図7を用いて具体的に説明する。図7は、対向1車線の道路Aにおいて、自車両81の進行方向に車両(障害物)83が駐車している場合を示している。この場合、環境状況取得部3は、駐車車両83の位置と大きさを取得する。この際、駐車車両83の位置は、厳密な座標情報である必要はなく、例えば、どの領域(A1、A2)にあるといった情報でもよい。そして、予測期間設定部62は、駐車車両83が進行方向にあることを考慮して、例えば、障害物無しの予測期間Tに所定の回避時間(単純に回避、速度を落としながら回避するための時間等)を加えて予測期間T3を算出する。
このように、障害物を考慮して予測期間T3を算出することによって、動的な交通状況に対応することが可能となり、交通ルールから逸脱した状態のときに予測を打ち切らないような予測期間T3を算出することができる。
また、上記実施形態の環境予測装置1によれば、予測期間設定部62は、車両状態検出部2から検出した自車両速度vに基づいて予測期間Tを設定する例を挙げて説明したが、右折時において一旦停止後の自車両81の平均的な加速度に基づいて予測期間Tを設定してもよい。
(第2実施形態)
環境予測装置101は、図8に示すように、図1の構成に加え、行動計画取得部(行動計画取得手段)5を備えていてもよい。以下、図8〜図13を用いて環境予測装置101について具体的に説明する。図8は、以下に説明する環境予測装置101を含む走行支援装置110の機能構成を示したブロック図である。
行動計画取得部5は、自車両81の行動計画を取得する手段であり、例えば、ナビゲーションシステム等がこれに該当する。そして、自車両位置予測部161は、ナビゲーションシステムに入力された行先経路に基づいて車両81の位置を予測する。具体的には、自車両位置予測部161は、行先経路に基づいて、図9(a)、(b)に示すような目標ウェイポイントwを生成する。ここで、行動計画取得部5より取得される行先経路を元に自車両位置予測部161が生成する目標ウェイポイントwについて説明する。
ウェイポイントは、経路に含まれる概念であって、特に経路上の位置を特定したものをいう。すなわち、目標ウェイポイントwは、{xn、yn}の系列のデータであり、例えば、図9(a)、(b)に示すようなデータである。単純な、目標ウェイポイントwは、図9(a)に示すように{x、y}だけの系列データとなっており、ポイント間は線形で補間する。また、図9(b)に示すような、{xn、yn、θn、cn}(x、y、向き、向きの変化率)として、ポイント間を補間してもよい。図9(b)に示すように補間することで、特にカーブにおいてポイントの数を減らすことができ、データ容量の削減が可能となる。また、図9(a)から何らかの処理を施して図9(b)のデータに変換し、その後に補間してもよい。また、具体的に生成された目標ウェイポイントwとしては、道路Aを右折する目標ウェイポイントwを示す図10(a)や、駐車車両(障害物)83を回避するような目標ウェイポイントwを示す図10(b)がある。なお、図10(b)に示すような目標ウェイポイントwは、行動計画取得部5より取得される行先経路に対して、駐車車両83に対する所定のマージン83aに応じて変形させることで生成させる。自車両位置予測部161が前述のような目標ウェイポイントwを生成する際には、好ましくは、駐車車両83が静止し続けるものと仮定して行う。
なお、目標ウェイポイントwは、自車両81のある特定の1点を必ず通過するように生成することが好ましい。特定の1点とは、運動中心(例えば、後輪駆動の車両であれば、後輪軸の中心)や自車両81の中心とすればなおよい。また目標ウェイポイントwの始点は、自車両81の現在位置とすることが好ましい。このようにすることで、必ず自車両81が目標ウェイポイントwを移動するものとして計算することが可能となる。ただし、自車両81の位置と目標ウェイポイントwとのずれが、例えば、0.1m以下程度であれば、自車両81から目標ウェイポイントw上に下ろした垂線の足の位置を目標ウェイポイントw上における自車両81位置としてもよい。こうすることで、目標ウェイポイントw上から自車両81の位置がずれた場合であっても、所定のずれ量以下であれば、目標ウェイポイントwの再計算が必要でなくなる。また、目標ウェイポイントwの終点は、自車両81の目的地とすることが好ましい。目的地が遠ければ、中継地点や中間目的地としてもよい。
このように、自車両位置予測部161は、上記実施形態で説明した網羅的に生成される予測進路a1,a2とは異なり、選択的に生成された目標ウェイポイントwに基づいて、自車両81の位置を予測する。
以下、目標ウェイポイントwに基づいて自車両81の位置を予測する自車両位置予測部161を有する環境予測装置1の動作について、図11のフローチャートを用いて説明する。
まず、車両状態検出部2は、自車両81の状態(位置、速度等)を取得する(S11)。そして、車両状態検出部2は、取得した情報を車両制御ECU6に出力する。
次に、環境状況取得部3は、自車両81の進行方向に位置する駐車車両(障害物)83の位置および状態を取得し(S12)、取得した情報を車両制御ECU6に出力する。
次に、自車両位置予測部161は、車両状態検出部2から入力される自車両81の位置、速度、向き等の状態に関する情報と、行動計画取得部5から取得できる行先経路とに基づいて、目標ウェイポイントwを生成する(S13)。この際、自車両位置予測部161は、例えば、図10(b)に示すような、駐車車両83を回避するような目標ウェイポイントwを生成する。
次に、予測期間設定部162は、目標ウェイポイントwに基づいて道路情報取得部4から交通ルール等を含む道路情報を取得する(S14)。
次に、予測期間設定部162は、ステップS14において取得された道路情報と、自車両位置予測部161によって取得された目標ウェイポイントwとに基づいて予測期間T4を算出する(S15)。具体的には、図12に示すフローチャートに従って、予測期間T4が算出される。
まず、図12に示すように、予測期間設定部162は、目標ウェイポイントw上の自車両81の位置を計算する(S51)。ここで、自車両81の位置が目標ウェイポイントw上にない場合(所定のずれが有る場合)は、自車両81位置から目標ウェイポイントw上の進行方向に対して垂線を下ろし、その垂線と目標ウェイポイントwとの交点を自車両81の位置とする。
次に、目標ウェイポイントw上の任意の位置の自車両速度vを計算する(S52)。この自車両速度vは、交通ルールや自車両81の乗り心地を考慮するものとし、駐車車両83等障害物からの干渉は受けないものとして計算する。ただし、目標ウェイポイントw上に不可視領域(死角領域)がある場合は、そこからの飛び出しを考慮することが好ましい。従って、ここで計算された自車両速度vが、ある目標ウェイポイントwの終点位置に、最も早く到達できる速度となる。自車両位置予測部161は、少なくとも車両状態検出部2から取得できる自車両81の現在速度と、自車両81が走行する領域A1の制限速度とを用いて自車両速度vを計算する。なお、自車両位置予測部161によって計算される際、目標ウェイポイントwの曲率及びその変化率を考慮することが好ましく、これにより、乗り心地を加味した自車両速度vを計算することが可能となる。
ここで、図13を用いて具体的な自車両速度vの計算方法を説明する。区間B,D(直線区間)において自車両81は、自車両速度vが制限速度以下であれば制限速度まで加速する。また、自車両81の自車両速度vがすでに制限速度にまで達していればその速度で等速移動し、制限速度を超えていれば制限速度にまで減速する。次に、区間Cにおいては、カーブの曲率とその変化率とを速度に反映させる。この反映のさせ方は、曲率が大きいほど速度を落とすようにする。また、曲率の変化率が大きいほど速度を落とすようにする。好ましくは、乗り心地を損なわない自車両81の最大操舵速度を予め決めておき、当該速度にまで減速する。また、目標ウェイポイントw上に不可視領域(死角領域)がある場合は、そこからの飛び出しがあった場合に停止できる速度にまで減速することが好ましい。以下、上記方法により算出した自車両速度vに基づいて予測期間T4を算出する。
次に、予測期間設定部162は、初期予測期間tを設定する(S53)。なお、この初期予測期間tは、予測期間設定部162は、安全を確保する上で最低限必要な初期予測期間tを設定する。具体的には、初期予測期間tは、1秒から3秒程度が好ましい。さらに、この初期予測期間tを自車両81の現在速度に応じて変化させることが好ましい。すなわち、乗り心地を損なわない最大の減速度を予め決めておき、当該減速度で現在の自車両速度vの自車両81を停止させるのに必要な期間trに基づいて初期予測期間tを設定する。これとは反対に、当該減速度で現在の自車両速度vの自車両81を停止させるのに必要な期間trよりも長い場合(期間ts)、前述の期間trを初期予測期間tに設定してもよい。
次に、予測期間設定部162は、初期予測期間tだけ進んだ位置{x、y}を計算する(S54)。ここで、目標ウェイポイントwにおける座標、任意の目標ウェイポイントw上での自車両速度v、移動時間tが既知であるため、単純な積分計算を行うことで初期予測期間t秒後の目標ウェイポイントw上の位置{x、y}を計算することができる。なお、自車両81の向きθを求めておくことが好ましい。
次に、予測期間設定部162は、自車両81が、目標ウェイポイントw上において、他車両82の進路を干渉する可能性があるかどうかを判定する(S55)。ここでは、自車両81が走行している領域A1と異なる他の領域A2に位置している場合、他車両82の進路を干渉する可能性があると判定している。なお、他車両82の進路を干渉する可能性を判定する方法は、後述するように、これに限られるものではない。
ここで、予測期間設定部162が、目標ウェイポイントw上において、自車両81が他車両82の進路を干渉する可能性があると判定した場合(S55:YES)、予測期間設定部162は、初期予測期間tに期間dtを付加する(S56)。なお、期間dtは、固定の期間(例えば、0.2秒)でも、可変(例えば、0.01秒〜1.0秒)の期間であってもよい。なお、この期間dtは、計算処理の負荷に応じて増減させることが好ましい。すなわち、計算負荷が高いときには、粗く大きめの期間dtに設定し、計算負荷が小さいときには、細かく小さめの期間dtに設定して、実時間処理が可能となるようにする。
一方、予測期間設定部162が、目標ウェイポイントw上において、自車両81が他車両82の進路を干渉する可能性がないと判定した場合(S55:NO)には、ステップS54において計算された期間を予測期間T4として決定する(S57)。なお、この予測期間T4は、自車両81が他車両82の進路を干渉する可能性がない位置まで予測した最小期間となる。
次に、予測期間設定部162は、ステップS56で決定された予測期間T4を進路生成部163が進路を生成する際の時間として設定する(S16)。
以下、図11に示すステップS17〜S19については、上記実施形態と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
以上に示したように、上記実施形態の環境予測装置101によれば、自車両81がこれから進もうとする進路が明らかとなっているため、上記環境予測装置1の効果に加えて、計算負荷を減らすことが可能となる。
以上、本発明の第1、第2実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
また、上記実施形態の環境予測装置101によれば、他車両82の進路を干渉する可能性を判定するにあたり、自車両81が位置する領域に基づいて判定する例を挙げて説明した。しかし、これに限定されるものではない。
例えば、図14に示すように、自車両81の向きと自車両81が位置する領域A1の進行方向との角度αに基づいて他車両82の進路を干渉する可能性を判定してもよい。例えば、自車両81の向きと自車両81が存在する領域の進行方向との角度αが所定角度以上(例えば、45度)の場合、自車両81は、他車両82の進路を干渉すると判定してもよい。
また、例えば、図15に示すように、自車両81の位置する領域A3と他車両82の位置する領域A2との優先順位に基づいて他車両82の進路を干渉する可能性を判定してもよい。例えば、自車両81の位置する領域A3が他車両82の位置する領域A2よりも低い場合、自車両81は、他車両82の進路を干渉すると判定してもよい。なお、自車両81の位置する領域A3と他車両82の位置する領域A2との優先順位の比較によれば、図16に示すような交差点において、自車両81が他車両82の進路を干渉する可能性を判定することも可能となる。また、自車両81が位置する領域に基づいた優先順位だけでなく、信号情報に基づいた優先順位を使用することも可能である。例えば、青信号であれば、その灯火が指し示された車両の優先順位は高く、赤信号であれば、その灯火が指し示された車両の優先順位は低い。
また、例えば、図17に示すように、道路標示91,92に基づいて、自車両81が他車両82の進路を干渉する可能性を判定してもよい。ここで、道路標示91が白線、道路標示92が黄線である場合、領域A1を走行する自車両81が領域A2に車線変更することは交通ルールに違反する。そして、このような交通ルールを違反する走行は、自車両81が他車両82の進路を干渉すると判定してもよい。なお、交通ルールの違反の判定については、道路標示だけでなく、道路標識等も使用することができる。
また、他車両82の進路を干渉する可能性については、自動車保険の過失割合、裁判判例、互いの車両性能等に基づいて判定することもできる。
また、上記実施形態の環境予測装置1,101によれば、予測期間設定部62,162が、予測期間T、T4を設定した後、走行支援部7が、走行駆動、制動動作及び操舵操作を行う例を挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、予測期間T、T4に基づいて算出された進路等を表示手段(ディスプレイ等)に表示するような走行支援を行ってもよい。
また、上記実施形態の環境予測装置1,101によれば、予測期間設定部62,162は、自車両81が他車両82の進路を干渉する可能性に基づいて、予測期間T,T4を調整する例を挙げて説明したが、進路の長さを調整するようにしてもよい。