JP5504668B2 - (メタ)アクリル酸の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5504668B2
JP5504668B2 JP2009075319A JP2009075319A JP5504668B2 JP 5504668 B2 JP5504668 B2 JP 5504668B2 JP 2009075319 A JP2009075319 A JP 2009075319A JP 2009075319 A JP2009075319 A JP 2009075319A JP 5504668 B2 JP5504668 B2 JP 5504668B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acrylic acid
meth
water
mass
composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009075319A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009263347A (ja
Inventor
真治 磯谷
研二 高崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2009075319A priority Critical patent/JP5504668B2/ja
Publication of JP2009263347A publication Critical patent/JP2009263347A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5504668B2 publication Critical patent/JP5504668B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

本発明は、(メタ)アクリル酸の製造方法に関し、特に、(メタ)アクリル酸を含有する組成物を精留塔に供給して蒸留する工程を含む(メタ)アクリル酸の製造方法に関する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸との総称である。
(メタ)アクリル酸を製造する方法としては、プロパン、プロピレン、イソブチレン又はアクロレインを原料とする気相接触酸化反応によって生成した(メタ)アクリル酸含有ガスを水等の捕集溶剤に捕集し、得られた(メタ)アクリル酸水溶液から(メタ)アクリル酸を分離し、分離した(メタ)アクリル酸を減圧蒸留によって精製する方法が一般に知られている。
抽出法を含む(メタ)アクリル酸の製造方法としては、例えば、酢酸と共沸する炭化水素と、(メタ)アクリル酸の抽出効率を高めるためのエステルとを含有する溶剤を抽出溶剤として(メタ)アクリル酸水溶液から(メタ)アクリル酸を抽出する工程と、得られた抽出液を蒸留によって脱水する工程とを含む方法(例えば、非特許文献1参照。)が知られている。すなわち、水溶性溶剤を抽出溶剤に用い、得られた抽出液を精留塔で蒸留する方法が知られている。
一方で気相接触酸化反応による(メタ)アクリル酸の製造方法では、反応時に副生した酢酸が蒸留時まで(メタ)アクリル酸と同伴する場合があることが一般的に知られている。
また、蒸留に供する(メタ)アクリル酸溶液中に多量の水が含まれていると、水による(メタ)アクリル酸重合促進効果が大きく、(メタ)アクリル酸が重合し易い環境に晒されることから、蒸留塔内で生成した重合物による汚染や閉塞がみられ運転の継続が困難になる場合があった(例えば特許文献1参照)。
特開2005−247714号公報
大森英三著、「アクリル酸とそのポリマー〔I〕」、第三版、株式会社昭晃堂、1978年4月28日、p.13
本発明は、(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを含有する組成物から(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを分離する蒸留において、精留塔の塔頂からの(メタ)アクリル酸の排出を抑制する方法を提供する。
また本発明は、(メタ)アクリル酸を含む系での蒸留塔内での(メタ)アクリル酸の好ましくない重合反応を抑制し、装置類の閉塞等によるトラブルを回避し、(メタ)アクリ
ル酸の製造を長期間安定して行うことができる方法を提供する。
更に本発明は、(メタ)アクリル酸の製造方法において、(メタ)アクリル酸を含有する原料から(メタ)アクリル酸とその他の成分とを長期間にわたり安定して高い分離性能で分離できる方法を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを含有する組成物から(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを分離する蒸留において、前記組成物中の酢酸の濃度を特定の値以下とすることで、精留塔の塔頂からの(メタ)アクリル酸の排出を抑制することができることを見出し、発明を完成させた。
すなわち本発明の第一発明は、(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを含有する組成物を精留塔に供給して蒸留する工程を含む、(メタ)アクリル酸の製造方法であって、前記組成物中の酢酸の濃度が2.0質量%以下であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記組成物中の水濃度が2.0質量%以下であることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記精留塔が塔頂より非水溶性溶剤、酢酸、水、(メタ)アクリル酸を含有する蒸気を排出させ、塔底または塔側より(メタ)アクリル酸が50質量%以上含まれる(メタ)アクリル酸溶液を得ることができる精留塔であることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記組成物中の非水溶性溶剤の含有量が55質量%以上であることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記組成物中の酢酸濃度が0.5質量%以上であることを特徴とする、上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記蒸留工程における還流比が0.5〜2.5であることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、(メタ)アクリル酸の水溶液から前記非水溶性溶剤によって(メタ)アクリル酸を抽出する工程を更に含み、この抽出工程で得られた抽出液を前記組成物に用いることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記非水溶性溶剤は非水溶性芳香族化合物を含有し、前記非水溶性芳香族化合物がベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、及びp−キシレンからなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、(メタ)アクリル酸を含有するガスから水系媒体によって(メタ)アクリル酸を捕集する工程を更に含み、この捕集工程で得られた捕集液を前記(メタ)アクリル酸の水溶液に用いることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
次に本発明の第二発明は、(メタ)アクリル酸を含有する組成物を精留塔に供給して蒸留する工程を含む、(メタ)アクリル酸の製造方法であって、前記精留塔の回収部に不規則充填物が収容され、前記組成物中の水濃度が2.0質量%以下であることを特徴とする
上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記精留塔の濃縮部に規則充填物が収容されることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記組成物は非水溶性溶剤を含有することを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
また本発明は、前記(メタ)アクリル酸がアクリル酸であることを特徴とする上記の(メタ)アクリル酸の製造方法を提供する。
本発明は、(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを含有する組成物から(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤とを分離する蒸留において、特定の値以下の濃度の酢酸を含有する前記組成物を用いることによって、塔頂からの(メタ)アクリル酸の排出を抑制することができる。
また本発明は、(メタ)アクリル酸を含有する組成物から(メタ)アクリル酸を分離する蒸留において、特定の値以下の濃度の水を含有する前記組成物を用いることによって、(メタ)アクリル酸の好ましくない重合反応を抑制し、装置類の閉塞等によるトラブルを回避し、運転を安定化させる効果が高く、長期安定運転が達成できる。そのため、その工業的価値は極めて大きい。
本発明の(メタ)アクリル酸に用いられる設備の一例を示す図である。 本発明の(メタ)アクリル酸に用いられる設備の一例を示す図である。
本発明は、(メタ)アクリル酸を含有する組成物を精留塔で蒸留する蒸留工程を含み、本発明の第一発明は特に、前記組成物に非水溶性溶剤を含む。なお、本発明の第二発明においても、前記組成物に非水溶性溶剤を含むことが好ましい。
前記組成物は、(メタ)アクリル酸を含有する。(メタ)アクリル酸は前記組成物中に下限値として、10質量%以上含有されることが好ましく、12質量%以上含有されることがより好ましく、15質量%以上含有されることが更に好ましい。また、上限値として、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましく、35質量%以下であることが最も好ましい。
前記組成物中の非水溶性溶剤は、20℃における水の溶解度が1.5質量%以下の溶剤であることが好ましい。前記組成物中の水濃度を抑え組成物中の水濃度を本発明の所望の値に制御できる観点から、水の溶解度は、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.06質量%以下であることが最も好ましい。
また、非水溶性溶剤の沸点、及び非水溶性溶剤が酢酸、あるいは水と共沸する場合の沸点は、精留塔において(メタ)アクリル酸と、非水溶性溶剤、酢酸、および水とを一度に分離できる観点から(メタ)アクリル酸よりも低いことが好ましい。(メタ)アクリル酸を分離する場合、非水溶性溶剤の沸点、及び非水溶性溶剤が酢酸、あるいは水と共沸する場合の沸点は、蒸留工程において非水溶性溶剤を十分に分離する観点から、大気圧におい
て140℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、115℃以下であることがさらに好ましい。非水溶性溶剤の沸点、及び非水溶性溶剤が酢酸、あるいは水と共沸する場合の沸点の下限値は特に限定されないが、前記蒸留工程による系外への排出を抑制する観点から、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
非水溶性溶剤は一つの化合物であっても、二以上の化合物であってもよい。このような非水溶性溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、n−ヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキサン、ヘキサジエン(異性体を含む)、n−ヘプタン、及びヘプテン(異性体を含む)が挙げられる。非水溶性溶剤は、炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素がより好ましく、アルキルベンゼンがさらに好ましく、トルエンが一層好ましい。非水溶性溶剤は、前記水の溶解度の条件を満足する範囲において、イソプロパノール等の他の溶剤を更に含有していてもよい。
前記非水溶性溶剤は組成物中に下限値として、20質量%以上含有されることが好ましく、50質量%以上含有されることがより好ましく、55質量%以上含有されることが更に好ましく、60質量%以上含有されることが特に好ましく、65質量%以上含有されることが最も好ましい。また、上限値としては、90質量%以下であることが好ましい。
非水溶性溶剤の濃度を上記の範囲とすることで、精留塔の塔頂から排出する(メタ)アクリル酸がより少なくなり、効率が上がるため好ましい。
本発明で用いられる精留塔には、(メタ)アクリル酸の製造において通常使用される精留塔を用いることができる。またこのような精留塔を有し、本発明における蒸留工程に用いられる蒸留装置としては、精留塔の塔底液を加熱、蒸気化するリボイラと、精留塔の塔頂から排出された蒸気を凝縮させる凝縮器と、得られた凝縮液を収容する受器と、精留塔内を減圧する真空装置と、精留塔内に重合禁止剤を供給する重合禁止剤供給装置とを有する装置を使用することができる。
本発明の第一発明においては、前記精留塔には、トレイ及び充填物の一方又は両方を収容することができる。充填物には、規則充填物及び不規則充填物の一方又は両方を用いることができる。本発明の第二発明においては、前記精留塔の回収部に不規則充填物が収容される。また、前記精留塔の濃縮部に規則充填物が収容されることが好ましい。前記トレイとしては、例えば泡鐘トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、スーパーフラッシュトレイ、マックスフラクストレイ、及びデュアルフロートレイが挙げられる。前記規則充填物としては、例えばスルーザー・ブラザース(株)製のスルーザーパック、住友重機械工業(株)製の住友スルーザーパッキング、住友重機械工業(株)製のメラパック、グリッチ(株)製のジェムパック、モンツ(株)製のモンツパック、東京特殊金網(株)製のグッドロールパッキング、日本ガイシ(株)製のハニカムパック、ナガオカ(株)製のインパルスパッキング、及び三菱化学エンジニアリング(株)製のエムシーパックが挙げられる。前記不規則充填物としては、例えばノートン(株)製のインタロックスサドル、日鉄化工機(株)製のテラレット、BASF(株)製のポールリング、マストランスファー(株)製のカスケード・ミニ・リング、及び日揮(株)製のフレキシリングが挙げられる。
本発明の第二発明においては、前記精留塔の回収部に不規則充填物が収容されるが、接触面積を大きくして分解性能を上げるために理論段が1〜100段となるように収容されることが好ましく、より好ましい理論段は3〜50段であり、特に好ましくは5〜20段である。また、前記精留塔の濃縮部に規則充填物が収容される場合には、接触面積を大きくして分解性能を上げるために理論段が1〜100段となるように収容されることが好ましく、より好ましい理論段は3〜50段であり、特に好ましくは5〜20段である。
前記重合禁止剤には、(メタ)アクリル酸の製造で通常使用される重合禁止剤を用いることができ、例えば、特開2005−336141号公報に記載されているような、ハイドロキノン、メトキノン等のフェノール系の重合禁止剤、フェノチアジン、フェニレンジアミン類、N−オキシル化合物等のアミン系の重合禁止剤、物、銅塩、マンガン塩等の金属塩系の重合禁止剤、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は1種でも、2種以上含まれていてもよい。
前記蒸留工程は、精留塔において、塔頂より非水溶性溶剤、酢酸、水、(メタ)アクリル酸を含有する蒸気が排出し、塔底または塔側より(メタ)アクリル酸が50質量%以上含まれる(メタ)アクリル酸溶液を得ることができる条件で行うのが好ましい。(メタ)アクリル酸の製造工程を簡易化できる観点から、塔底または塔側より(メタ)アクリル酸が70質量%以上含まれる(メタ)アクリル酸溶液を得る条件で行うのがより好ましく、90質量%以上含まれる(メタ)アクリル酸溶液を得る条件がさらに好ましい。
本発明の蒸留工程の条件としては、減圧蒸留によって、非水溶性溶剤が蒸発し、(メタ)アクリル酸が缶出液として得られる条件で行うことができる。前記塔底または塔側より得られる(メタ)アクリル酸溶液の濃度を50質量%以上とするためには、例えば、精留塔の理論段数が5〜50であり、精留塔の塔頂温度が10〜80℃、好ましくは20〜70℃であり、精留塔の塔底温度が60〜110℃であり、精留塔内の圧力が10〜90kPa(Abs)であり、精留塔内の塔頂と塔底の差圧が5〜70kPaである条件とすることが挙げられる。
また本発明の第一発明においては、前記組成物中の酢酸の濃度が2.0質量%以下であることを特徴とする。酢酸の濃度が2.0質量%以下である場合には、蒸留工程における前記組成物からの(メタ)アクリル酸の分離がよく、精留塔の塔頂からの(メタ)アクリル酸の排出量が低下するため、精留塔における缶出液又は塔側抜出液からの(メタ)アクリル酸の回収率が向上する。なお、組成物中の酢酸の濃度については、精留塔の塔頂からの(メタ)アクリル酸の排出を抑制する観点から1.8質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることが更に好ましく、1.3質量%以下であることがより一層好ましい。
なお後述するように、抽出工程の抽残液の系外への排出量を増やすことや、捕集塔の塔底温度を上げることによって前記組成物中の酢酸の濃度を小さくすることができる。しかし、酢酸濃度を下げるためには、抽残液に含まれる水及びアクリル酸を系外へ排出しなければならないため、(メタ)アクリル酸のロスが増え、精製効率の悪化などにつながる。そのため、前記組成物中の酢酸濃度は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上が更に好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の第二発明においては、前記組成物中の水濃度が2.0質量%以下であることを特徴とする。また、本発明の第一発明においても、前記組成物中の水濃度が2.0質量%以下であることが好ましい。精留塔による(メタ)アクリル酸の製造方法では、多量の水とともに(メタ)アクリル酸を蒸留した場合、水による(メタ)アクリル酸の重合促進効果により、精留塔内で重合物が発生して、運転に支障をきたす場合があるためである。特に、本発明の第二発明のように、精留塔の回収部に不規則充填物が収容される場合には、前記組成物中の水濃度が2.0質量%以下であることが必要となる。前記組成物中の水濃度は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
水濃度の下限値については特に制限はないが、前記組成物の調製のしやすさの観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。
前記組成物には、その他の成分、例えば、上記の重合禁止剤、水、ホルムアルデヒド、マレイン酸、(メタ)アクリル酸の多量体を含むこともできる。
本発明の蒸留工程では、精留塔の塔頂から排出された蒸気の凝縮液の一部を還流液として精留塔に供給する。本発明において、留出液に対する還流液の量の比である還流比は、例えば(メタ)アクリル酸のトルエン溶液から(メタ)アクリル酸を分離する場合では、精留塔塔頂からのアクリル酸の排出を適当な範囲に抑制するため及び精留塔で消費されるリボイラの熱エネルギーを抑制する観点から、還流比は0.5〜2.5、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5、特に好ましくは1.0〜1.3である。還流比は、小さすぎると(メタ)アクリル酸の分離が悪くなり、高すぎると塔頂で蒸気を凝縮して塔内へ戻す量が大きくなり消費する熱量が大きくなってエネルギーを多量に使用するため不利である。
本発明の第一発明においては、前述の条件によれば、本発明における蒸留工程において、精留塔の塔頂からの(メタ)アクリル酸の排出量を、蒸留工程で得られる凝縮液中の(メタ)アクリル酸の濃度で、20,000質量ppm以下にすることができる。この凝縮液を、(メタ)アクリル酸を含む水溶液からの(メタ)アクリル酸の抽出による回収に使用する場合、回収率はこの凝縮液中の(メタ)アクリル酸濃度に大きく依存する。つまり、この凝縮液中の(メタ)アクリル酸濃度が高いと前記抽出工程での回収率が極端に低くなる。また、(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤を含有する組成物中において、組成物中の(メタ)アクリル酸濃度が低い場合には、(メタ)アクリル酸と非水溶性溶剤は共沸組成を作るため、両者の分離が難しい。しかし、酢酸濃度を本発明の範囲に制御し、還流比・蒸留段数等を適宜設定することにより、前記凝縮液中の(メタ)アクリル酸濃度を20,000質量ppm以下にすることができる。蒸留工程の条件は、目的物や前記組成物の組成に応じて決めることができ、例えば、アクリル酸のトルエン溶液からアクリル酸を分離する場合には、塔頂圧力を13kPa(Abs)、理論段数を15段、フィード段を塔底として、還流比が0.5〜2.5の場合において、凝縮液中のアクリル酸の濃度が、18,000〜2,000質量ppmとなることが好ましく、12,000〜3,000質量ppmとなることがより好ましく、11,500〜3,000質量ppmとなることがさらに好ましく、10,800〜3,000質量ppmとなることがより一層好ましい。
また、還流比が1.0〜2.0の場合において、凝縮液中のアクリル酸の濃度が、12,400〜3,000質量ppmとなることが好ましく、12,000〜3,000質量ppmとなることがより好ましく、11,500〜3,000質量ppmとなることがさらに好ましく、10,800〜3,000質量ppmとなることがより一層好ましい。
本発明の製造方法は、第一発明、第二発明共に、(メタ)アクリル酸の水溶液から前記非水溶性溶剤によって(メタ)アクリル酸を抽出する抽出工程を更に含むことが好ましい。このような抽出工程を更に含むことは、抽出工程の抽出液を前記組成物に用いることができ、また、蒸留工程で生成した蒸気を凝縮した留出液を抽出工程における抽出溶剤として再利用することができることから好ましい。本発明において抽出工程を含む場合には、抽出工程における抽残液の排出量を増やすことによって前記組成物中の酢酸の濃度を小さくすることができる。
抽出工程により(メタ)アクリル酸の水溶液から非水溶性溶剤によって水と(メタ)アクリル酸を分離することができる。この抽出工程に加え更に、抽出工程により得られた抽出液を蒸留する工程を有することが、蒸留塔内での重合物生成の防止効果が高い点で好ましい。
前記抽出工程において非水溶性溶剤で(メタ)アクリル酸を抽出する場合、ベンゼン、
トルエン、o−キシレン、m−キシレン、及びp−キシレン等の芳香族系化合物を非水溶性溶剤として用いることが、(メタ)アクリル酸の抽出効率が高いため好ましく、中でもトルエンが特に好ましい。なお、本願発明でいう「(メタ)アクリル酸の抽出効率」とは、抽出工程に供給される(メタ)アクリル酸の総重量に対し、抽出液として排出される(メタ)アクリル酸の重量の割合をいう。
上記の抽出工程は、液液接触の抽出に用いられる通常の抽出装置を利用して行うことができる。前記抽出装置は、(メタ)アクリル酸水溶液と非水溶性溶剤とを十分に接触させる観点から、理論段数が5以上である抽出装置であることが好ましい。このような抽出装置としては、例えば特開2002−58903号公報に開示されているような、筒部と、筒部内に配置され筒部の軸方向に往復運動可能な駆動軸と、前記軸方向に並んで駆動軸に固定される複数の多孔板と、駆動軸を前記軸方向に往復運動させる駆動部とを有する往復動プレート式向流抽出装置を好ましく利用することができる。
また、上記の抽出工程では、(メタ)アクリル酸の水溶液から(メタ)アクリル酸を非水溶性溶剤で抽出する抽出効果を上げるため、(メタ)アクリル酸の水溶液の水重量に対して、2倍以上、好ましくは3倍以上、最も好ましくは4倍以上の非水溶性溶剤を用いることが好ましい。また、抽剤である非水溶性溶剤の量が多すぎると、回収するためのエネルギーが多量に必要となるため、(メタ)アクリル酸の水溶液の水量に対して10倍以下、好ましくは8倍以下、最も好ましくは6倍以下であることが有利である。
このように抽出に用いる非水溶性溶剤の量は多すぎても少なすぎても不利であり、結果として抽出液を前記組成物に用いる場合、その非水溶性溶剤の含有量は好ましい範囲があり、55〜90質量%含有されることが好ましく、60〜90質量%含有されることが更に好ましく、65〜90質量%含有されることが最も好ましい。
本発明の製造方法は、第一発明、第二発明共に、(メタ)アクリル酸を含有するガスから水系媒体によって(メタ)アクリル酸を捕集する捕集工程を更に含むことが好ましい。このような捕集工程を更に含むことは、捕集塔において(メタ)アクリル酸を捕集した捕集液を前記抽出工程に供給して用いることができ、また、抽出工程の抽残水を捕集工程における(メタ)アクリル酸ガス捕集用の水系媒体として再利用することができることから好ましい。本発明において捕集工程を含む場合には、捕集塔の塔底温度を上げることにより、前記捕集液中の酢酸の濃度を小さくすることができる。
前記捕集工程は、通常(メタ)アクリル酸ガスの捕集に用いられる捕集塔を用いて、(メタ)アクリル酸を含有するガスを塔底部から供給し、水系媒体を塔頂部から供給し、捕集液を塔底から排出する、(メタ)アクリル酸の通常の捕集方法によって行うことができる。
前記水系媒体は、水を主成分とする液体である。前記水系媒体は、水溶性の有機溶剤を含んでいてもよい。水系媒体としては、例えば水、及び(メタ)アクリル酸の製造において排出される水成分が挙げられる。
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法では、第一発明、第二発明共に、その他の工程を含むこともできる。例えば、プロパン、プロピレン、アクロレイン、イソブチレン、t−ブチルアルコール又はメタクロレインから接触気相酸化により(メタ)アクリル酸を生成させる生成工程が挙げられる。
前記生成工程は、触媒が収容されている原料ガス流路と、原料ガス流路に体して熱交換が可能な熱媒流路とを有する反応器を用いて行うことができる。このような反応器としては、例えば、特開2005−336085号公報に開示されているような、両端にガスの
通気口を有すると共に胴部に熱媒の通液口を有するシェルと、シェル内を両端部と胴部に分割する管板と、シェル内の胴部を貫通してシェル内の両端部を連通すると共に両端が管板によって支持され、触媒が収容される複数の反応管と、シェルの胴部に熱媒を循環させる装置とを有する多管式反応器、及び、特開2004−202430号公報に開示されているような、楕円型の断面形状を有する複数の管が断面形状の端部で連結されて形成され、併設される複数の仕切りと、二つの仕切りの間に保持される触媒と、前記管を横断する方向に前記触媒へガスを通す装置と、前記管に熱媒を供給する装置とを有するプレート式反応器が挙げられる。
また、前記生成工程に用いられる触媒としては、例えば、特開2005−336085号公報に開示されているような、下記一般式(I)で表されるMo−Bi系複合酸化物触媒、及び下記一般式(II)で表されるMo−V系複合酸化物触媒が挙げられる。
一般式(I) MoaWbBicFedAeBfCgDhEiOx
一般式(II) MoaVbWcCudXeYfOg
前記一般式(I)中、Aはニッケル及びコバルトの一方又は両方の元素、Bはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムから選ばれる一以上の元素、Cはアルカリ土類金属から選ばれる一以上の元素、Dは、リン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガン、ヒ素、ホウ素及び亜鉛から選ばれる一以上の元素、Eは、シリコン、アルミニウム、チタニウム及びジルコニウムから選ばれる一以上の元素、Oは酸素を表す。また前記一般式(I)中、a、b、c、d、e、f、g、h、i及びxは、それぞれ、Mo、W、Bi、Fe、A、B、C、D、E及びOの原子比を表し、a=12の場合、0≦b≦10、0<c≦10(好ましくは0.1≦c≦10)、0<d≦10(好ましくは0.1≦d≦10)、2≦e≦15、0<f≦10(好ましくは0.001≦f≦10)、0≦g≦10、0≦h≦4、0≦i≦30であり、xは各元素の酸化状態によって決まる値である。
前記一般式(II)中、XはMg、Ca、Sr及びBaから選ばれる一以上の元素、YはTi、Zr、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Nb、Sn、Sb、Pb及びBiから選ばれる一以上の元素、Oは酸素を表す。また前記一般式(II)中、a、b、c、d、e、f及びgは、それぞれ、Mo、V、W、Cu、X、Y及びOの原子比を示し、a=12の場合、2≦b≦14、0≦c≦12、0<d≦6、0≦e≦3、0≦f≦3であり、gは各々の元素の酸化状態によって定まる数値である。
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、第一発明、第二発明共に、その他、本発明の蒸留工程で得られた(メタ)アクリル酸を精製する精製工程、精製後の缶出液から(メタ)アクリル酸を回収する回収工程を含むこともできる。
前記精製工程では、減圧蒸留などにより、(メタ)アクリル酸から不純物が除かれ、(メタ)アクリル酸が精製される。また、前記回収工程では、蒸留工程又は精製工程の缶出液の高沸物を(メタ)アクリル酸に分解し、得られた(メタ)アクリル酸を前記抽出工程、前記蒸留工程又は前記精製工程の原料液として供給する。なお、高沸物とは、(メタ)アクリル酸よりも沸点が高い物質を言い、例えば(メタ)アクリル酸の二量体や三量体等の(メタ)アクリル酸多量体が挙げられる。
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法においては、精製工程を含む場合では、留出液として、又は精留塔を降下する液あるいは上昇する蒸気の一部として(メタ)アクリル酸を得ることができる。蒸留塔降下液からは蒸気を回収するには、例えば塔内にコレクターを設置することにより塔内で降下液を集めて一部を塔外に抜く方法がよく知られている。また、塔内上昇蒸気をぬくには一部蒸気を塔外へ抜き出して凝縮する方法がよく知られて
いる。
以下、本発明の様態を、図1に基づいて説明する。捕集塔1、精留塔3には棚段塔が、抽出塔2には前記の往復動プレート式向流抽出装置がそれぞれ用いられる。
気相接触酸化反応器で生成した(メタ)アクリル酸を含有する反応ガス11は、捕集塔1において水系の捕集溶剤12に接触させて捕集され、(メタ)アクリル酸水溶液13となる。捕集塔1の塔頂から出る廃ガス14は燃焼装置(図示せず)に送られ、ガス中の有機物が焼却され系外に排出される。焼却処理されたガスの一部は、(メタ)アクリル酸原料として再利用されることがある。
捕集塔1で捕集された(メタ)アクリル酸水溶液13は、抽出塔2の塔頂部から抽出塔2に供給され、抽出塔2内において多孔板の上下動により液滴状態となり、抽出塔2内を降下しながら、抽出塔2の塔底部から供給される抽出溶剤31と接触する。抽出溶剤31には例えばトルエンを主成分とする非水溶性溶剤が用いられる。この接触により、(メタ)アクリル酸水溶液中の(メタ)アクリル酸は抽出溶剤31に抽出され、生成した抽出液21が抽出塔2の塔頂部から排出される。また、(メタ)アクリル酸が抽出され、抽出塔2の塔底部まで降下した(メタ)アクリル酸水溶液は、抽残液22として塔底部から排出される。
なお、抽出塔2の塔底から排出された抽残液22は、一部は捕集塔1の塔頂部に供給される水系の捕集溶剤12として再利用される。また、抽残液22から有価物を分離・回収するために抽残液22を別途、蒸留塔に供給してもよい。
得られた抽出液21は、精留塔3の中部又は下部から供給され、減圧蒸留される。この減圧蒸留により、抽出液21中の抽出溶剤の蒸気は精留塔3の塔頂から排出され、凝縮器で凝縮された後、凝縮液の一部は所望の還流比に基づき還流液として精留塔3の上部に戻され、残りは留出液として抽出塔2の塔底部に供給されて抽出溶剤31として利用される。また、抽出液21中の(メタ)アクリル酸は精留塔3の塔底から粗(メタ)アクリル酸32として排出される。得られた粗(メタ)アクリル酸32をさらに蒸留や晶析等の別の精製工程に供給し、精製してもよい。
本発明の第二発明では、図2に示すように、精留塔51の原料流入口52よりも下方の回収部に不規則充填物51aが収容される。また、(メタ)アクリル酸の分解性能を高めるために、精留塔51の原料流入口52よりも上方の濃縮部に規則充填物51bが収容されることが好ましい。原料流入口52は、例えば精留塔51の内外を連通するノズルである。重合禁止剤供給装置53は、例えば精留塔51の塔頂部から規則充填物51bの上面に均一に重合禁止剤を散布する散布装置である。
リボイラ54は、例えば精留塔51の缶出液の一部を加熱して蒸気化する熱交換器型加熱装置である。例えば、リボイラ54には、0.5〜30.0質量%の前記缶出液が供給される。リボイラ54で生成した蒸気は、不規則充填物51aの底部、すなわち精留塔51の塔底部に供給される。
凝縮器55は、精留塔51の塔頂から排出された蒸気を凝縮する装置であり、例えば熱交換器型冷却装置である。また、受器56は、凝縮器55で生成した凝縮液を収容する容器である。受器56に収容された凝縮液は、一部は還流液として精留塔51の塔頂部に供給され、一部は留出液として利用される。また受器56は、例えば不図示の凝縮器及び真空装置に接続される。
原料流入口52から(メタ)アクリル酸を含有する原料が、重合禁止剤供給装置53からは重合禁止剤の液体が、それぞれ所定の流量で精留塔51に供給される。原料流入口52から供給された原料は、精留塔51の回収部を降下する。精留塔51の回収部には、不規則充填物が収容されており、降下してくる原料と塔底から上昇してくる蒸気との気液接触の機会が多くなるため、(メタ)アクリル酸とその他の成分の分離性能が上昇する。気液接触を経た液は精留塔51の塔底から抜き出されて、一部がリボイラ54に供給され、残りが缶出液としてこの蒸留の系から排出される。また、精留塔の回収部は塔頂部に比べて温度及び圧力が高くなっており、(メタ)アクリル酸が重合しやすい環境が形成されているが、供給される原料には水がほとんど含まれないため、(メタ)アクリル酸の重合が起きにくく、精留塔の設備の汚染や閉塞といった問題が生じにくくなるため、長期間に渡り安定して蒸留工程を行うことができる。
精留塔51の塔底から抜き出されて、リボイラ54に供給された液は、リボイラ54によって加熱、蒸気化されて回収部51a及び濃縮部51bを上昇し、上昇した蒸気は精留塔51の塔頂から凝縮器55に供給される。凝縮器55に供給された蒸気は凝縮器55で冷却されて凝縮液となり、生成した凝縮液は受器56に収容される。受器56に収容された凝縮液は、一部は還流液として精留塔51に供給され、一部は留出液としてこの蒸留の系外に排出される。
還流液は濃縮部51bを降下する。濃縮部51bには規則充填物が収容されていることから、濃縮部を降下する液と、塔底から上昇してくる蒸気とが気液接触する機会が多くなるため、(メタ)アクリル酸とその他の成分の分離性能が上昇する。すなわち、濃縮部にトレイを収容する場合に比べて、蒸留効率を固定すると、精留塔の高さを小さくすることができる。または、濃縮部にトレイを収容する場合に比べて、精留塔の高さを固定すると、蒸留効率をさらに高めることができる。あるいは、回収部にトレイを収容する場合に比べて、それらの両方の効果を得ることもできる。
前記蒸留工程を含み得る(メタ)アクリル酸の製造方法としては、例えば、プロパン、プロピレンもしくはアクロレイン、または、イソブチレン、t−ブチルアルコールもしくはメタクロレインから接触気相酸化によりアクリル酸またはメタクリル酸を生成する生成工程と、生成工程で得られた(メタ)アクリル酸を含有するガスを水性媒体に接触させて(メタ)アクリル酸を水性媒体に捕集する捕集工程と、得られた(メタ)アクリル酸水溶液と抽出溶剤とを接触させて(メタ)アクリル酸を抽出する抽出工程と、得られた抽出液を蒸留して(メタ)アクリル酸と抽出溶剤とを分離する溶剤分離工程とを含む(メタ)アクリル酸の製造方法が挙げられる。本願発明の(メタ)アクリル酸の製造方法には、前記蒸留工程が前記溶剤分離工程として含まれ得る。
前記(メタ)アクリル酸の製造方法は、溶剤分離工程で得られる(メタ)アクリル酸成分を蒸留して(メタ)アクリル酸を精製する精製工程、精製工程で得られる缶出液中の高沸物を分解して高沸物から(メタ)アクリル酸を回収する(メタ)アクリル酸回収工程、及び、溶剤分離工程、又は精製工程で得られる缶出液から重合禁止剤を回収する重合禁止剤回収工程等のさらなる工程を含んでいてもよい。前記前記蒸留工程は前記生成工程として含まれ得る。前記精製工程において、精製された(メタ)アクリル酸は、精製工程における留出液として得ることができ、又は、前記精留塔中を降下している液を精留塔の側部で精留塔外に抜き出して得ることができる。
本発明の製造方法によれば、蒸留工程における塔頂からの(メタ)アクリル酸の排出量を抑制することで蒸留効率が上がり、(メタ)アクリル酸を効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
アクリル酸含有溶液(組成:トルエン 80.0質量%、アクリル酸 18.2質量%、酢酸 1.5質量%、水 0.3質量%)を、理論段数が15段の精留塔と、精留塔の塔底液の一部を加熱蒸気化するためのリボイラを備えた蒸留装置を使用し、以下の条件で蒸留した。
・還流液:塔頂に供給
・精留塔の塔頂温度48℃、塔底温度62℃
・精留塔の圧力:12kPa(Abs)
・アクリル酸含有溶液の流入位置:精留塔の塔底部
・アクリル酸含有溶液の流入量:100g/h
・塔頂留出液量:75g/h
・塔底からの缶出量:25g/h
以上の条件において、還流比を変化させたときの、精留塔の塔頂から排出された蒸気の凝縮液中のアクリル酸の濃度を調べた。結果を表1に示す。
Figure 0005504668
(実施例2)
アクリル酸含有溶液の組成をトルエン 80.0質量%、アクリル酸 20.0質量%に変えた以外は、実施例1と同様の条件で、還流比を変化させたときの、精留塔の塔頂から排出された蒸気の凝縮液中のアクリル酸の濃度を調べた。結果を表2に示す。
Figure 0005504668
(比較例1)
アクリル酸含有溶液の組成をトルエン 80.0質量%、アクリル酸 17.6質量%、酢酸 2.1質量%、水 0.3質量%に変えた以外は、実施例1と同様の条件で、還流比を0.9としたときの、精留塔の塔頂から排出された蒸気の凝縮液中のアクリル酸の濃度を調べたところ21200質量ppmであった。
(参考例1)
参考として、精留塔の塔頂から排出される蒸気中の(メタ)アクリル酸の含有量の差による抽出効率の差を示すため、トルエンを用いてアクリル酸を含有する水溶液を抽出する際の、抽剤トルエン中のアクリル酸濃度による抽出効率の違いを表3に示す。
Figure 0005504668
上記の参考例では、アクリル酸59質量%、水41質量%のアクリル酸水溶液を、アクリル酸を含有するトルエン抽剤で抽出操作を行なった。抽出装置は理論段数5段相当の往復動プレート式向流抽出装置を用いた。抽出塔の塔頂から抽料としてアクリル酸水溶液を97g/hで供給し、塔底から抽剤としてアクリル酸を含有するトルエン液を315g/hで供給した。塔頂から油層としてアクリル酸を含有するトルエン抽出液を得、塔底から水層として抽残水を得た。抽剤中のアクリル酸濃度を変化させて、抽出効率を測定した。抽出効率は、塔頂から供給したアクリル酸水溶液(抽料)に含まれるアクリル酸に対して、抽残水に含有されて出たアクリル酸量を測定し、以下の式から求めた。
すなわち、抽出効率(%)
={(抽料中のアクリル酸流量―抽残水へ含有されて出たアクリル酸流量)/(抽料中のアクリル酸流量)}×100 で求めた。
抽剤中のアクリル酸濃度が2%を越えると、抽出効率が95%以下と非常に低くなり、工業的には非常にロスが多くなり、実用に供せ無い。
(実施例3)
精留塔における充填物の種類と蒸留運転の安定性とを確認するために、以下の試験を行った。規則充填物であるスルーザー・ブラザース製スルーザーパックを濃縮部に理論段数で10段、不規則充填物である、竹中金網(株)から購入したコイルパッキンを、精留塔の回収部に理論段数で10段充填し、精留塔の原料流入口から以下の組成の原料1を0.2kg/hで供給し、塔底温度85℃、塔頂温度57℃、塔内圧力16kPa(Abs)、還流比1.0の条件で缶出液量0.04kg/hで抜き出して蒸留を行った。この条件において、蒸留を70時間行うことができた。蒸留の停止後、精留塔内を検査したが、精留塔内における重合物の発生はほとんど確認されなかった。
<原料1の組成>
アクリル酸 20.0質量%
トルエン 79.5質量%
水 0.5質量%
(比較例2)
一方、原料1を以下の組成の原料2に代えた以外は同じ条件で蒸留を行ったところ、2時間後には塔内圧力が変動し、異常を感知したため、蒸留を停止した。精留塔内を検査したところ、精留塔の回収部、特に塔底に近い下部において重合物が発生して回収部を閉塞していることが確認された。
<原料2の組成>
アクリル酸 20.0質量%
トルエン 71.0質量%
水 9.0質量%
1 捕集塔
2 抽出塔
3 精留塔
11 (メタ)アクリル酸含有ガス
12 捕集溶剤
13 (メタ)アクリル酸水溶液
14 廃ガス
21 抽出液
22 抽残液
31 抽出溶剤
32 粗(メタ)アクリル酸
51 精留塔
51a 不規則充填物
51b 規則充填物
52 原料流入口
53 重合禁止剤供給装置
54 リボイラ
55 凝縮器
56 受器

Claims (6)

  1. アクリル酸の水溶液から非水溶性溶剤によってアクリル酸を抽出する工程、及び、該抽出工程で得られたアクリル酸と非水溶性溶剤とを含有する組成物を精留塔に供給して蒸留する工程を含む、アクリル酸の製造方法であって、前記非水溶性溶剤は非水溶性芳香族化合物を含有し、前記非水溶性芳香族化合物がトルエン、o−キシレン、m−キシレン、及びp−キシレンからなる群から選ばれる一種以上であり、前記組成物中の酢酸の濃度が2.0質量%以下、かつ前記組成物中の水濃度が2.0質量%以下であり、前記精留塔の回収部に不規則充填物が収容され、前記精留塔の濃縮部に規則充填物が収容されることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
  2. 前記精留塔が塔頂より非水溶性溶剤、酢酸、水、アクリル酸を含有する蒸気を排出させ、塔底または塔側より、アクリル酸が50質量%以上含まれるアクリル酸溶液を得ることができる精留塔であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  3. 前記組成物中の非水溶性溶剤の含有量が55質量%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアクリル酸の製造方法。
  4. 前記組成物中の酢酸濃度が0.5質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
  5. 前記蒸留工程における還流比が0.5〜2.5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
  6. アクリル酸を含有するガスから水系媒体によってアクリル酸を捕集する工程を更に含み、この捕集工程で得られた捕集液を前記アクリル酸の水溶液に用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
JP2009075319A 2008-03-31 2009-03-26 (メタ)アクリル酸の製造方法 Active JP5504668B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009075319A JP5504668B2 (ja) 2008-03-31 2009-03-26 (メタ)アクリル酸の製造方法

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008090087 2008-03-31
JP2008090087 2008-03-31
JP2008090136 2008-03-31
JP2008090136 2008-03-31
JP2009075319A JP5504668B2 (ja) 2008-03-31 2009-03-26 (メタ)アクリル酸の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009263347A JP2009263347A (ja) 2009-11-12
JP5504668B2 true JP5504668B2 (ja) 2014-05-28

Family

ID=41389661

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009075319A Active JP5504668B2 (ja) 2008-03-31 2009-03-26 (メタ)アクリル酸の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5504668B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5338632B2 (ja) 2009-11-18 2013-11-13 富士通株式会社 移動端末及び通信方法
KR102079774B1 (ko) * 2016-11-25 2020-02-20 주식회사 엘지화학 (메트)아크릴산의 연속 회수 방법 및 장치
WO2018105993A1 (ko) * 2016-12-06 2018-06-14 주식회사 엘지화학 (메트)아크릴산의 회수 방법
KR102080287B1 (ko) 2016-12-06 2020-02-21 주식회사 엘지화학 (메트)아크릴산의 회수 방법
WO2023063549A1 (ko) * 2021-10-15 2023-04-20 주식회사 엘지화학 아크릴산 제조방법
WO2023210075A1 (ja) * 2022-04-27 2023-11-02 株式会社日本触媒 易重合性物質の取り扱い装置

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5011364B1 (ja) * 1965-06-30 1975-04-30
DE1965014A1 (de) * 1969-12-27 1971-07-01 Knapsack Ag Verfahren zur Abtrennung von Acrylsaeure aus waessriger Rohacrylsaeure
JPS54119412A (en) * 1978-03-06 1979-09-17 Mitsubishi Chem Ind Ltd Purification of methacrylic acid
JPH0615497B2 (ja) * 1985-10-24 1994-03-02 日本化薬株式会社 メタクリル酸の回収方法
JPH0621104B2 (ja) * 1987-02-27 1994-03-23 日本化薬株式会社 メタクリル酸の抽出分離法
JP2002128728A (ja) * 2000-10-19 2002-05-09 Mitsubishi Rayon Co Ltd メタクリル酸の精製方法
JP2003113138A (ja) * 2001-10-09 2003-04-18 Mitsubishi Chemicals Corp (メタ)アクリル酸類の蒸留方法
JP2004026753A (ja) * 2002-06-27 2004-01-29 Mitsui Takeda Chemicals Inc メチレン架橋ポリアリールポリアミン含有廃水からの有機物の回収方法
JP2005170931A (ja) * 2003-11-17 2005-06-30 Mitsubishi Chemicals Corp 易重合性化合物用の容器
JP2005247714A (ja) * 2004-03-02 2005-09-15 Mitsubishi Chemicals Corp (メタ)アクリル酸の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009263347A (ja) 2009-11-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5386847B2 (ja) アクリル酸の製造方法
RU2391330C2 (ru) Способ получения акролеина, или акриловой кислоты, или их смеси из пропана
JP5358582B2 (ja) (メタ)アクリル酸回収方法および(メタ)アクリル酸回収装置
JP5504668B2 (ja) (メタ)アクリル酸の製造方法
RU2415126C2 (ru) Способ снижения температуры горячей точки неподвижного слоя катализатора в процессе получения акриловой кислоты путем двухстадийного способа гетерогенно катализируемого частичного окисления в газовой фазе пропилена
JP5715318B2 (ja) アクリル酸の製造方法
US8232425B2 (en) Process for heterogeneously catalyzed partial gas phase oxidation of propylene to acrylic acid
US20010007043A1 (en) Continuous recovery of (meth)acrylic acid
JP4050184B2 (ja) 脂肪族カルボン酸の製造方法
US20020043454A1 (en) Continuous recovery of ( meth) acrylic acid
US5855743A (en) Process of isolation of (Meth) acrylic acid
US6407287B2 (en) Method for production of acrylic acid
US5637222A (en) Process for the fractional separation of (meth)acrylic acid from a mixture containing (meth)acrylic acid
JP2004529129A (ja) (メタ)アクリル酸を連続的に抽出する方法
JP5407475B2 (ja) (メタ)アクリル酸の製造方法
CN102639479B (zh) 用于从甘油制造丙烯醛和/或丙烯酸的方法
KR20170080642A (ko) 산화적 탈수소화에 의한 n-부텐으로부터 1,3-부타디엔의 제조 방법
US20070117998A1 (en) Process for preparing acrolein or acrylic acid or a mixture thereof from propane
KR101395517B1 (ko) 프로필렌의 부분 산화 반응 및/또는 가암모니아 산화반응에 의한 1종 이상의 최종 생성물의 제조 방법
US7589236B2 (en) Process for separating acrylic acid and benzoic acid present in a product gas mixture of a partial heterogeneously catalyzed gas phase oxidation of a C3 precursor compound of acrylic acid
JP2009263351A (ja) (メタ)アクリル酸の製造方法
US7795470B2 (en) Method for the heterogeneously catalyzed partial direct oxidation of n-propane to acrylic acid
JP5239998B2 (ja) 易重合性化合物の製造方法及び重合防止方法
JP5008271B2 (ja) アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法
JP5998063B2 (ja) (メタ)アクリル酸の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20111026

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121114

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121120

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130121

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20131008

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131213

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20131224

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140303

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5504668

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350