JP5500491B2 - 温度応答性高分子組成物 - Google Patents
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Description
例えば、部材が曝される環境温度を利用すれば、材料が透明/白濁状態変化を起こす温度(以下、曇点と呼ぶ)よりも環境温度が高いときには白濁状態となり、一方、環境温度が曇点よりも低くなると透明性が自動的に回復され、高温時にのみ自動的に遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示などの機能を発現させることができる。また、部材に発熱体および/または冷却体を付与すれば、環境温度に頼ることなく、より能動的に部材の濁度を変化させ、同様の機能を発揮させることもできる。
X. Chen, Z. Sun, J. Yin and L. An, Polymer 41, 5669 (2000) X. Lu and R. A. Weiss, Macromolecules 28, 3022 (1995)
曇点の発現と擬似的な架橋の形成をより容易とするために、共重合体Aは極性単量体として非イオン性の極性単量体を含む。かかる非イオン性の極性単量体としては、カルボキシル基を有するビニル系単量体のアルキルエステル、及び/または、水酸基を有するビニル系単量体のビニルエステルが好適である(請求項4、5)。
共重合体Aの重量平均分子量が、1000〜1200000g/molの範囲が好適である(請求項7)。
一方、本発明の温度応答用高分子組成物を構成する重合体Bは、重合体Aの水素結合性官能基と水素結合により相互作用し得る極性官能基を有する単量体を含む。かかる単量体としては、エーテル酸素を含有する極性単量体が好適である(請求項8)。
本発明の別の要旨は、以上の特徴を有する温度応答用高分子組成物を用いた、温度に応答して透明性、遮光性、遮熱性、隠蔽性、表示等の機能が変化する資材である。とりわけ、かかる温度応答用高分子組成物を、少なくとも2枚のガラス、樹脂フィルム、樹脂シートなどの間に封止した、温度に応答して透明性、遮光性、遮熱性、隠蔽性、表示等の機能が変化する資材に存する(請求項14、15)。
本発明の高分子組成物における必須成分は、少なくとも2種の重合体であり、夫々異なる2種の非ハロゲン系極性単量体からなる共重合体Aと、少なくとも1種の非ハロゲン系極性単量体からなる重合体Bである。かかる重合体種については、曇点を境界として低温で相溶、高温で相分離を起こす特徴と、少なくとも曇点以上の高温において物理的な凝集による擬似的な架橋を有する特徴を満たす限り、成分数に限定は無い。例えば、異なる3種の重合体からなる組成物を用いてもよいし、あるいは、化学的に同種ではあるが平均分子量もしくは分子量の分散が異なる重合体を複数混合したものに、別種の重合体を加えた組成物でもよい。特に、曇点を調整する上で、平均分子量が異なる複数の重合体を混合することは有効である。以下、化学的に異なる2種の重合体からなる組成物を代表例として本発明を説明するが、本発明の骨子はこれに限定されるものではない。
又、高分子組成物が0〜120℃のいずれかの温度において相分離に由来する量点を有するには、共重合体Aと重合体Bは異なる高分子である。
本発明の高分子組成物は、少なくとも曇点より高温の相分離状態において物理的な凝集による擬似的な架橋を有することを特徴とする。物理的な凝集とは、非共有結合による重合体中の単量体の会合であり、会合を起こす相互作用としては、水素結合による相互作用、極性単量体の有する双極子間の相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用などが例示される。このうち、イオン性相互作用はアイオノマーなどで利用されるが、水(湿度)の影響が大きいため好ましくない。従って、本系は塩を実質的に含まないものである。
従来技術が用いている共有結合による化学的架橋は非可逆的であり、相溶状態、相分離状態いずれにおいても存在し、相分離に伴う構造変化を大きく制約し易い。一方、物理的な凝集による擬似的な架橋は、温度や周囲に存在する他の成分との相互作用の結果、会合および解離が可逆的に変化しうるという特徴を有している。本発明はかかる特徴に着目したものであり、特に、曇点以上の高温において、物理的な凝集による擬似的な架橋を形成および/または利用せんとするものである。
本発明の高分子組成物の曇点は0℃〜120℃であることが好ましい。曇点以下では組成物に含まれる高分子が混和しており透明であるが、曇点以上では、相分離が起き組成の異なる複数の相が生成する。複数の相の組成が異なるため、屈折率に空間的な変化が生じ、光が散乱され白濁する。曇点が高いと透明/白濁状態の制御に過剰な熱が必要となることから好ましくなく、120℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下である。また、曇点が低いと、常温において透明化するために過剰な冷却が必要となるため好ましくなく、0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。とりわけ、気温、室温などの環境温度に応じて自発的に透明/白濁状態を変化させる目的においては、20℃〜50℃の範囲が好ましく、また、日射下に置かれた物体の温度に応じて透明/白濁状態を変化させる上では、20℃〜90℃が好ましい。
曇点以上の白濁の程度および/または光の反射は、相分離構造のサイズや相分離状態における各相の屈折率差に依存する。白濁の程度および/または光の反射と相分離構造のサイズの関係は単純ではないが、可視光〜近赤外線に対して有効に散乱を行わせるためには、相分離構造の特徴的なサイズが0.05μm〜100μm、より好ましくは、0.1μm〜10μm程度である。いわゆるナノ構造、ミクロ構造と呼ばれるが構造が、曇点の発現に関与するものといえる。サイズがこの範囲よりも小さくなるか、あるいは、大きくなると、可視光〜近赤外線が有効に散乱および/または反射されず、また、特に大きい場合は、不均一な状態が視認できるようになり好ましくない。なお、相分離構造の特徴的なサイズとは、電子顕微鏡、光学顕微鏡ないしは光散乱測定によって評価することができる。
かかる白濁の程度および/または光の反射の程度を高めるためには、相分離状態の各相の屈折率差が大きいほうが望ましい。このためには、組成物を構成する高分子単成分の屈折率差が大きいほうが好ましい。
相分離して得られる相分離構造のサイズは、ポリマーブレンドにおいて公知の技術、例えば相溶化剤の添加(参考文献: ポリマーアロイ−基礎と応用−(第2版)、高分子学会編、東京化学同人 1993)や、共重合体Aによる物理的な凝集による擬似的架橋を、その分子量や組成、ならびに共重合体Aおよび重合体Bの混合組成などで調整することにより変化させることができる。
なお、かかる模擬的な架橋は、高分子組成物のレオロジー的特性である貯蔵弾性率G’や損失弾性率G’’にも反映される。架橋されていない場合は、温度ともに単純に流動性が増すため好ましくない。貯蔵弾率G’や損失弾性率G’’は常法の動的粘弾性測定装置で評価することができる。
かかる組成物に含まれる重合体のうち、最もガラス転移温度が高いものについては、その単成分におけるガラス転移温度が180℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下、とりわけ好ましくは80℃以下である。また、最もガラス転移温度が低いものについては、同様に20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下である。相分離した状態の組成は、一概に規定できないが、このようなガラス転移温度を有する重合体の混合物を用いることにより、曇点以下での相溶状態、および、曇点以上の相分離状態におけるガラス転移温度を、本組成物の使用温度範囲(目安として曇点±50℃である)以下とすることができ、相溶状態、相分離状態のいずれにおいても高分子鎖の拡散が可能となるため、良好な可逆性を得やすくなる。以上のガラス転移温度の上限を超える重合体を用いると、可逆性が損なわれる危険性が強くなるため好ましくない。
組成物が結晶性の重合体を含む場合は、単成分としての融点が25℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは20℃以下である。組成物中で結晶性成分が結晶化および/または融解する温度は単成分の温度と異なるが、単成分としての融点が25℃を越えると、使用温度範囲において組成物中のかかる結晶性成分が結晶化しやすくなる。結晶化ないしは微結晶の存在は、本来透明である低温状態を白濁させたり、あるいは、透明/白濁状態変化の可逆性を失わせたりするため好ましくない。なお、微結晶を含む場合には、微結晶が融解する温度が25℃以下であることが好ましい。かかる単成分に対する結晶性成分由来の融点は、常法のDSC測定で観測することが出来るほか、結晶性成分の存在は、偏光顕微鏡観察によって判断することができる場合もある。
本発明の共重合体Aの範疇に属する共重合体の分子量は、重量平均分子量で、約1000〜1200000のものを使用することが出来る。好ましくは、約10000〜1200000、さらに好ましくは、重量平均分子量50000〜800000、より好ましくは100000〜600000程度のものが推奨される。一方、重合体Bについても、それが炭素―炭素不飽和結合が関与した重合体の場合には、分子量については、重量平均分子量で、100以上、好ましくは500以上である。又、100000以下、好ましくは30000以下、更に好ましくは10000以下である。しかし、重合体が、いわゆるポリエーテル系重合体の場合には、後述のとおり、平均分子量換算で、約100〜30000程度のもので足りる。
高分子組成物を構成する共重合体A,重合体Bの関係を、さらに吟味すれば、かかる組成物に含まれる最も低分子量の重合体の重量平均分子量をML、最も高い重合体のそれをMHとした場合、ML<10,000 且つ MH/ML>3であることが好ましい。ここで、物理的な凝集による擬似的な架橋を効果的に形成させるためには、共重合体AがMHを有する重合体に対応し、重合体BがMLを有する重合体に対応するのが好ましい。例えば共重合体Aとして、重量平均分子量300000の共重合体を選定した場合に、重合体Bとして、50000のものを選定すれば、300000/50000>3という分子量の較差の条件を満たすことになる。一般に共重合体Aの分子量が高いほど、擬似的な架橋による効果を得やすい傾向がある。
透明/白濁状態変化の速さは、高分子鎖の拡散に依存するため、上述のように、相溶状態・相分離状態双方のガラス転移温度が使用温度範囲よりも低いことに加え、MLを10,000とすることにより、拡散を速めることができ、その結果、透明/白濁状態変化の速度を速めることができる。かかる状態変化の速度を速める上で、MLは8,000以下、更には5,000以下、より好ましくは4,000以下、特に好ましくは3000以下であるが、MLが小さくなりすぎると、組成物自体が液体状の性状を有することがあり、可逆性の低下や長期使用における液垂れや、揮発等の安定性低下の恐れがあるため、MLは通常、600以上、好ましくは、1,000以上であることが好ましい。
なお、結晶性を有する場合、分子量が低下すると融点も低下する傾向にあるため、結晶性を有する成分を含む組成物では、かかる結晶性を有する成分の分子量をMLとするのが好ましい。また、曇点を調整するために、かかる範囲内において分子量を変更することも有効である。
前述したように、本発明の組成物は最低2種以上の重合体からなるが、その混合組成は曇点、応答速度、擬似的架橋の観点から調整される。2種の重合体からなる場合は、上述のMHに該当する重合体(ないしはMLに該当する重合体)の重量組成は、濁度の観点からは1%(ないしは99%)〜99%(ないしは1%)であるが、良好な濁度を得るためには、5%(ないしは95%)〜95%(ないしは5%)、より望ましくは10%(ないしは90%)〜90%(ないしは10%)である。かかる範囲外では、相分離状態における低体積分率相の体積分率が低くなりすぎ、相対的に濁度が低くなる。また、MLに該当する重合体の重量組成がかかる上限を超えると、組成物の流動性が顕著となり、可逆性の低下や長期使用における安定性の低下の恐れがあるため好ましくない。
応答速度については、曇点からの温度差に依存するために一概に規定はできないが、かかる範囲において、曇点以上の温度域にて白濁が目視で観測されるまでの時間は、通常30分以内、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内である。さらに分子量等を調整することにより、1分以内とすることも可能である。
本発明における高分子組成物を構成する共重合体Aおよび重合体Bは、いずれも、非ハロゲン系極性官能基を有する単量体(以下、極性単量体)を少なくとも2種(共重合体A)、あるいは1種(重合体B)以上含む重合体から構成される。かかる単量体種数の意義については、物理的な凝集による擬似的架橋の形成の観点で先述したとおりである。
かかる極性単量体のうち、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子等の電気的に陰性な原子を有するが、この原子に水素原子が結合している化学構造を含まない極性単量を以下「グループ1」と記す。なお、前述したガラス転移温度や融点に対する要件を満たす上において単量体に特に制約はないが、通常、芳香族基を主鎖に含む単量体よりも、含まない単量体の方がガラス転移温度が低くなる傾向を有するため、好ましい。
なお、上記のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等を単量体とした重合体とは、ポリエチレンオキシド、ポリプロプレンオキシド、ポリブチレンオキシドならびにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、の双方を指すものであり、以下においては、場合によって、これらの共重合体が含まれることもある。
これらグループ1の極性単量体、あるいは、それらの重合体が有する極性官能基は、後述するグループ2が提供する水素結合に関わる水素原子と好適に相互作用し、曇点の発現ならびに擬似的な架橋の形成に特に好ましい。
本発明における高分子組成物を構成する共重合体Aは、少なくとも2種の上記のグループ1の単量体からなる重合体、または、少なくとも2種のグループ2の単量体からなる重合体、または少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種の1種のグループ2の単量体からなる共重合体であることが好ましい。
少なくとも2種のグループ1の単量体からなる重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸プロピルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸プロピルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとPOEMの共重合体など)、ポリアルキレンオキシド共重合体(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体など)、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体など)、酢酸ビニルとエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、酢酸ビニルとPOEMの共重合体、酢酸ビニルとビニルメチルエーテルの共重合体、酢酸ビニルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体など)、カルボニル化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、ビニルピロリドンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)、カルボニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸プロピルの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体など)、(メタ)アクリル酸エステルとエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸ブチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体、(メタ)アクリル酸プロピルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)等が挙げられる。
本発明における高分子組成物を構成する重合体Bは、少なくとも1種の上記のグループ1の単量体からなる重合体、または、少なくとも1種のグループ2の単量体からなる重合体、または少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種の1種のグループ2の単量体からなる共重合体が好ましい。
中でも、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エーテル基を有するポリマー、(メタ)アクリル酸とエーテル基を有する化合物の共重合体、(メタ)アクリル酸とカルボニル基を有する化合物の共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、アミノ基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体、アミノ基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物の共重合体、アミド基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体が好ましい。
本発明における高分子組成物を構成する共重合体Aおよび重合体Bは、上記のグループ1およびグループ2で規定される単量体を用いて、例示される次のいずれかの組み合わせから、先述したように曇点発見及びその温度の設定を考慮して選択される。
より好ましい組み合わせとしてはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸が挙げられる。
より好ましい組み合わせとしてはビニルアニリンとPOEMの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体が挙げられる。
上記の如く、本発明において特に好適な高分子組成物は上記の(4)に該当し、共重合体Aが水素結合性の極性官能基を有する単量体、すなわち、グループ2の単量体を有していることが先ず好ましい。かかる水素結合性の極性官能基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、ヒドロキシル基などの官能基が例示されるが、カルボキシル基を有する単量体が好ましく、特に、カルボキシル基を有するビニル系単量体がその化学種が多く、曇点や擬似的な架橋を調整する上において好ましい。具体的には、アクリル酸および/またはメタアクリル酸などが例示される。また、共重合体Aが有するグループ1の単量体としては、適切な曇点と擬似的な架橋を効果的に得るために、既に例示をしたグループ1の非イオン性極性単量体が好ましい。このうち、カルボキシル基を有するビニル系単量体のアルキルエステル、及び/または、水酸基を有するビニル系単量体のビニルエステルなどが好適な例として挙げられる。具体的には、炭素数が1〜6のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、酢酸ビニルなどのビニルエステルなどが例示される。
このように主鎖にエーテル結合を有する重合体は、平均分子量で、約100〜30000程度のものが推奨されるが、市販のものを入手すれば、平均分子量500〜6000程度、好ましくは、500〜4000程度のものが推奨される。
以上の好適な組み合わせにおいて、共重合体Aおよび重合体Bの混合組成は、先述のとおり、共重合体Aの高分子組成物の重量組成として5〜95%であるが、より良好な曇点の範囲と擬似的な架橋の効果を得る上では、共重合体Aの重量組成は8〜95%、さらには10〜90%、特には10〜80%である。
本発明における高分子組成物を調整する方法には特に限定がなく、公知の方法で調整することができる。例えば、成分として含有する全ての重合体の共溶媒に、かかる全ての重合体を溶解・混合せしめ、これを乾燥することによって得ることができる。共溶媒は単独溶媒でも混合溶媒でもよい。あるいは、全ての重合体を無溶媒の状態において溶融混練し冷却することによって得ることもできる。かかる2種の方法を併用してもよい。溶媒を用いる場合、乾燥条件によっては溶媒が残留する他、いずれの方法においても大気中の水蒸気を吸湿し水分を含む場合がありえる。これら残留溶媒や吸湿によって混入した水が本発明の効果に影響を与えない場合において、その含有量は任意であるが、曇点や擬似的な架橋の効果に影響を与える場合、通常、重量で10%以下であることが望ましい。あるいは本発明の高分子組成物の曇点に対して、大気に開放された状態で評価された値に比較し、ガラスで封止された状態で評価された値が40℃を超えず高い状態、より好ましくは、20℃を超えず高い状態、更に好ましくは10℃を超えず高い状態とすることにより、封止された状態において実用上問題のない曇点の安定性を得ることができる。
本発明における高分子組成物には、必要に応じて、熱安定剤、紫外吸収剤、酸化防止剤、防腐剤防カビ剤等、本高分子組成物の効果を持続させる目的で各種添加剤を加えてもよい。更に、特定の波長の可視光、近赤外線、赤外線を吸収する色素や顔料等の着色剤や無機酸化物微粒子など、更なる機能付与を目的として各種添加剤を加えてもよい。更に、かかる添加剤を加えることにより、高分子組成物自体の温度を外気温度より高くして濁度や反射率を増加することも期待できる。
本発明の高分子組成物は、温度に応答して透明性、遮光性、遮熱性、隠蔽性、表示等が変化する資材に好適に用いることができる。特に、従来技術である高分子水溶液を用いる場合は極めて困難であった樹脂フィルムや樹脂シートならびに樹脂プレートなどの樹脂素材を基材にした部材や資材を可能ならしめる。かかる樹脂素材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの他、ポリカーボネート系樹脂、ナイロン系樹脂などの所謂エンジニアリングプラスチック製のシート、フィルムやプレートなどが好適に用いられる。
かかる温度応答性資材は、曇点以上の高温域において白濁し、全光線透過率の減少、拡散透過率の増加(ヘーズの増加)、可視光、近赤外線、赤外線の反射などの機能を発現する。かかる光学特性は、用途によって決められるべきであり一概に規定できないが、用途に応じた性能を得るために、本発明の高分子組成物自体の組成等を変更することも有効であり、また、高分子組成物からなる機能層の厚みを大きくすることも有効である。
(1)本発明の共重合体Aに該当ポリマーA1の合成
50mLナスフラスコ内において、モノマーであるアクリル酸(AA、和光純薬工業株式会社製)0.94重量部及びアクリル酸メチル(MA、Aldrich社製)1.12重量部、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.043重量部、溶媒であるジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)21重量部をよく混合し、室温で30分間窒素置換を行い、モノマー溶液を調製した。ついで、このモノマー溶液を60℃のオイルバス内で6時間攪拌することにより、AAおよびMAの共重合体であるポリマーA1を重合した。重合後、反応溶液をイオン交換水300mLとエタノール(純正化学株式会社製)100mLの混合溶媒に滴下して沈殿させた後、溶媒を除去することによりポリマーA1を得た。
得られたポリマーA1について、標準ポリスチレンで校正されたSEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行った結果、ポリマーA1の重量平均分子量(Mw)は約360000と見積もられた。また、得られたポリマーA1に含まれるAAとMAのモル比(AA/MA)は1H−NMR測定からAA/MA=50/50と見積もられた。さらに得られたポリマーA1についてDSC(Differential Scanning Calorimeter)測定を行った結果、ポリマーA1のガラス転移温度(Tg)は24℃と見積もられた。
10重量%のポリマーA1のエタノール溶液と本発明の重合体Bに該当する10重量%のポリプロピレングリコール(PPG1000、平均分子量1000、和光純薬工業株式会社製)のエタノール溶液を作製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液を調製した。なお、PPG1000は室温にて液体であった(融点<室温)。かかる混合溶液をガラス上に3.0重量部キャストし、これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
同様の手順により作製した温度応答性高分子組成物の動的粘弾性特性を、粘弾性測定装置(VAR−50、ジャスコインターナショナル株式会社)で評価した。具体的には、8mmφパラレルプレートを用いギャップ1mm、周波数1Hz、歪2%の条件下で15℃から2℃/minの昇温レートで昇温し貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の温度依存性を測定した。図1に示すように40℃以下では昇温するにつれて弾性率は減少したが、40℃以上では昇温するにつれて弾性率が増加したことから、高温において流動性が増すことは無く、擬似的架橋の効果が示された。
なお、作製したサンプルを相対湿度66%の雰囲気下で4日間放置した場合の含水量は、示差熱重量同時分析装置(TG−DTA6300、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)を用いて昇温速度10℃/minで昇温した時の重量変化から、5.6%と見積もられた。
上記(2)のガラス塗布サンプルをホットステージ上に乗せ、室温から30分毎に5℃ずつ昇温し、視認によりサンプルが白濁する温度を見積もることにより曇点を評価した。この結果、本系の曇点は70℃であった。次いで、サンプルを室温に放置すると無色透明に戻った。更に室温で12時間以上放置した後、再びホットステージ上で室温から30分毎に5℃ずつ昇温すると、70℃で白濁した。このように、かかる温度応答性高分子組成物が複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。なお、室温における放置時間を5分と短くしても複数回の可逆的が確認された。
特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを使い、白濁度合いの温度依存性をヘーズ測定により評価した。かかるサンプルを30分毎に10℃ずつ昇温しながらヘーズメーター(スガ試験機株式会社、HZ−2)を用いてヘーズ測定した。特性評価Aで見積もられた曇点である70℃を超えると、ヘーズは単調に増加し100℃ではヘーズが約90となった。
特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを室温に放置し、無色透明となっていることを確認した後、これを70℃のホットプレート上に置き、白濁状態が視認されるまでの時間を測定した。本サンプルは約1分後に白濁が認められた。
評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを作製し、塗布面を別途ポリオレフィンシートで被覆したサンプル準備した。すなわち、ガラスおよびポリオレフィンシートで両面が被覆された状態にした。かかるサンプルを70℃のホットプレート上に置き、4時間保持した際のヘーズの時間変化を測定した。図2に示すように、昇温後1時間でヘーズが50まで増加し、その後、一定の値を保持し続けた。4時間後のサンプルは一様に白濁しており、ムラは視認されなかった。この結果より本サンプルが曇点以上の温度に保持されても一定の白濁度合いを保持することが確認された。
特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを作製し、このサンプルを80℃で加熱した状態を6時間保持した後に室温で12時間冷却する操作を3回繰り返した結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
膜厚が薄い他は特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを70℃の状態におき、光学顕微鏡で構造を評価した。70℃で1時間保持した後と更に70℃で4時間保持した後を比較するとも構造に明確な変化は認められず、特性評価Dの結果を支持するものであった。また、同様の結果は100℃でも確認された。
10重量%のポリマーA1のエタノール溶液と10重量%のPPG1000のエタノール溶液の重量混合比を3:7として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は65℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。またガラスで両面を被覆された状態において実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は70℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
20重量%のポリマーA1のエタノール溶液と20重量%のポリプロピレングリコール(PPG2000、平均分子量2000、和光純薬工業株式会社製)のエタノール溶液の重量混合比を3:2として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。なお、PPG2000は常温で液体であった(融点<室温)。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は45℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
20重量%のポリマーA1のエタノール溶液と20重量%のポリプロピレングリコール(PPG3000、平均分子量3000、和光純薬工業株式会社製)のエタノール溶液の重量混合比を3:2として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。なお、PPG3000は常温で液体であった(融点<室温)。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は40℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA2の合成
モノマーとしてAA0.94重量部とアクリル酸エチル(EA、Aldrich社製)1.30重量部を用い、重合温度を80℃とし、沈殿溶媒としてイオン交換水300mLとエタノール100mLの混合溶媒を用いた他は実施例1と同様に重合を行い、AAおよびEAの共重合体であるポリマーA2を合成した。得られたポリマーA2についてSEC測定を行った結果、Mwは約130,000と見積もられた。また1H−NMR測定を行った結果、ポリマーA2に含有されるAAとEAのモル比(AA/EA)はAA/EA=50/50と見積もられた。DSC測定を行った結果、ポリマーA2のTgは8℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
10重量%のポリマーA2のエタノール溶液と10重量%のPPG2000のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
(3)特性評価
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は70℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。また実施例1の特性評価Cに応じて温度応答速度を評価したところ、約1分後に白濁化が視認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
10重量%のポリマーA2のエタノール溶液と10重量%のPPG3000のエタノール溶液の重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は50℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。また、実施例1の特性評価Cに応じて温度応答速度を評価したところ、約30秒後に白濁化が視認された。かかるサンプルについては、実施例1の特性評価Cに加え、さらに以下の評価を行った。まず、ホットプレート上で70℃30分間保持した後にホットプレートから離し、無色透明となるまでの時間を評価した。この結果、約2分で無色透明の状態に戻ることが確認され、特性評価Cの結果と総合すると、昇降温いずれの場合でも、透明/白濁状態変化が良好な応答速度を有することが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
さらにガラスで両面を被覆された状態において実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は55℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。また、かかる両面をガラスで被覆された状態において特性評価Cに準じて応答速度を評価したところ、約1分後に白濁化が視認された。
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA3の合成
モノマーとしてAA0.94重量部とメタクリル酸メチル(MMA、Aldrich社製)1.30重量部を用いた他は実施例5と同様に重合を行い、AAとMMAの共重合体であるポリマーA3を合成した。得られたポリマーA3についてSEC測定を行った結果、Mwは約55,000と見積もられた。また得られたポリマーA3について1H−NMR測定を行った結果、ポリマーA3に含有されるAAとMMAのモル比(AA/MMA)はAA/MMA=36/64と見積もられた。また、得られたポリマーA3についてDSC測定を行った結果、ポリマーA3のTgは58℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
10重量%のポリマーA3のエタノール溶液と10重量%のPPG2000のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
(3)特性評価
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は60℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA4の合成
モノマーとしてメタクリル酸(Aldrich社製)MAA0.94重量部とMMA1.30重量部を用いた他は実施例5と同様に重合を行い、MAAおよびMMAの共重合体であるポリマーA4を合成した。得られたポリマーA4についてDSC測定を行った結果、ポリマーA4のTgは148℃と見積もられた。
10重量%のポリマーA4のエタノール溶液と10重量%のPPG2000のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は55℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
実施例9
メタアクリル酸(MAA)とアクリル酸エチル(EA)の共重合体(EUDRAGIT L100−55、MAA:EA=1:1モル比、Mw278,000、Tg110℃、デグサジャパン株式会社製、)の10重量%のエタノール溶液とPPG2000の10重量%のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を2:3として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は40℃であった。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
メタアクリル酸(MAA)とメタアクリル酸メチル(MMA)の共重合体(EUDRAGIT L100、MAA:MMA=1:1モル比、Mw123,000、Tg約160℃、デグサジャパン株式会社製)の10重量%のエタノール溶液とPPG1000の10重量%のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:4として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行った結果、曇点は50℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA5の合成
モノマーとしてAA 0.94重量部とN−アクリロイルモルホリン(NAM、株式会社興人製)1.84重量部を用い、沈殿溶媒として0.5Lのエタノールを用いた他は実施例5と同様に重合を行い、AAとNAMの共重合体であるポリマーA5を合成した。得られたポリマーA5について、標準ポリスチレンで校正されたSEC測定を行った結果、ポリマーA5のMwは約90000と見積もられた。また、得られたポリマーA5に含まれるAAとNAMのモル比(AA/NAM)は1H−NMR測定からAA/NAM=50/50と見積もられた。さらに得られたポリマーA5についてDSC測定を行った結果、ポリマーA5のTgは75℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
20重量%のポリマーA5の水溶液と20重量%のポリエチレングリコール(PEG600、平均分子量600、和光純薬工業株式会社製)の水溶液を作製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
(3)特性評価
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は50℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
モノマーとしてAA0.75重量部、NAM2.20重量部を用いた他は実施例11と同様にし、AAとNAMの共重合体である本発明の共重合体Aに該当するポリマーA6を合成した。得られたポリマーA6についてSEC測定を行った結果、Mwは約120,000と見積もられた。またDSC測定を行った結果、ポリマーA5のTgは133℃と見積もられた。20重量%のポリマーA6の水溶液と20重量%のPEG600の水溶液を用いた他は実施例11と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は40℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
モノマーとしてAA0.56重量部、NAM2.57重量部を用いた他は実施例11と同様にし、AAとNAMの共重合体である本発明の共重合体Aに該当するポリマーA7を合成した。得られたポリマーA7についてSEC測定を行った結果、Mwは約120,000と見積もられた。またDSC測定を行った結果、ポリマーA5のTgは128℃と見積もられた。20重量%のポリマーA7の水溶液と20重量%のPEG600の水溶液を用いた他は実施例11と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は30℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
10重量%の低粘度フッ化ビニリデンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(G−101、ダイキン工業)のメチルエチルケトン(MEK、和光純薬工業株式会社製)溶液と10重量%のポリアクリル酸n−ブチル(PBA、Mw60000、Aldrich社製)のMEK溶液を調製し、それぞれを重量混合比3:7として混合した溶液をガラス上に3.0重量部キャストした。これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
同様の手順により作製した温度応答性高分子組成物の動的粘弾性特性を、実施例1に従い評価した。図3に示すように、本サンプルでは測定温度範囲においてG′及びG"は温度の上昇に伴い単調に減少した。本サンプルは架橋を有さず、温度上昇により流動性が増加する結果となり、実施例1とは対照的であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ45℃であったが、実施例1の特性評価Dに準じて70℃で4時間保持した際のヘーズの時間変化を調べたところ、図4に示すようにヘーズは変化し続け一定状態を保持しなかった。
以上から、本サンプルでは物理的架橋が発現しておらず、この結果、高温で保持すると相分離による状態変化が進行し続けることが示された。
3重量%の低粘度フッ化ビニリデンーヘキサフルオロプロピレン共重合体G−101のMEK溶液と3重量%のPBAのMEK溶液を調製し、それぞれを重量混合比2:8として混合した溶液をガラス上に3.0重量部キャストした。これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。なお、本サンプルは、レオロジー的には比較例1と同等の挙動を示した。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ55℃であったが、実施例1の特性評価Eに準じて80℃で加熱した状態を6時間保持すると、濁度の高い部分と低い部分の差を視認することができ、不均一な白濁状態となることが確認された。すなわち、本試料は高温で保持することで相分離が進行し続けた。
50mLナスフラスコ内において、低粘度フッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体G−101を2重量部、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAME−400、日本油脂株式会社製)8重量部、重合開始剤であるベンゾインメチルエーテル(Avocado Research Chemicals Ltd.製)0.2重量部を60℃で30分間混合し、モノマー溶液を調整した。
ガラス板上にシリコンラバー(厚さ1mm)を置き、その中にモノマー溶液を充填させ、上からガラス板を被せた状態で、照射強度20mW・cm−2の紫外光を10秒間照射した後、200mW・cm−2の紫外光を100秒間照射した。得られた組成物は室温で透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ45℃であったが、実施例1の特性評価Eに準じて80℃で加熱した状態を6時間保持した後に室温で12時間冷却する操作を2回繰り返すと、室温に冷却しても一部白濁したまま透明に戻らず、可逆的な温度変化を示さなくなった。
化学的架橋を導入するために、比較例3のメトキシポリエチレングリコールモノアクリレートをポリエチレングリコールジアクリレートに換えた。具体的には、低粘度フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体G−101を5重量部、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(ブレンマーADE−400、日本油脂株式会社製)5重量部、ベンゾインメチルエーテル0.2重量部を用いた他は比較例3と同様にモノマー溶液を調製した。60℃で2時間攪拌しても低粘度フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体はブレンマーADE−400に完全に溶解しなかったが、上澄み液を比較例3と同様に紫外光照射すると、得られた組成物は室温で既に白濁しており、昇温しても濁度に変化は見られなかった。
ポリアクリル酸(PAA、平均分子量5,000、和光純薬工業製)の10重量%水溶液10重量部と水酸化リチウム(Aldrich社製)の10重量%水溶液1.41重量部を混合後、ガラスシャーレ上にキャストし、予備乾燥を経た後、50℃の真空乾燥機で乾燥することによりPAAを42.5%部分中和したPAA(PAA−Li)を得た。かかるPAA−Li 1.14重量部とポリエチレングリコール(PEG600、平均分子量600、和光純薬工業株式会社製)1.0重量部を、20重量%となるようにメタノール:蒸留水の5:5の混合溶媒に溶解させ混合した溶液をガラス上にキャストした。これを室温にて少なくとも2昼夜乾燥させることにより、カルボン酸のリチウム塩を含有する温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ40℃で白濁が認められたが、同時に樹枝状の析出物が目視で確認され不均一な状態となった。かかる析出物は再度温度を低下させると消滅した。ついで、ガラスで両面を被覆したサンプルについて曇点を評価したところ、100℃以下で曇点が得られず、温度による透明/白濁状態変化をしなかった。
以上から、塩を含む上記の温度応答性高分子組成物では、析出物による不均一な概観や、被覆によって曇点が認められなくなるなどの結果となった。
10重量%のポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw = 93,000、Aldrich社製、Tg99℃)のトルエン(和光純薬工業株式会社製)溶液と10重量%のポリ酢酸ビニル(PVAc、Mw = 83,000、Aldrich社製、Tg41℃)のトルエン溶液の重量混合比を3:7として混合した溶液をガラス上に3.0重量部キャストし、これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ100℃であり、その後室温に冷却すると透明に戻った。しかしながら、再び100℃で1時間加熱すると、室温に冷却しても透明に戻らなくなった。
以上、高分子組成物に含まれる重合体のうち、最も低いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が20℃以下ではない場合、可逆性が低いことが示された。
50mLナスフラスコ内において、モノマーであるスチレン(St、東京化成工業株式会社製)4.90重量部及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、和光純薬工業株式会社製)0.39重量部、重合開始剤であるAIBN 0.01重量部、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、和光純薬工業株式会社製)5.0重量部をよく混合し、室温で30分間窒素置換を行い、モノマー溶液を調製した。ついで、このモノマー溶液を70℃のオイルバス内で6時間攪拌することにより、StおよびHEMAの共重合体であるポリマーC1を重合した。重合後、反応溶液をメタノール300mLに滴下して沈殿させた後、溶媒を除去することによりポリマーC1を得た。
得られたポリマーC1について、標準ポリスチレンで校正されたSEC測定を行った結果、Mwは74,000と見積もられた。また、ポリマーC1に含まれるStとHEMAのモル比(St/HEMA)は1H−NMR測定からSt/HEMA=90/10と見積もられた。さらにポリマーC1についてDSC測定を行った結果、Tgは97℃と見積もられた。
ポリマーC1、ポリプロピレングリコール4000(PPG4000、ポリサイエンス社製)、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(マイテックNI730S、三菱化学株式会社製)の重量混合比が50:50:1である29重量%トルエン溶液を窒素雰囲気下でガラス上にキャストして溶媒を除去した後、70℃の真空下で16時間加熱した。得られた試料の曇点は95℃であったが、室温で表面が粗く波打った状態であり、透明性が低かった。
Claims (15)
- 0〜120℃のいずれかの温度において共重合体Aと重合体Bの相分離に由来する曇点を有し、少なくとも2種の非ハロゲン系重合体からなる塩を含有しない高分子組成物であって、かかる2種の重合体が、2種以上の極性単量体からなる共重合体Aと、少なくとも1種以上の極性単量体からなり、共重合体Aとは異なる重合体Bを含み、貯蔵弾性率が40℃以上で昇温するにつれて増加することを特徴とする温度応答用高分子組成物であって、共重合体Aを構成する1種の極性単量体が水素結合性官能基としてカルボキシル基を有する単量体であり、重合体Bを構成する極性単量体が、共重合体Aが有する水素結合性官能基と水素結合可能な極性官能基を含有する温度応答用高分子組成物。
- 水素結合性官能基を有する単量体がカルボキシル基を有するビニル系単量体であることを特徴とする請求項1に記載の温度応答用高分子組成物。
- カルボキシル基を有するビニル系単量体がアクリル酸および/またはメタアクリル酸であることを特徴とする請求項2に記載の温度応答用高分子組成物。
- 共重合体Aを構成する1種の極性単量体が非イオン性の極性単量体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
- 非イオン性の極性単量体が、カルボキシル基を有するビニル系単量体のアルキルエステル、及び/または、水酸基を有するビニル系単量体のビニルエステルであることを特徴とする請求項4に記載の温度応答用高分子組成物。
- 共重合体Aが、アクリル酸および/またはメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
- 共重合体Aの重量平均分子量が、1000〜1200000g/molであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
- 重合体Bを構成する極性単量体が、共重合体Aが有する水素結合性官能基と水素結合可能な極性官能基として、エーテル結合を含有する極性単量体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
- エーテル結合を含有する極性単量体が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の温度応答用高分子組成物。
- 重合体Bの重量平均分子量が500〜100000g/molであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
- 高分子組成物に含まれる重合体のうち、最も高いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が180℃以下、且つ、最も低いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が20℃以下、且つ、結晶性を有する重合体を含む場合は、その融点が25℃以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
- 高分子組成物に含まれる最も高分子量の重合体の重量平均分子量をMH、最も低分子量の重合体の重量平均分子量をMLとした場合に、MH/ML>3かつML<10000であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
- MHを有する重合体が共重合体Aであり、MLを有する重合体が重合体Bである請求項12に記載の温度応答用高分子組成物。
- 請求項1〜13のいずれかに記載された特性を有する温度応答用高分子組成物を用いた資材。
- 請求項1〜13のいずれかに記載された特性を有する温度応答用高分子組成物を、少なくとも2枚の基材間に封止した資材。
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