JP5500491B2 - 温度応答性高分子組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、温度により透明性が可逆的に変化する高分子組成物、ならびに、それを利用した遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示等の機能を有する部材に関する。詳しくは、0〜120℃の範囲に曇点を有し、かかる曇点よりも低温側では透明性が高く、高温側では長時間を経ても白濁状態を安定に保ち、且つ昇降温による透明〜白濁変化の繰り返し性に富む高分子組成物、ならびにかかる高分子組成物を含み、温度に応答して遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示などの機能が発現する部材に関する。
温度により透明性が変化する材料は古くから知られており、高温時に可視光に対する濁度が大きくなる材料を用いた遮光・調光効果を有する部材や、さらには、遮熱効果を有する部材が提案されている。
例えば、部材が曝される環境温度を利用すれば、材料が透明/白濁状態変化を起こす温度(以下、曇点と呼ぶ)よりも環境温度が高いときには白濁状態となり、一方、環境温度が曇点よりも低くなると透明性が自動的に回復され、高温時にのみ自動的に遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示などの機能を発現させることができる。また、部材に発熱体および/または冷却体を付与すれば、環境温度に頼ることなく、より能動的に部材の濁度を変化させ、同様の機能を発揮させることもできる。
従来より、このような部材への利用が試みられている組成物としては、曇点を常温付近に調製できる高分子水系溶液が用いられていたが、これらの組成物を用いて部材を作製する場合、該組成物は部材内に封止される必要がある。しかしながら、かかる組成物が液体であるため、大面積化や長期の利用に問題があることが指摘されており、かかる部材の産業上の具現化を困難なものとしていた。
一方、上記のような高分子溶液ではなく、2種以上の高分子の混合物からなり、実質的に溶媒を含まない高分子組成物(いわゆるポリマーブレンド)において、曇点を有する系が知られている。かかるポリマーブレンドにおける曇点とは、低温側において相溶状態であった系が相分離を起こし、相分離構造による可視光の散乱が認められるようになる温度を指し、相分離温度の目安となる。ポリマーブレンドは溶媒を含まないため、曇点を境にした状態変化は、上記の高分子溶液の状態変化に比較して通常大幅に遅い。このため、ポリマーブレンドを上記の高分子溶液の代替として利用する検討は稀であったが、フッ化ビニリデン系重合体と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(以下、アクリル酸またはメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」と表記する)からなる組成物については、記録、表示や調光用途に対して、曇点を80〜270℃の範囲で調整できること(特許文献1)、少なくとも1成分を低分子量化することによって透明/白濁状態変化の応答速度を改善できること(特許文献2、3)、室温近傍において変化を得るためには少なくとも1成分のガラス転移温度(以下Tgと記す)が50℃以下であることが好ましいこと(特許文献3)などが提案された。
特開昭61−190546 特開昭61−258853 特開昭63−20363
また、更に曇点を低下させるためには、特定の低粘度フッ化ビニリデン系重合体が有効であることが開示されている(特許文献4〜8)。
特開平6−192525 特開平7−242785 特開平7−242786 特開平8−165396 特開平8−183893
特許文献6では、室温で半液状である特定の低粘度フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体とポリアルキルアクリレートからなる組成物が100℃以下の曇点を有することが開示されている。さらに特許文献4〜8では、かかるフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体を含む組成物に対し、加熱時における変形や流動を抑制するために適度な化学的架橋の導入が効果的であることが提案されている。また、架橋を導入した上で更に曇点を低下させるために、可塑剤(特許文献7)が有効であることも示されている。
曇点が100℃を下回るポリマーブレンドの他の例は限定されるが、近年になり、例えばポリビニルアセテートとポリエチレングリコールらなる高分子組成物(非特許文献1)、アルカリ金属水酸化物で部分中和されたポリアクリル酸とポリエチレングリコールからなる高分子組成物(非特許文献2)などが報告されている。しかしながら、これらの高分子組成物は、曇点を境にした透明/白濁状態変化という機能を提供するための材料として検討されたものではなく、このため、融点が高い結晶成分の結晶化が可逆性を損なわせる、および、アルカリ金属塩を含む系では、かかる塩の存在のために相分離が顕著な湿度依存性を示し、封止された状態においても良好な透明/白濁状態変化が得られないといった基本的な問題を有しており、実用的な材料ないしは部材へ適用できるものではなかった。
X. Chen, Z. Sun, J. Yin and L. An, Polymer 41, 5669 (2000) X. Lu and R. A. Weiss, Macromolecules 28, 3022 (1995)
以上のように、常温付近に曇点を有し実質的に溶媒を含まない高分子組成物に対して、透明/白濁変化を良好に行わせるために、低分子量成分や低Tg成分を利用する技術が開示されているが、一方で、特許文献4〜8にあるように、このような成分は加熱時の変形や流動につながることが知られている。変形や流動が起こりやすいことは、曇点以上にかかる高分子組成物を放置すると、通常の高分子量の高分子組成物に比較して相分離が容易に進行しやすい(すなわち、相分離構造の形成およびその成長速度が速い)ことに対応する。この結果、曇点以上に放置すると、たとえば目視が可能な巨視的な相分離構造が形成される虞もあり、高分子組成物の概観が不均一となったり、あるいは時間とともにその白濁の度合いが変化してしまい、一定の遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示等の機能を得ることが困難となる。さらに、巨視的な相分離構造が形成されるほど(すなわち、相分離が進行するほど)、曇点以下に再度冷却された場合に、透明な相溶状態に復帰するための時間が長くなる傾向を有し、あるいは実用上復帰しない虞もある。また、異なる観点においては、このような材料を基材に塗布またはラミネートした場合、流動による液垂れは白濁の一様性を失わせ好ましくない。
このため、短時間の昇降温によって透明/白濁状態変化に可逆性が認められても、曇点以上の状態に長時間保持することによって実質的に可逆性が失われることもある。たとえば、昼夜や日中の温度変化に応じて遮光・調光・遮熱・隠蔽機能などを発現させるうえでは、曇点以上の高温状態に少なくとも数時間放置された場合でも一様な白濁状態を保ち、その後も良好な繰り返し性が得られることが必要となる。前述した低分子量成分や低Tg成分を利用する従来技術によって、この課題を解決することは困難であった。
一方、前述したように、加熱時における変形や流動を抑制するために化学的架橋を導入する技術が開示されている。化学的架橋には相分離の進行を抑制する効果が期待されるものの、特許文献4、7に記載されているように、一般に化学的架橋を導入した場合には、相溶−相分離現象(すなわち、透明−白濁変化)が明確に発現されなくなる傾向がある。また化学的架橋により、組成物の表面が粗い波打った状態となり、曇点以下で素通しで見ることができる窓ガラスとして不適切であることが報告されている(特許文献9)。従って、透明−白濁変化という機能を保ちつつ相分離が過度に進行することを抑制する手段として化学的架橋は必ずしも好適ではなく、化学的架橋が有効な手段であったのは、特定の架橋剤と特定の低粘度フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体の配合効果によるものとされていた(特許文献4〜8)。
特表平9−509976
しかしながら、フッ化ビニリデン系重合体は高温加熱時に毒性のあるガスを発生するため、廃棄時の対処や環境負荷の問題がある他、高価格であることも適用範囲を限定する要因となっている。また、フッ化ビニリデン系重合体を含む高分子組成物については、化学的架橋した場合の曇点を低下させるために可塑剤の利用が提案されているが、かかる高分子組成物を樹脂基材上で利用、もしくは、樹脂基材でラミネートして利用する場合、可塑剤が樹脂基材に移行し基材の特性を悪化させる危険性もあり好ましくない。これらの観点から、フッ化ビニリデン系重合体を含まない、安全で容易に利用できる高分子組成物に対して、曇点以上に長時間放置された場合でも一様な白濁状態を保持し、且つ、良好な可逆性を実現する技術が必要とされていた。
本発明は、かかる課題の解決のために成されたものであり、0〜120℃の温度範囲において透明/白濁状態変化を呈し、且つ、単に短時間の熱履歴に対する可逆性ではなく、曇点以上に長時間放置された場合でも一様な白濁状態を保持し、且つ、そのような温度履歴を経ても透明/白濁状態変化の良好な可逆性を呈する高分子組成物を提供することを目的とした。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、0〜120℃の範囲において曇点を有する少なくとも2種の重合体からなる高分子組成物であり、少なくとも曇点より高温において、組成物を構成する重合体に含まれる単量体が物理的な凝集による擬似的な架橋を形成することを特徴とする高分子組成物を利用することにより、低Tgならびに低分子量成分を含む高分子組成物に対しても、驚くべきことに化学的架橋を施さずとも、曇点以上の高温状態に長時間放置した場合の一様な白濁状態の保持性や良好な透明/白濁状態変化の可逆性が発現されることを見出し本発明を完成させた。
すなわち本発明の要旨は、0〜120℃のいずれかの温度において共重合体Aと重合体Bの相分離に由来する曇点を有し、少なくとも2種の非ハロゲン系重合体からなる塩を含有しない高分子組成物であって、かかる2種の重合体が、2種以上の極性単量体からなる共重合体Aと、少なくとも1種以上の極性単量体からなり、共重合体Aとは異なる重合体Bを含み、貯蔵弾性率が40℃以上で昇温するにつれて増加することを特徴とする温度応答用高分子組成物であって、共重合体Aを構成する1種の極性単量体が水素結合性官能基としてカルボキシル基を有する単量体であり、重合体Bを構成する極性単量体が、共重合体Aが有する水素結合性官能基と水素結合可能な極性官能基を含有する温度応答用高分子組成物に存する。共重合体Aに含まれる極性単量体の少なくとも1種が物理的な凝集による擬似的な架橋を形成し、曇点以上での過度な相分離の進行を抑制する。また、ハロゲンを含有しないこと、および、ポリアクリル酸の部分中和物のような塩含有物を含まないことにより、従来技術の課題を克服することができる(請求項1)。
共重合体Aは、極性単量体として水素結合性官能基を有する単量体を含むことが好ましい。これにより、曇点の発現と擬似的な架橋が形成しやすくなる。かかる水素結合性官能基を有する単量体としては、カルボキシル基を有するビニル系単量体が好ましく、より具体的には、アクリル酸および/またはメタアクリル酸である(請求項2、3)。
曇点の発現と擬似的な架橋の形成をより容易とするために、共重合体Aは極性単量体として非イオン性の極性単量体を含む。かかる非イオン性の極性単量体としては、カルボキシル基を有するビニル系単量体のアルキルエステル、及び/または、水酸基を有するビニル系単量体のビニルエステルが好適である(請求項4、5)。
従って、共重合体Aとしては、アクリル酸および/またはメタアクリル酸と、アクリル酸のアルキルエステルおよび/またはメタアクリル酸のアルキルエステルの共重合体が好適である(請求項)。
共重合体Aの重量平均分子量が、1000〜1200000g/molの範囲が好適である(請求項)。
一方、本発明の温度応答用高分子組成物を構成する重合体Bは、重合体Aの水素結合性官能基と水素結合により相互作用し得る極性官能基を有する単量体を含む。かかる単量体としては、エーテル酸素を含有する極性単量体が好適である(請求項)。
具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドから選ばれる少なくとも1種の極性単量体の単独重合体または2種以上の極性単量体の共重合体が好適である(請求項)。なお、かかる重合体は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオイシド、ポリブチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどを含むものである。重合体Bの重量平均分子量が500〜100000g/molであることが好ましい(請求項10)。
本発明の温度応答用高分子組成物に含まれる重合体のうち、最も高いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が180℃以下、且つ、最も低いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が20℃以下、且つ、結晶性を有する重合体を含む場合は、その融点が25℃以下である。これにより、曇点を境にした状態変化において、結晶化やガラス転移が伴わず、可逆性を得るために必要である(請求項11)。
また、本発明の温度応答用高分子組成物に含まれる最も高分子量の重合体の重量平均分子量をMH、最も低分子量の重合体の重量平均分子量をMLとした場合に、MH/ML>3 かつ ML<10000である。これにより、曇点を境にした状態変化において良好な応答速度を得ることができる(請求項12)。
なお、共重合体AがMHを有する重合体に対応し、重合体BがMLを有する重合体に対応することが好ましい。これにより擬似的な架橋の形成がより容易となる(請求項13)。
本発明の別の要旨は、以上の特徴を有する温度応答用高分子組成物を用いた、温度に応答して透明性、遮光性、遮熱性、隠蔽性、表示等の機能が変化する資材である。とりわけ、かかる温度応答用高分子組成物を、少なくとも2枚のガラス、樹脂フィルム、樹脂シートなどの間に封止した、温度に応答して透明性、遮光性、遮熱性、隠蔽性、表示等の機能が変化する資材に存する(請求項14、15)。
本発明によれば、常温付近において曇点を有し、曇点以上の高温状態に長時間放置された場合に一様な白濁状態を保持し、且つ、そのような温度履歴を経ても透明/白濁状態変化の良好な可逆性および速い温度応答性を示す実質的に溶媒を含まない非ハロゲン系高分子組成物が提供される。かかる組成物は、ガラスや樹脂基材等に好適に積層またはラミネートすることができ、高分子溶液や特定のフッ化ビニリデン系重合体を利用した従来技術では不可能もしくは課題が多かった、温度に応答して遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示などの機能が発現する部材や資材の提供が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
<必須成分>
本発明の高分子組成物における必須成分は、少なくとも2種の重合体であり、夫々異なる2種の非ハロゲン系極性単量体からなる共重合体Aと、少なくとも1種の非ハロゲン系極性単量体からなる重合体Bである。かかる重合体種については、曇点を境界として低温で相溶、高温で相分離を起こす特徴と、少なくとも曇点以上の高温において物理的な凝集による擬似的な架橋を有する特徴を満たす限り、成分数に限定は無い。例えば、異なる3種の重合体からなる組成物を用いてもよいし、あるいは、化学的に同種ではあるが平均分子量もしくは分子量の分散が異なる重合体を複数混合したものに、別種の重合体を加えた組成物でもよい。特に、曇点を調整する上で、平均分子量が異なる複数の重合体を混合することは有効である。以下、化学的に異なる2種の重合体からなる組成物を代表例として本発明を説明するが、本発明の骨子はこれに限定されるものではない。
又、高分子組成物が0〜120℃のいずれかの温度において相分離に由来する量点を有するには、共重合体Aと重合体Bは異なる高分子である。
<擬似的架橋>
本発明の高分子組成物は、少なくとも曇点より高温の相分離状態において物理的な凝集による擬似的な架橋を有することを特徴とする。物理的な凝集とは、非共有結合による重合体中の単量体の会合であり、会合を起こす相互作用としては、水素結合による相互作用、極性単量体の有する双極子間の相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用などが例示される。このうち、イオン性相互作用はアイオノマーなどで利用されるが、水(湿度)の影響が大きいため好ましくない。従って、本系は塩を実質的に含まないものである。
従来技術が用いている共有結合による化学的架橋は非可逆的であり、相溶状態、相分離状態いずれにおいても存在し、相分離に伴う構造変化を大きく制約し易い。一方、物理的な凝集による擬似的な架橋は、温度や周囲に存在する他の成分との相互作用の結果、会合および解離が可逆的に変化しうるという特徴を有している。本発明はかかる特徴に着目したものであり、特に、曇点以上の高温において、物理的な凝集による擬似的な架橋を形成および/または利用せんとするものである。
本発明の高分子組成物において、異なる極性単量体を有する共重合体Aは、次のいずかの作用により擬似的な架橋を担うと推察される。(ア)曇点より低温の状態において共重合体Aと重合体Bは相溶しているが、曇点より高温において、共重合体Aの極性単量体の少なくとも1種が重合体Bの極性単量体と相溶できず凝集し、擬似的な架橋点を形成する。かかる擬似的な架橋の形成が相分離の進行を適度に抑制する。(イ)曇点より低温の状態において共重合体Aと重合体Bは相溶しているが、共重合体Aの極性単量体の少なくとも1種が重合体Bの極性単量体と相溶できず擬似的な架橋を形成する。曇点より高温において、かかる擬似的な架橋が保持され、相分離の進行を適度に抑制する。
なお、本発明の効果を損なわない範囲において、化学的な架橋を併用することも可能である。但し、架橋剤により化学的架橋を形成する場合、高分子組成物における架橋剤の含有量は0.5重量%より低いことが好ましい。より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。ここで架橋剤の含有量が多すぎると、濁度変化の減少や、表面が粗い波打った状態となるため組成物の透明性が低下するなどの恐れがあり、好ましくない。
<曇点>
本発明の高分子組成物の曇点は0℃〜120℃であることが好ましい。曇点以下では組成物に含まれる高分子が混和しており透明であるが、曇点以上では、相分離が起き組成の異なる複数の相が生成する。複数の相の組成が異なるため、屈折率に空間的な変化が生じ、光が散乱され白濁する。曇点が高いと透明/白濁状態の制御に過剰な熱が必要となることから好ましくなく、120℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下である。また、曇点が低いと、常温において透明化するために過剰な冷却が必要となるため好ましくなく、0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。とりわけ、気温、室温などの環境温度に応じて自発的に透明/白濁状態を変化させる目的においては、20℃〜50℃の範囲が好ましく、また、日射下に置かれた物体の温度に応じて透明/白濁状態を変化させる上では、20℃〜90℃が好ましい。
<相分離構造>
曇点以上の白濁の程度および/または光の反射は、相分離構造のサイズや相分離状態における各相の屈折率差に依存する。白濁の程度および/または光の反射と相分離構造のサイズの関係は単純ではないが、可視光〜近赤外線に対して有効に散乱を行わせるためには、相分離構造の特徴的なサイズが0.05μm〜100μm、より好ましくは、0.1μm〜10μm程度である。いわゆるナノ構造、ミクロ構造と呼ばれるが構造が、曇点の発現に関与するものといえる。サイズがこの範囲よりも小さくなるか、あるいは、大きくなると、可視光〜近赤外線が有効に散乱および/または反射されず、また、特に大きい場合は、不均一な状態が視認できるようになり好ましくない。なお、相分離構造の特徴的なサイズとは、電子顕微鏡、光学顕微鏡ないしは光散乱測定によって評価することができる。
本発明の高分子組成物においては、擬似的な架橋の存在により相分離の進行が抑制されるため、相分離の結果生じる構造の成長は一定の状態で実質上止まるか、あるいは、極めてその成長が遅くなる。従って、かかる擬似的な架橋による特徴は、相分離構造の時間変化を直接確認するか、および/または、次の方法によって確認することができる。本発明の高分子組成物を薄膜化し曇点以上の温度に放置した場合に、相分離構造に由来する濁度や透過率などの該高分子組成物の光学的特性は、初期は変化するものの時間とともに一定値をとるようになり、実質的に変化が見られなくなる。かかる濁度や透過率などの光学的特性が実質的に一定となるまでに要する時間は一般に温度に依存するため一概に規定できないが、通常、3時間以内、好ましくは2時間以内である。また、かかる光学的特性が実質上一定となる持続期間は少なくとも1時間以上、より好ましくは2時間以上である。
かかる白濁の程度および/または光の反射の程度を高めるためには、相分離状態の各相の屈折率差が大きいほうが望ましい。このためには、組成物を構成する高分子単成分の屈折率差が大きいほうが好ましい。
相分離して得られる相分離構造のサイズは、ポリマーブレンドにおいて公知の技術、例えば相溶化剤の添加(参考文献: ポリマーアロイ−基礎と応用−(第2版)、高分子学会編、東京化学同人 1993)や、共重合体Aによる物理的な凝集による擬似的架橋を、その分子量や組成、ならびに共重合体Aおよび重合体Bの混合組成などで調整することにより変化させることができる。
なお、かかる模擬的な架橋は、高分子組成物のレオロジー的特性である貯蔵弾性率G’や損失弾性率G’’にも反映される。架橋されていない場合は、温度ともに単純に流動性が増すため好ましくない。貯蔵弾率G’や損失弾性率G’’は常法の動的粘弾性測定装置で評価することができる。
<ガラス転移温度>
かかる組成物に含まれる重合体のうち、最もガラス転移温度が高いものについては、その単成分におけるガラス転移温度が180℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下、とりわけ好ましくは80℃以下である。また、最もガラス転移温度が低いものについては、同様に20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下である。相分離した状態の組成は、一概に規定できないが、このようなガラス転移温度を有する重合体の混合物を用いることにより、曇点以下での相溶状態、および、曇点以上の相分離状態におけるガラス転移温度を、本組成物の使用温度範囲(目安として曇点±50℃である)以下とすることができ、相溶状態、相分離状態のいずれにおいても高分子鎖の拡散が可能となるため、良好な可逆性を得やすくなる。以上のガラス転移温度の上限を超える重合体を用いると、可逆性が損なわれる危険性が強くなるため好ましくない。
<結晶性成分の融点>
組成物が結晶性の重合体を含む場合は、単成分としての融点が25℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは20℃以下である。組成物中で結晶性成分が結晶化および/または融解する温度は単成分の温度と異なるが、単成分としての融点が25℃を越えると、使用温度範囲において組成物中のかかる結晶性成分が結晶化しやすくなる。結晶化ないしは微結晶の存在は、本来透明である低温状態を白濁させたり、あるいは、透明/白濁状態変化の可逆性を失わせたりするため好ましくない。なお、微結晶を含む場合には、微結晶が融解する温度が25℃以下であることが好ましい。かかる単成分に対する結晶性成分由来の融点は、常法のDSC測定で観測することが出来るほか、結晶性成分の存在は、偏光顕微鏡観察によって判断することができる場合もある。
<分子量>
本発明の共重合体Aの範疇に属する共重合体の分子量は、重量平均分子量で、約1000〜1200000のものを使用することが出来る。好ましくは、約10000〜1200000、さらに好ましくは、重量平均分子量50000〜800000、より好ましくは100000〜600000程度のものが推奨される。一方、重合体Bについても、それが炭素―炭素不飽和結合が関与した重合体の場合には、分子量については、重量平均分子量で、100以上、好ましくは500以上である。又、100000以下、好ましくは30000以下、更に好ましくは10000以下である。しかし、重合体が、いわゆるポリエーテル系重合体の場合には、後述のとおり、平均分子量換算で、約100〜30000程度のもので足りる。
高分子組成物を構成する共重合体A,重合体Bの関係を、さらに吟味すれば、かかる組成物に含まれる最も低分子量の重合体の重量平均分子量をML、最も高い重合体のそれをMHとした場合、ML<10,000 且つ MH/ML>3であることが好ましい。ここで、物理的な凝集による擬似的な架橋を効果的に形成させるためには、共重合体AがMHを有する重合体に対応し、重合体BがMLを有する重合体に対応するのが好ましい。例えば共重合体Aとして、重量平均分子量300000の共重合体を選定した場合に、重合体Bとして、50000のものを選定すれば、300000/50000>3という分子量の較差の条件を満たすことになる。一般に共重合体Aの分子量が高いほど、擬似的な架橋による効果を得やすい傾向がある。
透明/白濁状態変化の速さは、高分子鎖の拡散に依存するため、上述のように、相溶状態・相分離状態双方のガラス転移温度が使用温度範囲よりも低いことに加え、MLを10,000とすることにより、拡散を速めることができ、その結果、透明/白濁状態変化の速度を速めることができる。かかる状態変化の速度を速める上で、MLは8,000以下、更には5,000以下、より好ましくは4,000以下、特に好ましくは3000以下であるが、MLが小さくなりすぎると、組成物自体が液体状の性状を有することがあり、可逆性の低下や長期使用における液垂れや、揮発等の安定性低下の恐れがあるため、MLは通常、600以上、好ましくは、1,000以上であることが好ましい。
また、高分子量成分の分子量は、MH/ML>3とすることにより、相図を組成に対し非対象化させ、相分離した状態の2相の組成差を大きくする上で有効である。この結果、相分離状態で生成する2相の屈折率差が大きくなり、より白濁しやすくなる。この観点では、MH/ML>5、更には、MH/ML>10、特にはMH/ML>20がより好ましいが、MHが大きくなると拡散が遅くなるため、MHは大きくとも1,200,000である。好ましくは、1,000,000以下、さらに好ましくは800,000以下、特に好ましくは600,000以下である。なお、本発明の効果を損なわない範囲において、化学的な架橋を併用することも可能だが、この場合、架橋された成分が最も高分子量となり、従ってMHは1,200,000を越えてもよい。
なお、結晶性を有する場合、分子量が低下すると融点も低下する傾向にあるため、結晶性を有する成分を含む組成物では、かかる結晶性を有する成分の分子量をMLとするのが好ましい。また、曇点を調整するために、かかる範囲内において分子量を変更することも有効である。
<混合組成>
前述したように、本発明の組成物は最低2種以上の重合体からなるが、その混合組成は曇点、応答速度、擬似的架橋の観点から調整される。2種の重合体からなる場合は、上述のMHに該当する重合体(ないしはMLに該当する重合体)の重量組成は、濁度の観点からは1%(ないしは99%)〜99%(ないしは1%)であるが、良好な濁度を得るためには、5%(ないしは95%)〜95%(ないしは5%)、より望ましくは10%(ないしは90%)〜90%(ないしは10%)である。かかる範囲外では、相分離状態における低体積分率相の体積分率が低くなりすぎ、相対的に濁度が低くなる。また、MLに該当する重合体の重量組成がかかる上限を超えると、組成物の流動性が顕著となり、可逆性の低下や長期使用における安定性の低下の恐れがあるため好ましくない。
一例の仕様を明示するなら、共重合体Aが高分子量MHであり、重合体Bが低分子量MLの場合に、例えば、重合体Aが40〜60重量%からなり、重合体Bが60〜40重量%からなる高分子組成物の仕様で考えられることは、この様態は、共重合体Aと重合体Bとが、ほぼ等量の仕様においていわゆる共連結型の相分離構造をとる可能性がある。一方共重合体Aを99重量%〜60重量%、重合体Bを1〜40重量%の高分子組成物の仕様の場合に、少ない方法の重合体Bが多い共重合体A中にほぼ球状に分散した相分離構造になる傾向が考えられる。ということは、高分子組成物の曇点発現の温度をいかなる温度に設定するかという設計を考慮して、決めることになる。そのミクロのまたはナノの相分離構造の状態が曇点の指標であるヘーズに影響をする。したがって、ミクロのまたはナノの相分離構造発現の設計には、共重合体Aと重合体Bと極性モノマーの選定による重合体の種類、分子量および配合量を吟味してポリマーアロイまたは複合材料として、多少の試行錯誤も加えながら材料設計をすべきものである。
応答速度については、曇点からの温度差に依存するために一概に規定はできないが、かかる範囲において、曇点以上の温度域にて白濁が目視で観測されるまでの時間は、通常30分以内、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内である。さらに分子量等を調整することにより、1分以内とすることも可能である。
一方、物理的な凝集による擬似的な架橋を効率的に形成させるためには、上述のMHに該当する重合体を共重合体Aとした場合、相対的にその重量組成が高いほうが良いが、この場合、MLに該当する重合体である重合体Bの重量組成が低くなり、透明/白濁変化の応答速度に弊害が及ぶ虞がある。このため、通常、MHに該当する重合体である共重合体Aの重量組成を10〜90%の範囲とし、かかる範囲で所望の曇点が得られない場合は、両重合体の分子量による調整を併用することも効果的である。なお、共重合体Aの重量組成が低い場合に、良好な擬似的架橋の効果を得るためには、共重合体Aを高分子量化することが好ましい。
<極性単量体>
本発明における高分子組成物を構成する共重合体Aおよび重合体Bは、いずれも、非ハロゲン系極性官能基を有する単量体(以下、極性単量体)を少なくとも2種(共重合体A)、あるいは1種(重合体B)以上含む重合体から構成される。かかる単量体種数の意義については、物理的な凝集による擬似的架橋の形成の観点で先述したとおりである。
かかる極性単量体のうち、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子等の電気的に陰性な原子を有するが、この原子に水素原子が結合している化学構造を含まない極性単量を以下「グループ1」と記す。なお、前述したガラス転移温度や融点に対する要件を満たす上において単量体に特に制約はないが、通常、芳香族基を主鎖に含む単量体よりも、含まない単量体の方がガラス転移温度が低くなる傾向を有するため、好ましい。
グループ1の具体例としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、N−アクリロイルモルホリン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアクリテート、メトキシポリプロピレングリコールモノメタアクリテート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(POEM)、等のエーテル基を有する化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イタコン酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル等の不飽和カルボン酸エステル(以上において、アクリレートおよびメタアクリレートを併せて(メタ)アクリレートと表記した);酢酸ビニル、安息香酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニルエステル;メチルビニルケトン、ビニルピロリドン等のカルボニル化合物などが挙げられる。
なお、上記のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等を単量体とした重合体とは、ポリエチレンオキシド、ポリプロプレンオキシド、ポリブチレンオキシドならびにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、の双方を指すものであり、以下においては、場合によって、これらの共重合体が含まれることもある。
これらグループ1の極性単量体、あるいは、それらの重合体が有する極性官能基は、後述するグループ2が提供する水素結合に関わる水素原子と好適に相互作用し、曇点の発現ならびに擬似的な架橋の形成に特に好ましい。
一方、同じく電気的に陰性な原子を有し、この原子に水素原子が結合している化学構造を少なくとも1つ有する単量体を以下「グループ2」と記す。かかるグループ2は、水素結合に関わる水素原子(プロトン)を提供することが可能な単量体であり、すなわち、水素結合性官能基を有する単量体である。なお、グループ1同様に、ガラス転移温度や融点に対する要件を満たす上において単量体に特に制約はないが、通常、芳香族基を主鎖に含む単量体よりも、含まない単量体の方がガラス転移温度が低くなる傾向を有するため、好ましい。
グループ2の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸(以下、併せて「(メタ)アクリル酸」と表記する。)及びクロトン酸等のモノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸等のジカルボン酸などが挙げられる。ただし、これらの繰り返し単位のアルカリ金属(Li、Naなど)塩やアルカリ土類金属(Ca、Mgなど)塩を含む高分子では、吸湿による状態変化(吸収された水によるかかる塩の解離や、解離したイオンと他の成分とのコンプレックス形成およびその析出による不均一な状態の発現など)や相挙動の変化が大きいため、本発明に用いる高分子としては適さない。塩を含むことが好ましくないことは前述の通りである。従って、本発明の高分子組成物としては、実質的に塩を含まない組成物を用いる必要がある。但し、不純物としての混入もあり得るため、本発明の効果を妨げない範囲での混入は許容され、通常、塩としての単量体の分子量を用いて算出されるモル含有率が、全重合体中10%以下、より好ましくは1%以下である。
グループ2の他の具体例としては、ビニルアニリン等のアミン;アクリルアミド、Nイソプロピルアクリルアミド、Nビニルホルムアミド等のアミド;グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、リシンなどのアミノ酸;ビニルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する化合物が挙げられる。
<共重合体A>
本発明における高分子組成物を構成する共重合体Aは、少なくとも2種の上記のグループ1の単量体からなる重合体、または、少なくとも2種のグループ2の単量体からなる重合体、または少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種の1種のグループ2の単量体からなる共重合体であることが好ましい。
少なくとも2種のグループ1の単量体からなる重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸プロピルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸プロピルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとPOEMの共重合体など)、ポリアルキレンオキシド共重合体(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体など)、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体など)、酢酸ビニルとエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、酢酸ビニルとPOEMの共重合体、酢酸ビニルとビニルメチルエーテルの共重合体、酢酸ビニルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体など)、カルボニル化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、ビニルピロリドンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)、カルボニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸プロピルの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体など)、(メタ)アクリル酸エステルとエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸ブチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体、(メタ)アクリル酸プロピルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)等が挙げられる。
少なくとも2種のグループ2の単量体からなる重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体、アクリル酸とイタコン酸の共重合体など)、アミド基を有する共重合体(例えば、アクリルアミドとイソプロピルアクリルアミドの共重合体など)、(メタ)アクリル酸とアミドの共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸とアクリルアミドの共重合体、(メタ)アクリル酸とイソプロピルアクリルアミドの共重合体など)、水酸基を有する単量体の共重合体(例えば、ビニルアルコールと2−ヒドルキシエチル(メタ)アクリレートの共重合体など)等が挙げられる。
少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種の1種のグループ2の単量体からなる共重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸とカルボニル基を有する化合物の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸とN−ビニルピロリドンの共重合体など)、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルプロピルの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体など)、アミノ基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物の共重合体(例えば、ビニルアニリンとビニルピロリドンの共重合体など)、アミノ基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)、アミド基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、アクリルアミドとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)等が挙げられる。
このうち好ましくは、少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種の1種のグループ2の単量体からなる共重合体である。中でも、(メタ)アクリル酸とカルボニル基を有する化合物の共重合体、(メタ)アクリル酸とエーテル基を有する化合物の共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、アミノ基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物の共重合体、アミノ基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体、アミド基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体が好ましい。
<重合体B>
本発明における高分子組成物を構成する重合体Bは、少なくとも1種の上記のグループ1の単量体からなる重合体、または、少なくとも1種のグループ2の単量体からなる重合体、または少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種の1種のグループ2の単量体からなる共重合体が好ましい。
少なくとも1種の上記のグループ1の単量体からなる重合体の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドなど)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルなど)、エーテル基を有するポリマー(例えば、ポリN−アクリロイルモルホリン、ポリビニルメチルエーテルなど)等が挙げられる。
少なくとも1種のグループ2の単量体からなる重合体の具体例としては、水酸基を有するポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、アミド基を有するポリマー(例えば、ポリアクリルアミドなど)、ポリ(メタ)アクリル酸(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリシトラコン酸など)、等が挙げられる。
少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種の1種のグループ2の単量体からなる共重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸とエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)、(メタ)アクリル酸とカルボニル基を有する化合物の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸とビニルピロリドンの共重合体など)、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルプロピルの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体など)、アミノ基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体、ビニルアニリンとビニルメチルエーテルの共重合体など)、アミノ基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物の共重合体(例えば、ビニルアニリンとビニルピロリドンの共重合体など)、アミド基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体(例えば、アクリルアミドとN−アクリロイルモルホリンの共重合体など)等が挙げられる。
このうち好ましくは、少なくとも1種の上記のグループ1の単量体からなる重合体が好ましい。
中でも、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エーテル基を有するポリマー、(メタ)アクリル酸とエーテル基を有する化合物の共重合体、(メタ)アクリル酸とカルボニル基を有する化合物の共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、アミノ基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体、アミノ基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物の共重合体、アミド基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体が好ましい。
<高分子組成物>
本発明における高分子組成物を構成する共重合体Aおよび重合体Bは、上記のグループ1およびグループ2で規定される単量体を用いて、例示される次のいずれかの組み合わせから、先述したように曇点発見及びその温度の設定を考慮して選択される。
(1)グループ1の単量体2種からなる共重合体A(2種以上でもよい)と、グループ1の単量体(1種でも2種以上でもよい)からなり共重合体Aとは異なる重合体B、が混合された組成物(なお、共重合体Aと重合体Bが異なる重合体である限りにおいては、同種の単量体を含んでもよい)。
(2)グループ2の単量体2種からなる共重合体A(2種以上でもよい)と、グループ2の単量体(1種でも2種以上でもよい)からなり共重合体Aとは異なる重合体B、が混合された組成物(なお、共重合体Aと重合体Bが異なる重合体である限りにおいては、同種の単量体を含んでもよい)。
(3)グループ1の単量体2種からなる共重合体A(2種以上でもよい)、とグループ2の単量体(1種でも2種以上でもよい)からなる重合体B、が混合された組成物。
(4)少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種のグループ2の単量体からなる共重合体Aとグループ1の単量体(1種でも2種以上でもよい)からなる重合体B(なお、共重合体A,重合体Bがグループ1の同種の単量体を含んでもよい)が混合された組成物。
(5)少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種のグループ2の単量体からなる共重合体Aとグループ2の単量体(1種でも2種以上でもよい)からなる重合体B(なお、共重合体A,重合体Bがグループ2の同種の単量体を含んでもよい)が混合された組成物。
(6)少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種のグループ2の単量体からなる共重合体Aと少なくとも1種のグループ1の単量体と少なくとも1種のグループ2の単量体からなる共重合体Aとは異なる重合体Bが混合された組成物(なお、共重合体A,重合体Bが同種の単量体を含んでいてもよい)。
以下、(1)〜(6)について夫々例示するが、これに限定されるものではない。
(1)の組み合わせの例としては、共重合体A、重合体Bとして夫々(共重合体A/重合体Bと記載した)、(メタ)アクリル酸エステル共重合体/ポリ酢酸ビニル(例えば、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸プロピルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチルとPOEMの共重合体/ポリ酢酸ビニルなど)、ポリアルキレンオキシド共重合体/ポリ酢酸ビニル(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体/ポリ酢酸ビニルなど)、ポリアルキレンオキシド共重合体/ポリビニルメチルエーテル(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体/ポリビニルメチルエーテルなど)、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、ビニルメチルエーテルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリエチレンオキシドなど)、酢酸ビニルとエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、酢酸ビニルとPOEMの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニルとビニルメチルエーテルの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸メチルなど)、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/エーテル基を有するポリマー(例えば、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリン、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリビニルメチルエーテルなど)、カルボニル化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、ビニルピロリドンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリエチレンオキシドなど)、カルボニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリエチレンオキシド、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸プロピルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリプロピレンオキシドなど)、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/エーテル基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリンなど)、(メタ)アクリル酸エステルとエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、(メタ)アクリル酸ブチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸ブチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸メチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリエチレンオキシドなど)等が挙げられる。
より好ましい組み合わせとしてはポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体/ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルとエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレンオキシド共重合体/ポリ酢酸ビニルが挙げられる。さらに好ましい組み合わせとしてはポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体/ポリ酢酸ビニルが挙げられる。
より好ましい組み合わせの具体例としては(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸プロピルと(メタ)メタアクリル酸メチルの共重合体/ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリ酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチルとPOEMの共重合体/ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルとPOEMの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸メチル、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロック共重合体/ポリ酢酸ビニルが挙げられる。
(2)の組み合わせの例としては、(メタ)アクリル酸共重合体/水酸基を有するポリマー(例えば、アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体/ポリビニルアルコール、アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体/ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、アミド基を有する共重合体/水酸基を有するポリマー(例えば、アクリルアミドとイソプロピルアクリルアミドの共重合体/ポリビニルアルコール、アクリルアミドとイソプロピルアクリルアミドの共重合体/ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸共重合体/アミド基を有するポリマー(例えば、アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体/ポリアクリルアミドなど)、(メタ)アクリル酸とアミドの共重合体/水酸基を有するポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸とアクリルアミドの共重合体/ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸とイソプロピルアクリルアミドの共重合体/ポリ2−ヒドルキシエチル(メタ)アクリレートなど)、水酸基を有する単量体の共重合体/(メタ)アクリル酸(例えば、ビニルアルコールと2−ヒドルキシエチル(メタ)アクリレートの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
(3)の組み合わせの例としては、(1)で例示した共重合体Aと(2)で例示した重合体Bの組み合わせが挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ブチルとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸等である。
より好ましい組み合わせとしてはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸が挙げられる。
(4)の組み合わせの例としては、(メタ)アクリル酸とエーテル基ないしはカルボニル基を有する化合物の共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリブチレンオキシド、(メタ)アクリル酸とN−ビニルピロリドンの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸とN−ビニルピロリドンの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸とN−ビニルピロリドンの共重合体/ポリブチレンオキシドなど)、(メタ)アクリル酸とエーテル基ないしはカルボニル基を有する化合物の共重合体/エーテル基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸とビニルピロリドンの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリビニルメチルエーテル、(メタ)アクリル酸とビニルピロリドンの共重合体/ポリビニルメチルエーテルなど)、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリブチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリブチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルプロピルの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸プロピルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸プロピルの共重合体/ポリブチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリブチレンオキシドなど)、アミノ基を有する化合物とエーテル基ないしはカルボニル基を有する化合物の共重合体/エーテル基を有する化合物(例えば、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリン、ビニルアニリンとビニルメチルエーテルの共重合体/ポリN−アクリロイルモルホリン、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリビニルメチルエーテル、ビニルアニリンとビニルメチルエーテルの共重合体/ポリビニルメチルエーテルなど)、アミノ基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリエチレンオキシド、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリプロピレンオキシドなど)、アミド基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリアルキレンオキシド(例えば、アクリルアミドとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリエチレンオキシド、アクリルアミドとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリプロピレンオキシドなど)等が挙げられる。
より好ましい組み合わせは、上記の(メタ)アクリル酸とエーテル基ないしはカルボニル基を有する化合物の共重合体/ポリアルキレンオキシドや(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/ポリアルキレンオキシド等であり、例えば(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリブチレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリブチレンオキシドなどが例示される。
このうち更に好ましい組み合わせとしては(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルの共重合体/ポリプロピレンオキシド、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体/ポリプロピレンオキシドなどが挙げられる。
(5)の組み合わせの例としては、(メタ)アクリル酸とエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸(例えば、(メタ)アクリル酸とPOEMの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体など)、アミノ基を有する化合物とエーテル基を有する化合物の共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸(例えば、ビニルアニリンとPOEMの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体など)、(メタ)アクリル酸とエーテル基を有する化合物の共重合体/水酸基を有するポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸とN−アクリロイルモルホリンの共重合体/ポリビニルアルコールなど)等が挙げられる。
より好ましい組み合わせとしてはビニルアニリンとPOEMの共重合体/ポリ(メタ)アクリル酸、ビニルアニリンとN−アクリロイルモルホリンの共重合体/アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体が挙げられる。
(6)の組み合わせの例としては、エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体(例えば、N−アクリロイルモルホリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/POEMと(メタ)アクリル酸の共重合体など)、エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物と水酸基を有する化合物の共重合体(例えば、N−アクリロイルモルホリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートと2−ヒドロシエチル(メタ)アクリレートの共重合体など)、エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物とアミドを有する化合物の共重合体(例えば、N−アクリロイルモルホリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとアクリルアミドの共重合体など)、エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物とアミンの共重合体(例えば、N−アクリロイルモルホリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとビニルアニリンの共重合体など)、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/エーテル基を有する化合物と水酸基を有する化合物の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートと2−ヒドロシエチル(メタ)アクリレートの共重合体など)、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/エーテル基を有する化合物とアミドを有する化合物の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとアクリルアミドの共重合体など)、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/エーテル基を有する化合物とアミンの共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとビニルアニリンの共重合体など)、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体(例えば、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸の共重合体/POEMと(メタ)アクリル酸の共重合体など)、カルボニル化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体(例えば、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸の共重合体/POEMと(メタ)アクリル酸の共重合体など)等が挙げられる。
より好ましい組み合わせとしては、エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体、エーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の共重合体/エーテル基を有する化合物と水酸基を有する化合物の共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体/エーテル基を有する化合物と水酸基を有する化合物の共重合体等が挙げられる。
より好ましい組み合わせの具体例としては、Nアクリロイルモルホリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/POEMと(メタ)アクリル酸の共重合体、Nアクリロイルモルファリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートと2ヒドロシエチル(メタ)アクリレートの共重合体、Nアクリロイルモルホリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとアクリルアミドの共重合体、Nアクリロイルモルホリンと(メタ)アクリル酸の共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとビニルアニリンの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートと2ヒドロシエチル(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとアクリルアミドの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合体/メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレートとビニルアニリンの共重合体、等が挙げられる。
上記(1)〜(6)の共重合体Aまたは重合体Bは、線状の高分子、分岐状の高分子と任意に取りうるが、その構造もブロック共重合体、或いはグラフト共重合体と慣用の高分子構造を採りうる。勿論極性単量体の、多元共重合体の構造をとりうる。これらの構造の重合体、共重合体は、慣用の重合技術により任意に入手可能である。
曇点の発現擬似的な架橋を容易に設計する点において、いずれかの重合体が水素結合性の極性官能基を有する単量体、すなわちグループ2の単量体を含み、一方で、他の重合体がグループ2の提供する水素原子(プロトン)と相互作用可能なグループ1の単量体を含むことが好ましい。従って、(1)〜(6)のうち、(3)〜(6)が好ましい組み合わせである。さらに、物理的な凝集による擬似的な架橋をより容易に形成させる点において、共重合体Aが水素結合性の極性官能基を有する単量体、すなわち、グループ2の単量体を有していることが好ましく、従って、本発明のより好ましい高分子組成物として(4)〜(6)が挙げられる。更に、かかる擬似的な架橋をより効果的に得るためには、共重合体Aがグループ1,2の単量体の双方を含み、且つ、重合体Bを構成するグループ1の単量体が共重合体Aが有するグループ2の水素結合性官能基と水素結合により相互作用するものが良い。従って、最も好ましい組み合わせは(4)である。
かかる(1)〜(6)において、同種のグループから選択される単量体の共重合体の場合、その共重合組成に特に制約はないが、グループ1およびグループ2から選択される単量体の共重合体の場合、その共重合組成比(単量体モル組成)はグループ1として通常1〜99%である。上限、下限のいずれを超えても、物理的な凝集による擬似的架橋の効果が得られ難くなる。
以上に例示されない他の共重合成分とし、スチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル、エチレン、プロピレン等の炭化水素などグループ1、2に属さない単量体(以下グループ3と記す)も使用可能であり、本発明の効果を損なわない限りにおいて、例えば、ガラス転移温度の調整や疎水性を向上させるために用いることができる。但し、共重合体中におけるグループ3の共重合組成は80モル%以下、より好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、とりわけ好ましくは20モル%以下である。上記した範囲を超えると、ガラス転移温度の上昇や、耐候性の低下などの恐れがあるため好ましくない。
なお、いずれの重合体も公知の製造方法で重合され、特に制約はない。すなわち、重合体は予め公知の方法で重合されていてもよく、あるいは、最終的な高分子組成物を形成するための単量体の混合物を熱や光により重合して製造されてもよい。さらに、予め重合された重合体と単量体を混合し、熱や光により重合して製造されてもよい。
<好適な高分子組成物>
上記の如く、本発明において特に好適な高分子組成物は上記の(4)に該当し、共重合体Aが水素結合性の極性官能基を有する単量体、すなわち、グループ2の単量体を有していることが先ず好ましい。かかる水素結合性の極性官能基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、ヒドロキシル基などの官能基が例示されるが、カルボキシル基を有する単量体が好ましく、特に、カルボキシル基を有するビニル系単量体がその化学種が多く、曇点や擬似的な架橋を調整する上において好ましい。具体的には、アクリル酸および/またはメタアクリル酸などが例示される。また、共重合体Aが有するグループ1の単量体としては、適切な曇点と擬似的な架橋を効果的に得るために、既に例示をしたグループ1の非イオン性極性単量体が好ましい。このうち、カルボキシル基を有するビニル系単量体のアルキルエステル、及び/または、水酸基を有するビニル系単量体のビニルエステルなどが好適な例として挙げられる。具体的には、炭素数が1〜6のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、酢酸ビニルなどのビニルエステルなどが例示される。
従って、共重合体Aの最も好ましい態様の例示としては、アクリル酸および/またはメタアクリル酸と、アクリル酸のアルキルエステルおよび/またはメタアクリル酸のアルキルエステルの共重合体が挙げられる。アクリル酸および/またはメタアクリル酸と、アクリル酸のアルキルエステルおよび/またはメタアクリル酸のアルキルエステルの共重合組成は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸のモル組成として、一単量体を1〜99モル%とすれば、共単量体は99〜1モル%となる。例えばアクリル酸のような一単量体を20〜80モル%とすれば、アクリル酸アルキルエステルのような共単量体は80〜20モル%となる。一単量体を40〜60モル%とすれば、共単量体は60〜40モル%となる。上限、下限をいずれを超えても、物理的な凝集による擬似的架橋の効果が得られ難くなるが、これに加え、上限を超えると相分離現象の水に対する依存性が強くなるため好ましくない。
かかる共重合体Aに対し、上記(4)における好適な重合体Bは、グループ1から選択される極性単量体を少なくとも1種含むが、中でも、共重合体Aの水素結合性官能基と相互作用を有する極性単量体として、エーテル酸素を含有する極性単量体を含むものを選択することにより、良好な曇点の範囲と擬似的な架橋の効果を得ることができる。より具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドから選ばれる少なくとも1種の極性単量体の単独重合体または2種以上の極性単量体の共重合体が好適に例示され、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体などが該当する。なお、融点が低い点、および、疎水性が向上する点で、ポリエチレンオキシドよりもポリプロピレンオキシドやポリブチレンオキシドの方が好ましい。
このように主鎖にエーテル結合を有する重合体は、平均分子量で、約100〜30000程度のものが推奨されるが、市販のものを入手すれば、平均分子量500〜6000程度、好ましくは、500〜4000程度のものが推奨される。
以上の好適な組み合わせにおいて、共重合体Aおよび重合体Bの混合組成は、先述のとおり、共重合体Aの高分子組成物の重量組成として5〜95%であるが、より良好な曇点の範囲と擬似的な架橋の効果を得る上では、共重合体Aの重量組成は8〜95%、さらには10〜90%、特には10〜80%である。
<高分子組成物の調整方法>
本発明における高分子組成物を調整する方法には特に限定がなく、公知の方法で調整することができる。例えば、成分として含有する全ての重合体の共溶媒に、かかる全ての重合体を溶解・混合せしめ、これを乾燥することによって得ることができる。共溶媒は単独溶媒でも混合溶媒でもよい。あるいは、全ての重合体を無溶媒の状態において溶融混練し冷却することによって得ることもできる。かかる2種の方法を併用してもよい。溶媒を用いる場合、乾燥条件によっては溶媒が残留する他、いずれの方法においても大気中の水蒸気を吸湿し水分を含む場合がありえる。これら残留溶媒や吸湿によって混入した水が本発明の効果に影響を与えない場合において、その含有量は任意であるが、曇点や擬似的な架橋の効果に影響を与える場合、通常、重量で10%以下であることが望ましい。あるいは本発明の高分子組成物の曇点に対して、大気に開放された状態で評価された値に比較し、ガラスで封止された状態で評価された値が40℃を超えず高い状態、より好ましくは、20℃を超えず高い状態、更に好ましくは10℃を超えず高い状態とすることにより、封止された状態において実用上問題のない曇点の安定性を得ることができる。
<その他添加剤>
本発明における高分子組成物には、必要に応じて、熱安定剤、紫外吸収剤、酸化防止剤、防腐剤防カビ剤等、本高分子組成物の効果を持続させる目的で各種添加剤を加えてもよい。更に、特定の波長の可視光、近赤外線、赤外線を吸収する色素や顔料等の着色剤や無機酸化物微粒子など、更なる機能付与を目的として各種添加剤を加えてもよい。更に、かかる添加剤を加えることにより、高分子組成物自体の温度を外気温度より高くして濁度や反射率を増加することも期待できる。
<温度応答性資材>
本発明の高分子組成物は、温度に応答して透明性、遮光性、遮熱性、隠蔽性、表示等が変化する資材に好適に用いることができる。特に、従来技術である高分子水溶液を用いる場合は極めて困難であった樹脂フィルムや樹脂シートならびに樹脂プレートなどの樹脂素材を基材にした部材や資材を可能ならしめる。かかる樹脂素材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの他、ポリカーボネート系樹脂、ナイロン系樹脂などの所謂エンジニアリングプラスチック製のシート、フィルムやプレートなどが好適に用いられる。
本発明の高分子組成物をガラス、あるいは、上記樹脂フィルムやシートやプレートの上に機能層として積層する場合、塗布などの方法を用いることができる。更に、かかる組成物の温度応答性が大気中の湿度の影響を受ける場合、および/または、かかる組成物を保護する目的で、かかる機能層を別途のガラス、あるいは、上記樹脂フィルム、シートやプレートによって被覆することは好適である。かかる観点において水蒸気やガスバリア性の高い別途の層やシートないしはプレートの利用は効果的である。
かかる温度応答性資材は、曇点以上の高温域において白濁し、全光線透過率の減少、拡散透過率の増加(ヘーズの増加)、可視光、近赤外線、赤外線の反射などの機能を発現する。かかる光学特性は、用途によって決められるべきであり一概に規定できないが、用途に応じた性能を得るために、本発明の高分子組成物自体の組成等を変更することも有効であり、また、高分子組成物からなる機能層の厚みを大きくすることも有効である。
以下に実施例1〜13および比較例1〜6を例示として本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
(1)本発明の共重合体Aに該当ポリマーA1の合成
50mLナスフラスコ内において、モノマーであるアクリル酸(AA、和光純薬工業株式会社製)0.94重量部及びアクリル酸メチル(MA、Aldrich社製)1.12重量部、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.043重量部、溶媒であるジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)21重量部をよく混合し、室温で30分間窒素置換を行い、モノマー溶液を調製した。ついで、このモノマー溶液を60℃のオイルバス内で6時間攪拌することにより、AAおよびMAの共重合体であるポリマーA1を重合した。重合後、反応溶液をイオン交換水300mLとエタノール(純正化学株式会社製)100mLの混合溶媒に滴下して沈殿させた後、溶媒を除去することによりポリマーA1を得た。
得られたポリマーA1について、標準ポリスチレンで校正されたSEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行った結果、ポリマーA1の重量平均分子量(Mw)は約360000と見積もられた。また、得られたポリマーA1に含まれるAAとMAのモル比(AA/MA)はH−NMR測定からAA/MA=50/50と見積もられた。さらに得られたポリマーA1についてDSC(Differential Scanning Calorimeter)測定を行った結果、ポリマーA1のガラス転移温度(Tg)は24℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
10重量%のポリマーA1のエタノール溶液と本発明の重合体Bに該当する10重量%のポリプロピレングリコール(PPG1000、平均分子量1000、和光純薬工業株式会社製)のエタノール溶液を作製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液を調製した。なお、PPG1000は室温にて液体であった(融点<室温)。かかる混合溶液をガラス上に3.0重量部キャストし、これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
同様の手順により作製した温度応答性高分子組成物の動的粘弾性特性を、粘弾性測定装置(VAR−50、ジャスコインターナショナル株式会社)で評価した。具体的には、8mmφパラレルプレートを用いギャップ1mm、周波数1Hz、歪2%の条件下で15℃から2℃/minの昇温レートで昇温し貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の温度依存性を測定した。図1に示すように40℃以下では昇温するにつれて弾性率は減少したが、40℃以上では昇温するにつれて弾性率が増加したことから、高温において流動性が増すことは無く、擬似的架橋の効果が示された。
なお、作製したサンプルを相対湿度66%の雰囲気下で4日間放置した場合の含水量は、示差熱重量同時分析装置(TG−DTA6300、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)を用いて昇温速度10℃/minで昇温した時の重量変化から、5.6%と見積もられた。
(3)特性評価A:塗布サンプルの曇点および透明/白濁状態変化の可逆性
上記(2)のガラス塗布サンプルをホットステージ上に乗せ、室温から30分毎に5℃ずつ昇温し、視認によりサンプルが白濁する温度を見積もることにより曇点を評価した。この結果、本系の曇点は70℃であった。次いで、サンプルを室温に放置すると無色透明に戻った。更に室温で12時間以上放置した後、再びホットステージ上で室温から30分毎に5℃ずつ昇温すると、70℃で白濁した。このように、かかる温度応答性高分子組成物が複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。なお、室温における放置時間を5分と短くしても複数回の可逆的が確認された。
(4)特性評価B:白濁度合いの温度依存性
特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを使い、白濁度合いの温度依存性をヘーズ測定により評価した。かかるサンプルを30分毎に10℃ずつ昇温しながらヘーズメーター(スガ試験機株式会社、HZ−2)を用いてヘーズ測定した。特性評価Aで見積もられた曇点である70℃を超えると、ヘーズは単調に増加し100℃ではヘーズが約90となった。
(5)特性評価C:温度応答速度
特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを室温に放置し、無色透明となっていることを確認した後、これを70℃のホットプレート上に置き、白濁状態が視認されるまでの時間を測定した。本サンプルは約1分後に白濁が認められた。
(6)特性評価D:高温保持時の白濁度合いの安定性
評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを作製し、塗布面を別途ポリオレフィンシートで被覆したサンプル準備した。すなわち、ガラスおよびポリオレフィンシートで両面が被覆された状態にした。かかるサンプルを70℃のホットプレート上に置き、4時間保持した際のヘーズの時間変化を測定した。図2に示すように、昇温後1時間でヘーズが50まで増加し、その後、一定の値を保持し続けた。4時間後のサンプルは一様に白濁しており、ムラは視認されなかった。この結果より本サンプルが曇点以上の温度に保持されても一定の白濁度合いを保持することが確認された。
(7)特性評価E:高温長時間保持後の透明/白濁状態変化の可逆性
特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを作製し、このサンプルを80℃で加熱した状態を6時間保持した後に室温で12時間冷却する操作を3回繰り返した結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
(8)特性評価F:曇点以上の温度における構造
膜厚が薄い他は特性評価Aで用いたサンプルと同等のサンプルを70℃の状態におき、光学顕微鏡で構造を評価した。70℃で1時間保持した後と更に70℃で4時間保持した後を比較するとも構造に明確な変化は認められず、特性評価Dの結果を支持するものであった。また、同様の結果は100℃でも確認された。
実施例2
10重量%のポリマーA1のエタノール溶液と10重量%のPPG1000のエタノール溶液の重量混合比を3:7として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は65℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。またガラスで両面を被覆された状態において実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は70℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
実施例3
20重量%のポリマーA1のエタノール溶液と20重量%のポリプロピレングリコール(PPG2000、平均分子量2000、和光純薬工業株式会社製)のエタノール溶液の重量混合比を3:2として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。なお、PPG2000は常温で液体であった(融点<室温)。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は45℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
実施例4
20重量%のポリマーA1のエタノール溶液と20重量%のポリプロピレングリコール(PPG3000、平均分子量3000、和光純薬工業株式会社製)のエタノール溶液の重量混合比を3:2として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。なお、PPG3000は常温で液体であった(融点<室温)。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は40℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
実施例5
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA2の合成
モノマーとしてAA0.94重量部とアクリル酸エチル(EA、Aldrich社製)1.30重量部を用い、重合温度を80℃とし、沈殿溶媒としてイオン交換水300mLとエタノール100mLの混合溶媒を用いた他は実施例1と同様に重合を行い、AAおよびEAの共重合体であるポリマーA2を合成した。得られたポリマーA2についてSEC測定を行った結果、Mwは約130,000と見積もられた。またH−NMR測定を行った結果、ポリマーA2に含有されるAAとEAのモル比(AA/EA)はAA/EA=50/50と見積もられた。DSC測定を行った結果、ポリマーA2のTgは8℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
10重量%のポリマーA2のエタノール溶液と10重量%のPPG2000のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
(3)特性評価
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は70℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。また実施例1の特性評価Cに応じて温度応答速度を評価したところ、約1分後に白濁化が視認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
実施例6
10重量%のポリマーA2のエタノール溶液と10重量%のPPG3000のエタノール溶液の重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は50℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。また、実施例1の特性評価Cに応じて温度応答速度を評価したところ、約30秒後に白濁化が視認された。かかるサンプルについては、実施例1の特性評価Cに加え、さらに以下の評価を行った。まず、ホットプレート上で70℃30分間保持した後にホットプレートから離し、無色透明となるまでの時間を評価した。この結果、約2分で無色透明の状態に戻ることが確認され、特性評価Cの結果と総合すると、昇降温いずれの場合でも、透明/白濁状態変化が良好な応答速度を有することが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
さらにガラスで両面を被覆された状態において実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は55℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。また、かかる両面をガラスで被覆された状態において特性評価Cに準じて応答速度を評価したところ、約1分後に白濁化が視認された。
実施例7
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA3の合成
モノマーとしてAA0.94重量部とメタクリル酸メチル(MMA、Aldrich社製)1.30重量部を用いた他は実施例5と同様に重合を行い、AAとMMAの共重合体であるポリマーA3を合成した。得られたポリマーA3についてSEC測定を行った結果、Mwは約55,000と見積もられた。また得られたポリマーA3についてH−NMR測定を行った結果、ポリマーA3に含有されるAAとMMAのモル比(AA/MMA)はAA/MMA=36/64と見積もられた。また、得られたポリマーA3についてDSC測定を行った結果、ポリマーA3のTgは58℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
10重量%のポリマーA3のエタノール溶液と10重量%のPPG2000のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
(3)特性評価
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は60℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
実施例8
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA4の合成
モノマーとしてメタクリル酸(Aldrich社製)MAA0.94重量部とMMA1.30重量部を用いた他は実施例5と同様に重合を行い、MAAおよびMMAの共重合体であるポリマーA4を合成した。得られたポリマーA4についてDSC測定を行った結果、ポリマーA4のTgは148℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
10重量%のポリマーA4のエタノール溶液と10重量%のPPG2000のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
(3)特性評価
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は55℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
実施例9
メタアクリル酸(MAA)とアクリル酸エチル(EA)の共重合体(EUDRAGIT L100−55、MAA:EA=1:1モル比、Mw278,000、Tg110℃、デグサジャパン株式会社製、)の10重量%のエタノール溶液とPPG2000の10重量%のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を2:3として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は40℃であった。
また実施例1の特性評価Eに準じて評価を行った結果、このサンプルは繰り返し、加熱時は一様に白濁し、冷却時は無色透明に戻った。このことから、このサンプルは複数回の長時間加熱保持という熱履歴を経ても、可逆的に透明/白濁変化することが示された。
実施例10
メタアクリル酸(MAA)とメタアクリル酸メチル(MMA)の共重合体(EUDRAGIT L100、MAA:MMA=1:1モル比、Mw123,000、Tg約160℃、デグサジャパン株式会社製)の10重量%のエタノール溶液とPPG1000の10重量%のエタノール溶液を調製し、それぞれの重量混合比を1:4として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行った結果、曇点は50℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
実施例11
(1)本発明の共重合体Aに該当するポリマーA5の合成
モノマーとしてAA 0.94重量部とN−アクリロイルモルホリン(NAM、株式会社興人製)1.84重量部を用い、沈殿溶媒として0.5Lのエタノールを用いた他は実施例5と同様に重合を行い、AAとNAMの共重合体であるポリマーA5を合成した。得られたポリマーA5について、標準ポリスチレンで校正されたSEC測定を行った結果、ポリマーA5のMwは約90000と見積もられた。また、得られたポリマーA5に含まれるAAとNAMのモル比(AA/NAM)はH−NMR測定からAA/NAM=50/50と見積もられた。さらに得られたポリマーA5についてDSC測定を行った結果、ポリマーA5のTgは75℃と見積もられた。
(2)温度応答性高分子組成物の作製
20重量%のポリマーA5の水溶液と20重量%のポリエチレングリコール(PEG600、平均分子量600、和光純薬工業株式会社製)の水溶液を作製し、それぞれの重量混合比を1:1として混合した溶液をキャストした他は実施例1と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
(3)特性評価
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は50℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
実施例12
モノマーとしてAA0.75重量部、NAM2.20重量部を用いた他は実施例11と同様にし、AAとNAMの共重合体である本発明の共重合体Aに該当するポリマーA6を合成した。得られたポリマーA6についてSEC測定を行った結果、Mwは約120,000と見積もられた。またDSC測定を行った結果、ポリマーA5のTgは133℃と見積もられた。20重量%のポリマーA6の水溶液と20重量%のPEG600の水溶液を用いた他は実施例11と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は40℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
実施例13
モノマーとしてAA0.56重量部、NAM2.57重量部を用いた他は実施例11と同様にし、AAとNAMの共重合体である本発明の共重合体Aに該当するポリマーA7を合成した。得られたポリマーA7についてSEC測定を行った結果、Mwは約120,000と見積もられた。またDSC測定を行った結果、ポリマーA5のTgは128℃と見積もられた。20重量%のポリマーA7の水溶液と20重量%のPEG600の水溶液を用いた他は実施例11と同様にして、温度応答性高分子組成物を作製した。かかるサンプルは室温では無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて評価を行ったところ、曇点は30℃であり、複数回可逆的に透明/白濁状態変化を起こすことが確認された。
比較例1
10重量%の低粘度フッ化ビニリデンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(G−101、ダイキン工業)のメチルエチルケトン(MEK、和光純薬工業株式会社製)溶液と10重量%のポリアクリル酸n−ブチル(PBA、Mw60000、Aldrich社製)のMEK溶液を調製し、それぞれを重量混合比3:7として混合した溶液をガラス上に3.0重量部キャストした。これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
同様の手順により作製した温度応答性高分子組成物の動的粘弾性特性を、実施例1に従い評価した。図3に示すように、本サンプルでは測定温度範囲においてG′及びG"は温度の上昇に伴い単調に減少した。本サンプルは架橋を有さず、温度上昇により流動性が増加する結果となり、実施例1とは対照的であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ45℃であったが、実施例1の特性評価Dに準じて70℃で4時間保持した際のヘーズの時間変化を調べたところ、図4に示すようにヘーズは変化し続け一定状態を保持しなかった。
以上から、本サンプルでは物理的架橋が発現しておらず、この結果、高温で保持すると相分離による状態変化が進行し続けることが示された。
比較例2
3重量%の低粘度フッ化ビニリデンーヘキサフルオロプロピレン共重合体G−101のMEK溶液と3重量%のPBAのMEK溶液を調製し、それぞれを重量混合比2:8として混合した溶液をガラス上に3.0重量部キャストした。これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。なお、本サンプルは、レオロジー的には比較例1と同等の挙動を示した。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ55℃であったが、実施例1の特性評価Eに準じて80℃で加熱した状態を6時間保持すると、濁度の高い部分と低い部分の差を視認することができ、不均一な白濁状態となることが確認された。すなわち、本試料は高温で保持することで相分離が進行し続けた。
比較例3
50mLナスフラスコ内において、低粘度フッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体G−101を2重量部、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAME−400、日本油脂株式会社製)8重量部、重合開始剤であるベンゾインメチルエーテル(Avocado Research Chemicals Ltd.製)0.2重量部を60℃で30分間混合し、モノマー溶液を調整した。
ガラス板上にシリコンラバー(厚さ1mm)を置き、その中にモノマー溶液を充填させ、上からガラス板を被せた状態で、照射強度20mW・cm−2の紫外光を10秒間照射した後、200mW・cm−2の紫外光を100秒間照射した。得られた組成物は室温で透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ45℃であったが、実施例1の特性評価Eに準じて80℃で加熱した状態を6時間保持した後に室温で12時間冷却する操作を2回繰り返すと、室温に冷却しても一部白濁したまま透明に戻らず、可逆的な温度変化を示さなくなった。
比較例4
化学的架橋を導入するために、比較例3のメトキシポリエチレングリコールモノアクリレートをポリエチレングリコールジアクリレートに換えた。具体的には、低粘度フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体G−101を5重量部、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(ブレンマーADE−400、日本油脂株式会社製)5重量部、ベンゾインメチルエーテル0.2重量部を用いた他は比較例3と同様にモノマー溶液を調製した。60℃で2時間攪拌しても低粘度フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体はブレンマーADE−400に完全に溶解しなかったが、上澄み液を比較例3と同様に紫外光照射すると、得られた組成物は室温で既に白濁しており、昇温しても濁度に変化は見られなかった。
比較例5
ポリアクリル酸(PAA、平均分子量5,000、和光純薬工業製)の10重量%水溶液10重量部と水酸化リチウム(Aldrich社製)の10重量%水溶液1.41重量部を混合後、ガラスシャーレ上にキャストし、予備乾燥を経た後、50℃の真空乾燥機で乾燥することによりPAAを42.5%部分中和したPAA(PAA−Li)を得た。かかるPAA−Li 1.14重量部とポリエチレングリコール(PEG600、平均分子量600、和光純薬工業株式会社製)1.0重量部を、20重量%となるようにメタノール:蒸留水の5:5の混合溶媒に溶解させ混合した溶液をガラス上にキャストした。これを室温にて少なくとも2昼夜乾燥させることにより、カルボン酸のリチウム塩を含有する温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ40℃で白濁が認められたが、同時に樹枝状の析出物が目視で確認され不均一な状態となった。かかる析出物は再度温度を低下させると消滅した。ついで、ガラスで両面を被覆したサンプルについて曇点を評価したところ、100℃以下で曇点が得られず、温度による透明/白濁状態変化をしなかった。
以上から、塩を含む上記の温度応答性高分子組成物では、析出物による不均一な概観や、被覆によって曇点が認められなくなるなどの結果となった。
比較例6
10重量%のポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw = 93,000、Aldrich社製、Tg99℃)のトルエン(和光純薬工業株式会社製)溶液と10重量%のポリ酢酸ビニル(PVAc、Mw = 83,000、Aldrich社製、Tg41℃)のトルエン溶液の重量混合比を3:7として混合した溶液をガラス上に3.0重量部キャストし、これを室温にて乾燥させることにより、膜厚100μmの温度応答性高分子組成物を作製した。得られた温度応答性高分子組成物は室温で無色透明であった。
実施例1の特性評価Aに準じて曇点を評価したところ100℃であり、その後室温に冷却すると透明に戻った。しかしながら、再び100℃で1時間加熱すると、室温に冷却しても透明に戻らなくなった。
以上、高分子組成物に含まれる重合体のうち、最も低いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が20℃以下ではない場合、可逆性が低いことが示された。
比較例7
50mLナスフラスコ内において、モノマーであるスチレン(St、東京化成工業株式会社製)4.90重量部及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、和光純薬工業株式会社製)0.39重量部、重合開始剤であるAIBN 0.01重量部、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、和光純薬工業株式会社製)5.0重量部をよく混合し、室温で30分間窒素置換を行い、モノマー溶液を調製した。ついで、このモノマー溶液を70℃のオイルバス内で6時間攪拌することにより、StおよびHEMAの共重合体であるポリマーC1を重合した。重合後、反応溶液をメタノール300mLに滴下して沈殿させた後、溶媒を除去することによりポリマーC1を得た。
得られたポリマーC1について、標準ポリスチレンで校正されたSEC測定を行った結果、Mwは74,000と見積もられた。また、ポリマーC1に含まれるStとHEMAのモル比(St/HEMA)はNMR測定からSt/HEMA=90/10と見積もられた。さらにポリマーC1についてDSC測定を行った結果、Tgは97℃と見積もられた。
ポリマーC1、ポリプロピレングリコール4000(PPG4000、ポリサイエンス社製)、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(マイテックNI730S、三菱化学株式会社製)の重量混合比が50:50:1である29重量%トルエン溶液を窒素雰囲気下でガラス上にキャストして溶媒を除去した後、70℃の真空下で16時間加熱した。得られた試料の曇点は95℃であったが、室温で表面が粗く波打った状態であり、透明性が低かった。
本発明の高分子組成物は、ガラス板や特に従来の高分子水溶液系では困難であった樹脂基材等に好適に積層またはラミネートすることができる。ガラス板に本発明の高分子組成物をサンドイッチした、いわゆる合わせガラスとして用いると、災害等において高層ビルからガラスが飛散しない安全ガラスとなるばかりでなく、しかも、窓、ドアガラスとして建築資材に供した場合に、室内が、一定の温度になったら、自然に合わせガラスが白濁して遮光する為に、特に真夏の西日の入るのを制限する為に、省エネ効果も期待できる。また、農業資材として、ハウス内が著しく高温になることを遮光により防ぐという応用も期待できる。さらに温度センサーとしての応用、示温塗料のような感温材料、サーモクロミック材料への応用分野も期待できる。このような本発明の産業上の使用可能性は非常に期待されるものがある。
実施例1の温度応答性高分子組成物の貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″の温度依存性を示す図である。 ガラス上に塗布された実施例1の温度応答性高分子組成物を、70℃に保持した場合のヘーズの温度変化を示す図である。 比較例1の温度応答性高分子組成物の貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″の温度依存性を示す図である。 ガラス上に塗布された比較例1の温度応答性高分子組成物を、70℃に保持した場合のヘーズの温度変化を示す図である。

Claims (15)

  1. 0〜120℃のいずれかの温度において共重合体Aと重合体Bの相分離に由来する曇点を有し、少なくとも2種の非ハロゲン系重合体からなる塩を含有しない高分子組成物であって、かかる2種の重合体が、2種以上の極性単量体からなる共重合体Aと、少なくとも1種以上の極性単量体からなり、共重合体Aとは異なる重合体Bを含み、貯蔵弾性率が40℃以上で昇温するにつれて増加することを特徴とする温度応答用高分子組成物であって、共重合体Aを構成する1種の極性単量体が水素結合性官能基としてカルボキシル基を有する単量体であり、重合体Bを構成する極性単量体が、共重合体Aが有する水素結合性官能基と水素結合可能な極性官能基を含有する温度応答用高分子組成物。
  2. 水素結合性官能基を有する単量体がカルボキシル基を有するビニル系単量体であることを特徴とする請求項1に記載の温度応答用高分子組成物。
  3. カルボキシル基を有するビニル系単量体がアクリル酸および/またはメタアクリル酸であることを特徴とする請求項2に記載の温度応答用高分子組成物。
  4. 共重合体Aを構成する1種の極性単量体が非イオン性の極性単量体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
  5. 非イオン性の極性単量体が、カルボキシル基を有するビニル系単量体のアルキルエステル、及び/または、水酸基を有するビニル系単量体のビニルエステルであることを特徴とする請求項4に記載の温度応答用高分子組成物。
  6. 共重合体Aが、アクリル酸および/またはメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
  7. 共重合体Aの重量平均分子量が、1000〜1200000g/molであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
  8. 重合体Bを構成する極性単量体が、共重合体Aが有する水素結合性官能基と水素結合可能な極性官能基として、エーテル結合を含有する極性単量体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
  9. エーテル結合を含有する極性単量体が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の温度応答用高分子組成物。
  10. 重合体Bの重量平均分子量が500〜100000g/molであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
  11. 高分子組成物に含まれる重合体のうち、最も高いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が180℃以下、且つ、最も低いガラス転移温度を有する重合体のガラス転移温度が20℃以下、且つ、結晶性を有する重合体を含む場合は、その融点が25℃以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
  12. 高分子組成物に含まれる最も高分子量の重合体の重量平均分子量をMH、最も低分子量の重合体の重量平均分子量をMLとした場合に、MH/ML>3かつML<10000であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の温度応答用高分子組成物。
  13. MHを有する重合体が共重合体Aであり、MLを有する重合体が重合体Bである請求項12に記載の温度応答用高分子組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載された特性を有する温度応答用高分子組成物を用いた資材。
  15. 請求項1〜13のいずれかに記載された特性を有する温度応答用高分子組成物を、少なくとも2枚の基材間に封止した資材。
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