次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は一実施形態によるツール交換機構であるツールチェンジユニット2の断面図である。ツールチェンジユニット2は、アーム側ツールチェンジャ2Aとツール側ツールチェンジャ2Bを含む。図1にはツール側ツールチェンジャ2Bがアーム側ツールチェンジャ2Aから離脱した状態が示されている。ツール側ツールチェンジャ2Bは、図2に示すようにアーム側ツールチェンジャ2Aに装着可能である。
アーム側ツールチェンジャ2Aは、ダンパ機構4を介してロボットアーム6の先端に取り付けられる。ロボットアーム6を動かすことでアーム側ツールチェンジャ2Aを移動することができる。ダンパ機構4はロボットアーム6に対してアーム側ツールチェンジャ2Aを図2における上方向に弾性的に移動可能するために設けられるものである。本実施形態において、ロボットは、作業を行なう位置までツールを移動するための装置の一例であり、ツール移動装置に相当する。
ツール側ツールチェンジャ2Bは、ツール8に固定されてツール8と一体となる。本実施形態ではツール8として吸着ヘッドが用いられおり、ツール8には吸引通路8aが設けられている。ツール側ツールチェンジャ2Bがツール8に取り付けられると、ツール8の吸引通路8aはツール側ツールチェンジャ2Bの吸引プラグ41に接続された状態となる。ツール側ツールチェンジャ2Bがアーム側ツールチェンジャ2Aに装着されると、ツール側ツールチェンジャ2Bの吸引プラグ41はアーム側ツールチェンジャ2Aに設けられたソケット穴21aに挿入された状態となり、ツール8の吸引通路8aはツールチェンジャ2Aの吸引通路21bに接続される。これにより、ツール側ツールチェンジャ2Aの吸引通路21bに負圧を導入することで、吸着ヘッドであるツール8に負圧を導入して吸着動作を行なわせることができる。
ここで、アーム側ツールチェンジャ2Aの構造について詳細に説明する。図3はアーム側ツールチェンジャ2Aを図1の矢印III方向から見た平面図である。図4はアーム側ツールチェンジャ2Aを図1の矢印IV方向から見た側面図である。
アーム側ツールチェンジャ2Aは、平板状の本体20と、本体20の外周の一部から垂直方向に延在するソケット形成部21と、本体20の中央部分から突出した係合凸部22とを有する。本体20はアルミ合金等の比較的軽い金属材料で形成される。係合凸部22の周囲において、2本の位置決めピン23が本体20から突出して設けられている。位置決めピン23は、ステンレス鋼のように比較的硬度の高い金属材料により形成される。
ツール側ツールチェンジャ2Bがアーム側ツールチェンジャ2Aに装着される際、係合凸部22は、ツール側ツールチェンジャ2Bの係合凹部に挿入されて嵌合する。これによりツール側ツールチェンジャ2Bは、アーム側ツールチェンジャ2Aに離脱可能に装着される。係合凸部22が係合凹部に挿入される前に、2本の位置決めピン23がツール側ツールチェンジャ2Bの位置決め孔に挿入されて嵌合することで、アーム側ツールチェンジャ2Aはツール側ツールチェンジャ2Bに対して位置決めされる。
アーム側ツールチェンジャ2Aのソケット形成部21には空気吸引用継ぎ手10が取り付けられ、吸引通路21bに接続される。したがって、空気吸引用継ぎ手10から空気を吸引することで、吸引通路21b及び吸引プラグ41を介してツール8の吸引通路8aに負圧を導入することができる。
アーム側ツールチェンジャ2Aの本体20の側面からはロッド24が延出している。ダンパ機構4のロッド4aに一端が取り付けられたバネ11の他端がロッド24に取り付けられている。アーム側ツールチェンジャ2Aはダンパ機構4により図4の矢印方向にスライド可能に支持されており、バネ11はアーム側ツールチェンジャ2Aのスライド方向と反対方向に付勢している。
本体20から突出している係合凹部22は円柱形状であり、その直径方向に貫通して延在する3本の調整孔22aが形成されている。調整孔22aの内面には、全長さにわたってネジが形成れており、外周にネジが形成されたボールプランジャ25が各調整孔22a内にねじ込まれて配置されている。後述のように、ボールプランジャ25のボールがツール側ツールチェンジャの係合凹部の内面に押し付けられることで、ツール側ツールチェンジャ2Bがアーム側ツールチェンジャ2Aに装着され固定される。
次に、ツール側ツールチェンジャ2Bの構造について詳細に説明する。図5はツール側ツールチェンジャ2Bを図1の矢印V方向から見た平面図である。図6はツール側ツールチェンジャ2Bを図1の矢印VI方向から見た側面図である。
上述のように、ツール側ツールチェンジャ2Bの本体40には、吸引プラグ41が取り付けられ、アーム側ツールチェンジャ2Aの吸引ソケット穴21aに嵌合するようになっている。アルミ合金のように比較的軽い金属材料で形成された本体40には、アーム側ツールチェンジャ2Aの位置決めピン23が挿入される位置決め孔42が形成されている。位置決め孔42には、ステンレス鋼のように比較的硬度の高い金属材料で形成されたブッシュ42aが嵌め込まれている。ブッシュ42の内径は位置決めピン23の外径より僅かに大きい程度であり、2箇所のブッシュ42に位置決めピン23が嵌合することで、アーム側ツールチェンジャ2Aをツール側ツールチェンジャ2Bに対して精度よく位置決めすることができる。
ツール側ツールチェンジャ2Bの本体40には、アーム側ツールチェンジャ2Aの係合凸部22が挿入される係合凹部43が形成されている。係合凹部43の内面に、円環状のV溝44aを有するテーパリング44が嵌め込まれている。テーパリング44は、ステンレス鋼のように比較的硬度の高い金属材料で形成されている。アーム側ツールチェンジャ2Aの係合凸部22がツール側ツールチェンジャ2Bの係合凹部43に挿入されると、係合凸部22の外周面から突出した3個のボールプランジャ25の先端のボールが、テーパリング44のV溝44aに係合するようになっている。ボールプランジャ25のボールがテーパリング44のV溝44aに係合することで、係合凸部22が係合凹部43に固定される。ボールプランジャ25による固定動作については後述する。
本体40の一端(上側の端部)には、本体の左右方向に延在する支持板45が固定されている。支持板45は後述のようにツール側ツールチェンジャ2Bに取り付けられたツール8をホルダに収納するときにツール側ツールチェンジャ2Bの上部を支持するために設けられる。支持板45の左右両側には、ホルダに設けられた位置決めピンに係合する位置決め孔を有するブッシュ45aが設けられている。本体40の下部の両側面には、先端がテーパ状に形成されたガイド46が取り付けられている。ガイド46は、後述のように、ツール側ツールチェンジャ2Bに取り付けられたツール8をツールホルダに収納する際にツール側ツールチェンジャ2Bが垂直になるようにガイドする機能を果たす。
ここで、アーム側ツールチェンジャ2Aの3個のボールプランジャ25によるツール側ツールチェンジャ2Bの固定動作について説明する。図7はアーム側ツールチェンジャ2Aの係合凸部22が、ツール側ツールチェンジャ2Bの係合凹部43に挿入された状態を示す平面図である。図8はボールプランジャ25のボールがV溝44aに係合した状態を示す拡大断面図である。
アーム側ツールチェンジャ2Aの係合凸部22は、ツール側ツールチェンジャ2Bの係合凹部43に嵌め込まれたテーパリング44の内側に挿入される。このとき、係合凸部22の外周面から突出したボールプランジャ25のボール25aは、テーパリング44の上端の縁により押されて内側に移動し、テーパリング44の内側を摺動しながらV溝44aまで移動する。そして、ボールプランジャ25のボール25aは、図8に示すようにV溝44aに入り込み、ボールプランジャ25内に設けられているスプリング25bの弾性力によりV溝44aの内面に押し付けられる。
3個のボールプランジャ25が等角度(120度)で配置されているため、3点でV溝44aに係合して押圧する。このようにボールプランジャ25のボール25aがV溝44aの内面に係合することで、ツール側ツールチェンジャ2Bをアーム側ツールチェンジャ2Aで保持(把持)することができる。アーム側ツールチェンジャ2Aがツール側ツールチェンジャ2Bを把持する把持力は、ボールプランジャ25のボール25aでV溝44aの内面を押圧する押圧力により決まる。
ここで、ツール8が重い場合には大きな把持力が必要であり、ツール8が軽い場合には小さな把持力でよい。したがって、ツール8の重量に基づいて把持力を調整する必要がある。把持力はボールプランジャ25のボール25aをスプリング25bで押す力に相当する。したがって、把持力を大きくするにはボールプランジャ25を外側に出して、係合凸部22の外周面からボール25aが大きく突出するようにすればよい。反対に、把持力を小さくするにはボールプランジャ25を内側に入れて、係合凸部22の外周面からのボール25aの突出量小さくすればよい。
ただし、把持力を大きくしようとしてボールプランジャ25を外側に出して係合凸部22の外周面からボール25aが大きく突出させると、係合凸部22を係合凹部43に挿入する際に必要な押圧力も大きくなる。係合凸部22を係合凹部43に挿入するには、係合凸部22の外周面から突出したボール25aをテーパリング44の内周面に突き当てて内側に移動させながら、テーパリング44の内周面を摺動させて、V溝44aまで移動させる。ボール25aをテーパリング44の内周面に突き当てて内側に移動させる力は、係合凹部22を挿入方向に押圧する力を、ボール25aで方向変換した力に相当する。すなわち、ボール25aをスプリング25bの押圧力に逆らって内側に押し込むだけの力が出るように係合凹部22を挿入方向に押圧する必要がある。
このように、ボール25aの突出量を大きくすると、それだけボール25aを内側に押し込む距離が大きくなり、スプリング25bの押圧力に抗してボール25aを内側に押し込むための力を大きくしなければならない。換言すれば、把持力を大きくするためにボール25aの突出量を大きくすると、それだけ係合凸部22を挿入方向に押圧する力も大きくしなければならない。
本実施形態のようにロボットアーム6の駆動力によりアーム側ツールチェンジャ2Aをツール側ツールチェンジャ2Bに押し付けて係合凸部22を係合凹部43に挿入する構成の場合、使用するロボットで出すことのできる押圧力はロボットの性能により上限(ロボットの許容負荷能力)がある。小型のロボットなどでは、ボール25aの突出量を大きくすると、係合凸部22を係合凹部43に挿入できるだけの押圧力を出せないおそれがある。
そこで、本実施形態では、必要な把持力や、ロボットの性能(アーム側ツールチェンジャ2Aを押圧できる最大力)を考慮して、ボール25aの突出量を調整する機構を設けている。ボール25aの突出量の調整は、ボールプランジャ25の位置を外側又は内側にずらすことで行なう。ボールプランジャ25の外周にはねじが形成されており、ボールプランジャ25は調整孔22a(ネジ孔)にねじ込まれて組み込まれている。調整孔22aは係合凸部22を貫通して延在しており、ボールプランジャ25は調整孔22aの一端側に位置している。ボールプランジャ25の後端には、ドライバビットやレンチを係合させることのできる係合穴25cが設けられている。したがって、調整孔22aの反対側からドライバビット又はレンチを差し込んで、ボールプランジャ25の後端の係合穴25cに係合させることができる。そして、ボールプランジャ25を回転させてボールプランジャ25の位置を移動させることで、ボール25aの突出量を調整することができる。この調整は組立て作業員がドライバやレンチを用いて容易に行なうことができる。
ここで、図7に示すように、本実施形態では、3本の調整孔22aが等角度(120度間隔)で配列され、その各々にボールプランジャ25が組み込まれている。3本の調整孔22aの中心軸は同一平面内に延在し、係合凸部22の中央で互いに交差している。このように構成することにより、各調整孔22aのボールプランジャ25の反対側が係合凸部22の外周面に開口している状態となり、ドライバビットやレンチを調整孔22aに挿入することができる。また、一つの調整孔22aに配置されたボールプランジャ25は、調整孔22aが交差する部分を塞がないような長さである。
調整孔22aの本数は3本に限ることなく、係合凸部22の大きさで制約されないなら、5本、7本というように奇数本の調整孔22aを設けることとしてもよい。奇数本の調整孔22aを等角度で配置することで、調整孔22aのボールプランジャ25aの反対側を係合凸部22の外周面で開口させておくことができ、ドライバビットやレンチ等の工具を調整孔22aに挿入することができる。
ここで、例えば、偶数本として4本の調整孔22aを等角度で配置しようとすると、2本の調整孔22aを十字状に配列することとなり、各調整孔22aの両端側にボールプランジャ25を配置しなければならない。調整孔22aの両端側にボールプランジャ25が配置されると、調整孔22aは2つのボールプランジャ25で両端が塞がれてしまい、ドライバビットやレンチを調整孔22aに挿入することができなくなってしまう。したがって、本実施形態では、奇数本の調整孔22aを等角度で配列することとした。
以上のように、組立て作業員は、ツール8の重量やロボットの許容負荷能力に合わせて、適切な把持力が出るように、ボールプランジャ25のボール25aの突出量を予め調整しておくことができる。したがって、本実施形態のツールチェンジユニット2を用いることで、同じロボットに、重量や形状が異なる複数のツールの各々を、ロボットの動作のみで簡単に装着することができる。
次に、上述のツール交換機構であるツールチェンジユニット2を用いて行なうツール交換動作について説明する。
まず、ツール8をロボットアーム6に装着する動作について説明する。図9に示すように、ツール8に取り付けられたツール側ツールチェンジャ2Bはツールホルダ50に収納されているものとする。ツールホルダ50は、垂直方向に延在するベース板51と、ベース板51から水平方向に延在するツール支持部材52と、ツール支持部材52の下方で水平方向に延在するガイド取付け部材53と、ガイド取り付け部材に設けられた一対のガイド受け54a、54bとを有する。
図10はツールホルダ50を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。ツールホルダ50は、複数のツールを収納するように構成されている。図10に示す例では2個のツールを収納できるように、収納部が2つ形成されている。すなわち、ツール支持部材52には切欠き部56が2箇所設けられ、切欠き部56の各々に上方からツール8を差し込むことでツール8をツールホルダ50に収納することができる。
なお、ベース板51から水平方向に延在するツール支持部材52を補強するために、ベース板51とツール支持部材52とに当接する補強板55Aが取り付けられている。同様に、ベース板51から水平方向に延在するガイド取り付け部材53を補強するために、ベース板51とガイド取り付け部材53とに当接する補強板55Bが取り付けられている。
図11はツール側ツールチェンジャ2Bが取り付けられたツール8が収納されたツールホルダ50を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。ツール側ツールチェンジャ2Bの支持板45の左右部分に設けられたブッシュ45aに、ツールホルダ50のツール支持部材52に設けられた位置決めピン52aが嵌合し、支持板45の左右部分がツール支持部材52に載せられて支持される。ツールホルダ50に収納された状態では、ツール側ツールチェンジャ2Bの左右側面に取り付けられたガイド46は、ツールホルダ50のガイド取り付け部材53に設けられた一対のガイド受け54a、54bの間に挿入されている。このように、ツール8がツールホルダ50に収納された状態で、ツール側ツールチェンジャ2Bはツール支持部材52により支持され、水平方向の移動は、位置決めピン52aと、ガイド受け54a、54bとにより規制される。
以上のように、ツール8は、ツール8に取り付けられたツール側ツールチェンジャ2Bの支持板45の両側がツール支持部材52により支持された状態でツールホルダ50に収納される。この状態で、ツール側ツールチェンジャ2Bの側部に取り付けられたガイド46は、ツールホルダ50の一対のガイド受け54a、54bの間に収納されている。
ツール8がツールホルダ50に収納された状態で、図12に示すように、ロボットアーム6を移動してアーム側ツールチェンジャ2Aの係合凸部22をツール側ツールチェンジャ2Bの係合凹部43に挿入し係合させる。このとき、アーム側ツールチェンジャ2Aの2本の位置決めピン23がツール側ツールチェンジャ2Bの位置決め孔42に嵌合し、ツール側ツールチェンジャ2Bに対してアーム側ツールチェンジャ2Aが位置決めされる。アーム側ツールチェンジャ2Aの係合凸部22をツール側ツールチェンジャ2Bの係合凹部43に挿入するときに、ボールプランジャ25のボール25aがテーパリング44に当接してツール側ツールチェンジャ2Bが押されることとなる。しかし、ツール側ツールチェンジャ2Bの上部は、ツールホルダ50の位置決めピン52aにより係止され、下部はガイド受け54bにより係止されているので、ツール側ツールチェンジャ2Bは押された方向に移動できず、ロボットアーム6により押圧しながら係合凸部22を係合凹部43に挿入することができる。
また、ボールプランジャ25のボール25aを内側に移動させるためには、ロボットアーム6によりアーム側ツールチェンジャ2Aを押圧する力が必要である。この押圧力は、上述のように、調整孔22aを用いてボールプランジャ25の位置を調整しておくことで、ロボットアーム6が出せる力の範囲内(ロボットの許容負荷能力内)に収められているため、アーム側ツールチェンジャ2Aの係合凸部22をツール側ツールチェンジャ2Bの係合凹部43に挿入することができる。
係合凸部22が係合凹部43に挿入されると、係合凸部22のボールプランジャ25のボール25aが係合凹部43のテーパリング44のV溝44aに係合し、ツール側ツールチェンジャ2Bはアーム側ツールチェンジャ2Aにより把持される。そして、図13に示すように、ロボットアーム6を上方に移動してツール側ツールチェンジャ2Bと共にツール8を上方に移動する。この上方への移動により、ツール側ツールチェンジャ2Bは位置決めピン52aから外れ、且つ、ガイド46はガイド受け54a、54bの間から外れる。
その後、図14に示すように、ロボットアーム6をツールホルダ50から離れる方向に移動することで、ツール8はツールホルダ50から完全に外れて、作業位置に移動できるようになる。
使用し終わったツール8をツールホルダ50に戻すときは、上述の動作と逆の動作を行なえばよい。すなわち、図15に示すように、ロボットアーム6を移動してツール8をツールホルダ50のツール支持部材52の切欠き部56に入れる。このとき、アーム側ツールチェンジャ20Bの支持板45が、ツールホルダ50の位置決めピン52aより上になるようにツール8の垂直方向の位置を決める。そして、図16に示すように、ロボットアーム6を水平に移動し、アーム側ツールチェンジャ20Bの支持板45のブッシュ45aの垂直下方にツールホルダ50の位置決めピン52aが位置するように、ツール8を移動する。
その後、ロボットアーム6を垂直下方に移動することで、ツール側ツールチェンジャ20Bの支持板45のブッシュ45aにツールホルダ50の位置決めピン52aが挿入されると共に、ガイド受け54a、54bの間にガイド46が挿入される。これにより、図17に示すようにツール側ツールチェンジャ20Bが取り付けられたツール8をツールホルダ50に収納した状態となる。
続いて、ロボットアーム6をツールホルダ50から離れるように水平方向に移動することで、図18に示すように、アーム側ツールチェンジャ20Aがツール側ツールチェンジャ20Bから離脱する。このとき、アーム側ツールチェンジャ20Aの把持力に抗してアーム側ツールチェンジャ20Aを水平方向に移動させなければならないので、ロボットアーム6に負荷がかかる。しかし、アーム側ツールチェンジャ20Aの把持力は、上述のボールプランジャ25のボール25aの突出量を調整して適切な把持力に設定してあるので、ロボットアーム6が出すことのできる力で、アーム側ツールチェンジャ20Aをツール側ツールチェンジャ20Bから離脱から離脱させることができる。
以上のような、ツール8のロボットアーム6への装着動作と、ツールホルダ50への収納動作とにより、ロボットアーム6に装着するツール8を簡単に交換することができる。
次に、ツール8をツールホルダ50に収納する際のツール8の位置決め機構について説明する。本実施形態では、ツールホルダ50に対するツール8の位置決め機構は、第1の位置決め機構と第2の位置決め機構を含む。
第1の位置決め機構は、図19に示すように、ツール側ツールチェンジャ2Bの支持板45の左右両側に設けられたブッシュ45aと、ツールホルダ50のツール支持部材52の左右両側に設けられた位置決めピン52aとで形成される。支持板45のブッシュ45aの貫通孔は位置決め孔として機能する。ツール側ツールチェンジャ2Bの支持板45の両側をツールホルダ50のツール支持部材52a上に載置することで、ツール8をツールホルダ50に保持する。この際、ツールホルダ50位置決めピン52aを、ツール側ツールチェンジャ2Bの支持板45に設けられたブッシュ45aの貫通孔(位置決め孔)に挿入することで、ツールホルダ50に対するツールチェンジャ2B(すなわちツール8)の上部の位置決めが行なわれる。
ツールホルダ50に対するツールチェンジャ2B(すなわちツール8)の下部の位置決めは、第2の位置決め機構により行なわれる。第2の位置決め機構は、図20に示すように、ツール側ツールチェンジャ2Bの左右の側部に設けられたガイド46と、ツールホルダ50に設けられた2対のガイド受け54a、54bとで形成される。ツール側ツールチェンジャ2Bのガイド46を、ツールホルダ50のガイド受け54a、54bの間に挿入することで、ツールホルダ50に対するツールチェンジャ2B(すなわちツール8)の下部の位置決めが行なわれる。なお、第2の位置決め機構におけるガイド受け54a、54bが所定の間隔をおいて配置される方向は、水平方向において第1の位置決め機構の2本の位置決めピン26aを結ぶ線に垂直な方向となる。
第1の位置決め機構の位置決め精度は非常に高く設定されている。ツール側ツールチェンジャ2Bのブッシュ45aの貫通孔(位置決め孔)の内径D1が例えば3.00mmであったとすると、ツールホルダ50の位置決めピン52aの外径D2は例えば2.99mmに設定され、クリアランスは0.01mm程度と非常に小さい。このため、第1の位置決め機構の位置決め精度は非常に高い。
一方、第2の位置決め機構の位置決め精度は比較的低く設定されている。ツール側ツールチェンジャ2Bのガイド46の幅W1が例えば9.0mmであったとすると、ツールホルダ50の一対のガイド受け54a、54bの間隔W2は例えば9.2mmに設定され、クリアランスは0.2mm程度と比較的大きい。
このように、第2の位置決め機構の位置決め精度が第1の位置決め機構の位置決め精度より低く設定されている理由は、第2の位置決め機構により大まかに位置決めしてから第1の位置決め機構により精度よく位置決めするためである。特に、第2の位置決め機構は、後述のようにツール8の垂直方向に対する傾きを修正することで、第1の位置決め機構による位置決め動作を容易にしている。すなわち、第2の位置決め機構は、ツール8の垂直方向に対する傾きを修正することで、第1の位置決め機構の位置決めピン52aに対してブッシュ45aの位置決め孔が整列して挿入しやすくする。
ここで、図19に示すように、ブッシュ45aの位置決め孔に位置決めピン52aが入り易くするために、位置決めピン52aの先端部は円錐状でありテーパ面が形成されている。すなわち、位置決めピン52aは外径がD2の円柱部(直線部)と、その先端のテーパ部を有する。テーパの角度は例えば30度である。ブッシュ45の位置決め孔の入り口P1から位置決めピン52aの直線部の先端P2までの垂直方向の距離L1を、位置決め孔から位置決めピン52aまでの距離として定義する。
また、図20に示すように、ガイド46の先端には傾斜面(テーパ面)46aが形成されており、ガイド受け54a、54bの先端にはR部54rが形成されており、ガイド46をガイド受け54a、54bの間に挿入し易くなっている。ガイド46の幅W1を有する直線部からテーパ面56aに移る点をGから、ガイド受け54a、54bの幅W2を形成する面からR部54rに移る点Oまでの垂直方向の距離L2を、ガイド46からガイド受け54a、54bまでの距離として定義する。
次に、ツールの収納動作における第1及び第2の位置決め機構の動作について説明する。
図21はツール側ツールチェンジャ2Bが取り付けられたツール8をツールホルダ50の収納位置の真上に移動した状態を示す側面図である。第1及び第2の位置決め機構によりツール8の位置決めを行なうには、図21に示すようにツール8をツールホルダ50の収納部の真上に移動してから、ツール8を下方に移動することが好ましい。図21に示す様態において、距離L2のほうが距離L1より僅かに小さくなっており、ツール8を垂直下方に移動すると、まず第2の位置決め機構によりツール8の下部がおおまかに位置決めされ、その後、第1の位置決め機構によりツール8の上部が精度よく位置決めされる。この位置決め動作によりツール8を確実に収納位置に導くことができる。
ところが、ロボットアーム6の制御がうまくいかずに傾斜してしまった場合や、ツール8を作業員が人手でツールホルダ50に収納するような場合、図22、図23に示すように、ツール8が傾いた状態でツールホルダ50の収納位置に移動させてしまうおそれがある。
図22は、ツール8、すなわち、ツール側ツールチェンジャ2Bの上部が手前になるように角度−θだけ傾斜した状態を示す。図22に示す状態では、距離L2のほうが距離L1より僅かに小さくなっており、ツールをそのまま垂直下方に移動すると、ガイド46のほうが先にガイド受け54aに当接する。これにより、ツール8の傾き、すなわちツール側ツールチェンジャ22Bの傾きが小さくなるように修正され、第1の位置決め機構の距離L1がゼロとなる前にブッシュ45aの位置決め孔が位置決めピン52aの真上付近に位置するようになる。したがって、第1の位置決め機構も作動し、ツール8は収納位置まで確実に導かれる。
図23は、ツール側ツールチェンジャ2Bの下部が手前になるように角度θだけ傾斜した状態を示す。図23に示す状態では、図22に示す状態とは異なり、距離L1のほうが距離L2より小さくなっている。これは、ブッシュ45aの位置決め孔の中心軸が、図21に示すように、ガイド46の中心軸から距離Sだけずれた位置にあるためである。
図23に示す状態からツール8を垂直下方に移動すると、図24に示すように、距離L1がゼロになる前に、すなわち、ブッシュ45aの位置決め孔が位置決めピン52aに嵌合する前に、ガイド46の傾斜面46aがガイド受け54bのR部54rに当接する。そのままツールを垂直下方に移動すると ガイド46がガイド受け54bに案内されてツールの8の傾きが小さくなる。すると、図25に示すように、距離L2が小さくなるに連れてツール8の傾きが小さくなり、これに伴って支持板45が回動して上方に移動し、距離L1が大きくなっていく。そして最終的に、図26に示すように、ツール側ツールチェンジャ2Bの傾きは無くなって垂直となり、ブッシュ45aが回動して位置決めピン52aの真上に位置するようになる。このとき、第1の位置決め機構の距離L1は第2の位置決め機構の距離L2より僅かに大きくなる。
図26に示すようにツール8が垂直になった後、ツール8を下方に移動すると、ガイド46の傾斜面46aがガイド受け54bにより案内されて、ガイド受け54aの方向に移動するため、ツール側ツールチェンジャも水平方向に移動する。このとき、図27に示すように、第1の移動機構の距離L1と第2の移動機構の距離L2はともに小さくなっていく。そのままツール8を下方に移動すると、第2の位置決め機構の距離L2がゼロとなった後(すなわち、ガイド46の直線部がガイド受け45bの直線部に係合した後)、図28に示すように、第1の位置決め機構の距離L1がゼロになる(すなわち、ブッシュ45aの位置決め孔の入り口に位置決めピン52aの円柱部が係合する)。このように、ツール8(ツール側ツールチェンジャ2B)は、第2の位置決め機構によりおおまかに収納位置(水平位置)に案内された後に、第1の位置決め機構によりより精度高く収納位置(水平位置)に案内される。
図28に示す状態は、第1の位置決め機構及び第2の位置決め機構の両方が作動している状態である。そこで、そのままツール8を下方に移動すれば(ツール8の重力で下降させる)、第1の位置決め機構と第2の位置決めにより案内されて、ツール8は収納位置に確実に導かれ、図29に示す状態となる。図29に示す状態は、ツール側ツールチェンジャ2Bの支持板45がツールホルダ50のツール支持部材52上に載置され、第1の位置決め機構のピン52aがブッシュ45aの位置決め孔に完全に嵌合し、且つ第2の位置決め機構のガイド46がガイド受け54a、54bの間に挿入された状態である。
ツール側ツールチェンジャ2Bの支持板45がツールホルダ50のツール支持部材52上に載置されることにより、ツール8の垂直方向の収納位置が決まる。また、ピン52aがブッシュ45aの位置決め孔に完全に嵌合することで、ツール8の水平方向の収納位置が決まる。さらに、ガイド46がガイド受け54a、54bの間に挿入されることにより、ツール8の傾きが防止され垂直となる。このように、図29に示す状態において、ツール8はツールホルダ50の収納位置に精度よく配置され収納されている。
作業員がツール8を手で持ちながら収納動作を行っていた場合は、図29に示す状態となったらツール8又はツール側ツールチェンジャ2Bから手を放し、ツール8の収納が完了する。ロボットアーム6により収納動作を行っていた場合は、図30に示すように、ロボットアーム6を水平に引っ張ることで、アーム側ツールチェンジャ2Aをツール側ツールチェンジャ2Bから取り外し、ツール8の収納が完了する。アーム側ツールチェンジャ2Aを外すときは、ツール側ツールチェンジャ2Bのガイド46がガイド受け54aに当接することでツール側ツールチェンジャ2Bが保持される。これにより、アーム側ツールチェンジャ2Aを水平方向に引っ張るだけで簡単にツール側ツールチェンジャ2Bからアーム側ツールチェンジャ2Aを離脱させることができる。
以上のように、ツール側ツールチェンジャ2Bのツールチェンジャのガイド46とツールホルダ50の一対のガイド受け54a、54bとで形成される第2の位置決め機構の位置決め精度は、ツール側ツールチェンジャ2Bのブッシュ45aの位置決め孔とツールホルダ50の位置決めピン52aとで形成される第1の位置決め機構の位置決め精度より低く設定されている。これにより、まず第2の位置決め機構によりツール8をおおまかな水平位置に案内し且つ傾きを無くして垂直方向に修正した後、第1の位置決め機構によりツール8を精度よく水平位置に案内することができる。