以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明の実施形態に係る把持部位置決め治具が使用されるワーク把持装置1について、主として図1〜図5を参照しながら詳細に説明する。
ワーク把持装置1は、図1に示すように、多関節ロボット100のロボットアーム101の先端部102に装着して種々のバリエーションを有するワークWを把持する把持装置(ロボットハンド)として好適に使用することができる。
本実施形態では、ワーク把持装置1を後記する姿勢制御装置2に搭載して多関節ロボット100に装着する場合について説明する。
多関節ロボット100は、搬送装置200によって取り出し位置まで搬送されてきたパレット201に載置されたワークWをロボットアーム101の先端部102に装着されたワーク把持装置1(図2を併せて参照)によりワークWの被把持部Wa(図2)を3箇所で把持し、ロボットアーム101を旋回させ把持状態を解除して搬出装置300まで搬送(ワークW1参照)する工程を担っている。
ここでは、製品のバリエーションに応じて被把持部Waとなる凹部や凸部の位置が変わるトランスミッションケースやトルクコンバータケース等のワークWを把持する場合を想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種のワークを把持する場合に適用可能である。
なお、本実施形態においては、ワーク把持装置1を姿勢制御装置2に搭載して多関節ロボット100に装着する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、姿勢制御装置2を介さずにワーク把持装置1をロボットアーム101の先端部102に装着してもよい。
ワーク把持装置1は、図2に示すように、ロボットアーム101に連結される支持プレート22と、この支持プレート22に配設されワークWの被把持部Waを把持する把持機構(把持部)11と、この把持機構11を自在移動可能に支持する自在移動機構である3軸移動機構12と、把持機構11の移動を規制する移動規制装置13と、を備えている。すなわち、把持機構11は、ワーク把持装置1における移動が許容された状態と規制された状態とに切り替えられ得る。
そして、ワーク把持装置1は、図1に示すように、把持機構11を種々のワークに適合させるために、把持機構11をワークの種類に応じて移動させて位置決めするための把持部位置決め治具400を多関節ロボット100の近傍に別途備えている。この把持部位置決め治具400の詳細については後記する。
なお、本実施形態において、ワーク把持装置1は、同様の把持機構11を3箇所に配設して、ワークWに形成された貫通穴等の凹部からなる被把持部Waを3箇所の把持機構11で把持しているが(図1参照)、3箇所に限定されるものではなく、ワークWの形状に応じて適宜1箇所でもよく、2箇所以上でもよい。3箇所に配設された把持機構11は同様の構成である。
把持機構11は、図3に示すように、くさび形状部111aが形成された駆動部材111と、駆動部材111により拡径方向に移動する従動部材112と、駆動部材111および従動部材112を収容するホルダ113と、駆動部材111を往復移動して従動部材112を駆動させる駆動手段114(図2)と、を備えている。
駆動部材111は、図4(b)に示すように、円柱形状をなし、先端部には円周方向に3箇所形成された平坦面からなるくさび形状部111aを備えている。
従動部材112は、図4(c)に示すように、ほぼ矩形形状をなし、円周方向に並べて3箇所に配設されている。従動部材112は、外側の一方の面にくさび形状部111aに適合する勾配部112aが形成され、内側の他方の面に被把持部Waに接合する接合部112bが形成されている。
接合部112bは、被把持部Waの穴形状に適合するように断面視で円弧状に形成されているが、これに限定されるものではなく、摩擦係数の高いゴム部材やローレット等の滑り止め加工を施してもよい。
なお、勾配部112aは、平坦面からなるくさび形状部111aに適合するように平坦面で形成され、接合部112bはワークWの被把持部Waに適合するように断面視で円弧状に形成されているが、これに限定されるものではなく、ワークWの重量や摺動部の耐摩耗性、加工性の難易度等を考慮して適宜定めればよく、例えば勾配部112aとくさび形状部111aを断面視で円弧状に形成してもよい。
ホルダ113は、図3に示すように、駆動部材111を図3(a)の上下方向に往復移動自在に支持する本体部113aと、この本体部113aの先端に螺合して接合された先端部113b(図4(a)参照)と、を備えている。
そして、ホルダ113は、本体部113aの内周面113cで駆動部材111を往復移動自在に支持し、先端部113bの支持部113d,113e(図3(b)参照)で従動部材112を図3(a)の左右方向(水平方向)に往復移動自在に支持している。
駆動手段114は、図2に示すように、エアシリンダ等の往復駆動手段を駆動部材111に連結し、駆動部材111を往復移動できるように構成している。
把持機構11は、駆動手段114により、駆動部材111を図3(a)の上下方向に往復移動することで、従動部材112を図3(a)の左右方向に移動して(図4(b)参照)、ワークWの被把持部Waに従動部材112の接合部112bを押し付けるようにして(図4(d)参照)、ワークWを把持する機構である(図2参照)。
3軸移動機構12は、図2に示すように、支持プレート22に配設されたX軸方向移動機構121と、このX軸方向移動機構121に支持されたY軸方向移動機構122と、このY軸方向移動機構122にブラケット124を介して支持されたZ軸方向移動機構123と、を備えている。
3軸移動機構12は、3軸とも同様に構成され、例えば、X軸方向移動機構121では、X軸方向に配設されたガイドレール121aと、このガイドレール121aに沿って移動自在に配設されたホルダ121bと、を備えている。
かかる構成により、ワーク把持装置1は、3軸移動機構12により、把持機構11を前後(X軸)、左右(Y軸)、上下(Z軸)方向の3軸方向に自在に移動できるように支持している。
なお、本実施形態においては3軸移動機構12を採用したが、これに限定されるものではなく、ワークWの被把持部Waの位置関係を考慮して適宜自由度を設定するものであり、1軸や2軸でもよいし、さらに回転軸を備えた移動機構を採用することもできる。
移動規制装置13は、3軸とも同様に構成され、それぞれX軸方向移動機構121、Y軸方向移動機構122、およびZ軸方向移動機構123に設けられている。例えば、X軸方向移動機構121では、ガイドレール121aをクランプしてホルダ121bの移動を規制するロック機構を採用している。ただし、移動規制装置13におけるロック方式は、特に限定されるものではなく、エア式、電磁式等の種々の形態を採用することができる。
かかる構成により、ワーク把持装置1は、移動規制装置13より、把持機構11をワークWの被把持部Waに位置合わせした状態でロックして移動しないように保持することができる。
このため、ワーク把持装置1は、後記する把持部位置決め治具400により(図5参照)、把持機構11を自在な位置に調整して被把持部Waの位置が異なる種々のワークに柔軟に対応することができる。
<姿勢制御装置>
姿勢制御装置2は、図2に示すように、ロボットアーム101の先端部102に固定する固定プレート21と、固定プレート21に対してワーク把持装置1の支持プレート22を弾性支持する弾性機構3と、支持プレート22の変位検知手段4と、ワーク把持装置1の姿勢を検知する姿勢検知装置6と、を備えている。
なお、本実施形態においては、姿勢検知装置6を備えた場合について説明するが、これに限定されるものではなく、ワークWがパレット201(図1)に正規の状態で位置決めされている場合には姿勢検知装置6を備えなくともよい。
固定プレート21は、支持プレート22を支持するベースとなる部材であり、平面視で矩形形状をなしている(図1参照)。
支持プレート22は、固定プレート21に四隅に配設された弾性機構3(図1を併せて参照)を介して弾性支持されている。支持プレート22には、把持機構11がワークWの所定の箇所(本実施形態では3箇所)を確実に把持できるように、姿勢検知装置6が所定の箇所(本実施形態では3箇所)に配設されている。
弾性機構3は、図2に示すように、固定プレート21と支持プレート22の間に配設されたコイルスプリング31により、支持プレート22を固定プレート21から離れる方向(図2の下方向)に付勢して、支持プレート22を固定プレート21に対して弾性支持している。
なお、本実施形態においては、弾性機構3のばね部材としてコイルスプリング31を採用したが、これに限定されるものではなく、姿勢制御に必要な荷重および撓み量が確保できるものであれば、ねじりコイルばね、板ばね、皿ばね等の種々のばね部材を採用することができる。また、ばね部材に限定されるものではなく、ガススプリングを採用することもできる。
すなわち、ワーク把持装置1の動作内容に応じて、その姿勢制御に必要な荷重や撓み量(ストローク)を考慮して、適宜適切なばね部材またはガスプリングを選択して好適な姿勢制御を実現する。ばね部材は、たわみ量に応じて荷重が比例するので、姿勢制御力を徐々に増大させる用途に適し、ガススプリングは、たわみ量が変化しても一定の荷重を発生することができるので、当初から安定した一定の姿勢制御力を確保する用途に適する。
変位検知手段4は、支持プレート22の固定プレート21に対する変位を検知する検知装置であり、近接センサ等の検知装置が使用される。
変位検知手段4は、支持プレート22の原位置を検知する第1検知器41および第1被検知部41aと、ワーク把持装置1による把持位置を検知する第2検知器42および第2被検知部42aと、支持プレート22の過剰変位を検知する第3検知器43および第3被検知部43aと、を備えている。
かかる構成により、支持プレート22が図8に示す原位置から固定プレート21に近づく方向に移動し、第2被検知部42aが第2検知器42の位置までくるとワーク把持装置1による把持位置にあることを検知し(図9参照)、支持プレート22が把持位置を行き過ぎて第3被検知部43aが第3検知器43の位置までくると支持プレート22の過剰変位を検知することができる(図12(c)参照)。
姿勢検知装置6は、図2に示すように、ワークWに当接させるサポートシャフト5と、サポートシャフト5の先端に設けられた可撓性部材5aと、サポートシャフト5を出没自在に内装する外筒61と、サポートシャフト5をワークWに押し付ける方向に付勢する付勢手段62と、サポートシャフト5がワークWに当接していることを検知する当接検知手段63と、外筒61を図3の上下方向に移動するエアシリンダ64と、を備えている。
ここで、可撓性部材5aは、例えば、ゴム、発泡スチロール、スポンジ等を使用して、サポートシャフト5をワークWに当接させたときの衝撃力を緩和しワークWの損傷を防止することができる。
また、エアシリンダ64は、ワーク把持装置1における把持機構11の位置決めの際に姿勢検知装置6がワークWに干渉しないように外筒61およびサポートシャフト5を上方に逃がすための装置であり、外筒61およびサポートシャフト5を下方に下げた状態でサポートシャフト5がワークWと当接可能になる。
当接検知手段63は、近接センサ等からなり、サポートシャフト5がワークWに当接してから所定の移動量S(図9(a)参照)だけ移動し、外筒61の先端面とサポートシャフト5の先端面が面一となった状態で(図10(a)参照)、対面する位置に移動してきた被検知部63aにより、サポートシャフト5がワークWに当接してから所定の移動量だけ移動したことを検知する。
付勢手段62は、特に限定されず、コイルスプリング等を採用することができるが、付勢手段62の弾性係数は、弾性機構3のコイルスプリング31の弾性係数よりも小さく(弾性機構3の弾性係数が付勢手段62の弾性係数よりも大きく)なるように設定されている。
かかる構成により、図9に示すように、サポートシャフト5がワークWに当接してから移動する移動量S(図9(a)参照)よりも、その間にコイルスプリング31(図5参照)が撓む移動量S′(図9(b)参照)の方が小さくなる。
姿勢検知装置6は、ブラケット124に支持されて、ワーク把持装置1の把持機構11の近傍に配設されている。
姿勢検知装置6は、当接検知手段63により、ワークWを把持する従動部材112がワークWの被把持部Waに適正に挿入された状態であることを検知することができる。
つまり、ロボットアーム101(図1参照)の先端部102を近づけてサポートシャフト5がワークWに当接した状態で、さらに先端部102をワークWに近づける方向に移動させると、ワーク把持装置1とともに外筒61が図3の下方に移動してサポートシャフト5が付勢手段62の付勢力に抗して外筒61内に収容され、外筒61の先端面とサポートシャフト5の先端面が面一となってワークWに当接する。
このとき、同時に把持機構11の先端部では、ワークWを把持する従動部材112がワークWの被把持部Waに適正に挿入された状態となるように把持機構11に対して姿勢検知装置6が適正な位置および高さに配設されている。
このため、姿勢検知装置6は、サポートシャフト5がワークWに当接してから所定の移動量だけ移動し外筒61の先端面とサポートシャフト5の先端面が面一となった状態を当接検知手段63によって検知することで、ワークWを把持する従動部材112がワークWの被把持部Waに適正に挿入された状態となっていることを確認することができる。
次に、ワーク把持装置1を姿勢制御装置2に搭載して多関節ロボット100に装着して適用する場合の動作について図6から図12を参照しながら説明する。
<弾性機構3の動作>
まず、弾性機構3の動作について、主として図6と図7を参照しながら説明する。参照する図6はワークを載置するパレットの剛性が高い場合の弾性機構3の動作を示す模式的正面図であり、(a)は把持機構11の先端部を被把持部に挿入する前の状態、(b)は把持機構11の先端部を被把持部に挿入した後の状態を示す。図7はワークを載置するパレットの剛性が低い場合の弾性機構3の動作を示す模式的正面図である。
なお、図6と図7では、説明の便宜上、ワークWの傾き等を誇張して表現するが、実際には微小な変形量である。
ここで、パレット201(図1参照)は、目的や用途に応じて種々の形態が採用されるが、例えば、金属製のアングル材等で構成する場合には一般的に剛性が高く、合成樹脂等で構成する場合には剛性が低くなるため、弾性機構3の付勢力(弾性支持力)とパレット201の剛性との関係により以下のように弾性機構3は異なる機能を奏する。
<パレットの剛性が高い場合>
ワークを載置するパレットの剛性が高い場合には、弾性機構3は、ワークWの姿勢に合わせてワーク把持装置1の姿勢を制御するように動作する傾向を示す。
すなわち、弾性機構3は、図1に示すように、例えば、パレット201に載置されたワークWを把持機構11で把持しようとする際に、パレット201に載置されたワークWが所定の位置からずれていたり傾いていたりしている場合には、このずれ等によるずれ量に応じてワークWに対するワーク把持装置1の姿勢を制御する。
具体的には、図6(a)に示すように、ワークWに角度αの傾きがある場合には、ロボットアーム101(図1参照)によりワーク把持装置1をワークWに対して所定の位置に配置し、把持機構11の先端部をワークWの被把持部Waに挿入する際に、ワークWの傾き角度αに応じてワークWの被把持部Waから支持プレート22を時計回りに回転させようとするモーメントMが反作用的に加えられる。
そして、図6(b)に示すように、このようにして加えられたモーメントMがワークWに対するワーク把持装置1の角度αの傾きを適宜柔軟に吸収し、傾き角度αに応じて支持プレート22の位置や傾斜角度を補正することで、姿勢制御装置2は、ワークWに対するワーク把持装置1の姿勢を好適に制御することができる。
<パレットの剛性が低い場合>
ワークを載置するパレットの剛性が低い場合には、弾性機構3は、ワークWの姿勢をワーク把持装置1に合わせるように動作する傾向を示す。
すなわち、弾性機構3は、図1に示すように、例えば、パレット201に載置されたワークWを把持機構11で把持しようとする際に、パレット201に載置されたワークWが所定の位置からずれていたり傾いていたりしている場合には、このずれ等を補正して、ワークWの姿勢をワーク把持装置1に合わせるように機能する。
具体的には、図7(a)に示すように、把持機構11の先端部をワークWの被把持部Waに挿入する際に、弾性機構3はその付勢力(弾性支持力)により、傾き角度αでパレット201(図1参照)に載置されているワークWに付勢力(押圧力)を付与するため、パレット201のしなりや変形等によりワークWを反時計回りに回転させようとするモーメントM′が加えられる。
そして、図7(b)に示すように、このようにして加えられたモーメントM′は、ワークWの姿勢が傾き角度αよりも小さいα′になるように作用するため、ワーク把持装置1とワークWとのずれを好適に補正してワークWの姿勢をワーク把持装置1に合わせることができる。
なお、この例ではパレットのしなりや変形を小さくする方向でワークWにワーク把持装置1が正対するように機能する場合を説明したが、姿勢制御装置2が、パレットのしなりや変形を大きくする方向でワークWにワーク把持装置1が正対するように機能する場合もあり得る。
また、本実施形態においては、便宜上、パレット201の剛性が高い場合と低い場合に分けて説明したが、実際には厳格に区別されるものではなく、弾性機構3による付勢力(弾性支持力)とパレット201の剛性との関係等により複合的に動作するが、弾性機構3による付勢力を適宜調整することで好適にワークWにワーク把持装置1が正対するように制御することができる。
<ワーク把持装置の動作>
ワーク把持装置1の動作について、図8から図11を参照しながら説明する。参照する図において、図8は把持装置でワークを把持する前の状態、図9はサポートシャフトがワークに当接した状態、図10はサポートシャフトの外筒がワークに当接した状態、図11はクランプが完了した状態を示す部分正面断面図である。
ワーク把持装置1がワークWに当接しない状態から(図8(a))、ロボットアーム101の先端部102をサポートシャフト5がワークWに当接するまで近づけた状態で(図9(a))、さらに先端部102をワークWに近づける方向にSだけ移動させると、図10(a)に示すように、ワーク把持装置1とともに外筒61が図3の下方に移動してサポートシャフト5が付勢手段62の付勢力に抗して外筒61内に収容され、外筒61の先端面とサポートシャフト5の先端面が面一となってワークWに当接する。
そして、このようにして外筒61の先端面とサポートシャフト5の先端面が面一となった状態を当接検知手段63によって検知する。つまり、当接検知手段63は、サポートシャフト5がワークWに当接してから所定の移動量だけ移動したことを対面する位置に移動してきた被検知部63aにより検知する。
一方、変位検知手段4は、図10(b)に示すように、ワーク把持装置1による把持位置を検知する第2検知器42が対面する位置に移動してきた第2被検知部42aの存在を検知する。このようにして、姿勢制御装置2は、ワーク把持装置1が正規の把持位置に位置決めされたことを確認する。
このとき、ワーク把持装置1が正規の把持位置に位置決めされた状態であれば、同時に把持機構11の先端部では、ワークWを把持する従動部材112が所定の隙間δ(図10(a)参照)を形成してワークWの被把持部Waに適正に挿入された状態となっている。
このようにして、姿勢検知装置6は、サポートシャフト5がワークWに当接してから所定の移動量だけ移動し外筒61の先端面とサポートシャフト5の先端面が面一となった状態を当接検知手段63によって検知することで、ワークWを把持する従動部材112がワークWの被把持部Waに適正に挿入された状態となっていることを確認することができる。
そして、図11に示すように、ワークWに対してワーク把持装置1が所定の姿勢で位置決めされた状態で、把持機構11は、駆動手段114により、駆動部材111を従動部材112に押し込むように移動して(図11(a)参照)、ワークWの被把持部Waに従動部材112を押し付けるようにしてワークWを把持する。
<ワークが過剰にずれている場合の動作>
図1におけるパレット201に載置されたワークWが振動や外的要因により過剰な位置ずれを生じている場合におけるワーク把持装置1の姿勢制御装置2の動作について図12を参照しながら説明する。
姿勢制御装置2は、弾性機構3によっても姿勢制御しきれないようなワークWが過剰な位置ずれを生じている場合には、その状態を姿勢検知装置6および変位検知手段4によって検知する。
ワークWが所定の載置状態から過剰にずれている場合には、図12(a)に示すように、把持機構11の先端部がワークWの被把持部Waに接近しようとすると、ワークWが過剰にずれているため把持機構11の先端部をワークWの被把持部Waに挿入することができずに把持機構11の先端部がワークWに当接する。
把持機構11の先端部がワークWに当接した状態では、ロボットアーム101の先端部102を移動させて、サポートシャフト5がワークWに当接するまで近づけようとしても、図12(b)に示すように、サポートシャフト5をワークWに当接させることができない。
このため、当接検知手段63は、サポートシャフト5が所定の移動量Sだけ移動して、外筒61の先端面とサポートシャフト5の先端面が面一となった状態を検知することができない。
そして、サポートシャフト5がワークWに当接していることを検知しない状態のままで、変位検知手段4により第2検知器42が対面する位置に移動してきた第2被検知部42aにより支持プレート22がワーク把持位置まで変位したことを検知する。
しかしながら、変位検知手段4は、第2検知器42により支持プレート22がワーク把持位置まで変位したことを検知しても、当接検知手段63によりサポートシャフト5がワークWに当接していることを検知しないので、ワーク把持装置1がワークWに対して正規の位置に位置決めされたと判定することができない。
このため、ロボットアーム101の先端部102をさらに移動させると、図12(c)に示すように、姿勢制御装置2は、変位検知手段4により第3検知器43が対面する位置に移動してきた第3被検知部43aにより支持プレート22の過剰変位を検知する。
このようにして、姿勢制御装置2は、当接検知手段63によりサポートシャフト5がワークWに当接していることを検知しない状態で、変位検知手段4により支持プレート22の過剰変位を検知することで、ワークWが過剰にずれていると判断し、ワーク把持装置1によりワークWを把持しようとする際に生じる過度な負荷を未然に検知して回避することができる。
次に、把持部位置決め治具400について詳細に説明する。
<把持部位置決め治具>
図13は、把持部位置決め治具の拡大平面図である。
把持部位置決め治具400は、図5および図13に示すように、ワーク把持装置1における移動が許容された状態と規制された状態とに切り替えられ得る把持機構11と係合可能な貫通穴等の係合凹部(係合部)420が、ワークWの種類に応じて把持機構11により把持されるワークWの被把持部Wa(図2参照)に対応した位置に設けられた治具プレート(治具本体)401を備えている。ここでは、治具プレート401は、略平板形状の例えばアルミニウム(合金を含む)等の金属製のベース部409に、係合凹部420を有する略円筒形状の例えば鉄鋼等の金属製のブッシュ410が配設されて構成されている。ただし、治具プレート401の材料は、必ずしも前記材料に限定されるものではなく、他の材料から形成されていてもよい。また、係合凹部420は、ベース部409に直接形成されていてもよい。
本実施形態では、治具プレート401には、複数種類のワークWにそれぞれ対応する複数の係合凹部420が配設されている。このような構成によれば、一つの治具プレート401で複数種類のワークWに対応することができる。これにより、コスト低減と治具保管場所の省スペース化とを図ることができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、治具プレート401に一種類のワークWに対応する係合凹部420が配設されるように構成されていてもよい。
また、把持部位置決め治具400は、ワーク把持装置1に対して治具プレート401を位置決めするための治具本体位置決め部402を備えている。治具本体位置決め部402は、図5に示すように、治具プレート401のベース部409に立設された支柱404を有しており、支柱404には、ワーク把持装置1の支持プレート22に設けられた略円筒形状のガイド部材(把持装置側セット部)221にセット可能なガイドポスト(治具本体側セット部)403が設けられている。ここでは、例えばAをBにセットするとは、AとBが特定の関係(位置関係)を満たした場合にAおよびBの両要素が一体化され、挙動を一にする関係にすることをいう。AやBは、例えば把持装置側セット部や治具本体側セット部である。
かかる構成により、治具本体位置決め部402のガイドポスト403に支持プレート22に設けられたガイド部材221を嵌合させることで、ロボットアーム101の先端部102に装着されたワーク把持装置1に対して、把持部位置決め治具400を位置決めできるようになっている。
また、把持部位置決め治具400は、ガイド部材221に支柱404のガイドポスト403が嵌合されてセットされた状態で、支柱404をワーク把持装置1の支持プレート22に固定するための固定手段であるねじ締結部材405をさらに備えている。
ただし、固定手段は、ねじ締結部材405に限定されるものではない。図14(a)は、固定手段の変形例を示す縦断面図であり、図14(b)は、固定手段の別の変形例を示す平面図である。図14(a)に示すように、例えばL字型等のピン406をガイドポスト403に形成された軸直角方向に沿う貫通孔403aに差し込んで、支柱404を支持プレート22に固定してもよい。あるいは、図14(b)に示すように、ガイドポスト403の支持プレート22から突出した部分の根元部の側面を一対の押さえ部材407a,407bで挟み、一対の押さえ部材407a,407bを例えば蝶ねじ部材408により締結することによって、支柱404を支持プレート22に固定してもよい。
図15は、図13のA−A線に沿う断面図である。図15に示すように、ブッシュ410は、円筒部411と、この円筒部411の一方の開口端に形成された鍔部412とを有している。ここで、円筒部411の内面が係合凹部420を構成している。ブッシュ410は、ベース部409においてワークの種類に応じて予め決められた所定位置に形成された貫通孔409aに円筒部411が嵌挿され、鍔部412がベース部409の表面409bに当接された状態で、ベース部409に設置されて固定されている。ブッシュ410は、例えば圧入、かしめ、接着等によりベース部409に固定される。
図16(a)(b)は、高さ方向位置が異なる係合凹部の周辺の断面図である。図16(a)に示すブッシュ410は、ベース部409の表面409b上における貫通孔409aと同軸の位置に配置された環状板を呈する嵩上げ部431に鍔部412が当接するように設置されている。すなわち、ブッシュ410の係合凹部420は、ベース部409の表面409bからワーク把持装置1側に嵩上げするように設けられた嵩上げ部431に配設されている。図16(b)に示すブッシュ410は、ベース部409の表面409b上における貫通孔409aと同軸の位置に形成された環状の段差を呈する窪み部432に鍔部412が当接するように設置されている。すなわち、ブッシュ410の係合凹部420は、ベース部409の表面409bからワーク把持装置1と反対側に窪むように設けられた窪み部432に配設されている。このような構成によれば、ワークWの種類に応じて係合凹部420の高さ方向位置を設定することができる。これにより、ワークWの被把持部Wa(図2参照)の高さ方向位置がワークWの種類によって変化したとしても対応することが可能となる。ただし、嵩上げ部431は、ベース部409に一体に形成されていてもよい。
図17は、図13のB−B線に沿う断面図である。図17に示すように、治具プレート401は、ベース部409に着脱可能に取り付けられワークWの種類に応じた位置に係合凹部420が配設されるように構成された係合部材433を有している。係合部材433は、略円筒形状を呈しており、ブッシュ410が設置される保持部434と、保持部434の上端面に連設された接続部435とを備えている。係合部材433は、ベース部409においてワークの種類に応じて予め決められた所定位置に形成された貫通孔409cに接続部435が嵌挿され、保持部434がベース部409の裏面409dに当接された状態で、ベース部409に設置されて、ねじ部材436により固定されている。
保持部434の中央には、貫通孔434aが形成されており、貫通孔434aの上開口端には環状の段差を呈する窪み部432aが形成されている。ブッシュ410は、保持部434の貫通孔434aに円筒部411が嵌挿され、鍔部412が窪み部432aに当接された状態で、係合部材433に設置されて固定されている。このような構成によれば、ワークWの種類に応じて係合凹部420の高さ方向位置を広い範囲で設定することができ、ワークWの被把持部Wa(図2参照)の高さ方向位置がワークWの種類によってかなり大きく変化したとしても対応することが可能となる。
図18は、図13のC−C線に沿う断面図である。図18に示すように、治具プレート401は、ベース部409に着脱可能に取り付けられ複数種類のワークWに応じた位置に複数の係合凹部420が配設されるように構成された係合部材441を有している。係合部材441は、略矩形の平板形状を呈しており、その上面の四隅に配置された円柱形状の接続部材442,443を間に挟んで、ベース部409に形成された開口部409eを裏面409d側から平面視して覆うように、ねじ部材444,445によりベース部409に固定されている。係合部材441には、複数種類のワークWに応じた位置にそれぞれ貫通孔441a,441b,441cが形成されており、貫通孔441a,441b,441cの上開口端には環状の段差を呈する窪み部432b,432c,432dがそれぞれ形成されている。ここでは、複数のブッシュ410が、係合部材441の貫通孔441a,441b,441cに円筒部411が嵌挿され、鍔部412が窪み部432b,432c,432dに当接された状態で、係合部材441に設置されて固定されている。このような構成によれば、一つの係合部材441を用いて複数種類のワークWに応じて係合凹部420の水平方向位置および高さ方向位置を設定することができる。なお、同じ位置に設けられたブッシュ410を複数種類のワークWに対して兼用することも勿論可能である。
図19(a)は図13のD−D線に沿う断面図であり、図19(b)は(a)の平面図である。図19に示すように、治具プレート401(図13参照)は、貫通孔441dに嵌挿されたブッシュ410の係合凹部420のワーク把持装置1側(上側)へ進退移動可能に設けられた延長部材451を有している。延長部材451は、平面視してフック形状を呈しており、その端部が軸部材453のまわりで図19(b)の矢印方向に回動可能に係合部材441に取り付けられている。延長部材451のフック形状の内側には、係合凹部420と同径の内面452が形成されており、延長部材451を回動させてブッシュ410の係合凹部420の上側へ進出させることにより、係合凹部420の軸方向長さを上側に延長させることが可能となっている。このような構成によれば、ワークWの種類が変更されるときに延長部材451を係合凹部420の上側へ進出させたり係合凹部420の上側から退避させたりすることによって、ワークWの種類に応じて係合凹部420の高さ方向位置を設定することができる。これにより、ワークWの被把持部Waの高さ方向位置がワークの種類によって変化したとしても対応することが可能となる。なお、延長部材451は、係合凹部420のワーク把持装置1側(上側)へ直線方向にスライドして進退移動可能に設けられてもよい。また、延長部材451は、ベース部409に取り付けられてもよい。
次に、把持部位置決め治具400を用いて、ワーク把持装置1における把持機構11をワークWの種類に応じて移動させて位置決めする把持部位置決め方法について説明する。
まず、多関節ロボット100を駆動させることにより、ロボットアーム101の先端部102に装着されたワーク把持装置1を移動させて、ワーク把持装置1のガイド部材221に把持部位置決め治具400の治具本体位置決め部402のガイドポスト403を嵌合させる。これにより、ワーク把持装置1に対して把持部位置決め治具400を位置決めする。ただし、作業者が把持部位置決め治具400を移動させて、ワーク把持装置1に対して把持部位置決め治具400を位置決めするようにしてもよい。
続いて、ねじ締結部材405を用いて、把持部位置決め治具400の支柱404をワーク把持装置1の支持プレート22に固定する。これにより、作業者による把持機構11の位置決め作業の間、ワーク把持装置1と治具プレート401とが誤ってずれたり分離したりすることが無くなるため、位置決め作業はより容易となる。
そして、把持機構11をワーク把持装置1における3次元移動が許容された状態に設定する。続いて、ワーク把持装置1に対して把持部位置決め治具400を位置決めした状態で、作業者が、把持機構11をワーク把持装置1において移動させて、把持対象のワークWの種類に応じて予め決められた位置にある係合凹部420に、把持機構11の先端を挿入して係合させる。続いて、移動規制装置13により3軸移動機構12の移動を規制することで、把持機構11をワーク把持装置1における3次元移動が規制された状態に設定する(ロックする)。ワーク把持装置1が複数の把持機構11を備える場合、前記工程を繰り返す。これにより、ワーク把持装置1における把持機構11が、ワークWの種類に応じて移動させられて位置決めされる。
次に、ねじ締結部材405を緩めて、把持部位置決め治具400の支柱404とワーク把持装置1の支持プレート22との固定を解除する。続いて、多関節ロボット100を駆動させることにより、ロボットアーム101の先端部102に装着されたワーク把持装置1を移動させて、把持部位置決め治具400からワーク把持装置1を離間させる。ただし、作業者が把持部位置決め治具400を移動させて、ワーク把持装置1から把持部位置決め治具400を離間させてもよい。最後に、多関節ロボット100を駆動させることにより、ワーク把持装置1を予め決められた把持装置基準位置に復帰移動させる。
前記したように、本実施形態では、ワーク把持装置1における把持機構11をワークWの種類に応じて移動させて位置決めするための把持部位置決め治具400は、ワーク把持装置1における移動が許容された状態と規制された状態とに切り替えられ得る把持機構11と係合可能な係合凹部420が、ワークWの種類に応じて把持機構11により把持されるワークWの被把持部Waに対応した位置に設けられた治具プレート401と、ワーク把持装置1に対して治具プレート401を位置決めするための治具本体位置決め部402と、を備えている。
このような本実施形態によれば、ロボットアーム101に装着されたワーク把持装置1に備えられた把持機構11を、ロボットやワーク把持装置1に把持機構11を移動させるための駆動装置を設けることなく、ワークWの種類の変更に応じて、作業者が移動させて位置決めして、ワーク把持装置1における把持機構11の位置を容易かつ確実に変更することが可能となる。
したがって、ロボットアーム101の先端側を軽量化しながらバリエーションを有する種々のワークに対応することが可能となる。
また、本実施形態では、治具本体位置決め部402は、ワーク把持装置1に設けられたガイド部材221にセット可能なガイドポスト403が設けられ治具プレート401に立設された支柱404を有している。このような構成によれば、ワーク把持装置1と治具プレート401とを支柱404を介してコンパクトな構成で位置決めすることができる。また、ワーク把持装置1と治具プレート401との間において把持機構11を移動させるための空間を広く確保することができ、作業者による把持機構11の位置決め作業が容易となる。
次に、前記した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成(変形例)に関して説明する。前述した実施形態と同様の構成および作用は、以下の実施形態に取り込まれるものとして詳細な説明を適宜省略し、相違する点について主に説明する。
<変形例>
図20は、異なる位置に係合凹部が配設された2種類の係合部材をベース部の同じ位置に交換可能に取り付けて使用する変形例を示す図であり、(a)は一方の係合部材を使用した場合の平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図、(c)は他方の係合部材を使用した場合の平面図、(d)は(c)のF−F線に沿う断面図である。
図20(a)〜(d)に示すように、治具プレート401は、ベース部409に着脱可能に取り付けられ被把持部Waの位置が異なる2種類のワークWの種類に応じた異なる位置に係合凹部420が配設された2種類の係合部材461,462を有していてもよい。係合部材461,462は、略矩形の平板形状を呈しており、ベース部409に形成された開口部409fを裏面409d側から覆うように配置されて、ねじ部材463によりベース部409に固定されている。係合部材461,462には、把持対象のワークWに応じた異なる位置にそれぞれ貫通孔461a,462aが形成されている。ブッシュ410は、係合部材461,462の貫通孔461a,462aに円筒部411が嵌挿され、鍔部412が係合部材461,462の表面461b,462bに当接された状態で、係合部材461,462にそれぞれ設置されて固定されている。このような構成によれば、ワークの種類が変更されるときに係合部材461(462)のみを交換してベース部409に取り付けることで、ワークWの種類に応じた把持部位置決め治具400を構成することが可能となる。これにより、コスト低減と治具保管場所の省スペース化とを図ることができる。なお、交換される係合部材は、2種類に限定されるものではなく、3種類以上であってもよい。また、係合部材461,462は、ベース部409に形成された開口部409fを表面409b側から覆うように配置されてもよい。
図21は、治具プレートを位置決めして設置するための台座を備えた変形例を示す模式的斜視図であり、(a)は治具本体位置決め部が治具プレートに設けられた場合を示す図、(b)は治具本体位置決め部が治具プレートではなく台座に設けられた場合を示す図である。
図21(a)(b)に示すように、把持部位置決め治具400,470は、治具プレート401,471を位置決めして設置するための台座477,478をそれぞれ備えていてもよい。このような構成によれば、台座477,478により治具プレート401,471の高さが作業者の目線に近くなるため、作業者による把持機構11の位置決め作業が容易となる。また、図21(b)に示すように、治具本体位置決め部472は、治具プレート471ではなく台座478に設けられていてもよい。この場合、治具本体位置決め部472は、ワーク把持装置1に設けられたガイド部材221(図5参照)にセット可能なガイドポスト473(台座側セット部)が設けられ台座478に立設された支柱474を有している。また、治具プレート471には、治具本体位置決め部472との干渉を避けるための切欠き部475,476が形成されている。このような構成によれば、位置決め機能を台座478に集約することにより、治具プレート471を複雑化せずに済み、管理し易くなる。
また、図21に示すように、台座477,478は、当該台座477,478の移動を可能にする可動機構479(図21(b)では図示せず)をそれぞれ有することが好ましい。このような構成によれば、作業者が手作業で把持機構11の位置を変更する際に、ワーク把持装置1が台座477,478上に位置決めされるまで移動せずに、せいぜい台座477,478の近傍への移動にとどまるような構成が採用される可能性があるが、このような場合であっても、台座477,478を容易に移動させて、ワーク把持装置1を治具プレート401,471に位置決めすることができる。なお、可動機構479は、手動のためのキャスタ等の車輪に限定されるものではなく、例えば、床に敷設された線状のラックに、台座477,478に回転可能に設けられたピニオンギアを噛合させ、モータ等の駆動装置でピニオンギアを回転駆動させることにより、台座477,478を移動させる構成とされてもよい。
また、前記した実施形態においては、被把持部WaがワークWに形成された貫通穴等の凹部であり、凹部を内側から外側に向けて押圧して把持するインナータイプの把持機構を採用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、被把持部がボス等の凸部である場合には、凸部を外側から内側に向けて押圧して把持するコレットチャック方式のアウタータイプの把持機構を採用することもできる。
アウタータイプの把持機構11′について図22〜図24を参照しながら説明する。参照する図22はアウタータイプの把持機構を説明するための斜視図であり、(a)は外観を示し、(b)は内部構造を示す断面図である。図23はアウタータイプの把持機構の構成および動作を示す断面正面図であり、(a)は把持する前の状態、(b)は把持した状態を示す。図24はアウタータイプの把持機構の構成を説明するための一部分解斜視図である。なお、以下の説明において、前記した実施形態とは把持機構11との相違のみであるので他の構成の詳細な説明は省略する。
把持機構11′は、図22および図23に示すように、くさび形状部111a′が形成された駆動部材111′と、くさび形状部111a′に適合する勾配部112a′が形成され拡径および縮径方向に移動する従動部材112′と(図24を併せて参照)、駆動部材111′に内設され従動部材112′を軸方向に移動自在に支持するホルダ113′と、従動部材112′を往復移動して従動部材112′を拡径および縮径させる駆動手段114(図2参照)に連結されたコレットバー114a′と、を備えている。
駆動部材111′は、従動部材112′を拡径縮径するように駆動する部材であり、前記した実施形態におけるホルダ113(図3参照)と同様に3軸移動機構12側に固定されている。
駆動部材111′は、図23(a)に示すように、内部に凹部111b′が形成された筒状の胴部111c′と、胴部111c′の先端部に螺入して結合されたリング形状の蓋部111d′と、蓋部111d′の内周部に形成された前記くさび形状部111a′と、を備えている。
従動部材112′は、図24に示すように、円周方向に隙間を挟んで3体を並べて全体としてコレット形状をなすように鍔状をなした根元部112c′で連結されている。
従動部材112′の外周部は、図23(a)に示すように、先端側が拡径されたテーパからなる勾配部112a′が形成されている。従動部材112′の内周部は、被把持部Wa′である凸部に適合させた貫通穴からなる被把持部Wa′との接合部112b′が形成されている。
ホルダ113′は、図24に示すように、円周方向に隙間が形成されるようにして3体を並べて配設され、全体としてリング状をなして駆動部材111′内に軸方向(図23における上下方向)に摺動自在に内設されている。ホルダ113′の内周部には、周方向に沿ってリング溝113a′が形成され、このリング溝113a′内に従動部材112′の根元部112c′とコレットバー114a′の先端部114b′が埋設されている。
ホルダ113′は、従動部材112′とコレットバー114a′を一体として連結するように保持し、駆動部材111′に対して、従動部材112′を軸方向(図23における上下方向)に摺動自在に支持するとともに、縮径および拡径方向に移動自在に支持している。
コレットバー114a′は、棒状の形状をなし、円盤状に拡径された先端部114b′と、駆動部材111′の凹部111b′に摺動自在に内設されるガイドリング114c′と、を備えている。コレットバー114a′の先端部114b′は、従動部材112′の根元部112c′に当接した状態でホルダ113′の内周部に埋設されている。
かかる構成により、把持機構11′は、図23(a)に示すように、駆動手段114(図2参照)により、コレットバー114a′を図23(a)の下方向に移動すると、従動部材112を図23(a)の拡径方向に移動して、非把持状態にすることができる。
一方、図23(b)に示すように、把持機構11′は、駆動手段114(図2参照)により、コレットバー114a′を図23(b)の上方向に移動すると、従動部材112′を縮径方向に移動して、ワークW′の被把持部Wa′に従動部材112′の接合部112b′を押し付けるようにして、ワークW′を把持することができる。
図25は、被把持部がボス等の凸部である場合に使用される把持部位置決め治具の係合凸部周辺の拡大断面図であり、(a)は把持機構による把持点の高さ方向位置がベース部の表面よりもワーク把持装置側にある場合を示し、(b)は把持機構による把持点の高さ方向位置がベース部の表面よりもワーク把持装置と反対側にある場合を示す。
図25(a)に示すように、把持部位置決め治具480の治具プレート481は、ベース部489に着脱可能に取り付けられワークW′(図23参照)の種類に応じた位置に係合凸部492が配設されるように構成された係合部材490を有している。係合部材490は、略円柱形状を呈しており、円柱形状の嵩上げ部491と、嵩上げ部491のワーク把持装置側の端面に連設された円柱形状の係合凸部492と、嵩上げ部491のワーク把持装置と反対側の端面に連設されたおねじ部493とを備えている。係合部材490は、嵩上げ部491がベース部489の表面489bに当接するまで、おねじ部493をベース部489においてワークの種類に応じて予め決められた所定位置に形成されたねじ穴489aにねじ込むことにより、ベース部489に固定されている。
また、図25(b)に示すように、治具プレート481は、ベース部489に着脱可能に取り付けられワークW′の種類に応じた位置に係合凸部492が配設されるように構成された係合部材494を有している。係合部材494は、有底円筒形状を呈しており、底面である窪み部497の中央に係合凸部492が立設される保持部495と、保持部495の上端面に連設された接続部496とを備えている。係合部材494は、ベース部489においてワークW′の種類に応じて予め決められた所定位置に形成された貫通孔489cに接続部496が嵌挿され、保持部495がベース部489の裏面489dに当接された状態で、ベース部489に設置されて、ねじ部材464により固定されている。
このような構成によれば、嵩上げ部491の高さ寸法や窪み部497の深さ寸法を変更することにより、ワークW′の種類に応じて係合凸部492の高さ方向位置を設定することができる。これにより、ワークW′の被把持部Wa′(図23参照)の高さ方向位置がワークW′の種類によって変化したとしても対応することが可能となる。なお、図25(a)に示す係合部材490を、ベース部489の表面489bからワーク把持装置と反対側に窪むように設けられた窪み部(図示せず)に配置して、係合凸部492の高さ方向位置を設定してもよい。
前記したように、把持機構と係合可能な係合部は、把持機構がワークの被把持部を外側から内側に向けて押圧して把持するアウタータイプの場合には係合凸部492とし、把持機構がワークの被把持部を内側から外側に向けて押圧して把持するインナータイプの場合には係合凹部420とすることができる。
このように構成すれば、把持機構11がアウタータイプ、インナータイプ、あるいはこれらの両タイプが混在する場合にも対応することができる。また、複雑な構造のワークの把持にも対応することができる。
なお、ワークの被把持部が凸部である場合に、当該凸部は、前記したボス等の円柱形状に限定されるものではなく、リブ等の直方体形状(衝立形状)であってもよい。この場合、把持機構11′は、リブ等の直方体形状の凸部の相対する2面を外側から内側に向けて押圧してワークを把持するものであり、この把持機構11′と係合可能な把持部位置決め治具の係合凸部は、ワークの被把持部であるリブ等の直方体形状の凸部に対応した形状に形成される。
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態(変形例を含む)に記載した構成に限定されるものではなく、前記した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。