[第1の実施形態]
以下、図1〜図10を用いて、本発明の第1の実施形態による回転電機の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による回転電機の全体構成について説明する。ここでは、回転電機として、車両用交流発電機を例にして説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による回転電機の全体構成を示す断面図である。
車両用交流発電機23は、回転子4と、固定子5とを備えている。回転子4は、シャフト2の中心部に界磁巻線13を備え、その両側に磁性材料にて成形されたフロント側爪形磁極11とリヤ側爪形磁極12からなる回転子鉄心が界磁巻線13を覆うように両側から挟むように配置される。フロント側爪形磁極11とリヤ側爪形磁極12とは、爪部が互いに対向し、かつ、一方の爪形磁極が他方の爪形磁極に噛み合うように配置される。
回転子4は、固定子5の内周側に、僅かなギャップを介して対向配置されている。回転子4は、フロントベアリング3及びリヤベアリング10の内輪にシャフト2が挿通され、回転自在に支持されている。
固定子5は、固定子鉄心6と固定子巻線7から構成される。固定子鉄心6は、環状に形成された薄板鋼板が複数枚積層され、内周側には突出した歯部(ティース)とからなり、各歯部の間にスロットが形成されている。各々のスロットに各相の固定子巻線7が複数のティースをまたいで夫々のスロットに挿入され、装着される。固定子5の両端は、フロントブラケット18とリヤブラケット19によって保持されている。
シャフト2の一方の端部には、プーリ1が取り付けられている。シャフト2の他方の端部には、スリップリング14が設けられ、ブラシ15と接触し界磁巻線13に電力を供給している。更に、回転子4のフロント側爪形磁極11とリヤ側爪磁極12の両端面には、外周側に複数の羽根を有する冷却ファンであるフロントファン16とリヤファン17が設けられ、回転することによる遠心力によって、外部からの空気を導入し、内部を冷却した空気を外部に排出するように、空気を流通させるようになっている。
固定子巻線7は、本例では電気角が異なる6つの相の巻線で構成されており、2つの相の固定子巻線を直列に接続している。固定子巻線7から取り出される口出し線は、3箇所となり、整流器20に接続されている。整流器20は、ダイオード等の整流素子から構成され、全波整流回路を構成している。例えばダイオードの場合、カソード端子201はダイオード接続端子21に接続されている。また、アノード側202の端子は車両用交流発電機本体に電気的に接続されている。リヤカバー22は整流器20の保護カバーの役割を果たしている。
次に、発電動作について説明する。
まず、エンジンの始動に伴ってクランクシャフトからベルトを介してプーリ1に回転が伝達されるため、シャフト2を介して回転子4を回転させる。ここで、回転子4に設けられた界磁巻線13にスリップリング14を介してブラシ15から直流電流を供給すると界磁巻線13の内外周を周回する磁束が生じるため、回転子4におけるフロント側爪形磁極11とリヤ側爪形磁極12にN極、又は、S極が周方向に交互に形成される。この界磁巻線13による磁束は、フロント側爪形磁極11のN極から固定子鉄心6を通って固定子巻線7の周りを周回し、回転子4のリヤ側爪形磁極12のS極に到達することで回転子4と固定子5を周回する磁気回路が形成される。このように回転子にて生じた磁束が固定子巻線7と鎖交するため、U相、V相、W相の固定子巻線7のそれぞれに交流誘起電圧が発生し、全体としては3相の交流誘起電圧が生じる。
このように発電された交流電圧は、ダイオード等の整流素子で構成された整流器20によって、全波整流されて直流電圧に変換される。整流された直流電圧は一定電圧になるようにICレギュレータ(図示せず)で界磁巻線13に供給する電流を制御することで達成している。
次に、短節巻により巻回した従来の固定子の構成を図2〜図4に示す。
図2は、短節巻により巻回した従来の固定子のU1相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図3は、短節巻により巻回した従来の固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子巻線の配置図である。図4は、短節巻により巻回した従来の固定子のスロット内における各相のコイル配置図である。
ここで、固定子巻線に用いる環状コイルの巻回ピッチが、電気角180°未満で、複数のティースを跨いで夫々のスロットに挿入されるものを短節巻と称する。尚、固定子巻線に用いる環状コイルの巻回ピッチが、電気角で180°(磁極ピッチと等しい間隔)で複数のティースを跨いで夫々のスロットに挿入されるものを全節巻と称する。
図2に示すように、固定子巻線7は、環状に巻回され成形されたコイルを渡り線で複数連結した形態で構成され、12極で3相巻線が2組の場合、環状コイルの数は12コイルで各コイル間は渡り線で接続され、連続的に形成される。環状コイルの巻数は、例えば、4ターン(以下、ターンをTと記載する)である。
尚、固定子鉄心6のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
図2に示すように、U1相の固定子巻線7U1は、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは180°未満の短節巻となる。
U1相巻線7U1は、口出し線71U−Sから口出し線71U−Eに向かって、1番目の環状コイル76が左巻きで巻回され、次いで、2番目の環状コイルが右巻きで巻回されており、以後同様に、巻回方向が順に交互になるように巻回されている。U1相巻線7U1の環状コイル76は、渡り線75aによってコイルエンド部72a側で互いに隣り合うコイル同士が連結されている。渡り線75aは、口出し線71U−Sから偶数番目に位置する環状コイル76のコイルエンド部72a側で交差するように設けられている。
また、V1相からW2相の固定子巻線7についても同様の構成である。
図3は、各相のコイル配置を示している。ここで、固定子巻線7は、電気角が異なる6つの相の巻線(2つの3相巻線)から構成され、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相から構成される。U1相とU2相は1スロット分だけ隣にずれた配置となり、V1相とV2相及びW1相とW2相も同様に1スロット分だけ隣にずれた配置となる。本例では、1スロット分の電気角は30°に相当する。
各々の固定子巻線7は、図3に示すように、固定子鉄心6のスロット内にU1相巻線7U1,U2相巻線7U2,V1相巻線7V1,V2相巻線7V2,W1相巻線7W1,W2相巻線7W2の順番に挿入され、図4に示すように、スロット内に順次配置される。
短節巻で巻回された固定子巻線7の配置は、図4に示すようにスロットの半径方向に2分割され、スロット開口部側を内層、固定子鉄心6の外周側を外層となる2層巻線の配置となる。
ここで、図4において、同じ符号が付けられた、例えば、2つのU1相の環状コイルU1−1は、図2に示した環状に成形されたコイルを示している。環状の成形コイルは、2つの直線状のスロット挿入部と、2つのスロット挿入部の両端を接続する2つのコイルエンド部とからなる。図4に示した2つのU1相の環状コイルU1−1は、1つの環状に成形されたコイルのそれぞれスロット挿入部を示している。2つのスロット挿入部の両端は、スロットの両端から固定子鉄心6の軸方向両側にはみ出た部分において、それぞれ、2つのコイルエンド部により接続される。
第1の環状コイルU1−1のスロット挿入部は、間に3つのスロットS2〜S4を挟んで、第1番目のスロットS1と、第5番目のスロットS5に挿入される。2番目のU1相の環状コイルU1−2は、1番目のU1相の環状コイルU1−1が挿入されたスロットS5に隣接する6番目のスロットS6を1つ空けた第7番目のスロットS7と、間に3つのスロットS8〜S10を挟んだ第11番目のスロットS11に挿入される。尚、1番目のU1相の環状コイルU1−1と2番目のU1相の環状コイルU1−2とは、図2に示したように渡り線にて接続される。すなわち、U1相の環状コイル7U1は、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図4では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
U1相の固定子巻線は、全て、スロットの外層側に挿入される。
次に、U2相の固定子巻線7U2について説明する。
第1の環状コイルU2−1のスロット挿入部は、間に3つのスロットS3〜S5を挟んで、第2番目のスロットS2と、第6番目のスロットS6に挿入される。2番目のU2相の環状コイルU2−2は、1番目のU1相の環状コイルU1−1が挿入されたスロットS6に隣接する7番目のスロットS7を1つ空けて第8番目のスロットS8と、間に3つのスロットS9〜S11を挟んだ第12番目のスロットS12に挿入される。
尚、1番目のU2相の環状コイルU2−1と2番目のU2相の環状コイルU2−2とは、図3に示したように渡り線にて接続される。すなわち、U2相の環状コイル7U2は、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
また、図4では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
U2相の固定子巻線は、全て、スロットの外層側に挿入される。
次に、V1相の固定子巻線7V1について説明する。第1の環状コイルV1−1のスロット挿入部は、間に3つのスロットS4〜S6を挟んで、第3番目のスロットS3の外層と、第7番目のスロットS7の内層に挿入される。2番目のV1相の環状コイルV1−2は、間に3つのスロットS10〜S12を挟んで、第9番目のスロットS9の外層と、図示しない第13番目のスロットS13の内層に挿入される。
尚、1番目のV1相の環状コイルV1−1と2番目のV1相の環状コイルV1−2とは、図3に示したように渡り線にて接続される。すなわち、V1相の環状コイル7V1は、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
また、図4では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
次に、V2相の固定子巻線7V2について説明する。第1の環状コイルV2−1のスロット挿入部は、間に3つのスロットS5〜S7を挟んで、第4番目のスロットS4の外層と、第8番目のスロットS8の内層に挿入される。2番目のV2相の環状コイルV2−2は、間に3つのスロットS11〜S13を挟んで、第10番目のスロットS10の外層と、図示しない第14番目のスロットS14の内層に挿入される。
尚、1番目のV2相の環状コイルV2−1と2番目のV2相の環状コイルV2−2とは、図3に示したように渡り線にて接続される。すなわち、V2相の環状コイル7V2は、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
また、図4では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
次に、W1相の固定子巻線7W1について説明する。第1の環状コイルW1−1のスロット挿入部は、間に3つのスロットS6〜S8を挟んで、第5番目のスロットS5と、第9番目のスロットS9の内層に挿入される。2番目のW1相の環状コイルW1−2は、間に3つのスロットS12〜S14を挟んだ、第11番目のスロットS11と図示しない第15番目のスロットS15の内層に挿入される。
尚、1番目のW1相の環状コイルW1−1と2番目のW1相の環状コイルW1−2とは、図3に示したように渡り線にて接続される。すなわち、W1相の環状コイル7W1は、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
また、図4では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
W1相の固定子巻線は、全て、スロットの内層側に挿入される。
次に、W2相の固定子巻線7W2について説明する。第1の環状コイルW2−1のスロット挿入部は、間に3つのスロットS7〜S9を挟んで、第6番目のスロットS6と、第10番目のスロットS10の内層に挿入される。2番目のW2相の環状コイルW2−2は、間に3つのスロットS13〜S15を挟んだ、第12番目のスロットS12と図示しない第16番目のスロットS16の内層に挿入される。
尚、1番目のW2相の環状コイルW2−1と2番目のW2相の環状コイルW2−2とは、図3に示したように渡り線にて接続される。すなわち、W2相の環状コイル7W2は、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
また、図4では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
W2相の固定子巻線は、全て、スロットの内層側に挿入される。
固定子巻線7の配置によると、U1相の固定子巻線7U1が外層、U2相の固定子巻線7U2が外層、V1相の固定子巻線7V1が内層と外層、V2相の固定子巻線7V2が内層と外層、W1相の固定子巻線7W1が内層に配置され、W2相の固定子巻線7W2が内層に配置され、固定子鉄心6に不均一に配置される。スロットの漏れインダクタンスは、スロットの半径方向に比例関係にあり、図4で示すとスロット開口部から外周側に向けて漏れインダクタンスが連続的に増加する。
ここで、例えば、回転子の中心からスロット内の内層コイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層コイルの半径方向の中心位置を基準として、外層コイルの半径方向の中心位置を、R0+Rとする。U1相固定子巻線7U1は、図示の2個の環状コイルが全て外層に挿入されるため、半径方向の距離の合計は、4R0+4R(=2×(2R0+2R))として表す。U2相固定子巻線7U2は、図示の2個の環状コイルが全て外層に挿入されるため、半径方向の距離の合計は、4R0+4R(=2×(2R0+2R))として表す。
V1相固定子巻線7V1は、全て外層と内層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の距離の合計は、4R0+2R(=2×(R0+R+R0+0))と表せる。V2相固定子巻線7V2は、全て外層と内層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の距離の合計は、4R0+2R(=2×(R0+R+R0+0))と表せる。
さらに、W1相固定子巻線7W1は、図示の2個の環状コイルが全て内層に挿入されるため、半径方向の距離の合計は、4R0(=2×(2R0+0))として表せる。
さらに、W2相固定子巻線7W2は、図示の2個の環状コイルが全て内層に挿入されるため、半径方向の距離の合計は、4R0(=2×(2R0+0))として表せる。
W1相の固定子巻線を基準とすると、図4の全スロット数の1/6の範囲内においてU1相は、W1相に対し4R高く、V1相は、W1相に対し2R高い。そのため、スロットの内層に配置されたW1相の固定子巻線7W1はインダクタンスが低く、スロットの外層に配置されたU1相の固定子巻線7U1はインダクタンスが高くなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスが異なるアンバランスの状態が発生する。
また同様にW2相の固定子巻線を基準とすると、図4の全スロット数の1/6の範囲内においてU2相は、W2相に対し4R高く、V2相は、W2相に対し2R高い。そのため、スロットの内層に配置されたW2相の固定子巻線7W2はインダクタンスが低く、スロットの外層に配置されたU2相の固定子巻線7U2はインダクタンスが高くなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスが異なるアンバランスの状態が発生する。
各相のインダクタンスがアンバランスになると発電電流が各相異なり、固定子巻線およびダイオードの発熱量がアンバランスとなり、コイルおよびダイオードの温度上昇、また磁気加振力の増大による磁気音増大等により品質および特性面で低下する。
また、デルタ結線においては、結線内を循環する循環電流の増加により、固定子巻線の銅損として消費されるため発電効率が低下することになる。
次に、図5〜図10を用いて、第1の実施形態における回転電機の固定子の構成について説明する。
図5は、第1の実施の形態における回転電機の固定子の斜視図である。図6は、短節巻きにより巻回した第1の実施形態による回転電機の固定子におけるU1相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図7Aは、固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子A巻線の配置図である。図7Bは、固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子B巻線の配置図である。図8は、短節巻きにより巻回した第1の実施形態による回転電機の固定子のスロット内における各相のコイル配置図である。図9は、第1の実施形態による回転電機の各相の固定子巻線を六角形状に結線した結線図である。図10は、第1の実施形態による回転電機の各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
図5に示すように、固定子5は、内周面の周方向に複数のスロットを有する環状の固定子鉄心6と、その各々のスロットの内周面に装着されたU字状の絶縁紙8を介して、各相の固定子巻線7を装着し、固定子巻線7をスロット内に保持するためスロット最内周側にスロット楔9を有する。この例では、スロット数は72である。このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は、12極となっている。
固定子鉄心6のスロットから固定子鉄心6の軸方向両側にはみ出た部分は、2つのスロット間を跨ぐコイルエンド72a,72bである。また、固定子巻線7からは、図示のように、4本の口出し線71がコイルエンド72a側に合計で3箇所取り出されて、3端子として整流器20に接続される。また、接続点73が4本一組の3箇所が取り出され、溶接または半田付けで電気的に接合される。これは、図6を用いて、後述するように、電気角が異なるU1相〜W2相の6相分の固定子巻線を、U1相とU2相の固定子巻線を直列接続、V1相とV2相の固定子巻線を直列接続、W1相とW2相の固定子巻線を直列接続し、形成しているためである。
図6に示すように、U1相固定子巻線7U1は、環状に巻回され成形されたコイル76を渡り線で複数連結した形態で構成され、本例である毎極毎相のスロット数が2である12極6相分の巻線の場合、環状コイル76の数は12コイルで各コイル間は渡り線75で接続され、連続的に形成される。環状コイル76の巻数は、例えば、4Tである。
図6に示すように、U1相固定子巻線7U1は、U1相巻線7U1−AとU1相巻線7U1−B(第1相第1固定子巻線と第1相第2固定子巻線)からなる。U1相巻線7U1−Aの渡り線75aは、固定子鉄心6の軸方向一方側、すなわち、図示の上側の口出し線71が突出する側であるコイルエンド部72a側に配置され、U1相巻線7U1−Bの渡り線75bは、固定子鉄心6の軸方向他方側、すなわち、図示の下側の口出し線71が突出する側とは反対側であるコイルエンド部72b側に配置されている。すなわち、固定子鉄心6にU1相巻線7U1−AおよびU1相巻線7U1−Bを装着した際に、固定子鉄心6の軸方向両側のコイルエンド部72a、72bにおいて、U1相巻線7U1−AとU1相巻線7U1−Bの渡り線75a、75bを固定子鉄心6の軸方向両側に均等に分散させて配置させている。
図6の上側に示すU1相巻線7U1−AとU1相巻線7U1−BのU1相回路図は、図6の下側のようになる。U1相巻線7U1−AとU1相巻線7U1−Bの環状コイル76の配置ピッチは、磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節巻となる。本例の環状コイル76の巻回ピッチは、3スロット分を跨ぐ4/6ピッチ(電気角120°)となる。
U1相巻線7U1−Aは、口出し線71から接続点73に向かって、1番目の環状コイル76が左巻きで巻回され、次いで、2番目の環状コイルが右巻きで巻回されており、以後同様に、巻回方向が順に交互になるように巻回されている。U1相巻線7U1−Aの環状コイル76は、渡り線75aによってコイルエンド部72a側で互いに隣り合うコイル同士が連結されている。渡り線75aは、口出し線71から偶数番目に位置する環状コイル76のコイルエンド部72a側で交差するように設けられている。
U2相巻線7U1−Bは、口出し線71から接続点73に向かって、1番目の環状コイル76が右巻きで巻回され、次いで、2番目の環状コイルが左巻きで巻回されており、以後同様に、巻回方向が順に交互になるように巻回されている。U1相巻線7U1−Bの環状コイル76は、渡り線75bによってコイルエンド部72b側で互いに隣り合うコイル同士が連結されている。渡り線75bは、口出し線71から偶数番目に位置する環状コイル76のコイルエンド部72a側で交差するように設けられている。
V1相の固定子巻線、W1相の固定子巻線、U2相の固定子巻線、V2相の固定子巻線、W2相の固定子巻線についても、U1相固定子巻線7U1と同様に、それぞれ、V1相巻線7V1−Aと7V1−B(第3相第1固定子巻線と第3相第2固定子巻線)、W1相巻線7W1−Aと7W1−B(第5相第1固定子巻線と第5相第2固定子巻線)、U2相巻線7U2−Aと7U2−B(第2相第1固定子巻線と第2相第2固定子巻線)、V2相巻線7V2−Aと7V2−B(第4相第1固定子巻線と第4相第2固定子巻線)、W2相巻線7W2−Aと7W2−B(第6相第1固定子巻線と第6相第2固定子巻線)に分割する。
図7A、図7Bは、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。図7Aは、渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置されているA巻線の配置図、図7Bは、渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置されているB巻線の配置図である。
図7A、図7Bは、各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、電気角が異なる6つの相の巻線から構成され、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相から構成される。U1相とU2相は1スロット分だけ隣にずれた配置となり、V1相とV2相及びW1相とW2相も同様に1スロット分だけ隣にずれた配置となる。本例では、1スロット分の電気角は30°に相当する。
各々の固定子巻線7は、図7Aに示すように、スロット内にU1相巻線7U1−A,U2相巻線7U2−A,V1相巻線7V1−A,V2相巻線7V2−A,W1相巻線7W1−A,W2相巻線7W2−Aの順番に挿入され、次に、図7Bに示すように、スロット内にW2相巻線7W2−B,W1相巻線7W1−B,V2相巻線7V2−B,V1相巻線7V1−B,U2相巻線7U2−B,U1相巻線7U1−Bの順番で挿入され、図8に示すように、スロット内に順次配置される。
図8に示すように、固定子巻線7のスロット内におけるコイルの配置は、半径方向に4分割した4層巻線の配置となる。ここで、スロットの最内周側を第1層とし、最外周側を第4層とすると、第1層と第4層が同相、第2層と第3層が同相となる配置で構成され、各相を並列に接続することで、インダクタンスが合成され、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。
図8に示すように、第2層と第3層の間の線を基準として、U1相巻線7U1−A,U2相巻線7U2−A,V1相巻線7V1−A,V2相巻線7V2−A,W1相巻線7W1−A,W2相巻線7W2−Aと、W1相巻線7W1−B,W2相巻線7W2−B,V1相巻線7V1−B,V2相巻線7V2−B,U1相巻線7U1−B,U2相巻線7U2−Bとは、線対称に挿入される。すなわち、U1相巻線7U1−A,U2相巻線7U2−Aは、第4層に挿入されるのに対して、U1相巻線7U1−B,U2相巻線7U2−Bは、第1層に挿入される。また、V1相巻線7V1−A,V2相巻線7V2−Aは、第4層及び第3層に挿入されるのに対して、V1相巻線7V1−B,V2相巻線7V2−Bは、第1層及び第2層に挿入される。さらに、W1相巻線7W1−A,W2相巻線7W2−Aは、第3層に挿入されるのに対して、W1相巻線7W1−B,W2相巻線7W2−Bは、第2層に挿入される。
ここで、図8を用いて、具体的に各相巻線の挿入順について説明する。
図8において、例えば、U1相巻線7U1−Aの中で、2つの同じ符号U1A1が付けられたコイルは、環状に成形されたコイルを示している。環状の成形コイルは、2つの直線状のスロット挿入部と、2つのスロット挿入部の両端を接続する2つのコイルエンド部とからなる。図8に示した2つのU1相の環状コイルU1A1は、1つの環状に成形されたコイルのそれぞれスロット挿入部を示している。2つのスロット挿入部の両端は、スロットの両端からはみ出た部分において、それぞれ、2つのコイルエンド部により接続される。U1相巻線7U1−Aは、スロットの第4層に挿入される。U1相巻線7U1−Aの第1環状コイルU1A1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第1番目のスロットS1と、第5番目のスロットS5に挿入される。U1相の2番目の環状コイルU1A2は、U1相の1番目の環状コイルU1A1が挿入されたスロットS5から一つ飛んだ第7番目のスロットS7と、間に3つスロットを挟んだ第11番目のスロットS11に挿入される。尚、U1相の1番目の環状コイルU1A1とU1相の2番目の環状コイルU1A2とは、渡り線にて接続される。すなわち、U1相巻線7U1−Aは、環状コイルの配置ピッチが磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチが、電気角120°で巻回される短節巻となる。尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
U1相巻線7U1−Aは、全て、スロットの第4層側に挿入される。
次に、U2相巻線7U2−Aについて説明する。U2相巻線7U2−Aは、スロットの第4層に挿入される。U2相の第1環状コイルU2A1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第2番目のスロットS2と、第6番目のスロットS6に挿入される。U2相の2番目の環状コイルU2A2は、U2相の1番目の環状コイルU2A1が挿入されたスロットS6から一つ飛んだ第8番目のスロットS8と、間に3つスロットを挟んだ第12番目のスロットS12に挿入される。尚、U2相の1番目の環状コイルU2A1とU2相の2番目の環状コイルU2A2とは、渡り線にて接続される。すなわち、U2相巻線7U2−Aは、環状コイルの配置ピッチが磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチが電気角120°で巻回される短節巻となる。尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
U2相巻線7U2−Aは、全て、スロットの第4層側に挿入される。
次に、V1相巻線7V1−Aについて説明する。V1相の第1環状コイルV1A1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第3番目のスロットS3の第4層と、第7番目のスロットS7の第3層に挿入される。V1相の2番目の環状コイルV1A2は、V1相の1番目の環状コイルV1A1が挿入されたスロットS7から一つ飛んだ第9番目のスロットS9の第4層と、間に3つのスロットを挟んだ第13番目のスロット(図示しない)の第3層に挿入される。V1相の1番目の環状コイルV1A1とV1相の2番目の環状コイルV1A2とは、渡り線にて接続される。すなわち、V1相巻線7V1−Aは、環状コイルの配置ピッチが磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチが電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
V1相巻線7V−A1は、全て、スロットの第4層側と第3層側に挿入される。
次に、V2相巻線7V2−Aについて説明する。V2相の第1環状コイルV2A1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第4番目のスロットS4の第4層と、第8番目のスロットS8の第3層に挿入される。V2相の2番目の環状コイルV2A2は、V2相の1番目の環状コイルV2A1が挿入されたスロットS8から一つ飛んだ第10番目のスロットS10の第4層と、間に3つのスロットを挟んだ第14番目(図示しない)のスロットの第3層に挿入される。尚、V2相の1番目の環状コイルV2A1とV2相の2番目の環状コイルV2A2とは、渡り線にて接続される。すなわち、V2相巻線7V2−Aは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
V2相巻線7V2−Aは、全て、スロットの第4層側と第3層側に挿入される。
次に、W1相巻線7W1−Aについて説明する。W1相の第1環状コイルW1A1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第5番目のスロットS5と、第9番目のスロットS9の第3層に挿入される。W1相の2番目の環状コイルW1A2は、W1相の1番目の環状コイルW1A1が挿入されたスロットS9から一つ飛んだ第11番目のスロットS11と、間に3つのスロットを挟んだ第15番目のスロット(図示しない)に挿入される。尚、W1相の1番目の環状コイルW1A1とW1相の2番目の環状コイルW1A2とは、渡り線にて接続される。すなわち、W1相巻線7W1−Aは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
W1相巻線7W1−Aは、全て、スロットの第3層側に挿入される。
次に、W2相巻線7W2−Aについて説明する。W2相の第1環状コイルW2A1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第6番目のスロットS6と、第10番目のスロットS10の第3層に挿入される。W2相の2番目の環状コイルW2A2は、W2相の1番目の環状コイルW2A1が挿入されたスロットS10から一つ飛んだ第12番目のスロットS12と、間に3つのスロットを挟んだ第16番目のスロット(図示しない)に挿入される。尚、W2相の1番目の環状コイルW2A1とW2相の2番目の環状コイルW2A2とは、渡り線にて接続される。すなわち、W2相の固定子巻線7W2−Aは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
W2相巻線7W2−Aは、全て、スロットの第3層側に挿入される。
次に、W2相巻線7W2−Bについて説明する。W2相の第1環状コイルW2B1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第6番目のスロットS6、第10番目のスロットS10の第2層に挿入される。W2相の2番目の環状コイルW2B2は、W2相の1番目の環状コイルW2B1が挿入されたスロットS10から一つ飛んだ第12番目のスロットS12と、間に3つのスロットを挟んだ第16番目のスロット(図示しない)に挿入される。尚、W2相の1番目の環状コイルW2B1とW2相の2番目の環状コイルW2B2とは、渡り線にて接続される。すなわち、W2相巻線7W2−Bは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
W2相巻線7W2−Bは、全て、スロットの第2層側に挿入される。
次に、W1相巻線7W1−Bについて説明する。W1相の第1環状コイルW1B1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第5番目のスロットS5と、第9番目のスロットS9の第2層に挿入される。W1相の2番目の環状コイルW1B2は、W1相の1番目の環状コイルW1B1が挿入されたスロットS9から一つ飛んだ第11番目のスロットS11と、間に3つのスロットを挟んだ第15番目のスロット(図示しない)に挿入される。尚、W1相の1番目の環状コイルW1B1とW1相の2番目の環状コイルW1B2とは、渡り線にて接続される。すなわち、W1相巻線7W1−Bは、環状コイルの配置ピッチが磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチが電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
W1相巻線7W1−Bは、全て、スロットの第2層側に挿入される。
次に、V2相巻線7V2−Bについて説明する。V2相の第1環状コイルV2B1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第4番目のスロットS4の第1層と、第8番目のスロットS8の第2層に挿入される。V2相の2番目の環状コイルV2B2は、V2相の1番目の環状コイルV2B1が挿入されたスロットS8から一つ飛んだ第10番目のスロットS10の第1層と、間に3つのスロットを挟んだ第14番目のスロット(図示しない)の第2層に挿入される。尚、V2相の1番目の環状コイルV2B1とV2相の2番目の環状コイルV2B2とは、渡り線にて接続される。すなわち、V2相巻線7V2−Bは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
V2相巻線7V2−Bは、全て、スロットの第2層側と第1層側に挿入される。
次に、V1相巻線7V1−Bについて説明する。V1相の第1環状コイルV1B1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第3番目のスロットS3の第1層と、第7番目のスロットS7の第2層に挿入される。V1相の第2環状コイルV1B2のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第9番目のスロットS9の第1層と、第13番目のスロット(図示しない)の第2層に挿入される。尚、V1相の1番目の環状コイルV1B1とV1相の2番目の環状コイルV1B2とは、渡り線にて接続される。すなわち、V1相巻線7V1−Bは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。
同様に、V1相の12番目の環状コイルV1B12は、第1番目のスロットS1の第2層に挿入される。尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
V1相巻線7V1−Bは、全て、スロットの第2層側と第1層側に挿入される。
次に、U2相巻線7U2−Bについて説明する。U2相巻線7U2−Bは、スロットの第1層に挿入される。U2相の第1環状コイルU2B1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第2番目のスロットS2と、第6番目のスロットS6に挿入される。U2相の2番目の環状コイルU2B2は、U2相の1番目の環状コイルU2B1が挿入されたスロットS6から一つ飛んだ第8番目のスロットS8と、間に3つスロットを挟んだ第12番目のスロットS12に挿入される。尚、U2相の1番目の環状コイルU2B1とU2相の2番目の環状コイルU2B2とは、渡り線にて接続される。すなわち、U2相巻線7U2−Bは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
U2相巻線7U2−Bは、全て、スロットの第1層側に挿入される。
次に、U1相巻線7U1−Bについて説明する。U1相の環状コイル7U1−Bは、スロットの第1層に挿入される。U1相の第1環状コイルU1B1のスロット挿入部は、間に3つのスロットを挟んで、第1番目のスロットS1と、第5番目のスロットS5に挿入される。U1相の2番目の環状コイルU1B2は、U1相の1番目の環状コイルU1B1が挿入されたスロットS5から一つ飛んだ第7番目のスロットS7と、間に3つスロットを挟んだ第11番目のスロットS11に挿入される。尚、U1相の1番目の環状コイルU1B1とU1相の2番目の環状コイルU1B2とは、渡り線にて接続される。すなわち、U1相巻線7U1−Bは、環状コイルの配置ピッチは磁極ピッチと等しい電気角180°で配置され、環状コイルの巻回ピッチは、電気角120°で巻回される短節巻となる。尚、図8では、12スロット分(全体のスロット数72の1/6)を図示しているが、残りの第3番目〜第12番目の環状コイルについても同様に繰り返される。
U1相巻線7U1−Bは、全て、スロットの第1層側に挿入される。
ここで、例えば、回転子の中心から第1層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、第1層のコイル半径方向の中心位置を基準として、第2層,第3層,第4層のコイル半径方向の中心位置を、それぞれ、R0+R,R0+2R,R0+3Rとする。
U1相固定子巻線7U1において、U1相巻線7U1−Aは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが全て第4層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+12R(=2×(2・R0+2・3R))として表され、U1相巻線7U1−Bは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第1層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0(=2・2R0)として表される。従って、U1相固定子巻線7U1全体としては、U1相巻線7U1−AとU1相巻線7U1−Bとを足し合わせて、8R0+12R(=4R0+12R+4R0)と表せる。
U2相固定子巻線7U2において、U2相巻線7U2−Aは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが全て第4層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+12R(=2×(2・R0+2・3R))として表され、U2相巻線7U2−Bは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第1層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0(=2・2R0)として表される。従って、U2相固定子巻線7U2全体としては、U2相巻線7U2−AとU2相巻線7U2−Bとを足し合わせて、8R0+12R(=4R0+12R+4R0)と表せる。
V1相固定子巻線7V1において、V1相巻線7V1−Aは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第4層と第3層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+10R(=2×(R0+3R+R0+2R))と表され、V1相巻線7V1−Bは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第1層と第2層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2R(=2×(R0+R+R0))と表される。従って、V1相固定子巻線7V1全体としては、V1相巻線7V1−AとV1相巻線7V1−Bとを足し合わせて、8R0+12R(=4R0+10R+4R0+2R)と表せる。
V2相固定子巻線7V2において、V2相巻線7V2−Aは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第4層と第3層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+10R(=2×(R0+3R+R0+2R))と表され、V2相巻線7V2−Bは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第1層と第2層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2R(=2×(R0+R+R0))と表される。従って、V2相固定子巻線7V2全体としては、V2相巻線7V2−AとV2相巻線7V2−Bとを足し合わせて、8R0+12R(=4R0+10R+4R0+2R)と表せる。
W1相固定子巻線7W1において、W1相巻線7W1−Aは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第3層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+8R(=2×(2R0+2・2R))として表され、W1相巻線7W1−Bは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第2層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4R(=2×(2R0+2R))として表される。従って、W1相固定子巻線7W1全体としては、W1相巻線7W1−AとW1相巻線7W1−Bとを足し合わせて、8R0+12R(=4R0+8R+4R0+4R)と表せる。
W2相固定子巻線7W2において、W2相巻線7W2−Aは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第3層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+8R(=2×(2R0+2・2R))として表され、W2相巻線7W2−Bは、図8の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが第2層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4R(=2×(2R0+2R))として表される。従って、W2相固定子巻線7W2全体としては、W2相巻線7W2−AとW2相巻線7W2−Bとを足し合わせて、8R0+12R(=4R0+8R+4R0+4R)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U1相,V1相,W1相,U2相,V2相,W2相の固定子巻線、全て同じ8R0+12Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU1相,V1相,W1相,U2相,V2相,W2相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスのアンバランスが発生しなくなる。
このように、各相のインダクタンスがバランスすることで、発電電流が各相で等しくなり、固定子巻線およびダイオードの発熱量がバランスし、コイルおよびダイオードの温度上昇を抑制することができ、また、磁気加振力の増大を抑えて磁気音を低減でき、品質および特性面を向上させることができる。
ここで、図9、図10を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図9に示すように、U1相固定子巻線7U1は、U1相巻線7U1−AとU1相巻線7U1−Bを並列接続し、U2相固定子巻線7U2は、U2相巻線7U2−AとU2相巻線7U2−Bを並列接続する。そして、U1相固定子巻線7U1とU2相固定子巻線7U2を、口出し線73Uで直列に接続する。
同様に、V1相固定子巻線7V1は、V1相巻線7V1−AとV1相巻線7V1−Bを並列接続し、V2相固定子巻線7V2は、V2相巻線7V2−AとV2相巻線7V2−Bを並列接続する。そして、V1相固定子巻線7V1とV2相固定子巻線7V2を、口出し線73Vで直列に接続する。
同様に、W1相固定子巻線7W1は、W1相巻線7W1−AとW1相巻線7W1−Bを並列接続し、W2相固定子巻線7W2は、W2相巻線7W2−AとW2相巻線7W2−Bを並列接続する。そして、W1相固定子巻線7W1とW2相固定子巻線7W2を、口出し線73Wで直列に接続する。
次に、U1相固定子巻線7U1の口出し線71U-SとW1相固定子巻線7W1の口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続し、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、六角形状の結線とし、3箇所の接続点(口出し線71U-Sと71W−Eとの接続点、口出し線71U−Eと71V−Sとの接続点、口出し線71V−Eと71W−Sとの接続点)から整流器20に各々接続する。
また、図10に示すようにU1相固定子巻線7U1は、U1相巻線7U1−AとU1相巻線7U1−Bとを並列接続し、U2相固定子巻線7U2は、U2相巻線7U2−AとU2相巻線7U2−Bを並列接続する。そして、U1相固定子巻線7U1とU2相固定子巻線7U2を、口出し線73Uで直列に接続する。
同様に、V1相固定子巻線7V1は、V1相巻線7V1−AとV1相巻線7V1−Bを並列接続し、V2相固定子巻線7V2は、V2相巻線7V2−AとV2相巻線7V2−Bを並列接続する。そして、V1相固定子巻線7V1とV2相固定子巻線7V2を、口出し線73Vで直列に接続する。
同様に、W1相固定子巻線7W1は、W1相巻線7W1−AとW1相巻線7W1−Bを並列接続し、W2相固定子巻線7W2は、W2相巻線7W2−AとW2相巻線7W2−Bを並列接続する。そして、W1相固定子巻線7W1とW2相固定子巻線7W2を、口出し線73Wで直列に接続する。
次に、U1相固定子巻線7U1の口出し線71U-Eと、V1相固定子巻線7V1の口出し線71V−E、W2相固定子巻線7W2の口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを、整流器20に各々接続する。尚、ここでの接続は、電気的接続とし、溶接あるいは半田付けにより行われる。
例えば、図50、図51に示すように、電気角が30°位相をずらした2つの3相巻線を有する固定子では、発電機の場合、交流電力を直流に変換する整流器20に使用する整流素子(ダイオード)201、202やスイッチング素子(MOS−FETなど)の数が2倍となり、高価なものとなるおそれがあり、また、整流器20の占有する面積も大きくなることから、設置場所が制限されて設計の自由度が低くなる。
これに対して、本実施形態によれば、図9、図10に示すように、U1相とU2相、V1相とV2相、W1相とW2相の電気角が異なる相を直列に接続した構成を有するので、図49、図50に示す構成例と比較して、整流器20との接続数を削減することができ、ダイオード素子201,202の数量を最小限に抑えることができる。したがって、部品数および組立工数の削減によりコストを下げることができ、車両用交流発電機23を安価に提供することができる。
また、本実施形態によれば、6相の巻線であるが、3相巻線と同等の整流装置と電圧制御で制御することが可能であり、固定子のみの変更で低騒音化の回転電機である車両用交流発電機23が実現できる。
そして、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。したがって、高出力及び高効率の車両用交流発電機23を得ることができる。さらには、異なる電気角の相を直列に接続することで高調波成分も低減でき、磁気加振力を通常の3相巻線よりも低減できる。したがって、磁気加振力に応じた磁気音の発生を抑制でき、低騒音化の車両用交流発電機23が実現でき、車載内の快適性を向上させることができる。
尚、上記の第1の実施形態では、固定子巻線7を、各相渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置されるA巻線と、各相渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置されるB巻線に、均等に分割する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、A巻線のみで構成し、あるいは、B巻線のみで構成してもよく、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、固定子巻線の巻回ピッチを4/6(電気角120°)で巻線された固定子について述べてきたが、巻回ピッチを5/6(電気角150°)で巻線された固定子の構成についても成立し、同様の効果が得られる。
[第2の実施形態]
次に、図11から図15を用いて、本発明の第2の実施形態による回転電機の構成について説明する。なお、本実施形態による回転電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。また、本実施形態による回転電機の固定子の構成は、図5と同様である。
図11は、U1相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図12Aは、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子C巻線の配置図である。図12Bは、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子D巻線の配置図である。図13は、固定子巻線のスロット内における各相のコイル配置図である。図14は、各相の固定子巻線を六角形状に結線した結線図である。図15は各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
図11に示すように、固定子巻線7のU1相固定子巻線7U1は、U相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dからなる。U相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dは、環状に巻回され成形されたコイル76を渡り線75a及び75bで複数連結した形態で構成され、本例である12極6相巻線の場合、環状コイル76の数は6で各環状コイル76間は渡り線75aまたは75bで接続され、連続的に形成される。
U1相巻線7U1−Cの渡り線75aは、図示の上側、すなわち、コイルエンド部72a側に配置され、U1相巻線7U1−Dの渡り線75bは、図示の下側、すなわち、コイルエンド部72b側に配置されている。図11の上側に示す第1のU1相巻線7U1−Cと第2のU1相巻線7U1−Dの回路図は、図11の下側のようになる。
U1相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dの環状コイル76の配置ピッチは、磁極ピッチの2倍の電気角360°で配置される。U1相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dは、電気角180°ずらしてスロット内に挿入され、U1相固定子巻線7U1を形成する。
なお、固定子鉄心のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
図11に示すように、U1相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dの環状コイル76の配置ピッチは、磁極ピッチの2倍の電気角360°で配置され、環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節巻となる。本例の場合は、本例の環状コイル76の巻回ピッチは、3スロット分を跨ぐ4/6ピッチ(電気角120°)となる。
U1相巻線7U1−Cの環状コイル76は、全て左巻きで巻回されており、渡り線75aによってコイルエンド部72a側で互いに隣り合うコイル同士が連結されている。U2相巻線7U1−Dの環状コイル76は、全て左巻きで巻回されており、渡り線75bによってコイルエンド部72b側で互いに隣り合うコイル同士が連結されている。
V1相の固定子巻線7V1、W1相の固定子巻線7W1、U2相の固定子巻線7U2、V2相の固定子巻線7V2、W2相の固定子巻線7W2についても、U1相固定子巻線7U1と同様に、それぞれ、V1相巻線7V1−Cと7V1−D、W1相巻線7W1−Cと7W1−D、U2相巻線7U2−Cと7U2−D、V2相巻線7V2−Cと7V2−D、W2相巻線7W2−Cと7W2−Dに分割する。
図12A、図12Bは、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。図12Aは、渡り線75aが口出し線71側に配置されているC巻線の配置図、図12Bは、渡り線75bが口出し線71側の反対側に配置されているD巻線の配置図である。
図12A、図12Bは、各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、電気角が異なる6つの相の巻線、U1相、U2相、V1相、V2相、W1相、W2相から構成される。U1相とU2相は1スロット分だけ隣にずれた配置となり、V1相とV2相及びW1相とW2相も同様に1スロット分だけ隣にずれた配置となる。本例では、1スロット分の電気角は30°に相当する。
各々の相の固定子巻線7は、図12Aに示すように、スロット内にU1相巻線7U1−C,U2相巻線7U2−C,V1相巻線7V1−C,V2相巻線7V2−C,W1相巻線7W1−C,W2相巻線7W2−Cの順番に挿入され、次に、図12Bに示すように、スロット内にW2相巻線7W2−D,W1相巻線7W1−D,V2相巻線7V2−D,V1相巻線7V2−D,U2相巻線7U2−D,U1相巻線7U1−Dの順番で挿入され、図13に示すように、スロット内に順次配置される。
固定子巻線7におけるスロット内のコイルの配置は、図13に示すように、半径方向に2分割した2層巻線の配置となる。例えば、U1相固定子巻線7U1に着目すると、U1相巻線7U1−Cは外層に配置され、U1相巻線7U1−Dは内層に配置されている。このように、各相の固定子巻線とも外層と内層に均等に分散して配置されており、各相の分割した固定子巻線7を直列に接続することで、各相のインダクタンスが均等化し、発電電流はバランスされる。
ここで、例えば、回転子の中心から内層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層のコイル半径方向の中心位置を基準として、外層のコイル半径方向の中心位置を、R0+Rとする。
U1相固定子巻線7U1において、U1相巻線7U1−Cは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+2Rとして表され、U1相巻線7U1−Dは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0として表される。従って、U1相固定子巻線7U1全体としては、U1相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dとを足し合わせて、4R0+2R(=2R0+2R+2R0)と表せる。
U2相固定子巻線7U2において、U2相巻線7U2−Cは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+2Rとして表され、U2相巻線7U2−Dは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0として表される。従って、U2相固定子巻線7U2全体としては、U2相巻線7U2−CとU2相巻線7U2−Dとを足し合わせて、4R0+2R(=2R0+2R+2R0)と表せる。
V1相固定子巻線7V1において、V1相巻線7V1−Cは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層と内層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+R(=R0+R+R0)と表され、V1相巻線7V1−Dは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層と内層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+R(=R0+R+R0)と表される。従って、V1相固定子巻線7V1全体としては、V1相巻線7V1−CとV1相巻線7V1−Dとを足し合わせて、4R0+2R(=2R0+R+2R0+R)と表せる。
V2相固定子巻線7V2において、V2相巻線7V2−Cは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層と内層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+R(=R0+R+R0)と表され、V2相巻線7V2−Dは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層と内層とにそれぞれ挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+R(=R0+R+R0)と表される。従って、V2相固定子巻線7V2全体としては、V2相巻線7V2−CとV2相巻線7V2−Dとを足し合わせて、4R0+2R(=2R0+R+2R0+R)と表せる。
W1相固定子巻線7W1において、W1相巻線7W1−Cは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+2Rとして表され、W1相巻線7W1−Dは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0として表される。従って、W1相固定子巻線7W1全体としては、W1相巻線7W1−CとW1相巻線7W1−Dとを足し合わせて、4R0+2R(=2R0+2R+2R0)と表せる。
W2相固定子巻線7W2において、W2相巻線7W2−Cは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0+2Rとして表され、W2相巻線7W2−Dは、図13の12スロット分の範囲内において1個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、2R0として表される。従って、W2相固定子巻線7W2全体としては、W2相巻線7W2−CとW2相巻線7W2−Dとを足し合わせて、4R0+2R(=2R0+2R+2R0)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U1相,V1相,W1相,U2相,V2相,W2相の固定子巻線、全て同じ4R0+2Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU1相,V1相,W1相,U2相,V2相,W2相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスのアンバランスが発生しなくなる。
このように、各相のインダクタンスがバランスすることで、発電電流が各相で等しくなり、固定子巻線およびダイオードの発熱量がバランスし、コイルおよびダイオードの温度上昇を抑制することができ、また、磁気加振力の増大を抑えて磁気音を低減でき、品質および特性面を向上させることができる。
ここで、図14、図15を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図14に示すように、U1相固定子巻線7U1は、U1相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dを並列接続し、U2相固定子巻線7U2は、U2相巻線7U2−CとU2相巻線7U2−Dを並列接続する。そして、U1相固定子巻線7U1とU2相固定子巻線7U2を、口出し線73Uで直列に接続する。
同様に、V1相固定子巻線7V1は、V1相巻線7V1−CとV1相巻線7V1−Dを並列接続し、V2相固定子巻線7V2は、V1相巻線7V2−CとV1相巻線7V2−Dを並列接続する。そして、V1相固定子巻線7V1とV2相固定子巻線7V2を、口出し線73Vで直列に接続する。
同様に、W1相固定子巻線7W1は、W1相巻線7W1−CとW1相巻線7W1−Dとを並列接続し、W2相固定子巻線7W2は、W2相巻線7W2−DとW2相巻線7W2−Dとを並列接続する。そして、W1相固定子巻線7W1とW2相固定子巻線7W2を、口出し線73Wで直列に接続する。
次に、U1相固定子巻線7U1の口出し線71U-Sと、W1相固定子巻線7W1の口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続し、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、六角形状の結線とし、3箇所の接続点(口出し線71U-Sと71W−Eとの接続点、口出し線71U−Eと71V−Sとの接続点、口出し線71V−Eと71W−Sとの接続点)から整流器20に各々接続する。
また、図15に示すように、U1相固定子巻線7U1は、U1相巻線7U1−CとU1相巻線7U1−Dを並列接続し、U2相固定子巻線7U2は、U2相巻線7U2−CとU2相巻線7U2−Dを並列接続する。そして、U1相固定子巻線7U1とU2相固定子巻線7U2を、口出し線73Uで直列に接続する。
同様に、V1相固定子巻線7V1は、V1相巻線7V1−CとV1相巻線7V1−Dを並列接続し、V2相固定子巻線7は、V2相巻線7V2−CとV2相巻線7V2−Dを並列接続する。そして、V1相固定子巻線7V1とV2相固定子巻線7V2を、口出し線73Vで直列に接続する。
同様に、W1相固定子巻線7W1は、W1相巻線7W1−CとW1相巻線7W1−Dを並列接続し、W2相固定子巻線7W2は、W2相巻線7W2−CとW2相巻線7W2−Dを並列接続する。そして、W1相固定子巻線7W1とW2相固定子巻線7W2を、口出し線73Wで直列に接続する。
次に、U1相固定子巻線7U1の口出し線71U-Eと、V1相固定子巻線7V1の口出し線71V−Eと、W2相固定子巻線7W2の口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを、整流器20に各々接続して、中性点を基準とした放射状の結線とする。
以上説明したように、本実施形態によれば、U1相とU2相、V1相とV2相、W1相とW2相の電気角が異なる相を直列に接続した構成を有するので、図50、図51に示す構成例と比較して、整流器20との接続数を削減することができ、ダイオード素子201,202の数量を最小限に抑えることができる。したがって、部品点数および組立工数の削減によりコストを下げることができ、回転電機を安価に提供することができる。
また、6相の巻線であるが3相巻線と同等の発電機では整流装置と電圧制御、モータではインバータ及びモータの駆動システムで制御することが可能であり、回転電機のみの変更で低騒音化の回転電機が実現できる。
そして、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得ることができる。さらには、異なる電気角の相を直列に接続することで高調波成分も低減でき、磁気加振力を通常の3相巻線よりも低減できる。したがって、磁気加振力に応じた磁気音の発生を抑制でき、低騒音化の回転電機が実現でき、車載内の快適性を向上させることができる。
尚、上記の第2の実施形態では、固定子巻線7を、各相渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置されるC巻線と、各相渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置されるD巻線に、均等に分割する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、C巻線のみで構成し、あるいは、D巻線のみで構成してもよく、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、固定子巻線の巻回ピッチを4/6(電気角120°)で巻線された固定子について述べてきたが、巻回ピッチを5/6(電気角150°)で巻線された固定子の構成についても成立し、同様の効果が得られる。
[第3の実施形態]
次に、図16から図21を用いて、本発明の第3の実施形態による回転電機の構成について説明する。なお、本実施形態による回転電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。
図16は固定子の斜視図、図17は、U相固定子巻線の斜視図及び回路図、図18は、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子巻線の配置図、図19は、固定子巻線のスロット内における各相のコイル配置図、図20は、各相の固定子巻線を六角形状に結線した結線図、図21は、各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
上記した第1の実施形態と第2の実施形態は、6つの異なる相の固定子巻線7を固定子鉄心6に装着した後に、電気角が異なる2つの相の固定子巻線を直列に接続して、3組の合成された固定子巻線7を形成し、結線上において3相巻線と同等の口出し線71を3箇所の構成とし、整流器20に接続した構成であった。これに対して、本実施形態では、電気角が異なる2つの相の固定子巻線を、接続なしで連続的に構成している。
図16に示すように、固定子5は、内周面の周方向に複数のスロットを有する環状の固定子鉄心6と、その各々のスロットの内周面に装着されたU字状の絶縁紙8を介して、各相の固定子巻線7を装着し、固定子巻線7をスロット内に保持するためスロット最内周側にスロット楔9を有する。この例では、スロット数は72である。
固定子鉄心6のスロットからはみ出た部分は、2つのスロット間を跨ぐコイルエンド72a,72bである。また、図示のように、4本の口出し線71が3箇所から取り出され整流器20に接続される。
固定子巻線7は、U相〜W相の3相分の固定子巻線から構成され、各相の固定子巻線は
電気角が異なる2種類の固定子巻線から構成される。本例の場合、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°異なる環状コイル76により連続的に固定子巻線7を構成している。
図17に示すように、固定子巻線7のU相固定子巻線7Uは、第1のU相巻線7U−Eと、第2のU相巻線7U−Fからなる。各U相巻線7U−E,7U−Fは、環状に巻回され成形されたコイル76を渡り線75a及び75bで複数連結した形態で構成され、本例である12極3相巻線の場合、環状コイル76の数は12で各環状コイル76間は渡り線75aまたは75bで接続され、連続的に形成される。
U相巻線7U−Eは、渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置される固定子巻線の形態であり、各環状コイル76は、左巻きで巻回されて形成されている。そして、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で環状コイル76が配置されて渡り線75aで連結されており、第1環状コイル群を形成している。
そして、環状コイル76の6番目と7番目との間で電気角30°の位相差を設けるため、電気角で390°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設けて、6番目と7番目の環状コイル76間を渡り線75cで連結している。そして、7番目から12番目までの環状コイル76は、再び電気角360°間隔で配置されて、これらの各環状コイル76間が渡り線75aで連続して連結されており、第2環状コイル群を形成している。
U相巻線7U−Fは、渡り線75bがコイルエンド72b側に配置される固定子巻線7の形態であり、各環状コイル76は、右巻きで巻回されて形成されている。そして、U相巻線7U−Eと同様に口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で環状コイル76が配置されて渡り線75bで連結されており、第1環状コイル群を形成している。
そして、環状コイル76の6番目と7番目との間で電気角30°の位相差を設けるため、電気角で390°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設けて、6番目と7番目の環状コイル76間を渡り線75dで連結している。そして、7番目から12番目までの環状コイル76は、電気角360°間隔で配置されて、これらの各環状コイル76間が渡り線75bで連続して連結されており、第2環状コイル群を形成している。
なお、固定子鉄心6のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
U相巻線7U−EとU相巻線7U−Fの環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節巻となる。本例の環状コイル76の巻回ピッチは、3スロット分を跨ぐ4/6ピッチ(電気角120°)となる。
V相固定子巻線7V、W相固定子巻線7Wについても、U相固定子巻線7Uと同様に、それぞれ、V相巻線7V−Eと7V−F、及び、W相の固定子巻線7W−Eと7W−Fに分割する。
図18は、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。
図18は、各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、U相、V相、W相の3種類の固定子巻線から構成される。
各々の相の固定子巻線7は、図18に示すように、スロット内にU相巻線7U−E,V相巻線7V−E,W相巻線7W−Eの順番に挿入され、次に、W相巻線7W−F,V相巻線7V−F,U相巻線7U−Fの順番で挿入され、図19に示すように、スロット内に順次配置される。
固定子巻線7におけるスロット内のコイルの配置は、図19に示すように、半径方向に2分割した2層巻線の配置となる。例えば、U相固定子巻線7Uに着目すると、U相巻線7U−Eは外層に配置され、U相巻線7U−Fは内層に配置されている。このように、各相の固定子巻線とも外層と内層に均等に分散して配置されており、各相の分割した固定子巻線7を直列に接続することで、各相のインダクタンスが均等化し、発電電流はバランスされる。
ここで、例えば、回転子の中心から内層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層のコイル半径方向の中心位置を基準として、外層のコイル半径方向の中心位置を、R0+Rとする。
U相固定子巻線7Uにおいて、U相巻線7U−Eは、図19の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、U相巻線7U−Fは、図19の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、U相固定子巻線7U全体としては、U相巻線7U−EとU相巻線7U−Fとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
V相固定子巻線7Vにおいて、V相巻線7V−Eは、図19の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、V相巻線7V−Fは、図19の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、V相固定子巻線7V全体としては、V相巻線7V−EとV相巻線7V−Fとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
W相固定子巻線7Wにおいて、W相巻線7W−Eは、図19の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表され、W相巻線7W−Fは、図19の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。従って、W相固定子巻線7W全体としては、W相巻線7W−EとW相巻線7W−Fとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+2R+4R0+2R)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U相,V相,W相の固定子巻線、全て同じ8R0+4Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU相,V相,W相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスのアンバランスが発生しなくなる。
このように、各相のインダクタンスがバランスすることで、発電電流が各相で等しくなり、固定子巻線およびダイオードの発熱量がバランスし、コイルおよびダイオードの温度上昇を抑制することができ、また、磁気加振力の増大を抑えて磁気音を低減でき、品質および特性面を向上させることができる。
ここで、図20、図21を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図20に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Eと7U−Fを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Eと7V−Fを並列接続し、W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Eと7W−Fを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-SとW相固定子巻線の口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続し、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、六角形状の結線とし、3箇所の接続点(口出し線71U-Sと71W−Eとの接続点、口出し線71U−Eと71V−Sとの接続点、口出し線71V−Eと71W−Sとの接続点)から整流器20に各々接続する。上記結線は、構成上は3相巻線のデルタ結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
また、図21に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Eと7U−Fを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Eと7V−Fを並列接続し、W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Eと7W−Fを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-Eと、V相固定子巻線V7の口出し線71V−Eと、W相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを整流器20に各々接続して、中性点を基準とした放射状の結線とする。上記結線は、構成上は3相巻線のスター結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
以上説明したように、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得ることができる。
さらには、毎極毎相のスロット数が2の形態で、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°異なる2種類の環状コイル76を連続的に連結して、固定子巻線を形成しているので、整流器20の構成も、3相巻線と同等のダイオード数量を最小限の6ケで達成できる。また、上記した第1の実施形態、第2の実施形態と比較して、各相内で接続しないので、溶接レス化が可能となり、生産性にも優れ、接合による損失も低減することができる。
また、各相内に電気角の位相差が30°異なる2種類の相を内包している固定子巻線の形態であるため、高調波成分も低減でき、磁気加振力は通常の3相巻線より低減でき低騒音化が図れる。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得られるとともに、生産性に優れ、安価で低騒音化の回転電機が実現することができる。
尚、上記の第3の実施形態では、固定子巻線7を、各相渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置されるE巻線と、各相渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置されるF巻線に、均等に分割する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、E巻線のみで構成し、あるいは、F巻線のみで構成してもよく、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、固定子巻線の巻回ピッチを4/6(電気角120°)で巻線された固定子について述べてきたが、巻回ピッチを5/6(電気角150°)で巻線された固定子の構成についても成立し、同様の効果が得られる。
[第4実施形態]
次に、図22から図26を用いて、本発明の第4の実施形態による回転電機の構成について説明する。なお、本実施形態による回転電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。また、本実施形態による回転電機の固定子の構成は、図16に示すものと同様である。
図22は、U相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図23は、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子巻線の配置図である。図24は、固定子巻線のスロット内における各相のコイル配置図である。図25は、各相の固定子巻線を六角形状に結線した結線図である。図26は各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
本実施形態は、上記した第3の実施形態に対して、固定子巻線7の形態を変更したものである。上記した第3の実施形態では図18に示すように、固定子巻線7をスロット内に挿入したときに環状コイル76が重なる形態となるのに対して、本実施の形態では、環状コイル76の配置を重ならないように分散させ、固定子巻線7のスロット内への挿入性を改良している。
図22に示すように、U相固定子巻線7Uは、第1のU相巻線7U−Gと、第2のU相巻線7U−Hからなる。各U相巻線7U−G,7U−Hは、環状に巻回され成形されたコイル76を渡り線75a及び75bで複数連結した形態で構成され、本例である12極3相巻線の場合、環状コイル76の数は12で、各環状コイル76間は渡り線75aまたは75bで接続され、連続的に形成される。
U相巻線7U−Gの渡り線75aは、図示の上側、すなわち、コイルエンド部72a側に配置され、U相巻線7U−Hの渡り線75bは、図示の下側、すなわち、コイルエンド部72b側に配置されている。図22の上側に示すU相巻線7U−GとU相巻線7U−Hの回路図は、図22の下側のようになる。
図22に示すように、U相固定子巻線7Uの環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節巻となる。本例の環状コイル76の巻回ピッチは、3スロット分を跨ぐ4/6ピッチ(電気角120°)となる。
U相巻線7U−Gの環状コイル76の配置ピッチは、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で配置されている。そして、環状コイル76の6番目と7番目との間で電気角30°の位相差を設けるため、電気角で210°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設けている。そして、7番目から12番目までの環状コイル76は、電気角360°間隔で配置されている。
U相巻線7U−Gの環状コイル76は、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、左巻きに巻回されて形成されており、7番目から12番目の環状コイル76までは、右巻きに巻回されて形成されている。渡り線75aは、7番目から12番目の環状コイル76までは、コイルエンド部72a側で互いに隣り合う渡り線75aと交差するように設けられている。
U相巻線7U−Hの環状コイル76の配置ピッチは、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で配置されている。そして、環状コイル76の6番目と7番目との間で電気角30°の位相差を設けるため、電気角で210°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設けている。そして、7番目から12番目までの環状コイル76は、電気角360°間隔で配置されている。
U相巻線7U−Hの環状コイル76は、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、右巻きに巻回されて形成されており、7番目から12番目の環状コイル76までは、左巻きに巻回されて形成されている。6番目と7番目の環状コイル76は、渡り線75dで連結されている。渡り線75bは、7番目から12番目の環状コイル76までは、コイルエンド部72b側で互いに隣り合う渡り線75bと交差するように設けられている。
なお、固定子鉄心のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
V相固定子巻線7V、W相固定子巻線7Wについても、U相固定子巻線7Uと同様に、それぞれ、V相巻線7V−Gと7V−H、W相巻線7W−Gと7W−Hに分割する。
図23は、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。
図23は各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、U相、U相、V相の3種類の固定子巻線から構成される。
各々の相の固定子巻線7は、図23に示すように、スロット内にU相巻線7U−G,V相巻線7V−G,W相巻線7W−Gの順番に挿入され、次に、W相巻線7W−H,V相巻線7V−H,U相巻線7U−Hの順番で挿入され、図24に示すように、スロット内に順次配置される。
固定子巻線7におけるスロット内のコイルの配置は、図24に示すように、半径方向に2分割した2層巻線の配置となる。例えば、U相固定子巻線7Uに着目すると、U相巻線7U−Gは外層に配置され、U相巻線7U−Hは内層に配置されている。このように、各相の固定子巻線とも外層と内層に均等に分散して配置されており、各相の分割した固定子巻線7を直列に接続することで、各相のインダクタンスが均等化し、発電電流はバランスされる。
ここで、例えば、回転子の中心から内層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層のコイル半径方向の中心位置を基準として、外層のコイル半径方向の中心位置を、R0+Rとする。
U相固定子巻線7Uにおいて、U相巻線7U−Gは、図24の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、U相巻線7U−Hは、図24の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、U相固定子巻線7U全体としては、U相巻線7U−GとU相巻線7U−Hとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
V相固定子巻線7Vにおいて、V相巻線7V−Gは、図24の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、V相巻線7V−Hは、図24の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、V相固定子巻線7V全体としては、V相巻線7V−GとV相巻線7V−Hとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
W相固定子巻線7Wにおいて、W相巻線7W−Gは、図24の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表され、W相巻線7W−Hは、図24の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。
従って、W相固定子巻線7W全体としては、W相巻線7W−GとW相巻線7W−Hとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+2R+4R0+2R)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U相,V相,W相の固定子巻線、全て同じ8R0+4Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU相,V相,W相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスのアンバランスが発生しなくなる。
このように、各相のインダクタンスがバランスすることで、発電電流が各相で等しくなり、固定子巻線およびダイオードの発熱量がバランスし、コイルおよびダイオードの温度上昇を抑制することができ、また、磁気加振力の増大を抑えて磁気音を低減でき、品質および特性面を向上させることができる。
ここで、図24、図25を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図25に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Gと7U−Hを並列接続し、V相固定子巻線は、V相巻線7V−Gと7V−Hを並列接続し、W相固定子巻線は、W相巻線7W−Gと7W−Hを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-SとW相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続し、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、六角形状の結線とし、3箇所の接続点から整流器20に各々接続する。上記結線は、構成上は3相巻線のデルタ結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
また、図25に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Gと7U−Hを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Gと7V−Hを並列接続し、W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Gと7W−Hを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-Eと、V相固定子巻線7Vの口出し線71V−Eと、W相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを整流器20に各々接続して、中性点を基準とした放射状の結線とする。上記結線は、構成上は3相巻線のスター結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
以上説明したように、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。
さらには、毎極毎相のスロット数が2の形態で、各相内に電気角の位相差が30°異なる2種類の環状コイル76を、途中で接続することなく連続的に連結して、固定子巻線を形態しているので、整流器20の構成も、3相巻線と同等のダイオード数を最小限の6ケで達成できる。また、上記した第1の実施形態、第2の実施形態と比較して、各相内で接続しないので、溶接レス化が可能となり、生産性にも優れ、接合による損失も低減することができる。
そして、上記した第3の実施形態では、固定子スロット内に挿入する時に環状コイル76が干渉するが、本実施形態では、環状コイル76を各々干渉しない配置としたため、固定子巻線の挿入性に優れ、生産性の向上も図れる。
また、各相内に電気角の位相差が30°異なる2種類の相が内包している固定子巻線の形態であるため、高調波成分も低減でき、磁気加振力は通常の3相巻線より低減でき、低騒音化が図れる。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得られるとともに、生産性に優れ、安価で低騒音化の回転電機を実現することができる。
尚、本実施形態では、固定子巻線7を、各相渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置されるG巻線と、各相渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置されるH巻線に、均等に分割する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、G巻線のみで構成し、あるいは、H巻線のみで構成してもよく、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、固定子巻線の巻回ピッチを4/6(電気角120°)で巻線された固定子について述べてきたが、巻回ピッチを5/6(電気角150°)で巻線された固定子の構成についても成立し、同様の効果が得られる。
[第5実施形態]
次に、図27から図31を用いて、本発明の第5の実施形態による回転電機の構成について説明する。なお、本実施形態による回転電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。また、本実施形態による回転電機の固定子の構成は、図16と同様である。
図27は、U相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図28は、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子巻線の配置図である。図29は、固定子巻線のスロット内における各相のコイル配置図である。図30は、各相の固定子巻線を六角形状に結線した結線図である。図31は各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
本実施形態は、上記した第4の実施形態に対して、固定子巻線の形態を変更したものであり、第4の実施形態である固定子巻線の第7番目から第12番目の渡り線75が互いに交差するのを避けるとともに、渡り線75の全長の低減を図るものである。
図27に示すように、U相固定子巻線7Uは、第1のU相巻線7U−Jと、第2のU相巻線7U−Kからなる。各U相巻線7U−J,7U−Kは、環状に巻回され成形されたコイル76を渡り線75a及び75bで複数連結した形態で構成され、本例である12極3相巻線の場合、環状コイル76の数は12で各環状コイル76間は渡り線75aまたは75bで接続され、連続的に形成される。
U相巻線7U−Jは、口出し線71側の1番目から6番目までの環状コイル76を結ぶ渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置され、7番目から12番目までの環状コイル76を結ぶ渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置された固定子巻線7の形態を有する。
U相巻線7U−Jは、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で環状コイル76を配置し、各環状コイル76間はコイルエンド部72a側の渡り線75aで連結される。そして、環状コイル76の6番目と7番目の間で電気角30°の位相差を設けるため、電気角で210°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設け、渡り線75cで連結される。7番目から12番目までの環状コイル76は、電気角360°間隔で配置され、各環状コイル76間はコイルエンド部72b側の渡り線75bで連結される。
U相巻線7U−Jの環状コイル76は、1番目から6番目の環状コイル76までは、左巻きに巻回されて形成されており、7番目から12番目の環状コイル76までは、右巻きに巻回されて形成されている。
U相巻線7U−Kは、口出し線71側の1番目から6番目までの環状コイル76をコイルエンド部72b側の渡り線75bで連結し、7番目から12番目までの環状コイル76をコイルエンド部72a側の渡り線75aで連結する固定子巻線7の形態を有する。
U相巻線7U−Kは、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で環状コイル76を配置し、各々の環状コイル76はコイルエンド部72b側の渡り線75bで連結される。そして、環状コイルの6番目と7番目の間で電気角30°の位相差を設けるため、電気角で210°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設け、渡り線75dで連結される。7番目から12番目までの環状コイル76は、電気角360°間隔で配置され、各環状コイル76間はコイルエンド部72a側の渡り線75aで連結される。
U相巻線7U−Kの環状コイル76は、1番目から6番目の環状コイル76までは、右巻きに巻回されて形成されており、7番目から12番目の環状コイル76までは、左巻きに巻回されて形成されている。
なお、固定子鉄心のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
図27に示すように、U相固定子巻線7Uの環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節巻となる。本例の場合、環状コイル76の巻回ピッチは、3スロット分を跨ぐ4/6ピッチ(電気角120°)となる。V相固定子巻線7V、W相固定子巻線7Wについても、U相固定子巻線7Uと同様に、それぞれ、V相巻線7V−Jと7V−K、W相巻線7W−Jと7W−Kに分割する。
図28は、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。
図28は各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、U相、U相、V相の3種類の固定子巻線から構成される。
各々の相の固定子巻線7は、図28に示すように、スロット内にU相巻線7U−J,V相巻線7V−J,W相巻線7W−Jの順番に挿入され、次に、W相巻線7W−K,V相巻線7V−K,U相巻線7U−Kの順番で挿入され、図29に示すように、スロット内に順次配置される。
固定子巻線7におけるスロット内のコイルの配置は、図29に示すように、半径方向に2分割した2層巻線の配置となる。例えば、U相固定子巻線7Uに着目すると、U相巻線7U−Jは外層に配置され、U相巻線7U−Kは内層に配置されている。このように、各相の固定子巻線とも外層と内層に均等に分散して配置されており、各相の分割した固定子巻線7を直列に接続することで、各相のインダクタンスが均等化し、発電電流はバランスされる。
ここで、例えば、回転子の中心から内層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層のコイル半径方向の中心位置を基準として、外層のコイル半径方向の中心位置を、R0+Rとする。
U相固定子巻線7Uにおいて、U相巻線7U−Jは、図29の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、U相巻線7U−Kは、図29の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、U相固定子巻線7U全体としては、U相巻線7U−JとU相巻線7U−Kとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
V相固定子巻線7Vにおいて、V相巻線7V−Jは、図29の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、V相巻線7V−Kは、図29の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、V相固定子巻線7V全体としては、V相巻線7V−JとV相巻線7V−Kとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
W相固定子巻線7Wにおいて、W相巻線7W−Jは、図29の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。W相巻線7W−Kは、図29の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。
従って、W相固定子巻線7W全体としては、W相巻線7W−JとW相巻線7W−Kとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+2R+4R0+2R)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U相,V相,W相の固定子巻線、全て同じ8R0+4Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU相,V相,W相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなる。
ここで、図30、図31を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図30に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Jと7U−Kを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Jと7V−Kを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、W相巻線7W−Jと7W−Kを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-SとW相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続し、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、六角形状の結線とし、3箇所の接続点から整流器20に各々接続する。上記結線は、構成上は3相巻線のデルタ結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
また、図31に示すようにU相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Jと7U−Kを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Jと7V−Kを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、W相巻線7W−Jと7W−Kを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-Eと、V相固定子巻線7Vの口出し線71V−Eと、W相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを整流器20に各々接続して、中性点を基準とした放射状の結線とする。上記結線は、構成上は3相巻線のスター結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
以上説明したように、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。
さらには、毎極毎相のスロット数が2の形態で、各相内に電気角の位相差が30°ずれた2種類の環状コイル76を、途中で接続することなく連続的に連結して、固定子巻線を形成しているので、整流器の構成も、3相巻線と同等のダイオード数を最小限の6ケで達成できる。また、上記した第1の実施形態、第2の実施形態と比較して、各相内で接続しないので、溶接レス化が可能となり、生産性にも優れ、接合による損失も低減することができる。
そして、上記した第3の実施形態では、固定子スロット内に挿入するときに環状コイル76が干渉するが、本実施形態では、環状コイル76を各々干渉しない配置としたため、固定子巻線の挿入性に優れ、生産性の向上も図れる。
さらに、上記した第4の実施形態に対して、環状コイル76の7番目から12番目の渡り線75a及び75bのクロス(交差)をなくすとともに、渡り線75の全長を短くすることで、コイル抵抗値を低減でき、回転電機の高効率化を図ることができる。
また、各相内に電気角の位相差が30°異なる2種類の相が内包している固定子巻線の形態であるため、高調波成分も低減でき、磁気加振力は通常の3相巻線より低減でき、低騒音化が図れる。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得られるとともに、生産性に優れ、安価で低騒音化の回転電機が実現することができる。
尚、本実施形態では、1番目から6番目までの環状コイル76を結ぶ渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置され、7番目から12番目までの環状コイル76を結ぶ渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置されるJ巻線と、1番目から6番目までの環状コイル76を結ぶ渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置され、7番目から12番目までの環状コイル76を結ぶ渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置されるK巻線に、均等に分割される場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、全ての渡り線75をJ巻線のみで構成し、あるいは、全ての渡り線75をK巻線のみで構成しても、同様の効果が得られる。
また、固定子巻線の巻回ピッチを4/6(電気角120°)で巻線された固定子について述べてきたが、巻回ピッチを5/6(電気角150°)で巻線された固定子の構成についても成立し、同様の効果が得られる。
[第6の実施形態]
次に、図32から図36を用いて、本発明の第6の実施形態による回転電機の構成について説明する。なお、本実施形態による回転電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。また、本実施形態による回転電機の固定子の構成は、図16と同様である。
図32は、U相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図33は、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子巻線の配置図である。図34は、固定子巻線のスロット内における各相のコイル配置図である。図35は、各相の固定子巻線を六角形状に結線した結線図である。図36は各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
本実施形態は、第3の実施形態から第5の実施形態に対して、固定子巻線の形態を変更したものであり、2周分の長さで巻線機の設備のスペースを大きく有するため、固定子巻線の口出し線71側の第1番目から第6番目までの環状コイル76の配置後、第7番目で折り返して口出し線71側に向かって反転させ、巻線設備の小スペース化を図ったものである。
図32に示すように、U相固定子巻線7Uは、第1のU相巻線7U−Lと、第2のU相巻線7U−Mからなる。各U相巻線7U−L,7U−Mは、環状に巻回され成形されたコイル76を渡り線75a及び75bで複数連結した形態で構成され、本例である12極3相巻線の場合、環状コイル76の数は12で各環状コイル76間は渡り線75aまたは75bで接続され、連続的に形成される。
U相巻線7U−Lの渡り線75aは、図示の上側、すなわち、コイルエンド部72a側に配置され、U相巻線7U−Mの渡り線75bは、図示の下側、すなわち、コイルエンド部72b側に配置されている。図32の上側に示すU相巻線7U−LとU相巻線7U−Mの回路図は、図32の下側のようになる。
U相巻線7U−Lの環状コイル76の配置ピッチは、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で環状コイル76が配置され、各環状コイル76間は、コイルエンド部72a側の渡り線75aで連結されている。
そして、環状コイル76の6番目から7番目で折り返して口出し線71側に反転し、電気角30°の位相差を設けるため、電気角で210°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設けて、渡り線75cで連結している。
そして、7番目から12番目までの環状コイル76まで、電気角360°間隔で口出し線71側に向かって順次配置されて、各環状コイル76間がコイルエンド部72a側の渡り線75aで連結されている。
U相巻線7U−Lの環状コイル76は、1番目から6番目の環状コイル76までは、左巻きに巻回されて形成されており、7番目から12番目の環状コイル76までは、右巻きに巻回されて形成されている。そして、1番目から6番目の環状コイル76までの間を連結する渡り線75aと、7番目から12番目の環状コイル76までの間を連結する渡り線75aは、コイルエンド部72a側で互いに交差している。
U相巻線7U−Mの環状コイル76の配置ピッチは、口出し線71側の1番目から6番目の環状コイル76までは、電気角360°間隔で環状コイル76が配置され、各環状コイル76間は、コイルエンド部72b側の渡り線75bで連結されている。
そして、環状コイル76の6番目から7番目で折り返して口出し線71側に反転し、電気角30°の位相差を設けるため、電気角で210°ずらした配置に7番目の環状コイル76を設けて、渡り線75dで連結している。
そして、7番目から12番目までの環状コイル76まで、電気角360°間隔で口出し線71側に向かって順次配置されて、各環状コイル76間がコイルエンド部72b側の渡り線75bで連結されている。
U相巻線7U−Mの環状コイル76は、1番目から6番目の環状コイル76までは、右巻きに巻回されて形成されており、7番目から12番目の環状コイル76までは、左巻きに巻回されて形成されている。そして、1番目から6番目の環状コイル76までの間を連結する渡り線75bと、7番目から12番目の環状コイル76までの間を連結する渡り線75bは、コイルエンド部72b側で互いに交差している。
なお、固定子鉄心のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
図32に示すように、環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節ピッチとなる。本例の場合、環状コイル76の巻回ピッチは、3スロット分を跨ぐ4/6ピッチ(電気角120°)の巻回ピッチとなる。V相固定子巻線7V、W相固定子巻線7Wについても、U相固定子巻線7Uと同様に、それぞれ、V相巻線7V−Lと7V−M、W相巻線7W−Lと7W−Mに分割する。
図33は、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。
図33は各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、U相、U相、V相の3種類の固定子巻線から構成される。
各々の相の固定子巻線7は、図33に示すように、スロット内にU相巻線7U−L,V相巻線7V−L,W相巻線7W−Lの順番に挿入され、次に、W相巻線7W−M,V相巻線7V−M,U相巻線7U−Mの順番で挿入され、図34に示すように、スロット内に順次配置される。
固定子巻線7におけるスロット内のコイルの配置は、図34に示すように、半径方向に2分割した2層巻線の配置となる。例えば、U相固定子巻線7Uに着目すると、U相巻線7U−Lは外層に配置され、U相巻線7U−Mは内層に配置されている。このように、各相の固定子巻線とも外層と内層に均等に分散して配置されており、各相の分割した固定子巻線7を直列に接続することで、各相のインダクタンスが均等化し、発電電流はバランスされる。
ここで、例えば、回転子の中心から内層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層のコイル半径方向の中心位置を基準として、外層のコイル半径方向の中心位置を、R0+Rとする。
U相固定子巻線7Uにおいて、U相巻線7U−Lは、図34の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、U相巻線7U−Mは、図34の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、U相固定子巻線7U全体としては、U相巻線7U−LとU相巻線7U−Mとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
V相固定子巻線7Vにおいて、V相巻線7V−Lは、図34の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、V相巻線7V−Mは、図34の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、V相固定子巻線7V全体としては、V相巻線7V−LとV相巻線7V−Mとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
W相固定子巻線7Wにおいて、W相巻線7W−Lは、図34の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表され、W相巻線7W−Mは、図34の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。
従って、W相固定子巻線7W全体としては、W相巻線7W−LとW相巻線7W−Mとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+2R+4R0+2R)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U相,V相,W相の固定子巻線、全て同じ8R0+4Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU相,V相,W相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなる。
ここで、図35、図36を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図35に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Lと7U−Mを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、U相巻線7V−Lと7V−Mを並列接続し、W相固定子巻線7Wは、U相巻線7W−Lと7W−Mを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-SとW相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、六角形状の結線とし、3箇所の接続点から整流器20に各々接続する。上記結線は、構成上は3相巻線のデルタ結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
また、図35に示すようにU相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Lと7U−Mを並列接続し、V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Lと7V−Mを並列接続し、W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Lと7W−Mを並列接続する。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-Eと、V相固定子巻線7Vの口出し線71V−Eと、W相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを整流器20に各々接続して、中性点を基準に放射状の結線とする。上記結線は、構成上は3相巻線のスター結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
以上説明したように、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。
さらには、毎極毎相のスロット数が2の形態で各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた2種類の環状コイル76を、途中で接続することなく連続的に連結して、固定子巻線を形成しているので、整流器20の構成も、3相巻線と同等のダイオード数を最小限の6ケで達成できる。また、上記した第1実施形態、第2実施形態と比較して、各相内で接続しないので、溶接レス化が可能となり、生産性にも優れ、接合による損失も低減することができる。
そして、上記した第3実施形態では、固定子スロット内に挿入するときに環状コイル76が干渉するが、本実施形態では、環状コイル76を各々干渉しない配置としたため、固定子巻線の挿入性に優れ、生産性の向上も図れる。
さらに、上記した第3から第5実施形態に対して、固定子巻線7の全長を半分の長さにすることができ、巻線機の設備上の小スペース化が図れる。
また、各相内に電気角の位相差が30°異なる2種類の相が内包している固定子巻線の形態であるため、高調波成分も低減でき、磁気加振力は通常の3相巻線より低減でき、低騒音化がはかれる。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得られるとともに、生産性に優れ、安価で低騒音化の回転電機が実現することができる。
尚、本実施形態では、固定子巻線7を、各相渡り線75aがコイルエンド部72a側に配置されるL巻線と、各相渡り線75bがコイルエンド部72b側に配置されるM巻線に、均等に分割する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、L巻線のみで構成し、あるいは、M巻線のみで構成してもよく、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、固定子巻線の巻回ピッチを4/6(電気角120°)で巻線された固定子について述べてきたが、巻回ピッチを5/6(電気角150°)で巻線された固定子の構成についても成立し、同様の効果が得られる。
[第7の実施形態]
次に、図37から図41を用いて、本発明の第7の実施形態による回転電機の構成について説明する。なお、本実施形態による回転電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。また、本実施形態による回転電機の固定子の構成は、図16と同様である。
図37は、U相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図38は、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子巻線の配置図である。図39は、固定子巻線のスロット内における各相のコイル配置図である。図40は、各相の固定子巻線を三角形状に結線した結線図である。図41は、各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
本実施形態は、上記した第3の実施形態から第6の実施形態に対して、固定子巻線の形態を変更した内容であり、固定子巻線の渡り線75の長さを短縮し、コイル抵抗値の低減を図るものである。
図37に示すように、U相固定子巻線7Uは、第1のU相巻線7U−Nと、第2のU相巻線7U−Pからなる。環状に巻回され成形された2種類の環状コイル76を交互に渡り線75e〜75hで複数連結した形態で構成され、本実施形態である12極3相巻線の場合、環状コイル76の数は12で連続的に形成される。
U相巻線7U−Nは、口出し線71側の1番目から2番目までの環状コイル76を電気角で210°だけ位相をずらして配置し、コイルエンド部72a側の渡り線75eで連結している。そして、2番目から3番目までの環状コイル76を電気角で150°だけ位相をずらして配置し、コイルエンド部72a側の渡り線75fで連結している。これを12番目の環状コイルまで交互に繰り返して、各環状コイル76間に30°の位相を設けながら交互に配置している。
U1相巻線7U1−Nは、口出し線71から接続点73に向かって、1番目の環状コイル76が左巻きで巻回され、次いで、2番目の環状コイルが右巻きで巻回されており、以後同様に、巻回方向が順に交互になるように巻回されている。渡り線75eと渡り線75fは、口出し線71から偶数番目に位置する環状コイル76のコイルエンド部72a側で交差するように形成されている。
U相巻線7U−Pは、口出し線71側の1番目から2番目までの環状コイル76を電気角で150°だけ位相をずらして配置し、コイルエンド部72b側の渡り線75gで連結している。そして、2番目から3番目までの環状コイル76を電気角で210°だけ位相をずらして配置し、コイルエンド部72b側の渡り線75hで連結している。これを12番目の環状コイルまで交互に繰り返して、各環状コイル76間に30°の位相を設けながら交互に配置している。
U1相巻線7U1−Pは、口出し線71から接続点73に向かって、1番目の環状コイル76が左巻きで巻回され、次いで、2番目の環状コイルが右巻きで巻回されており、以後同様に、巻回方向が順に交互になるように巻回されている。渡り線75gと渡り線75hは、口出し線71から奇数番目に位置する環状コイル76のコイルエンド部72b側で交差するように形成されている。
なお、固定子鉄心6のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
図37に示すように、環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節ピッチとなる。本実施形態の場合は、環状コイル76の巻回ピッチは、3スロット分を跨ぐ4/6ピッチ(電気角120°)の巻回ピッチである。
V相固定子巻線7V、W相固定子巻線7Wについても、U相固定子巻線7Uと同様に、それぞれ、V相巻線7V−Nと7V−P、W相巻線7W−Nと7W−Pに分割する。
図38は、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。
図38は各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、U相、U相、V相の3種類の固定子巻線から構成される。
各々の相の固定子巻線7は、図38に示すように、スロット内にU相巻線7U−N,V相巻線7V−N,W相巻線7W−Nの順番に挿入され、次に、W相巻線7W−P,V相巻線7V−P,U相巻線7U−Pの順番に挿入され、図39に示すように、スロット内に順次配置される。
固定子巻線7におけるスロット内のコイルの配置は、図39に示すように、半径方向に2分割した2層巻線の配置となる。例えば、U相固定子巻線7Uに着目すると、U相巻線7U−Nは外層に配置され、U相巻線7U−Pは内層に配置されている。このように、各相の固定子巻線とも外層と内層に均等に分散して配置されており、各相の分割した固定子巻線7を直列に接続することで、各相のインダクタンスが均等化し、発電電流はバランスされる。
ここで、例えば、回転子の中心から内層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層のコイル半径方向の中心位置を基準として、外層のコイル半径方向の中心位置を、R0+Rとする。
U相固定子巻線7Uにおいて、U相巻線7U−Nは、図39の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、U相巻線7U−Pは、図39の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、U相固定子巻線7U全体としては、U相巻線7U−NとU相巻線7U−Pとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
V相固定子巻線7Vにおいて、V相巻線7V−Nは、図39の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが外層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+4Rとして表され、V相巻線7V−Pは、図39の12スロット分の範囲内において2個の環状コイルが内層に挿入されるため、半径方向の位置は、4R0として表される。従って、V相固定子巻線7V全体としては、V相巻線7V−NとV相巻線7V−Pとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+4R+4R0)と表せる。
W相固定子巻線7Wにおいて、W相巻線7W−Nは、図39の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表され、W相巻線7W−Pは、図39の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。
従って、W相固定子巻線7W全体としては、W相巻線7W−NとW相巻線7W−Pとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+2R+4R0+2R)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U相,V相,W相の固定子巻線、全て同じ8R0+4Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU相,V相,W相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスのアンバランスが発生しなくなる。
このように、各相のインダクタンスがバランスすることで、発電電流が各相で等しくなり、固定子巻線およびダイオードの発熱量がバランスし、コイルおよびダイオードの温度上昇を抑制することができ、また、磁気加振力の増大を抑えて磁気音を低減でき、品質および特性面を向上させることができる。
ここで、図40、図41を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図40に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Nと7U−Pが並列接続される。V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Nと7V−Pが並列接続される。W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Nと7W−Pが並列接続される。
そして、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-SとW相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続し、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、三角形状の結線とし、3箇所の接続点(口出し線71U-Sと71W−Eとの接続点、口出し線71U−Eと71V−Sとの接続点、口出し線71V−Eと71W−Sとの接続点)から整流器20に各々接続する。上記結線は、構成上は3相巻線のデルタ結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
また、図40に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Nと7U−Pが並列接続される。V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Nと7V−Pが並列接続される。W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Nと7W−Pが並列接続される。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-Eと、V相固定子巻線7Vの口出し線71V−Eと、W相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを、整流器20に各々接続して、中性点を基準とした放射状の結線とする。上記結線は、構成上は3相巻線のスター結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
以上説明したように、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得ることができる。
さらには、毎極毎相のスロット数が2の形態で、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた2種類の環状コイル76を連続的に連結して、固定子巻線を形成しているので、請求機20の構成も、3相巻線と同等のダイオード数を最小限の6個で達成できる。また、第1の実施形態、第2の実施形態と比較して、各相内で接続しないので、溶接レス化が可能となり、生産性にも優れ、接合による損失も低減することができる。
また、第3の実施形態では、固定子スロット内挿入時に環状コイル76が干渉するが、本実施形態では、環状コイル76を各々干渉しない配置としているので、固定子巻線の挿入性に優れ、生産性の向上を図ることができる。
さらに、第3の実施形態から第5の実施形態に対して、固定子巻線7の全長が半分の長さとなり、巻線機の設備上の小スペース化が図れる。また、第6の実施形態に対して渡り線75fと75hの長さを大幅に短縮できるので、コイル抵抗値を低減でき、高効率化が実現できる。
また、各相内に電気角の位相差が30°異なる2種類の相を内包している固定子巻線の形態であるため、高調波成分も低減でき、磁気加振力は通常の3相巻線より低減でき、低騒音化が図れる。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得られるとともに、生産性に優れ、安価で低騒音化の回転電機が実現することができる。
なお、本実施形態では、固定子巻線7を、各相渡り線75e及び75fがコイルエンド部72a側に配置されるN巻線と、各相渡り線75g及び75hがコイルエンド部72b側に配置されるP巻線に、均等に分割される場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、すべてN巻線のみで構成し、または、P巻線のみで構成してもよく、本実施形態と同様の効果が得られる。
[第8の実施形態]
次に、図42から図46を用いて、本発明の第8の実施形態による回転電機の構成について説明する。なお、本実施形態による回転電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。また、本実施形態による回転電機の固定子の構成は、図16と同様である。
図42は、U相固定子巻線の斜視図及び回路図である。図43は、固定子における固定子鉄心の内周側からみた各相の固定子巻線の配置図である。図44は、固定子巻線のスロット内における各相のコイル配置図である。図45は、各相の固定子巻線を三角形状に結線した結線図である。図46は、各相の固定子巻線を放射状に結線した結線図である。
本実施形態は、上記第7の実施形態に対して、固定子巻線の環状コイルの巻線ピッチを4/6ピッチから5/6ピッチに拡大し、固定子巻線の渡り線を半分に削減し、コイル抵抗値を低減したものである。
図42に示すように、固定子巻線7のU相巻線は、第1のU相巻線7U−Qと、第2のU相巻線7U−Rからなる。各U相巻線7U−Q,7U−Rは、電気角30°の位相差がある環状に巻回され成形された2種類の環状コイル76を交互に渡り線75e及び75gで複数連結した形態で構成され、本実施形態である12極6相巻線の場合、環状コイル76の数は12で連続的に形成される。
U相巻線7U−Qは、口出し線71側の1番目から2番目までの環状コイル76を電気角で210°だけ位相をずらして配置し、コイルエンド部72a側の渡り線75eで連結している。そして、2番目から3番目の環状コイル76を電気角で150°だけ位相をずらして配置している。2番目と3番目の環状コイル76の間に渡り線はなく、連続して形成されている。これを12番目の環状コイルまで交互に繰り返して、各環状コイル76間に30°の位相を設けながら交互に配置している。
U相巻線7U−Qは、口出し線71から接続点73に向かって、1番目の環状コイル76が左巻きで巻回され、次いで、2番目の環状コイルが右巻きで巻回されており、以後同様に、巻回方向が順に交互になるように巻回されている。
U相巻線7U−Rは、口出し線71側の1番目から2番目までの環状コイル76を電気角で150°だけ位相をずらして配置している。1番目の環状コイル76と2番目の環状コイル76の間に渡り線はなく、連続して形成されている。そして、2番目から3番目の環状コイル76を電気角で210°だけ位相をずらして配置し、コイルエンド部72b側の渡り線75gで連結している。これを12番目の環状コイルまで交互に繰り返して、各環状コイル76間に30°の位相を設けながら交互に配置している。
U相巻線7U−Rは、口出し線71から接続点73に向かって、1番目の環状コイル76が左巻きで巻回され、次いで、2番目の環状コイルが右巻きで巻回されており、以後同様に、巻回方向が順に交互になるように巻回されている。
なお、固定子鉄心のスロット数は、72である。また、このとき、図1に示した回転子のフロント側爪形磁極11は、6個の爪部を有し、リヤ側爪形磁極12も6個の爪部を有している。すなわち、回転子は12極となっている。
図42に示すように、環状コイル76の巻回ピッチは、磁極ピッチより小さい電気角180°未満で巻回される短節ピッチとなる。本実施形態の場合は、環状コイル76の巻回ピッチは、4スロット分を跨ぐ5/6ピッチ(電気角150°)の巻回ピッチである。
V相固定子巻線7V、W相固定子巻線7Wについても、U相固定子巻線7Uと同様に、それぞれ、V相巻線7V−Qと7V−R、W相巻線7W−Qと7W−Rに分割する。
図43は、固定子鉄心6の内周面から見た各相の固定子巻線7の配置図である。
図43は、各相のコイル配置を示しているが、ここで、固定子巻線7は、U相、U相、V相の3種類の固定子巻線から構成される。
各々の相の固定子巻線7は、図43に示すように、スロット内にU相巻線7U−Q,V相巻線7V−Q,W相巻線7W−Qの順番に挿入され、次に、W相巻線7W−R,V相巻線7V−R,U相巻線7U−Rの順番に挿入され、図44に示すように、スロット内に順次配置される。
固定子巻線7におけるスロット内のコイルの配置は、図44に示すように、半径方向に2分割した2層巻線の配置となる。例えば、U相固定子巻線7Uに着目すると、U相巻線7U−Qは外層に配置され、U相巻線7U−Rは内層に配置されている。このように、各相の固定子巻線とも外層と内層に均等に分散して配置されており、各相の分割した固定子巻線7を直列に接続することで、各相のインダクタンスが均等化し、発電電流はバランスされる。
ここで、例えば、回転子の中心から内層のコイル半径方向の中心位置までの距離をR0とし、内層のコイル半径方向の中心位置を基準として、外層のコイル半径方向の中心位置を、R0+Rとする。
U相固定子巻線7Uにおいて、U相巻線7U−Qは、図44の12スロット分の範囲内において外層側に3/2個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1/2個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+3Rとして表され、U相巻線7U−Rは、図44の12スロット分の範囲内において外層側に1/2個の環状コイルが挿入され、また内層側にも3/2個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+Rとして表される。
従って、U相固定子巻線7U全体としては、U相巻線7U−QとU相巻線7U−Rとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+3R+4R0+R)と表せる。
V相固定子巻線7Vにおいて、V相巻線7V−Qは、図44の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表され、V相巻線7V−Rは、図44の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。
従って、V相固定子巻線7V全体としては、V相巻線7V−QとV相巻線7V−Rとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+2R+4R0+2R)と表せる。
W相固定子巻線7Wにおいて、W相巻線7W−Qは、図44の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表され、W相巻線7W−Rは、図44の12スロット分の範囲内において外層側に1個の環状コイルが挿入され、また内層側にも1個の環状コイルが挿入されるため、半径方向の位置は、4R0+2Rとして表される。
従って、W相固定子巻線7W全体としては、W相巻線7W−QとW相巻線7W−Rとを足し合わせて、8R0+4R(=4R0+2R+4R0+2R)と表せる。
12スロット分の範囲内でスロット内に配置されている各相のコイルの半径距離を加算した結果、各U相,V相,W相の固定子巻線、全て同じ8R0+4Rとなり、同じ値となる。
以上のように、スロットの配置されたU相,V相,W相の固定子巻線のインダクタンスは等しくなり、各相の固定子巻線毎にインダクタンスのアンバランスが発生しなくなる。
このように、各相のインダクタンスがバランスすることで、発電電流が各相で等しくなり、固定子巻線およびダイオードの発熱量がバランスし、コイルおよびダイオードの温度上昇を抑制することができ、また、磁気加振力の増大を抑えて磁気音を低減でき、品質および特性面を向上させることができる。
ここで、図45、図46を用いて、各相コイルの結線関係について説明する。
各相の固定子巻線7の結線については、図45に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Qと7U−Rが並列接続される。V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Qと7V−Rが並列接続される。W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Qと7W−Rが並列接続される。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-SとW相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続し、同様に、口出し線71U−Eと71V−Sとを接続し、口出し線71V−Eと71W−Sを接続する。そして、六角形状の結線とし、3箇所の接続点(口出し線71U-Sと71W−Eとの接続点、口出し線71U−Eと71V−Sとの接続点、口出し線71V−Eと71W−Sとの接続点)から整流器20に各々接続する。
上記結線は、構成上は3相巻線のデルタ結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
また、図45に示すように、U相固定子巻線7Uは、U相巻線7U−Qと7U−Rが並列接続される。V相固定子巻線7Vは、V相巻線7V−Qと7V−Rが並列接続される。W相固定子巻線7Wは、W相巻線7W−Qと7W−Rが並列接続される。
次に、U相固定子巻線7Uの口出し線71U-EとV相固定子巻線7Vの口出し線71V−Eと、W相固定子巻線7Wの口出し線71W−Eとを接続して中性点とし、口出し線71U−S、71V−S、71W−Sを、整流器20に各々接続して、中性点を基準に放射状の結線とする。上記結線は、構成上は3相巻線のスター結線と同等であり、各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた環状コイル76が存在する固定子巻線の形態である。
以上説明したように、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の発電電流はバランス化される。
さらには、毎極毎相のスロット数が2の形態で各相の固定子巻線内で電気角の位相差が30°ずれた2種類の環状コイル76を連続的に連結して、固定子巻線を形成しているので、整流器20の構成も、3相巻線と同等のダイオード数を最小限の6個で達成できる。また、第1の実施形態、第2の実施形態と比較して、各相内で接続しないので、溶接レス化が可能となり、生産性にも優れ、接合による損失も低減することができる。
また、第3の実施形態では、固定子スロット内挿入時に環状コイル76が干渉するが、本実施形態では、環状コイル76を各々干渉しない配置としているので、固定子巻線の挿入性に優れ、生産性の向上も図ることができる。
さらに、第3の実施形態から第5実施形態に対して、固定子巻線7の全長が半分の長さとなり、巻線機の設備上の小スペース化が図れる。また、第6の実施形態に対して渡り線の数を半分にすることができるので、コイル抵抗値を低減でき、高効率化が実現できる。
また、各相内に電気角の位相差が30°異なる2種類の相が内包している固定子巻線の形態であるため、高調波成分も低減でき、磁気加振力は通常の3相巻線より低減でき、低騒音化が図れる。また、巻線ピッチを5/6スロットにすることで、巻線係数を大きくすることができ、誘起電圧が増大し、特に周波数が低いところでの高出力化が図れる。したがって、高出力及び高効率の回転電機を得られるとともに、生産性に優れ、安価で低騒音化の回転電機が実現することができる。
なお、上記の第8の実施形態では、固定子巻線7の各相渡り線75eがコイルエンド部72a側に配置されるQ巻線と、各相渡り線75gがコイルエンド部72b側に配置されるR巻線に、均等に分割される場合を例に説明したが、すべてQ巻線のみで構成し、または、R巻線のみで構成してもよく、本実施形態と同様の効果が得られる。
[第9の実施形態]
次に、図47から図49を用いて、本発明の第9の実施形態による回転電機の構成ついて説明する。
上述の第1〜第9の実施形態では、回転電機の一例として車両用交流発電機について説明を行ったが、本発明の回転電機は、回転力を出力するモータや、発電と駆動を兼ねたモータジェネレータ等にも適用でき、特に、モータとしては、ハイブリット自動車や電動四輪駆動車の駆動用モータ,ポンプを駆動するためのモータ等の固定子として適用できる。
図47は、従来の固定子が単一の3相巻線を有するモータのモータシステムを説明する回路構成図、図48は、固定子が第1の巻線と第2の巻線を有するモータのモータシステムを説明する回路構成図、図49は、本発明が適用された固定子を有するモータシステムを説明する回路構成図である。
図49に示すモータシステム301は、インバータとして各相に設けられたスイッチング素子(MOS-FETなど)112をモータ制御部111から制御信号に基づいて切り替えることにより、電源113からモータ(図示せず)の固定子5に3相交流電流を供給して、モータを駆動する構成を有している。モータシステム301には、固定子5の固定子巻線7に供給される電流を検出する電流センサ(AC)114、モータの温度を検出する温度センサ115、モータの回転を検出する回転センサ117が設けられており、各センサの信号がモータ制御部111に供給されるようになっている。
図47に示す従来システム302の場合、スイッチング素子112は、3相分、すなわち合計で6個を必要とする。そして、図48に示すように、固定子102が第1の巻線102aと第2の巻線102bを有するモータのモータシステム303では、スイッチング素子112は、6相分、すなわち合計で12個を必要とする。したがって、図48に示すモータシステム303では、スイッチング素子112の数が2倍となり、高価なものとなり、また、制御が複雑化する。
これに対して、本実施形態のモータシステム301によれば、固定子5の固定子巻線7がU1相とU2相、V1相とV2相、W1相とW2相の電気角が異なる相を直列に接続した構成を有するので、図49に示すように、スイッチング素子112は、合計6個でよく、図48に示すシステムと比較して、スイッチング素子の数を2分の1に減らすことができ、モータ制御部111による電圧制御も簡単化することができる。
そして、電流センサ(AC)114、回転センサ117、温度センサ115の数も減らすことができる。なお、図47〜図49では、電流センサ(AC)114、回転センサ117、温度センサ115の線は、多数本になるが、簡略化するために、1本で表している。
本実施形態の図49に示すモータシステム301によれば、モータの固定子巻線7は、電気角が異なる6つの相の巻線を有するが、固定子巻線からの出力端子が3端子構成のため、図47に示す従来の3相巻線用のシステムのインバータ及び駆動システムを用いて制御することが可能であり、モータのみの変更で低騒音化の回転電機が実現できる。そして、本実施形態によれば、漏れインダクタンスは各相同等となり、各相のインダクタンスが均等化し、各相の電流はバランス化される。したがって、高出力及び高効率のモータを得ることができる。さらには、異なる電気角の相を直列に接続することで高調波成分も低減でき、磁気加振力を通常の3相巻線よりも低減できる。したがって、磁気加振力に応じた磁気音の発生を抑制でき、低騒音化のモータが実現できる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記した各実施形態は、本発明の理解を容易に説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。