上記の特許公報で提案されたヘアーブラシは、片手で握り得る二本の柄をピンセット型に連結し、ストレートパーマに際しては、二本の柄が使用者の片手で把持される。この使用者は、ストレートパーマ用の薬剤を縮毛に塗布した上で、ヘアーブラシの二本の柄を把持して縮毛をブラシにて挟み、柄を把持したままヘアーブラシを毛先側に移動させて縮毛にテンションを付与する。こうしてテンションを付与したまま、使用者はもう片方の手でドライヤーを持って温風をテンション付与箇所の毛髪に当てている。
上記したピンセット型のヘアーブラシを用いたストレートパーマには、パーマの出来映えについての問題は全くない。しかしながら、ピンセット型の二本の柄の把持状況は、ブラシによる縮毛挟持延いては毛髪へのテンション付与の状況に影響を及ぼすため、二本の柄が離れないように柄を握りしめるという特異な把持動作をパーマ施術中に亘って継続しなければならなかった。特に、ストレートパーマを所望する人自らがストレートパーマを施術する場合には、そのパーマ所望者は、その人自身の毛髪にテンションを掛けるために自らの一方の手で上記した特異な把持動作を行いつつ、他方の手でドライヤーを操作する必要があることから、ブラシの把持動作に慎重さが必要となり、その改善が求められるに至った。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の構成を採用した。
把持部にブラシ本体を連設したヘアーブラシであって、
前記ブラシ本体の長手方向に沿ってブラシ歯が櫛歯列状に並んだ複数のブラシ歯列を、前記ブラシ本体に放射状に配設して備え、
前記複数のブラシ歯列の内の少なくとも一列の前記ブラシ歯列は、毛髪の梳きが可能な第1歯間ピッチでブラシ歯を櫛歯列状に並べた第1ブラシ歯列とされ、
前記複数のブラシ歯列の残余の前記ブラシ歯列は、毛髪の梳きの際にその梳かれる毛髪との摩擦により毛髪の梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与を可能とするようにブラシ歯を列状に並べた第2ブラシ歯列とされ、
該第2ブラシ歯列は、前記第1ブラシ歯列の前記第1歯間ピッチより狭い第2歯間ピッチでブラシ歯を櫛歯列状に並べて備えることで、前記毛髪との摩擦による前記テンション付与を可能とすると共に、前記第1ブラシ歯列の前記ブラシ歯と同等のブラシ歯と前記第1ブラシ歯列の前記ブラシ歯より短いブラシ歯とを前記第2歯間ピッチで交互に備える。
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
[適用:ヘアーブラシ]
把持部にブラシ本体を連設したヘアーブラシであって、
前記ブラシ本体の長手方向に沿ってブラシ歯が櫛歯列状に並んだ複数のブラシ歯列を、前記ブラシ本体に放射状に配設して備え、
前記複数のブラシ歯列の内の少なくとも一列の前記ブラシ歯列は、毛髪の梳きが可能な第1歯間ピッチでブラシ歯を櫛歯列状に並べた第1ブラシ歯列とされ、
前記複数のブラシ歯列の残余の前記ブラシ歯列は、毛髪の梳きの際にその梳かれる毛髪との摩擦により毛髪の梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与を可能とするようにブラシ歯を列状に並べた第2ブラシ歯列とされている
ことを要旨とする。
上記構成のヘアーブラシを用いる場合、使用者は、把持部を把持して上記構成のヘアーブラシを毛髪の根元側から毛先側に動かす毛髪の梳き動作(以下、単に毛髪梳き動作と称する)を行う。この毛髪梳き動作を行うに当たり、例えば、第1ブラシ歯列を毛髪の根元側において毛髪に当てることで、その後の毛先側への毛髪梳き動作において、毛髪は、毛髪の梳きが可能な第1歯間ピッチでブラシ歯を櫛歯列状に並べた第1ブラシ歯列により、毛流れが整えられつつ梳かれることになる。仮に第2ブラシ歯列を毛髪の根元側において毛髪に当てたとしても、ヘアーブラシを回転させながら毛髪梳きを行うことで第1ブラシ歯列が毛髪梳きに関与することから、この場合であっても、毛髪は第1ブラシ歯列により毛流れが整えられつつ梳かれることになる。
ブラシ本体には、この第1ブラシ歯列に加えて第2ブラシ歯列も放射状に配設されていることから、第1ブラシ歯列の隣の第2ブラシ歯列によっても、毛髪は梳かれることになる。この第2ブラシ歯列は、そのブラシ歯を毛髪梳き動作の際にその梳かれる毛髪との摩擦により毛髪梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与を可能とするように長手方向に沿って列状に並べていることから、この第2ブラシ歯列にて梳かれる毛髪は、上記した毛髪梳き動作に伴ってテンションを受ける。この場合、第2ブラシ歯列は、第1ブラシ歯列に並んで放射状に位置することから、毛髪には、第1ブラシ歯列で上記したように毛流れが整えられて第2ブラシ歯列によりテンションを付与できる。
こうしてテンションを受けた毛髪は、ほぼ真っ直ぐに伸ばされた状態となる。そして、上記構成のヘアーブラシは、こうした毛髪へのテンション付与を使用者による毛髪梳き動作だけで起こし、テンション付与に際して二本の柄が離れないように柄を握りしめるという特異な把持動作を必要としない。しかも、使用者が毛髪梳き動作を途中で中断してヘアーブラシを毛髪梳き動作の中断位置に留め置きさえすれば、上記構成のヘアーブラシは、毛髪との摩擦に基づいて第2ブラシ歯列により毛髪にテンションを付与したままとする。この結果、上記構成のヘアーブラシによれば、把持部を単純に握るように把持してヘアーブラシを毛髪の根元側から毛先側に動かす毛髪梳き動作だけで、毛髪に容易にテンションを付与することができる。このことは、縮毛のストレートパーマに適したヘアーブラシを提供できることも意味する。
加えて、上記構成のヘアーブラシは、複数のブラシ歯列の少なくとも一つの第1ブラシ歯列と残余の第2ブラシ歯列をブラシ本体に放射状に配設している。このため、毛先側への毛髪梳き動作途中での中断位置或いは毛先側に達した状態での毛髪梳き動作の中断位置に使用者がヘアーブラシを留め置く際に、その使用者がヘアーブラシを回転させることで、毛髪は複数列の第2ブラシ歯列で梳かれることになる。よって、毛髪梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与は複数列の第2ブラシ歯列にて可能となるので、容易且つ確実に毛髪にテンションを付与できると共に、テンション維持も容易となる。ヘアーブラシを回転させながら毛先側への毛髪梳き動作を行い、その過程でヘアーブラシ回転と毛髪梳き動作とを停止させて使用者がヘアーブラシを留め置く場合も、上記した毛髪へのテンションの付与とその維持を容易且つ確実に達成できる。
上記したように、上記構成のヘアーブラシは、毛髪梳き動作を伴う縮毛のストレートパーマに用いられることから、第1ブラシ歯列が櫛歯列状に並べたブラシ歯の第1歯間ピッチを毛髪の梳きが可能なピッチとする場合、当該ピッチをヘアーブラシ実用上から設定できる。第2ブラシ歯列にあっても、ヘアーブラシ実用上から毛髪梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与を可能とするブラシ歯ピッチを設定できる。例えば、ブラシ歯を櫛歯形状とした場合には、第1ブラシ歯列の第1歯間ピッチを3〜12mm程度とすれば、第1ブラシ歯列を毛髪の梳きが可能なピッチのブラシ歯列とでき、これより狭いピッチでは毛髪梳き動作に伴う摩擦が大きくなって梳き動作がしづらくなり、上記範囲を超えるピッチでは毛髪の毛流れも整えがたくなり実用上の支障を来すと予想される。第2ブラシ歯については、歯間ピッチを1.5〜3mm程度とすれば、第2ブラシ歯列を毛髪の梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与が可能なブラシ歯列とでき、これより狭いピッチでは毛髪梳き動作に伴う摩擦が大きくなり過ぎて梳き動作に実用上の支障が起きると予想でき、上記範囲を超えるピッチでは毛髪へのテンション付与が不十分となる。
また、第1ブラシ歯列と残余の第2ブラシ歯列を含む複数のブラシ歯列をブラシ本体に放射状に配設するに当たり、プラシ本体周りにおけるブラシ歯列のピッチ、即ちブラシ本体から放射状の複数のブラシ歯列の列数にもヘアーブラシ実用上から設定できる。例えば、プラシ本体周りに2〜4列のブラシ歯列がブラシ本体から放射状に延びただけでは、ヘアーブラシを上記したように回転させながら用いる際に毛髪に絡まるブラシ歯列の列数が少なくてテンション付与が不十分となる。一方、プラシ本体周りに15列を超えるような数のブラシ歯列がブラシ本体から放射状に延びていると、ヘアーブラシを上記したように回転させながら用いる際に毛髪に絡まるブラシ歯列の列数が多すぎて毛髪との摩擦が過大となり、毛髪梳き動作に支障を来すと予想される。このため、プラシ本体周りに5〜15列のブラシ歯列を第1ブラシ歯列と残余の第2ブラシ歯列として、これら複数のブラシ歯列をブラシ本体から放射状に配設することが、ヘアーブラシの実情に合うと予想される。
上記したヘアーブラシは、次のような態様とすることができる。例えば、前記第2ブラシ歯列を、前記第1ブラシ歯列の前記第1歯間ピッチより狭い第2歯間ピッチでブラシ歯を櫛歯列状に並べて備えるようにして、前記毛髪との摩擦による前記テンション付与を可能とすることができる。こうすれば、第1ブラシ歯列にて毛流れが整えられた毛髪が狭い第2歯間ピッチで並んだ櫛歯列状のブラシ歯間を通るので、第1ブラシ歯列にて毛流れが整えられた毛髪に毛髪梳き動作に伴ってより確実且つ容易にテンションを付与でき、縮毛のストレートパーマに際しての縮毛のストレート化とその保持に好適となる。
この場合、前記第2ブラシ歯列を、前記第1ブラシ歯列の前記ブラシ歯と同等のブラシ歯と前記第1ブラシ歯列の前記ブラシ歯より短いブラシ歯とを前記第2歯間ピッチで交互に備えるものとできる。こうすれば、ブラシ歯の長さに長短を設けた第2ブラシ歯列にあっても、短寸のブラシ歯より長いブラシ歯部分において、既述した毛髪梳き動作に伴う毛流れの整えを必然的に起こす。よって、毛流れをより一層整えた上でのテンション付与が行われることになるので、縮毛のストレートパーマに際しての毛髪へのテンション付与の実効性が高まり、縮毛のストレート化とその保持にとってより好ましい。
また、前記第1ブラシ歯列を2列用意した上で、その2列の第1ブラシ歯列を前記ブラシ本体を挟んでブラシ歯の基部が背中合わせとなるように配設することもできる。こうすれば、2列の第1ブラシ歯列は、ブラシ歯を180°の開きを持って並べるので、毛髪へのテンション付与とテンション維持を図るための上記したヘアーブラシの回転動作の許容範囲が広がり、ヘアーブラシの使用方法の多様化を図ることができる。
この他、前記ブラシ本体については、これを長手方向と交差する断面において扁平断面形状とすることもできる。こうすれば、次の利点がある。第1ブラシ歯列と第2ブラシ歯列をブラシ本体に放射状に備えるヘアーブラシを樹脂の型成型にて形成する場合、上記した扁平断面形状のブラシ本体では、ブラシ歯列のブラシ歯基部において扁平とはいえ平面状の部位が存在し、この平面状部位から上記の複数のブラシ歯列を放射状に延ばすことができる。そして、扁平断面形状のブラシ本体から複数のブラシ歯列を放射状とするに当たり、ブラシ本体の中心軸からそれぞれのブラシ歯列(詳しくはブラシ歯列の各ブラシ歯)を放射状に延ばすのではなく、あるブラシ歯列の各ブラシ歯についてはブラシ本体の中心軸から延ばし、その隣のブラシ歯列の各ブラシ歯については、ブラシ本体の中心軸からオフセットした位置のブラシ歯本体表面から放射状に延ばすようにできる。
そして、扁平断面形状のブラシ本体においては、あるブラシ歯列において隣り合うブラシ歯の基部と基部の間の平面状部位や隣り合うブラシ歯列のブラシ歯の基部と基部の間の平面状部位を、型成型品(ヘアーブラシ)の型抜けを行う場合の成型品押しピンの押し位置とできるので、型成型品(ヘアーブラシ)の型抜きが容易となる。なお、複数のブラシ歯列である第1、第2のブラシ歯列が有するブラシ歯を、ブラシ歯基部において矩形断面とし、ブラシ歯先端に向かうに従って断面狭小となる櫛歯形状とすれば、型成型品(ヘアーブラシ)の型抜きがより容易となる。
また、前記把持部については、これを前記ブラシ本体における前記第1ブラシ歯列の並びの延長線上に把持滑り止め用の滑り止め部位を有するものとできる。こうすれば、把持した把持部の滑り止め部位にて、ブラシ本体における第1ブラシ歯列の形成位置を容易に認知できるので、毛髪梳き動作の当初において、第1ブラシ歯列を毛髪の根元側に容易に当てることができる。よって、その後の毛髪梳き動作に伴う第1ブラシ歯列により毛流れの整えや第2ブラシ歯列による毛髪へのテンション付与の実効性がより高まり好ましい。滑り止め部位は、把持部を把持した際の把持滑り止め用の機能を果たせばよく、その形状やその形成の様子は種々が採用できる。例えば、第1ブラシ歯列の並びの延長線上に凹凸を繰り返して設けたり、筋状の凸条或いは凹条を延長線に沿って延びるよう形成することもできる。
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施例としてのヘアーブラシ10の概略斜視図、図2はヘアーブラシ10の正面図、図3はヘアーブラシ10の右側面図、図4はヘアーブラシ10の平面図、図5はヘアーブラシ10の底面図、図6は図2における6−6線に沿って断面視した断面端面図、図7は図2における7−7線に沿って断面視した断面端面図、図8は図2における8−8線に沿って断面視した断面端面図である。
図示するように、ヘアーブラシ10は、把持部12にブラシ本体20を連設して備える樹脂成形品である。把持部12は、ブラッシングおよび後述のストレートパーマ施術等の際に使用者に把持される部位であり、把持に適した径の円柱シャフトとされている。そして、この把持部12は、ブラシ本体20の側において細径化され、表裏面に凸部12aと凹部12bを交互にいつ列に並べて備える。この場合、下端側の一つの凹部12bは、他の凹部12bより開口面積が大きくされている。こうした並んだ凸部12aは、把持部12を使用者が指で把持した際の滑り止めとして機能する。
ブラシ本体20は、図7や図8に示すように、ブラシ本体長手方向と交差する断面において扁平断面形状をなして把持部12に連設して延び、第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40と端部ブラシ歯50とを備える。第1ブラシ歯列30は、ブラシ本体20の扁平断面の表裏の扁平面においてブラシ本体中心軸からブラシ歯を真っ直ぐ延ばし、当該ブラシ歯をブラシ本体20の長手方向に沿って櫛歯列状に並べて形成されている。ヘアーブラシ10は、図2におけるブラシ表面とブラシ背面にそれぞれ第1ブラシ歯列30を備え、この表裏の2列の第1ブラシ歯列30は、図4〜図7に示すように、ブラシ本体20を挟んでブラシ歯の基部を背中合わせにして形成されている。ブラシ本体表裏の第1ブラシ歯列30は、ブラシ歯を毛髪の梳きが可能な第1歯間ピッチP1でブラシ本体20の長手方向に沿って櫛歯列状に並べている。この第1歯間ピッチP1については後述する。ブラシ本体表裏の第1ブラシ歯列30については、それぞれのブラシ歯列を区別する際にはブラシ正面側を第1ブラシ歯列30F、ブラシ背面側を第1ブラシ歯列30Bと称する。なお、ブラシ表裏の把持部12の凸部12aは、ブラシ本体20における第1ブラシ歯列30の並びの延長線上に並ぶようにされている。
第2ブラシ歯列40は、図1〜図3に示すように、長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44とを備え、第1ブラシ歯列30の第1歯間ピッチP1より狭い第2歯間ピッチP2で長短のブラシ歯をブラシ本体20の長手方向に沿って櫛歯列状に交互に並べて形成されている。この場合、短寸ブラシ歯44は、長寸ブラシ歯42のほぼ7割ほどの長さとされている。そして、この第2ブラシ歯列40は、図4〜図5および図7に示すように、第1ブラシ歯列30Fと第1ブラシ歯列30Bの列間にブラシ本体周りにほぼ等ピッチで3ずつ列配設されている。つまり、ヘアーブラシ10は、ブラシ本体表裏の第1ブラシ歯列30Fと第1ブラシ歯列30Bに加え第1ブラシ歯列間両側の3列の第2ブラシ歯列40の8列のブラシ歯列を、ブラシ本体20を取り囲むようブラシ本体20に放射状に配設して備えることになる。第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40のブラシ歯配列の様子と第2歯間ピッチP2については、後述する。
第2ブラシ歯列40は長短のブラシ歯を扁平断面形状のブラシ本体20から延ばすに当たり、第1ブラシ歯列30Fおよび第1ブラシ歯列30Bの両側の4列の第2ブラシ歯列40については、ブラシ本体20の扁平断面の表裏の扁平面においてブラシ本体中心軸からオフセットした位置からブラシ歯を斜めに延ばしている。ブラシ本体20の扁平断面端部の2列の第2ブラシ歯列40については、ブラシ本体20の扁平断面端部からブラシ歯を真っ直ぐ延ばしている。このため、第1ブラシ歯列30の両側の4列の第2ブラシ歯列40は、図7〜図8に示すように、ブラシ本体中心軸からオフセットして斜めに伸びて放射状となる。これに対し、第1ブラシ歯列30Fと第1ブラシ歯列30Bおよびブラシ本体20の扁平断面端部の2列の第2ブラシ歯列40とは、ブラシ本体中心軸から真っ直ぐに伸びて放射状となる。
本実施例では、こうして放射状に延びたブラシ歯列のうち、第2ブラシ歯列40については、ブラシ歯列の長寸ブラシ歯42の歯先をブラシ本体中心軸から等距離に位置させ、短寸ブラシ歯44についてもブラシ本体中心軸から等距離に位置させている。第1ブラシ歯列30については、そのブラシ歯を第2ブラシ歯列40の長寸ブラシ歯42よりやや短くしていることから、その歯先を第2ブラシ歯列40の長寸ブラシ歯42の歯先位置よりやや内側としている。これら歯先位置について、ヘアーブラシ10をストレートパーマ施術に用いるという点を考慮して具体的に述べると、長寸ブラシ歯42は、その歯先がブラシ本体中心軸を中心に半径約23mmの円周上に位置し、短寸ブラシ歯44は半径約16.8mmの円周上、第1ブラシ歯列30のブラシ歯は半径約20mmの円周上に位置する。なお、ブラシ本体20を円柱断面のシャフト形状とすれば、第1ブラシ歯列30および第2ブラシ歯列40を、ブラシ本体中心軸から真っ直ぐにブラシ歯を延ばして放射状とすることもできる。
次に、第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40のブラシ歯配列の様子について説明する。図9は第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40のブラシ歯配列の様子を説明する説明図である。なお、この図9では扁平断面のブラシ本体20を平板状に延ばしたと仮定した場合のブラシ歯配列の様子が示されている。
この図9に示すように、第2ブラシ歯列40は、長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44とを第2歯間ピッチP2で交互に並べた上で、隣り合う第2ブラシ歯列40においては長寸・短寸のブラシ歯を揃えて備える。第1ブラシ歯列30Fと第1ブラシ歯列30Bは、第2歯間ピッチP2の約2倍の間隔の第1歯間ピッチP1でブラシ歯を並べており、第1ブラシ歯列30の各ブラシ歯は、その両側の第2ブラシ歯列40の長寸ブラシ歯42とほぼ揃って並んでいる。第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40の各ブラシ歯は、ブラシ歯基部において矩形断面とされ、ブラシ歯先端に向かうに従って断面狭小となる角錐状の櫛歯形状とされている。本実施例では、ヘアーブラシ10をストレートパーマ施術に用いるという実用上から、第1ブラシ歯列30についてはこれをブラシ歯が15本並んだブラシ歯列とし、第2ブラシ歯列40を長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44が交互に33本並んだブラシ歯列とした。なお、第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40におけるブラシ歯数は、ストレートパーマ施術としての実用に耐える範囲において適宜設定可能である。それぞれのブラシ歯形状も同様であり、円錐状の形状や、三角錐、円柱状の形状とすることもできる。
また、上記の実用上の上から、第1ブラシ歯列30の第1歯間ピッチP1は、既述したように毛髪の梳きが可能なブラシ歯間隔であり、毛髪梳き用の既存のヘアーブラシと変わるものではなく、本実施例では約4mmである。第2歯間ピッチP2については、これを第1歯間ピッチP1の半分の約2mmとすることで、この第2歯間ピッチP2で長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44を交互に並べた第2ブラシ歯列40は、毛髪の梳きの際にその梳かれる毛髪との摩擦により毛髪の梳き動作に伴って毛髪にテンションを付与する。なお、第1歯間ピッチP1は、毛髪の梳きが可能なブラシ歯間隔として実用に耐える範囲において適宜設定可能であり、第2歯間ピッチP2についても、梳かれる毛髪との摩擦により毛髪の梳き動作に伴って毛髪にテンションを付与できる範囲において適宜設定可能である。
ここで、第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40のブラシ歯の毛髪梳きへの関与の様子について説明する。図10は第1ブラシ歯列30において第1歯間ピッチP1で櫛歯列状に並んだブラシ歯と第2ブラシ歯列40において第2歯間ピッチP2の倍のピッチで並んだ長寸ブラシ歯42による毛髪梳きの様子を模式的に示す説明図、図11は第2ブラシ歯列40において第2歯間ピッチP2で交互に並んだ長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44による毛髪梳きの様子を模式的に示す説明図である。
図10に示すように、第1歯間ピッチP1の第1ブラシ歯列30は、当該ピッチが毛髪の梳きが可能な間隔であることから、ヘアーブラシ10を毛髪の根元側から毛先側に動かす毛髪梳き動作に伴い、毛髪(縮毛)の毛流れを整える。第2ブラシ歯列40においても、長寸ブラシ歯42は、短寸ブラシ歯44より長寸であることから、短寸ブラシ歯44よりも歯先側のブラシ歯歯先部位を第2歯間ピッチP2の倍の第1歯間ピッチP1で並べるので、このブラシ歯歯先部位にて第1ブラシ歯列30と同様に毛髪梳き動作に伴う毛髪(縮毛)の毛流れの整えに寄与する。図において説明すると、毛髪は、第1ブラシ歯列30におけるブラシ歯の間、および第2ブラシ歯列40における長寸ブラシ歯42と長寸ブラシ歯42との間を通るよう長寸ブラシ歯42のブラシ歯歯先部位にて梳かれ、この梳かれる毛髪は、短寸ブラシ歯44の歯先より上にあることから、短寸ブラシ歯44と重なって描画されている。
その一方、図11では、第2歯間ピッチP2で交互に並んだ長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44との間を通るよう毛髪が梳かれることになり、第2歯間ピッチP2が約2mmと狭いことから、第2ブラシ歯列40は、上記した毛髪梳き動作に伴って、毛髪梳きの際の毛髪(縮毛)との摩擦によるテンションを毛髪に付与する。しかも、第2ブラシ歯列40は第1ブラシ歯列30に並んで位置することから、毛髪梳き動作において上流側の第2ブラシ歯列40は、第1ブラシ歯列30のブラシ歯と下流側の第2ブラシ歯列40の長寸ブラシ歯42における上記のブラシ歯歯先部位とで上記したように毛流れが整えられた毛髪(縮毛)に対して、テンションを付与する。
次に、上記した本実施例のヘアーブラシ10を用いた毛髪のストレートパーマ施術について説明する。まず、ストレートパーマを所望する本人(使用者)は、自身の縮毛頭髪にクリーム状ないしペースト状のパーマ第1剤を付着して保持する。パーマ剤の縮毛への付着は、パーマ第1剤を乗せた使用者自身の片手の掌ともう片方の手の掌で縮毛を挟んだ上で、手を縮毛先端側に動かすことでなされる。或いは、パーマ剤付着用の専用ブラシにパーマ第1剤を保持して、そのブラシで縮毛を梳くことでパーマ第1剤を縮毛に付着させるようにすることもできる。頭皮付近の縮毛については、パーマ第1剤を乗せた掌を頭皮に押し当てたり、専用ブラシを頭皮に接触させることでパーマ剤を付着させる。
パーマ第1剤の付着後は、パーマ剤が縮毛に馴染むようしばらく放置してから頭髪をすすぎ洗いし、半乾きにする。これにより、パーマ第1剤が頭髪(縮毛)に浸透し、このパーマ剤浸透により、毛髪の縮れ状態の形状保持能力が弱くなる。使用者は、これ以降において自身でヘアーブラシ10を使ってストレートパーマを自身の頭髪(縮毛)に掛ける。図12はストレートパーマを所望する本人(使用者)自身によるストレートパーマ施術の様子を模式的に示す説明図、図13はストレートパーマ施術の際の毛髪の梳きの様子を模式的に示す説明図である。
使用者は、パーマ第1剤浸透済みの頭髪の毛髪(縮毛)を緊張下で加熱すべく、図12に示すように、一方の手でヘアーブラシ10の把持部12を単純に握るように把持してヘアーブラシ10を毛髪の根元側から毛先側に動かす毛髪梳き動作を行いつつ、もう片方の手で持ったドライヤーHDから温風を毛髪(縮毛)に吹き付ける。この毛髪梳き動作の開始に際して、使用者は把持部12を把持する際の凸部12aによる把持感触により、凸部12aの並びの延長線上の第1ブラシ歯列30(第1ブラシ歯列30F或いは第1ブラシ歯列30B)を毛髪の根元側において梳き動作のために毛髪に当てることができ、この第1ブラシ歯列30が毛髪梳きに当初から関与する。仮に第2ブラシ歯列40を毛髪の根元側において毛髪に当てたとしても、ヘアーブラシ10を回転させながら毛髪梳きを行うことで、ブラシ半回転の内に、第1ブラシ歯列30Fと第1ブラシ歯列30Bの一方は毛髪梳きに必ず関与することになる。
ヘアーブラシ10は、上記した毛髪梳き動作に伴って第1ブラシ歯列30の各ブラシ歯と第2ブラシ歯列40の長寸ブラシ歯42における上記のブラシ歯歯先部位とにより既述したように毛髪(縮毛)の毛流れを整える(図13(A)参照)。その上で、毛先側に向けて毛髪梳き動作を継続しつつヘアーブラシ10を回転させれば、第2ブラシ歯列40の短寸ブラシ歯44も毛髪を梳くブラシ歯となるので、毛髪は、第2ブラシ歯列40の長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44との間を通るよう梳かれることになる。よって、ヘアーブラシ10は、長短のブラシ歯により毛髪(縮毛)にテンションを付与して、毛髪(縮毛)をほぼ真っ直ぐに伸ばした状態とし(図13(B)参照)、更にヘアーブラシ10を回転させることで、毛髪梳きを行う第2ブラシ歯列40が増えることから、ヘアーブラシ10は、長短のブラシ歯による毛髪(縮毛)に付与するテンションを増加させて毛髪(縮毛)をより真っ直ぐに伸ばした状態とする(図13(C)参照)。しかも、ヘアーブラシ10は、使用者が毛髪梳き動作を途中で中断してブラシを図13(C)に示す梳き動作の中断位置に留め置きさえすれば、毛髪(縮毛)との摩擦に基づいて第2ブラシ歯列40により毛髪(縮毛)にテンションを付与してその毛髪(縮毛)をほぼ真っ直ぐに伸ばした状態のままとする。このため、使用者は、片方の手で握ったヘアーブラシ10を梳き動作途中で留め置いて、他方の手でドライヤーHDから温風を容易に毛髪(縮毛)に吹き付けることができる。そして、パーマ第1剤浸透済みの頭髪の毛髪(縮毛)は、ほぼ真っ直ぐに伸ばされた状態で温風を受けるので、パーマ第1剤による薬効により毛髪の縮れ状態の形状保持能力は更に弱くなり、ストレート状にパーマされた毛髪となる。
その後は、ストレート形態の保持のため、毛髪の形状保持力回復を図るパーマ第2剤をその容器から毛髪に振り掛けて塗布する。パーマ第2剤付着済み毛髪についても、しばらく放置して毛髪へのパーマ第2剤の馴染みを待ってから、すすぎ洗いして乾燥させる。これにより、毛髪(縮毛)は、ストレート状にパーマされた状態に固定され真っ直ぐに矯正される。
以上説明したように、縮毛のストレートパーマを所望する使用者自らが本実施例のヘアーブラシ10を用いてストレートパーマ施術を行う場合、その使用者本人はヘアーブラシ10での毛髪梳き動作を行うだけで、毛髪(縮毛)にテンションを容易且つ確実に付与できる。そして、本実施例のヘアーブラシ10によれば、使用者自らのブラシ操作に伴うテンション付与に際して、その使用者には、二本の柄を把持してその把持状況を維持するような特異な把持動作を強要しない。しかも、使用者が毛髪梳き動作を途中で中断してヘアーブラシを梳き動作の中断位置に留め置きさえすれば、本実施例のヘアーブラシ10は、毛髪(縮毛)との摩擦に基づいて第2ブラシ歯列40により毛髪にテンションを付与したままとする。よって、本実施例のヘアーブラシ10によれば、使用者は、図12に示すように、片方の手で把持部12を単純に握るように把持してヘアーブラシ10の毛髪の梳き動作を行い、もう片方の手で持ったドライヤーHDから温風を容易に毛髪に吹き付けることができる。このため、本実施例のヘアーブラシ10は、縮毛のストレートパーマを所望する使用者自らによるストレートパーマに適したヘアーブラシとなる。
加えて、本実施例のヘアーブラシ10では、第1ブラシ歯列30Fおよび第1ブラシ歯列30Bに並べて複数列の第2ブラシ歯列40を放射状に備えるので、より具体的には、第1ブラシ歯列30Fと第1ブラシ歯列30Bの間に3列の第2ブラシ歯列40を放射状に備える。このため、ヘアーブラシ10の回転により図13(C)に示すように2列或いは3列の第2ブラシ歯列40をテンション付与に供することができるので、毛髪梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与の実効性が高まると共に、テンション維持も確実且つ容易となる。
また、本実施例のヘアーブラシ10では、第2ブラシ歯列40を長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44とが交互に第2歯間ピッチP2で並んだブラシ歯列としたので、ピッチの広い第1歯間ピッチP1の第1ブラシ歯列30に加え、長寸ブラシ歯42のブラシ歯歯先部位にても縮毛の毛流れの整えを図ることができる。このため、毛流れが整えられた毛髪を狭い第2歯間ピッチP2で交互に並んだ長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44の間に通すことで、毛流れが整えられた毛髪に対しての第2ブラシ歯列40によるテンション付与とこれに伴う毛髪のストレート状の維持とが確実となり、縮毛のストレートパーマに際しての縮毛のストレート化とその保持に好適となる。
更に、本実施例のヘアーブラシ10では、第1ブラシ歯列30Fと第1ブラシ歯列30Bをブラシ本体20を挟んでブラシ歯基部が背中合わせとなるように配設したので、上記の両第1ブラシ歯列は、ブラシ歯を180°の開きを持って並べることになる。このため、毛髪へのテンション付与とテンション維持を図るための上記したヘアーブラシ10の回転動作の許容範囲が広がり、ヘアーブラシ10の使用方法の多様化を図ることができる。
この他、本実施例のヘアーブラシ10では、ブラシ本体20を長手方向と交差する断面において扁平断面形状のものとしたので、このブラシ本体20からブラシ本体表裏に延ばす第1ブラシ歯列30のブラシ歯の基部間に、扁平とはいえ平面状の部位を存在させる(図2、図6〜図8参照)。このため、既述したように第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40を放射状に備えるヘアーブラシ10を樹脂の型成型にて形成する場合、ブラシ歯基部間の平面状部位を、型成型品であるヘアーブラシ10の型抜けのための成型品押しピンの押し位置とできるので、ヘアーブラシ10の型抜きが容易となる。しかも、本実施例では、第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40が有する各ブラシ歯を、ブラシ歯基部において矩形断面とし(図9参照)、ブラシ歯先端に向かうに従って断面狭小となる櫛歯形状としたので(図1参照)、ヘアーブラシ10の型抜きがより容易となる。
本発明は上記した実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施可能である。例えば、ブラシ本体表裏の第1ブラシ歯列30の間に配設した第2ブラシ歯列40を、隣り合うブラシ歯列において長寸ブラシ歯42と長寸ブラシ歯42、短寸ブラシ歯44と短寸ブラシ歯44とが並ぶようにしたが、隣り合うブラシ歯列のこれらブラシ歯が千鳥状に並ぶようにすることもできる。こうすれば、隣り合う第2ブラシ歯列40において、約2mmと狭い第2歯間ピッチP2より狭いピッチで並んだブラシ歯を毛髪が通って毛髪梳きがなされるので、毛髪梳き動作に伴う毛髪へのテンション付与がより確実となる。
また、第1ブラシ歯列30における第1歯間ピッチP1や第2ブラシ歯列40における第2歯間ピッチP2については、上記した約4mm、約2mmのピッチに限られるものではなく、ヘアーブラシ10を毛髪の根元側から毛先側に動かす毛髪の梳きが可能なブラシ歯間隔や、この毛髪梳き動作に伴う摩擦による毛髪へのテンション付与が可能なブラシ歯間隔として実用に耐える範囲において適宜設定される。第1ブラシ歯列30のブラシ歯の長さや第2ブラシ歯列40のブラシ歯の長さについても、上記した実施例で採用した長さに限られず、毛髪梳きの実用に耐える範囲で適宜設定できる。
また、上記した実施例では、第2ブラシ歯列40を第2歯間ピッチP2で長寸ブラシ歯42と短寸ブラシ歯44とが交互に並んだブラシ歯列としたが、短寸ブラシ歯44が第2歯間ピッチP2で櫛歯列状に並んだブラシ歯列とすることもできる。この他、第2ブラシ歯列40を、多数本の毛を束ねた毛束をブラシ本体長手方向に沿って列状に並べた植毛ブラシ列とすることもできる。この場合には、毛束自体により毛髪にテンションを付与できることから、毛束のピッチは、それぞれの毛束における毛の本数や第2ブラシ歯列40の列数に応じて適宜設定でき、毛髪梳き動作に伴う毛束によるテンション付与が可能なピッチとして実用に耐える範囲において適宜設定される。例えば、毛束を第2歯間ピッチP2より広い第1歯間ピッチP1と同程度とできる。
また、第1ブラシ歯列30にあっては、ブラシ本体表裏の2列の他、1列或いは3〜4列とすることができるほか、この第1ブラシ歯列30と第2ブラシ歯列40を含むブラシ歯列の総列数を、上記した実施例で採用した列数(8列)に限られるものではなく、ブラシ本体20の形状やその大きさを考慮して、適宜設定できる。
また、ヘアーブラシ10を、把持部12とブラシ本体20とにおいて分離させ、両者を着脱自在とするように構成することもできる。