JP5494975B2 - 超伝導テープ線材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、超伝導テープ線材の製造・設置法・構造等に関する。
ビスマス系超伝導テープ線材の製造方法について説明する。図1は、ビスマス高温超伝導線の製造プロセスを示す図である(「臨界電流200A級高温超電導線の開発」、住友電工SEIテクニカルレビュー第169号、2006年7月発行)。銀パイプにビスマス系銅酸化物の粉末を入れて引き延し、単線を製造し、単線を複数集め、外被用の銀パイプに入れて、更に引き延ばし、最終的にテープ形状にする。現時点では、銀パイプの形状は外形が100mm直径程度あり、テープ線材は横幅が4mm程度、厚さが0.2mm程度であるため、全ての方向から圧縮してテープ形状になる。この間に必要な熱処理を行う。上記製造方法は、ビスマス系酸化物超伝導材は異方性の高い材料であり、一定方向にしか超伝導特性を示さないことによる。銀表面から結晶が成長し(この方向を「c軸」という)、c軸に垂直方向が超伝導になるので、銀との接触面積を稼ぐために、テープ形状が用いられる。
図2はテープ線材のサンプルの断面写真、図3は、別のテープ線材のサンプルの拡大図である。図2、図3に示すように、ビスマス系酸化物超伝導材は黒色し、この部分は薄く引き延ばされた形状であり、「フィラメント」と呼ぶ。中心部では多くのフィラメントがあり、端部ではフィラメントの数が少なく、断面形状も薄いテープ状では無く、厚くなっていることが分かる。したがって、細い単線を銀パイプに複数入れた段階では、中心部に多くの単線が存在する。このため、圧縮してテープ形状にしても、その中心部には、多くの超伝導フィラメントが存在することになる。また、フィラメントの形状も薄いテープ状である。これは、銀表面から結晶が成長するためである。この様な形状(フィラメントの形状)をとることよって、超伝導フィラメントを多く作ることができるようになり、超伝導特性が向上した。同じ線材でも、断面形状が丸くなっているようなサンプルもある。
図4は、更に別のサンプルの中心部の更に拡大して示した断面写真である。なお、図2乃至図4は図1と同様に、住友電工SEIテクニカルレビュー(「臨界電流200A級高温超電導線の開発」、第169号、2006年7月発行)及び、発明者の写真による。
図4から、複数のフィラメントが重なり合い、間の銀が無くなっている部分も散見される。このような傾向は現在のビスマス系線材では広く観測される。このような断面形状は、超伝導を発現する方向が銀表面から伸びていくことを想定すると好ましいとはいえない。またフィラメント断面が端部で丸くなったり、断面積が大きくなることは、交流応用を想定した場合には交流損と言われる損失が大きくなる。
図2、図3からもわかるように、全体として、フィラメントが分布している領域が楕円状になっていることが分かる。
図5に断面を模式的に示す。これはテープ状に圧延をかける前の形状断面が円であるためである。
図3、図4に示す構成では、テープ線材の中心部はフィラメントが重なっていることが多いが、端部はあまり重なっていず、形状も薄いテープ状ではなくなっている。これは、外皮用銀パイプの円形断面内に中心部は幅が広いため、最終的にフィラメントになる多くのセグメント用銀パイプを詰めることが出来るためである。
超伝導フィラメントに電流が流れるので、テープ線材の能力一杯に電流を流すことになると、テープ線材断面の横軸(長手方向)に対して電流分布を取ると、中心部にピークを有する分布となる。これは、テープ線材の中心部に、超伝導フィラメントが多く存在するからである。
図6(A)に、一つの理想的なフィラメント配置を示す。これはX軸方向(横軸)にフィラメントが一様に配置されている場合である。この場合、電流分布は、横軸に対して一様になることが期待できる。このようなサンプルに、交流電流を通電すると、電流密度分布は、図6(B)のようになることが多い。図6(B)の電流密度分布は、よく知られた電磁現象であり、一般に、電気抵抗率の低い材料で生じる。これは、テープ線材に電流を流すために印加される電場が、導電体内部には直ちに浸透せずに、外部から浸透するため生じる現象であり、「表皮効果」と呼ばれる。テープ線材は銀(銅より電気抵抗率は低い)だけでなく、内部に超伝導フィラメントを持っていることから、少し複雑になるが、最小作用原理から、電流分布はインダクタンス最小になるように、電流が流れるので、フィラメントのあるなしにかかわらず、端部で電流密度が上昇する。なお、この種の解析は、非特許文献1、2等各種文献が参照される。
Svetlomir Stavrev, Bertrand Dutoit, Francesco Grilli, "Self−Field and Geometry Effects in Transport Current Applications of Multifilamentary Bi−2223/Ag Conductor", IEEE Trans. Appl. Supercond., vol. 13, No. 3, pp. 3807−3813, 2003. A. C. Campbell, "AC Losses in High Tc Superconductors", IEEE Trans. Appl. Supercond., vol. 5, No. 2, pp. 682−687, 1995. Y. Yang, T. Hughes, C. Beduz, D. M. Spiller, R. G. Scurlock, W. T. Norris, "The influence of geometry on self−field AC losses of Ag sheathed PbBi2223 tapes", Physica C, vol. 256, pp. 378−386, 1996.
以下に本発明による関連技術の分析を与える。
図2、図3及び図5に示したように、フィラメントは中心部に集中している。中心部に電流を流すことに好適なテープ線材であり、直流応用などでは、全てのフィラメントに電流が流れるので、特に問題はない。しかしながら、交流応用や直流利用でも時間的に変化する場合には、テープ線材の端部に電流が集中する。時定数は、一般に、1秒以上であることが多い。周波数にして 1Hz以上の交流では、既にテープ線材端部に電流が集中する事になる。
商用周波数では、テープ線材の端部の電流密度が高くなる。しかし、超伝導テープ線材端部においては、フィラメントの数が少ない上に超伝導フィラメントの材質が超伝導テープ線材の中心部より悪い場合がある。実際、図3に見られるように、端部では、超伝導フィラメントは団子状になり、中心部のように薄いテープ状フィラメントにはなっていない。このため、超伝導電流密度を高くすることは出来ない。このため、超伝導テープ線材の端部の銀シースに電流が流れるか、端部の質の悪いフィラメント(超伝導電流が低い部分)に超伝導電流を超えて流れたりする。この結果、実効的な交流損が増大する。
直流利用でも、超伝導フィラメントの時定数は、場合によっては、数時間から数日になる。この場合、その間で電流が変化することになると、交流(主に商用周波数を想定)を流していることと同様な現象が発生する。この場合、見かけ上臨界電流が減少するように見える。これは、超伝導ケーブルへの応用には、極めて重大な問題であり、これの解決が求められている。
更に、超伝導ケーブルを酸化物超電導体(一種のセラミックス)を用いて作製する場合、セラミックスに引張応力が残存していると、物理的に破損したり超伝導特性が著しく悪化することが今までの研究で知られている。
したがって、ケーブルにはできる限り引張応力を残さないようにすることで、超伝導ケーブルの特性を生かすことができる。また、超伝導ケーブルを低温に保つための低温用断熱 2重管は、外部からの熱浸入対策のために、内管と外管の間は真空とされる。しかしながら、輻射による熱浸入は、真空では低減できないので、表面処理を行い、外管からの輻射を反射するように反射率の高い材料を内管表面にコーティングするか多相輻射反射膜を内管に巻くことが多い。最も効果的な方法は表面積を狭くすることである。このため、本願出願人(中部大学)の実験では直管を用いる。
しかし、内管は常温から低温まで温度が変化するため、熱収縮がある。熱収縮を吸収するため、内管は、部分的にベローズ管やコルゲート管が用いられる。すると、この表面は、直管に比べて大きいので、熱浸入が大きくなるという課題があった。
更に、内管内部には冷媒を循環させるため、この循環に伴う圧力損が発生する。この圧力損は低温系への熱浸入になるので、これを低減する必要がある。
したがって、本発明は、上記問題点に鑑みて創案されたものであって、その目的は、実効的な交流損の増大を抑制し、臨界電流の減少を抑止する装置、及び製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的に加えて、超伝導ケーブルには引張応力などの応力が発生しないような支持構造、低温内管への熱浸入の低減、媒循環伴う圧力損の低減を図る装置、及び製造方法を提供することにある。
本発明においては、前記課題を解決するため、概略以下の構成とされる。
本発明の1つの側面においては、超伝導テープ線材を製造するにあたり、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプに超伝導材料粉末を充填し、
横長矩形状の断面の第2のパイプに、前記第1のパイプを複数配し、前記第2のパイプを、短辺方向に、又は、短辺方向及び長辺方向に、押圧してテープ状に仕上げる工程を含む超伝導テープ線材の製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、超伝導テープ線材を製造するにあたり、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプに超伝導材料粉末を充填し、
断面形状として、押圧方向に対応する、相対する辺の間隔が中心部よりも端部の方が大きな構成の第2のパイプに、前記第1のパイプを複数配し、前記第2のパイプを押圧してテープ状に仕上げる工程を含むようにしてもよい。
本発明の製造方法においては、前記超伝導材料粉末を充填する前に、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の前記第1のパイプを予め用意しておくようにしてもよい。
本発明の製造方法においては、断面が実質的に円形の第1のパイプを用意し、前記第1のパイプに超伝導材料粉末を充填したのちに押圧して、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプとしてもよい。
本発明の製造方法においては、丸型断面又は正方形断面用の圧延機器を用い、前記第2のパイプの上下にガイドを設け圧延する。
本発明によれば、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプに超伝導材料粉末を充填し、横長矩形状の断面の第2のパイプに、前記第1のパイプを複数配し、前記第2のパイプを、短辺方向に、又は、短辺方向及び長辺方向ともに押圧してテープ状に仕上げてなる超伝導テープ線材が提供される。
本発明においては、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプに超伝導材料粉末を充填し、断面形状として、押圧方向に対応する、相対する辺の間隔が中心部よりも端部の方が大きな構成の第2のパイプに、前記第1のパイプを複数配し、前記パイプを押圧してテープ状に仕上げた構成としてもよい。
本発明においては、巻芯に前記超伝導テープ線材を巻いて作製される超伝導ケーブルを固定するにあたり、超伝導ケーブルの熱的な伸縮を弾性部材で吸収する。
本発明においては、前記超伝導ケーブルに接続されるパイプをパイプ状フランジに接続し、パイプ状フランジは内側にネジきりされており、外側に溝を有し、ストッパーとして機能するフランジがはめ込まれ、ネジ及び超伝導ケーブルが回転しないように固定するようにしてもよい。
本発明においては、前記超伝導ケーブルを固定する装置であって、前記超伝導ケーブルの熱的な伸縮を弾性部材で吸収し、超伝導ケーブルの長さ方向の熱応力が大きくならないようにする固定装置が提供される。
本発明においては、前記超伝導ケーブルに接続されるパイプに接続され、内側にネジきりされたパイプ状フランジを備え、前記パイプ状フランジにはストッパーとして機能するフランジがはめ込まれる。
本発明においては、前記超伝導ケーブルを内管に収容する断熱2重管を備え、内管同士はベローズ管部を介して接続し、前記ベローズ管を覆う輻射シールド板を備えた、超伝導ケーブルの接続装置が提供される。
本発明においては、前記ベローズ管内部に冷媒の流れ方向に整流板を備えた構成としてもいい。
本発明においては、超伝導テープ線材及びケーブルが超伝導状態であるかをモニタすると同時に温度や応力を測定するための計測線を前記巻芯内に備えている。
本発明によれば、実効的な交流損の増大を抑制し、臨界電流の減少を抑止することができる。
ビスマス高温超伝導線の製造プロセスの一例を示す図である。 ビスマス高温超伝導テープ線の断面を示す図(その1)である。 ビスマス高温超伝導テープ線の断面を示す図(その2)である。 ビスマス高温超伝導テープ線の断面を示す図(その3)である。 ビスマス高温超伝導テープ線の断面を模式的に示す図である。 テープ線材幅方向に均一なフィラメント配置の例と交流利用時の電流密度分布を示す図である。 楕円断面のセグメント用銀パイプと超伝導粉末材料の充填方向とつぶす方向を模式的に示す図である。 本発明の一実施例における外皮用銀パイプの断面を模式的に示す図である。 本発明の一実施例における外皮用銀パイプの断面を模式的に示す図である。 本発明の一実施例における圧延用ガイドを模式的に示す図である。 本発明の一実施例における超伝導ケーブルの固定法を説明する図である。 本発明の一実施例における超伝導ケーブルの固定法を示す図である。 本発明の一実施例におけるフランジの構成を示す図である。 本発明の一実施例における内管接続部の輻射シールド構造の一例を示す図である。 本発明の一実施例における内管ベローズの整流板構造の一例を示す図である。 HTS超伝導ケーブルの一例を示す図である。 本発明の一実施例における超伝導ケーブル断面を示す図である。 本発明の一実施例における超伝導ケーブルのモニター線示す図である。
11 フィラメント
12 純銀
100 超伝導材料粉末
101 セグメント用銀パイプ
102 外皮用銀パイプ
103 元素線
201 ガイド
300 超伝導テープ線材
301 超伝導ケーブル
302 フォーマー
303 ケーブル取付金具
304 バネ
305 ガイド固定金具
306 ストッパー
401 金属パイプ
402 パイプ状フランジ
403、404、405 フランジ
406 ネジ
501 内管
502 外管
503 真空層
504 内管支持部
505 接続フランジ
506 外管
507 内管ベローズ
508 内管支持部
509 中間輻射シールド板
510 中間輻射シールド板取付部
511 整流板
601 フォーマー(巻芯)
602 HTSテープ線材
602 絶縁層
604 アース層
701 巻芯
702 絶縁層
703 HTSテープ線材
704 絶縁テープ
705 計測用多芯線
以下に、本発明の実施例について説明する。図7及び図8は、本発明の一実施例を説明するための図である。図7には、セグメント用銀パイプ101の形状が示されている。セグメント用銀パイプ101は、最終的には、テープ状につぶされる。このため、最初から、断面形状を円ではなく、楕円状もしくは平たい角形状にしておき、超伝導材料粉末を充填する(図7(A)参照)。圧延をかけて細くする方向は、短軸・長軸の両方に行う。(図7(B)参照)。
本実施例によれば、図4に示したような、セグメント用銀パイプが部分的に破損し、内部の超伝導フィラメントが複数一体化するようなことは、生じにくくなる。
なお、円断面のパイプに超伝導材料を充填し、次に、パイプを楕円形状もしくは横長の角形断面につぶす方法もある。この場合、内部に含まれる超伝導材料が多くなるので、実質的に充填率が上がる。
図8は、図7にしたがって作製した超伝導フィラメントになる素線を、角形断面の外皮用銀パイプ102に設置した状況を示す図である。中心から端部までフィラメントのX方向についての密度は一定としてある。このように、超伝導材料が詰まったセグメント用銀パイプを配置した構成は、従来、試されたことがない。図1に示す方法では、端部まで超伝導フィラメントが薄いテープ状になっている超伝導テープ線材を製造することは困難であった。なお、圧力を印加してつぶす方向はX, Yの両方向になる。
即ち、外皮用銀パイプ102の断面形状を角形にすると、外皮用銀パイプ102の中心部に入れるフィラメント(セグメント用銀パイプの中の超伝導材料は最終的に超伝導フィラメントになる)の数と、外皮用銀パイプ102の周辺部に入れるフィラメントの数は、図8のようにほぼ等しくできるため、円形の外皮用銀パイプのように中心部で多く、端部で少なく、端部では超伝導フィラメントの断面形状が団子状になることが抑制される。
このため、圧縮してテープ状に仕上げるときに、内部の超伝導材料を含んだセグメント用銀パイプ101は必要以上に扁平につぶされることがない。このため、図3、図4に見られるように、セグメント用銀パイプが破れて超伝導フィラメントが直接接触するような事態を避けることが、原理的に可能となる。
更に、図9に別の外皮用銀パイプの形状例を示す。図6に示したように、一般にテープ線材に交流電流を流すと、テープ線材端部に電流密度が集中する。したがって、端部に良質の超伝導フィラメントが多く含まれることが望ましい。これに対応するために、外皮用銀パイプ102の断面形状を端部で大きくし、そこに詰めることができるセグメント用銀パイプの数を増やすことによって、端部での超伝導フィラメントの数を増やすことができる。
以上のようにして作ったテープ線材を作る元素線を圧延する必要がある。圧延機器は丸型断面や正方形断面用に作られているモノが多い。テープ線材になる元素線の上下に圧延を行うための必要なガイド201を取り付ける。安定に細線が作られる。同時に中心部の元素線の部分から薄いテープ線材を得ることができる。
次に、超伝導ケーブルの固定方法について説明する。超伝導ケーブルは端末では固定される。常温から温度を下げる熱収縮のため短くなる。例えば液体窒素温度では、10kmで30m程度短くなり、熱収縮対策は重要な課題である。
温度の上げ下げに伴い、ケーブルが伸縮するが、ケーブルに大きな引張りや圧縮の力がかからないようにする必要がある。例えば1m以上の伸縮については、外部のパイプ機構が行う。冷却時及び昇温時に超伝導ケーブルに引張応力や圧縮応力がかからないようにするために、高精度の微調整が必要になる。
図11は、本発明の一実施例の構成を示す図である。図11を参照すると、超伝導ケーブル301はフォーマー(巻芯)302と呼ばれる巻芯に絶縁層や超伝導テープ線材300を巻き込んで作られる。これをバネ304を介してガイド固定金具305に取り付ける。超伝導ケーブル301の熱収縮をバネ304が吸収し熱応力が超伝導ケーブルには一定以上は印加されないようになる。
次にケーブルの取付治具及び取付方法について、具体的に取り付けた部品図を用いて説明する。図12(A)は正面図であり、図12(B)はそれの断面図である。図12(A)はケーブル横断面図であり、この断面をX, Y平面とし、Z方向はケーブルの長さ方向とする。図12(B)はYZ平面で固定部の断面構造を示した図である。以下、図12(B)を用いて説明する。401は超伝導ケーブルに強固に接続している金属パイプで出きていて、これを超伝導ケーブルのフォーマーに強固に接続されていて一体になっていて、断面は円状になっていて、表面にねじ山が掘ってある。金属パイプ401に、パイプ状フランジ402が接続されている。パイプ状フランジ402の内側はネジが切ってあり、金属パイプ401の表面ネジにはめ込む。そして、溝が3カ所外側に掘ってある(図13を参照)。フランジ403はストッパーの役割を果たしている。ネジが回転しないように固定すると同時に、ケーブルの長手方向(Z方向)に大きくずれてもフランジ404から外れないようになっている。フランジ404には3カ所のヘソがあり、それが図13に示される内側ねじ切りフランジ402の表面の3カ所の溝にはめ込めるようになっている。このような構成としたことで、ケーブルは、XY平面では回転せず、熱収縮のよって長さが変化するZ方向について可動自在とされる。
フランジ404はフランジ405にネジ406を利用して接続されていて、フランジ405が最終的に断熱真空容器に接続されている。
フランジ402とフランジ404は材料を変えて作る。例えば、ステンレスと銅合金などの組み合わせである。同じ材料を使わないことで摩擦で温度が上がったときに接合されることを防ぐ。このような構造を取ると、冷却時や低温保持時及び昇温時に超伝導ケーブルが熱収縮などをするときに、Z軸方向に自由に伸びたり縮んだりすることができる。このため、超伝導ケーブルには基本的に大きな熱応力が発生しない支持方法である。図11に示したように、この部分にバネを挿入れてもよい。3つの溝構造のため、XY平面での回転は生じない。超伝導ケーブルの機械特性が主にフォーマーによって決まる。フォーマーに残留応力があると、温度変化によってケーブルがねじれる可能性があり、それによって、超伝導テープ素線の特性悪化、破断、変形を防ぐことができる。
次に図14を参照して、断熱2重管の輻射シールド構造について説明する。断熱2重管の内管501は、直管を主に用いて構成されている。直管部は単位長さ当たりの表面積が小さいため、常温外管から輻射によって浸入する熱量が少なくなる。表面の反射率を上げると、真空層に設置する多層輻射シールド膜を設置しなくても同等の熱浸入量になることが実験で分かっている。ケーブルは曲げることができる必要があるため、部分的にベローズ管507(コルゲート管も含まれる)を直管に接続している。ベローズ管部は表面積が大きくなるので、この部分からの熱浸入が増大する。したがって、この部分だけに輻射シールド板を取り付ける構造が必要になる。図14は、ベローズ管部の輻射シールド構造を示す図である。外管502は直管で構成されている。外管502はベローズ管やコルゲート管よりも強度が高い。外管502の内部に内管501が設置され、その間は真空503が保持され内管501は断熱される。内管501の中に超伝導ケーブルが設置され、不図示の冷媒が流れている。ある一定の距離で内管はベローズ管に接続される。外管の接続部は内管の接続部と揃え、接続作業を容易化する。接続部において内管501は内管支持部504を介して内管及びその内部にある超伝導ケーブルや冷媒等の重量を支持する。外管502は常温であるため、熱収縮は大きくないことから、外管は接続部も入れてベローズ管やコルゲート管を使う必要性は減じられる。このため、図14では、利用していない。一方、内管501は温度が常温から液体窒素温度まで下がるため、大きな熱収縮がある。例えば10kmで30mほどの熱収縮がある。このため、内管501は直管部が10mにつき、0.2mほどの膨脹・収縮が可能なベローズ管(コルゲート管を含む)が接続されている。即ち、10mでは熱収縮は3cmほどになるので、ベローズ管507を20cm用いれば、この程度は吸収できるからである。ベローズ管は直管に比べて表面積が大きい。この部分への輻射熱による熱浸入が大きくなる。本実施例においては、例えばベローズ管507の表面にメッキを行い、反射率を高める。
そして、更に2つの方策を取ることができる。一つは、ベローズ管507の部分だけに、多層断熱フィルム(Multi−Layer Insulation, 「MLI」と呼ばれる)を巻く。
他の方法として、図14に示すように、内管を構成する直管部501とベローズ管部507を接続する接続フランジ505から支持(内管支持部504)を出して、両表面に金属コーティングを行った反射率の高い薄い絶縁物からなる中間輻射シールド板509を真空部の間に同軸状に入れる。内管の支持は、内管の重量を支えるために支持が必要である。内管支持部は接続部505に設ける。そして接続部で径が増大された外管から支持を行う。図14の例では、接続フランジ505から支持する。そして、接続フランジ505に固定する。このような構成により、冷却時や昇温時に直管である内管501が動くことを避けることができる。図14に示すように、接続部で外管506の径を大きくすることによって、中間輻射シールド板509を設置する空間を確保できる。更に、径が大きくなった外管506から支持を行うので、支持部504の熱抵抗が大きくなるため、伝熱による熱浸入が低減する。最後に、このような接続部で配管を曲げる。
ベローズ管部が曲がる時には、中間輻射シールド板、外管等の形状を変える必要がある。ベローズ管と直管を接続している部分はフランジが設けられているが、フランジを用いず、溶接で接合しても良い。この場合、支持構造物も内管と外管にそれぞれ溶接などで固定する機構が必要になる。
次に、断熱2重管の整流板の導入について説明する。本実施例では、部分的にベローズ管(コルゲート管も含まれる)を直管に接続している。これによって曲げることができる。このような構造を取ることによって、全てベローズ管やコルゲート管で作られた配管に比べて圧力損が1桁以上小さくなる。しかし、部分的に用いられるベローズ管部は内表面が大きくうねっているので、そこに液体窒素などの流体を流すと、圧力損が大きくなる。このため、長距離に渡ってケーブルを建設する場合、ベローズ管部の圧力損をできる限り小さくする必要がある。そこで、本実施例では、部分的に用いられるベローズ管部(コルゲート管部も含む)に整流板を用いる。
図15は、ベローズ管部507(コルゲート管部も含む)に整流板511を用いた構成を示す図である。内管501には、矢印の方向に冷媒が流れている。冷媒には、固体、液体、気体の三相があり、それらが混ざって流れる混相流に成っている場合も多い。内管501は主に直管で構成されている。接続部にベローズ管やコルゲート管が利用され、曲げることができる。接続部で内管の熱収縮を吸収する。整流板511は、流れの上流側にほぼ内管501に沿って設置し、固定する。整流板511の形状はパイプ状であり、途中で管径を大きくし、下流の内管(直管部)に流体が流れやすいように細く絞る構造を取った例である。
整流板511は、下流側の内管501’には固定しないか、固定は部分的に行う構造とする。特に、この部分は、熱収縮を受ける部分であるため、常温時には、ある程度の間隙を空けておく必要がある。このため、固定支持を、上流側内管501と下流側内管501’の両方から行うことは困難になるので、上流側で固定する方法が一般的になる。
整流板511は表面が滑らかに仕上げることが必要である。熱浸入によってベローズ管507内面にはガスが発生する。このガスの冷却を行う必要があり、整流板511の材料は熱伝導の良い材料、アルミニウムや銅等が用いられる。ベローズ管部501は曲げるので、それに応じて整流板511も形状を変える必要がある。
次にHTS(高温超伝導)テープ素線の絶縁構造について説明する。図16は、超伝導ケーブル(高温超伝導ケーブル)の構成を示す図である。これは、中心に巻芯(フォーマー)601が銅線を巻いて作製されてあり、ケーブルの強度を持たせる。その上に電気絶縁層があり、更にその上の層に高温超伝導体(HTS)で作られたテープ線材102が配設されている。内層には18本のHTSテープ線材が使われ、外層には20本のテープ線材が使われている。内層と外層の間には絶縁層を作る同じ材料で一層絶縁層が入っている。これは、ケーブルを曲げたときに、テープ線材が表面をスムーズに滑るためであり、絶縁電圧はそれほど高くはない。外側のHTSテープ線材の外側にカーボン紙が巻かれている。再度、絶縁層603があり、その上にアース層604があり、ここで電位を整えている。そして、保護用に被覆材として木綿テープが巻かれている。交流ケーブルの設計でも、ほぼ同様な構造を取っているが、短絡事故時の保護のために中心部にある巻芯に使われる銅線の量が多くなっている。
また、交流電流によって発生する交流磁場をシールドするために、外側にHTSテープ線材を絶縁して巻いてあるのが一般的な設計である。図16から、HTSテープ線材は隣り合う線材と接触している。このため、電気的には完全に丸い導体に電流が流れるようになっている。このような構造のHTSテープ線材に交流電流による交流磁場がHTSテープ線材を作る銀シースに渦電流を誘起し、交流損を増大する。流れる電流が臨界電流に近づくと、交流損を低減するには、テープ線材をそれぞれ絶縁することが望ましい。しかしながら、全てのテープ線材を絶縁した場合、それらに均一に電流を流す構造やテープ線材の劣化が発生すると、流せる電流を小さくする必要がある。この時、複数のテープ線材が接触していると電流が分流する。
そこで、本実施例では、図17のような構造とする。中心に巻芯701があり、その上に絶縁層702がある。表面にHTSテープ線材403が周りに巻かれている。この時、絶縁テープ704を、図17のように、複数のHTSテープ線材703の間に入れる。特に制限されないが、4本づつのテープをひとまとめにして、全体として4つの組に分けている。ケーブルであるため曲げることができなくてはならない。紙面に垂直方向にテープ線材703は撚ってあるが、それにあわせて絶縁テープ704を巻く。このような構造にすると、複数のHTSテープ線材703間の分流は保証され、一体になっていた導体は、この場合、1/4に分かれるので、渦電流損は1/4になる。したがって、安定性を確保しながら、交流損を低減できる。
次に、本実施例におけるHTSテープ線材703の電圧モニター方法について説明する。HTSテープ線材703の超伝導特性はそれぞれのテープ線材によって異なっている。長距離を超伝導送電するためには、テープ線材が超伝導状態か否かをモニターする必要がある。例えば、テープ線材703の電圧をモニターする。このため、例えばテープ線材703の両端にタップを取付、計測線をテープ線材に沿って設置する必要がある。本実施例においては、図18に示すように、巻芯701の内側にある穴に、計測線(計測用多心線)705を配置する。巻芯は、通常アースに接続されているので、計測線(計測用多心線)705を巻芯701の中に入れると、外来ノイズに強い。
なお、上記の非特許文献1乃至3の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。

Claims (13)

  1. 超伝導テープ線材を製造するにあたり、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプに超伝導材料粉末を充填し、
    断面形状として、押圧方向に対応する、相対する辺の間隔が中心部よりも端部の方が大きな構成の第2のパイプに、前記第1のパイプを複数配し、前記第2のパイプを押圧してテープ状に仕上げる、ことを特徴とする超伝導テープ線材の製造方法。
  2. 前記超伝導材料粉末を充填する前の段階で、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の前記第1のパイプを予め用意しておく、ことを特徴とする請求項記載の超伝導テープ線材の製造方法。
  3. 断面が実質的に円形の第1のパイプを用意し、前記第1のパイプに超伝導材料粉末を充填したのちに押圧して、平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプとする、ことを特徴とする請求項記載の超伝導テープ線材の製造方法。
  4. 丸型断面又は正方形断面用の圧延機器を用い、前記第2のパイプの上下にガイドを設け圧延する、ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の超伝導テープ線材の製造方法。
  5. 請求項乃至のいずれか1項に記載の超伝導テープ線材の製造方法により製造された超伝導テープ線材で作られた超伝導ケーブルを固定するにあたり、前記超伝導ケーブルの熱的な伸縮を弾性部材で吸収する、ことを特徴とする超伝導ケーブルの製造方法。
  6. 請求項記載の超伝導ケーブルの製造方法によって製造された超伝導ケーブルに接続されるパイプをパイプ状フランジに接続し、パイプ状フランジは内側にネジきりされており、外側に溝を有し、ストッパーとして機能するフランジがはめ込まれ、ネジ及び前記超伝導ケーブルが回転しないように固定する、ことを特徴とする超伝導ケーブルの固定方法。
  7. 平たい楕円状又は矩形状の断面形状の第1のパイプに超伝導材料粉末を充填し、
    断面形状として、押圧方向に対応する、相対する辺の間隔が中心部よりも端部の方が大きな構成の第2のパイプに、前記第1のパイプを複数配し、前記パイプを押圧してテープ状に仕上げてなる、ことを特徴とする超伝導テープ線材。
  8. 請求項記載の超伝導テープ線材を含む超伝導ケーブルを固定する装置であって、前記超伝導ケーブルの熱的な伸縮を弾性部材で吸収し、前記超伝導ケーブルの長さ方向の熱応力が大きくならないようにする、ことを特徴とする超伝導ケーブルの固定装置。
  9. 請求項記載の超伝導テープ線材を含む超伝導ケーブルに接続されるパイプに接続され、内側にネジきりされたパイプ状フランジを備え、前記パイプ状フランジにはストッパーとして機能するフランジがはめ込まれる、ことを特徴とする超伝導ケーブルの固定装置。
  10. 請求項記載の超伝導テープ線材を含む超伝導ケーブルを内管に収容する内管と外管の断熱2重管を備え、内管同士はベローズ管部を介して接続し、前記ベローズ管を覆う輻射シールド板を備えた、ことを特徴とする超伝導ケーブルの接続装置。
  11. 熱収縮方向への前記内管の移動防止用に、前記内管と前記外管を固定してなることを特徴とする請求項10に記載の超伝導ケーブルの接続装置。
  12. 前記ベローズ管内部に冷媒の流れ方向に整流板を設ける、ことを特徴とする請求項10記載の超伝導ケーブルの接続装置。
  13. 請求項記載の超伝導テープ線材を含む超伝導ケーブルであって、
    前記超伝導テープ線材が超伝導状態であるかをモニタするための計測線を超伝導ケーブル内部に備えている、ことを特徴とする超伝導ケーブル。
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