JP5493680B2 - モータ制御装置および電動パワーステアリング装置 - Google Patents

モータ制御装置および電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Description

本発明は、ブラシ付きモータ等の電動モータを駆動するモータ制御装置およびそれを用いた電動パワーステアリング装置に関する。
電動パワーステアリング装置におけるモータ制御装置では、モータに流すべき電流の目標値の決定において、操舵トルクや車速に加えて、操舵速度に対応する当該モータの角速度も考慮される。これに対し、ブラシレスモータを制御する場合には、通常、レゾルバ等のモータ回転位置を検出するために高精度の角度検出センサが使用されるので、その角度検出センサの出力信号を時間微分することによりモータ角速度を得ることができる。しかし、ブラシ付きモータの制御のように角度センサを使用しないモータ制御では、モータ電流およびモータ端子間電圧を検出し、下記式に基づきモータ角速度ωが算出される。
ω=(V−I×R)/k …(1)
ここで、Vはモータ端子間電圧であり、Iはモータ電流であり、Rはモータ抵抗(モータ端子間抵抗)であり、kは逆起電力定数である。
ところで、ブラシ付きモータでは、ブラシの接触抵抗がモータ電流によって変化することから、モータ抵抗はモータ電流に対する依存性を有している。このため、ブラシ付きモータを駆動するモータ制御装置では、モータ電流とモータ抵抗との関係を示す特性(以下。「モータの電流−抵抗特性」という)に基づきモータ抵抗Rが求められ、上記式(1)によりモータ角速度を算出する際にそのモータ抵抗Rが使用される。これにより、モータ角速度ωをより正確に求めることができる。
なお、本願発明に関連して以下のような従来技術が知られている。すなわち、特許文献1には、ブラシレスDCモータの電圧、電流等から算出されるロータの電気角と安価なロータ位置検出センサを組み合わせることにより、モータの低回転速度領域も含め、精度の高いロータの電気角あるいは角速度を検出できるモータ駆動制御装置が開示されている。この特許文献1には、当該モータ駆動制御装置において角速度の算出のための電流検出回路の入力または出力にローパスフィルタを設けることも記載されている。
特開2004−312834号公報
しかし、上記式(1)による角速度(推定値)の算出に使用するモータ端子間電圧の検出値とモータ電流の検出値との間に時間的なずれが生じる場合があり、その場合には、精度の高い角速度推定値を得ることができない。また、上記のモータ抵抗Rは温度変化等によって変動するため、上記式(1)によるモータ角速度ωの算出に使用されるモータ抵抗Rの値と実際のモータ抵抗の値との間に差が生じることがある。この場合、モータの電流−抵抗特性に基づき求めたモータ抵抗Rを用いて角速度推定値を算出しても、温度変化等のために必ずしも精度の高い角速度推定値を得ることができない。このような原因により、精度の高い角速度推定値を得ることができなくなると、モータ制御装置の制御性能が低下し、電動パワーステアリング装置において良好に操舵補助を行えないおそれがある。
そこで本発明の目的は、高精度のモータ角度検出センサを使用せずに駆動されるブラシ付きモータ等のモータにつき精度の高い角速度推定値を算出することで制御性能を向上させたモータ制御装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのようなモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置を提供することである。
第1の発明は、電動モータの電機子巻線に生じる逆起電力に基づき当該電動モータの回転速度の推定値を算出し、当該推定値を用いて当該電動モータを駆動するモータ制御装置であって、
前記電動モータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電動モータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段により得られる電流検出値と前記電圧検出手段により得られる電圧検出値とに基づき、前記電動モータの回転速度を示す速度推定値を算出する推定値算出手段と、
前記電流検出手段によって検出される電流に対する前記電流検出値の位相遅れ量である電流位相遅れ量と前記電圧検出手段によって検出される電圧に対する前記電圧検出値の位相遅れ量である電圧位相遅れ量との差が低減されるように、当該電流位相遅れ量と当該電圧位相遅れ量の少なくとも一方を調整する位相調整手段と
前記電流検出手段によって検出される電流の周波数と前記電圧検出手段によって検出される電圧の周波数との差が所定値以上であるときには前記位相調整手段による前記位相遅れ量の調整を禁止する調整禁止手段とを備えることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、
前記電動モータの回転速度が0近傍の所定値以下か否かを判定する判定手段と、
前記電動モータに流れる電流と前記電動モータの抵抗との関係を電流−抵抗特性として保持する特性保持手段と、
前記判定手段により前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されるときに前記電流検出手段および電圧検出手段により得られる電流検出値および電圧検出値から前記電動モータの抵抗値を算出する抵抗演算手段と、
前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とに基づき前記電流−抵抗特性を更新する特性更新手段と、
前記判定手段による判定結果に基づき、前記電動モータの回転速度が前記所定値以下から前記所定値よりも大きい値へと変化する時点である回転開始検出時点よりも所定時間だけ遡った時点から当該回転開始検出時点までの期間において得られる前記電流検出値および電圧検出値から算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とが前記電流−抵抗特性の更新に使用されないように、前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値の前記特性更新手段における使用を制御するパラメータ制御手段とを更に備えることを特徴とする。
第3の発明は、電動モータの電機子巻線に生じる逆起電力に基づき当該電動モータの回転速度の推定値を算出し、当該推定値を用いて当該電動モータを駆動するモータ制御装置であって、
前記電動モータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電動モータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段により得られる電流検出値と前記電圧検出手段により得られる電圧検出値とに基づき、前記電動モータの回転速度を示す速度推定値を算出する推定値算出手段と、
前記電流検出手段によって検出される電流に対する前記電流検出値の位相遅れ量である電流位相遅れ量と前記電圧検出手段によって検出される電圧に対する前記電圧検出値の位相遅れ量である電圧位相遅れ量との差が低減されるように、当該電流位相遅れ量と当該電圧位相遅れ量の少なくとも一方を調整する位相調整手段と、
前記電動モータの回転速度が0近傍の所定値以下か否かを判定する判定手段と、
前記電動モータに流れる電流と前記電動モータの抵抗との関係を電流−抵抗特性として保持する特性保持手段と、
前記判定手段により前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されるときに前記電流検出手段および電圧検出手段により得られる電流検出値および電圧検出値から前記電動モータの抵抗値を算出する抵抗演算手段と、
前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とに基づき前記電流−抵抗特性を更新する特性更新手段と、
前記判定手段による判定結果に基づき、前記電動モータの回転速度が前記所定値以下から前記所定値よりも大きい値へと変化する時点である回転開始検出時点よりも所定時間だけ遡った時点から当該回転開始検出時点までの期間において得られる前記電流検出値および電圧検出値から算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とが前記電流−抵抗特性の更新に使用されないように、前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値の前記特性更新手段における使用を制御するパラメータ制御手段とを備えることを特徴とする。
第4の発明は、第2または第3の発明において、
前記抵抗演算手段は、
前記判定手段によって前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されているときに前記電流検出手段および電圧検出手段により電流検出値および電圧検出値が得られる毎に当該電流検出値および電圧検出値から前記電動モータの抵抗値をリアルタイム抵抗値として算出するリアルタイム算出手段と、
前記判定手段によって前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されているときに前記電流検出手段および電圧検出手段により順次得られる所定数または可変数の電流検出値および電圧検出値の各検出時点における当該電流検出値および電圧検出値から当該検出時点における前記電動モータの抵抗値を算出し、当該所定数または可変数の当該抵抗値についての平均値を抵抗平均値として算出すると共に、当該所定数または可変数の当該抵抗値の算出に用いた当該所定数または可変数の電流検出値についての平均値を電流平均値として算出する平均値算出手段とを含み、
前記特性更新手段は、前記抵抗平均値および前記電流平均値に基づき前記電流−抵抗特性を更新し、
前記推定値算出手段は、
前記リアルタイム抵抗値と前記電流検出手段により得られる電流検出値に前記電流−抵抗特性によって対応付けられる抵抗値であるIR特性抵抗値との差が所定の閾値以下であるときには、前記リアルタイム抵抗値を用いて前記速度推定値を算出し、
前記リアルタイム抵抗値と前記IR特性抵抗値との差が前記閾値よりも大きいときには、前記IR特性抵抗値を用いて前記速度推定値を算出することを特徴とする。
第5の発明は、第4の発明において、
前記推定値算出手段は、下記の式により与えられるεthを前記閾値として使用することを特徴とする:
εth=ωermx・k/I
ここで、ωermxは、前記推定値算出手段によって算出されるべき速度推定値に相当する角速度の許容誤差量として予め設定された値を示し、kは、前記電動モータの逆起電力定数を示し、Iは、前記電流検出手段により得られる電流検出値を示す。
第6の発明は、車両のステアリング機構に電動モータによって操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
第1から第5の発明のいずれかに係るモータ制御装置を備え、
前記モータ制御装置は、前記ステアリング機構に操舵補助力を与える電動モータを駆動することを特徴とする。
上記第1の発明によれば、通常時は、電流検出手段および電圧検出手段によって検出すべき電流と電圧との間での周波数の差が小さく、電流検出手段による電流検出における位相遅れ量である電流位相遅れ量と電圧検出手段による電圧検出における位相遅れ量である電圧位相遅れ量との差が位相調整手段によって低減されるので、電動モータの回転速度を示す速度推定値の算出に使用する電流検出値と電圧検出値とのタイミングずれ(位相ずれ)が低減される。一方、異常が発生し、上記周波数の差が大きい場合には、位相調整手段による位相遅れ量の調整が禁止されることで、電流検出手段および電圧検出手段の周波数特性により上記周波数の差に起因して生じる電流検出と電圧検出の間での位相差やゲイン差の増大抑制が可能となる。したがって、電流検出手段および電圧検出手段によって検出すべき電流と電圧の間で周波数差が大きい場合での位相遅れ量の調整による不具合を回避しつつ、上記電流検出と電圧検出との同時性を向上させることができる。これにより、速度推定値の算出精度を安定的に高めてモータ制御装置の制御性能を向上させることができる。
上記第2の発明によれば、抵抗演算手段での抵抗値の算出に使用される電流検出値および電圧検出値は、電動モータが回転を停止しているとみなせる期間のうち次に回転を開始する時点直前の所定期間を除いた期間において取得されたものとなる。このため、電動モータの回転開始の検出に無視できない遅延の生じるような低分解能の回転センサ等を使用して電動モータの停止/回転が判定される場合であっても、その遅延に相当する時間内に取得される電流検出値および電圧検出値から算出される抵抗値等は、特性更新手段による電流−抵抗特性の更新には使用されない。したがって、低分解能の回転センサ等を使用することでコスト増を抑えつつ、電動モータの回転開始時点の近傍においても精度良く速度推定値を算出し、モータ制御装置の制御性能を向上させることができる。

上記第3の発明によれば、抵抗演算手段での抵抗値の算出に使用される電流検出値および電圧検出値は、電動モータが回転を停止しているとみなせる期間のうち次に回転を開始する時点直前の所定期間を除いた期間において取得されたものとなる。このため、電動モータの回転開始の検出に無視できない遅延の生じるような低分解能の回転センサ等を使用して電動モータの停止/回転が判定される場合であっても、その遅延に相当する時間内に取得される電流検出値および電圧検出値から算出される抵抗値等は、特性更新手段による電流−抵抗特性の更新には使用されない。したがって、低分解能の回転センサ等を使用することでコスト増を抑えつつ、電動モータの回転開始時点の近傍においても精度良く速度推定値を算出し、モータ制御装置の制御性能を向上させることができる。
上記第4の発明によれば、電動モータが回転を停止しているとみなせる期間において、平均値算出手段によって算出される抵抗平均値および電流平均値に基づき電流−抵抗特性が更新されると共に、現時点の電流検出値および電圧検出値から算出されるリアルタイム抵抗値と、現時点の電流検出値と当該電流−抵抗特性から得られるIR特性抵抗値との差が求められる。ここで、電流−抵抗特性の更新に使用される抵抗平均値および電流平均値は、電動モータが回転を停止しているとみなせる期間のうち次に回転を開始する時点直前の所定期間を除いた期間において得られる電流検出値および電圧検出値から算出されたものである。そして、電動モータの速度推定値の算出には、上記のリアルタイム抵抗値とIR特性抵抗値との差が所定の閾値以下であるときにはリアルタイム抵抗値が使用され、当該差が当該閾値よりも大きいときにはIR特性抵抗値が使用される。したがって、電動モータの回転開始の検出に無視できない遅延の生じるような低分解能の回転センサ等を使用して電動モータの停止/回転が判定される場合であっても、上記差に応じてリアルタイム抵抗値またはIR特性抵抗値を使用することで、上記遅延に相当する時間内に取得される電流検出値および電圧検出値の使用を回避しつつ、速度推定値が算出される。これにより、低分解能の回転センサ等を使用することでコスト増を抑えつつ、電動モータの回転開始時点の近傍においてもより精度良く速度推定値を算出し、モータ制御装置の制御性能を向上させることができる。
上記第5の発明によれば、リアルタイム抵抗値とIR特性抵抗値との差が閾値εth=ωermx・k/Iよりも大きいか否かに応じて、電動モータの速度推定値の算出にリアルタイム抵抗値とIR特性抵抗値のいずれを使用するかが決定される。これにより、現時点の電流検出値Iに応じた許容誤差量に基づいてリアルタイム抵抗値とIR特性抵抗値のうちの一方を適切に選択し、選択した抵抗値を用いることで、電動モータの回転開始時点の近傍においても精度良く速度推定値を算出し、モータ制御装置の制御性能を向上させることができる。
上記第6の発明によれば、電動パワーステアリング装置における電動モータの回転速度を示す速度推定値の算出に使用する電流検出値と電圧検出値とのタイミングずれ(位相ずれ)が低減され、当該電動モータについての電流検出と電圧検出との同時性が向上する。これにより、速度推定値が精度良く算出されるので、モータ制御装置の制御性能が向上し、電動パワーステアリング装置において良好な操舵感が得られる。
本発明に係るモータ制御装置を用いた電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両の構成と共に示す概略図である。 本発明の一実施形態に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 従来のモータ制御装置におけるモータの電流および電圧検出のためのフィルタ処理の構成を示すブロック図(a)、および、上記実施形態におけるモータの電流および電圧検出のためのフィルタ処理の基本構成を示すブロック図(b)である。 従来のモータ制御装置におけるモータの電流および電圧検出の伝達関数を示すブロック図(a)、および、上記基本構成における電流および電圧検出の伝達関数を示すブロック図(b)である。 従来のモータ制御装置におけるモータの電流および電圧検出の伝達関数の周波数特性を示すボード線図である。 上記基本構成における位相遅れ要素の伝達関数の周波数特性を示すブロック線図である。 上記基本構成における電流検出の伝達関数の周波数特性を示すボード線図である。 上記基本構成の他の例を示すブロック図である。 上記実施形態におけるモータの電流および電圧検出のためのフィルタ処理の構成を示すブロック図である。 上記実施形態における角速度推定部の一構成例を示すブロック図である。 上記実施形態における角速度推定部での抵抗マップの更新を示す図である。 上記実施形態における角速度推定部での抵抗マップの更新を説明するための図である。 上記実施形態における角速度推定部内の角速度推定値算出部の第1の構成例を示すブロック図である。 上記第1の構成例による角速度推定値算出部を備える角速度推定部の動作を説明するための図である。 上記実施形態における角速度推定部内の角速度推定値算出部の第2の構成例を示すブロック図である。 上記実施形態における角速度推定部の他の構成例を示すブロック図である。 上記他の構成例による角速度推定値算出部を備える角速度推定部の動作を説明するための信号波形図である。
<1.電動パワーステアリング装置>
図1は、本発明に係るモータ制御装置を用いた電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両の構成と共に示す概略図である。この電動パワーステアリング装置は、ブラシ付きモータ1、減速機2、トルクセンサ3、車速センサ4、および、モータ制御装置としての電子制御ユニット(ECU)5を備えたコラムアシスト型の電動パワーステアリング装置である。また、本発明に係るモータ制御装置は、モータ1の回転の有無を検出するためのセンサ(以下「回転センサ」という)7を備えているのが好ましく、図1に示す電動パワーステアリング装置には、回転センサ7としてホールセンサが設けられている。なお、この回転センサ7はホールセンサに限定されるものではなく、モータ1の回転に応じてパルス信号を発生させるものであればよい。また、モータ1の回転方向を検出する必要がないので、回転センサ7として低コストのセンサを使用することができる。さらに、この電動パワーステアリング装置では、舵角センサ(または操作角速度センサ)7hを備えている。ただし、これらの回転センサ7と舵角センサ7hのうち一方は省略することが可能である(詳細は後述)。
図1に示すように、ステアリングシャフト102の一端にはハンドル(ステアリングホイール)101が固着されており、ステアリングシャフト102の他端はラックピニオン機構103を介してラック軸104に連結されている。ラック軸104の両端は、タイロッドおよびナックルアームからなる連結部材105を介して車輪106に連結されている。運転者がハンドル101を回転させると、ステアリングシャフト102は回転し、これに伴いラック軸104は往復運動を行う。ラック軸104の往復運動に伴い、車輪106の向きが変わる。
電動パワーステアリング装置は、運転者の負荷を軽減するために、以下に示す操舵補助を行う。トルクセンサ3は、ハンドル101の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクTsを検出し、舵角センサ7hは、ハンドル101の操作量を示す操舵角θhを検出し、車速センサ4は車速Sを検出する。回転センサ7は、モータ1のロータの回転速度に応じた頻度でパルスを発生し、それらのパルスを含むパルス信号Pを出力する。モータ1のロータが停止しているときには、回転センサ7はパルスを発生しない。
ECU5は、車載バッテリ8から電力の供給を受け、操舵トルクTs、車速S、およびパルス信号P(または操舵角θh)に基づきブラシ付きモータ1を駆動する。ブラシ付きモータ1は、ECU5によって駆動されると、操舵補助力を発生させる。減速機2は、ブラシ付きモータ1とステアリングシャフト102との間に設けられる。ブラシ付きモータ1で発生した操舵補助力は、減速機2を介して、ステアリングシャフト102を回転させるように作用する。
この結果、ステアリングシャフト102は、ハンドル101に加えられる操舵トルクと、ブラシ付きモータ1で発生した操舵補助力の両方によって回転する。このように電動パワーステアリング装置は、ブラシ付きモータ1で発生した操舵補助力を車両のステアリング機構に与えることにより操舵補助を行う。
<2.実施形態>
<2.1 モータ制御装置の構成>
図2は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。このモータ制御装置は、上記電動パワーステアリング装置において使用され、ECU5を用いて構成されており、ブラシ付きモータ1を駆動する。ECU5は、制御部10と駆動部20からなる。制御部10は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略称する)を用いて実現されている。駆動部20は、モータ駆動回路30、電流検出用抵抗35、PWM信号生成回路21、電圧検出回路24、および電流検出回路25を備えている。なお以下では、回転センサ7から出力されるパルス信号Pに基づき角速度推定部50内において保舵状態か否か(モータ1が停止しているか否か)が判定されるものとする。
ECU5には、トルクセンサ3から出力された操舵トルクTsおよび車速センサ4から出力された車速Sが入力され、これらはマイコン10に入力データとして与えられる。また、駆動部20では、後述のように、モータ1への印加電圧すなわちモータ1の端子間電圧(以下「モータ電圧」という)Vaが電圧検出回路24により検出されると共に、モータ1(内の電機子巻線)を流れる電流(以下「モータ電流」という)Iaが電流検出回路25により検出され、これらの検出結果は、後述のフィルタ18,19をそれぞれ介して電圧検出値Vmおよび電流検出値Imとしてマイコン10に与えられる。電圧検出回路24はフィルタ18と共に電圧検出手段を構成し、電流検出回路25はフィルタ19と共に電流検出手段を構成する。なお、操舵トルクTs,車速S,パルス信号P、電圧検出値Vm、電流検出値Imは、モータ1に流すべき電流の目標値Itを算出する周期である制御周期毎に順次取得されてマイコン10に与えられる。
マイコン10は、ECU5に内蔵されたメモリ(図示せず)に格納されたプログラムを実行することにより、モータ1の制御のための機能単位として、目標電流設定部12、減算器14、制御演算部16、電流検出用のフィルタ18、電圧検出用のフィルタ19、および角速度推定部50をソフトウェア的に実現している。角速度推定部50は、上記の電圧検出値Vm、電流検出値Im、および、回転センサ7から出力されるパルス信号Pに基づき、モータ1(のロータ)の回転速度を示す角速度推定値ωeを算出する。目標電流設定部12は、上記の操舵トルクTsおよび車速Sと、この角速度推定値ωeとに基づき、モータ1に流すべき電流の目標値Itを決定する。減算器14は、この電流目標値Itと上記電流検出値Imとの偏差(It−Im)を算出する。制御演算部16は、この偏差(It−Im)に基づく比例積分制御演算によって、この偏差(It−Im)を打ち消すためにモータ1に印加すべき電圧を示す指令値Dを算出する。この指令値Dはマイコン10から出力されて駆動部20のPWM信号生成回路21に与えられる。
PWM信号生成回路21は、マイコン10から与えられる指令値Dに応じて、第1および第2の右方向PWM信号SRd1,SRd2と第1および第2の左方向PWM信号SLd1,SLd2とを生成する。ここで、指令値Dの符号は、モータ1が発生すべきトルクが右方向操舵を補助する方向のトルク(以下「右方向トルク」という)か左方向操舵を補助する方向のトルク(以下「左方向トルク」という)かを示す。右方向トルクを発生させる場合には、右方向PWM信号SRd1,SRd2は指令値Dに応じたデューティ比のPWM信号として生成され、左方向PWM信号SLd1,SLd2は非アクティブな信号として生成される。左方向トルクを発生させる場合には、左方向PWM信号SLd1,SLd2は指令値Dに応じたデューティ比のPWM信号として生成され、右方向PWM信号SRd1,SRd2は非アクティブな信号として生成される。
モータ駆動回路30は、4個のスイッチング素子である電力用の電界効果型トランジスタ(以下「FET」という)31〜34によって構成されるブリッジ回路であり、このブリッジ回路はバッテリ8の電源ラインと接地ラインとの間に接続され、負荷としてモータ1が接続されている。すなわち、このブリッジ回路は、電源ラインに接続される電源ライン側FET31,32と、電流検出用抵抗35を介して接地ラインに接続される接地ライン側FET33,34とからなり、電源ライン側FET31と接地ライン側FET33との接続点N1にはモータ1の正端子が接続され、電源ライン側FET32と接地ライン側FET34との接続点N2にはモータ1の負端子が接続されている。電源ライン側FET31および接地ライン側FET34のゲート端子には、上記の右方向PWM信号SRd1,SRd2がそれぞれ印加され、電源ライン側FET32および接地ライン側FET33のゲート端子には、上記の左方向PWM信号SLd1,SLd2がそれぞれ印加される。これにより、指令値Dに応じたデューティ比でFET31および34またはFET32および33がオンおよびオフすることにより、指令値Dの符号に応じた極性および大きさの電圧がモータ駆動回路30からモータ1に印加される。その結果、モータ駆動回路30からモータ1に電流が供給され、モータ1は操舵トルクTs、車速Sおよび角速度推定値ωeに応じた操舵補助力を発生させる。
上記のようにしてモータ1が駆動される間、モータ1に印加される電圧すなわちモータ1の端子間電圧Vaは電圧検出回路24によって検出され、モータ1に流れる電流Iaは電流検出用抵抗35の両端間の電圧に基づき電流検出回路25によって検出される。それらの検出結果は、フィルタ18,19をそれぞれ介して電圧検出値Vmおよび電流検出値Imとしてマイコン10に入力され、既述のように、角速度推定値ωeの算出やモータ1のフィードバック制御のための上記偏差(It−Im)の算出が行われる。
<2.2 モータ電圧およびモータ電流の検出>
<2.2.1 基本構成>
図3(a)は、本実施形態に対応する従来のモータ制御装置(以下「従来例」という)におけるモータ電圧Vaおよびモータ電流Iaの検出のためのフィルタ処理の構成を示すブロック図である。図2に示す電圧検出回路24は、その具体的な構成を捨象して、検出すべき電圧Vaである入力と検出信号Vsである出力との関係に着目すると、ハードウェアで実現されたフィルタ(以下「ハードフィルタ」という)と見なすことができる。したがって、角速度推定部での角速度推定値ωeの算出等に使用される電圧検出値Vmoは、図3(a)に示すように、検出すべき電圧Va(に相当する信号)が電圧検出回路24に対応するハードフィルタ24fとソフトウェア的に実現されたフィルタであるソフトフィルタ18pとを順に通過した後に得られることになる。同様に、図2に示す電流検出回路25は、その具体的な構成を捨象して、検出すべき電流Ia(に相当する信号)である入力と検出信号Isである出力との関係に着目すると、ハードウェアで実現されたフィルタと見なすことができる。したがって、角速度推定部での角速度推定値ωeの算出等に使用される電流検出値Imoは、図3(a)に示すように、検出すべき電流Ia(に相当する信号)が電流検出回路25に対応するハードフィルタ25fとソフトフィルタ19pとを順に通過した後に得られることになる。
図3(b)は、本実施形態に係るモータ制御装置におけるモータ電圧Vaおよびモータ電流Iaの検出のためのフィルタ処理の基本構成を示すブロック図である。上記と同様、図2に示す電圧検出回路24および電流検出回路25は、それぞれ、電圧検出用のハードフィルタ24fおよび電流検出用のハードフィルタ25fと見なすことができる。また、これらのハードフィルタ24f,25fには、上記と同様のソフトフィルタ18p,19pがそれぞれ縦続接続されている。ここで、検出すべき電圧Vaを示す信号が電圧検出用のハードフィルタ24fおよびソフトフィルタ18pを通過したときの位相遅れ量が、検出すべき電流Iaを示す信号が電流検出用のハードフィルタ25fおよびソフトフィルタ19pを通過したときの位相遅れ量よりも大きいものとする。この場合、本実施形態の基本構成では、図3(b)に示すように、電流検出用のソフトフィルタ19pに位相調整手段として位相遅れ要素19dが縦続接続される。すなわち、図2に示すフィルタ19は、従来の電流検出用のソフトフィルタ19pと位相遅れ要素19dが縦続接続された構成となっている。したがって、角速度推定部50での角速度推定値ωeの算出等に使用される電流検出値Imは、検出すべき電流Ia(に相当する信号)がハードフィルタ25fとソフトフィルタ19pと位相遅れ要素19dとを順に通過した後に得られることになる。一方、図2に示すフィルタ18は上記のソフトフィルタ18pのみからなり、角速度推定部50での角速度推定値ωeの算出等に使用される電圧検出値Vmは、従来例と同様、検出すべき電圧Va(に相当する信号)がハードフィルタ24fとソフトフィルタ18pとを順に通過した後に得られる。
なお、図3(b)に示す例では、電流検出用のソフトフィルタ19pに位相調整手段として位相遅れ要素19dが縦続接続されているが、検出すべき電流Iaを示す信号が電流検出用のハードフィルタ25fおよびソフトフィルタ19pを通過したときの位相遅れ量が、検出すべき電圧Vaを示す信号が電圧検出用のハードフィルタ24fおよびソフトフィルタ18pを通過したときの位相遅れ量よりも大きい場合には、位相遅れ要素を電流検出用のソフトフィルタ19pに縦続接続する代わりに、電圧検出用のソフトフィルタ18pに縦続接続すればよい。
本実施形態の基本構成では、モータ電圧Vaおよびモータ電流Iaの検出のためのフィルタ処理を図3(b)に示すような構成とし、位相遅れ要素19dの伝達関数を適切に設定することにより電圧検出値Vmと電流検出値Imとの間での位相ずれ(タイミングずれ)を調整することで、電圧検出値Vmと電流検出値Imとの同時性を向上させることができる。以下、このための具体的構成について説明する。
図4(a)は、上記従来例におけるモータ電圧Vaおよびモータ電流Iaの検出のためのフィルタ処理を伝達関数で示したブロック図であり、図3(a)の構成において電圧検出用のハードフィルタ24fとソフトフィルタ18pとを縦続接続した部分が下記の伝達関数Gv(s)で表現され、電流検出用のハードフィルタ25fとソフトフィルタ19pとを縦続接続した部分が下記の伝達関数Gi(s)で表現されている。
Gv(s)=1/(1+Tv・s) …(2)
Gi(s)=1/(1+Ti・s) …(3)
なお、時間関数としてのIa,Va,Imo,Vmoのラプラス変換をそれぞれIA(s),VA(s),IMO(s),VMO(s)とすると、
VMO(s)=Gv(s)・VA(s) …(4)
IMO(s)=Gi(s)・IA(s) …(5)
である。上記の伝達関数Gv(s)およびGi(s)の周波数特性は図5のボード線図に示す通りである。
電圧検出用のハードフィルタ24fおよびソフトフィルタ18pが上記式(2)に示すように構成され、電流検出用のハードフィルタ25fおよびソフトフィルタ19pが上記式(3)に示すように構成されている場合、図4(b)に示すように、位相遅れ要素19dが下記の伝達関数Gd(s)を有する構成とすればよい。
Gd(s)=(1+Ti・s)/(1+Tv・s) …(6)
なお、時間関数としてのImのラプラス変換をIM(s)とすると、
IM(s)=Gd(s)・IMO(s) …(7)
である。上記式(6)の伝達関数Gd(s)の周波数特性は図6に示す通りである。
上記式(3)(5)(7)より、電流検出の伝達関数IM(s)/IA(s)は
IM(s)/IA(s)=Gd(s)・Gi(s)
=1/(1+Tv・s)
であり、VM(s)=VMO(s)を考慮すると、電流検出の伝達関数IM(s)/IA(s)と電圧検出の伝達関数VM(s)/VA(s)=Gv(s)とは同一になる。なお、伝達関数Gd(s)・Gi(s)の周波数特性は、図7のボード線図に示す通りであり、図5のボード線図に示す伝達関数Gv(s)の周波数特性と一致する。
図3(b)および図4(b)に示す上記基本構成では、電流検出のためのフィルタ19内に位相遅れ要素19dが位相調整手段として挿入されているが、これに代えて、図8(a)に示すように、電圧検出のためのフィルタ18内に位相進み要素18aを位相調整手段として挿入してもよい。この場合、位相進み要素18aが下記の伝達関数Ga(s)を有する構成とすればよい。
Ga(s)=(1+Tv・s)/(1+Ti・s)
また、図3(b)および図4(b)に示す上記基本構成では、検出すべき電圧Vaを示す信号が電圧検出用のハードフィルタ24fおよびソフトフィルタ18pを通過したときの位相遅れ量が、検出すべき電流Iaを示す信号が電流検出用のハードフィルタ25fおよびソフトフィルタ19pを通過したときの位相遅れ量よりも大きいことを前提としているが、後者の位相遅れ量が前者の位相遅れ量よりも大きい場合には、図8(b)に示すように電圧検出のためのフィルタ18内に位相遅れ要素18dを挿入する構成とするか、または、図8(c)に示すように電流検出のためのフィルタ19内に位相進み要素19aを挿入する構成とすればよい。なお、図3および図8に示した構成では、電圧検出における位相遅れ量と電流検出における位相遅れ量のいずれか一方を調整する構成となっているが、双方を調整するように構成されていてもよい。
<2.2.2 実際の構成>
上記のように本実施形態の基本構成(図3(b)、図4(b))によれば、電圧検出の伝達関数VM(s)/VA=Gv(s)と電流検出の伝達関数IM(s)/IA(s)=Gd(s)・Gi(s)とが一致するので、電圧検出値Vmと電流検出値Imとの位相ずれが解消され、両者の同時性が向上する。しかし、これらの伝達関数Gv(s)とGd(s)・Gi(s)は図5と図7に示すような周波数特性を有している。このため、検出すべき電圧Vaの周波数と検出すべき電流Iaの周波数との差が大きい場合には、その周波数差に起因して生じる電圧検出と電流検出の間での位相やゲインの相違が不具合を引き起こし、状況によっては位相遅れ要素19dの導入により電圧および電流検出の同時性が低下したり後述の式(9)による抵抗値算出の精度が低下したりする可能性もある。
そこで、本実施形態では、モータ電圧Vaおよびモータ電流Iaの検出のためのフィルタ処理の実際の構成は図9に示すようになっている。すなわち、制御部10の構成要素としてソフトウェア的に実現されるフィルタ19は、ソフトフィルタ19pに縦続接続された位相遅れ要素19dに加えて、周波数検出器181,191と差分器192と判定器193と選択器195とからなる調整禁止手段を備えている。周波数検出器181は、ハードフィルタ24fの出力信号Vsすなわち電圧検出回路24からの検出信号Vsの周波数を検出し、その検出結果を電圧周波数fvとして出力する。周波数検出器191は、ハードフィルタ25fの出力信号Isすなわち電流検出回路25からの検出信号Isの周波数を検出し、その検出結果を電流周波数fiとして出力する。差分器192は、これらの電圧周波数fvと電流周波数fiとの差Δf=|fv−fi|を算出し、判定器193は、この差Δfが所定の閾値εfよりも大きいか否かに応じて“1”または“0”となる判定信号Cswを出力する。選択器195は、判定信号Cswが“0”のときには(Δf≦εfのときには)、位相遅れ要素19dを通過した後の信号を電流検出値Imとして出力し、判定信号Cswが“1”のときには(Δf>εfのときには)、位相遅れ要素19dを通過する前の信号Imoを電流検出値Imとして出力する。一方、制御部10の構成要素としてソフトウェア的に実現されるフィルタ18は、上記基本構成の場合(図3(b))と同様である。なお、上記閾値εfは実験またはシミュレーション等により予め適切な値が設定されているものとする。
上記構成によれば、検出すべき電圧Vaと電流Iaとの間での周波数の差Δfが小さい場合(Δf≦εfの場合)には、位相遅れ要素19dによって電圧検出値Vmと電流検出値Imとの間でのタイミングずれが低減されて、同時性が向上し、一方、当該周波数の差Δfが大きい場合(Δf>εfの場合)には、電圧検出および電流検出の周波数特性により当該周波数差Δfに起因して生じる不具合(電圧および電流検出の同時性の低下や、抵抗値の算出精度の低下等)が防止される。したがって、電圧検出値Vmと電流検出値Imの間での周波数差が大きい場合における位相遅れ要素19dによる不具合を回避しつつ、電圧検出と電流検出との同時性を向上させることができる。これにより、角速度推定値ωeの算出精度を安定的に高めてモータ制御装置の制御性能を向上させることができる。
<2.3 角速度推定部の構成および動作>
図10は、本実施形態における角速度推定部50の機能的な構成を示すブロック図である。この角速度推定部50は、図10に示すように、保舵判定部51、抵抗値算出部52、平均値算出部53、FIFOメモリ53B、マップ更新部54、マップ保持部55、および、角速度推定値算出部56を備えている。上記の電圧検出回路24および電流検出回路25による検出結果は、上記のフィルタ18,19をそれぞれ介し電圧検出値Vmおよび電流検出値Imとして、抵抗値算出部52および角速度推定値算出部56に入力される。
一般に、ブラシ付きモータ1のロータの角速度ωは、既述のように次式により与えられる。
ω=(V−I×R)/k …(8)
ここで、Vはモータ電圧(端子間電圧)であり、Iはモータ電流であり、Rはモータ抵抗(端子間抵抗)であり、kは逆起電力定数である。したがって、上記の電圧検出値Vmおよび電流検出値Imに加えて、モータ抵抗Rの値がわかれば、角速度ωを算出することができる(本実施形態では逆起電力定数kは既知とする)。
本実施形態では、回転センサ7からのパルス信号Pが保舵判定部51に入力され、保舵判定部51は、予め決められた時間ΔT1の間、回転センサ7がパルスを出力しなければ(パルス信号Pが変化しなければ)、モータ1の回転速度は0近傍の所定値以下であるとして、保舵状態であると判定し、当該時間ΔT1の間に回転センサ7がパルスを出力すれば操舵状態であると判定する。この判定結果は、回転状態信号Stとして抵抗値算出部52、平均値算出部53、およびマップ更新部54に入力される。また、当該時間ΔT1の間、回転センサ7がパルスを出力しない場合に保舵が検出されるが、その検出後において回転センサ7からパルスが出力されると(パルス信号Pが変化すると)、その時点で回転状態信号Stは操舵状態を示すように変化する。なお、保舵状態か否かの判定手法は、これに限定されるものではなく、例えば、回転センサ7に代えて、舵角センサ(または操舵角速度センサ)7hからの出力信号に基づいて保舵状態か否かを判定するようにしてもよい。
電動パワーステアリング装置が保舵状態であってモータ1(のロータ)が停止している場合、角速度ω=0であるので、上記式(8)に基づき下記式(9)によりモータ抵抗Rを算出することができる。
R=V/I …(9)
そこで抵抗値算出部52は、回転状態信号Stが保舵状態を示している間、角速度ω=0とみなし、上記式(3)にV=Vm、I=Imを代入することによりモータ抵抗Rの値を制御周期毎に算出する(以下、この値を「算出抵抗値Rc」という)。このようにして得られる算出抵抗値Rc(=Vm/Im)とその算出に使用した電流検出値Im(以下「算出時電流値Ic」という)は、平均値算出部53に入力される。なお既述のように、制御周期とは、モータ1に流すべき電流の目標値Itを算出する周期をいう。
平均値算出部53は、上記の回転状態信号Stに基づき、電動パワーステアリング装置が保舵状態である期間(以下「保舵期間」という)に抵抗値算出部52から制御周期毎に順次入力される所定数の算出抵抗値Rcについての平均値を求め、抵抗平均値Ravとして出力する。また、平均値算出部53は、同様にして制御周期毎に順次入力される所定数の算出時電流値Icについての平均値を求め、電流平均値Iavとして出力する。このようにして、所定数の算出抵抗値Rcについての抵抗平均値Ravと、当該所定数の算出抵抗値Rcの算出のための算出時電流値Icについての電流平均値Iavとが、制御周期毎に出力され、FIFOメモリ53Bに入力される。なお、これらの抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavとしては、平均値算出部53内に設けられたカウンタ535を使用して所定数の制御周期毎(例えば20周期毎)に当該所定数の算出抵抗値Rcの平均値および当該所定数の算出時電流値Icの平均値を求めてもよいし、これに代えて、所定数の算出抵抗値Rcについての移動平均値および当該所定数の算出時電流値Icについての移動平均値を制御周期毎に求めてもよい。以下では、所定数の算出抵抗値Rcについての移動平均値を抵抗平均値Ravとして算出すると共に、当該所定数の算出時電流値Icについての移動平均値を電流平均値Iavとして算出するものとして説明を進める。
FIFOメモリ53Bは、サイズが所定値Ndの先入れ先出し方式のメモリであって、マイコン10内のメモリを用いてソフトウェア的に実現されている。このFIFOメモリにNd個の抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavが格納されている状態において更に1個の新たな抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavが入力されると、最初に入力されたFIFOメモリ内の抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavが廃棄される。このため、このFIFOメモリにNd回以上、抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavが入力された場合には、直近のNd回に入力されたNd個の抵抗平均値Ravおよび電流平均値IavのみがFIFOメモリ53Bに存在する。ここで、所定数Ndは、回転センサ7の分解能に応じて決定される値である。具体的には、実際の操舵開始時点すなわちモータ1の実際の回転開始時点からパルス信号Pの変化が検出される時点(回転開始検出時点)までの時間である検出遅延時間よりも若干長い時間としてディレイ時間Tdlyが予め設定されており、そのディレイ時間Tdlyに相当する制御周期数に等しい値が上記の所定数Ndとして設定されている。したがって、FIFOメモリ53Bから取り出される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavは、現時点からディレイ時間Tdlyだけ遡った時点近傍で算出されたものであり、これらの抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavの算出に使用された電流検出値Imおよび電圧検出値Vmは当該遡った時点以前に検出されたものである。
マップ保持部55は、モータ1の電流−抵抗特性に基づきモータ電流をモータ抵抗に対応付けるテーブルを抵抗マップとして保持している。マップ更新部54は、回転状態信号Stに基づき、保舵期間において、所定期間毎にFIFOメモリ53Bから抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavを取り出し、これらの抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づきマップ保持部55における抵抗マップを更新する。すなわち図11(a)(b)に示すように、上記の電流−抵抗特性を表す特性曲線が上記の抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavを示す点Aを通過するよう(当該特性曲線が図11(b)の点線の曲線から実線の曲線に変更されるよう)抵抗マップを変更する。
保舵状態か否かの判定に使用されるパルス信号Pを出力する回転センサ7の分解能は低いので、舵が動き出してから(モータ1が回転を開始してから)パルス信号Pが変化するまでの時間として上記の検出遅延時間が存在する。例えば、回転センサ7の分解能が1.5degで制御周期が5msの場合、0.2Hzのサイン操舵において動き出し検出遅れ(検出遅延時間)が0.1sec程度となることがある。この検出遅延時間の間は、実際の角速度ωは0ではないので、式(9)によってモータ抵抗Rを正確に算出することはできない。
しかし本実施形態では、既述のように、FIFOメモリ53Bから取り出される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavは、現時点からディレイ時間Tdlyだけ遡った時点以前に取得された電流検出値Imおよび電圧検出値Vmを用いて算出されており、このような抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavを用いてマップ保持部55における抵抗マップが更新される。すなわち、抵抗マップの更新に使用される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavは、保舵判定部51によって保舵状態と判定される期間(回転状態信号Stによって示される保舵期間)のうち上記ディレイ時間Tdlyを除いた期間において取得される電流検出値Imおよび電圧検出値Vmを用いて算出されている。したがって、抵抗マップの更新に使用される抵抗平均値Ravは、角速度ωが0とみなせる実際の保舵状態における正確な算出抵抗値Rcから算出されるので、低分解能の回転センサ7を用いても、抵抗マップを参照して得られる抵抗値Rmの精度が低下することはない。この点は、回転センサ7からのパルス信号Pに代えて舵角センサ7hからの操舵角θhに基づいて保舵状態か否かを判定する場合においても同様である。なお、上記説明からわかるように本実施形態では、FIFOメモリ53Bは、実際の操舵開始時点(実際の回転開始時点)から操舵開始検出時点(回転開始検出時点)までの時間である検出遅延時間に取得される電流検出値Imおよび電圧検出値Vmから算出される抵抗値および当該算出時点の電流検出値Imが抵抗マップの更新に使用されないようにするためのパラメータ制御手段として機能する。
上記においてマップ更新部54は、回転状態信号Stが保舵状態を示す期間(保舵期間)において、所定期間毎にFIFOメモリ53Bから取り出される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づきマップ保持部55における抵抗マップを更新するが、これに代えてまたはこれと共に、回転状態信号Stに基づき保舵状態から操舵状態への遷移が検出されたときに(操舵開始検出時に)、FIFOメモリ53Bから取り出される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づきマップ保持部55における抵抗マップを更新するようにしてもよい。この場合、例えば図12に示すように時刻taで舵が動き出しても、回転センサ7の分解能が低いために、パルス信号Pに基づき舵の動き出し(保舵状態から操舵状態への遷移)が検出されるのは時刻tbとなり、この時刻tbに抵抗マップが更新される。しかし、この更新に使用される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavの算出に使用される電流検出値Imおよび電圧検出値Vmは、検出遅延時間よりも長い時間として予め設定されたディレイ時間Tdlyだけ時刻tbから遡った時点t5以前に取得されている。このため、実際に保舵状態にあるとき、すなわち実際の角速度ω=0のときに取得される電流検出値Imおよび電圧検出値Vmから算出される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づき抵抗マップが更新される。これにより、抵抗マップを参照して得られる抵抗値Rmの精度が低分解能の回転センサ7の使用によって低下するという問題が解消される。その結果、モータ制御装置の制御性能が向上し、そのモータ制御装置を用いた電動パワーステアリング装置において、保舵状態から操舵状態と遷移する期間での制御が良好に行われ、操舵感が向上する。
角速度推定値算出部56は、マップ保持部55における抵抗マップを参照して、上記の電流検出値Imに対応するモータ抵抗値Rmを求め、この抵抗値Rmを上記の電圧検出値Vmおよび電流検出値Imと共に用いて上記式(8)により角速度推定値ωeを算出する。すなわち角速度推定値算出部56は、V=Vm、I=Im、R=Rmを上記式(8)に代入することにより角速度推定値ωeを算出する。ただし、本実施形態における角速度推定値ωeの算出方法はこれに限定されるものではない。例えば、操舵状態のときには、上記抵抗マップを参照して得られる抵抗値Rmを用いて角速度推定値ωeを算出し、保舵状態のときには、現時点の電流検出値Imおよび電圧検出値Vmから算出される抵抗値R=Vm/Imを用いて角速度推定値ωeを算出するようにしてもよい。また、これに代えて、保舵状態において、上記式(8)による角速度推定値ωeの算出に使用する抵抗値Rを、上記抵抗マップを参照して得られる抵抗値Rmと現時点の電流検出値Imおよび電圧検出値Vmから算出される抵抗値R=Vm/Imとの間で適宜切り替えるようにしてもよい。
<2.4 角速度推定値算出部の構成>
次に、角速度推定値算出部56の構成例について説明する。以下では、上記式(8)による角速度推定値ωeの算出に使用する抵抗値Rを、抵抗マップを参照して得られる抵抗値Rmと現時点の電流検出値Imおよび電圧検出値Vmから算出される抵抗値R=Vm/Imとの間で適宜切り替えるものとする。
<2.4.1 第1の構成例>
モータ1が回転していない場合(保舵状態の場合)には、角速度ωは0であるので、現時点の電圧検出値Vmおよび電流検出値Imから式(9)より抵抗値Rr=Vm/Imをリアルタイムで算出することにより、精度良くモータ抵抗値を取得することができる(以下、このようにして算出される抵抗値Rrを「リアルタイム抵抗値Rr」という)。しかし、モータ1が回転を開始すると(舵が動き出すと)、式(8)よりR=(V−k・ω)/Iであることから、上記式(9)より算出されるリアルタイム抵抗値Rrには、k・ω/Iに相当する誤差が含まれる。そこで、本実施形態における角速度推定部50内の角速度推定値算出部56の第1の構成例では、上記のリアルタイム抵抗値Rrと抵抗マップを参照して得られるモータ抵抗値(以下「IR特性抵抗値」という)Rmとの差(|Rr−Rm|)が所定値ε1(>0)以下であるときには、リアルタイム抵抗値Rrを用いて角速度推定値ωeを算出し、当該差が所定値ε1よりも大きいときには、IR特性抵抗値Rmを用いて角速度推定値ωeを算出する。なお、所定値ε1(>0)は、上記誤差や抵抗マップの精度および更新頻度を考慮して実験またはシミュレーション等に基づき予め適切な値が設定される。
図13は、このような第1の構成例による角速度推定値算出部56の構成を示すブロック図である。この角速度推定部50は、除算器561、差分器562、判定器564、選択器566、および角速度演算器568を備えており、電圧検出回路24および電流検出回路25から得られる電圧検出値Vmおよび電流検出値Imが除算器561および角速度演算器568に入力される。また、入力された電流検出値Imは、角速度推定値算出部56からマップ保持部55に出力され、その電流検出値Imに抵抗マップによって対応付けられるモータ抵抗値がIR特性抵抗値Rmとしてマップ保持部55から角速度推定値算出部56に入力される。このIR特性抵抗値Rmは選択器566および差分器562に与えられる。また、この角速度推定値算出部56は微分器563を更に備えていてもよく、この場合、トルクセンサ3からの操舵トルクTsがその微分器563に与えられる。
除算器561は、電圧検出値Vmおよび電流検出値Imから抵抗値Rr=Vm/Imをリアルタイム抵抗値Rrとして算出するリアルタイム算出手段として機能し、このリアルタイム抵抗値Rrは、選択器566および差分器562に与えられる。差分器562は、このリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmとの差分ΔR=|Rr−Rm|を算出し、この差分ΔRは判定器564に与えられる。判定器564は、この差分ΔRが所定値ε1(>0)よりも大きいか否かにより“1”または“0”となる選択制御信号Sdを出力し、この選択制御信号Sdは選択器566に与えられる。
選択器566は、選択制御信号Sdに応じてリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmのうちの一方を選択する。すなわち選択器566は、上記差分ΔRが所定値ε1以下である場合(ΔR≦ε1でSd=0の場合)にはリアルタイム抵抗値Rrを選択し、上記差分ΔRが所定値ε1よりも大きい場合(ΔR>ε1でSd=1の場合)にはIR特性抵抗値Rmを選択する。このようにしてリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmから選択された抵抗値は選択抵抗値Rsとして角速度演算器568に与えられる。角速度演算器568は、この選択抵抗値Rsと、電流検出値Imおよび電圧検出値Vmと、予め決められた逆起電力定数の値k1とを用いて、角速度推定値ωeを算出する。すなわち、式(8)にR=Rs,I=Im,V=Vm,k=k1を代入することにより角速度推定値ωeを算出する。このようにして算出された角速度推定値ωeは角速度推定部50から出力され、既述のように、電流目標値Itの算出に使用される。
角速度推定値算出部56が微分器563を備える場合には、その微分器563によって操舵トルクTsの微分値(以下「トルク微分値」という)dTs/dtが算出され、そのトルク微分値dTs/dtは判定器564に入力される。この場合、判定器564は、そのトルク微分値dTs/dtが所定値ε2(>0)よりも大きいときには、上記差分ΔRと上記所定値ε1との大小関係に拘わらず、選択制御信号Sdとして“1”を出力する。この選択制御信号Sd=1に応じて、IR特性抵抗値Rmが選択抵抗値Rsとして角速度演算器568に与えられる。ここで、所定値ε2は、モータ1の回転とトルク微分値dTs/dtとの関係についての実験やシミュレーション等に基づき予め適切な値が設定される。なお、トルク微分値dTs/dtが上記所定値ε2以下である場合には、既述のように、上記差分ΔRが所定値ε1よりも大きいか否かに応じて選択制御信号Sdが“1”または“0”となる。
いま、図14(a)に示すように、現時点での電流検出値および電圧検出値をそれぞれIm=I(n)およびVm=V(n)とし、現時点よりも上記のディレイ時間Tdlyだけ遡った時点における電流検出値および算出抵抗値をそれぞれIm=I(n-20)およびRc=R(n-20)とし、順次得られる5個の算出抵抗値についての平均値を抵抗平均値Ravとして算出する場合を考える。この場合、上記構成によれば、図14(a)(b)に示すように、現時点においては、5個の算出抵抗値R(n-24),R(n-23),…,R(n-20)についての抵抗平均値Rav(n-20)と、これに対応する5個の算出時電流値I(n-24),I(n-23),…,I(n-20)についての電流平均値Iav(n-20)とに基づき、抵抗マップが更新され、その更新後の抵抗マップにより現時点の電流検出値I(n)に対応付けられるモータ抵抗値がIR特性抵抗値Rmとして取得される。そして、現時点の電流検出値I(n)および電圧検出値V(n)から算出されるリアルタイム抵抗値Rr=R(n)=V(n)/I(n)と当該IR特性抵抗値Rmとの差分ΔR=|R(n)−Rm|が所定値ε1よりも大きいか否かに応じて、これらリアルタイム抵抗値R(n)とIR特性抵抗値Rmのうちの一方が選択抵抗値Rsとして選択され、その選択抵抗値Rsを用いて角速度演算器568により角速度推定値ωeが算出される。
上記第1の構成例による角速度推定値算出部56を用いた本実施形態によれば、リアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmとの差分ΔR=|Rr−Rm|が所定値ε1以下の場合には、リアルタイム抵抗値Rrを用いて角速度推定値ωeが算出される。これにより、保舵状態か否かの判定のために低分解能の回転センサ7が使用されても、モータが1が実際に停止していて保舵状態にある場合には、モータ1におけるブラシと整流子の間の接触状態が変化したり温度が変化したりしても、その変化にリアルタイム抵抗値Rrが追随し、モータ1の角速度推定値ωeが精度良く算出される。また、上記差分ΔR=|Rr−Rm|が所定値ε1よりも大きい場合には、IR特性抵抗値Rmを用いて角速度推定値ωeが算出される。このIR特性抵抗値Rmを得るための抵抗マップは、回転センサ7の分解能に応じて決まるディレイ時間Tdlyだけ遡った時点以前の抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づいて更新されるので、保舵状態か否かの判定のために使用する回転センサ7の分解能が低いことによるIR特性抵抗値Rmの精度の低下が回避され、モータ1の角速度推定値ωeが精度良く算出される。
このように、モータ1の角速度推定値ωeの算出に使用されるモータ抵抗値が上記差分ΔRの大小に応じてリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmの一方が選択されることで、保舵状態か否かの判定に低分解能の回転センサ7を使用しつつ、操舵開始時点近傍においても、精度良くモータ1の角速度推定値ωeを算出することができる。その結果、モータ制御装置の制御性能が向上し、そのモータ制御装置を用いた電動パワーステアリング装置において良好な操舵感が得られる。なお、角速度推定値ωeの算出のためのモータ抵抗値(選択抵抗値Rs)をリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmから選択するのに、上記差分ΔRに加えてトルク微分値dTs/dtをも使用する場合には、その選択が更に適切なものとなる。
<2.4.2 第2の構成例>
図15は、本実施形態における角速度推定部50内の角速度推定値算出部56の第2の構成例を示すブロック図である。この第2の構成例による角速度推定値演算部56は、上記第1の構成例と同様に、除算器561、差分器562、判定器564、選択器566、および角速度演算器568を備えている。また、これに加えて上記操舵トルクTsを時間微分してトルク微分値dTs/dtを求める微分器563を備えていてもよい。
しかし、この第2の構成例では、判定器564に対し、上記差分ΔR=|Rr−Rm|に加えて現時点の電流検出値Imも与えられ、判定器564における処理内容が第1の構成例と相違する。すなわち第2の構成例では、逆起電力定数の値k1と共に、モータ1の駆動制御に使用する角速度値についての許容誤差量ωermxとして予め決められた値を保持しており、判定器564は、下記式で与えられる閾値εthよりも上記差分ΔRが大きいか否かに応じて選択制御信号Sdを生成する。
εth=k・ωermx/Im …(10)
すなわち、ΔR≦εthであればSd=0となり、選択器566は、リアルタイム抵抗値Rrを選択し、これを選択抵抗値Rsとして出力する。一方、ΔR>εthであればSd=1となり、選択器566は、IR特性抵抗値Rmを選択し、これを選択抵抗値Rsとして出力する。なお、電流検出値Imが0近傍の値である場合には、式(10)により適切な閾値εthを決定することはできない。そこで、電流検出値Imの絶対値が0近傍の所定値εi(>0)よりも小さい場合には、式(10)で与えられるεthに代えて、第1の構成例における所定値ε1(正の固定値)を閾値εthとして使用する。第2の構成例における上記以外の構成は上記第1の構成例と同様であるので説明を省略する。
上記第2の構成例による角速度推定値算出部56を用いた本実施形態によれば、上記第1の構成例の場合と同様、モータ1の角速度推定値ωeの算出に使用されるモータ抵抗値が上記差分ΔRの大小に応じてリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmとから選択されることで、保舵状態か否かの判定に低分解能の回転センサ7を使用しつつ、操舵開始時点近傍においても精度良くモータ1の角速度推定値ωeを算出することができる。しかも、モータ1の角速度推定値ωeの算出に使用されるモータ抵抗値としてリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmのうちいずれを選択するかは、上記差分ΔR=|Rr−Rm|が閾値εth=k・ωermx/Imよりも大きいか否かにより決まる。このため、モータ1に流れる電流が変化しても、その選択が適切に行われる。その結果、モータ制御装置の制御性能が更に向上し、そのモータ制御装置を用いた電動パワーステアリング装置においてより良好な操舵感が得られる。なお、角速度推定値ωeの算出のためのモータ抵抗値(選択抵抗値Rs)をリアルタイム抵抗値RrとIR特性抵抗値Rmから選択するのに、上記差分ΔRに加えてトルク微分値dTs/dtをも使用する場合には、その選択が更に適切なものとなる(この点は上記第1の構成例と同様である)。
<2.5 角速度推定部の他の構成例>
図16は、本実施形態における角速度推定部50の他の構成例を示すブロック図である。この構成例による角速度推定部50は、図10に示した構成例と同様、保舵判定部51、抵抗値算出部52、平均値算出部53、マップ更新部54、マップ保持部55、および、角速度推定値算出部56を備えており、当該角速度推定部50には、回転センサ7からパルス信号Pが入力されると共に、電圧検出回路24および電流検出回路25からフィルタ18,19をそれぞれ介して電圧検出値Vmおよび電流検出値Imが入力される。しかし、当該角速度推定部50は、図10の構成例とは異なり、FIFOメモリを備えていない。
図16に示す他の構成例による角速度推定部50においても、保舵判定部51は、パルス信号Pに基づき保舵状態か否かを判定し(図17(a)(b)参照)、その判定結果を示す回転状態信号Stを出力する。また、抵抗値算出部52も図10の構成例と同様に動作し、これにより、回転状態信号Stが保舵状態を示している間、制御周期毎に、電流検出値Imおよび電圧検出値Vmから得られた算出抵抗値Rcが算出時電流値Icと共に平均値算出部53に入力される。
平均値算出部53は、1つの制御周期が経過する毎に1だけカウント値Cを増大させるカウンタ535を有している。このカウンタ535は、回転状態信号Stに基づき保舵状態の検出時点で0から計数を開始し、そのカウント値Cが所定の終了値Cn(例えば50)に達する毎にリセットされ、リセットされると0から再び計数を開始する。このようにしてカウンタ535は、図17(c)に示すように、回転状態信号Stが保舵状態を示している間、0から計数を開始してカウント値Cが終了値Cnに達するとリセットされ再び0から計数を開始するという動作を繰り返す。
平均値算出部53は、上記カウンタ535が0から計数を開始すると、抵抗値算出部52から制御周期毎に入力される算出抵抗値Rcおよび算出時電流値Icの積算を開始し、上記カウンタ535のカウント値Cが終了値Cnに達すると、その積算を終了し、それらの積算値から、カウント値Cが0からCnまで変化するまでの期間での算出抵抗値Rcの平均値および算出時電流値Icの平均値を求める。このようにして求められた算出抵抗値Rcの平均値および算出時電流値Icの平均値は、それぞれ抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavとしてマップ更新部54に入力される。なお以下では、算出時点の異なる抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavを区別する場合には、それらの記号に番号iを追加して「抵抗平均値Ravi」「電流平均値Iavi」と記すものとする(i=1,2,3,…)。
図17に示す例では、時刻t0で保舵状態が検出されて上記カウンタ535が計数を開始し、時刻t1でカウント値Cが終了値Cnに達して上記カウンタ535がリセットされると共に0から再び計数を開始する。以後、同様に、時刻t2,t3,t4の各時点でカウント値Cが終了値Cnに達して上記カウンタ535がリセットされると共に0から再び計数を開始し、時刻t4で計数が開始された後は、カウント値Cが終了値Cnに達する前に保舵状態が終了する。この保舵状態の終了はパルス信号Pの変化によって検出され、回転状態信号Stに基づき上記カウンタ535が動作を停止する。しかし、回転センサ7の分解能は低いので、実際の保舵期間の終了時点からパルス信号Pが変化するまでには検出遅延時間が存在する(図17(a))。このため、図17に示す例のように、パルス信号Pに基づく回転状態信号Stが保舵状態を示している期間内の時刻t4にカウント値Cが終了値Cnに達しても、その時刻t4では、実際の保舵期間が既に終了しており、操舵が開始されていることがある。この場合、時刻t3〜t4の期間で得られる算出抵抗値Rcには、実際の角速度ωが0でないときの電流検出値Imおよび電圧検出値Vmから算出されるものも含まれている。したがって、時刻t3〜t4の期間での抵抗平均値Rav4および電流平均値Iav4に基づいて抵抗マップを更新すると、抵抗マップが誤差を含んだものとなる。
そこで、図16に示す構成の角速度推定部50では、図17(c)に示すように、カウント値Cが終了値Cnに達したときには、前回にカウント値Cが終了値Cnに達したときの抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づき抵抗マップを更新するように構成されている。すなわち、図17に示す動作例の場合、マップ更新部54は、時刻t1でカウント値Cが終了値Cnに達したときには抵抗マップの更新は行わず、次に時刻t2でカウント値Cが終了値Cnに達したときに、時刻t0〜t1の期間での抵抗平均値Rav1および電流平均値Iav1に基づき抵抗マップを更新する。以降同様にして、マップ更新部54は、時刻t1〜t2の期間での抵抗平均値Rav2および電流平均値Iav2に基づき時刻t3で抵抗マップを更新し、時刻t2〜t3の期間での抵抗平均値Rav3および電流平均値Iav3に基づき時刻t4で抵抗マップを更新する。時刻t4以後においてカウント値Cが終了値Cnに達する前にパルス信号Pが変化して保舵状態ではないと判定されるので、時刻t3〜t4の期間での抵抗平均値Rav4および電流平均値Iav4に基づくマップ更新は行われない。これにより、抵抗マップの更新の際に上記検出遅延時間に起因して抵抗マップに誤差が混入するのを回避することができる(図17(c)参照)。
角速度推定値算出部56は、保舵状態か操舵状態かに拘わらず、制御周期毎に、マップ保持部55における抵抗マップを参照して、電流検出値Imに対応するモータ抵抗値をIR特性抵抗値Rmとして求め、電圧検出値Vmおよび電流検出値Imと共に当該IR特性抵抗値Rmを用いて、上記式(8)により角速度推定値ωeを算出する。算出された角速度推定値ωeは、角速度推定部50から出力されて目標電流設定部12に入力され、モータ1に流すべき電流の目標値Itの決定に使用される(図2参照)。
上記のような構成によれば、保舵期間では、カウント値Cが0からCnまで繰り返し計数され、カウント値Cが終了値Cnに達する毎に算出される抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づきマップ保持部55における抵抗マップが更新される。そして保舵期間では、このように所定期間毎に更新される抵抗マップを参照して、電流検出値Imに対応するモータ抵抗値をIR特性抵抗値Rmとして求め、このIR特性抵抗値Rmを用いて、式(8)により角速度推定値ωeを算出する。また、操舵期間では、直前の保舵期間において最後に更新された抵抗マップを参照して、電流検出値Imに対応するモータ抵抗値としてIR特性抵抗値Rmを求め、このIR特性抵抗値Rmを用いて、式(8)により角速度推定値ωeを算出する。このとき、保舵状態か否かを判定するために低分解能の回転センサ7が使用されていても、上記のように抵抗マップへの誤差の混入が回避されるので、保舵状態の判定のためのコスト増を抑制しつつ、抵抗マップを参照して精度良く角速度推定値ωeを算出することができる。このようにして、角速度推定値ωeの算出に使用される抵抗マップが誤差の混入を回避しつつ順次更新されるので、モータ1に個体差があっても、また、モータ1におけるブラシと整流子の間の接触状態や温度等が変化しても、実際のモータ抵抗値に比べ誤差の少ないモータ抵抗値(IR特性抵抗値)Rmが得られ、このモータ抵抗値Rmを用いて角速度推定値ωeを精度良く算出することができる。また、抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavに基づき更新された抵抗マップを用いて角速度推定値ωeが算出されるので、算出抵抗値Rcおよび算出時電流値Icに含まれるノイズの影響が抑制される。
<3.変形例など>
上記実施形態では、抵抗マップの更新のために角速度推定部50内の平均値算出部53により抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavが求められる(図10、図12参照)。ここで、抵抗平均値Ravは、保舵期間に抵抗値算出部52から順次入力される所定数の算出抵抗値Rcについての平均値であり、電流平均値Iavは、同様にして制御周期毎に順次入力される所定数の算出時電流値Icについての平均値であるが、抵抗平均値Ravの算出に使用する算出抵抗値Rcの個数および電流平均値Iavの算出に使用する算出時電流値Icの個数を固定せずに可変数としてもよい。例えば、保舵期間が長い場合には、これらの抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavの算出にそれぞれ使用する算出抵抗値Rcおよび算出時電流値Icの個数を多くし、保舵期間が短い場合には、これらの抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavの算出にそれぞれ使用する算出抵抗値Rcおよび算出時電流値Icの個数を少なくしてもよい。このようにすれば、保舵期間が長くなるにしたがって、抵抗平均値Ravおよび電流平均値Iavの算出にそれぞれ使用する算出抵抗値Rcおよび算出時電流値Icの個数が多くなり、抵抗マップの更新の精度が向上するので、角速度推定値ωeの算出精度を高めることができる。
上記実施形態において、角速度推定部50はマイコン10が所定プログラムを実行することによりソフトウェア的に実現されているが、角速度推定部50の一部または全部をハードウェア的に実現してもよい。
上記実施形態に係るモータ制御装置は、ブラシ付きモータ1を駆動するための装置であるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、電動モータの電機子巻線に生じる逆起電力に基づき、当該モータの抵抗値と当該モータへの印加電圧および当該モータに流れる電流の検出値とから当該モータの回転速度(角速度)の推定値を算出できるものであれば、他の種類のモータにも適用可能である。
なお本発明は、上述したコラムアシスト型の電動パワーステアリング装置だけでなく、ピニオンアシスト型やラックアシスト型の電動パワーステアリング装置にも適用できる。また、本発明は、電動パワーステアリング装置以外に用いられるモータ制御装置にも適用できる。
1…ブラシ付きモータ(電動モータ)、5…ECU(モータ制御装置)、7…回転センサ、19d…位相遅れ要素(位相調整手段)、51…保舵判定部(判定手段)、54…マップ更新部(特性更新手段)、55…マップ保持部(特性保持部)、56…角速度推定値算出部(推定値算出手段)、195…選択器、561…除算器(リアルタイム算出手段)。

Claims (6)

  1. 電動モータの電機子巻線に生じる逆起電力に基づき当該電動モータの回転速度の推定値を算出し、当該推定値を用いて当該電動モータを駆動するモータ制御装置であって、
    前記電動モータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
    前記電動モータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記電流検出手段により得られる電流検出値と前記電圧検出手段により得られる電圧検出値とに基づき、前記電動モータの回転速度を示す速度推定値を算出する推定値算出手段と、
    前記電流検出手段によって検出される電流に対する前記電流検出値の位相遅れ量である電流位相遅れ量と前記電圧検出手段によって検出される電圧に対する前記電圧検出値の位相遅れ量である電圧位相遅れ量との差が低減されるように、当該電流位相遅れ量と当該電圧位相遅れ量の少なくとも一方の位相遅れ量を調整する位相調整手段と、
    前記電流検出手段によって検出される電流の周波数と前記電圧検出手段によって検出される電圧の周波数との差が所定値以上であるときには前記位相調整手段による前記位相遅れ量の調整を禁止する調整禁止手段とを備えることを特徴とする、モータ制御装置。
  2. 前記電動モータの回転速度が0近傍の所定値以下か否かを判定する判定手段と、
    前記電動モータに流れる電流と前記電動モータの抵抗との関係を電流−抵抗特性として保持する特性保持手段と、
    前記判定手段により前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されるときに前記電流検出手段および電圧検出手段により得られる電流検出値および電圧検出値から前記電動モータの抵抗値を算出する抵抗演算手段と、
    前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とに基づき前記電流−抵抗特性を更新する特性更新手段と、
    前記判定手段による判定結果に基づき、前記電動モータの回転速度が前記所定値以下から前記所定値よりも大きい値へと変化する時点である回転開始検出時点よりも所定時間だけ遡った時点から当該回転開始検出時点までの期間において得られる前記電流検出値および電圧検出値から算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とが前記電流−抵抗特性の更新に使用されないように、前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値の前記特性更新手段における使用を制御するパラメータ制御手段とを更に備えることを特徴とする、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 電動モータの電機子巻線に生じる逆起電力に基づき当該電動モータの回転速度の推定値を算出し、当該推定値を用いて当該電動モータを駆動するモータ制御装置であって、
    前記電動モータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
    前記電動モータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記電流検出手段により得られる電流検出値と前記電圧検出手段により得られる電圧検出値とに基づき、前記電動モータの回転速度を示す速度推定値を算出する推定値算出手段と、
    前記電流検出手段によって検出される電流に対する前記電流検出値の位相遅れ量である電流位相遅れ量と前記電圧検出手段によって検出される電圧に対する前記電圧検出値の位相遅れ量である電圧位相遅れ量との差が低減されるように、当該電流位相遅れ量と当該電圧位相遅れ量の少なくとも一方の位相遅れ量を調整する位相調整手段と、
    前記電動モータの回転速度が0近傍の所定値以下か否かを判定する判定手段と、
    前記電動モータに流れる電流と前記電動モータの抵抗との関係を電流−抵抗特性として保持する特性保持手段と、
    前記判定手段により前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されるときに前記電流検出手段および電圧検出手段により得られる電流検出値および電圧検出値から前記電動モータの抵抗値を算出する抵抗演算手段と、
    前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とに基づき前記電流−抵抗特性を更新する特性更新手段と、
    前記判定手段による判定結果に基づき、前記電動モータの回転速度が前記所定値以下から前記所定値よりも大きい値へと変化する時点である回転開始検出時点よりも所定時間だけ遡った時点から当該回転開始検出時点までの期間において得られる前記電流検出値および電圧検出値から算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値とが前記電流−抵抗特性の更新に使用されないように、前記抵抗演算手段により算出される抵抗値と当該抵抗値の算出に使用される前記電流検出値の前記特性更新手段における使用を制御するパラメータ制御手段とを備えることを特徴とする、モータ制御装置。
  4. 前記抵抗演算手段は、
    前記判定手段によって前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されているときに前記電流検出手段および電圧検出手段により電流検出値および電圧検出値が得られる毎に当該電流検出値および電圧検出値から前記電動モータの抵抗値をリアルタイム抵抗値として算出するリアルタイム算出手段と、
    前記判定手段によって前記電動モータの回転速度が前記所定値以下であると判定されているときに前記電流検出手段および電圧検出手段により順次得られる所定数または可変数の電流検出値および電圧検出値の各検出時点における当該電流検出値および電圧検出値から当該検出時点における前記電動モータの抵抗値を算出し、当該所定数または可変数の当該抵抗値についての平均値を抵抗平均値として算出すると共に、当該所定数または可変数の当該抵抗値の算出に用いた当該所定数または可変数の電流検出値についての平均値を電流平均値として算出する平均値算出手段とを含み、
    前記特性更新手段は、前記抵抗平均値および前記電流平均値に基づき前記電流−抵抗特性を更新し、
    前記推定値算出手段は、
    前記リアルタイム抵抗値と前記電流検出手段により得られる電流検出値に前記電流−抵抗特性によって対応付けられる抵抗値であるIR特性抵抗値との差が所定の閾値以下であるときには、前記リアルタイム抵抗値を用いて前記速度推定値を算出し、
    前記リアルタイム抵抗値と前記IR特性抵抗値との差が前記閾値よりも大きいときには、前記IR特性抵抗値を用いて前記速度推定値を算出することを特徴とする、請求項2または3に記載のモータ制御装置。
  5. 前記推定値算出手段は、下記の式により与えられるεthを前記閾値として使用することを特徴とする、請求項4に記載のモータ制御装置:
    εth=ωermx・k/I
    ここで、ωermxは、前記推定値算出手段によって算出されるべき速度推定値に相当する角速度の許容誤差量として予め設定された値を示し、kは、前記電動モータの逆起電力定数を示し、Iは、前記電流検出手段により得られる電流検出値を示す。
  6. 車両のステアリング機構に電動モータによって操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
    請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ制御装置を備え、
    前記モータ制御装置は、前記ステアリング機構に操舵補助力を与える電動モータを駆動することを特徴とする、電動パワーステアリング装置。
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