以下、本発明のサーマルヘッドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1〜図3に示すように、本実施形態のサーマルヘッドXは、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。
放熱体1は、平面視で長方形状を有しており、ヘッド基体3が配置される台板部1aと、放熱体1の一方の長辺(図1では右側の長辺)に沿って形成された凹部1bとを有している。この凹部1bは、図2および図3に示すように、後述する導電クリップ12の基部12Aを収容するためのものである。台板部1aの上面には、両面テープや接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。また、放熱体1は、例えば、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。
図1〜図5に示すように、ヘッド基体3は、平面視で長方形状の基板7と、基板7上に設けられ、基板7の長手方向に沿って配列された複数(図示例では24個)の発熱部9と、発熱部9の配列方向に沿って基板7上に並べて配置された複数(図示例では3個)の駆動IC11と、基板7の一方の長辺(図示例では右側の長辺)に沿って基板7に取り付けられた導電クリップ12とを備えている。なお、図4は、ヘッド基体3の平面図である。図5は、後述する第1保護層25、第2保護層27、被覆部材29および導電クリップ12の図示を省略したヘッド基体3の平面図である。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料や単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。この蓄熱層13は、基板7の上面全体に形成された下地部13aと、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状の隆起部13bとを有している。この隆起部13bは、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された後述する第1保護層25に良好に押し当てるように作用する。
また、蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドXの熱応答特性を高めるように作用する。この蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを高温で焼成することで形成される。
図2および図3に示すように、蓄熱層13の上面には、電気抵抗層15が設けられている。この電気抵抗層15は、蓄熱層13と、後述する共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23との間に介在し、図5に示すように、平面視において、これらの共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23と同形状の領域(以下、介在領域という)と、個別電極配線19と共通電極配線17との間から露出した複数の領域(以下、露出領域という)とを有している。なお、図5では、この電気抵抗層15の介在領域は、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23で隠れている。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、この複数の露出領域(発熱部9)が、図2および図5に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1、図4および図5で簡略化して記載しているが、例えば、600dpi(dot per inch)等の密度で配置される。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極配線17と個別電極配線19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1〜図6に示すように、電気抵抗層15の上面(より詳細には、上記の介在領域の上面)には、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23が設けられている。これらの共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。なお、図6は、後述する第1保護層25、第2保護層27、被覆部材29および導電クリップ12の図示を省略したヘッド基体3に、FPC5を接続した状態を示す平面図である。
共通電極配線17は、図5に示すように、基板7の一方の長辺(図5では左側の長辺)に沿って延びる主配線部17aと、基板7の一方および他方の短辺のそれぞれに沿って延び、一端部(図5では左側の端部)が主配線部17aに接続された2つの副配線部17bと、主配線部17aから各発熱部9に向かって延びる複数(図示例では24個)のリード部17cとを有している。そして、図6に示すように、副配線部17bの他端部(図6では右側の端部)がFPC5に接続されているとともに、リード部17cの先端部(図6では右側の端部)が発熱部9に接続されている。これにより、FPC5と発熱部9との間が電気的に接続されている。
個別電極配線19は、図2、図5および図6に示すように、各発熱部9と駆動IC11との間に延びており、これらの間を接続している。より詳細には、個別電極配線19は、複数の発熱部9を複数(図示例では3つ)の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
グランド電極配線21は、図5に示すように、発熱部9の配列方向に沿って、基板7の
他方の長辺(図示例では右側の長辺)の近傍で帯状に延びている。このグランド電極配線21上には、図6に示すように、FPC5および駆動IC11が接続されている。より詳細には、FPC5は、図6に示すように、グランド電極配線21の一方および他方の端部に位置する端部領域21Eに接続されている。駆動IC11は、グランド電極配線21の一方および他方の端部領域21Eの間の領域で、複数の発熱部9の各群に対応する位置に接続されている。これにより、駆動IC11とFPC5との間が電気的に接続されている。
駆動IC11は、図5および図6に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されており、個別電極配線19の一端部(図6では右側の端部)とグランド電極配線21とに接続されている。この駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、後述するように、内部に複数のスイッチング素子を有しており、各スイッチング素子がオン状態のときに通電状態となり、各スイッチング素子がオフ状態のときに不通電状態となる公知のものを用いることができる。各駆動IC11は、図2に示すように、内部のスイッチング素子(不図示)に接続されている一方(図示例では左側)の接続端子11a(以下、第1接続端子11aという)が個別電極配線19に接続されており、このスイッチング素子に接続されている他方(図示例では右側)の接続端子11b(以下、第2接続端子11b)がグランド電極配線21に接続されている。これにより、駆動IC11の各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極配線19とグランド電極配線21とが電気的に接続される。また、これにより、個別電極配線19に接続された複数の発熱部9に、グランド電極配線21が電気的に共通して接続される。
なお、図示していないが、個別電極配線19に接続された第1接続端子11aおよびグランド電極配線21に接続された第2接続端子11bは、各個別電極配線19に対応して複数個設けられている。この複数の第1接続端子11aは、各個別電極配線19に個別に接続されている。また、複数の第2接続端子11bは、グランド電極配線21に共通して接続されている。
IC制御配線23は、駆動IC11を制御するためのものであり、図5および図6に示すように、IC電源配線23aとIC信号配線23bとを備えている。IC電源配線23aは、基板7の長手方向の両端部で基板7の右側の長辺の近傍に配置された端部電源配線部23aEと、隣接する駆動IC11間に配置された中間電源配線部23aMとを有している。
図6に示すように、端部電源配線部23aEは、一端部が駆動IC11の配置領域に配置され、グランド電極配線21の周囲を回り込むようにして、他端部が基板7の右側の長辺の近傍に配置されている。この端部電源配線部23aEは、一端部が駆動IC11に接続されているとともに、他端部がFPC5に接続されている。
図6に示すように、中間電源配線部23aMは、グランド電極配線21に沿って延び、一端部が隣接する駆動IC11の一方の配置領域に配置され、他端部が隣接する駆動IC11の他方の配置領域に配置されている。この中間電源配線部23aMは、一端部が隣接する駆動IC11の一方に接続され、他端部が隣接する駆動IC11の他方に接続されている。
端部電源配線部23aEと中間電源配線部23aMとは、これらの双方が接続された駆動IC11の内部で電気的に接続されている。また、隣接する中間電源配線部23aM同士は、これらの双方が接続された駆動IC11の内部で電気的に接続されている。
このようにIC電源配線23aを各駆動IC11と接続することにより、IC電源配線23aが各駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。これにより、後述するようにFPC5から端部電源配線部23aEを介して駆動IC11に供給された電源電流を、中間電源配線部23bMを介して、隣接する駆動IC11へさらに供給するようになっている。
IC信号配線23bは、図5および図6に示すように、基板7の長手方向の両端部で基板7の右側の長辺の近傍に配置された端部信号配線部23bEと、隣接する駆動IC11間に配置された中間信号配線部23bMとを有している。
図6に示すように、端部信号配線部23bEは、端部電源配線部23aEと同様、一端部が駆動IC11の配置領域に配置され、グランド電極配線21の周囲を回り込むようにして、他端部が基板7の右側の長辺の近傍に配置されている。この端部信号配線部23bEは、一端部が駆動IC11に接続されているとともに、他端部がFPC5に接続されている。
中間信号配線部23bMは、一端部が隣接する駆動IC11の一方の配置領域に配置され、中間電源配線部23aMの周囲を回り込むようにして、他端部が隣接する駆動IC11の他方の配置領域に配置されている。この中間信号配線部23bMは、一端部が隣接する駆動IC11の一方に接続され、他端部が隣接する駆動IC11の他方に接続されている。
端部信号配線部23bEと中間信号配線部23bMとは、これらの双方が接続された駆動IC11の内部で電気的に接続されている。また、隣接する中間信号配線部23bM同士は、これらの双方が接続された駆動ICの内部で電気的に接続されている。
このようにIC信号配線23bを各駆動IC11と接続することにより、IC信号配線23bが各駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。これにより、後述するようにFPC5から端部信号配線部23bEを介して駆動IC11に伝送された制御信号を、中間信号配線部23bMを介して、隣接する駆動IC11へさらに伝送するようになっている。
上記の電気抵抗層15、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、この積層体を従来周知のフォトリソグラフィー技術やエッチング技術等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23は、同じ工程によって同時に形成することができる。
図1〜図4に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極配線17の一部および個別電極配線19の一部を被覆する第1保護層25が形成されている。図示例では、この第1保護層25は、蓄熱層13の上面の略左半分の領域を覆うように設けられている。この第1保護層25は、発熱部9、共通電極配線17および個別電極配線19を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食や、印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。この第1保護層25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。また、この第1保護層25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術や、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。なお、この第1保護層25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。
また、図1〜図4に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23を部分的に被覆する第2保護層27が設けられている。図示例では、この第2保護層27は、蓄熱層13の上面の略右半分の領域を部分的に覆うように設けられている。第2保護層27は、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23の被覆した領域を、大気との接触による酸化や、大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。なお、第2保護層27は、共通電極配線17、個別電極配線19およびIC制御配線23の保護をより確実にするため、図2に示すように第1保護層25の端部に重なるようにして形成されている。第2保護層27は、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、この第2保護層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
なお、図1および図2に示すように、後述するFPC5を接続する共通電極配線17、グランド電極配線21およびIC制御配線23の端部と、後述する導電クリップ12の第1接触部12Bを接続するグランド電極配線21の領域とは、第2保護層27から露出しており、後述するようにFPC5および導電クリップ12がそれぞれ接続されるようになっている。
また、第2保護層27には、駆動IC11を接続する個別電極配線19の端部、複数の発熱部9の各群に対応する駆動IC11が配置されるグランド電極配線21上の領域、およびIC制御配線23の端部を露出させるための開口部27a(図2参照)が形成されており、この開口部27aを介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23に接続された状態で、駆動IC11自体の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続部の保護のため、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることで封止されている。
導電クリップ12は、図1〜図4に示すように、帯状に延びたグランド電極配線21に沿って延びる基部12Aと、グランド電極配線21に沿って配置された複数(図示例では6個)の第1接触部12Bとを有している。具体的には、本実施形態では、第1接触部12Bが、図1に示すように、グランド電極配線21の一方および他方の端部にそれぞれ接続されたFPC5とこれらのFPC5に隣接する駆動IC11との間の領域にそれぞれ1つずつ配置されているとともに、隣接する駆動IC11の間の領域に2つずつ配置されている。このように複数の第1接触部12Bを配置することにより、本実施形態では、グランド電極配線21とFPC5のプリント配線との接続部からのグランド電極配線21上の距離が離れるほど、第1接触部12Bの配置密度が高くなっている。
図7は、導電クリップ12の三面図である。図7に示すように、基部12Aは、板状であり、平面視で長方形状に形成されている。第1接触部12Bは、板状であり、基部12Aの長手方向の両端部に2つ配置され、中間部に4つ配置されるとともに、基部12Aに対向して配置されている。なお、第1接触部12Bは、後述するように導電クリップ12がグランド電極配線21に取り付けられたときに、グランド電極配線21上の上記の所定の領域に配置されるようになっている。
また、複数の第1接触部12Bは、互いに同じ形状に形成されている。より詳細には、図7に示すように、本実施形態の第1接触部12Bは、正面視で下方へ凸形状となるように屈曲している。そして、後述するように導電クリップ12がグランド電極配線21に取り付けられたときに、この第1接触部12Bの屈曲部分(凸形状の頂部)がグランド電極配線21に当接されるようになっている。これにより、複数の第1接触部12Bの各々は
、同じ接触面積でグランド電極配線21と接触するようになっている。なお、本発明において、複数の第1接触部が同じ接触面積で電極配線の帯状部と接触しているとは、実質的に同じ接触面積で電極配線の帯状部と接触していることも含んでおり、例えば、本実施形態では、複数の第1接触部12Bのグランド電極配線21との接触面積の平均値に対して±10%以内の面積で、各第1接触部12Bがグランド電極配線21と接触していることも含んでいる。
また、第1接触部12Bと基部12Aとの間には結合部12Cが延びており、この結合部12Cによって第1接触部12Bと基部12Aとが結合されている。これにより、基部12A、第1接触部12Bおよび結合部12Cが一体化され、導電クリップ12が形成されている。この導電クリップ12は、導電性および弾性を有する材料で形成されており、例えば、銅、アルミニウム等の金属板をプレス加工することによって形成されている。
また、導電クリップ12の基部12Aと第1接触部12B(より詳細には屈曲部分)との間の隙間の大きさL(図7参照)は、基板7とこの基板7上に形成されたグランド電極配線21との厚さを足した厚さより若干小さくなっている。これにより、導電クリップ12は、図1〜図4に示すように、第1接触部12Bが基板7上のグランド電極配線21に接触し、基部12Aが基板7の下面に接触するようにして、基部12Aと第1接触部12Bとで、基板7およびこの基板7の上面に形成されたグランド電極配線21を挟み込むことによって、基板7およびグランド電極配線21を一括して把持するようになっている。こうすることで、導電クリップ12は、第1接触部12Bに撓みが生じた状態で基板7およびグランド電極配線21を一括して把持することにより、基板7上のグランド電極配線21に着脱自在に取り付けられるようになっている。また、上記のように導電クリップ12がグランド電極配線21に接触して設けられているため、導電クリップ12がグランド電極配線21と電気的に接続され、これらが協働して、グランド電極配線21が延びている方向に沿って延びる導電体を形成している。
なお、本実施形態では、導電クリップ12が本発明における導電部材に相当する。また、本実施形態では、導電クリップ12の基部12Aが、本発明における基部と第2接触部とを兼ねている。また、本実施形態では、この本発明の第2接触部を兼ねる基部12Aと第1接触部12Bとによって、本発明の把持部を構成している。
FPC5は、図6に示すように、上記のように共通電極配線17、グランド電極配線21およびIC制御配線23に接続されている。このFPC5は、絶縁性の樹脂層の内部に複数のプリント配線が配線された周知のものであり、各プリント配線が図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。
より詳細には、FPC5は、内部に形成された各プリント配線が、図示しない導電性接合材、例えば、半田材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電材料(ACF)等によって、共通電極配線17の副配線部17bの端部、グランド電極配線21の端部およびIC制御配線23の端部に接続されている。そして、各プリント配線が、図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、共通電極配線17は、正電位(例えば20V〜24V)に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続され、個別電極配線19は、グランド電位(例えば0V〜1V)に保持された電源装置のマイナス側端子に電気的に接続されるようになっている。そのため、駆動IC11のスイッチング素子がオン状態のとき、発熱部9に電流が供給され、発熱部9が発熱するようになっている。
また、FPC5のプリント配線が、図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、IC制御配線23のIC電源配線23aは、共通電極配線17と同様
、正電位に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続されるようになっている。これにより、駆動IC11が接続されたIC電源配線23aとグランド電極配線21との電位差によって、駆動IC11に駆動IC11を動作させるための電流が供給される。また、IC制御配線23のIC信号配線23bは、駆動IC11の制御を行う制御装置に電気的に接続される。これにより、制御装置からの制御信号が端部信号配線部23bEを介して駆動IC11に伝送され、この駆動IC11に伝送された制御信号が中間信号配線部23bMを介して、隣接する駆動ICにさらに伝送される。この制御信号によって、各駆動IC11内のスイッチング素子のオン・オフ状態を制御することで、発熱部9を選択的に発熱させることができる。
また、サーマルヘッドXを適用してサーマルプリンタを構成する場合は、印画する記録媒体の搬送方向に対して、複数の発熱部9の配列方向が直交するようにサーマルヘッドXを配置する。また、この記録媒体の搬送方向に直交する方向が主走査方向となる。
本実施形態のサーマルヘッドXによれば、グランド電極配線21に沿って配置された導電クリップ12の複数の第1接触部12Bが、グランド電極配線21に接触して設けられており、導電クリップ12がグランド電極配線21と協働して、グランド電極配線21が延びている方向に延びる導電体を形成している。そのため、グランド電極配線21の内部抵抗を低下させることができ、グランド電極配線21における電圧降下を低減することができる。そのため、グランド電極配線21に電気的に共通に接続された複数の発熱部9に供給される電流の大きさをより均一にすることができ、各発熱部9での発熱温度の均一性を向上させることができる。その結果、本実施形態のサーマルヘッドXによる印画の濃度ムラを抑制することができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドXによれば、導電クリップ12の第1接触部12Bをグランド電極配線21に接触させ、導電クリップ12の基部12Aと第1接触部12Bとによって基板7およびグランド電極配線21を一括して把持するように構成されている。こうすることで、導電クリップ12の基部12Aは、グランド電極配線21が設けられている側とは反対側の基板7の面上に配置される。そのため、導電クリップ12が基板7の側面から突出する量を小さくしてサーマルヘッドXの小型化を図りつつ、グランド電極配線21での電圧降下を低減することができる。
また、このように導電クリップ12を用いてグランド電極配線21における電圧降下を低減することができるため、従来例のように、FPC5(プリント配線板)に、複数の発熱部9の一端をグランド電位に電気的に接続するための広い線幅を有するプリント配線を設ける必要がない。そのため、本実施形態のサーマルヘッドXによれば、FPC5を小型化することができ、ひいてはサーマルヘッドXの小型化にも寄与することができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドXによれば、導電クリップ12の複数の第1接触部12Bがグランド電極配線21に接触しており、グランド電極配線21とFPC5のプリント配線との接続部からのグランド電極配線21上の距離が離れるほど、第1接触部12Bの配置密度が高くなっている。帯状に延びるグランド電極配線21では、FPC5のプリント配線との接続部からのグランド電極配線21上の距離が遠くなるほど、電圧降下が大きくなる。これに対し、本実施形態では、このようにグランド電極配線21とプリント配線との接続部からのグランド電極配線21上の距離が離れるほど、第1接触部12Bの配置密度が高くなるように導電クリップ12が形成されている。そのため、このグランド電極配線21とプリント配線との接続部からのグランド電極配線21上の距離が遠くなるほど、グランド電極配線21と導電クリップ12との接触面積が大きくなり、内部抵抗が小さくなる。これにより、グランド電極配線21における電圧降下をより効果的に低減し、各発熱部9に供給される電流の大きさをより均一化することができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドXによれば、導電クリップ12がグランド電極配線21に着脱自在に取り付けられている。そのため、基板7上に設けられたグランド電極配線21の厚みや大きさの製造誤差に起因して、複数のサーマルヘッドX間でグランド電極配線21における電圧降下の大きさがばらつく場合に、その電圧降下の大きさに応じて、第1接触部12Bの大きさが異なる複数種類の導電クリップ12を付け替えることで、複数のサーマルヘッドX間でのこの電圧降下の大きさのばらつきを補正することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態のサーマルヘッドXでは、図1に示すように、導電クリップ12が第1接触部12Bを6つ有しているが、グランド電極配線21とFPC5のプリント配線との接続部からのグランド電極配線21上の距離が離れるほど、第1接触部12Bの配置密度が高くなっている限り、これに限定されるものではなく、例えば、グランド電極配線21上に設けられる駆動IC11の配置位置や配置数等に応じて、任意の数の第1接触部12Bを有していてもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドXでは、FPC5のプリント配線が、グランド電極配線21の端部領域21Eに接続されているが、グランド電極配線21上の接続領域はこれに限定されるものではなく、グランド電極配線21上の任意の領域に接続されていてもよい。なお、この場合は、グランド電極配線21上にプリント配線を接続するためのスペースができるように、グランド電極配線21の引き回しや、グランド電極配線21上に配置される駆動IC11等の配置位置を適宜変更する。また、この場合も、上記のようにグランド電極配線21での電圧降下はプリント配線との接続部から離れるにつれて大きくなるため、このプリント配線が接続された領域からのグランド電極配線21上の距離が離れるほど、第1接触部12Bの配置密度が高くなるように第1接触部12Bを配置する。
また、例えば、上記実施形態のサーマルヘッドXにおいて、図8に示すように、基板7の裏面(グランド電極配線21が設けられている側とは反対側の基板7の面)上に、帯状のグランド電極配線21に沿って延びる導電層30を形成し、導電クリップ12の基部12Aがこの導電層30に接触するように、サーマルヘッドXを構成してもよい。こうすることで、グランド電極配線21と共に、導電クリップ12およびこの導電層30が協働して、グランド電極配線21が延びている方向に延びる導電体を形成することができる。これにより、グランド電極配線21の内部抵抗をより低下させることができ、グランド電極配線21における電圧降下をさらに低減することができる。なお、図8に示すサーマルヘッドXでは、長方形状の基板7の裏面の全体に導電層30が形成されることで、導電層30がグランド電極配線21が延びる方向に沿って形成されている。また、この導電層30は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、銅等の金属によって形成することができる。
また、図1〜図4および図7に示す導電クリップ12は、基部12Aが、本発明における基部と第2接触部とを兼ねるように構成されているが、例えば、図9に示すように導電クリップ12を構成することによって、本発明における基部と第2接触部とをそれぞれ独立させて構成することができる。図9は、導電クリップ12の三面図である。具体的には、図9に示す導電クリップ12は、帯状に延びる基部12Aと、互いに対向して配置された第1接触部12Bおよび第2接触部12Dとを有している。第1接触部12Bおよび第2接触部12Dは、基部12Aの長手方向に沿って複数配置されているとともに、基部12Aによって結合されている。これにより、基部12A、第1接触部12Bおよび第2接触部12Dが一体化され、導電クリップ12を形成している。この図10に示す導電クリ
ップ12は、第1接触部12Bおよび第2接触部12Dによって、図示しないが、図1および図3に示す導電クリップ12と同様、基板7およびグランド電極配線21を一括して把持するようになっている。
また、図1〜図3に示すサーマルヘッドXでは、帯状に延びるグランド電極配線21に対して導電クリップ12が取り付けられているが、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延びる帯状部を有しており、この帯状部が複数の発熱部9に電気的に共通して接続される電極配線に対して、この導電クリップ12が取り付けられている限り、これに限定されるものではない。したがって、図10に示すように、導電クリップ12を共通電極配線17の主配線部17a(帯状部)に対して取り付けてもよい。なお、この場合、図示しないが、導電クリップ12の第1接触部12Bが第1保護層25を貫通することで導電クリップ12と共通電極配線17とが電気的に接続される。この場合も、導電クリップ12をグランド電極配線21に取り付けた場合と同様、帯状に延びる主配線部17a(帯状部)での電圧降下を低減し、この主配線部17aに電気的に共通に接続された複数の発熱部9へ供給される電流の大きさの均一性を向上させることができる。
また、図1〜図3に示すサーマルヘッドXでは、FPC5を介してヘッド基体3の基板7上に設けられた各種配線を外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続しているが、これに限定されるものではなく、例えば、FPC5のように可撓性を有するフレキシブルプリント配線板ではなく、硬質のプリント配線板を介してヘッド基体3の各種配線を外部の電源装置等に電気的に接続してもよい。この場合、例えば、ヘッド基体3の各種配線とプリント配線板のプリント配線とをワイヤーボンディング等によって接続すればよい。