JP5489435B2 - 薄膜電界効果型トランジスタ - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜電界効果型トランジスタに関する。特に活性層にアモルファス酸化物半導体を用いた薄膜電界効果型トランジスタに関する。
液晶やエレクトロルミネッセンス(ElectroLuminescence:EL)技術等の進歩により、平面薄型画像表示装置(Flat Panel Display:FPD)が実用化されている。特に、電流を通じることによって励起され発光する薄膜材料を用いた有機電界発光素子(以後、「有機EL素子」と記載する場合がある)は、低電圧で高輝度の発光が得られるために、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で、デバイスの薄型化、軽量化、小型化、および省電力のなどの効果が期待されている。
これらFPDは、ガラス基板上に設けた非晶質シリコン薄膜や多結晶シリコン薄膜を活性層に用いる電界効果型薄膜トランジスタ(以後の説明で、Thin Film Transistor、もしくはTFTと記載する場合がある)のアクティブマトリクス回路により駆動されている。
一方、これらFPDのより一層の薄型化、軽量化、耐破損性の向上を求めて、ガラス基板の替わりに軽量で可撓性のある樹脂基板を用いる試みも行われている。
しかし、上述のシリコン薄膜を用いるトランジスタの製造は、比較的高温の熱工程を要し、一般的に耐熱性の低い樹脂基板上に直接形成することは困難である。
近年、アモルファス酸化物、例えば、In−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物は低温での成膜が可能であり、プラスチックフィルム上に室温成膜可能であること、さらに、可視光に透明であるためにフレキシブルな透明TFTを形成することができる材料として注目されている。
しかしながら、In−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物半導体を用いたTFTは、環境の真空度、水分やガス成分などによってTFT性能が変動する不安定さが指摘され、アモルファス酸化物半導体層の表面を保護膜で被覆することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。保護膜としては、金属元素を含む金属酸化物膜、シリコンの窒化物、酸化物、若しくは炭化物、又はポリイミド樹脂やフッ化シリコーン樹脂などの有機物膜が開示されている。有機物膜と金属膜との積層構成も開示されている。
酸化物半導体TFTは、酸化物半導体が非フッ素化樹脂(エポキシやアクリル樹脂等)に接触すると、TFTの閾値電圧が−30V程度ずれる現象が指摘され、この閾値の変動が酸化物半導体層の上に酸化窒化シリコンなどの無機化合物層を設置するかまたはフッ素化樹脂の層を設置することにより解決されることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、有機半導体薄膜を用いたTFTにおいては、有機半導体薄膜を物理的損傷から保護するためにポリビニルアルコールを保護層として溶液に溶かして塗布することが知られている。この時、保護層塗布の際、有機半導体薄膜の電気特性が溶媒により劣化することを防止するために、有機半導体薄膜の上に緩衝層として低分子化合物をスパッタリングにより設置し、その後にポリビニルアルコール溶液を塗布することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2007−73705号公報 特開2007−299913号公報 特開2005−159360号公報
本発明の目的は、アモルファス酸化物半導体を用いたTFTを提供することにあり、特に、安定した性能のTFTを提供することにある。
アモルファス酸化物半導体を活性層に用いたTFTにおいて、活性層の上にSiO2等の無機酸化物よりなる保護膜を形成するとTFT特性が大きく変化してしまうという問題が明らかになった。保護膜の真空蒸着する条件によって、TFT特性が変動するため安定したTFTが得られない。アモルファス酸化物半導体層の上に、特許文献1に記載のようなポリイミド樹脂やフッ化シリコーン樹脂などの有機物膜を設けると無機酸化物保護膜を形成する際の影響が緩和されるが、これらの樹脂塗布液の不純物の影響と推測される性能劣化が生じてしまうという課題がある。これらの特性変動及び性能劣化は、アモルファス酸化物半導体に特有の課題である。本発明者らは、上記状況に鑑みて、これらの弊害のない保護層を見出し、安定した性能のTFTを提供することを目的とした。
本発明の上記課題は下記の手段によって解決された。
<1> 基板上に、アモルファス酸化物半導体層を有する薄膜電界効果型トランジスタであって、前記アモルファス酸化物半導体層の上に後述の化合物(a)〜()から選択される少なくとも1種の低分子有機物からなる保護層を有し、前記アモルファス酸化物半導体層と前記保護層とが直接接していることを特徴とする薄膜電界効果型トランジスタ。
2> 前記アモルファス酸化物半導体が、In、Sn、Zn、及びCdより選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物である<1>に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
> 前記アモルファス酸化物半導体が、In及びZnを含む酸化物である<>に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
> 前記アモルファス酸化物半導体が、In、Zn及びGaを含む酸化物である<>に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
> 前記基板と前記アモルファス酸化物半導体層との間にゲート電極及びゲート絶縁膜を有するボトムゲート構造を有する<1>〜<>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
> 前記保護層のキャリア濃度が1016/cm以下である<1>〜<>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
> 前記保護層の厚みが5nm〜50μmである<1>〜<>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
> 前記低分子有機物のガラス転移点が80℃以上である<1>〜<>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
> 前記低分子有機物が、アダマンタン化合物である<1>〜<>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
<1> 前記保護層が真空蒸着法により形成された層である<1>〜<>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
<1> 前記保護層の上に、無機化合物よりなる保護絶縁層を有する<1>〜<1>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
<1> 前記保護絶縁層が真空蒸着法により形成された層である<1>に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
<1> 前記保護層と前記保護絶縁層が直接接している<1>又は<1>に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
<1> 前記基板がフレキシブル基板である<1>〜<1>のいずれか1つに記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
本発明によると、安定した特性のTFTが提供される。
本発明に拠れば、低分子有機物からなる保護膜はTFT特性に影響を与えずに活性層上に形成できる。低分子有機膜を真空蒸着法により成膜できるので、樹脂の塗布と比べて樹脂中や塗布プロセスによる不純物が混入することがなく、さらに簡便に成膜ができる。また、従来、アモルファス酸化物半導体層の上に直接プラズマ照射するとアモルファス酸化物半導体層から酸素原子が抜けるため、TFTの閾値電圧がマイナス側にシフトする特有の問題があったが、本発明による低分子有機物からなる保護膜はこれを防止することが見出された。従って、SiO等の無機酸化物層をプラズマで形成してもTFT特性が変化することがなく、安定した性能のTFTが提供される。さらに、フッ素化樹脂を保護層に用いた場合は、その上に無機酸化物層を設けても、保護層との密着力が弱く、剥離してしまうが、本発明の低分子有機物からなる保護膜上にSiO等の無機酸化物層を容易に設置することができ、且つ該保護膜と該無機酸化物層との間の密着力が強固に形成される。
1.薄膜電界効果型トランジスタ(TFT)
TFTは、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極及びドレイン電極を順次有し、ゲート電極に電圧を印加して、活性層に流れる電流を制御し、ソース電極とドレイン電極間の電流をスイッチングする機能を有するアクテイブ素子である。TFT構造として、スタガ構造(トップゲート型)及び逆スタガ構造(ボトムゲート型)のいずれをも形成することができる。好ましくは、逆スタガ構造(ボトムゲート型)である。
本発明のTFTは、基板上に、アモルファス酸化物半導体層を有する薄膜電界効果型トランジスタであって、前記アモルファス酸化物半導体層の上に後述の化合物(a)〜()から選択される少なくとも1種の低分子有機物からなる保護層を有し、前記アモルファス酸化物半導体層と前記保護層とが直接接していることを特徴とする。
好ましくは、低分子有機物の分子量100〜3000であり、より好ましくは、
200〜2500、さらに好ましくは、300〜2000である。
好ましくは、低分子有機物を含有する保護層の厚みは、5nm〜50μmであり、より好ましくは、10nm〜1μm、さらに好ましくは、20nm〜500nmである。
好ましくは、低分子有機物のガラス転移点が80℃以上であり、より好ましくは、
100℃〜500℃、さらに好ましくは、120℃〜500℃である。
好ましくは、低分子有機物を含有する保護層のキャリア濃度が1016/cm以下であり、より好ましくは、1015/cm以下である。
好ましくは、低分子有機物を含有する保護層が真空蒸着法により形成された層である。
好ましくは、アモルファス酸化物半導体が、In、Sn、Zn、及びCdより選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物であり、より好ましくは、In及びZnを含む酸化物であり、さらに好ましくは、In、Zn及びGaを含む酸化物である。
好ましくは、低分子有機物を含有する保護層の上に、無機化合物よりなる保護絶縁層を有する。好ましくは、保護層と保護絶縁層が直接接している。好ましくは、低分子有機物を含有する保護層及び保護絶縁層が真空蒸着法により形成された層である。
好ましくは、本発明のTFTは、基板とアモルファス酸化物半導体層との間にゲート電極及びゲート絶縁膜を有するボトムゲート構造を有するTFTである。
好ましくは、基板がフレキシブル基板である。
本発明のTFTについてさらに詳細に説明する。
1)活性層
本発明の活性層に用いられるアモルファス酸化物は、低温で成膜可能である為に、プラスティックのような可撓性のある樹脂基板に作製が可能である。
本発明の活性層に用いられるアモルファス酸化物は、好ましくはIn、Sn、Zn、又はCdを含む酸化物であり、より好ましくは、In、Sn、Znを含む酸化物、さらに好ましくは、In、Znを含む酸化物である。本発明における活性層の電気伝導度は、特に限定されないが、電気伝導度10−10S/cm以上10+1S/cm以下であり、より好ましくは、10−7S/cm以上10−3S/cm以下である。
具体的に本発明の活性層に係るアモルファス酸化物は、In、ZnO,SnO、CdO,Indium−Zinc−Oxide(IZO)、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Gallium−Zinc−Oxide(GZO)、Indium−Gallium−Oxide(IGO)、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)である。
<キャリア濃度>
本発明における活性層のキャリア濃度は、種々の手段により所望の数値に調整することができる。
本発明における活性層のキャリア濃度は、特に限定されないが、好ましくは1×1015/cm以上の高い領域である。より好ましくは、1×1015/cm以上1×1021/cm以下である。
キャリア濃度の調整手段としては、下記の手段を挙げることが出来る。
(1)酸素欠陥による調整
酸化物半導体において、酸素欠陥ができると、活性層のキャリア濃度が増加し、電気伝導度が大きくなることが知られている。よって、酸素欠陥量を調整することにより、酸化物半導体のキャリア濃度を制御することが可能である。酸素欠陥量を制御する具体的な方法としては、成膜中の酸素分圧、成膜後の後処理時の酸素濃度と処理時間等がある。ここでいう後処理とは、具体的に100℃以上の熱処理、酸素プラズマ、UVオゾン処理がある。これらの方法の中でも、生産性の観点から成膜中の酸素分圧を制御する方法が好ましい。成膜中の酸素分圧を調整することにより、酸化物半導体のキャリア濃度の制御ができる。
(2)組成比による調整
酸化物半導体の金属組成比を変えることにより、キャリア濃度が変化することが知られている。例えば、例えば、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)であれば、Inの比率を大きくすれば、それに伴って活性層のキャリア濃度も大きくなり、Gaの比率を大きくすると、それに伴って活性層のキャリア濃度も小さくなる。
これら組成比を変える具体的な方法としては、例えば、スパッタによる成膜方法においては、組成比が異なるターゲットを用いる。または、多元のターゲットにより、共スパッタし、そのスパッタレートを個別に調整することにより、膜の組成比を変えることが可能である。
(3)不純物による調整
酸化物半導体に、Li,Na,Mn,Ni,Pd,Cu,Cd,C,N,又はP等の元素を不純物として添加することによりキャリア濃度を減少させることが可能である。不純物を添加する方法としては、酸化物半導体と不純物元素とを共蒸着により行う、成膜された酸化物半導体膜に不純物元素のイオンをイオンドープ法により行う等がある。
(4)酸化物半導体材料による調整
上記(1)〜(3)においては、同一酸化物半導体系でのキャリア濃度の調整方法を述べたが、もちろん酸化物半導体材料を変えることにより、キャリア濃度を変えることができる。例えば、一般的にSnO系酸化物半導体は、In系酸化物半導体に比べてキャリア濃度が小さいことが知られている。このように酸化物半導体材料を変えることにより、キャリア濃度の調整が可能である。
キャリア濃度を調整する手段としては、上記(1)〜(4)の方法を単独に用いても良いし、組み合わせても良い。
<活性層の形成方法>
活性層の成膜方法は、酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが良い。気相成膜法の中でも、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD法)が適している。さらに、量産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。
例えば、RFマグネトロンスパッタリング蒸着法により、真空度及び酸素流量を制御して成膜される。酸素流量が多いほど電気伝導度を小さくすることができる。
成膜した膜は、周知のX線回折法によりアモルファス膜であることが確認できる。組成比は、RBS(ラザフォード後方散乱)分析法により求めることができる。
<活性層の膜厚>
本発明に於ける活性層の厚みは、好ましくは、0.1nm以上100nm以下である。
より好ましくは、1.0nm以上50nm以下、さらに好ましくは、2nm以上10nm以下である。
本発明に於ける活性層の膜厚は、作製した素子断面のHRTEM(High Resolution TEM)写真撮影により測定することができる。
2)保護層
本発明に於いては、アモルファス酸化物半導体層の上に低分子有機物からなる保護層を有する。
本発明に於ける低分子有機物は、分子量100〜3000であり、より好ましくは、
200〜2500、さらに好ましくは、300〜2000である。
本発明に用いられる低分子有機物としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、アダマンタン化合物、シラン化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムやフタロシアニン等の金属錯体、等が挙げられる。具体的な化合物を以下に例示する。
本発明の保護層は封止性、絶縁性を高くするために膜安定性が高い方が好ましく、このため本発明に用いられる低分子有機物は、好ましくは、ガラス転移点が80℃以上であり、より好ましくは、100℃〜500℃、さらに好ましくは、120℃〜500℃である。
本発明の保護層は絶縁性が高い方が好ましく、このため好ましくは、低分子有機物を含有する保護層のキャリア濃度が1016/cm以下であり、より好ましくは、1015/cm以下である。
好ましくは、低分子有機物を含有する保護層の厚みは、5nm〜50μmであり、より好ましくは、10nm〜1μm、さらに好ましくは、20nm〜500nmである。
好ましくは、低分子有機物を含有する保護層が真空蒸着法により形成された層である。
3)保護絶縁層
本発明に於いては、保護層の上に、無機化合物よりなる保護絶縁層を配置することが好ましい。保護層と保護絶縁層は直接接しているのが好ましい。
保護層と保護絶縁層の積層構成により、絶縁性の向上と外気に対する封止性能が向上する効果が得られる。
保護絶縁膜材料の具体例としては、SiO、SiO、MgO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、又はTiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、又はCaF等の金属フッ化物等が挙げられる。
本発明の保護絶縁膜は、好ましくは真空蒸着法により形成された層である。
本発明に於ける保護絶縁膜の厚みは、好ましくは、5nm以上50μm以下である。より好ましくは、10nm以上1μm以下、さらに好ましくは、20nm以上500nm以下である。
4)ゲート電極
本発明におけるゲート電極としては、例えば、Al、Mo、Cr、Ta、Ti、Au、又はAg等の金属、Al−Nd、APC等の合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられる。
ゲート電極の厚みは、好ましくは、10nm以上1000nm以下である。より好ましくは、20nm以上500nm以下、さらに好ましくは、40nm以上100nm以下である。
ゲート電極の成膜法は特に限定されることはなく、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、ITOを選択する場合には、直流あるいは高周波スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。またゲート電極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式製膜法に従って行うことができる。
5)ゲート絶縁膜
ゲート絶縁膜としては、SiO、SiN、SiON、Al、Y、Ta、又はHfO等の絶縁体、又はそれらの化合物を少なくとも二つ以上含む混晶化合物が用いられる。また、ポリイミドのような高分子絶縁体もゲート絶縁膜として用いることができる。
ゲート絶縁膜の膜厚としては、好ましくは、10nm以上1000nm以下である。より好ましくは、50nm以上500nm以下、さらに好ましくは、100nm以上200nm以下である。ゲート絶縁膜はリーク電流を減らす、電圧耐性を上げる為に、ある程度膜厚を厚くする必要がある。しかし、ゲート絶縁膜の膜厚を厚くすると、TFTの駆動電圧の上昇を招く結果となる。その為、ゲート絶縁膜の膜厚は無機絶縁体だと50nm〜1000nm、高分子絶縁体だと0.5μm〜5μmで用いられることが、より好ましい。
特に、HfOのような高誘電率絶縁体をゲート絶縁膜に用いると、膜厚を厚くしても、低電圧でのTFT駆動が可能であるので、特に好ましい。
6)ソース電極及びドレイン電極
本発明におけるソース電極及びドレイン電極材料として、例えば、Al、Mo、Cr、Ta、Ti、Au、又はAg等の金属、Al−Nd、APC等の合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられる。特に好ましくは、IZOである。
ソース電極及びドレイン電極の厚みは、好ましくは、10nm以上1000nm以下である。より好ましくは、20nm以上500nm以下、さらに好ましくは、40nm以上100nm以下である。
ソース電極及びドレイン電極の製膜法は特に限定されることはなく、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、ITOを選択する場合には、直流あるいは高周波スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。またソース電極及びドレイン電極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式製膜法に従って行うことができる。
7)基板
本発明に用いられる基板は特に限定されることはなく、例えばYSZ(ジルコニア安定化イットリウム)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、及びポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の合成樹脂等の有機材料、などが挙げられる。前記有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、又は低吸湿性等に優れていることが好ましい。
本発明においては特に可撓性基板が好ましく用いられる。可撓性基板に用いる材料としては、光透過率の高い有機プラスチックフィルムが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、又はポリ(クロロトリフルオロエチレン)等のプラスティックフィルムを用いることができる。また、フィルム状プラスティック基板には、絶縁性が不十分の場合は絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、フィルム状プラスティック基板の平坦性や電極や活性層との密着性を向上するためのアンダーコート層等を備えることも好ましい。
ここで、可撓性基板の厚みは、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。
これは、可撓性基板の厚みを50μm未満とした場合には、基板自体が十分な平坦性を保持することが難しいためである。また、可撓性基板の厚みを500μmよりも厚くした場合には、基板自体を自由に曲げることが困難になる、すなわち基板自体の可撓性が乏しくなるためである。
8)平坦化層
本発明のTFTは、平坦化層を有しても良い。
平坦化層としては、無機絶縁材料であっても有機絶縁材料であっても良い。
無機絶縁材料としては、SiO、SiO、MgO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、又はTiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、又はCaF等の金属フッ化物等が挙げられる。
有機絶縁材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体等が挙げられる。
本発明に於ける平坦化層の厚みは、好ましくは、5nm以上50μm以下である。より好ましくは、10nm以上1μm以下、さらに好ましくは、20nm以上500nm以下である。
9)構造
次に、図面を用いて、詳細に本発明におけるTFTの構造を説明する。
図1は、本発明のTFTの一例を示す断面模式図である。基板1がプラスチックフィルムなどの可撓性基板の場合、基板1の少なくとも一方の面に絶縁層6を配し、その上にゲート電極2、ゲート絶縁膜3、アモルファス酸化物半導体よりなる活性層4を積層して有し、その上にパターン化されたソース電極5−1とドレイン電極5−2が設置される。該活性層4の表面及び該ソース電極5−1とドレイン電極5−2を被覆して本願の低分子化合物よりなる保護層7が設置される。
本構成では、活性層の表面の一部はソース電極、ドレイン電極で被覆され、これらが存在しない領域は保護層によって被覆される。従って、この後、プラズマ照射工程や、封止のための樹脂溶液の塗布等の工程に曝されても、TFT特性が影響されることがなく、安定に保たれる。
図2は、本発明のTFTの別の態様を示す断面模式図である。基板1がプラスチックフィルムなどの可撓性基板の場合、基板1の少なくとも一方の面に絶縁層6を配し、その上にゲート電極2、ゲート絶縁膜3、アモルファス酸化物半導体よりなる活性層4を積層して有し、その上にパターン化されたソース電極5−1とドレイン電極5−2が設置される。該活性層4の表面及び該ソース電極5−1とドレイン電極5−2を被覆して本願の低分子化合物よりなる保護層17及びSiO等の無機化合物よりなる保護絶縁層8が設置される。
本構成では、活性層の表面の一部はソース電極、ドレイン電極で被覆され、これらが存在しない領域は保護層及び保護絶縁層によって被覆される。従って、この後、プラズマ照射工程や、封止のための樹脂溶液の塗布等の工程に曝されても、水分やガス成分に曝されても、TFT特性が影響されることがなく、安定に保たれる。
2.表示装置
本発明の電界効果型薄膜トランジスタは、液晶やEL素子を用いた画像表示装置、特に平面薄型表示装置(Flat Panel Display:FPD)に好ましく用いられる。より好ましくは、基板に有機プラスチックフィルムのような可撓性基板を用いたフレキシブル表示装置に用いられる。特に、本発明の電界効果型薄膜トランジスタは、移動度が高いことから有機EL素子を用いた表示装置、フレキシブル有機EL表示装置に最も好ましく用いられる。
(応用)
本発明のTFTは、液晶やEL素子を用いた画像表示装置、特にFPDのスイッチング素子、駆動素子として用いることができる。特に、フレキシブルFPD装置のスイッチング素子、駆動素子として用いるのが適している。さらに本発明の電界効果型薄膜トランジスタを用いた表示装置は、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む幅広い分野で応用される。
また、本発明のTFTは、表示装置以外にも、有機プラスチックフィルムのような可撓性基板上に本発明の電界効果型薄膜トランジスタを形成し、ICカードやIDタグなどに幅広く応用が可能である。
以下に、本発明の薄膜電界効果型トランジスタについて、実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
1.TFT素子の作製
1)本発明のTFT素子1の作製
図1に示す構成のTFTを下記により作製した。
基板としては、無アルカリガラス板を用いて、洗浄後、DCマグネトロンスパッタリング蒸着法により、ゲート電極としてMo薄膜(厚み40nm)を形成した。Mo薄膜のパターニングには、フォトリソソグラフィー法でパターニングを行った。
ゲート絶縁膜:SiOをRFマグネトロンスパッタ真空蒸着法にて厚み100nmに設けた。ゲート絶縁膜SiOのパターニングには、スパッタ時にシャドウマスクを用いることにより行った。
活性層:InGaZnOの組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、RFマグネトロンスパッタ真空蒸着法により、50nmのIGZO膜を形成した。
活性層のパターニングは、スパッタ時にシャドウマスクを用いることにより行った。
次いで、上記障壁層の上にパターニングされたソース電極及びドレイン電極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚みに抵抗加熱蒸着(成膜温度:25℃)にて、蒸着した。ソース電極及びドレイン電極のパターニングはスパッタ時にシャドウマスクを用いることにより行った。
保護層:本発明の低分子有機物の化合物(a)を真空蒸着法により、厚み50nmに形成した。
2)本発明のTFT素子2の作製
本発明のTFT素子1の作製において、保護層を形成した後に以下に示す保護絶縁膜を設け、その他はTFT素子1の作製と全く同様にして、本発明のTFT素子2を作製した。
保護絶縁膜:SiOをRFマグネトロンスパッタ真空蒸着法にて厚み100nmに設けた。
3)本発明のTFT素子3の作製
本発明のTFT素子2の作製において、化合物(a)を化合物(c)の厚み50nmに変更し、その他はTFT素子2の作製と全く同様にして、本発明のTFT素子3を作製した。
4)本発明のTFT素子4の作製
本発明のTFT素子2の作製において、保護層の化合物(a)を化合物(f)の厚み50nmに変更し、その他はTFT素子2の作製と全く同様にして、本発明のTFT素子4を作製した。
5)本発明のTFT素子5の作製
本発明のTFT素子2の作製において、保護層の化合物(a)を化合物(h)の厚み50nmに変更し、その他はTFT素子2の作製と全く同様にして、本発明のTFT素子5を作製した。
6)本発明のTFT素子6の作製
本発明のTFT素子2の作製において、保護絶縁層として酸化ゲルマニウム(GeO)の厚み100nmを真空蒸着法により形成し、その他はTFT素子2の作製と全く同様にして、本発明のTFT素子6を作製した。
7)本発明のTFT素子7の作製
本発明のTFT素子6の作製において、保護絶縁層のGeOの上に、さらに、平坦化層としてアクリル樹脂(品番PC405G、メーカー:JSR)溶液を乾燥厚み1μmとなるように塗布した。その他はTFT素子6の作製と全く同様にして、本発明のTFT素子7を作製した。
8)比較のTFT素子1の作製
本発明のTFT素子1の作製において、化合物(a)からなる保護層を除いた以外は同様にして、比較のTFT素子1を作製した。
9)比較のTFT素子2の作製
本発明のTFT素子2の作製において、化合物(a)からなる保護層を除いた以外は同様にして、比較のTFT素子2を作製した。
10)比較のTFT素子3の作製
本発明のTFT素子6の作製において、化合物(a)からなる保護層を除いた以外は同様にして、比較のTFT素子3を作製した。
2.性能評価
得られた各TFT素子について、ソース電極を0(ゼロ)Vとして、飽和領域ドレイン電圧Vd=+40V(ゲート電圧(Vg):−20V≦Vg≦+40V)でのTFT伝達特性の測定を行い、TFTの性能を評価した。TFT伝達特性の測定は、半導体パラメータ・アナライザー4156C(アジレントテクノロジー社製)を用いて行った。各パラメータと本発明に於けるその定義は下記の通りである。
・TFTの閾値電圧(Vth):Vgを横軸にし、Isd(ソース・ドレイン間電流)の1/2乗を縦軸とするグラフを作製し、直線で外挿して、Isd=0となるVgをTFTの閾値電圧(Vth)としてもとめた(図3参照)。これは飽和領域でのIsd、Vg及びVthとが下記の式1に従うことによるものである。単位は[V]である。
Isd1/2 ∝(Wμ/2L)1/2(Vg−Vth) (式1)
式中、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、μは活性層の移動度を表す。
以上の測定結果から得られたTFT特性を表1に示した。
その結果、本発明のTFT素子1〜7は、保護層を設けていない比較のTFT素子1とほぼ同じ閾値電圧を示した。これに対して、無機物からなる保護絶縁層のみを形成した比較のTFT素子2、3は閾値電圧が大きくマイナス側にシフトしてしまってOFF動作しなくなるという好ましくない結果を示した。本発明のTFT素子において、閾値電圧を変化させずに保護膜を形成できることが分かった。
実施例2
実施例1における無アルカリガラス基板の代わりに、ポリエチレンナフタレートフィルム(厚み100μm)の両面に下記バリア機能を持つ絶縁層を有するバリア付きフイルムを用いて、その他は実施例1のTFT素子1と同様にしてTFT素子を作製した。
絶縁層:SiONを500nmの厚みに蒸着した。SiONの蒸着にはRFマグネトロンスパッタリング蒸着法(スパッタリング条件:ターゲットSi、RFパワー400W、ガス流量Ar/O=12/3sccm、成膜圧力0.45Pa)を用いた。
得られた素子について実施例1と同様に性能を評価した結果、閾値電圧は0.08Vであり、実施例1と同様に保護層を設けていない比較のTFT素子1とほぼ同じ閾値電圧を示した。
本発明のTFT素子構造を示す断面模式図である。 本発明の別の態様のTFT素子構造を示す断面模式図である。 性能評価におけるTFTの閾値電圧(Vth)の求め方を示すグラフの模式図である。横軸はゲート電圧(Vg)を表し、縦軸はIsd(ソース・ドレイン間電流)の1/2乗(Isd1/2)を表す。
符号の説明
1:基板
2:ゲート電極
3:ゲート絶縁膜
4:活性層
5−1:ソース電極
5−2:ドレイン電極
6:絶縁層
7、17:保護層
8:保護絶縁層

Claims (14)

  1. 基板上に、アモルファス酸化物半導体層を有する薄膜電界効果型トランジスタであって、前記アモルファス酸化物半導体層の上に下記化合物(a)〜()から選択される少なくとも1種の低分子有機物からなる保護層を有し、前記アモルファス酸化物半導体層と前記保護層とが直接接していることを特徴とする薄膜電界効果型トランジスタ。

  2. 前記アモルファス酸化物半導体が、In、Sn、Zn、及びCdより選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物である請求項1に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  3. 前記アモルファス酸化物半導体が、In及びZnを含む酸化物である請求項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  4. 前記アモルファス酸化物半導体が、In、Zn及びGaを含む酸化物である請求項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  5. 前記基板と前記アモルファス酸化物半導体層との間にゲート電極及びゲート絶縁膜を有するボトムゲート構造を有する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  6. 前記保護層のキャリア濃度が1016/cm以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  7. 前記保護層の厚みが5nm〜50μmである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  8. 前記低分子有機物のガラス転移点が80℃以上である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  9. 前記低分子有機物が、アダマンタン化合物である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  10. 前記保護層が真空蒸着法により形成された層である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  11. 前記保護層の上に、無機化合物よりなる保護絶縁層を有する請求項1〜請求項1のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  12. 前記保護絶縁層が真空蒸着法により形成された層である請求項1に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  13. 前記保護層と前記保護絶縁層が直接接している請求項1又は請求項1に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
  14. 前記基板がフレキシブル基板である請求項1〜請求項1のいずれか1項に記載の薄膜電界効果型トランジスタ。
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