本発明の光学素子の製造方法は、少なくとも一方の光学面が樹脂材料で成形された基材と、前記基材の前記光学面上に形成された無機材料からなるコートとを備え、電子部品とともに温度Taのリフロー処理によって基板に実装される光学素子の製造方法であって、前記コートを(Ta−60℃)以上の成膜温度Tbで成膜し、前記樹脂材料として、ガラス転移温度を有しないか、或いは(Tb−50℃)以上の温度にガラス転移温度を有するものを用いることを特徴とする。この特徴は、請求項1〜5に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記樹脂材料として、硬化性樹脂を含有するものを用いることが好ましい。また、前記基材として、ガラス又は硬化性樹脂を含む材料から構成される第1の光学部材と、前記樹脂材料から構成され、前記第1の光学部材の表面に接合された第2の光学部材とを有するウェハレンズを用いることが好ましい。
本発明の光学素子の製造方法によって製造された撮像レンズとしての光学素子は、それを、電子部品とともに基板上に載置した後、前記撮像レンズと、前記電子部品と、前記基板とを温度Taのリフロー処理に供し、前記撮像レンズと前記電子部品とを撮像モジュールとして前記基板に実装することを特徴とする電子機器の製造方法に好適に用いることができる。
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳細な説明をする。
[第1の実施形態]
図1に示す通り、電子機器100は、撮像機能付き携帯電話などの小型電子機器の一例であり、電子部品が実装される回路基板101を有している。回路基板101にはリフロー処理によって撮像モジュール102が実装されている。撮像モジュール102はCCDイメージセンサとレンズとを組み合わせた小型の基板実装用カメラである。電子部品が実装された回路基板101をカバーケース103内に組み込んだ完成状態では、カバーケース103に設けられた撮像用開口104を介して撮像対象の画像取込ができるようになっている。
なお、図1では、撮像モジュール102の電子部品以外の電子部品の図示を省略している。
図2に示す通り、撮像モジュール102は基板モジュール105(図14(a)参照)とレンズモジュール106(図14(a)参照)より構成され、基板モジュール105を回路基板101に実装することにより、撮像モジュール102全体が回路基板101に実装される。基板モジュール105は、レンズモジュール106で集光された光を検出するCCDイメージセンサ110をサブ基板130上に実装した受光モジュールである。CCDイメージセンサ110上面は樹脂120で封止されている。CCDイメージセンサはセンサデバイスの一例である。
CCDイメージセンサ110の上面には、光電変換を行う画素が多数格子状に配列された受光部(図示略)が形成されており、この受光部に光学画像を結像させることにより各画素に蓄電された電荷を画像信号として出力する。サブ基板130は半田等の導電性材料180によって回路基板101に実装され、これによりサブ基板130が回路基板101に固定されるとともに、サブ基板130の接続用電極(図示略)と回路基板101上面の回路電極(図示略)とが電気的に導通する。
レンズモジュール106はレンズケース150を備えている。レンズケース150にはIRカットフィルタ160と撮像レンズ9とが保持されている。レンズケース150の上部はIRカットフィルタ160,撮像レンズ9を保持するホルダ部150aとなっている。
レンズケース150の下部はサブ基板130に設けられた装着孔130a内に挿通されてレンズモジュール106をサブ基板130に固定する装着部150bとなっている。この固定には、装着部150bを装着孔130aに圧入して固定する方法や、接着材によって接着する方法などが用いられる。
以上の電子機器100では、撮像用開口104(図1参照)から光が入射すると、その光は撮像レンズ9を透過してIRカットフィルタ160で赤外線が遮蔽され、その後はCCDイメージセンサ110に入射してCCDイメージセンサ110で光電変換され、画像等が生成される。
続いて、撮像レンズ9について、詳細に説明する。
図2,図3に示す通り、撮像レンズ9は、本発明における基材としてのウェハレンズ91と、当該ウェハレンズ91の表裏両面に形成された反射防止膜92とを有している。
ウェハレンズ91は、平板状の第1の光学部材911と、当該第1の光学部材911の表裏面に接合されて光学面をなす第2,第3の光学部材912,913とを有している。
このウェハレンズ91は、図3に示す通り、レンズアレイ1として他のウェハレンズ91と一体的に形成された後、その製品出荷時等の時点において、第2,第3の光学部材912,913ごとに格子状に切断・分割され、製品(ウェハレンズ91)として製造されるようになっている。
レンズアレイ1は、分割されて第1の光学部材911を形成する矩形状のガラス基板3と、第2,第3の光学部材912,913を形成する複数のレンズ部5とを有しており、ガラス基板3上に複数のレンズ部5がアレイ状に配置された構成を有している。レンズ部5はガラス基板3の表面に形成されていてもよいし、表裏両面に形成されていてもよい。また、レンズ部5には、光学面の表面に回折溝や段差等の微細構造を有していても良い。
<レンズ部>
レンズ部5は、ガラス転移温度を有しないか、或いは(反射防止膜92の成膜温度Tb−50℃)以上の温度にガラス転移温度を有する樹脂5Aで形成されている。ここで、ガラス転移温度は熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analysis)等の装置により30〜290℃の範囲で測定することによって検出することができる。
この樹脂5Aとしては、硬化性樹脂を含有する樹脂材料を用いることができるが、上記の分析装置により、ガラス転移温度を測定し、ガラス転移温度を有しないか、或いは(反射防止膜92の成膜温度Tb−50℃)以上の温度にガラス転移温度を有する樹脂を選択する必要がある。硬化性樹脂としては大きく分けて光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂に分類することができる。光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂及びアリル樹脂であればラジカル重合により反応硬化させることができる。エポキシ系の樹脂であればカチオン重合により反応硬化させることができる。一方、熱硬化性樹脂は上記ラジカル重合やカチオン重合の他にシリコーン等のように付加重合により硬化させることもできる。その他、有機・無機のハイブリッド系樹脂など、他の樹脂を用いることもできる。
以下、上記各樹脂について詳細を次に記す。
(アクリル樹脂)
重合反応に用いられる(メタ)アクリレートは特に制限はなく、一般的な製造方法により製造された下記(メタ)アクリレートを使用することができる。エステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アルキレン(メタ)アクリレート、芳香環を有する(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらを1種類又は2種類以上を用いることができる。
特に高い耐熱性を有する観点で、脂環式構造を持つ(メタ)アクリレートが好ましく、酸素原子や窒素原子を含む脂環構造であってもよい。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、ビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートや、イソボロニル(メタ)アクリレート、水添ビスフェノール類のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また特にアダマンタン骨格を持つと好ましい。例えば、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート(特開2002−193883号公報参照)、アダマンチルジ(メタ)アクリレート(特開昭57−500785号公報)、アダマンチルジカルボン酸ジアリル(特開昭60―100537号公報)、パーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル(特開2004−123687号公報)、新中村化学製 2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、1,3−アダマンタンジオールジアクリレート、1,3,5−アダマンタントリオールトリアクリレート、不飽和カルボン酸アダマンチルエステル(特開2000−119220号公報)、3,3’−ジアルコキシカルボニル−1,1’ビアダマンタン(特開2001−253835号公報参照)、1,1’−ビアダマンタン化合物(米国特許第3342880号明細書参照)、テトラアダマンタン(特開2006−169177号公報参照)、2−アルキル−2−ヒドロキシアダマンタン、2−アルキレンアダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−tert−ブチル等の芳香環を有しないアダマンタン骨格を有する硬化性樹脂(特開2001−322950号公報参照)、ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタン類やビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(特開平11−35522号公報、特開平10−130371号公報参照)等が挙げられる。
また、その他反応性単量体を含有することも可能である。(メタ)アクリレートであれば、例えば、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、などが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとして、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(アリルエステル樹脂)
アリル基を持ちラジカル重合による硬化する樹脂で、例えば次のものが挙げられるが、特に以下のものに限定されるわけではない。
芳香環を含まない臭素含有(メタ)アリルエステル(特開2003−66201号公報参照)、アリル(メタ)アクリレート(特開平5−286896号公報参照)、アリルエステル樹脂(特開平5−286896号公報、特開2003−66201号公報参照)、アクリル酸エステルとエポキシ基含有不飽和化合物の共重合化合物(特開2003−128725号公報参照)、アクリレート化合物(特開2003−147072号公報参照)、アクリルエステル化合物(特開2005−2064号公報参照)等が挙げられる。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を持ち光又は熱により重合硬化するものであれば特に限定されず、硬化開始剤としても酸無水物やカチオン発生剤等を用いることができる。
エポキシ樹脂は硬化収縮率が低いため、成形精度の優れたレンズとすることができる点で好ましい。
エポキシの種類としては、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が挙げられる。その一例として、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル等を挙げることができる。
硬化剤は硬化性樹脂材料を構成する上で使用されるものであり特に限定はない。また、本発明において、硬化性樹脂材料と、添加剤を添加した後の光学材料の透過率を比較する場合、硬化剤は添加剤には含まれないものとする。硬化剤としては、酸無水物硬化剤やフェノール硬化剤等を好ましく使用することができる。酸無水物硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸等を挙げることができる。また、必要に応じて硬化促進剤が含有される。硬化促進剤としては、硬化性が良好で、着色がなく、熱硬化性樹脂の透明性を損なわないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)等のイミダゾール類、3級アミン、4級アンモニウム塩、ジアザビシクロウンデセン等の双環式アミジン類とその誘導体、ホスフィン、ホスホニウム塩等を用いることができ、これらを1種、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
(シリコーン樹脂)
Si−O−Siを主鎖としたシロキサン結合を有するシリコーン樹脂を使用することができる。当該シリコーン樹脂として、所定量のポリオルガノシロキサン樹脂よりなるシリコーン系樹脂が使用可能である(例えば特開平6−9937号公報参照)。
熱硬化性のポリオルガノシロキサン樹脂は、加熱による連続的加水分解−脱水縮合反応によって、シロキサン結合骨格による三次元網状構造となるものであれば、特に制限はなく、一般に高温、長時間の加熱で硬化性を示し、一度硬化すると過熱により再軟化し難い性質を有する。
このようなポリオルガノシロキサン樹脂は、下記一般式(A)が構成単位として含まれ、その形状は鎖状、環状、網状形状のいずれであってもよい。
((R1)(R2)SiO)n … (A)
上記一般式(A)中、「R1」及び「R2」は同種又は異種の置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示す。具体的には、「R1」及び「R2」として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。「R1」及び「R2」は水酸基およびアルコキシ基から選択される基であってもよい。また、上記一般式(A)中、「n」は50以上の整数を示す。
ポリオルガノシロキサン樹脂は、通常、トルエン、キシレン、石油系溶剤のような炭化水素系溶剤、又はこれらと極性溶剤との混合物に溶解して用いられる。また、相互に溶解しあう範囲で、組成の異なるものを配合して用いてもよい。
ポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、オルガノハロゲノシランの一種又は二種以上の混合物を加水分解ないしアルコリシスすることによって得ることができ、ポリオルガノシロキサン樹脂は、一般にシラノール基又はアルコキシ基等の加水分解性基を含有し、これらの基をシラノール基に換算して1〜10質量%含有する。
これらの反応は、オルガノハロゲノシランを溶融しうる溶媒の存在下に行うのが一般的である。また、分子鎖末端に水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンを、オルガノトリクロロシランと共加水分解して、ブロック共重合体を合成する方法によっても得ることができる。このようにして得られるポリオルガノシロキサン樹脂は一般に残存するHClを含むが、本実施形態の組成物においては、保存安定性が良好なことから、10ppm以下、好ましくは1ppm以下のものを使用するのがよい。
また、反射防止膜92は、無機材料によってウェハレンズ91上に形成されている。ここで、レンズ部5の樹脂5Aがガラス転移点を有する場合には、反射防止膜92の成膜温度Tbは(樹脂5Aのガラス転移点+50℃)以下の温度となっており、かつ、後述のリフロー処理温度Taに対して(Ta−60℃)以上となっている。なお、本実施の形態においては反射防止膜92は2層構造を有している。具体的には、ウェハレンズ91に対しフッ素置換層500を介して第1層61が形成されており、その上に第2層62が形成されている。
第1層61は屈折率1.7以上の高屈折率材料から構成された層であり、好ましくはTa2O5,Ta2O5とTiO2との混合物,ZrO2,ZrO2とTiO2との混合物のいずれかで構成されている。第1層61はTiO2,Nb2O3,HfO2で構成されてもよい。第2層62は屈折率1.7未満の低屈折率材料から構成された層であり、好ましくはSiO2から構成されている。
反射防止膜92は第1層61,第2層62がともに蒸着等の手法により形成されており、詳しくは、第1層61,第2層62は、その成膜温度がリフロー処理に供される半田等の導電性ペーストの溶融温度に対し−40〜+40℃(好ましくは−20〜+20℃)の範囲に保持されながら、形成されている(これについては更に後述する。)。
ウェハレンズ91では、第1層61,第2層62の上にさらに第1層61,第2層62を交互に積層し、反射防止膜92を全体で2〜7層構造としてもよい。この場合、ウェハレンズ91及びフッ素置換層500に直に接触する層はウェハレンズ91の種類に応じて、高屈折率材料の層(第1の層61)としてもよいし、低屈折率材料の層(第2の層62)としてもよい。本実施形態ではウェハレンズ91に直に接触する層が高屈折率材料の層となっている。
以上のレンズアレイ1の製造にあたっては、成形用の型として、図4のマスター成形型(以下、単に「マスター」とする)10,サブマスター成形型(以下、単に「サブマスター」とする)20が使用される。
<マスター>
図4(a)に示す通り、マスター10は直方体状のベース部12に対し複数の凸部14がアレイ状に形成されている。凸部14はレンズアレイ1のレンズ部5に対応する部位であり、略半球形状に突出している。なお、マスター10の外形状は、このように四角形であっても良いし円形であっても良い。本発明の権利範囲はこの差異によって制約されないが、以降は四角形状を例にして説明する。
マスター10の光学面形状(表面形状)は図4(a)に示す通りに凸部14が形成された凸形状を有していてもよいし、図5(a)に示す通りに複数の凹部16が形成された凹形状を有していてもよい。但し、これらの凸部14,凹部16の表面(成形面)形状は、ガラス基板3上に成形転写するレンズ部5の光学面形状(ガラス基板3とは反対の面の形状)に対応するポジ形状となっている。以下の説明では図4のマスター10を「マスター10A」と、図5のマスター10を「マスター10B」として、区別している。
マスター10Aの材料としては、切削や研削などの機械加工によって光学面形状を創製する場合には、金属又は金属ガラスを用いることができる。分類としては鉄系の材料とその他合金が挙げられる。鉄系としては、熱間金型、冷間金型、プラスチック金型、高速度工具鋼、一般構造用圧延鋼材、機械構造用炭素鋼、クロム・モリブデン鋼、ステンレス鋼が挙げられる。その内、プラスチック金型としては、プリハードン鋼、焼入れ焼戻し鋼、時効処理鋼がある。プリハードン鋼としては、SC系、SCM系、SUS系が挙げられる。さらに具体的には、SC系はPXZがある。SCM系はHPM2、HPM7、PX5、IMPAXが挙げられる。SUS系は、HPM38、HPM77、S−STAR、G−STAR、STAVAX、RAMAX−S、PSLが挙げられる。また、鉄系の合金としては特開2005−113161号公報や特開2005−206913号公報が挙げられる。非鉄系の合金は主に、銅合金、アルミ合金、亜鉛合金がよく知られている。例としては、特開平10−219373号公報、特開2000−176970号公報に示されている合金が挙げられる。金属ガラスの材料としては、PdCuSiやPdCuSiNiなどがダイヤモンド切削における被削性が高く、工具の磨耗が少ないので適している。また、無電解や電解のニッケル燐メッキなどのアモルファス合金もダイヤモンド切削における被削性が良いので適している。これらの高被削性材料は、マスター10A全体を構成しても良いし、メッキやスパッタなどの方法によって特に光学転写面の表面だけを覆っても良い。
また、マスター10Aの材料として、機械加工はやや難しいが、ガラスを用いることもできる。マスター10Aにガラスを用いれば、UV光を通すというメリットも得られる。一般的に使用されているガラスであれば特に限定されない。
特に、マスター10Aのモールド成形用材料としては、低融点ガラスや、金属ガラスのように低温で容易に流動性が確保できる材料が挙げられる。低融点ガラスを使用すれば、UV硬化性の材料を成形する際にサンプルの金型側からも照射できるようになるため有利である。低融点ガラスとしては、ガラス転移点が600℃程度又はそれ以下のガラスで、ガラス組成がZnO−PbO− B2O3、PbO−SiO2−B2O3、PbO−P2O5−SnF2などが挙げられる。また、400℃以下で溶融するガラスとして、PbF2−SnF2−SnO−P2O5及びその類似構造品が挙げられる。具体的な材料として、S−FPL51、S−FPL53、S−FSL 5、S−BSL 7、S−BSM 2、S−BSM 4、S−BSM 9、S−BSM10、S−BSM14、S−BSM15、S−BSM16、S−BSM18、S−BSM22、S−BSM25、S−BSM28、S−BSM71、S−BSM81、S−NSL 3、S−NSL 5、S−NSL36、S−BAL 2、S−BAL 3、S−BAL11、S−BAL12、S−BAL14、S−BAL35、S−BAL41、S−BAL42、S−BAM 3、S−BAM 4、S−BAM12、S−BAH10、S−BAH11、S−BAH27、S−BAH28、S−BAH32、S−PHM52、S−PHM53、S−TIL 1、S−TIL 2、S−TIL 6、S−TIL25、S−TIL26、S−TIL27、S−TIM 1、S−TIM 2、S−TIM 3、S−TIM 5、S−TIM 8、S−TIM22、S−TIM25、S−TIM27、S−TIM28、S−TIM35、S−TIM39、S−TIH 1、S−TIH 3、S−TIH 4、S−TIH 6、S−TIH10、S−TIH11、S−TIH13、S−TIH14、S−TIH18、S−TIH23、S−TIH53、S−LAL 7、S−LAL 8、S−LAL 9、S−LAL10、S−LAL12、S−LAL13、S−LAL14、S−LAL18、S−LAL54、S−LAL56、S−LAL58、S−LAL59、S−LAL61、S−LAM 2、S−LAM 3、S−LAM 7、S−LAM51、S−LAM52、S−LAM54、S−LAM55、S−LAM58、S−LAM59、S−LAM60、S−LAM61、S−LAM66、S−LAH51、S−LAH52、S−LAH53、S−LAH55、S−LAH58、S−LAH59、S−LAH60、S−LAH63、S−LAH64、S−LAH65、S−LAH66、S−LAH71、S−LAH79、S−YGH51、S−FTM16、S−NBM51、S−NBH 5、S−NBH 8、S−NBH51、S−NBH52、S−NBH53、S−NBH55、S−NPH 1、S−NPH 2、S−NPH53 、P−FK01S、P−FKH2S、P−SK5S、P−SK12S、P−LAK13S、P−LASF03S、P−LASFH11S、P−LASFH12S等が挙げられるが特にこれらに限定される必要はない。
また、金属ガラスも同様にモールドにより、容易に成形することができる。金属ガラスとしては特開平8−109419号、特開平8−333660号、特開平10−81944号、特開平10−92619号、特開2001−140047号、特開2001−303218号、特表2003−534925号各公報のような構造が挙げられているが、特にこれらに限定される必要はない。
マスター10Aの光学面は単一の凸部14が形成された面であってもよいし、図4(a)に示す通りにアレイ状に複数の凸部14が形成された面であってもよい。マスター10Aの光学面を創製する方法として、ダイヤモンド切削加工がある。
マスター10Aの光学面が、単一の凸部14が形成された面であれば、ニッケルリンやアルミ合金、快削真鋳あるいは金属ガラスやアモルファス合金などの材料を型材に用いてダイヤモンドの工具で切削加工することで実現できる。
マスター10Aの光学面が、アレイ状に複数の凸部14が形成された面であれば、ダイヤモンドで切れ刃が形成されたボールエンドミルB(図6参照)を用いて、光学面形状を切削加工する。このとき、工具の切れ刃は完全な円弧ではなく、切れ刃の使う場所によって加工形状に誤差が発生するため、光学面形状のどの部分を切削するときも、使う切れ刃の位置が同一になるように工具の傾きを調整しながら加工することが望ましい。
具体的には、まず並進3軸でボールエンドミルBの刃先円弧中心を、ワークと工具が接する点の加工面の法線上に位置づける。さらに、回転軸を使用して切れ刃の使う位置B1をワークと工具の接触点に来るように位置づける。このような工具位置制御を連続的に行うことにより光学面形状の切削加工を行う。
このような加工を行うには、加工機に少なくとも並進自由度3、回転自由度1が必要となり、合計4以上の自由度を有する加工機でなければ実現できないため、マスター10Aの光学面を形成する場合には、4以上の自由度を有する加工機を用いる。
<サブマスター>
図4(b)に示す通り、サブマスター20はサブマスター成形部22とサブマスター基板26とで構成されている。サブマスター成形部22には複数の凹部24がアレイ状に形成されている。凹部24の表面(成形面)形状はレンズアレイ1におけるレンズ部5に対応するネガ形状となっており、この図では略半球形状に凹んでいる。
≪サブマスター成形部≫
サブマスター成形部22は、樹脂22Aによって形成されている。樹脂22Aとしては、離型性の良好な樹脂、特に透明樹脂が好ましい。離型剤を塗布しなくても離型できる点で優れる。樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでも構わない。
光硬化性樹脂としては、フッ素系樹脂が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂が挙げられる。中でも、離型性の良好なもの、つまり硬化させた時の表面エネルギーの低い樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどの透明で比較的離型性の良いオレフィン系樹脂が挙げられる。なお、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂の順に離型性が良好となる。この場合、サブマスター基板26は無くても構わない。このような樹脂を使用することにより、撓ませることができるので離型の際にさらに優位となる。
以下、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、熱可塑性樹脂について詳細に説明する。
(フッ素系樹脂)
フッ素系樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4,6フッ素化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVF(ポリビニルフルオライド)等が挙げられる。
フッ素系樹脂の優位点としては、離型性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、低摩擦性などだが、欠点としては、結晶性なので透明性に劣る。融点が高いので、成形時に高温(300℃程度)が必要である。
また、成形方法は、キャスト成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形などであり、その中でも特に、光透過性に優れ、射出成形や押出成形も可能なFEP、PFA、PVDF等が好ましい。
溶融成形可能なグレートとしては、例えば、旭硝子製 Fluon PFA、住友3M社製 Dyneon PFA、Dyneon THV 等が挙げられる。特に、Dyneon THVシリーズは、低融点(120℃程度)なので、比較的低温で成形でき、高透明なので好ましい。
また、熱硬化性のアモルファスフッ素樹脂として、旭硝子製 サイトップ グレードSも高透過率、良離型性で好ましい。
(シリコーン系樹脂)
シリコーン系樹脂には、1液湿気硬化型のものと、2液付加反応型、2液縮合型のものがある。
優位点としては、離型性、柔軟性、耐熱性、難燃性、透湿性、低吸水性、透明グレードが多いなどだが、欠点としては、線膨張率が大きいなどがある。
特に、PDMS(ポリジメチルシロキサン)構造を含むような、型取り用途のシリコーン樹脂が離型性良好で好ましく、RTVエラストマーの、高透明グレードが望ましい。例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製 TSE3450(2液混合、付加型)、旭化成ワッカーシリコーン製 ELASTOSIL M 4647(2液型RTVシリコーンゴム)、また、信越シリコーン製のKE−1603(2液混合、付加型RTVゴム)、東レダウコーニング製のSH−9555(2液混合、付加型RTVゴム)、SYLGARD 184、シルポット184、WL−5000シリーズ(感光性シリコーンバッファー材料、UVによりパターニング可能)等が好ましい。
成形方法は、2液型RTVゴムの場合、室温硬化又は加熱硬化である。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、脂環式炭化水素系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリイミド樹脂等の透明樹脂が挙げられるが、これらの中では、特に脂環式炭化水素系樹脂が好ましく用いられる。サブマスター20を熱可塑性樹脂で構成すれば、従来から実施している射出成形技術をそのまま転用することができ、サブマスター20を容易に作製することができる。また熱可塑性樹脂が脂環式炭化水素系樹脂であれば、吸湿性が非常に低いため、サブマスター20の寿命が長くなる。また、シクロオレフィン樹脂等の脂環式炭化水素系樹脂は、耐光性・光透過性に優れるため、活性光線硬化性樹脂を硬化させるために、UV光源等の短波長の光を用いた場合も劣化が少なく、金型として長期間用いることができる。
脂環式炭化水素系樹脂としては、下記式(1)で表されるものが例示される。
上記式(1)中、「x」,「y」は共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。「n」は0、1又は2で置換基Qの置換数を示す。「R1」は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種又は2種以上の(2+n)価の基である。「R2」は水素原子であるか、又は炭素及び水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種若しくは2種以上の1価の基である。「R3」は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種又は2種以上の2価の基である。「Q」はCOOR4(R4は水素原子であるか、又は炭化水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種又は2種以上の1価の基である。)で表される構造群から選ばれる1種又は2種以上の1価の基である。
前記一般式(1)において、R1は、好ましくは炭素数2〜12の炭化水素基群から選ばれる1種ないし2種以上の2価の基であり、より好ましくは下記一般式(2)(式(2)中、pは0〜2の整数である。);
で表される2価の基であり、更に好ましくは前記一般式(2)において、pが0又は1である2価の基である。R1の構造は、1種のみ用いても2種以上併用しても構わない。R2の例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基等が挙げられるが、好ましくは、水素原子、及び/又はメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。R3の例としては、この基を含む構造単位の好ましい例として、n=0の場合、例えば、(a)、(b)、(c)(但し、式(a)〜(c)中、R1は前述の通り);
などが挙げられる。また、nは好ましくは0である。
本実施形態において共重合のタイプは特に制限されるものではなく、ランダム共重合、ブロック共重合、交互共重合等、公知の共重合のタイプを適用することができるが、好ましくはランダム共重合である。
また、本実施形態で用いられる重合体は、本実施形態の成形方法によって得られる製品の物性を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し構造単位を有していてもよい。その共重合比は特に限定されることはないが、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、それ以上共重合させた場合には、光学特性を損ない高精度の光学部品が得られない恐れがある。この時の共重合のタイプは特に限定はされないが、ランダム共重合が好ましい。
サブマスター20に適用される好ましい熱可塑性脂環式炭化水素系重合体のもう一つの例としては、脂環式構造を有する繰り返し単位が、下記一般式(4)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記式(5)及び/又は下記式(6)及び/又は下記式(7)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを合計含有量が90質量%以上になるように含有し、さらに繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上10質量%未満である重合体が例示される。
式(4)、式(5)、式(6)及び式(7)中、R21〜R33は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等を表す。具体的に、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を挙げることができ、極性基で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば炭素原子1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基としては、例えば炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基:炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。
上記式(4)中のXは、脂環式炭化水素基を表し、それを構成する炭素数は、通常4個〜20個、好ましくは4個〜10個、より好ましくは5個〜7個である。脂環式構造を構成する炭素数をこの範囲にすることで複屈折を低減することができる。また、脂環式構造は単環構造に限らず、例えばノルボルナン環などの多環構造のものでもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素−炭素不飽和結合を有してもよいが、その含有量は、全炭素−炭素結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。脂環式炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合をこの範囲とすることで、透明性、耐熱性が向上する。また、脂環式炭化水素基を構成する炭素には、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等が結合していてもよく、中でも水素原子又は炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基が耐熱性、低吸水性の点で好ましい。
また、上記式(6)は、主鎖中に炭素−炭素不飽和結合を有しており、上記式(7)は主鎖中に炭素−炭素飽和結合を有しているが、透明性、耐熱性を強く要求される場合、不飽和結合の含有率は、主鎖を構成する全炭素−炭素間結合の、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
本実施形態においては、脂環式炭化水素系共重合体中の、一般式(4)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、一般式(5)及び/又は一般式(6)及び/又は一般式(7)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)との合計含有量は、質量基準で、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。合計含有量を上記範囲にすることで、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、機械強度が高度にバランスされる。
上記脂環式炭化水素系共重合体を製造する製造方法としては、芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、主鎖及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法が挙げられる。
水素化前の共重合体の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン(又はポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと、それから得られる脂環式炭化水素系共重合体の成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと水素化反応性に劣る。
上記の方法において使用する芳香族ビニル系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。これらの芳香族ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合可能なその他のモノマーとしては、格別な限定はないが、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物等が用いられ、鎖状共役ジエンを用いた場合、製造過程における操作性に優れ、また得られる脂環式炭化水素系共重合体の強度特性に優れる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー;1−シアノエチレン(アクリロニトリル)、1−シアノ−1−メチルエチレン(メタアクリロニトリル)、1−シアノ−1−クロロエチレン(α−クロロアクリロニトリル)等のニトリル系モノマー;1−(メトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸メチルエステル)、1−(エトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸エチルエステル)、1−(プロポキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸プロピルエステル)、1−(ブトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸ブチルエステル)、1−メトキシカルボニルエチレン(アクリル酸メチルエステル)、1−エトキシカルボニルエチレン(アクリル酸エチルエステル)、1−プロポキシカルボニルエチレン(アクリル酸プロピルエステル)、1−ブトキシカルボニルエチレン(アクリル酸ブチルエステル)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、1−カルボキシエチレン(アクリル酸)、1−カルボキシ−1−メチルエチレン(メタクリル酸)、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系モノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、特別な制約はないが、重合操作、後工程での水素化反応の容易さ、及び最終的に得られる炭化水素系共重合体の機械的強度を考えると、アニオン重合法が好ましい。
アニオン重合の場合には、開始剤の存在下、通常0〜200℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜80℃の温度範囲において、塊状重合、溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去を考慮すると、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及びその水素化物を溶解できる不活性溶媒を用いる。溶液反応で用いる不活性溶媒は、例えばn−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。上記アニオン重合の開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
水素化前の共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素二重結合や主鎖の不飽和結合等の水素化反応を行う場合は、反応方法、反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、且つ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化反応は、通常10〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃である。また水素圧力は、通常0.1〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaである。
このようにして得られた、水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環の炭素−炭素二重結合、不飽和環の炭素−炭素二重結合のいずれも、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
水素化反応終了後に水素化物を回収する方法は特に限定されていない。通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化物の溶液から溶媒を直接乾燥により除去する方法、水素化物の溶液を水素化物にとっての貧溶媒中に注ぎ、水素化物を凝固させる方法を用いることができる。
≪サブマスター基板≫
サブマスター基板26は、サブマスター20のサブマスター成形部22のみでは強度に劣る場合でも、基板に樹脂を貼り付けることでサブマスター20の強度が上がり、何回も成形することができるという、裏打ち材のことである。
サブマスター基板26としては、石英、シリコーンウェハ、金属、ガラス、樹脂等、平滑性の出ているものなら何れでもよい。
透明性の観点で、サブマスター20の上からでも下からでもUV照射できるという点を考慮すると、透明な型、例えば石英やガラスや透明樹脂等が好ましい。透明樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもUV硬化性樹脂でも何れでも良く、樹脂中に、微粒子が添加されていて線膨張係数を下げる等の効果があってもよい。このように樹脂を使用することによって、ガラスより撓むので離型する際により離型し易いが、樹脂は線膨張係数が大きいので、UV照射の際に熱が発生すると、形状が変形してきれいに転写することができないという欠点がある。
次に、図7を参照しながら、レンズアレイ1の製造方法について説明する。
図7(a)に示す通り、マスター10A上に樹脂22Aを塗布し、マスター10Aの凸部14を樹脂22Aに転写し、樹脂22Aを硬化させ、樹脂22Aに対し複数の凹部24を形成する。これにより、サブマスター成形部22が形成される。
樹脂22Aは、熱硬化性であっても光硬化性であっても、揮発硬化性(溶媒が揮発して硬化する,HSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン等))であってもよい。高精度な成形転写性を重視する場合は、硬化に熱をかけないため樹脂22Aの熱膨張の影響が少ないUV硬化性や揮発硬化性樹脂による成形が好ましいが、これに限られるものではない。硬化後のマスター10Aとの剥離性が良い樹脂22Aが、剥離時に大きな力を必要としないため、成形光学面形状などを不用意に変形されることなくより好ましい。
樹脂22A(サブマスター成形部22の材料),樹脂5A(レンズ部5の材料)が硬化性樹脂である場合において、マスター10Aの光学面形状(凸部14)は、好ましくは樹脂22Aの硬化収縮や樹脂5Aの硬化収縮を見越して設計する。
マスター10A上に樹脂22Aを塗布する場合には、スプレーコート,スピンコート、滴下、吐出等の手法を用いる。この場合、真空引きしながら樹脂22Aを塗布してもよい。真空引きしながら樹脂22Aを塗布すれば、樹脂22Aに気泡を混入させずに樹脂22Aを硬化させることができる。
また、マスター10Aから硬化した樹脂22Aを容易に剥離するためには、マスター10Aの表面に離型剤を塗布することが好ましい。
離型剤を塗布する場合、マスター10Aの表面改質を行う。具体的には、マスター10Aの表面にOH基を立たせる。表面改質の方法は、UVオゾン洗浄、酸素プラズマアッシング等、マスター10Aの表面にOH基を立たせる方法なら何でもよい。
離型剤としては、シランカップリング剤構造のように、末端に加水分解可能な官能基が結合した材料、すなわち、金属の表面に存在するOH基との間で脱水縮合又は水素結合等を起こして結合するような構造を有するものが挙げられる。末端がシランカップリング構造を持ち、他端が離型性機能を持つ離型剤の場合、マスター10Aの表面にOH基が形成されていればいるほど、マスター10A表面の共有結合する箇所が増え、より強固な結合ができる。その結果、何ショット成形をしても、離型効果は薄れることなく、耐久性が増す。また、プライマー(下地層、SiO2コートなど)が不要となるので、薄膜を保ったまま耐久性向上の効果を得ることができる。
末端に加水分解可能な官能基が結合した材料とは、好ましくは官能基としてアルコキシシラン基やハロゲン化シラン基、4級アンモニウム塩、リン酸エステル基などからなる材料が挙げられる。また、末端基に、例えばトリアジンチオールのような、金型と強い結合を起こすような基でもよい。具体的には、次の一般式で示されるアルコキシシラン基(8)又はハロゲン化シラン基(9)を有するものである。
−Si(OR1)nR2(3−n) (8)
−SiXmR3(3−m) (9)
ここで、R1およびR2はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、nおよびmは1,2又は3、R3はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)である。Xはハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)である。
また、R1、R2、R3又はXがSiに2以上結合している場合には、上記の基又は原子の範囲内で、例えば2つのRmがアルキル基とアルコキシ基であるように異なっていてもよい。
アルコキシシラン基−SiOR1およびハロゲン化シラン基−SiXは、水分と反応して−SiOHとなり、さらにこれがガラス、金属等の型材料の表面に存在するOH基との間で脱水縮合又は水素結合等を起こして結合する。
図8は、末端に加水分解可能な官能基の一例としてアルコキシシラン基を使用した離型剤と、マスター10A表面のOH基との反応図を示している。
図8(a)中、−ORはメトキシ(−OCH3)やエトキシ(−OC2H5)を表し、加水分解によりメタノール(CH3OH)やエタノール(C2H5OH)を発生して、図8(b)のシラノール(−SiOH)となる。その後、部分的に脱水縮合して、図8(c)のようにシラノールの縮合体となる。さらに、図8(d)のようにマスター10(無機材料)表面のOH基と水素結合により吸着し、最後に図8(e)のように脱水して、−O− 化学結合(共有結合)する。なお、図8ではアルコキシシラン基の場合を示したが、ハロゲン化シラン基の場合も基本的に同様の反応が起こる。
すなわち本発明に使用する離型剤は、その一端でマスター10A表面に化学結合し、他端に機能性基を配向して、マスター10Aを被うこととなり、薄くて耐久性に優れた均一な離型層を形成することができる。
離型性機能を持つ側の構造として好ましいのは、表面エネルギーの低いもの、例えば、フッ素置換炭化水素基や炭化水素基である。
(機能性側がフッ素系の離型剤)
フッ素置換炭化水素基としては、特に分子構造の一端にCF3(CF2)a−基や、CF3・CF3・CF(CF2)b−基などのパーフルオロ基(aおよびbは整数)を持つフッ素置換炭化水素基が好ましく、また、パーフルオロ基の長さが炭素数にして2個以上が好ましく、CF3(CF2)a−のCF3につづくCF2基の数は5以上が適切である。
また、パーフルオロ基は直鎖である必要はなく、分岐構造を有していてもよい。さらに、近年の環境問題対応として、CF3(CF2)c−(CH2)d−(CF2)e−のような構造でもよい。この場合、cは3以下、dは整数(好ましくは1)、eは4以下、である。
上記のフッ素離型剤は通常は固体であるが、これをマスター10Aの表面に塗布するには、有機溶剤に溶解した溶液とする必要がある。離型剤の分子構造によって異なってくるが、多くはその溶媒としてフッ化炭化水素系の溶剤又はそれに若干の有機溶媒を混合したものが適している。溶媒の濃度は特に限定ないが、必要とする離型膜は特に薄いことが特徴であるので、濃度は低いもので充分であり、1〜3質量%でよい。
この溶液をマスター10A表面に塗布するには、浸漬塗布、スプレー塗布、ハケ塗り、スピンコート等の通常の塗布方法を用いることができる。塗布後は通常は自然乾燥で溶媒を蒸発させて乾燥塗膜とするが、このとき塗布された膜厚はとくに規定するべきものではないが、20μm以下が適当である。
具体例としては、ダイキン工業製 オプツールDSX、デュラサーフHD−1100、HD−2100、住友3M製 ノベックEGC1720、竹内真空被膜製 トリアジンチオールの蒸着、AGC製 アモルファスフッ素 サイトップ グレードM、エヌアイマテリアル製 防汚コートOPC−800等が挙げられる。
(機能性側が炭化水素系の離型剤)
炭化水素基としては、CnH2n+1のように直鎖でもよいし、分岐していてもよい。シリコーン系離型剤がこの分類に含まれる。
従来、オルガノポリシロキサン樹脂を主成分とする組成物であり、撥水性を示す硬化皮膜を形成する組成物としては数多くの組成物が知られている。例えば、特開昭55−48245号公報には水酸基含有メチルポリシロキサン樹脂とα,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンとオルガノシランからなり、硬化して離型性、防汚性に優れ、撥水性を示す皮膜を形成する組成物が提案されている。また、特開昭59−140280号公報にはパーフルオロアルキル基含有オルガノシランとアミノ基含有オルガノシランを主成分とするオルガノシランの部分共加水分解縮合物を主剤とする組成物であり、撥水性、撥油性に優れた硬化皮膜を形成する組成物が提案されている。
具体例としては、AGCセイミケミカル製 モールドスパット、マツモトファインケミカル製 オルガチックスSIC−330,434、東レダウケミカル製 SR−2410などが挙げられる。また、自己組織化単分子膜として、日本曹達製 SAMLAY が挙げられる。
樹脂22Aが光硬化性樹脂である場合には、マスター10Aの上方に配置した光源50を点灯させ光照射する。
光源50としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、ブラックライト、Gランプ、Fランプ等が挙げられ、線状光源であってもよいし点状光源であってもよい。高圧水銀ランプは、365nm、436nmに狭いスペクトルを持つランプである。メタルハライドランプは、水銀灯の一種で、紫外域における出力は高圧水銀ランプよりも数倍高い。キセノンランプは、最も太陽光に近いスペクトルを持つランプである。ハロゲンランプは長波長の光を多く含んでおり、近赤外光がほとんどであるランプである。蛍光灯は光の三原色に均等な照射強度を持っている。ブラックライトはピークトップを351nmに持ち、300〜400nmの近紫外光を放射するライトである。
光源50から光照射する場合には、複数の線状又は点状の光源50を格子状に配置して樹脂22Aの全面に一度に光が到達するようにしてもよいし、線状又は点状の光源50を樹脂22Aの表面に対し平行にスキャニングして樹脂22Aに順次光が到達するようにしてもよい。この場合、好ましくは光照射時の輝度分布や照度(強度)分布を測定し、その測定結果に基づき照射回数,照射量,照射時間等を制御する。
樹脂22Aを光硬化させた後(サブマスター20の作製後)においては、サブマスター20に対しポストキュア(加熱処理)をおこなってもよい。ポストキュアをおこなえば、サブマスター20の樹脂22Aを完全に硬化させることができ、サブマスター20の型寿命を延ばすことができる。
樹脂22Aが熱硬化性樹脂である場合には、加熱温度,加熱時間を最適な範囲で制御しながら樹脂22Aを加熱する。樹脂22Aは射出成形,プレス成形,光照射してその後に冷却する等の手法でも成形することができる。
図7(b)に示す通り、サブマスター成形部22(樹脂22A)の裏面(凹部24とは反対の面)に対してサブマスター基板26を装着し、サブマスター成形部22を裏打ちする。
サブマスター基板26は石英であってもよいし、ガラス板であってもよく、十分な曲げ強度とUV透過率を有することが重要である。サブマスター成形部22とサブマスター基板26との密着性を高めるために、サブマスター基板26に対しシランカップリング剤を塗布するなどの処理を行ってもよい。
なお、上記のように、マスター10Aの凸部14を樹脂22Aに転写し樹脂22Aが硬化した後(つまりサブマスター成形部22が形成された後)に、サブマスター基板26を装着する場合には、接着剤を使う。
逆に、マスター10Aの凸部14を樹脂22Aに転写し樹脂22Aが硬化する前に、サブマスター基板26を装着するようにしてもよい。この場合には、接着剤を使用せずに、樹脂22Aの付着力によりサブマスター基板26を張り付かせるか、又はサブマスター基板26にカップリング剤を塗布し付着力を強くして樹脂22Aに対しサブマスター基板26を付着させる。サブマスター基板26で裏打ちしつつ硬化させる方法としては、例えば樹脂22Aとして熱硬化性樹脂を用い、マスター10Aとサブマスター基板26との間に当該樹脂22Aを充填した状態でこれらをベーク炉に投入する方法や、樹脂22AとしてUV硬化性樹脂を用いるとともに、サブマスター基板26としてUV透過性の基板を用い、マスター10Aとサブマスター基板26との間に当該樹脂22Aを充填した状態でサブマスター基板26の側から樹脂22Aに対してUV光を照射する方法などがある。
また、サブマスター成形部22(樹脂22A)をサブマスター基板26で裏打ちする際には、従来公知の真空チャック装置260を用い、この真空チャック装置260の吸引面260Aにサブマスター基板26を吸引保持しつつ、当該吸引面260Aをマスター10Aにおける凸部14の成形面に対し平行な状態として、サブマスター成形部22をサブマスター基板26で裏打ちすることが好ましい。これにより、マスター10Aにおける凸部14の成形面に対してサブマスター20の裏面20A(サブマスター基板26側の面)が平行となり、サブマスター20において凹部24の成形面が裏面20Aと平行となる。従って、後述のようにサブマスター20によってレンズ部5を成形する際に、サブマスター20の基準面、つまり裏面20Aを凹部24の成形面と平行にすることができるため、レンズ部5が偏芯したり、厚みにばらつきを有したりするのを防止し、レンズ部5の形状精度を向上させ、レンズ性能を高く維持することができる。また、真空チャック装置260によってサブマスター20を吸引保持するため、真空排気のオン/オフのみによってサブマスター20を着脱することができる。従って、サブマスター20の配置を容易に行なうことができる。また、マスター10Aについても前述の真空チャック装置260の吸引面260Aと平行をなす第2の真空チャック装置によって吸引保持されていると、硬化したサブマスター20をマスター10Aから剥離するという、最も慎重かつ注意が必要となる作業において、両者が硬化密着した状態で真空チャックをOFFにすることで成形装置から簡単にはずすことができ、装置制約が少ない広い環境や別の装置上で確実な剥離作業を行うことができる。また、その作業中に別のマスターとサブマスター基板を真空チャックによって成形装置に取り付けると、サブマスターの成形を連続して行うことができる。
ここで、凹部24の成形面に対して裏面20Aが平行であるとは、具体的には、凹部24の成形面における中心軸に対して裏面20Aが垂直であることをいう。
また、真空チャック装置260の吸引面260Aはセラミック材料で作るのが好ましい。この場合には、吸引面260Aの硬度が高くなり、サブマスター20(サブマスター基板26)の着脱によって当該吸引面260Aに傷が付き難いため、吸引面260Aの面精度を高く維持することができる。また、このようなセラミック材料としては、窒化珪素やサイアロンを用いるのが好ましい。この場合には、線膨張係数が1.3ppmと小さいため、温度変化に対して吸引面260Aの平面度を高く維持することができる。
なお、本実施の形態においては、マスター10Aにおける凸部14の成形面に対して吸引面260Aを平行な状態にする手法としては、以下のような手法を用いている。
まず、マスター10Aの表裏面を高精度に平行化しておく。これにより、マスター10Aにおいて、凸部14の成形面と裏面とが平行となる。
また、このマスター10Aを裏面(凸部14とは反対側の面)側から支持する支持面260Bと、吸引面260Aとに対して、それぞれ基準部材260C,260Dを突設しておく。ここで、これらの基準部材260C,260Dの形状は、支持面260B及び吸引面260Aが互いに平行な状態でマスター10Aとサブマスター20とが当接したときにガタツキ無く互いに当接する形状とする。
これにより、基準部材260C,260D同士を当接させることによって、吸引面260Aに対してマスター10Aの支持面260B、ひいてはマスター10における凸部14の成形面が平行となる。
但し、上記のような手法において、基準部材は支持面260B及び吸引面260Aの少なくとも一方に設ければ良く、例えば支持面260Bのみに基準部材を設ける場合には、この基準部材の形状は、支持面260B及び吸引面260Aが互いに平行な状態でマスター10Aとサブマスター20とが当接したときに、吸引面260Aに対してガタツキ無く当接する形状とすれば良い。同様に、吸引面260Aのみに基準部材を設ける場合には、この基準部材の形状は、支持面260B及び吸引面260Aが互いに平行な状態でマスター10Aとサブマスター20とが当接したときに、支持面260Bに対してガタツキ無く当接する形状とすれば良い。このような機械的な当接による平行度は、特別なアライメント装置を有することなく、数秒角程度の再現性を実現できる。
図7(c)に示す通り、マスター10Aからサブマスター成形部22とサブマスター基板26とを離型し、サブマスター20が形成される。
樹脂22AとしてPDMS(ポリジメチルシロキサン)などの樹脂を使うと、マスター10との離型性が非常によいので、マスター10からの剥離に大きな力を必要とせず、成形光学面を歪ませたりする事が無いのでよい。
図7(d)に示す通り、サブマスター20とガラス基板3との間に樹脂5Aを充填して硬化させる。より詳細には、サブマスター20の凹部24に対し樹脂5Aを充填し、その上方からガラス基板3を押圧しながら樹脂5Aを硬化させる。
サブマスター20の凹部24に樹脂5Aを充填する場合には、真空引きしながら樹脂5Aを充填してもよい。真空引きしながら樹脂5Aを充填すれば、樹脂5Aに気泡を混入させずに樹脂5Aを硬化させることができる。
サブマスター20の凹部24に樹脂5Aを充填するのに代えて、ガラス基板3に樹脂5Aを塗布し、樹脂5Aが塗布されたガラス基板3をサブマスター20に押圧するような構成としてもよい。
ガラス基板3を押圧する場合に、ガラス基板3は、サブマスター20と軸合わせをするための構造が付与されているのが好ましい。ガラス基板3が円形状を呈している場合には、例えばDカット,Iカット,マーキング,切欠き部等を形成しておくのが好ましい。ガラス基板3を多角形状としてもよく、この場合にはサブマスター20との軸合わせが容易である。また、ガラス基板3の裏面成形時に表面側の成形光学面との同軸度をあわせるためのマーカーパターンを、表面側の成形時に光学面と同時に成形転写しても良い。
樹脂5Aを硬化させる場合には、サブマスター20の下方に配置した光源52を点灯させサブマスター20側から光照射してもよいし、ガラス基板3の上方に配置した光源54を点灯させガラス基板3側から光照射してもよいし、光源52,54の両方を同時に点灯させサブマスター20側とガラス基板3側との両側から光照射してもよい。
光源52,54としては、上述した光源50と同様の高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、ブラックライト、Gランプ、Fランプ等を使用でき、線状光源であってもよいし点状光源であってもよい。
光源52,54から光照射する場合には、複数の線状又は点状の光源52,54を格子状に配置して樹脂5Aに一度に光が到達するようにしてもよいし、線状又は点状の光源52,54をサブマスター20,ガラス基板3に対し平行にスキャニングして樹脂5Aに順次光が到達するようにしてもよい。この場合、好ましくは光照射時の輝度分布や照度(強度)分布を測定し、その測定結果に基づき照射回数,照射量,照射時間等を制御する。
樹脂5Aが硬化すると、レンズ部5が形成される。その後、レンズ部5とガラス基板3とをサブマスター20から離型し、レンズアレイ1が製造される(当該レンズアレイ1はガラス基板3の表面にレンズ部5のみが形成されたものである。)。
レンズアレイ1をサブマスター20から離型する場合に、予めレンズアレイ1(ガラス基板3)とサブマスター20との間に引張りシロ60を設けておき、引張りシロ60を引っ張ることでレンズアレイ1をサブマスター20から離型するようにしてもよい。
サブマスター20のサブマスター基板26が弾性素材(樹脂)である場合には、これをやや折り曲げてレンズアレイ1をサブマスター20から離型するようにしてもよいし、ガラス基板3がガラスに代わり弾性素材(樹脂)である場合にも、これをやや折り曲げてレンズアレイ1をサブマスター20から離型するようにしてもよい。
レンズアレイ1をサブマスター20からやや剥離して両部材間に隙間が形成されたら、エア又は純水をその隙間に圧送に、レンズアレイ1をサブマスター20から離型するようにしてもよい。
なお、以上の説明ではガラス基板3の片面にレンズ部5を設ける方法について説明したが、両面に設ける場合には、まず、ガラス基板3の一方の面のレンズ部5の光学面形状に対応するポジ形状の成形面を複数有するマスター(図示せず)と、他方の面のレンズ部5の光学面形状に対応するポジ形状の成形面を複数有するマスターとを用意し、これらの各マスターを用いてサブマスター20C,20D(図7(e),(f)参照)を形成する。これによりサブマスター20Cはガラス基板3の一方の面のレンズ部5の光学面形状に対応するネガ形状の成形面を有し、サブマスター20Dは他方の面のレンズ部5の光学面形状に対応するネガ形状の成形面を有することとなる。そして、各サブマスター20C,20Dと、ガラス基板3との間に樹脂5Aを充填した後、樹脂5Aを同時に硬化させてガラス基板3の両面にレンズ部5を成形する。これによれば、ガラス基板3の片面だけで樹脂5Aが硬化収縮することなく、両面で樹脂5Aが同時に硬化収縮してそれぞれレンズ部5となるため、各面に順にレンズ部5を設ける場合と異なり、ガラス基板3の反りを防止することができるため、レンズ部5の形状精度を向上させることができる。なお、ガラス基板3の両面の樹脂5Aを同時に硬化させるとは、同一の硬化プロセスにおいて樹脂5Aを完全に硬化させることを言い、必ずしも同時に硬化を開始・終了させる必要はなく、例えばサブマスター20Cとガラス基板3との間の樹脂5Aを所定の粘度まで増粘した後、この樹脂5Aと、他方の樹脂5Aとを完全に硬化させることとしても良い。
ここで、サブマスター20C,20Dとガラス基板3との間に樹脂5Aを充填するには、3通りの手法を用いることができる。
1つ目の手法では、図7(e),(f)に示すように、サブマスター20Cの上面に樹脂5Aを滴下又は吐出した後、当該サブマスター20Cと、その上方に配設されたガラス基板3とを当接させて、これらガラス基板3及びサブマスター20Cの間に樹脂5Aを充填した状態にした後、ガラス基板3及びサブマスター20Cを互いに当接した状態で一体的に上下反転させ、サブマスター20Dの上面に樹脂5Aを滴下又は吐出した後、当該サブマスター20Dと、その上方に配設されたガラス基板3とを当接させて、これらガラス基板3及びサブマスター20Dの間に樹脂5Aを充填した状態にする。ガラス基板3及びサブマスター20Cを互いに当接した状態で一体的に上下反転するときに、両者が真空チャックにより吸引保持されている場合は、このOFF/ON操作により簡単に実現できる。
2つ目の手法では、ガラス基板3の上面に樹脂5Aを滴下又は吐出した後、当該ガラス基板3と、その上方に配設されたサブマスター20Cとを当接させて、これらガラス基板3及びサブマスター20Cの間に樹脂5Aを充填した状態にするとともに、サブマスター20Dの上面に樹脂5Aを滴下又は吐出した後、当該サブマスター20Dと、その上方に配設されたガラス基板3とを当接させて、これらガラス基板3及びサブマスター20Dの間に樹脂5Aを充填した状態にする。
3つ目の手法では、ガラス基板3の片側の光学面ずつ順次成形硬化を行うが、硬化収縮によるソリを防ぐために両面の成形硬化が終了するまで最初の成形面の離型を行わない。したがって、最初の硬化成形において、サブマスター20Cは充填された樹脂5Aが硬化後も当接したままで、反対面の成形をサブマスター20Dによって行う。ガラス基板3はサブマスター20Cによる成形で、樹脂5Aの硬化収縮により成形面側に引っ張り力をうけているが、これをサブマスター20Cが当接したまま受けることによって反りを防いでいる。この状態で、サブマスター20Dによって反対面の樹脂5Aの充填と成形硬化を行うと、こちら側の硬化収縮による引っ張り力と釣り合って、サブマスター20C、20Dを離型してもガラス基板3は反ることがなくなる。
なお、ガラス基板3とサブマスター20C,20Dとを当接させる際には、間に気泡が残らないようにすることが好ましい。また、ここで用いる樹脂5Aとしては、熱硬化性樹脂であっても、UV硬化性樹脂であっても、揮発硬化性樹脂(HSQなど)であっても良い。UV硬化性樹脂を用いる場合には、サブマスター20C,20Dの少なくとも一方を紫外線透過性としておくことにより、当該一方のサブマスターの側からガラス基板3の両面の樹脂5Aに対して同時に紫外線を照射することができる。
ここで、ガラス基板3の表裏両面にレンズ部5を形成する場合に、図9に示す通りにサブマスター20を縦横2倍ずつ(倍率は変更可能である。)大きくしたような一体型の大径サブマスター200と、図10の通常のサブマスター20とを準備し、ガラス基板3の表面にレンズ部5を形成する場合にはサブマスター200を使用し、その反対側の裏面にレンズ部5を形成する場合にはサブマスター20を複数回にわたり使用するようにしてもよい。
具体的には、ガラス基板3の表面に対しては大径サブマスター200を用いてレンズ部5を一括で形成する。その後のガラス基板3の裏面に対しては、図11に示す通り、サブマスター20を大径サブマスター200の1/4区画ずつそれぞれずらしながら4回にわたりサブマスター20を用いてレンズ部5を形成する。このような構成によれば、大径サブマスター200を用いて形成したレンズ部5を有するガラス基板3に対し、サブマスター20の軸合わせが容易となり、大径サブマスター200を用いて形成したレンズ部5と、サブマスター20を用いて形成したレンズ部5とがガラス基板3の表裏において配置がずれるといった事態を抑えることができる。
ただし、大径サブマスター200を使用する場合には、図12上段から下段に示す通り、そのサブマスター成形部22に対しやや反りが発生する可能性があり、型としての本来の機能を発揮することができない場合もある。そこで、図13に示す通り大径サブマスター200を分割するようにその中央部に十字状に樹脂22Aが存在しない領域(応力緩和部210)を設けて、大径サブマスター200のサブマスター成形部22の反りの発生を抑える(ガラス基板3との応力を緩和する)ような構成とするのが好ましい。
応力緩和部210を設ける場合において、例えば樹脂22Aが光硬化性樹脂であるときには、ガラス基板3又はサブマスター基板26をマスキングして光の未照射部を形成したり、光源52,54をマスキングして光の未照射部を形成したりすればよい。
なお、マスター10Aに代えてマスター10Bを用い、サブマスター20を作製せずに、マスター10Bから直接的にレンズアレイ1のレンズアレイ1を作製してもよい。
この場合、マスター10Bの凹部16に対し樹脂5Aを充填し、その上方からガラス基板3を押圧しながら樹脂5Aを硬化させ、その後ガラス基板3とレンズ部5とをマスター10Bから離型すればよい。樹脂5Aの硬化手段は、樹脂材料により異なるが、例えばUV硬化性樹脂を用いた場合はガラス基板3側からUV照射して硬化させるが、熱硬化性樹脂を用いた場合は赤外線ランプやマスター10B内に埋め込んだヒーターなどにより加熱して硬化させる。
マスター10Bから樹脂5Aを剥離するための離型が重要であり、その離型方法として2種類の方法が考えられる。
第1の方法として、樹脂5Aに離型剤を添加する。この場合、後工程である反射防止コートの密着性が低下したり、ガラス基板3との付着性が低下したりするので、後者に対しては好ましくはカップリング剤などをガラス基板3に塗布して付着力を強化する。
第2の方法として、マスター10Bの表面に離型剤をコートする。当該離型剤としては、トリアジンジチオールやフッ素系、シリコン系の単分子層を形成する離型剤を用いることができる。当該離型剤を用いることで、成膜厚さが10nm程度と、光学面形状に影響を与えない厚みにコートできる。当該離型剤が成形時にはがれないように密着性を高めるため、カップリング剤をマスター10Bに塗布したり、当該離型剤とマスター10Bとの間で架橋を創製するSiO2などをマスター10Bにコートすると、密着性が強くなりよい。
次に、図14を参照しながら、電子機器100の製造方法について説明する。
まず、上記のようにして製造されたレンズアレイ1に反射防止膜92を成膜する。
ここで、反射防止膜92は下記のように形成する。初めに、真空蒸着装置内にレンズアレイ1(反射防止膜92がない状態のレンズアレイ1)を装着し、装置内の圧力を所定圧力(例えば2×10−3Pa)まで減圧すると共に、真空蒸着装置上部のヒーターよりレンズアレイ1を所定温度(例えば240℃)の温度になるまで加熱する。
その後、第1層61を構成する蒸着源を用いて第1層61を形成する。特に、この場合、成膜温度Tbを、リフロー処理で溶融しようとする導電性ペーストの溶融温度に対し−40〜+40℃の範囲内、かつ、リフロー処理温度Taに対し(Ta−60℃)以上で保持する。また、レンズ部5の樹脂5Aがガラス転移点を有している場合には、成膜温度Tbを(ガラス転移点+50℃)以下に保持する。
例えば、第1層61として(Ta2O5+5%TiO2)膜を形成する場合には、蒸発源としてオプトロン社製OA600を用い、電子銃加熱により当該蒸着源を蒸発させればよい。蒸着中は、真空蒸着装置内部の圧力が1.0×10−2PaまでO2ガスを導入し、蒸着速度を5Å/secの条件にコントロールしながら成膜するのがよい。そしてリフロー処理で溶融しようとする導電性ペーストの溶融温度が例えば240℃である場合には、成膜温度(蒸着装置内の温度)を200〜280℃の範囲内で保持する。
その後、レンズアレイ1の両面に第1層61を形成するため、蒸着装置内部の反転機構によりレンズアレイ1を反転させ、上記と同様にしてその裏面にも第1層61を形成する(第2層62の裏面への成膜についても同様である。)。
その後、第1層61の上に続けて、第2層62を構成する蒸着源を用いて第2層62を形成する。この場合も、第1層61を形成する場合と同様に、成膜温度Tbを、リフロー処理で溶融しようとする導電性ペーストの溶融温度に対し−40〜+40℃の範囲内、かつ、リフロー処理温度Taに対し(Ta−60℃)以上で保持する。また、レンズ部5の樹脂5Aがガラス転移点を有している場合には、成膜温度Tbを(ガラス転移点+50℃)以下に保持する。
例えば、第2層62としてSiO2膜を形成する場合には、真空蒸着装置内部の圧力が1.0×10−2PaまでO2ガスを導入し、蒸着速度を5Å/secの条件にコントロールしながら成膜するのがよい。そしてリフロー処理で溶融しようとする導電性ペーストの溶融温度が例えば240℃である場合には、成膜温度Tb(蒸着装置内の温度)を200〜280℃の範囲内で保持する。
以上の工程により、レンズアレイ1に反射防止膜92を成膜することができる。
次に、レンズアレイ1を第2,第3の光学部材912,913ごとに切断・分割して複数のウェハレンズ91を製造し、このウェハレンズ91を用いて基板モジュール105とレンズモジュール106とを組み立て、図14(a)に示す通り、レンズケース150内に予め装着されたカラー部材190の下端部がサブ基板130の上面に当接するまでレンズケース150の装着部150bをサブ基板130の装着孔130aに挿通・固定し、撮像モジュール102を形成する。
その後、図14(b)に示す通り、予め半田等の導電性材料180が塗布(ポッティング)された回路基板101の所定の実装位置に撮像モジュール102やその他の電子部品を載置する。その後、図14(c)に示す通り、撮像モジュール102やその他の電子部品を載置した回路基板101をベルトコンベア等でリフロー炉(図示略)に移送し、当該回路基板101を温度Ta、例えば230〜270℃程度の温度で5〜10分程度加熱(リフロー処理)する。リフロー処理の結果、導電性材料180が溶融して撮像モジュール102がその他の電子部品と一緒に回路基板101に実装され、これをカバーケース103内に組み込むことで電子機器100が製造される。
以上の本実施形態によれば、無機材料からなる反射防止膜92が硬化性樹脂のウェハレンズ91上に形成された撮像レンズ9がリフロー処理に供される場合には、ウェハレンズ91の樹脂の線膨張係数が大きいのに対して反射防止膜92の線膨張係数が小さいため、ウェハレンズ91の部分のみが膨張する結果、反射防止膜92にクラックが生じてしまう場合があるものの、反射防止膜92を(リフロー処理の温度Ta−60℃)以上の成膜温度Tbで成膜することによれば、このようなクラックの発生を防止することができる(下記実施例参照)。
また、ウェハレンズ91の光学面の樹脂材料はガラス転移温度を有しないか、或いは(反射防止膜92の成膜温度Tb−50℃)以上の温度にガラス転移温度を有するものであるので、その上に無機材料からなる反射防止膜92を成膜温度Tbで形成することにより、反射防止膜92におけるしわの発生を顕著に抑制することができる(下記実施例参照)。
また、硬化性樹脂を含有する樹脂5Aをレンズ部5に用いることで、リフロー処理に耐えうる耐熱性を付与することができる。また、硬化性樹脂を含有することでガラス転移温度付近で僅かに軟化する樹脂材料であっても、この樹脂材料を上述のようなもの(ガラス転移温度を有しないか、或いは(反射防止膜92の成膜温度Tb−50℃)以上の温度にガラス転移温度を有するもの)とし、その上に無機材料からなる反射防止膜92を成膜温度Tbで形成することにより、やはり反射防止膜92における膜剥がれ,しわの発生を顕著に抑制することができる。
よって、このようなウェハレンズ91を有する撮像レンズ9をリフロー処理に用いることで、低コストで電子機器100を製造することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は主には第1の実施形態と下記の点で異なっており、それ以外は略同じとなっている。
レンズアレイ1の製造にあたって、成形用の型として、図5のマスター10,サブマスター30,サブサブマスター40が使用される。第1の実施形態では、マスター10(10A)からレンズアレイ1を製造するのにサブマスター20を使用したのに対し、第2の実施形態では、主に、マスター10(10B)からレンズアレイ1を製造するのにサブマスター30,サブサブマスター40の2つの型を使用する点が異なっている。特に、マスター10Bからサブマスター30を作製する工程やサブサブマスター40からレンズアレイ1を製造する工程は第1の実施形態と略同じであり、サブマスター30からサブサブマスター40を作製する点が第1の実施形態と異なっている。
図5(a)に示す通り、マスター10Bは直方体状のベース部12に対し複数の凹部16がアレイ状に形成された型である。凹部16の形状はレンズアレイ1のレンズ部5に対応するネガ形状となっており、この図では略半球形状に凹んでいる。マスター10Bの外形状は四角形でなくとも良く、円形状であっても良いが、ここでは四角形状を例として説明する。
マスター10Bは、ニッケルリンやアルミ合金、快削真鋳などの材料をダイヤモンド切削により高精度に光学面を切削創製されたものであってもよいし、超硬などの高硬度材料を研削加工して創製されたものでもあってもよい。マスター10Bで創製される光学面は、好ましくは図5(a)に示す通りに複数の凹部16がアレイ状に配置されたものであり、単一の凹部16のみが配置されたものであってもよい。
図5(b)に示す通り、サブマスター30はサブマスター成形部32とサブマスター基板36とで構成されている。サブマスター成形部32には複数の凸部34がアレイ状に形成されている。凸部34の形状はレンズアレイ1のレンズ部5に対応するポジ形状となっており、この図では略半球形状に突出している。このサブマスター成形部32は、樹脂32Aによって形成されている。
樹脂32Aは、基本的に第1の実施の形態のサブマスター20の樹脂22Aと同様の材料を使用することができるが、特に離型性かつ耐熱性があり、線膨張係数が小さな樹脂(すなわち、表面エネルギーが小さな樹脂)を使用することが好ましい。具体的には、上述の光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれでも良く、透明又は不透明でもよいが、例えば、熱硬化性樹脂であれば上述のフッ素系樹脂にすることが必要である。シリコーン系樹脂にすると線膨張係数が大きいので、サブサブマスター40に熱転写する場合に変形して、微細構造を正確に転写できないためである。
サブマスター基板36は、サブマスター基板26と同様の材料を使用することができる。
図5(c)に示す通り、サブサブマスター40はサブサブマスター成形部42とサブサブマスター基板46とで構成されている。サブサブマスター成形部42には複数の凹部44がアレイ状に形成されている。凹部44はレンズアレイ1のレンズ部5に対応する部位であり、略半球形状に凹んでいる。このサブサブマスター成形部42は、樹脂42Aによって形成されている。
樹脂42Aも、第1の実施の形態のサブマスター20の樹脂22Aと同様の材料を使用することができるが、撓ませることができ離型し易い点で、シリコーン系樹脂又はオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
サブサブマスター基板46も、サブマスター基板26と同様の材料を使用することができる。
次に、図15,図16を参照しながら、レンズアレイ1の製造方法について簡単に説明する。
図15(a)に示す通り、マスター10B上に樹脂32Aを塗布し、樹脂32Aを硬化させ、マスター10Bの凹部16を樹脂32Aに転写し、樹脂32Aに対し複数の凸部34を形成する。これにより、サブマスター成形部32が形成される。
図15(b)に示す通り、サブマスター成形部32に対しサブマスター基板36を接着する。
その後、図15(c)に示す通り、マスター10Bからサブマスター成形部32とサブマスター基板36とを離型し、サブマスター30が作製される。
その後、図15(d)に示す通り、サブマスター30上に樹脂42Aを塗布し、樹脂42Aを硬化させ、サブマスター30の凸部34を樹脂42Aに転写し、樹脂42Aに対し複数の凹部44を形成する。これにより、サブサブマスター成形部42が形成される。
その後、図15(e)に示す通り、サブサブマスター成形部42に対しサブサブマスター基板46を装着する。
図16(f)に示す通り、サブマスター30からサブサブマスター成形部42とサブサブマスター基板46とを離型し、サブサブマスター40が作製される。
図16(g)に示す通り、サブサブマスター40の凹部44に対し樹脂5Aを充填し、その上方からガラス基板3を押圧しながら樹脂5Aを硬化させる。その結果、樹脂5Aからレンズ部5が形成される。その後、レンズ部5とガラス基板3とをサブサブマスター40から離型し、レンズアレイ1が製造される(当該レンズアレイ1はガラス基板3の表面にのみレンズ部5が形成されたものである。)。
ガラス基板3の裏面にもレンズ部5を形成してガラス基板3の表裏両面に対しレンズ部5を形成する場合には、ガラス基板3の一方の面のレンズ部5の光学面形状に対応するネガ形状の成形面を複数有するマスター(図示せず)と、他方の面のレンズ部5の光学面形状に対応するネガ形状の成形面を複数有するマスターとを用意し、これらの各マスターを用いて、ポジ形状の成形面を有するサブマスターを形成し、更に、これらの各サブマスターを用いてサブサブマスターを形成する。そして、各サブサブマスターと、ガラス基板3との間に樹脂5Aを充填した後、樹脂5Aを硬化させてガラス基板3の両面にレンズ部5を成形する。
なお、上記の実施形態においては、本発明に係る光学素子を撮像レンズ9として説明したが、他の種類・用途の光学素子としても良い。また、ウェハレンズ91の表面に反射防止膜92が設けられることとして説明したが、帯電防止膜など、他の種類のコートが設けられることとしても良い。
以下、実施例および比較例を挙げることにより、本発明に係る光学素子をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
[試料の作製]
本発明の実施例,比較例として、以下の表1〜表4に示すような試料(1)〜(96)を作製した。
具体的には、レンズ部5の樹脂として、耐熱性のある各種のUV硬化性樹脂を選択した(表中、「樹脂」の欄参照)。
ここで、表中、「エポキシ樹脂A」、「エポキシ樹脂B」、「エポキシ樹脂C」とは、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂に対し、UV硬化開始剤としてUVI−6992を4wt%添加したものを示す。エポキシ樹脂A、B、Cはそれぞれエポキシ当量の異なる樹脂を用いることで、Tgを異なるものとした。具体的には、エポキシ当量が低いものほど、架橋密度が高くなり、Tgを高くすることが可能である。
また、アクリル樹脂としては、アダマンチルメタアクリレート系樹脂を用いた。
なお、これらの樹脂のガラス転移温度Tgを、SII社(セイコーインスツルメンツ社)製のTMA/SS装置にて30〜290℃まで5℃/minで昇温、50mNの荷重で測定したところ、表中「Tg」の欄に示した数値となった。
また、表中、「コート温度Tb」とは、反射防止膜の成膜温度Tbを意味する。この反射防止膜は、レンズアレイ1におけるレンズ部5の表面に対し、真空蒸着法によって形成した。具体的には、まず真空蒸着装置内にレンズアレイ1を装着し、装置内の圧力を2×10−3Paまで減圧するとともに、真空蒸着装置上部のヒーターによってレンズアレイ1を240℃の温度になるまで加熱した。次に、レンズアレイ1上に(Ta2O5+5%TiO2)の膜を20nm形成するため、膜の原料としてオプトロン社製OA600を用い、これを電子銃加熱により蒸発させることでレンズアレイ1上に(Ta2O5+5%TiO2)の膜を形成した。ここで、蒸着時は真空蒸着装置内の圧力が1.0×10−2PaになるまでO2ガスを導入し、蒸発速度5Å/secにコントロールしながら蒸着した。続けて、真空蒸着装置内部の圧力が1.2×10−2PaになるまでO2ガスを導入し、蒸発速度5Å/secにコントロールしながらSiO2膜110nmの蒸着を実施した。
[試料の評価](反射防止膜のしわ評価)
真空蒸着機内にて上述のように真空引き(減圧)し、上記表中の「コート温度Tb」で反射防止膜を成膜し、室温に冷却した後の各資料(1)〜(96)(リフロー処理されていないもの)について、光学顕微鏡にて表面状態を観察し、下記の基準に従ってしわの有無を評価したところ、上記表中の「コートしわ」欄に示す通りとなった。
○:しわが観察されない
×:しわが観察される
なお、反射防止膜を成膜せずに、真空蒸着機内にてコート温度Tbに昇温させた場合は、いずれの場合でも、しわが観察されなかった。
(リフロー後のクラック評価)
各資料(1)〜(96)を上記表中「リフロー温度」欄の温度、5分のリフロー条件下に放置し、放置後の表面の荒れ具合(クラック)を光学顕微鏡で観察し、下記の基準に従って評価したところ、上記表中の「コートクラック」欄に示す通りとなった。
○:クラックが見られない
△:1本以上、10本以下のクラックが見られる
×:11本以上のクラックが見られる
(総合評価)
以上の結果から、本発明の実施例としての試料(17),(23),(24),(40),(41),(46)〜(48),(57),(63)〜(65),(69)〜(72),(80),(81),(86)〜(89),(92)〜(96)では、比較例としての他の試料と比較して、しわ及びクラックの発生が顕著に防止されることが分かった。