以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1(a)に示す通り、ウエハレンズ1は円形状のガラス基板3と、光学部材としての複数の凸レンズ部5,凹レンズ部7とを、有している。ガラス基板3の表面には複数の凸レンズ部5がアレイ状に配置されており、ガラス基板3の裏面には複数の凹レンズ部7が配置されている。凸レンズ部5と凹レンズ部7とは互いに上下方向において対応した位置に配置されている。凸レンズ部5,凹レンズ部7には、光学面の表面に回折溝や段差等の微細構造が形成されていてもよい。
凸レンズ部5は樹脂5Aで形成されている。この樹脂5Aとしては、硬化性樹脂材料が用いられる。硬化性樹脂材料としては大きく分けて光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とに分類され、樹脂5Aは光硬化性樹脂,熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
光硬化性樹脂としては、例えばアクリル樹脂やアリルエステル樹脂などを用いることができ、これら樹脂はラジカル重合により反応硬化させることができる。その他の光硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系の樹脂などを用いることができ、当該樹脂はカチオン重合により反応硬化させることができる。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えばシリコーン樹脂などを用いることができ、当該樹脂は上記ラジカル重合やカチオン重合の他に付加重合により硬化させることができる。
凹レンズ部7は樹脂7Aで形成されている。樹脂7Aとしては樹脂5Aと同様の硬化性樹脂が用いられる。樹脂7Aと樹脂5Aとは互いに同種の樹脂であってもよいし、異なる種類の樹脂であってもよい。
また、図1(b)は、ウエハレンズ集合体の概略構成を示す斜視図である。ウエハレンズ集合体100は、ウエハレンズ1とウエハレンズ1Bとが間にスペーサー40を介在させて積層されて構成されている。
<ウエハレンズ>
図1(b)に示すウエハレンズ1は円形状のガラス基板3と複数の凸レンズ部4,5とを有しており(図12参照)、ガラス基板3の表裏両面に複数の凸レンズ部4,5がアレイ状に配置された構成を有している。凸レンズ部4,5には、光学面の表面に回折溝や段差等の微細構造が形成されていてもよい。
凸レンズ部4,5は樹脂4A,5Aで形成されている。この樹脂4A,5Aとしては、硬化性樹脂材料が用いられる。硬化性樹脂材料としては大きく分けて光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とに分類され、樹脂4A,5Aは光硬化性樹脂,熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
光硬化性樹脂としては、例えばアクリル樹脂やアリル樹脂などを用いることができ、これら樹脂はラジカル重合により反応硬化させることができる。その他の光硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系の樹脂などを用いることができ、当該樹脂はカチオン重合により反応硬化させることができる。
一方、熱硬化性樹脂は上記ラジカル重合やカチオン重合の他にシリコーン等のように付加重合により硬化させることもできる。
上述した樹脂4A、5A、7Aとして使用可能な樹脂の具体例は下記の通りである。
(アクリル樹脂)
重合反応に用いられる(メタ)アクリレートは特に制限はなく、一般的な製造方法により製造された下記(メタ)アクリレートを使用することができる。エステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アルキレン(メタ)アクリレート、芳香環を有する(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらを1種類又は2種類以上を用いることができる。
特に脂環式構造を持つ(メタ)アクリレートが好ましく、酸素原子や窒素原子を含む脂環構造であってもよい。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、ビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートや、イソボロニル(メタ)アクリレート、水添ビスフェノール類のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また特にアダマンタン骨格を持つと好ましい。例えば、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート(特開2002−193883号公報参照)、アダマンチルジ(メタ)アクリレート(特開昭57−500785)、アダマンチルジカルボン酸ジアリル(特開昭60―100537)、パーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル(特開2004−123687)、新中村化学製 2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、1,3-アダマンタンジオールジアクリレート、1,3,5-アダマンタントリオールトリアクリレート、不飽和カルボン酸アダマンチルエステル(特開2000−119220)、3,3’−ジアルコキシカルボニル-1,1’ビアダマンタン(特開2001−253835号公報参照)、1,1’−ビアダマンタン化合物(米国特許第3342880号明細書参照)、テトラアダマンタン(特開2006−169177号公報参照)、2−アルキル−2−ヒドロキシアダマンタン、2−アルキレンアダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−tert−ブチル等の芳香環を有しないアダマンタン骨格を有する硬化性樹脂(特開2001−322950号公報参照)、ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタン類やビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(特開平11−35522号公報、特開平10−130371号公報参照)等が挙げられる。
また、その他反応性単量体を含有することも可能である。(メタ)アクリレートであれば、例えば、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、などが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとして、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(アリルエステル樹脂)
アリル基を持ちラジカル重合による硬化する樹脂で、例えば次のものが挙げられるが、特に以下のものに限定されるわけではない。
芳香環を含まない臭素含有(メタ)アリルエステル(特開2003−66201号公報参照)、アリル(メタ)アクリレート(特開平5−286896号公報参照)、アリルエステル樹脂(特開平5−286896号公報、特開2003−66201号公報参照)、アクリル酸エステルとエポキシ基含有不飽和化合物の共重合化合物(特開2003−128725号公報参照)、アクリレート化合物(特開2003−147072号公報参照)、アクリルエステル化合物(特開2005−2064号公報参照)等が挙げられる。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を持ち光又は熱により重合硬化するものであれば特に限定されず、硬化開始剤としても酸無水物やカチオン発生剤等を用いることができる。エポキシ樹脂は硬化収縮率が低いため、成形精度の優れたレンズとすることができる点で好ましい。
エポキシの種類としては、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が挙げられる。その一例として、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル等を挙げることができる。
硬化剤は硬化性樹脂材料を構成する上で使用されるものであり特に限定はない。また、本発明において、硬化性樹脂材料と、添加剤を添加した後の光学材料の透過率を比較する場合、硬化剤は添加剤には含まれないものとする。硬化剤としては、酸無水物硬化剤やフェノール硬化剤等を好ましく使用することができる。酸無水物硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸等を挙げることができる。また、必要に応じて硬化促進剤が含有される。硬化促進剤としては、硬化性が良好で、着色がなく、熱硬化性樹脂の透明性を損なわないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)等のイミダゾール類、3級アミン、4級アンモニウム塩、ジアザビシクロウンデセン等の双環式アミジン類とその誘導体、ホスフィン、ホスホニウム塩等を用いることができ、これらを1種、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
(シリコーン樹脂)
Si−O−Siを主鎖としたシロキサン結合を有するシリコーン樹脂を使用することができる。当該シリコーン樹脂として、所定量のポリオルガノシロキサン樹脂よりなるシリコーン系樹脂が使用可能である(例えば特開平6−9937号公報参照)。
熱硬化性のポリオルガノシロキサン樹脂は、加熱による連続的加水分解−脱水縮合反応によって、シロキサン結合骨格による三次元網状構造となるものであれば、特に制限はなく、一般に高温、長時間の加熱で硬化性を示し、一度硬化すると過熱により再軟化し難い性質を有する。
このようなポリオルガノシロキサン樹脂は、下記一般式(A)が構成単位として含まれ、その形状は鎖状、環状、網状形状のいずれであってもよい。
((R1)(R2)SiO)n … (A)
上記一般式(A)中、「R1」及び「R2」は同種又は異種の置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示す。具体的には、「R1」及び「R2」として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。「R1」及び「R2」は水酸基およびアルコキシ基から選択される基であってもよい。また、上記一般式(A)中、「n」は50以上の整数を示す。
ポリオルガノシロキサン樹脂は、通常、トルエン、キシレン、石油系溶剤のような炭化水素系溶剤、またはこれらと極性溶剤との混合物に溶解して用いられる。また、相互に溶解しあう範囲で、組成の異なるものを配合して用いてもよい。
ポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、オルガノハロゲノシランの一種または二種以上の混合物を加水分解ないしアルコリシスすることによって得ることができ、ポリオルガノシロキサン樹脂は、一般にシラノール基またはアルコキシ基等の加水分解性基を含有し、これらの基をシラノール基に換算して1〜10重量%含有する。
これらの反応は、オルガノハロゲノシランを溶融しうる溶媒の存在下に行うのが一般的である。また、分子鎖末端に水酸基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンを、オルガノトリクロロシランと共加水分解して、ブロック共重合体を合成する方法によっても得ることができる。このようにして得られるポリオルガノシロキサン樹脂は一般に残存するHClを含むが、本実施形態の組成物においては、保存安定性が良好なことから、10ppm以下、好ましくは1ppm以下のものを使用するのがよい。
ウエハレンズ1の製造にあたっては、図2のマスター成形型10A(以下、単に「マスター10A」とする),サブマスター成形型20(以下、単に「サブマスター20」とする)と、図3のマスター成形型10B(以下、単に「マスター10B」とする),サブマスター成形型30(以下、単に「サブマスター30」とする)と、が使用される。
マスター10Aはサブマスター20を製造する際に用いる母型であり、サブマスター20はウエハレンズ1(凸レンズ部5)を成形する際に用いる成形型である。マスター10Bはサブマスター30を製造する際に用いる母型であり、サブマスター30はウエハレンズ1(凹レンズ部7)を成形する際に用いる成形型である。
サブマスター20,30はウエハレンズ1を量産するのに複数回にわたり使用され、その使用目的,使用頻度などにおいてマスター10A,10Bとは異なるものである。
<マスター>
図2(a)に示す通り、マスター10Aは直方体状のベース部12に対し複数の凸部14がアレイ状に形成されている。凸部14はウエハレンズ1の凸レンズ部5に対応する部位であり、略半球形状に突出している。なお、マスター10Aの外形状は、このように四角形であっても良いし円形であっても良い。本発明の権利範囲はこの差異によって制約されないが、以降は四角形状を例にして説明する。
凸部14の表面(成形面)形状は、ガラス基板3上に成形転写する凸レンズ部5の光学面形状に対応するポジ形状となっている。
マスター10Aの材料としては、切削や研削などの機械加工によって光学面形状を創製する場合には、金属または金属ガラスを用いることができる。分類としては鉄系の材料とその他合金が挙げられる。鉄系としては、熱間金型、冷間金型、プラスチック金型、高速度工具鋼、一般構造用圧延鋼材、機械構造用炭素鋼、クロム・モリブデン鋼、ステンレス鋼が挙げられる。その内、プラスチック金型としては、プリハードン鋼、焼入れ焼戻し鋼、時効処理鋼がある。プリハードン鋼としては、SC系、SCM系、SUS系が挙げられる。さらに具体的には、SC系はPXZがある。SCM系はHPM2、HPM7、PX5、IMPAXが挙げられる。SUS系は、HPM38、HPM77、S-STAR、G-STAR、STAVAX、RAMAX-S、PSLが挙げられる。また、鉄系の合金としては特開2005-113161や特開2005-206913が挙げられる。非鉄系の合金は主に、銅合金、アルミ合金、亜鉛合金がよく知られている。例としては、特開平10-219373、特開2000-176970に示されている合金が挙げられる。金属ガラスの材料としては、PdCuSiやPdCuSiNiなどがダイヤモンド切削における被削性が高く、工具の磨耗が少ないので適している。また、無電解や電解のニッケル燐メッキなどのアモルファス合金もダイヤモンド切削における被削性が良いので適している。これらの高被削性材料は、マスター10A全体を構成しても良いし、メッキやスパッタなどの方法によって特に光学転写面の表面だけを覆っても良い。
マスター10Aの材料として、機械加工はやや難しいが、ガラスを用いることもできる。マスター10Aにガラスを用いれば、光を通すというメリットも得られる。一般的に使用されているガラスであれば特に限定されない。
特に、マスター10Aのモールド成形用材料としては、低融点ガラスや、金属ガラスのように低温で容易に流動性が確保できる材料が挙げられる。低融点ガラスを使用すれば、UV硬化性の材料を成形する際にサンプルの金型側からも照射できるようになるため有利である。低融点ガラスとしては、ガラス転移点が600℃程度またはそれ以下のガラスで、ガラス組成がZnO-PbO- B2O3、PbO-SiO2-B2O3、PbO-P2O5-SnF2などが挙げられる。また、400℃以下で溶融するガラスとして、PbF2-SnF2-SnO-P2O5及びその類似構造品が挙げられる。具体的な材料として、S-FPL51、S-FPL53、S-FSL 5、S-BSL 7、S-BSM 2、S-BSM 4、S-BSM 9、S-BSM10、S-BSM14、S-BSM15、S-BSM16、S-BSM18、S-BSM22、S-BSM25、S-BSM28、S-BSM71、S-BSM81、S-NSL 3、S-NSL 5、S-NSL36、S-BAL 2、S-BAL 3、S-BAL11、S-BAL12、S-BAL14、S-BAL35、S-BAL41、S-BAL42、S-BAM 3、S-BAM 4、S-BAM12、S-BAH10、S-BAH11、S-BAH27、S-BAH28、S-BAH32、S-PHM52、S-PHM53、S-TIL 1、S-TIL 2、S-TIL 6、S-TIL25、S-TIL26、S-TIL27、S-TIM 1、S-TIM 2、S-TIM 3、S-TIM 5、S-TIM 8、S-TIM22、S-TIM25、S-TIM27、S-TIM28、S-TIM35、S-TIM39、S-TIH 1、S-TIH 3、S-TIH 4、S-TIH 6、S-TIH10、S-TIH11、S-TIH13、S-TIH14、S-TIH18、S-TIH23、S-TIH53、S-LAL 7、S-LAL 8、S-LAL 9、S-LAL10、S-LAL12、S-LAL13、S-LAL14、S-LAL18、S-LAL54、S-LAL56、S-LAL58、S-LAL59、S-LAL61、S-LAM 2、S-LAM 3、S-LAM 7、S-LAM51、S-LAM52、S-LAM54、S-LAM55、S-LAM58、S-LAM59、S-LAM60、S-LAM61、S-LAM66、S-LAH51、S-LAH52、S-LAH53、S-LAH55、S-LAH58、S-LAH59、S-LAH60、S-LAH63、S-LAH64、S-LAH65、S-LAH66、S-LAH71、S-LAH79、S-YGH51、S-FTM16、S-NBM51、S-NBH 5、S-NBH 8、S-NBH51、S-NBH52、S-NBH53、S-NBH55、S-NPH 1、S-NPH 2、S-NPH53 、P-FK01S、P-FKH2S、P-SK5S、P-SK12S、P-LAK13S、P-LASF03S、P-LASFH11S、P-LASFH12S等が挙げられるが特にこれらに限定される必要はない。
また、金属ガラスも同様にモールドにより、容易に成形することができる。金属ガラスとしては特開平8−109419、特開平8−333660、特開平10−81944、特開平10−92619、特開2001−140047、特開2001−303218、特表2003−534925のような構造が挙げられているが、特にこれらに限定される必要はない。
図3(a)に示す通り、マスター10Bは直方体状のベース部12に対し複数の凹部16がアレイ状に形成されている。凹部16はウエハレンズ1の凹レンズ部7に対応する部位であり、略半球形状に凹んでいる。なお、マスター10Bの外形状は、このように四角形であっても良いし円形であっても良い。本発明の権利範囲はこの差異によって制約されないが、以降は四角形状を例にして説明する。凹部16の表面(成形面)形状は、ガラス基板3上に成形転写する凹レンズ部7の光学面形状に対応するネガ形状となっている。マスター10Bの材料としては、マスター10Aと同様の材料が用いられる。
ここで、「サブマスター20」は、「凸レンズ部5」を成形するための成形型であり、図12に示す「サブマスター20B」は、「凸レンズ部4」を成形するための成形型であり、これらを区別している。「サブマスター20B」は、基本的に「サブマスター20」と同様の構成及び材料であり、凹部24の表面形状が凸レンズ部4に対応するネガ形状となっているだけであるので、ここではサブマスター20についてのみ詳細に説明する。
本実施形態では、サブマスター20をウエハレンズ1の凸レンズ部5の成形に用いる例を示すが、これに限らず、サブマスター20(の構成)は表面に微細でかつ精密な凹凸形状(ナノサイズスケールの凹凸形状)を形成することが要求される光学素子や精密素子などの成形にも適用可能であって、例えば単品のレンズや複数のレンズをアレイ状に配置したレンズアレイの成形、パターンドメディアの基材の成形、ナノインプリント技術におけるナノホールの成形技術などにも応用可能である。
<サブマスター>
図2(b)に示す通り、サブマスター20は、主には成形部22と基材26とで構成されている。成形部22には複数の凹部24がアレイ状に形成されている。凹部24の表面(成形面)形状はウエハレンズ1における凸レンズ部5に対応するネガ形状となっており、この図では略半球形状に凹んでいる。
他方、図3(b)に示す通り、サブマスター30は、主には成形部32と基材36とで構成されている。成形部32には複数の凸部34がアレイ状に形成されている。凸部34の表面(成形面)形状はウエハレンズ1における凹レンズ部7に対応するポジ形状となっており、この図では略半球形状に突出している。
≪成形部≫
成形部22は、樹脂22Aによって形成されている。樹脂22Aとしては、離型性の良好な樹脂、特に透明樹脂が好ましい。離型剤を塗布しなくても離型できる点で優れる。樹脂22Aとしては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでも構わない。
光硬化性樹脂としては、フッ素系樹脂が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂が挙げられる。中でも、離型性の良好なもの、つまり硬化させた時の表面エネルギーの低い樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどの透明で比較的離型性の良いオレフィン系樹脂が挙げられる。なお、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂の順に離型性が良好となる。この場合、基材26は無くても構わない。このような樹脂を使用することにより、撓ませることができるので離型の際にさらに優位となる。
他方、成形部32も成形部22と同様の材料(樹脂32A)で構成されている。樹脂32Aと樹脂22Aとは互いに同種の樹脂であってもよいし、異なる種類の樹脂であってもよい。
以下、樹脂22A,樹脂32Aとして使用可能なフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、熱可塑性樹脂は下記の通りである。
(フッ素系樹脂)
フッ素系樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4,6フッ素化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVF(ポリビニルフルオライド)等が挙げられる。
フッ素系樹脂の優位点としては、離型性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、低摩擦性などだが、欠点としては、結晶性なので透明性に劣る。融点が高いので、成形時に高温(300℃程度)が必要である。
また、成形方法は、キャスト成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形などであり、その中でも特に、光透過性に優れ、射出成形や押出成形も可能なFEP、PFA、PVDF等が好ましい。
溶融成形可能なグレートとしては、例えば、旭硝子製 Fluon PFA、住友3M社製 Dyneon PFA、Dyneon THV 等が挙げられる。特に、Dyneon THVシリーズは、低融点(120℃程度)なので、比較的低温で成形でき、高透明なので好ましい。
また、熱硬化性のアモルファスフッ素樹脂として、旭硝子製 サイトップ グレードSも高透過率、良離型性で好ましい。
(シリコーン系樹脂)
シリコーン系樹脂には、1液湿気硬化型のものと、2液付加反応型、2液縮合型のものがある。
優位点としては、離型性、柔軟性、耐熱性、難燃性、透湿性、低吸水性、透明グレードが多いなどだが、欠点としては、線膨張率が大きいなどがある。
特に、PDMS(ポリジメチルシロキサン)構造を含むような、型取り用途のシリコーン樹脂が離型性良好で好ましく、RTVエラストマーの、高透明グレードが望ましい。例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製 TSE3450(2液混合、付加型)、旭化成ワッカーシリコーン製 ELASTOSIL M 4647(2液型RTVシリコーンゴム)、また、信越シリコーン製のKE-1603(2液混合、付加型RTVゴム)、東レダウコーニング製のSH−9555(2液混合、付加型RTVゴム)、SYLGARD 184、シルポット184、WL−5000シリーズ(感光性シリコーンバッファー材料、UVによりパターニング可能)等が好ましい。
成形方法は、2液型RTVゴムの場合、室温硬化または加熱硬化である。
シリコーン系樹脂の利点は、マスター10から簡単に離型でき、転写性に優れる点である一方で、欠点は、やわらかく脆いため、凸レンズ部5の成形の際に、数10〜100ショット程度しかもたない点である。これを補うため、シリコーン系樹脂に転写させたあと、さらにNi(ニッケル)をコーティングする。コート方法は、電鋳、蒸着、スパッタリング、など何れでもよい。これでショット数は向上する。しかし、凸レンズ部5への離型性が、そんなによくない。そこで、Niコートの上からさらに、離型剤を塗布する。このように成形部22の樹脂部22AをPDMSとし、かつ、その表面にNiコートし、さらに、離型剤を塗布することによって、マスター10及び凸レンズ部5からの離型性を良好にしつつ、サブマスター20の寿命を延ばすことができる。また、サブマスター20も作りやすく、コストダウンにもつながる。
離型剤としては、シランカップリング剤構造のように、末端に加水分解可能な官能基が結合した材料、すなわち、金属の表面に存在するOH基との間で脱水縮合又は水素結合等を起こして結合するような構造を有するものが挙げられる。末端がシランカップリング構造を持ち、他端が離型性機能を持つ離型剤の場合、サブマスターの表面にOH基が形成されていればいるほど、サブマスター表面の共有結合する箇所が増え、より強固な結合ができる。その結果、何ショット成形をしても、離型効果は薄れることなく、耐久性が増す。また、プライマー(下地層、SiO2コートなど)が不要となるので、薄膜を保ったまま耐久性向上の効果を得ることができる。
末端に加水分解可能な官能基が結合した材料とは、好ましくは官能基としてアルコキシシラン基やハロゲン化シラン基、4級アンモニウム塩、リン酸エステル基などからなる材料が挙げられる。また、末端基に、例えばトリアジンチオールのような、金型と強い結合を起こすような基でもよい。具体的には、次の一般式で示されるアルコキシシラン基(下記一般式(B))又はハロゲン化シラン基(下記一般式(C))を有するものである。
−Si(OR1)nR2(3−n) …(B)
−SiXmR3(3−m) …(C)
ここで、R1およびR2はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、nおよびmは1,2または3、R3はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)またはアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)である。Xはハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)である。
また、R1、R2、R3またはXがSiに2以上結合している場合には、上記の基または原子の範囲内で、例えば2つのRmがアルキル基とアルコキシ基であるように異なっていてもよい。
アルコキシシラン基−SiOR1およびハロゲン化シラン基−SiXは、水分と反応して−SiOHとなり、さらにこれがガラス、金属等の型材料の表面に存在するOH基との間で脱水縮合または水素結合等を起こして結合する。
図13は、末端に加水分解可能な官能基の一例としてアルコキシシラン基を使用した離型剤と、マスター10表面のOH基との反応図を示している。
図13(a)中、−ORはメトキシ(−OCH3)やエトキシ(−OC2H5)を表し、加水分解によりメタノール(CH3OH)やエタノール(C2H5OH)を発生して、図13(b)のシラノール(−SiOH)となる。その後、部分的に脱水縮合して、図13(c)のようにシラノールの縮合体となる。さらに、図13(d)のようにマスター10(無機材料)表面のOH基と水素結合により吸着し、最後に図13(e)のように脱水して、−O− 化学結合(共有結合)する。なお、図13ではアルコキシシラン基の場合を示したが、ハロゲン化シラン基の場合も基本的に同様の反応が起こる。
すなわち本発明に使用する離型剤は、その一端でサブマスター表面に化学結合し、他端に機能性基を配向して、サブマスターを被うこととなり、薄くて耐久性に優れた均一な離型層を形成することができる。
離型性機能を持つ側の構造として好ましいのは、表面エネルギーの低いもの、例えば、フッ素置換炭化水素基や炭化水素基である。
(機能性側がフッ素系の離型剤)
フッ素置換炭化水素基としては、特に分子構造の一端にCF3(CF2)a−基や、CF3・CF3・CF(CF2)b−基などのパーフルオロ基(aおよびbは整数)を持つフッ素置換炭化水素基が好ましく、また、パーフルオロ基の長さが炭素数にして2個以上が好ましく、CF3(CF2)a−のCF3につづくCF2基の数は5以上が適切である。
また、パーフルオロ基は直鎖である必要はなく、分岐構造を有していてもよい。さらに、近年の環境問題対応として、CF3(CF2)c−(CH2)d−(CF2)e−のような構造でもよい。この場合、cは3以下、dは整数(好ましくは1)、eは4以下、である。
上記のフッ素離型剤は通常は固体であるが、これをサブマスターの表面に塗布するには、有機溶剤に溶解した溶液とする必要がある。離型剤の分子構造によって異なってくるが、多くはその溶媒としてフッ化炭化水素系の溶剤またはそれに若干の有機溶媒を混合したものが適している。溶媒の濃度は特に限定ないが、必要とする離型膜は特に薄いことが特徴であるので、濃度は低いもので充分であり、1〜3重量%でよい。
この溶液をサブマスター表面に塗布するには、浸漬塗布、スプレー塗布、ハケ塗り、スピンコート等の通常の塗布方法を用いることができる。塗布後は通常は自然乾燥で溶媒を蒸発させて乾燥塗膜とするが、このとき塗布された膜厚はとくに規定するべきものではないが、20μm以下が適当である。
具体例としては、ダイキン工業製 オプツールDSX、デュラサーフHD−1100、HD−2100、住友3M製 ノベックEGC1720、竹内真空被膜製 トリアジンチオールの蒸着、AGC製 アモルファスフッ素 サイトップ グレードM、エヌアイマテリアル製 防汚コートOPC-800等が挙げられる。
(機能性側が炭化水素系の離型剤)
炭化水素基としては、CnH2n+1 のように直鎖でもよいし、分岐していてもよい。シリコーン系離型剤がこの分類に含まれる。
従来、オルガノポリシロキサン樹脂を主成分とする組成物であり、撥水性を示す硬化皮膜を形成する組成物としては数多くの組成物が知られている。例えば、特開昭55−48245号公報には水酸基含有メチルポリシロキサン樹脂とα,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンとオルガノシランからなり、硬化して離型性、防汚性に優れ、撥水性を示す皮膜を形成する組成物が提案されている。また、特開昭59−140280号公報にはパーフルオロアルキル基含有オルガノシランとアミノ基含有オルガノシランを主成分とするオルガノシランの部分共加水分解縮合物を主剤とする組成物であり、撥水性、撥油性に優れた硬化皮膜を形成する組成物が提案されている。
具体例としては、AGCセイミケミカル製 モールドスパット、マツモトファインケミカル製 オルガチックスSIC-330,434、東レダウケミカル製 SR−2410などが挙げられる。また、自己組織化単分子膜として、日本曹達製 SAMLAY が挙げられる。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、脂環式炭化水素系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリイミド樹脂等の透明樹脂が挙げられるが、これらの中では、特に脂環式炭化水素系樹脂が好ましく用いられる。サブマスター20を熱可塑性樹脂で構成すれば、従来から実施している射出成形技術をそのまま転用することができ、サブマスター20を容易に作製することができる。また熱可塑性樹脂が脂環式炭化水素系樹脂であれば、吸湿性が非常に低いため、サブマスター20の寿命が長くなる。また、シクロオレフィン樹脂等の脂環式炭化水素系樹脂は、耐光性・光透過性に優れるため、活性光線硬化性樹脂を硬化させるために、UV光源等の短波長の光を用いた場合も劣化が少なく、金型として長期間用いることができる。
脂環式炭化水素系樹脂としては、下記式(1)で表されるものが例示される。
上記式(1)中、「x」,「y」は共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。「n」は0、1又は2で置換基Qの置換数を示す。「R1」は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種又は2種以上の(2+n)価の基である。「R2」は水素原子であるか、又は炭素及び水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種若しくは2種以上の1価の基である。「R3」は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種又は2種以上の2価の基である。「Q」はCOOR4(R4は水素原子であるか、又は炭化水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種又は2種以上の1価の基である。)で表される構造群から選ばれる1種又は2種以上の1価の基である。
前記一般式(1)において、R1は、好ましくは炭素数2〜12の炭化水素基群から選ばれる1種ないし2種以上の2価の基であり、より好ましくは下記一般式(2)(式(2)中、pは0〜2の整数である。);
で表される2価の基であり、更に好ましくは前記一般式(2)において、pが0または1である2価の基である。R1の構造は、1種のみ用いても2種以上併用しても構わない。R2の例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基等が挙げられるが、好ましくは、水素原子、及び/又はメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。R3の例としては、この基を含む構造単位の好ましい例として、n=0の場合、例えば、(a)、(b)、(c)(但し、式(a)〜(c)中、R1は前述の通り);
などが挙げられる。また、nは好ましくは0である。
本実施形態において共重合のタイプは特に制限されるものではなく、ランダム共重合、ブロック共重合、交互共重合等、公知の共重合のタイプを適用することができるが、好ましくはランダム共重合である。
また、本実施形態で用いられる重合体は、本実施形態の成形方法によって得られる製品の物性を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し構造単位を有していてもよい。その共重合比は特に限定されることはないが、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、それ以上共重合させた場合には、光学特性を損ない高精度の光学部品が得られない恐れがある。この時の共重合のタイプは特に限定はされないが、ランダム共重合が好ましい。
サブマスター20に適用される好ましい熱可塑性脂環式炭化水素系重合体のもう一つの例としては、脂環式構造を有する繰り返し単位が、下記一般式(4)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記式(5)及び/又は下記式(6)及び/又は下記式(7)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを合計含有量が90質量%以上になるように含有し、さらに繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上10質量%未満である重合体が例示される。
式(4)、式(5)、式(6)及び式(7)中、R21〜R33は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等を表す。具体的に、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を挙げることができ、極性基で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば炭素原子1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基としては、例えば炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基:炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。
上記式(4)中のXは、脂環式炭化水素基を表し、それを構成する炭素数は、通常4個〜20個、好ましくは4個〜10個、より好ましくは5個〜7個である。脂環式構造を構成する炭素数をこの範囲にすることで複屈折を低減することができる。また、脂環式構造は単環構造に限らず、例えばノルボルナン環などの多環構造のものでもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素−炭素不飽和結合を有してもよいが、その含有量は、全炭素−炭素結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。脂環式炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合をこの範囲とすることで、透明性、耐熱性が向上する。また、脂環式炭化水素基を構成する炭素には、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等が結合していてもよく、中でも水素原子又は炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基が耐熱性、低吸水性の点で好ましい。
また、上記式(6)は、主鎖中に炭素−炭素不飽和結合を有しており、上記式(7)は主鎖中に炭素−炭素飽和結合を有しているが、透明性、耐熱性を強く要求される場合、不飽和結合の含有率は、主鎖を構成する全炭素−炭素間結合の、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
本実施形態においては、脂環式炭化水素系共重合体中の、一般式(4)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、一般式(5)及び/又は一般式(6)及び/又は一般式(7)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)との合計含有量は、重量基準で、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。合計含有量を上記範囲にすることで、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、機械強度が高度にバランスされる。
上記脂環式炭化水素系共重合体を製造する製造方法としては、芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、主鎖及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法が挙げられる。
水素化前の共重合体の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと、それから得られる脂環式炭化水素系共重合体の成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと水素化反応性に劣る。
上記の方法において使用する芳香族ビニル系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。これらの芳香族ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合可能なその他のモノマーとしては、格別な限定はないが、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物等が用いられ、鎖状共役ジエンを用いた場合、製造過程における操作性に優れ、また得られる脂環式炭化水素系共重合体の強度特性に優れる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー;1−シアノエチレン(アクリロニトリル)、1−シアノ−1−メチルエチレン(メタアクリロニトリル)、1−シアノ−1−クロロエチレン(α−クロロアクリロニトリル)等のニトリル系モノマー;1−(メトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸メチルエステル)、1−(エトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸エチルエステル)、1−(プロポキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸プロピルエステル)、1−(ブトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸ブチルエステル)、1−メトキシカルボニルエチレン(アクリル酸メチルエステル)、1−エトキシカルボニルエチレン(アクリル酸エチルエステル)、1−プロポキシカルボニルエチレン(アクリル酸プロピルエステル)、1−ブトキシカルボニルエチレン(アクリル酸ブチルエステル)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、1−カルボキシエチレン(アクリル酸)、1−カルボキシ−1−メチルエチレン(メタクリル酸)、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系モノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、特別な制約はないが、重合操作、後工程での水素化反応の容易さ、及び最終的に得られる炭化水素系共重合体の機械的強度を考えると、アニオン重合法が好ましい。
アニオン重合の場合には、開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において、塊状重合、溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去を考慮すると、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及びその水素化物を溶解できる不活性溶媒を用いる。溶液反応で用いる不活性溶媒は、例えばn−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。上記アニオン重合の開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
水素化前の共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素二重結合や主鎖の不飽和結合等の水素化反応を行う場合は、反応方法、反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、且つ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環の炭素−炭素二重結合、不飽和環の炭素−炭素二重結合のいずれも、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
水素化反応終了後に水素化物を回収する方法は特に限定されていない。通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化物の溶液から溶媒を直接乾燥により除去する方法、水素化物の溶液を水素化物にとっての貧溶媒中に注ぎ、水素化物を凝固させる方法を用いることができる。
これら熱可塑性樹脂製のサブマスターの表面にも、Niコートし、離型剤を付与させることが、耐久性の観点から好ましい。
≪基材≫
基材26は、サブマスター20の成形部22のみでは強度に劣る場合でも、成形部22に基材26を貼り付けることでサブマスター20の強度が上がり、何回も成形することができるという、裏打ち材のことである。
基材26は、成形部22と異なる材料で構成されてもよいし、成形部22と同一の材料で一体的に構成されてもよい。基材26を成形部22と異なる材料で構成する場合には、例えば石英、シリコーンウェハ、金属、ガラス、樹脂、セラミックス等、平滑性を有するものなら何れでもよい。基材26を成形部22と同一材料で一体的に構成するとは、実質的には成形部22だけでサブマスター20を構成することである。
基材36も基材26と同様のものであり、成形部32と異なる材料で構成されてもよいし、成形部32と同一の材料で一体的に構成されてもよい。基材36を成形部32と異なる材料で構成する場合には、例えば石英、シリコーンウェハ、金属、ガラス、樹脂、セラミックス等、平滑性を有するものなら何れでもよい。基材36を成形部32と同一材料で一体的に構成するとは、実質的には成形部32だけでサブマスター30を構成することである。透明性の観点で、サブマスター20の上からでも下からでもUV照射できるという点を考慮すると、透明な型、例えば石英やガラスや透明樹脂等が好ましい。透明樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもUV硬化性樹脂でも何れでも良く、樹脂中に、微粒子が添加されていて線膨張係数を下げる等の効果があってもよい。このように樹脂を使用することによって、ガラスより撓むので離型する際により離型し易いが、樹脂は線膨張係数が大きいので、UV照射の際に熱が発生すると、形状が変形してきれいに転写することができないという欠点がある。
続いて、図4を参照しながらウエハレンズ1の製造方法について説明する。
始めに、図4(a)に示す通り、サブマスター30の周縁部にリング状のスペーサー40を配置するとともに、サブマスター30の成形部32上に所定量の樹脂7Aを滴下する。その後、図4(b)に示す通り、樹脂7A上にガラス基板3を配置して押圧し、サブマスター30とガラス基板3との間に樹脂7Aを充填し、サブマスター30の凸部34の形状を樹脂7Aに転写する。サブマスター30の凸部34の形状を樹脂7Aに転写する場合には、好ましくは真空雰囲気下でおこない、これにより樹脂7Aへの気泡の混入を抑制又は防止することができる。
この状態において、樹脂7Aが光硬化性樹脂である場合には、ガラス基板3の上方,サブマスター30の下方の一方又は両方から光を照射して樹脂7Aを硬化させ、凹レンズ部7を形成する。この場合、サブマスター30は光透過性の(透明な)材料で構成する必要がある。
他方、樹脂7Aが熱硬化性樹脂である場合には、樹脂7Aを加熱して樹脂7Aを硬化させ、凹レンズ部7を形成する。
ところで、ウエハレンズを製造する際には、成形型の成形面が平坦となるようにそのままの状態で下ろして、成形型の成形面をガラス基板に押し当てると、成形面が樹脂を一度に押圧することとなる。このとき、樹脂が均一に広がらずに気泡が混入してしまい、高性能なウエハレンズを製造することができないことがある。
したがって、基板に対し硬化性樹脂製の光学部材が設けられたウエハレンズの製造方法であっては、前記光学部材の光学面形状に対応した成形面を複数有する成形型を準備する準備工程と、前記成形型と前記基板との間に前記硬化性樹脂を充填する充填工程と、前記成形型と前記基板との間に充填した前記硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、前記基板から前記成形型を離型する離型工程と、を備え、前記充填工程では、前記成形型の中心部分を前記基板に向けて撓ませながら、前記成形型を前記基板に対して押圧することが望ましい。
当該構成により、成形型の中心部分を基板に向けて撓ませながら、成形型を基板に対して押圧するので、成形型の樹脂との接触面積を徐々に広げることができ、樹脂を均一に広げていくことができる。そのため、気泡の混入を防ぐことができ、高性能なウエハレンズを安定して製造することができる。
図4(b)の凹レンズ部7の成形工程では、図5(a)に示す通り、石英,ガラス等で構成された基台50上にガラス基板3を配置し、ガラス基板3上に所定量の樹脂7Aを滴下し、その樹脂7Aに対しサブマスター30の中央部を下方に湾曲させた状態で(撓ませた状態で)当該中央部から徐々に押圧してもよい。
また、図5(b)に示す通り、基台50上にガラス基板3を配置し、ガラス基板3上に所定量の樹脂7Aを滴下し、その樹脂7Aに対しサブマスター30を傾けた状態で一方の端部から他方の端部にかけて徐々に下降させながら押圧してもよい。
特に、図4(b)の凹レンズ部7の成形工程において、図5(a)に示す通りにサブマスター30の中央部を下方に湾曲させた状態で樹脂7Aを押圧する場合には、好ましくは図6,図7の真空装置,押圧方法を用いて当該押圧態様を実現することができる。
図6に示す通り、真空装置100は下方テーブル110と上方テーブル130とを有しており、互いに対向配置されている。下方テーブル110はその配置位置が固定されており、上方テーブル130は下方テーブル110に対し上下方向に移動自在となっている。
下方テーブル110の中央部には支持部112が設けられており、支持部112には連通溝114が同心円状に形成されている。連通溝114には吸引機構116が接続されており、吸引機構116が作動することで連通溝114からエアを吸引し、支持部112上の部材を吸引・固定することができるようになっている。さらに、下方テーブル110には吸引機構118が設置されており、吸引機構118が作動することで下方テーブル110と上方テーブル130との間の領域(成形室150)内を吸引することができるようになっている。下方テーブル110の周縁部には下方テーブル110と上方テーブル130とを互いに密着するためのシール120が設けられている。
上方テーブル130は主には真空チャック部132と保持部134とで構成されている。真空チャック部132と保持部134との間にはリング状のシール136(Oリング)が介在しており、真空チャック部132と保持部134との密着性が高められている。真空チャック部132の下部には連通溝138が同心円状に形成されている。連通溝138には吸引・送出機構140が接続されており、吸引・送出機構140が作動することで連通溝138からエアを吸引又は送出することができるようになっている。保持部134の下部にはネジ142を介して型押え144が設けられており、ネジ142を回転させることで型押え144を上下方向に移動させることができるようになっている。型押え144と真空チャック部132との間にはリング状のシール146(Oリング)が設けられており、真空チャック部132と保持部134との間に固定される部材(サブマスター30)と、真空チャック部132との密着性が高められている。
以上の真空装置100を用いて、図5(a)に示す通りにサブマスター30の中央部を下方に湾曲させた状態で樹脂7Aを押圧する場合には、図6に示す通り、下方テーブル110の支持部112上にガラス基板3を配置して吸引機構116を作動させ、支持部112上にガラス基板3を吸引・固定するとともに、ガラス基板3上に所定量の樹脂7Aを滴下する。
これと同時に、上方テーブル130のネジ142の回転量を調節して型押え144と保持部134との間にサブマスター30を固定する。
この状態において、図7に示す通り、上方テーブル130の吸引・送出機構140を作動させて連通溝138からエアを送り出し、サブマスター30を下方に湾曲させる。そして、下方テーブル110の吸引機構118を作動させながら上方テーブル130を下降させ、サブマスター30の成形部32の中央部を湾曲させた状態で樹脂7Aに押圧することができる。
このとき、サブマスター30をガラス基板3に向けて撓ませながら、ガラス基板3に対して押圧することになるから、サブマスター30の樹脂7Aとの接触面積を徐々に広げることができ、樹脂7Aを均一に広げていくことができる。そのため、樹脂7Aに気泡が混入するのを防ぐことができる。
さらにこのとき、上方テーブル130は下方テーブル110のシール120と当接し、上方テーブル130と下方テーブル110との間で閉じた領域(すなわち成形室150)が形成されるが、吸引機構118の作動により成形室150の内部を真空又はこれに近い状態とすることができ、この状態において樹脂7Aを成形することができる。成形室150の内部を真空又はこれに近い状態に保持したまま樹脂7Aを成形すれば、樹脂7Aに気泡が混入するのを確実に抑制又は防止することができる。
図7に示す通りに成形室150の内部を真空又はこれに近い状態に保持しながら、樹脂7Aに対しサブマスター30の成形部32を押圧する場合において、サブマスター30の基材36と真空チャック部132との間の空間部148の気圧(内部圧)が成形室150の気圧(内部圧)を上回るように、上方テーブル130の吸引・送出機構140と下方テーブル110の吸引機構118とを制御する。このような圧力関係を形成することで、サブマスター30の中央部を下方に湾曲させた状態を確実に維持することができ、成形部32の凸部34の形状を樹脂7Aに対し確実に転写することができる。
その後、図4(c)に示す通り、ガラス基板3上に樹脂5Aを滴下し、その上方にサブマスター20を配置する。その後、図4(d)に示す通り、スペーサー40とサブマスター20との間に先端部がボール状を呈したアライメント部材60を配置し、この状態において、サブマスター20をサブマスター30に向けて下降させ、サブマスター30に対するサブマスター20の傾きやXY平面の位置等を調整する(位置決めする)。
その後、図4(e)に示す通り、アライメント部材60を、サブマスター20とスペーサー40との間から外し、サブマスター20をサブマスター30に正確に押し当てながら、ガラス基板3とサブマスター20との間に樹脂5Aを充填し、サブマスター20の成形部22の凹部24の形状を樹脂5Aに転写する。サブマスター20の凹部24の形状を樹脂5Aに転写する場合には、好ましくは真空雰囲気下でおこない、これにより樹脂5Aへの気泡の混入を抑制又は防止することができる。
この状態において、樹脂5Aが光硬化性樹脂である場合には、図4(f)に示す通り、サブマスター20の上方,サブマスター30の下方の一方又は両方に光源70を配置し、光源70から光を照射して樹脂5Aを硬化させ、凸レンズ部5を形成する。この場合、サブマスター20,30は光透過性の(透明な)材料で構成する必要がある。
光源70としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、ブラックライト、Gランプ、Fランプ等が挙げられ、線状光源であってもよいし点状光源であってもよい。高圧水銀ランプは、365nm、436nmに狭いスペクトルを持つランプである。メタルハライドランプは、水銀灯の一種で、紫外域における出力は高圧水銀ランプよりも数倍高い。キセノンランプは、最も太陽光に近いスペクトルを持つランプである。ハロゲンランプは長波長の光を多く含んでおり、近赤外光がほとんどであるランプである。蛍光灯は光の三原色に均等な照射強度を持っている。ブラックライトはピークトップを351nmに持ち、300nm〜400nmの近紫外光を放射するライトである。
光源70から光照射する場合には、複数の線状又は点状の光源70を格子状に配置して樹脂5Aの全面に一度に光が到達するようにしてもよいし、線状又は点状の光源70を樹脂5Aの表面に対し平行にスキャニングして樹脂5Aに順次光が到達するようにしてもよい。この場合、好ましくは光照射時の輝度分布や照度(強度)分布を測定し、その測定結果に基づき照射回数,照射量,照射時間等を制御する。
樹脂5Aを光硬化させた後(凸レンズ部5の形成後)においては、凸レンズ部5に対しポストキュア(加熱処理)をおこなってもよい。ポストキュアをおこなえば、凸レンズ部5の樹脂5Aを完全に硬化させることができ、凸レンズ部5の寿命を延ばすことができる。
他方、樹脂5Aが熱硬化性樹脂である場合には、樹脂5Aを加熱して樹脂5Aを硬化させ、凸レンズ部5を形成する。
なお、図4(b)の凹レンズ部7の成形工程において、樹脂7Aを光又は熱で硬化させずに未硬化のまま保持しておき、図4(f)の凸レンズ部5の成形工程において、樹脂5Aと樹脂7Aとを光又は熱により同時に硬化させ、凸レンズ部5と凹レンズ部7とを同時に形成してもよい。
その後、凸レンズ部5,凹レンズ部7が形成されたガラス基板3から、サブマスター20,30を離型し、ウエハレンズ1が製造される。
この場合において、ガラス基板3からサブマスター20を離型するときには、図8(a)に示す通り、サブマスター20の中央部を下方に湾曲させるようにサブマスター20の周縁部を上方に向けて引き剥がして、当該周縁部から中央部にかけて徐々に上昇させながら、ガラス基板3からサブマスター20を離型してもよい。
また、図8(b)に示す通り、凸レンズ部5に対しサブマスター20の一方の端部を支点として他方の端部を上昇させ、その他方の端部を徐々に上昇させながらガラス基板3からサブマスター20を離型してもよい。
特に、図8(a)に示す通りにガラス基板3からサブマスター20を離型する場合には、好ましくは、図6,図7の真空装置,押圧方法を用いてサブマスター30の中央部を下方に湾曲させた状態で樹脂7Aを押圧したのと逆の工程順序で、ガラス基板3からサブマスター20を離型する。
以上の実施形態では、図4(b)の凹レンズ部7の成形工程において、樹脂7Aを光又は熱で硬化させずに未硬化のまま保持しておき、図4(f)の凸レンズ部5の成形工程において、樹脂5Aと樹脂7Aとを光又は熱により同時に硬化させ、凸レンズ部5と凹レンズ部7とを同時に形成すれば、ガラス基板3の片面だけで樹脂7Aが硬化収縮することなく、ガラス基板3の両面で樹脂5A,7Aが同時に硬化収縮してそれぞれ凸レンズ部5,凹レンズ部7を形成する。
この場合、ガラス基板3の表面と裏面とにそれぞれ順に凸レンズ部5,凹レンズ部7を形成する場合とは異なり、ガラス基板3の反りを防止することができ、凸レンズ部5,凹レンズ部7の形状精度を向上させることができる。また、樹脂5A,7Aを硬化させる工程では、ガラス基板3の両面で、それぞれ充填した樹脂5A,7Aを同時に硬化させて同時成形することができるため、工程数の簡略化を図ることができる。
なお、以上の実施形態では、サブマスター20,30を用いて、ガラス基板3の表面には凸レンズ部5を、裏面には凹レンズ部7を形成した例を示したが、サブマスター20だけを用いてガラス基板3の表裏両面に凸レンズ部5をそれぞれ形成してもよいし、サブマスター30だけを用いてガラス基板3の表裏両面に凹レンズ部7をそれぞれ形成してもよい。
[変形例]
図4(a)の工程では、サブマスター30の成形部32上に所定量の樹脂7Aを単に滴下しているが、図9(a)に示す通り、樹脂7Aを複数個所にわたり分散させながら滴下してもよく、好ましくはサブマスター30の成形部32の各凸部34に対応させるように樹脂7Aを凸部34ごとに分散させながら滴下し、ガラス基板3を押圧してもよい。
この場合、図4(b)の凹レンズ部7の成形工程では、図5(a),(b)に示す通りに樹脂7Aに対しサブマスター30を押圧するとき、図10(a),(b)に示す通り、樹脂7Aを複数個所にわたり分散させながらガラス基板3に滴下しておき、好ましくは成形部32の各凸部34に対応させるように樹脂7Aを凸部34ごとに分散させながらガラス基板3に滴下しておき、サブマスター30を樹脂7Aに押圧してもよい。
さらに、図4(d)の工程でも、ガラス基板3上に所定量の樹脂5Aを単に滴下しているが、図9(b)に示す通り、樹脂5Aを複数個所にわたり分散させながら滴下してもよく、好ましくはサブマスター20の成形部22の各凹部24に対応させるように樹脂5Aを凹部24ごとに分散させながら滴下し、サブマスター20を押圧してもよい。
以上の変形例によれば、樹脂5A,7Aを複数個所にわたり分散させながら滴下するから、ガラス基板3とサブマスター20,30との間に樹脂5A,7Aを充填する際に、樹脂5A,7Aがサブマスター20,30の各凹部24,凸部34に対し均一にゆきわたり易く、いずれの凹部24,凸部34からも凸レンズ部5,凹レンズ部7を成形することができる。すなわち、図4(a),(d)の工程において、単に所定量の樹脂5A,7Aを1箇所に滴下したような場合には、樹脂5A,7Aに対しガラス基板3,サブマスター20の押圧力が均一にかかり難い。これに対し、本変形例によれば、樹脂5A,7Aに対しガラス基板3,サブマスター20の押圧力が均一にかかり易く、この場合、樹脂5A,7Aがサブマスター20,30の各凹部24,凸部34に対し均一にゆきわたり、いずれの凹部24,凸部34からも凸レンズ部5,凹レンズ部7を成形することができる。
次に、図11及び図12を参照しながら、ウエハレンズ1,1B及びウエハレンズ集合体100の製造方法について説明する。
まず、マスター10Aからサブマスター20を成形する。ここで、「マスター10A」とは、「凸レンズ部5」を成形する「サブマスター20」を成形するための母型を言い、「凸レンズ部4」を成形する「サブマスター20B」を成形するための「マスター」(図示しない)と区別したものである。
図11(a)に示す通り、マスター10A上に樹脂22Aを塗布し、マスター10Aの凸部14を樹脂22Aに転写し、樹脂22Aを硬化させ、樹脂22Aに対し複数の凹部24を形成する。これにより、成形部22が形成される。
樹脂22Aは、熱硬化性であっても光硬化性であっても、揮発硬化性(溶媒が揮発して硬化する,HSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン等))であってもよい。高精度な成形転写性を重視する場合は、硬化に熱をかけないため樹脂22Aの熱膨張の影響が少ないUV硬化性や揮発硬化性樹脂による成形が好ましいが、これに限られるものではない。硬化後のマスター10Aとの剥離性が良い樹脂22Aが、剥離時に大きな力を必要としないため、成形光学面形状などを不用意に変形されることなくより好ましい。
樹脂22A(成形部22の材料),樹脂5A(凸レンズ部5の材料)が硬化性樹脂である場合において、マスター10Aの光学面形状(凸部14)は、好ましくは樹脂22Aの硬化収縮や樹脂5Aの硬化収縮を見越して設計する。
マスター10A上に樹脂22Aを塗布する場合には、スプレーコート,スピンコート等の手法を用いる。この場合、真空引きしながら樹脂22Aを塗布してもよい。真空引きしながら樹脂22Aを塗布すれば、樹脂22Aに気泡を混入させずに樹脂22Aを硬化させることができる。
また、マスター10Aの表面に上述した離型剤を塗布して、離型性を向上させてもよい。
離型剤を塗布する場合、マスター10Aの表面改質を行う。具体的には、マスター10Aの表面にOH基を立たせる。表面改質の方法は、UVオゾン洗浄、酸素プラズマアッシング等、マスター10Aの表面にOH基を立たせる方法なら何でもよい。
樹脂22Aが光硬化性樹脂である場合には、マスター10Aの上方に配置した光源50を点灯させ光照射する。
光源51としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、ブラックライト、Gランプ、Fランプ等が挙げられ、線状光源であってもよいし点状光源であってもよい。高圧水銀ランプは、365nm、436nmに狭いスペクトルを持つランプである。メタルハライドランプは、水銀灯の一種で、紫外域における出力は高圧水銀ランプよりも数倍高い。キセノンランプは、最も太陽光に近いスペクトルを持つランプである。ハロゲンランプは長波長の光を多く含んでおり、近赤外光がほとんどであるランプである。蛍光灯は光の三原色に均等な照射強度を持っている。ブラックライトはピークトップを351nmに持ち、300nm〜400nmの近紫外光を放射するライトである。
光源51から光照射する場合には、複数の線状又は点状の光源51を格子状に配置して樹脂22Aの全面に一度に光が到達するようにしてもよいし、線状又は点状の光源51を樹脂22Aの表面に対し平行にスキャニングして樹脂22Aに順次光が到達するようにしてもよい。この場合、好ましくは光照射時の輝度分布や照度(強度)分布を測定し、その測定結果に基づき照射回数,照射量,照射時間等を制御する。
樹脂22Aを光硬化させた後(サブマスター20の作製後)においては、サブマスター20に対しポストキュア(加熱処理)をおこなってもよい。ポストキュアをおこなえば、サブマスター20の樹脂22Aを完全に硬化させることができ、サブマスター20の型寿命を延ばすことができる。
樹脂22Aが熱硬化性樹脂である場合には、加熱温度,加熱時間を最適な範囲で制御しながら樹脂22Aを加熱する。樹脂22Aは射出成形,プレス成形,光照射してその後に冷却する等の手法でも成形することができる。
図11(b)に示す通り、成形部22(樹脂22A)の裏面(凹部24とは反対の面)に対して基材26を装着し、成形部22を裏打ちする。
基材26は石英であってもよいし、ガラス板であってもよく、十分な曲げ強度とUV透過率を有することが重要である。成形部22と基材26との密着性を高めるために、基材26に対しシランカップリング剤を塗布するなどの処理を行ってもよい。
なお、上記のように、マスター10Aの凸部14を樹脂22Aに転写し樹脂22Aが硬化した後(つまり成形部22が形成された後)に、基材26を装着する(室温で裏打ちする)場合には、接着剤を使う。
逆に、マスター10Aの凸部14を樹脂22Aに転写し樹脂22Aが硬化する前に、基材26を装着する(室温で裏打ちする)ようにしてもよい。この場合には、接着剤を使用せずに、樹脂22Aの付着力により基材26を張り付かせるか、又は基材26にカップリング剤を塗布し付着力を強くして樹脂22Aに対し基材26を付着させる。
また、成形部22(樹脂22A)を基材26で裏打ちする際には、従来より公知の真空チャック装置260を用い、この真空チャック装置260の吸引面260Aに基材26を吸引保持しつつ、当該吸引面260Aをマスター10Aにおける凸部14の成形面に対し平行な状態として、成形部22を基材26で裏打ちすることが好ましい。これにより、マスター10Aにおける凸部14の成形面に対してサブマスター20の裏面20A(基材26側の面)が平行となり、サブマスター20において凹部24の成形面が裏面20Aと平行となる。従って、後述のようにサブマスター20によってレンズ部5を成形する際に、サブマスター20の基準面、つまり裏面20Aを凹部24の成形面と平行にすることができるため、レンズ部5が偏芯したり、厚みにばらつきを有したりするのを防止し、レンズ部5の形状精度を向上させることができる。また、真空チャック装置260によってサブマスター20を吸引保持するため、真空排気のオン/オフのみによってサブマスター20を着脱することができる。従って、サブマスター20の配置を容易に行うことができる。
ここで、凹部24の成形面に対して裏面20Aが平行であるとは、具体的には、凹部24の成形面における中心軸に対して裏面20Aが垂直であることをいう。
また、サブマスター20は、基材26で裏打ちしつつ硬化させて形成するのが好ましいが、裏打ち前に硬化させて形成しても良い。基材26で裏打ちしつつ硬化させる方法としては、例えば樹脂22Aとして熱硬化性樹脂を用い、マスター10Aと基材26との間に当該樹脂22Aを充填した状態でこれらをベーク炉に投入する方法や、樹脂22AとしてUV硬化性樹脂を用いるとともに、基材26としてUV透過性の基板を用い、マスター10Aと基材26との間に当該樹脂22Aを充填した状態で基材26の側から樹脂22Aに対してUV光を照射する方法などがある。
また、真空チャック装置260の吸引面260Aはセラミック材料で作るのが好ましい。この場合には、吸引面260Aの硬度が高くなり、サブマスター20(基材26)の着脱によって当該吸引面260Aに傷が付き難いため、吸引面260Aの面精度を高く維持することができる。また、このようなセラミック材料としては、窒化珪素やサイアロンを用いるのが好ましい。この場合には、線膨張係数が1.3ppmと小さいため、温度変化に対して吸引面260Aの平面度を高く維持することができる。
なお、本実施の形態においては、マスター10Aにおける凸部14の成形面に対して吸引面260Aを平行な状態にする手法としては、以下のような手法を用いている。
まず、マスター10Aの表裏面を高精度に平行化しておく。これにより、マスター10Aにおいて、凸部14の成形面と裏面とが平行となる。
また、このマスター10Aを裏面(凸部14とは反対側の面)側から支持する支持面260Bと、吸引面260Aとに対して、それぞれ基準部材260C,260Dを突設しておく。ここで、これらの基準部材260C,260Dの形状は、支持面260B及び吸引面260Aが互いに平行な状態でマスター10Aとサブマスター20とが当接したときにガタツキ無く互いに当接する形状とする。
これにより、基準部材260C,260D同士を当接させることによって、吸引面260Aに対してマスター10Aの支持面260B、ひいてはマスター10における凸部14の成形面が平行となる。
但し、上記のような手法において、基準部材は支持面260B及び吸引面260Aの少なくとも一方に設ければ良く、例えば支持面260Bのみに基準部材を設ける場合には、この基準部材の形状は、支持面260B及び吸引面260Aが互いに平行な状態でマスター10Aとサブマスター20とが当接したときに、吸引面260Aに対してガタツキ無く当接する形状とすれば良い。同様に、吸引面260Aのみに基準部材を設ける場合には、この基準部材の形状は、支持面260B及び吸引面260Aが互いに平行な状態でマスター10Aとサブマスター20とが当接したときに、支持面260Bに対してガタツキ無く当接する形状とすれば良い。
図11(c)に示す通り、マスター10Aから成形部22と基材26とを離型し、サブマスター20が形成される。
樹脂22AとしてPDMS(ポリジメチルシロキサン)などの樹脂を使い、さらに、Niコートした上で、その表面に離型剤を塗布しておくと、マスター10との離型性が非常によいので、マスター10からの剥離に大きな力を必要とせず、成形光学面を歪ませたりする事が無いのでよい。
なお、同様の手順でマスター(図示しない)から、凸レンズ部4に対応するネガ形状の凹部24を有するサブマスター20B(図12(e)参照)も形成しておく。
続いて、凸レンズ部4,5を成形する。
まず、ガラス基板3とサブマスター20との間に樹脂5Aを充填し硬化させる。より詳細には、図12(a)に示す通り、ガラス基板3上に樹脂5Aを塗布し、樹脂5Aが塗布されたガラス基板3に対しサブマスター20を上方から押圧することによって樹脂5Aを硬化させる。
サブマスター20を上方から押圧する場合には、真空引きしながら押圧してもよい。真空引きしながら押圧すれば、樹脂5Aに気泡を混入させずに樹脂5Aを硬化させることができる。
樹脂5Aが塗布されたガラス基板3に対してサブマスター20を上方から押圧するのに代えて、図示しないが、サブマスター20の凹部24に対して樹脂5Aを充填し、充填した樹脂5Aに対して上方からガラス基板3を押圧しながら樹脂5Aを硬化させる構成としてもよい。
ガラス基板3を押圧する場合に、ガラス基板3は、サブマスター20と軸合わせをするための構造が付与されているのが好ましい。ガラス基板3が円形状を呈している場合には、例えばDカット,Iカット,マーキング,切欠き部等を形成しておくのが好ましい。ガラス基板3を多角形状としてもよく、この場合にはサブマスター20との軸合わせが容易である。
樹脂5Aを硬化させる場合において、樹脂5Aが熱硬化性樹脂である場合には、加熱により硬化させる(図12(b)参照)。他方、樹脂5Aが光硬化性樹脂である場合には、サブマスター20の上方に配置した光源52を点灯させサブマスター20側から
光照射してもよいし、ガラス基板3の下方に配置した光源54を点灯させガラス基板3側から光照射してもよいし、光源52,54の両方を同時に点灯させサブマスター20側とガラス基板3側との両側から光照射してもよい。
光源52,54としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、ブラックライト、Gランプ、Fランプ等を使用でき、線状光源であってもよいし点状光源であってもよい。
光源52,54から光照射する場合には、複数の線状又は点状の光源52,54を格子状に配置して樹脂5Aに一度に光が到達するようにしてもよいし、線状又は点状の光源52,54をサブマスター20,ガラス基板3に対し平行にスキャニングして樹脂5Aに順次光が到達するようにしてもよい。この場合、好ましくは光照射時の輝度分布や照度(強度)分布を測定し、その測定結果に基づき照射回数,照射量,照射時間等を制御する。
樹脂5Aが硬化すると、凸レンズ部5が形成される。
その後、図12(c)に示す通り、凸レンズ部5及びガラス基板3をサブマスター20から離型せずに、そのままの状態で上下反転させる。反転させた状態のまま、ガラス基板3上にさらに樹脂4Aを塗布し、樹脂4Aが塗布されたガラス基板3に対しサブマスター20Bを上方から押圧することによって樹脂4Aを硬化させる。
樹脂4Aの硬化に当たっては、樹脂4Aが熱硬化性樹脂である場合には加熱により硬化させる。他方、樹脂4Aが光硬化性樹脂である場合には、上述したようにサブマスター20Bの上方又はサブマスター20の下方から光源52,54を照射することによって硬化させてもよいし、両方の光源52,54を使用してもよい。
なお、この際に、樹脂4Aだけでなく樹脂5Aのいずれも硬化させることができるので、特に図12(b)において樹脂5Aを硬化させなくてもよく、図12(b)における硬化工程を省略してもよい。
凸レンズ部4を形成する場合も同様に、樹脂4Aへの気泡混入を防止するため、サブマスター20Bを押圧する際に、真空引きしながら樹脂4Aを充填してもよい。さらに、図示しないが、サブマスター20Bの凹部24に対して樹脂4Aを充填し、充填した樹脂4Aに対して上方からガラス基板3を押圧しながら樹脂4Aを硬化させる構成としてもよい。
樹脂4Aが硬化すると、凸レンズ部4が形成される(図12(d)参照)。
その後、図12(e)に示す通り、片側のサブマスター20Bを凸レンズ部4から離型する。このようにして、サブマスター20、凸レンズ部5、ガラス基板3及び凸レンズ部4からなる成形体6を成形する。
図12(f)に示す通り、上述の成形体6と同様の手順で成形体6Bを成形し、2つの成形体6,6B間に介在させるスペーサー40を用意する。
スペーサー40は、ガラス又は透明な樹脂で構成された円盤状を呈する部材であり、ウエハレンズ1の凸レンズ部4,5に対応する位置に開口部71が形成されている(当該開口部71から凸レンズ部4,5が露出するようになっている)。
次いで、成形体6の凸レンズ部4に対してスペーサー40を載置する。詳しくは、凸レンズ部4の上面又はスペーサー40の下面に接着剤(図示しない)を塗布し、成形体6に対してスペーサー40を載置する。そして、載置したスペーサー40に対して、成形体6Bの凸レンズ部4を載置する。詳しくは、スペーサー7の上面又は成形体6Bのレンズ部4の下面に接着剤(図示しない)を塗布し、スペーサー40に対して成形体6Bを載置する。
その後、片側に取り付けられたサブマスター20,20同士を互いに押圧する。ここで、成形体6のサブマスター20の下面及び成形体6Bのサブマスター20の上面は、いずれも平坦面となっているので、全面に均一に圧力を加えることができる。
図12(g)に示す通り、接着剤が熱硬化性樹脂の場合には、加熱により接着剤を硬化させる。他方、接着剤が光硬化性樹脂の場合には、成形体6のサブマスター20の下方又は成形体6Bのサブマスター20の上方から光源52,54を照射して接着剤を硬化させ、スペーサー7を成形体6,6Bに固定する。両方の光源52,54を使用して硬化させてもよい。
その後、図12(h)に示す通り、サブマスター20を成形体6から離型し、サブマスター20を成形体6Bから離型する。離型した後、ポストキュアして加熱硬化することによって、ウエハレンズ1に対してウエハレンズ1Bがスペーサー40を介して積層されてなるウエハレンズ集合体100が製造される。
以上の本実施形態によれば、サブマスター20とガラス基板3の一方の面との間に樹脂5Aを充填して硬化させ、サブマスター20Bとガラス基板3の他方の面との間に樹脂4Aを充填して硬化させ、予め片方のサブマスター20Bのみを離型して成形体6を成形しておく。このような成形体6,6Bを2つ用意し、凸レンズ部4,4同士が互いに対向するように配置するとともにスペーサー40を間に介在させて、サブマスター20,20同士を互いに押圧することによって、2つの成形体6,6B及びスペーサー40を接着固定する。最後に、片側に取り付けられたままのサブマスター20,20をそれぞれ離型する。以上のように片側のサブマスター20,20をつけた状態で成形体6,6B同士を加圧するので、凸レンズ部4,5に接触することなく、サブマスター20,20の全面を均一に押圧することができる。その結果、ウエハレンズ1,1Bが撓むことなく、精度良く積層させることができる。
また、サブマスター20,20を離型後、一括してポストキュアするので、製造工程の簡略化を図ることができる。