図1は本発明のヘッド交換式切削工具の一実施形態を示すものであり、図2はこの実施形態のヘッド交換式切削工具のホルダ1を示すものであり、図3ないし図5は該ホルダ1を製造する工程を説明するものである。本実施形態のヘッド交換式切削工具は、本発明をヘッド交換式のエンドミルに適用したものである。
本実施形態のヘッド交換式切削工具におけるホルダ1は、ホルダ本体2と連結部材3とから構成されている。ホルダ本体2は、超硬合金により形成されていて、特に本実施形態ではWC平均粒度1〜5μmのWC−Co系超硬合金であって、Coを主成分とする結合相量が8〜20wt%とされた超硬合金により形成されている。一方、連結部材3はホルダ本体2を形成する超硬合金よりも低硬度である一方で靱性の高いステンレス鋼やダイス鋼等の鋼材によって形成されている。
ホルダ本体2は、外形が中心線Oを中心とした略円柱状をなしており、ただしその先端側(図1、図2、図3(a)、および図5において左側)の部分は、後端側(図1、図2、図3(a)、および図5において右側)のシャンク部に対して外径が僅かに一段小さな円筒面状とされたネック部2Aとされており、このネック部2Aの外径がホルダ1の先端部の外径とされる。また、このホルダ本体2の先端面2Bには、後端側に向けて凹むように取付孔4が中心線Oを中心として形成されるとともに、ホルダ本体2の後端面2Cからはこの取付孔4の孔底に向けて連通するように、取付孔4よりも小径の貫通孔5が中心線Oに沿って形成されている。
取付孔4には、先端側から後端側に向けて順に、先端面2Bとの交差稜線部に形成された面取り部4Aと、この面取り部4Aから後端側に延びる嵌合部4Bと、嵌合部4Bの後端側の内径よりも極僅かに大きな内径とされた逃げ部4Cと、この逃げ部4Cや嵌合部4Bの後端側の内径よりも一段小さな内径とされた係合部4Dと、中心線Cに直交する断面がこの取付部4Dよりもさらに小さくされた凹所4Eとが形成されており、上記貫通孔5はこの凹所4Eの先端側を向く底面に開口させられている。
ここで、上記凹所4Eを除いた取付孔4の面取り部4A、嵌合部4B、逃げ部4C、および係合部4Dと貫通孔5とは、中心線Oに直交する断面が該中心線Oを中心とした円形とされており、このうち逃げ部4Cおよび係合部4Dと貫通孔5とは、その内径がそれぞれ中心線O方向に亙って一定とされた円筒面状の内周面を有している。従って、逃げ部4Cと係合部4Dとの間には、この係合部4Dの開口部の周りに先端側を向く円環状の壁部4Fが形成される。
これに対して、本実施形態では上記面取り部4Aは勿論、嵌合部4Bも、その内周面が中心線Oを中心として取付孔4の開口部側に向かうに従い内径が漸次拡大する凹円錐面とされたテーパ形状とされている。ここで、テーパ形状とされた嵌合部4Bのテーパは、面取り部4のテーパよりも小さく、本実施形態では1/10以下とされていて、嵌合部4Bの内周面が中心線Oに沿った断面において該中心線Oに対してなす傾斜角度としては約3°以下の一定角度とされている。なお、この傾斜角度は1°〜3°の範囲とされるのが望ましく、具体的に本実施形態ではテーパが1/14、上記傾斜角度としては2°とされている。従って、ホルダ1の先端部は、円筒状をなすことになるが、嵌合部4Bがテーパ形状であるため厳密な円筒になることはなく、これはホルダ1先端部の外周面についても同様であり、すなわち上記ネック部2Aが先端側に向かうに従い漸次縮径するテーパネック部とされていてもよい。
一方、取付孔4の上記係合部4Dの内周面には、凹部が形成されている。この凹部は、上述のような超硬合金よりなるホルダ本体2を焼結形成した後に、中心線O回りの環状溝や中心線O方向に沿った直線溝、あるいは螺旋溝や点在する窪み等を機械加工等によって形成することにより、取付孔4の孔底側を向く壁部と上記中心線O回りの周方向を向く壁部との少なくとも一つが形成されたものであってもよいが、本実施形態では、こうしてホルダ本体2を圧粉成形して焼結する際の条件等を調整することにより、係合部4Dの内周面の表面粗さを、JIS B 0601:2001(ISO 42887:1997)に規定される最大高さ粗さRzが5μm以上200μm以下の凹凸面として、この凹凸面を上記凹部としている。
すなわち、このような超硬合金よりなるホルダ本体2は、WCとCo等の原料粉末をプレス成形金型により圧縮して圧粉体を成形し、これを加熱、焼結して、必要に応じ研磨等の仕上げ加工を施すことにより製造されるが、この圧粉体を成形する際に、上記係合部4Dの内周面を焼結後に上述のような表面粗さとなるように加工を施したり、焼結時の加熱温度や時間を調整したり、焼結後の研磨により表面粗さを調整したり、あるいは逆に係合部4Dの内周面は研磨を省略して焼結肌のままとしたりすることにより、この係合部4Dの内周面を上述のような表面粗さとすることができる。
勿論、これらの手段の1つにより係合部4D内周面の表面粗さを調整してもよく、または2つ以上の手段を適宜組み合わせて調整してもよい。さらに、こうして係合部4Dの内周面の表面粗さを調整した上で上述のような溝や窪みを形成したり、また例えば中心線O方向に沿った直線溝を形成する場合などは、圧粉体を成形する際にプレス成形金型よって溝を成形しておいたりしてもよい。
これに対して、上記嵌合部4Bの内周面の表面粗さは係合部4Dよりも滑らかとされ、同じくJIS B 0601:2001(ISO 42887:1997)に規定される最大高さ粗さRzが3.2μm以下となるようにされている。このような嵌合部4Bの表面粗さは、上述のような手段によって係合部4Dの表面粗さを調整するのに対して、さらに研磨等を施すことにより得ることができる。
また、取付孔4が開口するホルダ本体2の先端面2Bの表面粗さは、最大高さ粗さRzが6.3μm以下となるようにされ、ただし嵌合部4B内周面の表面粗さよりは粗くなるようにされている。なお、これらの最大高さ粗さRzは、基準長さ:0.8mm、カットオフ値λs=0.0025mm、λc=0.8mmという評価条件下で測定した結果である。また、この先端面2Bは、ホルダ本体2の中心線Oすなわち取付孔4の中心線Oに対して垂直な円環状の平坦面に形成されている。
一方、取付孔4の最奥部に位置する凹所4Eは、その中心線Oに直交する断面が、本実施形態では図2(b)に示すように中心線Oに対する直径方向に長軸を有する長円状とされ、この長円状の一定断面のまま中心線O方向に延びるように形成されている。従って、この長軸を挟んだ両側には、中心線Oに直交する断面において直線状をなす壁面4Gが一対、中心線Oに平行かつ互いにも平行に延びるように形成される。
なお、取付孔4における各部の中心線O方向の長さは、本実施形態では係合部4Dが最も長くされて、次に嵌合部4Bが長くされている。次いで、凹所4Eが長くされて、逃げ部4Cはその次に長く、面取り部4Aが最も短くされている。ただし、面取り部4Aは形成されていなくてもよい。
連結部材3は、このように構成されたホルダ本体2の取付孔4に収容される。この連結部材3は、図4(b)に示すように外形が中心線Oを中心とした多段の略円筒状をなすようにされていて、先端側(図4において下側)から後端側(図4において上側)に向けて順に、取付孔4の逃げ部4Cに収容される鍔部3Aと、係合部4Dに収容される被係合部3Bと、凹所4Eに収容される回り止め部3Cとが、外径が段階的に小さくなるように一体形成されている。
このうち、鍔部3Aは、取付孔4の係合部4Dの内径より大きく、逃げ部4Cの内径や嵌合部4Bの後端側の内径よりは僅かに小さな外径を有していて、中心線O方向の長さも逃げ部4Cより若干小さくされており、連結部材3がホルダ本体2に取り付けられた取付状態では、取付孔4の上記壁部4Fに先端側から当接させられている。また、回り止め部3Cは、中心線Oに直交する断面が取付孔4の凹所4Eに係合可能な形状、大きさの長円状をなしており、従ってこの長円の長軸を挟んだ両側には、中心線Oに直交する断面において直線状をなす側面3Dが一対、中心線Oに平行かつ互いにも平行に延びるように形成されていて、上記取付状態において凹所4Eの上記壁面4Gと間隔をあけて対向させられている。
さらに、連結部材3の内周部は中心線Oに沿って貫通させられており、このうち先端側には雌ねじ部3Eが形成されていて、本実施形態における取付ねじ部とされている。この雌ねじ部3Eは、連結部材3の内周部後端側の上記回り止め部3Cに貫通する貫通孔部3Fより大きな内径を有しており、上記取付状態において連結部材3の先端側から、被係合部3Bの後端よりも先端側の、例えば上記係合部4Dの中心線O方向の長さの1/2を超える当たりの部分にまで延設されている。なお、被係合部3Bの中心線O方向の長さは、係合部4Dの中心線O方向の長さより若干小さくされていて、上記取付状態では、この被係合部3Bの後端に突出する上記回り止め部3Cが、係合部4Dを抜けて上記凹所4Eに収容される。
さらにまた、上記被係合部3Bは、上記取付状態では、その外周面が、係合部4Dの内周面に密着して上記凹部に嵌め入れられるように係合させられている。すなわち、この凹部が上述のような表面粗さの凹凸面とされた本実施形態では、被係合部3Bの外周面は、この凹凸面に倣うような凸凹面とされて係合部4Dの内周面に密着させられ、この凹部に係合させられている。ただし、この被係合部3Bの外周面は、係合部4Dの内周面がなす凹凸面をそのまま反転させるようにして全面的に上記凹部に密着させられたものでなくともよく、連結部材3の取付強度が確保されていれば、凹部の深さの途中までに外周面が嵌め入れられて係合していてもよい。
このように連結部材3の被係合部3B外周面を取付孔4の係合部4D内周面に密着させて凹部に係合させるには、被係合部3Bの外径が係合部4Dの内径よりも僅かに小さくされた図4(a)に示すような連結部材3の多段円筒状の素材6を上記ステンレス鋼等により形成して図5に示すように取付孔4内に収容し、この素材6の内径よりも僅かに大きな外径を有する圧入部材(パンチ)7を該素材6の内周部に圧入して素材6を拡径するように塑性変形させることにより、被係合部3Bの外周面を係合部4Dの内周面に押圧して凹部(凹凸面)に嵌め入れられるようにすればよい。
ここで、上記素材6は、図4(a)および図5に括弧書きで示す連結部材3の各部に対して中心線O方向の長さは略等しくされ、また鍔部3Aと回り止め部3Cはその外径や断面形状、大きさも等しくされている。ただし、この素材6の内周部は、雌ねじ部3Eが形成されておらず、中心線O方向において内周部先端側の上記鍔部3Aに位置する部分が、これよりも後端側の回り止め部3Cに貫通する圧入孔部6Aよりも僅かに一段大径とされた段付き孔とされており、この圧入孔部6Aは、塑性変形させられて被係合部3Bが係合部4Dに係合した状態の連結部材3の貫通孔部3Fの内径より例えば0.2mm〜1.0mm程度僅かに小さな一定の内径とされている。なお、素材6における被係合部3B部分の外径は、取付孔4の係合部4Dの内径よりも例えば0.1mm〜0.5mm小さくされている。
また、圧入部材7は、連結部材3および素材6を形成する上記ステンレス鋼等よりも硬質の材料により形成されて、中心線Oと同軸に配置される圧入軸線Xに直交する断面が円形をなす軸状に形成されている。この圧入部材7の素材6に圧入される側(図5において右側)の突端部7Aは砲弾状に形成されていて、この突端部7Aの後端に大径部7Bを有し、この大径部7Bから圧入部材7の基端側(図5において左側)に向かうに従い外径が僅かに縮径されるテーパ部7Cを介して、図示されない圧入装置に装着される基端部7Dに至るように形成されている。なお、上記大径部7Bとテーパ部7C後端側の小径となる部分との外径の差は、例えば20μm〜200μm程度である。
そして、上記大径部7Bの外径は、素材6における圧入孔部6Aの内径よりも大きくされている。ここで、この大径部7Bの外径と圧入孔部6Aの内径との差は、圧入部材7を圧入孔部6Aに圧入した際に素材6が弾性変形の範囲を超えて塑性変形を生じる大きさ以上とされる。ただし、この径の差が大きすぎると、素材6が必要以上に拡径してホルダ本体2に割れを生じるおそれがあるので、この径の差の上限値はそのような事情を考慮して設定され、上述した圧入孔部6Aと上記貫通孔部3Fとの内径の差と略等しい例えば0.2mm〜1.0mm程度の大きさとされる。
従って、図5に示したように素材6を取付孔4に収容してホルダ本体2を固定するとともに、上述のように圧入部材7の圧入軸線Xを中心線Oと同軸に配置し、上記圧入装置によって圧入部材7を図5に矢線で示すように素材6の内周部に挿入すると、まず圧入部材7の突端部7Aが圧入孔部6Aの開口部に当接して素材6がホルダ本体2の後端側に押し込まれ、鍔部3A部分が取付孔4の上記壁部4Fに当接するとともに回り止め部3C部分が凹所4Eに収容されたところで、素材6の中心線O方向の移動が拘束される。
次いで、圧入部材7をさらに前進させて圧入孔部6Aに圧入してゆくと、大径部7Bによって素材6の被係合部3B部分が拡径するように塑性変形を生じ、これによりこの被係合部3B部分の外周面が係合部4D内周面に密着して上記凹部に嵌入させられるように押圧され、該凹部に係合させられる。そこで、例えば大径部7Bが被係合部3B部分の後端に達したところで、圧入部材7を後退させて圧入孔部6Aから引き抜くと、素材6が取付孔4に取り付けられてホルダ本体2と強固に一体化させられるとともに、圧入孔部6Aが拡径させられて上記貫通孔部3Fが形成されるので、しかる後にこの貫通孔部3Fの先端側に、中心線Oを中心とした所定の内径のねじ下穴3Gと雌ねじ部3Eを形成することにより、上記構成のヘッド交換式切削工具用のホルダ1を得ることができる。なお、圧入部材7がホルダ本体2と干渉するおそれがなければ、大径部7Bが圧入孔部6Aの後端から抜け出るところまで圧入したりしてもよい。
このように構成されたヘッド交換式切削工具用のホルダ1は、その先端部に図1に示すように交換式の切削ヘッド10が連結されて取り付けられることにより本実施形態のヘッド交換式切削工具に構成され、ホルダ本体2後端側の上記シャンク部が工作機械に装着されて被削材の切削加工に使用される。この切削ヘッド10は、先端部に刃部11を有するとともに、この刃部11の後端側にはホルダ本体2の取付孔4に取り付けられる取付部12が形成され、さらにその後端側には連結部材3の取付ねじ部とされた上記雌ねじ部3Eに螺合するヘッド側ねじ部としての雄ねじ部13が、中心線Oを中心とするように設けられている。
ここで、ヘッド交換式のエンドミルとされた本実施形態のヘッド交換式切削工具では、刃部11の先端側部分にホルダ本体2の中心線Oを中心とするように複数の切刃11Aが形成されており、特に刃部11の外周側に形成される切刃11Aは先端側から後端側に向かうに従い、後述する切削加工の際のヘッド交換式切削工具の回転方向の後方側に捩れるように形成されている。また、刃部11の後端部外周には交換式の切削ヘッド10を着脱する際にレンチ等の作業用工具が係合されて回転させられる回転部11Bが形成されており、この回転部11Bは中心線Oに対して平行、かつ互いにも平行となるような少なくとも一対の平行面とされ、円筒状の刃部11後端部を切り欠くように形成されている。
また、上記回転部11Bは刃部11の後端面11Cと間隔をあけて形成されており、これにより、これら回転部11Bと後端面11Cとの間には、中心線Oを中心とするようにして径方向の外側に突出するフランジ部11Dが形成される。なお、後端面11Cは、その外径がホルダ本体2の先端面2Bと略等しくされて、中心線Oに垂直となるような円環状の平坦面とされている。
さらに、取付部12は、取付孔4の嵌合孔4Bに嵌合させられて取り付けられるものであって、この嵌合部4Bの内周面が取付孔4の開口部側に向かうに従い内径が漸次拡大するテーパ形状とされているのに対し、取付部12も、該取付部12の基端側(交換式の切削ヘッド10の先端側。図1において左側)に向かうに従い嵌合部4Bと等しいテーパ(傾斜角度)および嵌合部4Bの内径より極僅かに大きな外径をなすようにして、この外径が漸次拡大する中心線Oを中心とした円錐台状のテーパ形状とされている。
そして、この取付部12と刃部11の後端面11Cとは、ホルダ1のホルダ本体2と同様に超硬合金により形成されており、特に本実施形態では刃部11の全体と取付部12とが超硬合金によって一体に形成されている。なお、取付部12の外周面の表面粗さは、嵌合部4Bの内周面と同じくJIS B 0601:2001(ISO 42887:1997)に規定される最大高さ粗さRzが3.2μm以下となるようにされ、またこの取付部12が突出する刃部11の後端面11Cは、ホルダ2の先端面2Bと同じく最大高さ粗さRzが6.3μm以下となるようにされ、ただし取付部12の外周面の表面粗さよりは粗くなるようにされている。
また、この切削ヘッド10の刃部11および取付部12を形成する超硬合金は、ホルダ本体2を形成する超硬合金と同様にWCの平均粒度1〜5μm、Coを主成分とする結合相量が8〜20wt%のWC−Co系超硬合金であってもよいが、ホルダ本体2とは異なる超硬合金とされていてもよく、例えばWCの平均粒度が1μmより小さい超微粒子超硬合金とすれば、刃部11の耐摩耗性の向上を図って工具寿命を延長することができる。
一方、ヘッド側ねじ部としての雄ねじ部13は、刃部11および取付部12と一体に超硬合金により形成されていてもよいが、ネジ山の欠けや雄ねじ部13の形成のし易さを考慮すると、上記連結部材3と同様に刃部11および取付部12を形成する超硬合金よりは低硬度の金属材料、例えば超硬合金よりも靱性の高いステンレス鋼やダイス鋼等の鋼材によって形成されるのが望ましい。
そこで、このように刃部11および取付部12に異なる材質により形成された雄ねじ部13を取り付けるには、上記ホルダ1においてホルダ本体2に連結部材3を取り付けるのと同様に、上述のように超硬合金により一体に形成された刃部11および取付部12のうち少なくとも取付部12を中空状として内周面に凹部を有するヘッド側取付孔を形成し、雄ねじ部13が形成されるステンレス鋼等からなるヘッド側連結部材としての雄ねじ部材をこのヘッド側取付孔に収容し、その外周面をヘッド側取付孔内周面に密着させて上記凹部に係合させればよい。
より具体的に、本実施形態では刃部11および取付部12に中心線Oに沿うように上記ヘッド側取付孔が形成され、その内周面には、最大高さ粗さRzが5μm以上200μm以下の凹凸面よりなる凹部や、ヘッド側取付孔の孔底側(切削ヘッド10の先端側。)を向く壁部と、中心線O回りの周方向を向く、例えば中心線O方向に延びる平面状の壁部との少なくとも一つが形成された凹部が形成される。一方、雄ねじ部材は、雄ねじ部13が形成される部分の内径よりもヘッド側取付孔に収容される部分の内径が小径とされた内周部を有する円筒状に形成する。
そして、この雄ねじ部材を、その内径が小径の部分をヘッド側取付孔に収容して孔底方向への移動を拘束した上で、ホルダ1において連結部材3の素材6に圧入部材7を圧入するのと同様に、その内周部に圧入部材(パンチ)を圧入して雄ねじ部材を塑性変形させることにより、この小径の部分の外周面をヘッド側取付孔の内周面に密着させてその凹部に嵌入させるように係合させれば、上述のように刃部11および取付部12が超硬合金で、雄ねじ部13はこれよりも低硬度とされた交換式の切削ヘッド10を得ることができる。
なお、やはり上記ホルダ1と同様に、圧入前の雄ねじ部材の内径が小径とされた部分は圧入後の同部分の内径および圧入部材の大径部の外径よりも0.2mm〜1.0mm程度小さく、また圧入前の雄ねじ部材のこの内径小径部分における外径は、ヘッド側取付孔の凹部が形成された部分の内径よりも、例えば0.1mm〜0.5mm程度小さくされ、さらに圧入部材の大径部とその後端側の小径となる部分との外径の差は、例えば20μm〜200μm程度とされる。また、雄ねじ部13は、圧入後に雄ねじ部材の内径が大径とされた部分の外周に形成してもよいが、この大径部分の内径が圧入部材の大径部よりも大径であれば該大径部分は塑性変形しないので、予め雄ねじ部13を形成しておいてから圧入をしてもよい。
このように構成された交換式の切削ヘッド10は、上記ホルダ1に、上記雄ねじ部13を雌ねじ部3Eに螺合させてねじ込まれ、取付部12が取付孔4の嵌合部4Bに摺接してからは、上記回転部11Bに作業用工具が係合させられて回転させられることにより、テーパ形状の嵌合部4Bに同じテーパ形状の取付部12が密着して押圧させられ、これによりホルダ2先端部の上記ネック部2Aが僅かに弾性変形してその外径が拡大しつつ、さらにねじ込まれて嵌合部4Bに取付部12が嵌合させられ、刃部11の後端面11Cがホルダ本体2の先端面2Bに当接して密着させられたところで、切削ヘッド10が中心線O方向に拘束され、連結されて取り付けられる。
さらに、こうして構成されたエンドミルである本実施形態のヘッド交換式切削工具は、上述のようにホルダ1におけるホルダ本体2後端部のシャンク部が工作機械に装着されて、中心線O回りに回転されつつ該中心線Oに交差する方向に送り出され、切削ヘッド10における刃部11の切刃11Aにより被削材を切削加工する。ここで、上記雌雄ねじ部3E、13のねじ込み方向は、この切削加工の際のヘッド交換式切削工具の回転方向に対して反対向きとされる。
そして、上述のように取付部12が嵌合部4Bに嵌合されるとともに、刃部11の後端面11Cがホルダ本体2の先端面2Bに当接して切削ヘッド10が中心線O方向に拘束されることにより、切削ヘッド10がホルダ1に取り付けられた状態において、僅かに拡大したホルダ1先端部の上記ネック部2Aの外径D2は、取付部12が嵌合部4Bに嵌合させられる前の切削ヘッド10がホルダ1から取り外された状態における該ネック部2Aの外径D1からの拡大量D2−D1の外径D1に対する外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)が、この外径D1に対して同じく嵌合前の取付孔4の開口部側における嵌合部4Bの内径dがなすホルダ1先端部の内外径比d/D1に対し、0.022×d/D1−0.003(%)〜0.33×d/D1−0.06(%)の範囲とされている。
また、この取付部12と嵌合部4Bとが嵌合する前の状態において取付孔4の開口部側における嵌合部4Bの内径dがホルダ1先端部のネック部2Aの外径D1に対してなす内外径比d/D1自体は、0.5〜0.8の範囲とされている。なお、この取付孔4の開口部側における嵌合部4Bの内径dは、本実施形態のように取付孔4の開口部に面取り部4Aが形成されている場合は、この面取り部4Aが形成されていないと想定したときの嵌合部4Bとホルダ本体2の先端面2Bとの交差稜線がなす円の直径とし、また取付部12の嵌合前後の外径D1、D2はホルダ1の先端における外径として、ホルダ1の先端部外周に面取りが施されている場合は、やはり面取りが施されていないと想定したときの外径とする。さらに、上述のようにホルダ1の先端部は厳密な円筒でなくてもよく、例えばネック部2Aが上記テーパネック部であってもよく、その場合に面取りが施されている場合にはテーパネック部の延長面と先端面2Bとの交差稜線がなす円の直径を外径D1、D2とすればよい。また、ホルダ1先端部の外周面は、断面が円形に近い例えば正12角形以上の多角形とされていてもよい。
このように構成されたヘッド交換式切削工具では、上述のように後端側のシャンク部が工作機械に装着されるホルダ1のホルダ本体2と、このホルダ1の先端部に取り付けられて刃部11により切削を行う切削ヘッド10とが、ともに硬質材料である超硬合金により形成されていて、これらが、嵌合部4Bおよび先端面2Bと取付部12および後端面11Cとの直接接触により取り付けられているので、切削工具全体として高い強度や剛性を確保することができ、切削加工に使用する際に折損やビビリ振動が生じるのを防いで高い加工精度や加工能率を得ることができる。
しかも、ホルダ1の中心線O方向に延びる嵌合部4Bおよび取付部12の内外周面と、この中心線Oに垂直な方向に延びる平面とされた上記先後端面2B、11Cとがそれぞれ接触することにより、いわゆる2面拘束で切削ヘッド10が保持される。すなわち、これら内外周面と先後端面2B、11Cとの一方が延びる方向への移動が他方によって互いに拘束されることになり、また先後端面2B、11Cでも切削ヘッド10に作用する切削トルクやモーメントを受け止めることができるので、一層高い取付剛性や取付強度で切削ヘッド10を取り付けることが可能となるとともに、切削ヘッド10が中心線Oに対して傾いてしまうようなこともない。
さらに、これら切削ヘッド1の取付部12とホルダ1の嵌合部4Bとは互いに嵌合するテーパ形状とされて、該切削ヘッド10と取付孔4の雌雄ねじ部3E、13の螺合によりテーパ嵌合させられ、このとき雌雄ねじ部3E、13のねじ込みによって取付部12が取付孔4内に引き込まれることでクサビ効果により取付部12が取付孔4を押し広げ、その反力で取付孔4が取付部12を締め付けることにより、嵌合部4Bの内周面と取付部12の外周面との間に大きな接触圧力を確保することができる。このため、これら取付部12と嵌合部4Bとが摩擦係数の小さい超硬合金同士に形成されたものであっても十分な摩擦力を発生させることができ、切削時に高い負荷が作用してもこれに抗して切削ヘッド10を確実に保持することができる。
一方、ホルダ1の上記先端面2Bと切削ヘッド10の上記後端面11Cとは中心線Oに垂直な平面とされていて、上述のように雌雄ねじ部3E、13が一定量ねじ込まれて取付部12と嵌合部4Bがテーパ嵌合した後、これら先後端面2B、11Cとが当接すると切削ヘッド10は中心線O方向に拘束され、それ以上は取付部12が引き込まれることはない。従って、切削ヘッド10を交換するときに雄ねじ部13を雌ねじ部3Eにねじ込み過ぎたり、あるいは切削時に過大な切削抵抗が雌雄ねじ部3E、13のねじ込み方向に作用したとき雄ねじ部13が雌ねじ部3Eにねじ込まれすぎたりすることがなく、このためクサビ効果が過剰に作用して取付部12が嵌合部4Bを押し広げ過ぎることによりホルダ1に過大な応力が作用したりするのを防ぐことができる。
また、例えば上述のようにホルダ本体2の超硬合金を切削ヘッド10よりもWC平均粒度の大きいものとして、ホルダ本体2の熱膨張係数も切削ヘッド10より大きくなったときに、切削による発熱で切削ヘッド10とホルダ本体2の温度が上昇してホルダ本体2の膨張量が大きくなり、これにより嵌合部4Bと取付部12との接触圧力が小さくなってテーパ嵌合による保持力も低減した場合でも、こうして先後端面2B、11Cが当接して切削ヘッド10が拘束されることにより、雌雄ねじ部3E、13がさらにねじ込まれて締め付け過ぎが生じることがないため、切削終了後に切削ヘッド10およびホルダ1が冷却されたときにこのような締め付け過ぎによってテーパ嵌合が強くなり過ぎて切削ヘッド10が取り外し不可能となるような事態を生じることもない。
さらに、嵌合部4Bと取付部12の内外周面に加えてホルダ本体2の先端面2Bと刃部11の後端面11Cとが当接していることにより、切削ヘッド10とホルダ1との接触面積が増大するので、上述のように切削時に切削ヘッド10の刃部11に発生した熱をホルダ1側に速やかに伝達することができ、刃部11の温度上昇の抑制を図ることができる。特に、本実施形態のようにホルダ本体2を切削ヘッド10の刃部11より粗粒の超硬合金により形成した場合、例えばWC平均粒度が1μmより小さい超微粒子超硬合金の熱伝導率は71W/m・℃であるのに対して、WC平均粒度が1μm〜5μmの粗粒超硬合金の熱伝導率は91W/m・℃であるので伝達熱量も増加し、しかもホルダ本体2は刃部11よりも大きくて熱容量も大きいので、一層効果的に刃部11の温度上昇を抑えることが可能となる。
そして、さらに上記構成のヘッド交換式切削工具では、取付部12と嵌合部4Bとの嵌合前の状態のホルダ1において、ホルダ本体2の取付孔4開口部側における嵌合部4Bの内径dがホルダ本体2先端部の外径D1に対してなす内外径比d/D1が0.5〜0.8の範囲とされて、本実施形態では0.65とされるとともに、取付部12と嵌合部4Bとの嵌合後のホルダ本体2先端部の外径D2と嵌合前の上記外径D1との差である外径拡大量D2−D1が外径D1に対してなす百分率である外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)は、上記内外径比d/D1に対して0.022×d/D1−0.003(%)〜0.33×d/D1−0.06(%)の範囲とされている。
ここで、嵌合前の状態のホルダ1において、そのホルダ本体2の取付孔4開口部側での嵌合部4Bの上記内径dがホルダ本体2先端部の外径D1に対してなす内外径比d/D1が0.8よりも大きいと内径dが外径D1に近くなり過ぎ、ホルダ本体2の先端部における内外周面間の肉厚が小さくなって強度も低下する。また、ホルダ本体2の先端部の肉厚が小さくなるので拡径し易くなり、接触圧力は低下するため、切削時の負荷が高いときに切削ヘッド10に作用する切削トルクやモーメントに抗しきれずに、切削ヘッド10が空転するおそれがある。
一方、この内外径比d/D1が0.5よりも小さいと、ホルダ本体2の先端部は肉厚が厚くなって強度も向上するとともに拡径し難くなるので接触圧力は増大するものの、こうして接触する嵌合部4Bと取付部12との内外径すなわち両者の接触半径が小さくなるため、やはり高負荷の切削の際には切削トルクやモーメントに抗して切削ヘッド10を保持することができなくなり、切削ヘッド10の空転を生じるおそれがある。
また、この内外径比d/D1に対して、嵌合前後のホルダ1におけるホルダ本体2先端部の外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)が0.33×d/D1−0.06(%)よりも大きいと、ホルダ本体2を形成する超硬合金の引張強さを超えてこの先端部が拡径することにより過大な引張応力が該先端部に作用するおそれがあり、ホルダ1の先端部に破損を招くおそれが生じる。その一方で、この外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)が内外径比d/D1に対して0.022×d/D1−0.003(%)よりも小さいと、上述のクサビ効果が不十分となって嵌合部4Bと取付部12との間の接触圧力も不十分となり、やはり切削ヘッド10を安定的に保持することができなくなって空転を生じるおそれがある。
言い換えれば、上記構成のヘッド交換式切削工具では、このようにホルダ1先端部の内外径比d/D1および外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)を設定することにより、このホルダ1先端部に必要な肉厚を確保しつつ、後述する実施例でも説明するように、切削時の切削ヘッド10を確実に保持可能な接触圧力が取付部12と嵌合部4Bとの間に得られる範囲で、このホルダ1先端部におけるホルダ本体2が嵌合前後で大きく変形し過ぎるのを抑えてホルダ1の破損を防止することができる。
また、本実施形態では、ホルダ1のホルダ本体2を形成する超硬合金を、WC平均粒度1〜5μmの比較的粗粒のWC−Co系超硬合金として、Coを主成分とする結合相量を8〜20wt%としており、これにより上述のようにホルダ本体2の熱伝導率を高めて切削ヘッド10の切削熱を速やかに伝達、発散させることができる上、このホルダ1の破壊靱性を向上させて切削中の衝撃などによる破損を防ぐことも可能となる。
ここで、WC平均粒度が1μmよりも小さな超微粒子超硬合金では、このような効果を得ることはできず、その一方でWC平均粒度が5μmよりも大きいと、破壊靱性は向上するものの硬度が低下して例えば嵌合部4Bの耐久性が損なわれるため、特に切削ヘッド10をこれより高硬度の上記超微粒子超硬合金により形成した場合には、その取り付けが早期に不安定となるおそれがある。また、このようなWC平均粒度が1〜5μmのWC−Co系超硬合金では、Coを主成分とする結合相量が8wt%以上であれば1.5GPa程度以上の引張強度を得ることができるため、負荷の高い重切削の場合でも十分な剛性や強度をホルダに確保することができるが、結合相量が多くなるほど破壊靱性は向上するもののヤング率は低下して剛性が損なわれるので、上限は20wt%としている。
一方、本実施形態では、ホルダ1のホルダ本体2における嵌合部4Bの内周面は、JIS B 0601:2001(ISO 42887:1997)に規定される最大高さ粗さRzが3.2μm以下の比較的滑らかな表面粗さとされており、これにより偏り無く切削ヘッド10の取付部12を嵌合部4B内周面に密着させてテーパ嵌合させ、上記クサビ効果により切削ヘッド10を確実に保持することが可能となる。勿論、この嵌合部4Bの内周面に密着する切削ヘッド10の取付部12の外周面も、同様に最大高さ粗さRzが3.2μm以下とされるのが望ましい。
また、これに対して、ホルダ本体2の先端面2Bの表面粗さは、本実施形態ではこの嵌合部4Bの内周面の表面粗さよりも粗くされて、その最大高さ粗さRzの上限が6.3μmとされている。従って、上述のようにこの先端面2Bに刃部11の後端面11Cが当接してから、さらに切削ヘッド10の雄ねじ部13を取付孔4の雌ねじ部3Eにねじ込もうとすると大きな摩擦抵抗が生じるので、取付部12と嵌合部4Bとが締め付けられ過ぎるのを防ぐことができる。勿論、この先端面2Bに当接する切削ヘッド10の上記後端面11Cの表面粗さも、同様に最大高さ粗さRzが6.3μm以下の範囲で取付部12外周面や嵌合部4B内周面の表面粗さより粗くされるのが望ましい。
さらに、上述のようにテーパ形状とされた取付孔4の嵌合部4Bと切削ヘッド10の取付部12のテーパは、これが大き過ぎると、取付部12と嵌合部4Bとのテーパ嵌合によって取付部12外周面に接触圧力が作用したときに、切削ヘッド10を取付孔4から押し出す方向に分力が生じるおそれがあり、特に本実施形態のように刃部11外周側の切刃11Aが捩れているときにその捩れ角が大きい場合には、この外周側の切刃11Aに作用する切削力と上記分力との合力に抗して切削ヘッド10を保持するために雌雄ねじ部3E、13の締め付けを強めなければならない。
ところが、これに対して、この嵌合部4Bと取付部12のテーパを本実施形態のように1/10よりも小さくすると、同じ接触圧力が作用したときでもテーパ嵌合によって切削ヘッド10を取付孔4から押し出す方向に生じる分力は小さく、この接触圧力による摩擦力と雌雄ねじ部3E、13による締め付け力との合力で、切刃11Aに作用する切削力に抗することになるので、締め付け力自体は小さく抑えることが可能となる。このため、ホルダ本体2の先端部に作用する引張応力は軽減してより効果的に破損を防ぎつつ、切削ヘッド10は一層強固に保持することが可能となる。
さらにまた、本実施形態では切削ヘッド10の取付部12が中空状とされていて、その内部すなわち上記ヘッド側取付孔には、この切削ヘッド10の取付部12を形成する超硬合金よりも低硬度の金属材料よりなるヘッド側連結部材としての雄ねじ部材が収容されている。従って、取付部12を嵌合部4Bにテーパ嵌合させると、ホルダ本体2先端部が拡軽するとともに取付部12は外周側から押圧されて内外径が小さくなり、これに伴って上記雄ねじ部材も外周側から押圧されるとともにその反力で取付部12を内周側から押圧することになるので、取付部12をその内外周から強固にクランプすることができ、切削ヘッド10をさらに一層確実に保持することが可能となる。
また、本実施形態では、こうして取付部12の中空部に収容された低硬度の材料よりなる部材に雄ねじ部13が形成されており、例えば高硬度である一方で脆性が高い超硬合金よりなる切削ヘッド10に直接ねじ部を形成するのに比べ、ネジ山に欠けが生じるのを防ぐことができるとともに、このような欠けを防ぐために特殊なネジ山形状を採用する必要もなくなって、コストの低減を図ることができる。これは、ホルダ1の取付孔4に設けられる雌ねじ部3Eについても同様であり、すなわち本実施形態ではこの雌ねじ部3Eも、ホルダ本体2を形成する超硬合金よりも低硬度で高靱性の金属材料よりなる連結部材3に形成されて、この連結部材3が取付孔4に収容されているので、ネジ山の欠けがなく、また特殊なネジ山形状も必要としない。
さらに、こうしてホルダ本体2や切削ヘッド10の刃部11および取付部12よりも低硬度で高靱性とされた連結部材3や雄ねじ部材は、その被係合部3Bの外周面が、ホルダ本体2の取付孔4における係合部4Dや上記ヘッド側取付孔の内周面に密着して、この内周面に形成された凹部に嵌め入れられるように係合させられ、すなわち被係合部3B外周面に、凹部に嵌入した凸部が形成されるようにすることにより、これら連結部材3や雄ねじ部材を強固に取付孔4やヘッド側取付孔に取り付けてホルダ本体2や刃部11および取付部12と一体化することができる。従って、切削時の負荷等によって交換式切削ヘッド10にがたつきが生じたりするようなことはなく、ホルダ本体2が高剛性、高強度であることとも相俟って安定した切削加工を促すことが可能となる。
また、このように連結部材3や雄ねじ部材の被係合部3B外周面を取付孔4の係合部4D内周面やヘッド側取付孔内周面の凹部に係合させるのに、本実施形態では連結部材3や雄ねじ部材が筒状とされて、上述のように被係合部3B部分や内径小径部分の外径を係合部4Dやヘッド側取付孔の内径より小さくした連結部材3の素材6や雄ねじ部材を用いて、この素材6内周の圧入孔部6Aや雄ねじ部材の内径小径部分に、その内径よりも大きな外径を有する圧入部材7を圧入させることにより、素材6や雄ねじ部材を拡径させるように塑性変形させて係合部4Dやヘッド側取付孔の内周面に密着させ、連結部材3の被係合部3B部分や雄ねじ部材の内径小径部分を凹部に係合させることができる。
このため、素材6や雄ねじ部材の外周面を均一かつ全面的に係合部4Dやヘッド側取付孔の内周面に押圧するように密着させ、これら係合部4Dやヘッド側取付孔に形成された凹部に塑性変形した外周面を満遍なく嵌入させるようにして、確実に係合させることができる。そして、ホルダ1においては、この素材6の圧入孔部6Aから拡径した貫通孔部3Fの先端側に中心線Oを中心とした所定の内径のねじ下穴3Gと雌ねじ部3Eを形成して連結部材3とすることにより、この連結部材3を一層強固にホルダ本体2と一体化したものとすることができる。これは、切削ヘッド10に関しても同様である。
その一方で、こうして凹部と係合してホルダ本体2や刃部11および取付部12と一体化した連結部材3や雄ねじ部材は、ろう付けなどによる接合とは異なって機械的に結合しているだけであるので、例えば治具等を使用して連結部材3や雄ねじ部材に凹部との係合力を上回る過大な引っ張り力を作用させることにより、連結部材3や雄ねじ部材を取付孔4やヘッド側取付孔から引き抜いて分離することができる。このため、万一破損等が生じて使用不可能となったヘッド交換式切削工具においても、材質の異なるホルダ本体2や刃部11および取付部12と連結部材3や雄ねじ部材とを分別して回収することができ、これらのリサイクルを容易とすることができる。
また、本実施形態では、取付孔4の係合部4Dやヘッド側取付孔の内周面に形成される凹部が、この内周面を最大高さ粗さRzが5μm以上200μm以下の凹凸面とすることにより、この凹凸面の凹み自体を凹部としている。従って、係合部4Dやヘッド側取付孔の内周面全体に亙って凹部が形成されることになり、そのような凹部に、上述のように塑性変形した連結部材3の被係合部3Bや雄ねじ部材の内径小径部分の外周面が密着して係合させられることにより、係合部4D内周面と被係合部3B外周面との間およびヘッド側取付孔と雄ねじ部材との間には大きな摩擦力が生じることになるので、さらに安定的かつ強固に連結部材3をホルダ本体2と、また雄ねじ部材を刃部11および取付部12と、一体化することができる。
例えば、ホルダ本体2の取付孔4における係合部4D内周面の最大高さ粗さRzを7.0μmに調整し、連結部材3に形成される上記素材6の被係合部3B部分の外周面の最大高さ粗さRzを2.0μmに調整して、係合部4Dに収容した素材6に上記実施形態のように圧入部材7を圧入してホルダ本体2と一体化した後、ホルダ本体2を破壊して素材6の被係合部3B部分の外周面の表面粗さを測定したところ、最大高さ粗さRzが5.5μmに変化していることが確認されており、これにより、上述のように係合部4D内周面の凹凸面に沿って素材6の外周面が塑性変形しているのが分かる。
また、ホルダ本体2や刃部11および取付部12を形成する超硬合金は焼結材料であるので、焼結前の圧粉体において係合部4Dやヘッド側取付孔の内周面となる面が焼結後に上記範囲の表面粗さとなるように加工を施したり、焼結時の加熱温度や加熱時間を調整したり、焼結後に内周面に研磨を施して表面粗さを小さくしたり、逆に表面を粗して表面粗さを大きくしたり、あるいは焼結後の内周面が上記範囲の表面粗さである場合には、この内周面に対しては研磨を省略して焼結肌のままとしたりすることにより、これら係合部4Dやヘッド側取付孔の内周面を確実に上述のような表面粗さとなるように調整することができる。
ここで、特に、本実施形態のようにホルダ本体2や刃部11および取付部12を形成するのがWC−Co系超硬合金であってCoを結合相(バインダー)として含有するものであって、これらホルダ本体2の取付孔4における係合部4Dやヘッド側取付孔に対して焼結後に研磨を施さずに焼結肌のままとして上記範囲の表面粗さに調整した場合、この係合部4Dやヘッド側取付孔の内周面表面には、Coを多く含むコバルトリッチ領域が形成される。このコバルトリッチ領域は、焼結材料の焼結工程において上記圧粉体を加熱することにより上記内周面表面に現れる領域であって、Coを主成分として0.5μm〜5μm程度の厚さを有しており、従って上記凹凸面はこのようなコバルトリッチ領域を含んで形成されていてもよい。
なお、この取付孔4における係合部4D内周面やヘッド側取付孔内周面の最大高さ粗さRzが5μm未満であると、十分な摩擦力が発生せずに連結部材3や雄ねじ部材をホルダ本体2や刃部11および取付部12と強固に一体化することができなくなるおそれが生じる。また、逆に最大高さ粗さRzが200μmよりも大きいと、上記素材6や雄ねじ部材を塑性変形させたときに被係合部3B部分や内径小径部分の外周面を確実に凹部とされる凹凸面に係合させるには、この係合部4D内周面やヘッド側取付孔内周面の内径と素材6における被係合部3B部分や雄ねじ部材の内径小径部分の外径との差を極小さくしなければならなくなり、素材6や雄ねじ部材の内径小径部分を取付孔4やヘッド側取付孔に挿入することが困難となるおそれがある。
また、本実施形態では、こうして係合させられた連結部材3に形成される取付ねじ部が雌ねじ部3Eであり、切削ヘッド10に形成されるヘッド側ねじ部としての雄ねじ部13に螺合させられる。そして、この雌ねじ部3Eは、連結部材3が取付孔4の上記係合部4Dに係合させられてホルダ本体2に取り付けられた上記取付状態において、本実施形態では連結部材3の先端側から係合部4Dの中心線O方向の長さの1/2を超える当たりまで延設されており、すなわち連結部材3の内外周においてこの雌ねじ部3Eが形成された範囲と、被係合部3Bが係合部4Dに係合させられた範囲とを、中心線O方向に重なり合わせることができる。
従って、取付孔4の係合部4Dと係合した連結部材3の被係合部3Bの直ぐ内周側で、雌ねじ部3Eに雄ねじ部13が螺合させられて切削ヘッド10が取り付けられるため、この切削ヘッド10の刃部11から切削時に作用する切削力が雄ねじ部13に伝えられても、これを雌ねじ部3Eの直ぐ外周の被係合部3Bを介して係合部4Dによって受け止めることができ、より安定して切削ヘッド10を支持して円滑な切削加工を図ることが可能となる。
ただし、本実施形態では、このようにホルダ1側の取付ねじ部が雌ねじ部3Eとされ、切削ヘッド10のヘッド側ねじ部が雄ねじ部13とされているが、これとは逆にホルダ1側の取付ねじ部を雄ねじ部とし、ヘッド側ねじ部を雌ねじ部とすることも可能ではある。この場合には、切削ヘッド10の刃部11および取付部12に異なる材料よりなる雄ねじ部材を取り付けるのと同様に、先端部外周におねじ部が形成される円筒状の連結部材を取付孔4の係合部4Dに収容して、その内周部に圧入部材を圧入して該連結部材を塑性変形させることにより外周部を係合部4Dに係合させればよい。
さらにまた、本実施形態では、ホルダ1の取付孔4の最奥部に凹所4Eが形成されるとともに、連結部材3の後端部には回り止め部3Cが形成されており、これら凹所4Eと回り止め部3Cとには、中心線Oに直交する断面が直線状をなす壁面4Gと側面3Dとが形成されている。そして、連結部材3を取り付けた上記取付状態において、これら壁面4Gと側面3Dとが対向して回り止め部3Cが凹所4Eに収容されるので、連結部材3は、中心線O回りに回転しようとしても、この回り止め部3Cの側面3Dが凹所4Eの壁面4Gに当接することによっても中心線O回りの回転が拘束されることになり、切削加工時に切削ヘッド10から連結部材3に過大な切削力が作用しても、連結部材3が取付孔4内で空回りすることにより凹部との係合が外れて切削ヘッド10ごと脱落したりするのを防ぐことができる。
なお、本実施形態では回り止め部3Cを断面長円状に形成して一対の上記側面3Dを互いに平行かつ中心線Oにも平行に形成し、これらの側面3Dを、同じく断面長円状に形成された凹所4Eの一対の壁面4Gに対向させて当接させるようにしているが、図6(a)に示す変形例のように凹所4Eを中心線Oに直交する断面が略正方形状となるように形成して周方向に隣接するもの同士が互いに直交する2対の壁面4Gを形成するとともに、回り止め部3Cについても図6(b)、(c)に示す変形例のように周方向に隣接するもの同士が互いに直交するように2対の側面3Dを形成し、これらの側面3Dを壁面4Gに対向させて当接させることによって連結部材3の回転を拘束するようにしてもよい。
また、側面3Dと壁面4Gは、中心線Oに直交する断面において直線状をなして互いに対向して当接することにより連結部材3の回転を拘束することができれば、1つずつでも、3つでも、5つ以上でもよく、さらに後端側に向かうに従い中心線O側に向かう傾斜平面や湾曲面であってもよい。さらにまた、本実施形態では連結部材3の素材6の圧入孔部6Aに圧入部材7を圧入する際に、この圧入部材7の大径部7Bが凹所4Eに収容された回り止め部3Cにまで達することがないように、圧入孔部6Aの上記被係合部3B後端あたりで大径部7Bを止めて引き抜くようにしており、側面3Dが壁面4Gに当接せずに、周方向の位置が合わされて間隔をあけて対向していて、連結部材3が空転したときに当接して回り止めとなるようにされているが、上述のように圧入部材7がホルダ本体2と干渉するおそれがなければ、大径部7Bが圧入孔部6Aの後端から抜け出るところまで圧入して、素材6の回り止め部3C部分も塑性変形させて拡径することにより、初めから側面3Dが壁面4Gに密着して当接させられるようにしてもよい。
さらに、上記実施形態および図6に示したその変形例では、連結部材3の最後端に回り止め部3Cを形成して取付孔4の最奥部に形成された凹所4Eに収容し、これら回り止め部3Cと凹所4Eに形成された側面3Dと壁面4Gとを当接させるようにしているが、例えば連結部材3の被係合部3Bに中心線Oに平行に延びる平面状の側面を形成するとともに、取付孔4の係合部4Dにはこの側面に対向するようにしてやはり中心線Oに平行に延びる平面状の壁面を形成し、連結部材3の素材6を塑性変形させる際にこれら側面と壁面とが密着して当接させられるようにすることにより、連結部材3の回り止めを図るようにすることも可能である。
なお、上述のように切削ヘッド10において、刃部11および取付部12に中心線Oに沿うように内周面に凹部を有するヘッド側取付孔を形成するとともに、雄ねじ部13が形成されるヘッド側連結部材としての雄ねじ部材をこのヘッド側取付孔に収容し、その圧入孔部に圧入部材を圧入することによって外周面をヘッド側取付孔内周面に密着させて上記凹部に係合させるようにした場合、この切削ヘッド10にはヘッド側取付孔および圧入孔部が形成されているので、これらに連通して刃部11の表面に開口するクーラント孔を形成すれば、ホルダ1におけるホルダ本体2の貫通孔5、凹所4E、連結部材3の貫通孔部3F、および雌ねじ部3Eを介してクーラントを工作機械側から供給することができ、刃部11の切刃11Aの効率的な冷却を図ることができる。
ただし、本実施形態ではこうしてクーラントを供給できるように、連結部材3が貫通孔部3Fを有して内周部が貫通する筒状に形成されているが、孔部3Fが後端側の回り止め部3Cで閉塞された止まり孔とされた有底筒状の連結部材とされていてもよい。この場合には、上述のように連結部材3の素材6の圧入孔部6Aに圧入部材7を圧入する際に、この圧入部材7の大径部7Bが閉塞された回り止め部3Cにまで達することがないように途中で止めて引き抜くようにすればよい。これは、切削ヘッド10においてヘッド側取付孔に雄ねじ部材を係合させる場合でも同様である。
次に、本発明におけるホルダ1の内外径比d/D1および外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)について、実施例を挙げて説明する。本実施例では、上述した実施形態のヘッド交換式切削工具(ヘッド交換式エンドミル)に基づき、まず切削ヘッド10の取付部12が嵌合する前の状態におけるホルダ1のホルダ本体2先端部の外径D1を0.01m(10mm)と0.02m(20mm)とした2種のヘッド交換式切削工具について、嵌合部4Bの上記取付孔4開口部側の内径dを変化させたときの、内外径比d/D1に対する許容トルクを、切削に使用するための最低限度としてホルダ1に発生する応力が100MPaとなるように設計した場合(例えば軽切削用として)と、超硬合金の強度的な上限としてホルダ1に発生する応力が1.5GPaになるように設計した場合(例えば重切削用として)について計算した。
すなわち、上記内径dにより、切削ヘッド10とホルダ1との間で伝達可能なトルクである上記許容トルクが変化すると考えられるので、ホルダ1の嵌合部4Bの内周面周方向応力に許容応力を設定し、この許容応力に達するように締め代δを求め、この締め代δから接触圧力Pを計算して次式1により許容トルクTを計算した。ただし、上記実施形態における1/10よりも小さな例えば1/14のテーパでは、嵌合部4B内周面と取付部12外周面が中心線Oに対してなす傾斜の影響は無視できるので、解析においてはこれらを中心線Oを中心とした円筒面でモデル化して、締まり嵌めの解析を適用した。なお、式1においてL(m)は嵌合部4Bと取付部12との中心線O方向の接触長さで0.5×D1とし、μは嵌合部4Bと取付部12との摩擦係数で0.15である。
また、締め代δ(m)と接触圧力P(Pa)は次式2により、嵌合部4Bの内周面の周方向応力σθ(Pa)は次式3により、ホルダ本体2先端部の半径方向変位u(m)は次式4により、それぞれ計算される。ここで、これら式2〜4において、E1は切削ヘッド10の取付部12のヤング率で580GPaであり、E2はホルダ本体2先端部のヤング率で560GPaであり、ν1は切削ヘッド10の取付部12のポアソン比で0.21であり、ν2はホルダ本体2先端部のポアソン比で0.22である。
さらに、ra(m)は取付部12に形成されたヘッド側取付孔の半径、rb(m)は取付部12の基端部における半径(取付部12の外周面と刃部11の後端面11Cとの交線がなす円の半径)、rc(m)は上記嵌合部4Bの取付孔4開口部側の半径(d/2)、rd(m)はホルダ本体1先端部の外径D1の半径(D1/2)であり、いずれも嵌合前の半径である。また、締め代δは、取付部12を嵌合部4Bに嵌合する前の取付部12の基端部と嵌合部4Bの取付孔4開口部側の直径差(2×rb−2×rcまたは2×rb−d)となり、すなわち上記取付部12の基端部における直径(2×rb)は、嵌合部4Bの取付孔4開口部側の直径dにこの締め代δを加えた大きさとなる。
この結果について、ホルダ1の内外径比d/D1を0.4〜1.0の範囲で変化させたときに、外径D1が10mm、設計応力が100MPaの場合を図7に、外径D1が20mm、設計応力が100MPaの場合を図8に、外径D1が10mm、設計応力が1.5GPaの場合を図9に、外径D1が20mm、設計応力が1.5GPaの場合を図10に、それぞれ示す。なお、これら図7〜図10において、raは、外径D1が10mmの場合は0.002m(2mm)、外径D1が20mmの場合は0.004m(4mm)とした。
これら図7〜図10の結果より、外径D1が0.01m(10mm)の場合も0.02m(20mm)の場合も、また設計応力が100MPaの場合も1.5GPaの場合も、ホルダ1の内外径比d/D1が0.65付近で最も高い許容トルクとなっていることが分かり、0.5〜0.8の範囲であれば切削ヘッド10を確実に保持できると考えられる。
そこで、次に、外径D1が0.02m(20mm)、設計応力が100MPaの場合について、内外径比d/D1を0.45〜0.85の範囲で変化させた5種のヘッド交換式切削工具により切削試験を行い、切削ヘッド10に空転(切削抵抗による切削ヘッド10の締め込まれ)が生じているか否かを確認することにより、切削ヘッド10が確実に保持されているかどうかを検証した。その際に、嵌合部4B内周面と取付部12外周面のテーパは上記実施形態の通り1/14(中心線Oに対する傾斜角度として2°)とした。この結果を、内外径比d/D1が0.5〜0.8の範囲の3種を実施例1〜3とし、この範囲外のものを比較例1、2として、締め代δ(mm)および計算上の許容トルクT(Nm)とともに次表1に示す。
なお、この切削試験において、切削ヘッド10は4枚刃のスクエアエンドミルとし、被削材は炭素鋼(硬度220HB)とした。また、切削条件は、主軸回転速度3180min−1、軸方向切り込み10mm、半径方向切り込み20mmの溝切削とし、1刃当たりの送りを0.05mm/tとして、計算上14Nmの切削トルクが与えられるようにした。さらに、切削長は0.3mで、乾式切削であった。
勿論、表1の試験結果の丸印は空転が生じていないもの、バツ印は空転が生じたものである。また、空転の有無の確認は、切削ヘッド10のねじ込みの際に刃部11の後端面11Cがホルダ本体2の先端面2Bに接触してから僅かにねじ込む程度として、これら先後端面2B、11Cを挟んでホルダ本体2先端部とフランジ部11Dの外周面に合いマークを付け、切削後にマークがずれていれば空転が発生したものとした。この表1の結果より、内外径比d/D1が0.5〜0.8の範囲の実施例1〜3では空転が生じていないことが確認できた。
次に、この結果を踏まえて、外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)について検証する。すなわち、上記表1の結果では、ホルダ1に発生する応力が100MPaとなるような接触圧力で切削が可能であったので、設計応力の下限値は100MPaとした。一方、設計応力の上限値については、ホルダ本体2を形成する超硬合金の引張強さまでとなり、およそ1.5GPaとなる。ここで、接触応力Pを発生させるために締め代δを与えて嵌合部4Bにより取付部12を締め付けると、ホルダ本体2先端部においては引張応力が発生し、この引張応力に比例してホルダ本体2先端部の外径が嵌合前の外径D1から嵌合後の外径D2へと拡大することになる。
そこで、この外径の拡大量D2−D1が嵌合前の外径D1に対してなす外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)が、設計応力100MPaの場合と1.5GPaの場合とで、上記内外径比d/D1に対してどのように変化するかを、上記と同じく外径D1が0.01m(10mm)の場合と0.02m(20mm)の場合とで解析した。この解析結果を、外径D1が10mm、設計応力が100MPaの場合を図11に、外径D1が20mm、設計応力が100MPaの場合を図12に、外径D1が10mm、設計応力が1.5GPaの場合を図13に、外径D1が20mm、設計応力が1.5GPaの場合を図14に、それぞれ示す。
なお、これら図11〜図14においても、ヘッド側取付孔の半径raは、外径D1が10mmの場合は0.002m(2mm)、外径D1が20mmの場合は0.004m(4mm)である。また、図11〜図14において、実線で示すのは解析結果そのものであり、破線で示すのはこの解析結果を直線で近似したものであり、設計応力が100MPaの場合は内外径比d/D1に対して0.022×d/D1−0.003(%)であり、設計応力が1.5GPaの場合は内外径比d/D1に対して0.33×d/D1−0.06(%)であった。
従って、これら図11〜図14の結果より、上述のように外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)が内外径比d/D1に対して0.022×d/D1−0.003(%)〜0.33×d/D1−0.06(%)の範囲であれば、空転を生じさせることなく切削ヘッド10を確実に保持することが可能であるとともに、超硬合金よりなるホルダ本体2の引張強さを超える応力を発生させることなく、ホルダ本体2の破損を防止することが可能であることが分かる。
そこで、このように外径拡大率(D2−D1)/D1×100(%)が内外径比d/D1に対して0.022×d/D1−0.003(%)〜0.33×d/D1−0.06(%)の範囲とされた実施例のヘッド交換式切削工具と、この範囲外とされた比較例のヘッド交換式切削工具により切削試験を行ったところ、実施例では切削ヘッド10の空転やホルダ本体2先端部の破損を生じることなく切削が可能であったのに対し、外径拡大率が上記範囲よりも小さい比較例では切削ヘッドに空転が生じた一方、外径拡大率が上記範囲よりも大きい比較例では切削ヘッドをねじ込んだ際にホルダ本体先端部が破損して切削試験を行うこと自体が不可能であった。