JP4846489B2 - 刃先交換式切削工具 - Google Patents
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Description
そこで本願発明は、工具本体のインサートの取付け剛性を改善し、工具本体に装着するインサートを高精度に加工することなく強固に取付けを行うことができ、更にインサートの飛び出し防止を改善した刃先交換式切削工具を提供することである。
また、本願発明の刃先交換式切削工具において、インサートの逃げ角をα度、第2のクサビ部材の挿入角をβ度としたとき、α<β、0<β≦45、であることが好ましい。
図3に示す様に、刃先交換式切削工具1におけるインサート3の固定方法は、工具本体に装着されたインサートの上面7を第1のクサビ部材4によって押圧する第1の固定と、第2のクサビ部材5によって、上面7とインサート外周面8を同時に押圧する第2の固定とを併用している。特に第2の固定に使用している第2のクサビ部材は、インサート外周面を押圧しているので、インサートが切削工具回転時における遠心力によって工具本体から飛び出すのを防ぐ効果がある。即ち、工具本体が回転した際に発生する遠心力の方向と対抗する方向へ第2のクサビ部材を配置しているので、高速回転時また、切屑の排出を良好にするためにラジアルレーキ角θ(度)を過大なネガとした場合に起きるインサートの飛び出しを防止することができる。即ち、第2のクサビ部材は、フライス加工における高速回転時や切屑排出性向上と切刃がワークへ食い付く時の衝撃緩和を目的にθ値を過大なネガ状態、例えばθ値が−20度を超える様な場合に、インサートの飛び出しを防止し、加工能率の高い刃先交換式切削工具を提供することができる。この理由は、第2のクサビ部材が、工具本体の回転した際に発生する遠心力の方向と対抗する方向へ作用するからである。
インサートと第1のクサビ部材及び第2のクサビ部材との立体的な位置関係は、インサートの拘束力の確保とクサビ部材の磨滅回避の両立を達成させるために重要な事項である。特に、第2のクサビ部材は工具回転の外周側に配置されることから、切り屑排出時の流れに沿った擦過による磨滅を避けなければならない。クサビ部材は磨滅によって、インサートの拘束力低下を招くからである。一方、工具回転の内周側に装着する第1のクサビ部材は、切り屑排出時における擦過等の影響を受けることが少ないため、インサートの拘束力強化を主な目的として、正面切れ刃9の近傍まで近づけて配置することができる。第2の固定に用いる第2のクサビ部材のインサートとの立体的な位置関係は、インサート上面の押圧を開始する位置が、重要である。正面切れ刃9から回転軸方向に距離Pだけ離れていることが必要である。距離Pが、切削加工時に被削材から生成される切り屑のカール径に対して充分な空間を確保できる値を有する場合、切り屑が第2のクサビ部材へ接触することが無く、スムーズな切り屑排出と良好な加工を行う事が出来る。スムーズな切り屑排出によって、被削材の加工面への再接触を回避することができるから、良好な加工面を確保できる。一方、P値が小さく、第2のクサビ部材が正面切れ刃に接近しすぎる場合は、クサビ部材の磨滅が著しくなり、不都合である。また、P値を必要以上に大きく設定した場合は、クサビ部材の磨滅を回避する点については好都合であるが、インサートの刃先を拘束する作用が小さくなり不都合である。そこで、本願発明では、インサート内接円の長さをLとしたとき、P/Lは、0.25≦P/L≦0.50、の範囲に規定する。この規定範囲内とすることで、磨滅の回避と拘束作用が両立し、バランスの良い配置となる。更に、第2のクサビ部材がインサート上面10を押圧する部分の長さは、回転軸方向に0.3L以上の長さとなることが好ましい。これにより、インサートを確実に拘束することができる。
また本願発明のインサート固定方法によれば、インサートの上面と外周面を同時に押し圧できる第2のクサビ部材は、例えば、螺子により可動なので、インサートの上面と外周面を同時に押圧してインサートの固定が出来ると共に、工具本体のインサート固定部の磨滅による固定力低下を極力抑えることが出来る。
本願発明の発明では、取付け穴付きインサートを用いる場合、取付け穴を用いてねじ固定する手段と第1、第2のクサビ部材による固定手段との併用によって、インサートの拘束力は更に強固なものとなり、好ましい。また、取付け穴を用いてねじ固定する手段と第2のクサビ部材による固定手段との組み合わせを採用することによっても、本願発明の強固な固定を実現することができて好ましい。
更に、インサート上面に注目したとき、第1のクサビ部材の内周側押圧面12と、第2のクサビ部材の外周側押圧面13との2面から押圧するので、たとえ工具本体のインサート固定部の磨滅が発生するような場合であっても、固定力低下を極力抑えることが出来る。従って、加工能率の高い刃先交換式切削工具を提供することができる。
本発明例1から5は、α値が11度のインサートを使用し、本発明例6から7はα値が0度、本発明例8から9はα値が20度のものを使用した。また、P/L値、β値の項目も検討した。本発明例3から5、比較例9は刃先調整を実施した。比較例9の刃先調整は、インサートを第1のクサビ部材によって仮締めした後、インサート外周面を指で押さえながら刃先調整ねじを回転させて刃先調整ねじ端面をインサートの外周面へ当接させて刃先調整を行い、最後に第1のクサビ部材を本締めした。工具形態を表1に示す。
(切削条件)
加工方法:フライス加工
被削材:S50C
切削速度:218m/min
テーブル送り:3520mm/min
主軸の回転数:220min−1
1刃の送り:2.0mm/刃
軸方向切り込み深さ:0.1mm
径方向切り込み幅:200mm
切削油:無し、
評価基準は、被削材の面粗さとした。面粗さの測定は、8mmの長さを接触式面粗さ測定器にて測定して、その最大高さRmax値を評価値とした。Rmax値が1〜10μmを最良とし◎印、11〜20μmを良好とし○印、20μmを超えるものを不可とし△印、更にインサートが飛散したもの、切屑のトラブルがあったものについては×印とした。また、第2のクサビ部材が確実にインサートを拘束していないものやインサートが確実に固定されていないものは安全を重視して切削テストを中止して×印とした。表1に結果を併記した。切屑の排出状況は高速度カメラを使用して観察した。
本発明例1から5、比較例10から13は、第2のクサビ部材のP/L値を変化させた。P/L値が本願発明の規定範囲内であった本発明例1から5は、切屑排出の安定した加工となり、第2のクサビ部材がインサートを効果的に押圧し、拘束することができた。一方、P/L値の小さかった比較例10、11は、第2のクサビ部材がインサートを押圧する力は向上するものの、切屑の排出が阻害されてしまい安定加工が出来ないか、或は加工は出来ても生成された切屑が第2のクサビ部材へ接触した後、加工面へ擦過しつつ排出されるために加工面に傷が付き、結果的に加工面粗さが悪い結果となった。P/L値の大きかった比較例12、13は、切屑の排出は良好であるが、インサートの固定が不安定になり、加工中にインサートが振動したため、加工面粗さが悪い結果となった。比較例13は、正面切れ刃が欠損する不具合が発生した。
本発明例6から9は、インサートのα値が、0度、20度の場合を示したものであるが、加工後の被削材面粗さは満足の行く結果が得られ、インサートの拘束が十分であったことを確認できた。以上の様に、本願発明のインサート固定方法を用いることで、インサートを強固に固定出来、インサートの飛び出し防止を改善した加工能率の高い刃先交換式切削工具であることを確認できた。
2:端面
3:インサート
4:第1のクサビ部材
5:第2のクサビ部材
6:インロー部
7:インサート上面
8:インサート外周面
9:正面切れ刃
10:第2のクサビ部材挿入溝
11:第2のクサビ部材のインサート外周押圧面
12:第1のクサビ部材のインサート押圧面
13:第2のクサビ部材のインサート上面押圧面
14:第1のクサビ部材挿入溝
15:インサート固定部
16:インサート着座面
17:径方向固定面
18:軸方向固定面
19:刃先調整ねじ挿入孔
20:刃先調整ねじ
21:刃先調整ねじ端面
22:第1のクサビ部材締付け用ねじ挿入孔
23:第2のクサビ部材締付け用ねじ挿入孔
α:インサート逃げ角
β:第2のクサビ部材の挿入角
P:正面切れ刃から第2のクサビ部材までの距離
θ:ラジアルレーキ角
Claims (2)
- インサートをクサビ部材によって着脱自在に装着する刃先交換式切削工具において、該刃先交換式切削工具は、第1のクサビ部材によって該インサートの上面を固定する第1の固定と、第2のクサビ部材によって該インサートの上面と外周面との2面を同時に拘束する第2の固定、を有し、該第2の固定における第2のクサビ部材がインサート上面を押圧する部分は、正面切れ刃部から回転軸方向に距離Pだけ離れており、該インサート内接円の長さをLとしたとき、P/Lは、0.25≦P/L≦0.50、であることを特徴とする刃先交換式切削工具。
- 請求項1に記載の刃先交換式切削工具において、該インサートの逃げ角をα度、該第2のクサビ部材の挿入角をβ度としたとき、α<β、0<β≦45、であることを特徴とする刃先交換式切削工具。
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