JP5484556B2 - 光送信機 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば、複数の光変調器を備え、それら複数の光変調器における変調信号の位相を制御する機能を有した光送信機に関するものである。
光海底ケーブル伝送方式は、海峡横断などに適用する無中継方式と、大洋横断などを意図した海底中継装置を含む長距離中継方式に大別される。長距離中継方式を必要とする光海底ケーブル中継伝送システムは、海底中継伝送路とその両端の陸地の海岸局装置などから構成され、50Km程度の中継スパンごとに海底中継装置を配設する構成が一般的である。
こうした光ケーブルにより複数の情報を効率良く伝送する技術として、波長分割多重光伝送技術(WDM)がある。波長分割多重光伝送技術は、複数の信号をそれぞれ波長が異なる光信号に割り当て(分割)、それらを多重化して2本の光ファイバにより双方向に伝送するものである。送信側では波長が異なる光源からの光信号を光合波器により合成し、受信側では光分波器により各々の波長の光信号に分波して、これらを受光素子により電気信号に変換する。この技術は、少量のケーブルリソースから大容量の情報伝送を可能にする利点がある。
ここで送信側では、複数の光送信機がそれぞれ異なった波長のレーザ光を用いて送信信号を生成している。この光送信機により生成された複数の送信信号は、光波長多重分離装置で多重化された後、光海底ケーブルを伝送する。受信側では、多重化された信号が光波長多重分離装置で分離された後、各信号を複数の光受信機で受信する。
本方式を用いた伝送システムにおいては、波長間隔を狭くして密に多重化する方法や、光送信機及び光受信機のビットレートを高速化する方法によって、より大容量の通信を行うことが可能になり、現在では、25GHz(0.2nm)間隔の波長多重も実現されている。
一方、波長間隔を狭くして多重化を密にすると送信光強度が増加する。例えば、1つの光送受信機の送信光強度を+10dBmとし多重数を64とすると、合計送信光強度は+28dBmにも達する。しかし光ファイバに入力する送信光強度を大きくすると光ファイバの非線形効果が顕著に現れ伝送特性を悪化させるため、合計送信光強度をあまり大きくすることはできない。そのため1波あたりの送信光強度を落とす必要があるが、送信光強度を落とすことはS/N比(Signal to Noise)の劣化に直結し、これも伝送特性を悪化させる原因となる。
これを解決する手段として、DPSK(Differential Phase Shift Keying)変調方式などを用いることで受信感度を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この方式では、光送信機により光信号の位相変化に情報を載せ、光受信機では1シンボル前の位相と干渉させて位相変化を強度変化に変換しツインフォトダイオード(ツインPD)で光電変換することで信号を受信する。これにより、一般的に用いられている変調方式であるOOK(On Off Keying)変調方式と比較して、理論上3dBの受信感度の改善が可能となる。
上記変調方式では、特許文献1に記載のように、光送信機で複数の光変調器を用いることが一般的である。これは、ビット同期位相変調方式などと呼ばれ、自己位相変調(SPM)と群速度分散(GVD)との相乗効果であるSPM−GVD効果を低減することで信号波形の歪みを改善するためである。
このとき、複数の光変調器に入力する変調信号の位相を整合させる必要がある。そこで特許文献1に開示される光送信機では、光強度変調器に入力する変調信号の位相を制御できる位相器を具備し、光位相変調器に入力する変調信号と光強度変調器に入力する変調信号をミキサで混合して、2つの変調信号の位相関係が常に一定値となるように位相器をフィードバック制御している。この方法によれば、2つの光変調器に入力する変調信号の位相を常に整合させることができる。
更に同特許文献には、2つの光変調器による変調によって生成された送信信号をフォトダイオード(PD)で受信して電気信号に変換し、光強度変調器で変調した信号成分を取り出す方法についても開示されている。この方法によれば、光ファイバの遅延も補償することができるため、光ファイバの長さが変わった場合や、温度によって光路長が変化した場合においても常に2つの変調信号の位相を整合させることができる。
また、特許文献2には、より簡易に複数の変調信号の位相を整合させる方法が開示されている。複数の変調信号の位相差は、常に一定ではなく温度によって変化する。これは温度によって、光信号を伝送する光ファイバの屈折率が変化し光路長が変化することや、IC内部の遅延量が変化することなどが原因である。そのため特許文献2に開示される光送信機では、温度モニタ部を配置して温度によって位相器での遅延量を制御することで、複数の変調信号の位相を整合させている。この方法では、位相器と、位相器を制御する制御部と、温度をモニタする温度モニタ部とを備えていればよく、簡易に位相を整合させることができる。
特許第4024017号 特開2007−158415号公報
上述の通り、特許文献1に開示される光送信機では、フィードバック制御で光ファイバによる遅延を補償することが可能である。しかしながら、光変調器からの光信号を分波してPDにより変調信号を抽出することが必須となる。そのため、光変調器に入力する変調信号の周波数を受光できる高速のPDや、その高速の信号を処理する高速ミキサなどの高価部品を多数用いる必要があり、高速信号を扱うため実装が複雑になるという課題がある。
また、特許文献2に開示される光送信機では、簡易に複数の光変調器に入力する変調信号の位相を整合させることができる。しかしながら、複数の光変調器間の光ファイバの長さが変化すると、温度変化によって変動する位相量も変化する。そのため、例えば光変調器間の光ファイバが断線し再融着を行うなどによって光変調器間の光ファイバ長が変化した場合には、その光ファイバ長に応じた最適な位相制御量を毎回実測する必要があり、非常に時間を要するという課題がある。また、この最適値は測定結果からの近似でしかなく、遅延の補償精度にばらつきが生じるという課題もある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、2つの光変調器に入力する変調信号の位相を自動的に整合させる機能を安価で簡易な構成で実現することができる光送信機を提供することを目的としている。
この発明に係る光送信機は、複数の変調信号を生成するデータ生成部と、データ生成部により生成された複数の変調信号を増幅するドライバと、ドライバにより増幅された各変調信号に基づいて光信号の変調を行う、直列接続された複数の光変調器と、各光変調器に入力される光信号のうち少なくとも1つ以上の光信号に対して位相制御を行う位相器と、最後段の光変調器により変調された光信号を分波する光カプラと、光カプラにより分波された光信号を検出して光電変換するフォトダイオードと、光信号が伝送される光ファイバの温度を検出する温度モニタ部と、温度モニタ部により検出された温度に応じて、フォトダイオードにより光電変換された信号の強度が最大となるように位相器の位相制御量を制御する位相制御部とを備え、位相制御部は、フォトダイオードにより光電変換された信号の強度が所定の閾値を超えると、位相器の制御を停止するとともに光ファイバの温度を記憶し、温度モニタ部が検出した温度と記憶した温度との温度差の値が所定値以上になると、位相器の制御を再開するものである。
この発明によれば、上記のように構成したので、フォトダイオードからの信号の強度が最大となるように位相器の位相制御量を制御することで、高速PDや高速ミキサなどの高価部品を用いることなく、2つの光変調器に入力する変調信号の位相を自動的に整合させる機能を安価で簡易な構成で実現することができる。また、光ファイバの長さと温度に対してそれぞれ最適な位相制御量を実測する必要もない。
この発明の実施の形態1に係る光送信機の構成を示す図である。 この発明の実施の形態1におけるデータ変調部に光強度変調器を用いて位相変調した場合のアイパターンを示す概念図である。 この発明の実施の形態1におけるデータ変調部に光強度変調器を用いた場合の位相遷移の様子を示したベクトル図である。 この発明の実施の形態1におけるデータ変調部に光位相変調器を用いて位相変調した場合のアイパターンを示す概念図である。 この発明の実施の形態1におけるデータ変調部に光位相変調器を用いた場合の位相遷移の様子を示したベクトル図である。 この発明の実施の形態1におけるクロック変調部でRZ変調を行った場合のアイパターンの概念図である。 この発明の実施の形態1におけるクロック変調部でCSRZ変調を行った場合のアイパターンの概念図である。 この発明の実施の形態1における変調信号が位相整合している場合にデータ変調部及びクロック変調部により変調した際のアイパターンを示す概念図である。 この発明の実施の形態1における変調信号が位相整合していない場合にデータ変調部及びクロック変調部により変調した際のアイパターンを示す概念図である。 この発明の実施の形態1に係る光送信機の動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態1における変調信号の位相差と光送信機から出力される光信号の強度との関係を示す概念図である。 この実施の形態1に係る光送信機においてOOK変調を行った場合のアイパターンを示す概念図である。 この発明の実施の形態1に係る光送信機においてRZ−OOK変調を行った場合のアイパターンを示す概念図である。 この発明の実施の形態1に係る光送信機の別の構成を示す図である。 この発明の実施の形態2に係る光送信機の構成を示す図である。 この発明の実施の形態2に係る光送信機の動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態2における位相制御量が最適値からずれている場合の印加ディザ信号と出力ディザ信号の関係を示す概念図である。 この発明の実施の形態2における位相制御量が最適値である場合の印加ディザ信号と出力ディザ信号の関係を示す概念図である。 この発明の実施の形態2における位相制御量と誤差信号の関係を示す概念図である。 この発明の実施の形態3に係る光送信機の構成を示す図である。 この発明の実施の形態3に係る光送信機の動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態3に係る光送信機の別の構成を示す図である。 この発明の実施の形態4に係る光送信機の構成を示す図である。 この発明の実施の形態4に係る光送信機の別の構成を示す図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る光送信機の構成を示す図である。当該光送信機は、複数の光変調器を使用する光送信機に適用可能な構成であり、図1では例としてRZ−DPSK(Return to Zero-Differential Phase Shift Keying)変調方式を適用した場合の構成を示している。
光送信機は、図1に示すように、データ変調部(光変調器)1、クロック変調部(光変調器)2、光カプラ3、フォトダイオード(PD)4、位相制御部5a、データ生成部6、位相器7及び第1,2ドライバ8,9から構成される。
データ変調部1は、データ生成部6から第1ドライバ8を介して入力されたデータ信号に基づいて、不図示の光源から入力された光信号に対して位相変調を行うものである。このデータ変調部1により位相変調された光信号はクロック変調部2に出力される。
クロック変調部2は、データ生成部6から位相器7及び第2ドライバ9を介して入力されたクロック信号に基づいて、データ変調部1により位相変調された光信号に対して強度変調を施すものである。このクロック変調部2により強度変調された光信号は光カプラ3に出力される。
光カプラ3は、クロック変調部2により強度変調された光信号を2つに分波するものである。この光カプラ3により分波された一方の光信号は、不図示の光波長多重分離装置に出力され他波長の複数の光信号と多重化された後、受信側に伝送される。他方の光信号はPD4に出力される。
PD4は、光カプラ3により分波された光信号を検出して光電変換を行うものである。このPD4により光電変換された信号は位相制御部5aに出力される。
なお、一般的な光変調器では、光カプラ3とPD4の機能が内蔵されているものが多く、その場合は光変調器内部のそれらを使用すればよい。
位相制御部5aは、PD4により光電変換された信号に基づいて、この信号の強度が最大となるように山登り法で位相器7の位相制御量をフィードバック制御するものである。
データ生成部6は、データ信号及びクロック信号を生成するものである。このデータ生成部6により生成されたデータ信号は第1ドライバ8に出力され、クロック信号は位相器7に出力される。
位相器7は、位相制御部5aによる位相制御量に基づいて、データ生成部6により生成されたクロック信号の位相制御を行うものである。この位相器7により位相が制御されたクロック信号は第2ドライバ9に出力される。
第1ドライバ8は、データ生成部6により生成されたデータ信号を光増幅するものである。この第1ドライバ8により光増幅されたデータ信号はデータ変調部1に出力される。
第2ドライバ9は、位相器7により位相が制御されたクロック信号を光増幅するものである。この第2ドライバ9により光増幅されたクロック信号はクロック変調部2に出力される。
次に、データ変調部1による光信号の位相変調について説明する。
データ変調部1では光変調器として、光強度変調器を使用する場合と光位相変調器を使用する場合の2つの場合がある。
まず、データ変調部1に光強度変調器を用いた場合について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるデータ変調部1に光強度変調器を用いて光信号を位相変調した場合のアイパターンを示す概念図である。また、図3はこの発明の実施の形態1におけるデータ変調部1に光強度変調器を用いた場合の位相遷移の様子を示したベクトル図である。
図2に示すように、データ変調部1に光強度変調器を用いた場合では、強度変調を行う場合に必要な駆動電圧(Vπ)の2倍の駆動電圧を印加して、データ信号の0と1を光の位相の0とπに割り付ける。この場合、図3に示すように、0とπの位相遷移の途中では振幅が0になる瞬間が発生する。
そのため、図2に示すアイパターンのように、0とπの遷移の途中で一度消光状態になり、その後再度発光状態になる。このアイパターンの形状は、データ変調部1に入力されたデータ信号の波形に大きく依存し、理想的な矩形波ならば消光状態はほぼなく、常に発光している状態に近づく。一方、データ信号の立ち上がり時間、立ち下がり時間が遅い場合は、発光状態から消光状態、消光状態から発光状態への遷移が遅いため、消光状態が長くなり図2に示すようなアイパターンになる。
次に、データ変調部1に光位相変調器を用いた場合について説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるデータ変調部1に光位相変調器を用いて光信号を位相変調した場合のアイパターンを示す概念図である。また、図5はこの発明の実施の形態1におけるデータ変調部1に光位相変調器を用いた場合の位相遷移の様子を示したベクトル図である。
図4に示すように、データ変調部1に光位相変調器を用いた場合では、光信号の位相を直接変調できるため、駆動に必要な電圧であるVπを印加して、データ信号の0と1を光の位相の0とπに割り付ける。この場合、図5に示すように、0とπの位相遷移の途中においても常に振幅は一定である。
そのため、図4に示すアイパターンのように、0とπの遷移の途中で消光状態になることはなく、常に発光状態となり、このアイパターンの形状は入力するデータ信号の波形に依存しない。
以上のように2種類の光変調器のいずれかを用いることで光信号の位相変調を行うことができるが、光強度変調器を用いて位相変調を実施する場合が多い。その理由としては、光位相変調器を用いて位相変調を行った場合、0とπの位相遷移はベクトル図の円弧上を通過した遷移となるため、位相遷移の課程において0とπ以外の位相変調量が発生する。このことにより、立ち上がり時間および立ち下がり時間が緩やかになるに従い、伝送速度周期に輝線スペクトルが発生し、位相遷移が起こる隣接ビットにて波形劣化が生じることが知られているためである。
一方、光強度変調器を用いて位相変調を行う場合は、0とπ以外の位相成分は存在しないため、輝線スペクトルは発生せず受信波形劣化も生じない。なお、本発明もデータ変調部1に光強度変調器を用いることを想定している。
次に、クロック変調部2による光信号の強度変調について説明する。
図6はこの発明の実施の形態1におけるクロック変調部2により光信号をRZ(Return to Zero)変調した場合のアイパターンを示す概念図であり、駆動電圧はVπであり、データ信号と同じ周波数の信号を印加したときの波形を示している。
クロック変調部2では、光強度変調器を用いて光信号に対して強度変調を行う。図6に示すように、クロック変調部2では、クロック信号に基づいて強度変調を行っているため、光信号は発光と消光を繰り返している。このクロック変調部2によるクロック変調はRZ化と呼ばれ、データ変調部1で0とπに位相変調された光信号に対し、ビット間を常に一度消光状態(Zero)にすることで信号品質を向上させることができる。
また、クロック変調部2では、駆動電圧を2Vπとし、データ信号の半分の周波数の信号を印加することで、CSRZ(Carrier Suppressed Return to Zero)化と呼ばれる変調を行うことができる。
図7はこの発明の実施の形態1におけるクロック変調部2により光信号をCSRZ変調した場合のアイパターンを示す概念図である。
駆動電圧を2Vπとすることで0とπを常に反転できるため、キャリア成分を抑圧することができる。図7に示すように、CSRZ化したアイパターンでは、RZ化したアイパターンと比較した際に、Duty比が高くなるのが特徴である。
次に、データ信号及びクロック信号の位相の整合について説明する。
図8はこの発明の実施の形態1における変調信号が位相整合している場合にデータ変調部1及びクロック変調部2により変調された際のアイパターンを示す概念図である。また、図9はこの発明の実施の形態1における変調信号が位相整合していない場合にデータ変調部1及びクロック変調部2により変調された際のアイパターンを示す概念図である。
光送信機では、データ変調部1及びクロック変調部2により変調された光信号が送信信号として出力されるが、この際、データ信号及びクロック信号の位相を整合させることが非常に重要となる。
データ信号及びクロック信号の位相が整合している場合、光信号に対して、データ変調部1で図8(a)に示すような位相変調を行った後、クロック変調部2で図8(b)に示すような強度変調を行うことで、図8(c)に示すような波形を得ることができる。
一方、データ信号及びクロック信号の位相が整合していない場合には、光信号に対して、データ変調部1で図9(a)に示すような位相変調を行った後、クロック変調部2で図9(b)に示すような強度変調を行った際に、0とπの点で消光状態になり、0からπへの遷移状態、またはπから0への遷移状態の部分が発光状態となる。そのため、図9(c)に示すように、データ部分が消光されてしまい正しい波形にならず、これを光受信機に出力しても復調することはできない。
そこで、データ信号及びクロック信号の位相を整合させるために、図1に示す光送信機では、データ生成部6と第2ドライバ9の間に位相器7を配置し、クロック信号の位相を制御することで2つの変調信号の位相を整合させている。なお、2つの変調信号の位相整合は、上記の例に限ったものではなく、データ信号の位相を制御するように構成しても良いし、または両方の位相を制御するように構成しても良い。
次に、上記のように構成された光送信機の動作について説明する。
図10はこの発明の実施の形態1に係る光送信機の動作を示すフローチャートである。
光送信機の動作では、図10に示すように、まず、データ変調部1は、データ生成部6から第1ドライバ8を介して入力されたデータ信号に基づいて、不図示の光源から入力された光信号に対して位相変調を行う(ステップST101)。このデータ変調部1により位相変調された光信号はクロック変調部2に出力される。
次いで、クロック変調部2は、データ生成部6から位相器7及び第2ドライバ9を介して入力されたクロック信号に基づいて、データ変調部1により位相変調された光信号に対して強度変調を行う(ステップST102)。このクロック変調部2により強度変調された光信号は光カプラ3に出力される。
次いで、光カプラ3は、クロック変調部2により強度変調された光信号を2つに分波する(ステップST103)。この光カプラ3により分波された一方の光信号は、不図示の光波長多重分離装置に出力され、他波長の複数の光信号と多重化された後、受信側に伝送される。他方の光信号はPD4に出力される。
次いで、PD4は、光カプラ3により分波された光信号を検出して光電変換を行う(ステップST104)。このPD4により光電変換された信号は位相制御部5aに出力される。
次いで、位相制御部5aは、PD4により光電変換された信号に基づいて、この信号の強度が最大となるように山登り法で位相器7の位相制御量を制御する(ステップST105)。
図11はデータ信号及びクロック信号の位相差と光送信機から出力される光信号の強度(PD4から出力される信号の強度に等しい)との関係を示す概念図であり、位相が整合しているときを位相差0とした場合の位相のずれに対する光強度の変化を示している。
図11に示すように、光信号の強度は、2つの変調信号の位相が整合したときが最大となり(PD4からの信号の強度が最大となる)、位相がずれていくに従い徐々に低下する。そのため、位相制御部5aにおいて山登り法を用いて位相器7の位相制御量を制御することにより、このPD4からの信号の強度が最大となる点に制御して2つの変調信号の位相を整合させることが可能となる。
具体的には、クロック信号における初期の位相をAとし、この位相AのときのPD4からの信号の強度を測定する。次いで、位相Aから任意の位相制御量αだけずれた位相A+α及び位相A−αとなるように位相器7を制御し、上記3点に対してそれぞれ信号の強度を測定する。その後、上記3点の中で最も信号の強度が高い位相をBとして、位相B、位相B+α及び位相B−αに対して繰り返し測定を行うことで、信号の強度が最大となる位相に制御することが可能となる。
ただし、山登り法は上記に限った制御方法ではない。例えば、位相Aと位相A+αの2点の信号の強度を比較して、どちらが高いかを判別する。仮に位相Aのときの信号の強度が高い場合は、次に位相Aと位相A−αの信号の強度を比較する。また、位相A+αのときの信号の強度が高い場合は、位相A+αと位相A+2αの信号の強度を比較するという制御も考えられる。
以上のように、この実施の形態1によれば、光送信機からの光信号の光強度に対応するPD4からの信号の強度を検出し、この信号の強度が最大となるように山登り法を用いて位相器7の位相制御量を制御するように構成したので、2つの変調信号の位相を整合させることが可能となる。
また、この実施の形態1に係る光送信機では、RZ−DPSK変調方式を適用した場合について示したが、この変調方式に限ったものではなく、例えば、RZ−OOK変調方式に対しても適用可能である。
図12はこの発明の実施の形態1に係る光送信機においてOOK変調を行った場合のアイパターンを示す概念図である。また、図13はこの発明の実施の形態1に係る光送信機においてRZ−OOK変調を行った場合のアイパターンを示す概念図である。
RZ−OOK変調方式を適用した場合の光送信機では、図1に示す光送信機の構成と同様に2つの光変調器を用いて、1つの光変調器でOOK変調を行い、もう1つの光変調器でRZ変調を行う。このRZ−OOK変調方式を適用した光送信機により出力される光信号の波形は一般にNRZ(Non Return to Zero)波形と呼ばれる。
この光送信機では、不図示の光源から入力された光信号に対して、図12に示すようなOOK変調を行った後に、図6に示すようなRZ変調を行うことで、図13に示すような波形を得ることができ、本変調方式に対しても本発明を適用することが可能となる。
また、この実施の形態1に係る光送信機では、直列接続された光変調器の数を2つとしたが、これに限ったものではなく、3つ以上の光変調器を直列接続した光送信機に対して適用することも可能である。さらに、図1では変調信号を位相制御する位相器7を用いたが、図14に示すように、各光変調器1,2に入力される光信号のうち少なくとも1つ以上の光信号に対して位相制御を行う位相器10を用いてもよい。この際、位相器10としては、種々の方式の光位相器や光ディレイラインが用いられる。
実施の形態2.
実施の形態1では、山登り法を用いて位相器7を制御している。この方法では、容易に最適な位相に制御することが可能であるが、検索するステップ幅(実施の形態1に記載のα)を細かくすると、測定する点数が増加し、それに比例して最適点に到達するまでの制御時間が増加する。一方、このステップ幅を荒くすると最適点の精度が劣化するため、あまり荒くすることはできない。そこで、実施の形態2では、山登り法ではなく、同期検波によって位相器7を制御することによって制御時間を大幅に短縮するように構成したものについて示す。
図15はこの発明の実施の形態2に係る光送信機の構成を示す図である。図15に示す実施の形態2に係る光送信機は、図1に示す実施の形態1に係る光送信機に微小信号生成部11、ミキサ12及び同期検波部13を追加して、位相制御部5aを位相制御部5bに変更したものである。その他の構成は同様であり同一の符号を付しその説明を省略する。
微小信号生成部11は、低周波の微小信号(ディザ信号)を生成するものである。ここでの低周波とは、データ信号に大きな影響を与えず、同期検波できる程度の周波数である。この微小信号生成部11により生成されたディザ信号はミキサ12及び同期検波部13に出力される。
ミキサ12は、位相制御部5bによる位相制御量を示す信号に微小信号生成部11により生成されたディザ信号を重畳するものである。このミキサ12によりディザ信号が重畳された位相制御量を示す信号は位相器7に出力される。
同期検波部13は、PD4により光電変換された信号に含まれるディザ信号と微小信号生成部11により生成されたディザ信号とで同期検波を行い、誤差信号を生成するものである。この同期検波部13により生成された誤差信号は位相制御部5bに出力される。
位相制御部5bは、同期検波部13により生成された誤差信号に基づいて、この誤差信号が最小となるように位相器7の位相制御量をフィードバック制御するものである。
次に、上記のように構成された光送信機の動作について説明する。
図16はこの発明の実施の形態2に係る光送信機の動作を示すフローチャートである。図16に示す実施の形態2に係る光送信機の動作において、図10に示す実施の形態1に係る光送信機と同様の動作についてはその説明を簡略化する。
光送信機の動作は、図16に示すように、まず、データ変調部1及びクロック変調部2によって変調された光信号は、光カプラ3によって分岐されPD4により光電変換される(ステップST161〜164)。ここで、位相器7は、位相制御部5bによる位相制御量(例えば電圧)に加えて、微小信号生成部11によって生成されたディザ信号も付加してクロック信号の位相制御を行う。そのため、PD4による光電変換後の信号にもディザ信号が現れる。
図17はこの発明の実施の形態2における位相制御量が最適値からずれている場合の印加ディザ信号と出力ディザ信号の関係を示す概念図である。また、図18はこの発明の実施の形態2における位相制御量が最適値である場合の印加ディザ信号と出力ディザ信号の関係を示す概念図である。
図17に示すように、位相制御部5bによる位相制御量が最適値からずれている場合には、微小信号生成部11により生成され印加されたディザ信号の周波数をfとすると、PD4から出力されたディザ信号の周波数もfとなる。
一方、図18に示すように、位相制御部5bによる位相制御量が最適値である場合には、微小信号生成部11により生成され印加されたディザ信号の周波数fに対し、PD4から出力されたディザ信号の周波数は2fとなる。
このPD4により光電変換されたディザ信号を含む信号は同期検波部13に出力される。
次いで、同期検波部13は、微小信号生成部11により生成されたディザ信号とPD4により光電変換された信号に含まれるディザ信号とで同期検波を行い、誤差信号を生成する(ステップST165)。この同期検波部13により生成された誤差信号は位相制御部5bに出力される。
次いで、位相制御部5bは、同期検波部13により生成された誤差信号に基づいて、この誤差信号が最小となるように位相器7の位相制御量を制御する(ステップST166)。
図19はこの発明の実施の形態2における位相制御量と誤差信号の関係を示す概念図である。
図19(a)に示すように、位相制御量が最適値よりも低い場合には誤差信号がプラスとなり、図19(c)に示すように、位相制御量が最適値よりも高い場合には誤差信号がマイナスとなる。そのため、位相制御部5bは、誤差信号の値と極性から、図19(b)に示すように、誤差信号が0になるように位相制御量を制御する。
以上のように、この実施の形態2によれば、印加したディザ信号とPD4から出力されたディザ信号とで同期検波を行い誤差信号を生成して、この誤差信号が最小となるように位相器7の位相制御量を制御することで、2つの変調信号の位相を高速かつ高精度に整合させることができる。
また、この実施の形態2に係る光送信機では、直列接続された光変調器の数を2つとしたが、これに限ったものではなく、3つ以上の光変調器を直列接続した光送信機に対しても適用することも可能である。
さらに、図15では変調信号を位相制御する位相器7を用いたが、各光変調器1,2に入力される光信号のうち少なくとも1つ以上の光信号に対して位相制御を行う位相器10を用いてもよい。
実施の形態3.
実施の形態1では、位相制御部5aは位相器7を常に制御しているが、この場合、常に時間軸上で波形が揺れていることになり、これはジッタやワンダと呼ばれ、受信特性が劣化する一因となる。一方、2つの変調信号の位相ずれは、初期量と変動量に分かれるが、変動量は温度によって光ファイバの屈折率が変化し光路長が変化することやIC内部の遅延量が変化することなどが原因であるため、温度が変化しなければ変動量は僅かである。そこで、実施の形態3では、温度によって制御の開始/停止を決める機能を付加した構成について示す。
図20はこの発明の実施の形態3に係る光送信機の構成を示す図である。図20に示す実施の形態3に係る光送信機は、図1に示す実施の形態1に係る光送信機に温度モニタ部14を追加して、位相制御部5aを位相制御部5cに変更したものである。その他の構成は同様であり同一の符号を付しその説明を省略する。
温度モニタ部14は、光信号が伝送される光ファイバの温度を検出するものである。この温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度は位相制御部5cに出力される。
位相制御部5cは、位相制御部5aの機能に加えて、温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度に応じて位相器7の制御を行うものである。ここで、位相制御部5cは、位相制御量が最適値に達した場合に、位相器7の制御を停止して最適な位相制御量を出力し続け、このときの温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度を記憶する。その後、温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度を監視し、記憶した温度を基準にして予め設定した温度差以上になった場合には、位相器7の制御を再開する。
次に、上記のように構成された光送信機の動作について説明する。
図21はこの発明の実施の形態3に係る光送信機の動作を示すフローチャートである。
光送信機の動作は、図21に示すように、まず、制御開始時においては、実施の形態1に係る光送信機と同様に、位相制御部5cは山登り法により位相器7の制御を行い、2つの変調信号の位相が整合するように位相制御量を制御する(ステップST211)。
次いで、位相制御部5cは、PD4からの信号の強度が予め設定した閾値を超えた場合に、最適な位相制御量に達したと判断する(ステップST212)。なお、この閾値は信号強度に限るものではなく、2点の位相制御量での信号強度の差であっても良い。また、閾値ではなく、3点の位相制御量での信号強度を測定し中央の値が最も高い値になった場合に最適な位相制御量に達したと判断してもよい。
次いで、位相制御部5cは、位相器7の制御を停止して最適な位相制御量を出力し続け、温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度を記憶する(ステップST213)。これにより一度最適な位相制御量になった状態で位相器7の制御は停止される。そのためジッタ特性への影響はない。
次いで、位相制御部5cは、温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度と記憶した温度とを比較して、予め設定した温度差以上になった場合には、位相器7の制御を再開する(ステップST214)。ここで、位相制御部5cが制御を開始した際にはジッタ特性が劣化するが、すぐに最適な位相制御量に達するため、位相器7の制御は停止しジッタ特性に影響はなくなる。
なお、この実施の形態3に係る光送信機は、実施の形態2の同期検波を行い位相器7を制御する光送信機に対しても適用できる。
図22はこの発明の実施の形態3に係る光送信機の別の構成を示す図である。図22に示す実施の形態3に係る光送信機は、図15に示す実施の形態2に係る光送信機に温度モニタ部14及びロック検出部15を追加して、位相制御部5bを位相制御部5dに変更したものである。その他の構成は同様であり同一の符号を付しその説明を省略する。
ロック検出部15は、同期検波部13により生成された誤差信号が予め設定した閾値以下になった場合に、制御ループがロック状態であると判断して、位相制御部5dによる位相器7の制御を停止させることを示すロック信号を位相制御部5dに出力するものである。
位相制御部5dは、位相制御部5bの機能に加えて、温度モニタ部14による光ファイバ温度及びロック検出部15からのロック信号の有無に応じて、位相器7の制御を行うものである。ここで、位相制御部5dは、ロック検出部15からロック信号が入力された場合には位相器7の制御を停止して、最適な位相制御量を出力し続ける。
その他の処理は上述した通りでありその説明を省略する。
以上のように、この実施の形態3によれば、一度最適な位相制御量に達した場合に位相器7の制御を停止し、光ファイバ温度が変化した場合に位相器7の制御を再開するように構成したので、最適な位相制御量となり光ファイバ温度が安定している間は位相器7の制御を行わないため、ジッタ特性に影響を与えることなく2つの変調信号の位相を整合させることができる。
実施の形態4.
実施の形態3では、最適な位相制御量となり温度が安定している間は位相器7の制御を停止し、光ファイバ温度が変化した場合に位相器7の制御を再開することで、ジッタ特性の改善を実現している。それに対して、実施の形態4では、上記の制御に加え、最適な位相制御量とそのときの温度を記憶し、位相器7の制御を再開する際に、一度記憶した温度に対しては、山登り法や、同期検波を行わず、記憶した位相制御量を読み出して2つの変調信号の位相を整合させる構成について示す。
図23はこの発明の実施の形態4に係る光送信機の構成を示す図である。図23に示す実施の形態4に係る光送信機は、図20に示す実施の形態3に係る光送信機に位相制御量記憶部16を追加して、位相制御部5cを位相制御部5eに変更したものである。その他の構成は同様であり同一の符号を付しその説明を省略する。
位相制御量記憶部16は、位相制御部5eにより最適な位相制御量になったと判断された場合に、この位相制御量及び温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度を記憶するものである。
位相制御部5eは、位相制御部5cの機能に加えて、位相制御量記憶部16に記憶された光ファイバ温度に基づいて、位相器7の制御を行うものである。ここで、位相制御部5eは、位相器7の制御を再開する際に、温度モニタ部14により検出された光ファイバ温度が位相制御量記憶部16に記憶されている場合には、この光ファイバ温度に対応する位相制御量を位相制御量記憶部16から読み出して、位相器7の制御を行う。
なお、この制御は実使用で実施することも可能であるし、また、出荷試験などで、一度動作温度の全範囲の温度試験を実施すれば、最適な位相制御量を山登り法や同期検波などのジッタ特性を劣化させる制御を用いることなく、自動的に最適値に制御することが可能となる。ただし、この場合、切断・融着によって光ファイバの長さが変化した場合などには対応できないため、その場合には位相制御量記憶部16をクリアにする必要がある。
なお、図24に示すように、実施の形態2の同期検波を行い位相器7を制御する光送信機に対しても適応することが可能である。
以上のように、この実施の形態4によれば、最適な位相制御量及びそのときの光ファイバ温度を記憶し、位相器7の制御を再開する際の光ファイバ温度が既に記憶されている場合には、この光ファイバ温度に対応する位相制御量を読み出して位相器7を制御するように構成したので、ジッタ特性に影響を与えることなく2つの変調信号の位相を整合させることができる。
この発明に係る光送信機は、簡素な方法で自動に変調信号の位相を整合させることができ、複数の光変調器を備え、それら複数の光変調器における変調信号の位相を制御する機能を有した光送信機などに用いるのに適している。

Claims (2)

  1. 複数の変調信号を生成するデータ生成部と、
    前記データ生成部により生成された複数の変調信号を増幅するドライバと、
    前記ドライバにより増幅された各変調信号に基づいて光信号の変調を行う、直列接続された複数の光変調器と、
    前記各光変調器に入力される光信号のうち少なくとも1つ以上の光信号に対して位相制御を行う位相器と、
    最後段の前記光変調器により変調された光信号を分波する光カプラと、
    前記光カプラにより分波された光信号を検出して光電変換するフォトダイオードと、
    前記光信号が伝送される光ファイバの温度を検出する温度モニタ部と、
    前記温度モニタ部により検出された温度に応じて、前記フォトダイオードにより光電変換された信号の強度が最大となるように前記位相器の位相制御量を制御する位相制御部とを備え
    前記位相制御部は、前記フォトダイオードにより光電変換された信号の強度が所定の閾値を超えると、前記位相器の制御を停止するとともに前記光ファイバの温度を記憶し、前記温度モニタ部が検出した温度と前記記憶した温度との温度差の値が所定値以上になると、前記位相器の制御を再開する
    ことを特徴とする光送信機。
  2. 前記フォトダイオードにより光電変換された信号の強度が最大となった際の前記位相制御部による位相制御量及び前記温度モニタ部により検出された温度を記憶する位相制御量記憶部を備え、
    前記位相制御部は、前記位相器を制御する際に、前記温度モニタにより検出された温度が前記位相制御量記憶部に記憶されている場合には、前記位相制御量記憶部に記憶されている当該温度に対応する位相制御量を読み出して前記位相器の制御を行う
    ことを特徴とする請求項1記載の光送信機。
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