JP5483110B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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この発明は、特に各種の鋼や鋳鉄などの被削材の切削加工を、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に対して、衝撃的かつ断続的負荷が作用する高速断続切削条件で行った場合にも、硬質被覆層が長期の使用にわたってすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、2〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム(以下、α型Alという)層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
また、例えば、特許文献1に示すように、上記(a)のTi化合物層のうちの少なくとも1層のTiCN層を、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.2〜1%、CHCN:0.3〜2%、C:1〜3%、N:10〜30%、H:残り、
反応雰囲気温度:700〜780℃、
反応雰囲気圧力:25〜40kPa、
という条件の化学蒸着にて形成すると、このTiCN層(以下、従来TiCN層という)は、すぐれた高温強度と耐衝撃性を具備するようになり、また、この従来TiCN層についてその表面研磨面の法線に対して、結晶粒の{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、傾斜角度数分布グラフを作成した場合には、0〜10度の傾斜角区分のTiCN結晶粒(以下、TiCN{110}結晶粒で示す)が、度数全体の50〜75%の割合を占める従来TiCN層が形成され、この被覆工具(以下、従来被覆工具1という)がすぐれた耐チッピング性を有することが知られている。
また、例えば、特許文献2に示すように、上記(b)のα型Al層を、
反応ガス組成:容量%で、AlCl:3〜10%、CO:0.5〜3%、C:0.01〜0.3%、SF:0.01〜0.2%、H:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の低温条件で化学蒸着し、加熱処理を施したAl核を介して、通常の化学蒸着条件でα型Al層を形成すると、このα型Al層は、すぐれた耐衝撃性を具備し、また、このα型Al層について、表面研磨面の法線に対して、(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、傾斜角度数分布グラフを作成した場合に、33〜43度の傾斜角区分のα型Al結晶粒が、度数全体の45%以上の割合を占めるようなα型Al層が形成され、この被覆工具(以下、従来被覆工具2という)がやはりすぐれた耐チッピング性を示すことが知られている。
尚、前記加熱処理Al核の分布割合は、平均値で5〜200個/μmの範囲内である。
特開2006−231433号公報 特開2006−43791号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工はますます高速化される傾向にあるが、上記の従来被覆工具1、2においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを、高い発熱を伴うとともに、切れ刃に断続的かつ衝撃的負荷が作用する高速断続切削条件に用いた場合には、硬質被覆層の高温強度と耐衝撃性が十分ではなく、また、衝撃等により硬質被覆層にクラックがいったん発生すると、層中の内部応力によってクラックの進展が促進されるために、チッピング、欠損が発生しやすくなり、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、硬質被覆層の高温強度及び耐衝撃性の向上を図るべく鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
まず、本発明者等は、上記従来被覆工具1(傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の傾斜角区分に度数全体の50〜75%の割合を占めるTiCN結晶粒が存在する少なくとも1層の従来TiCN層を下部層として備えた特許文献1に記載のもの)において、その上部層として、特許文献2に記載される蒸着条件でα型Al層(傾斜角度数分布グラフにおいて、33〜43度の傾斜角区分に度数全体の45%以上の割合を占めるα型Al結晶粒が存在するα型Al層)を蒸着形成したところ、通常の切削条件下での耐チッピング性、耐欠損性についてはある程度の向上が認められるものの、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工においては、すぐれた高温強度を示すものの、チッピング、欠損等の発生防止を十分満足し得る程度には抑制し得ないことがわかった。
そこで、本発明者等は、Ti化合物層のうちの少なくとも1層のTiCN層と
α型Al層からなる上部層についてさらに検討を進めたところ、上記特許文献1に記載されたTiCN{110}結晶粒を有する少なくとも1層の従来TiCN層を、例えば、
第一段階として、反応ガス組成−体積%で、
TiCl:0.2〜1%、CHCN:0.01〜0.05%、C:0.05〜0.1%、N:10〜30%、H:残り、
反応雰囲気温度:700〜780℃、
反応雰囲気圧力:25〜45kPa、
という条件で1時間化学蒸着し、その後
第二段階として、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.2〜1%、CHCN:0.3〜2%、C:0.05〜3%、N:10〜30%、H:残り、
反応雰囲気温度:700〜780℃、
反応雰囲気圧力:25〜45kPa、
という条件で化学蒸着にて形成すると、このTiCN層(以下、改質TiCN層という)は、すぐれた高温強度と耐衝撃性を具備するようになり、また、この改質TiCN層について、工具基体の表面の法線に対して、結晶粒の{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、傾斜角度数分布グラフを作成した場合には、0〜10度の傾斜角区分のTiCN結晶粒(以下、TiCN{110}結晶粒で示す)が、度数全体の40〜70%の割合を占める改質TiCN層が形成される。
この上に、例えば、特定の二段階の蒸着条件でα型Al層(以下、改質α型Al層という)を形成した場合には、改質TiCN層からなる下部層のTiCN{110}結晶粒とエピタキシャルな位置に、相対的に粗粒なα型Al結晶粒からなる組織構造を有する上部層を形成し得ることを見出した。
例えば、上記二段階の蒸着条件とは、以下のとおりである。
第1段階として、
反応ガス組成(容量%):
AlCl:11〜15 %、
CO: 9〜12 %、
HCl : 5〜7 %、
: 残り、
反応雰囲気温度:1040〜1060 ℃、
反応雰囲気圧力:6〜10 kPa、
の条件で30分間化学蒸着を行い、
次いで、第2段階として、
反応ガス組成(容量%):
AlCl: 2〜5 %、
CO: 3〜9 %、
HCl : 1〜5 %、
S : 0.25〜0.6 %、
: 残り、
反応雰囲気温度:960〜1000 ℃、
反応雰囲気圧力:6〜10 kPa、
という二段階の条件で蒸着することにより、改質α型Al層からなる上部層を形成することができる。
そして、上記の二段階で蒸着形成された改質α型Al層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、その断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、35〜45度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(以下、これを、Al(11−26)結晶粒という)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%〜85%の割合を占め、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(以下、これを、Al(0001)結晶粒という)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の15%〜25%の割合を占めること、また、Al(11−26)結晶粒は、層厚方向にみて、下部層(改質TiCN層)のTiCN{110}結晶粒とエピタキシャルな位置に形成されること、さらに、該Al(11−26)結晶粒を電界放出型走査電子顕微鏡で組織観察すると、層厚方向に垂直な面内で粗大な結晶粒からなる組織構造を有すること、そして、Al(11−26)結晶粒の平均結晶粒径は、Al(11−26)結晶粒以外の結晶粒の平均結晶粒径の2〜5倍であり相対的に粗粒な結晶粒であることを見出したのである。
上記改質α型Al層からなる上部層は、それ自体で耐チッピング、耐欠損性にすぐれるという特性を備えるが、硬質被覆層形成後の後処理として、例えば、上部層(改質α型Al層)の表面にウエットブラスト処理を施したような場合には、Al(11−26)結晶粒には微細なクラックが形成され、その結果、上部層(改質α型Al層)の内部に存在する残留応力が緩和され、断続的な衝撃に対して、より一段とすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を示すこともわかった。
したがって、この発明の被覆工具は、上記の改質TiCN層を含む下部層と、上記の改質α型Al層からなる硬質被覆層を蒸着形成したことによって、高い発熱を伴うとともに、切れ刃に断続的かつ衝撃的負荷が作用する高速断続切削条件に用いた場合にも、硬質被覆層が一段とすぐれた耐衝撃性、耐チッピング性を備え、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するようになる。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、3〜20μmの合計平均層厚を有し、かつ、化学蒸着形成された少なくとも1層のTiの炭窒化物層を含むTi化合物層、
(b)上部層が、2〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具において、
(c)上記(a)の下部層のうちの少なくとも1層のTiの炭窒化物層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体の断面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、上記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(TiCN{110}結晶粒で示す)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の40〜70%の割合を占めるTiの炭窒化物であり、
(d)上記(b)の上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体の断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、35〜45度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(11−26)結晶粒)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60〜85%の割合を占め、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(0001)結晶粒)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の15%〜25%の割合を占める酸化アルミニウムであり、
(e)上記Al(11−26)結晶粒は、電界放出型走査電子顕微鏡で組織観察した場合に、層厚方向に垂直な面内で粗大な結晶粒からなる組織構造を有し、さらに、上記Al(11−26)結晶粒の平均結晶粒径は、Al(11−26)結晶粒以外の結晶粒の平均結晶粒径の2〜5倍である、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記(a)のTi化合物層が、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上と、少なくとも1層のTiの炭窒化物層とからなることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 上記Al(11−26)結晶粒は、層厚方向にみて、上記(c)のTiCN{110}結晶粒の形成されている位置の直上または層厚方向延長線上に形成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆工具の硬質被覆層について、詳細に説明する。
(a)下部層のTi化合物層
下部層のTi化合物層は、Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上で構成するとともに、そのうちの少なくとも1層は、結晶粒の{110}面の法線がなす傾斜角を測定して作成した傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(TiCN{110}結晶粒)が、度数全体の40〜70%の割合を占める改質TiCN層で構成する。
上記の改質TiCN層、即ち、TiCN{110}結晶粒が度数全体の40〜70%の割合を占めるTiCN層は、例えば、以下の条件の化学蒸着によって成膜することができる。
即ち、
第一段階として、反応ガス組成−体積%で、
TiCl:0.2〜1%、CHCN:0.01〜0.05%、C:0.05〜0.1%、N:10〜30%、H:残り、
反応雰囲気温度:700〜780℃、
反応雰囲気圧力:25〜45kPa、
という条件で1時間化学蒸着し、その後
第二段階として、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.2〜1%、CHCN:0.3〜2%、C:0.05〜3%、N:10〜30%、H:残り、
反応雰囲気温度:700〜780℃、
反応雰囲気圧力:25〜45kPa、
という条件の化学蒸着により、高温強度と耐衝撃性にすぐれた改質TiCN層を形成することができる。
また、TiCN{110}結晶粒の度数割合は、以下のとおりにして求める。
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、改質TiCN層が被覆されている工具基体の断面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、上記工具基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成し、該傾斜角度分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に存在する結晶粒(TiCN{110}結晶粒)の度数を求め、一方、測定傾斜角範囲0〜45度の範囲内にある全度数を求め、全度数に占める前記TiCN{110}結晶粒の度数の割合を算出することによって、TiCN{110}結晶粒の度数割合を求めることができる。
少なくとも上記改質TiCNを含むTi化合物層からなる下部層は、α型Al層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度向上に寄与するほか、工具基体とα型Al層のいずれにも強固に密着し、硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有し、特に、上記改質TiCN層は、すぐれた高温強度とすぐれた耐衝撃性を有し、下部層の高温強度向上、耐チッピング性向上に寄与するが、下部層の平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う切削加工では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚は3〜20μmと定めた。
(b)上部層の改質α型Al
上記TiCN{110}結晶粒を有する少なくとも1層の改質TiCN層を含む下部層の表面に、以下の二段階蒸着によって、改質α型Al層からなる上部層を蒸着形成することができる。
すなわち、第1段階として、
反応ガス組成(容量%):
AlCl:11〜15 %、
CO: 9〜12 %、
HCl : 5〜7 %、
: 残り、
反応雰囲気温度:1040〜1060 ℃、
反応雰囲気圧力:6〜10 kPa、
の条件で30分間化学蒸着を行い、
次いで、第2段階として、
反応ガス組成(容量%):
AlCl: 2〜5 %、
CO: 3〜9 %、
HCl : 1〜5 %、
S : 0.25〜0.6 %、
: 残り、
反応雰囲気温度:960〜1000 ℃、
反応雰囲気圧力:6〜10 kPa、
という条件で蒸着することにより、改質α型Al層からなる上部層を形成することができる。
そして、上記の二段階で蒸着形成された改質α型Al層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、その断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、35〜45度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(11−26)結晶粒)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60〜85%の割合を占め、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(0 0 0 1)結晶粒)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の15〜25%の割合を占める改質α型Al層が形成される。
上記の改質α型Al層の縦断面を、電界放出型走査電子顕微鏡で観察すると、下部層の改質TiCN層のTiCN{110}結晶粒とエピタキシャルな位置、Al(11−26)結晶粒が形成されていることがわかる。
また、膜厚方向に垂直な面内の改質α型Al層について、同様に電界放出型走査電子顕微鏡で組織観察をすると、図1に示すように、該面内に存在する上記Al(11−26)結晶粒の、平均結晶粒径は、Al(11−26)結晶粒以外の結晶粒の平均結晶粒径の2〜5倍であって、Al(11−26)結晶粒は相対的に粗粒であることが観察される。
上記改質α型Al層からなる上部層は、通常のAl層のもつ高硬度と耐熱性に加えて、傾斜角度数分布グラフにおける度数割合で60〜85%の上記Al(11−26)結晶粒、15%〜25%以上の上記存Al(0001)結晶粒が存在することによって、高熱発生を伴い、しかも、断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工において、一段とすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮する。
ただ、上部層の平均層厚が2μm未満では、所望のすぐれた耐摩耗性を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚は2〜15μmと定めた。
本発明の被覆工具においては、硬質被覆層として、少なくとも1層の改質TiCN層を含む下部層と、改質α型Al層からなる上部層を蒸着形成することにより、すぐれた耐チッピング性を発揮するが、硬質被覆層形成後の後処理として、例えば、改質α型Al層表面にウエットブラスト処理を施すことによって、上記Al(11−26)結晶粒に微細なクラックを生成させ、それによって、改質α型Al層の内部残留応力を緩和することにより、高速断続切削加工において、より一段と耐チッピング性、耐欠損性を向上させることができる。
本発明の被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削を、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に対して断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工条件で行った場合でも、硬質被覆層の下部層がすぐれた高温強度、耐衝撃性を備え、硬質被覆層の上部層が、高硬度と耐熱性に加え、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を備えることにより、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
(a)は、本発明被覆工具11の上部層(改質α型Al層)の層厚方向に平行な面における組織模式図を示し、また、(b)は、本発明被覆工具11の上部層(改質α型Al層)の層厚方向に垂直な面における組織模式図を示す。 本発明被覆工具2の下部層の改質TiCN層の{110}面について測定した傾斜角度数分布グラフを示す。 本発明被覆工具2の上部層の改質α型Al層の(0001)面について測定した傾斜角度数分布グラフを示す。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有する表1に示される粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG160412に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体1〜10をそれぞれ作製した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有する表2に示される粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG160412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体11〜16を作製した。
ついで、これらの工具基体1〜10および工具基体11〜16のそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件および表5に示される改質TiCN層の形成条件にて、表7に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
ついで、表6に示される二段階蒸着条件にて、表7に示される目標層厚の改質α型Al層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜16をそれぞれ製造した。
Figure 0005483110
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Figure 0005483110
上記本発明被覆工具1〜16の改質TiCN層、改質α型Al層については、電界放出型走査電子顕微鏡および電子後方散乱回折像装置を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成した。
即ち、上記の改質TiCN層についての傾斜角度数分布グラフは、改質TiCN層の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、工具基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成し、該傾斜角度数分布グラフから、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(TiCN{110}結晶粒)の度数割合を求めた。
これらの値を表7に示した。
同様に、上記改質α型Al層の傾斜角度数分布グラフは、上記の改質α型Al層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成し、該傾斜角度数分布グラフから、35〜45度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(11−26)結晶粒)の度数割合と0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(0001)結晶粒)の度数割合を求めた。これらの値を表7に示した。
なお、図2には、一例として、本発明被覆工具2の下部層の改質TiCN層の{110}面について測定した傾斜角度数分布グラフを示す。
また、図3には、一例として、本発明被覆工具2の上部層(改質α型Al層)の(0001)面について測定した傾斜角度数分布グラフを示す。
また、本発明被覆工具1〜16の改質α型Al層については、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて膜厚方向と平行な面及び垂直な面のその組織を観察し、Al(11−26)結晶粒の形状を確認するとともに、その平均結晶粒径を測定した。
前記平均結晶粒径測定は、電界放出型走査電子顕微鏡によって観察される膜厚方向と垂直な面の組織において、膜厚方向と垂直な方向に50μmの幅で、上部層改質α型Al層の最表面から膜厚方向に上部層の膜厚の1/2の距離に膜厚方向に垂直に直線を引き、その直線と上部層の改質α型Al層を形成するAl(11−26)結晶粒との交点のその距離dを求め、異なる5箇所の膜厚方向と垂直な方向に50μmの幅で前記と同様な方法で求めた距離dの平均値をAl(11−26)結晶粒の平均粒子径とした。
また、上記本発明被覆工具1〜16のうちのいくつかの被覆工具に対しては、
ウエットブラストにて、噴射研磨剤として、アルミナ砥粒(♯100〜1000)を投射圧1〜10MPaという条件で、上部層(改質α型Al層)表面にウエットブラスト処理を施し、微細クラックを形成した。
Figure 0005483110
比較の目的で、上記工具基体1〜6に対して、表3に示される条件および表4に示される従来TiCN層の形成条件にて、表9に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで、表3に示される条件にて、目標層厚のα型Al層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより、比較被覆工具1〜6を製造した。
また、上記工具基体7〜12に対して、表3に示される条件にて、表9に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで、表8に示される蒸着条件にて、表9に示される目標層厚のα型Al層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより比較被覆工具7〜12を製造した。
さらに、上記工具基体13〜16に対して、表3に示されるTiCNの形成条件及び表4に示される従来TiCN層の形成条件にて、表9に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで、表8に示される蒸着条件にて、表9に示される目標層厚のα型Al層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより参考被覆工具13〜16をそれぞれ製造した。
ついで、上記の比較被覆工具1〜12及び参考被覆工具13〜16の硬質被覆層を構成する下部層(従来TiCN層,表3記載のTiCN層,l−TiCN層を含む)と上部層(α型Al層)について、本発明被覆工具1〜16の場合と同様にして、電界放出型走査電子顕微鏡および電子後方散乱回折像装置を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成し、TiCN{110}結晶粒およびAl(11−26)結晶粒、Al(0001)結晶粒の度数割合を求めた。
これらの値を表9に示した。
さらに、比較被覆工具1〜12及び参考被覆工具13〜16の上部層(α型Al層)について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いてその組織を観察し、Al(11−26)結晶粒の有無、形状およびその平均結晶粒径を測定した。
表9に、観察結果を示す。
Figure 0005483110
Figure 0005483110
表7と表9の比較から、本発明被覆工具1〜16の上部層の改質α型Al層におけるAl(11−26)結晶粒の度数割合、Al(0001)結晶粒の度数割合と、比較被覆工具1〜6の上部層のα型Al層におけるそれとを比較すると、本発明被覆工具1〜16のAl(11−26)結晶粒の度数割合は60〜85%、Al(0001)結晶粒の度数割合は15%〜25%であるのに対して、比較被覆工具1〜6の従来TiCN層のTiCN{110}結晶粒の度数割合は50%以上で、上部層Al層はAl(11−26)結晶粒の度数割合は30%未満、Al(0001)結晶粒の度数割合は10%未満であり、比較被覆工具7〜12では、l−TiCN層のTiCN{110}結晶粒の度数割合は10%未満で、上部層Al層はAl(11−26)結晶粒の度数割合は45%以上、Al(0001)結晶粒の度数割合は10%未満(0%)であり、また、参考被覆工具13〜16の従来TiCN層のTiCN{110}結晶粒の度数割合は60%以上で、上部層Al層はAl(11−26)結晶粒の度数割合は60%以上、Al(0 0 0 1)結晶粒の度数割合は10%未満(0%)であることがわかる。
つぎに、上記の本発明被覆工具1〜16、比較被覆工具1〜12および参考被覆工具13〜16について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・S30Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:480m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は300m/min)、
被削材:JIS・SCM415の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:450m/min、
切り込み:1.2mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Bという)での合金鋼の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は300m/min)、
被削材:JIS・FCD450の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.15mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式断続高切り込み切削試験(通常の切削速度は300m/min)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表10に示した。
Figure 0005483110
表7、9、10に示される結果から、本発明被覆工具1〜16は、特にその上部層が改質α型Al層から構成され、通常のAl層のもつ高硬度と耐熱性に加えて、傾斜角度数分布グラフにおける度数割合で60%以上の上記Al(11−26)結晶粒、15%以上の上記Al(0001)結晶粒が存在することによって、高熱発生を伴い、しかも、断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工において、一段とすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮することがわかる。
特に、上部層にウエットブラスト処理を施し、Al(11−26)結晶粒に微細クラックを形成した本発明被覆工具1、2、3、15、16
においては、より一段とすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮することがわかる。
本発明工具は下部層の改質TiCN層において、TiCN{110}結晶粒が、度数全体の40〜70%の割合を占め、かつ上部層の改質Al層において、Al(11−26)結晶粒の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60〜85%の割合を占め、Al(0 0 0 1)結晶粒の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の15〜25%の割合を占めることによって、下部層にTiCN{110}結晶粒が、度数全体の50〜70%の割合を占める従来TiCN層を有する比較被覆工具1〜6及び上部層にAl(11−26)結晶粒が、度数全体の45%の割合を占めるAl層を有する比較被覆工具7〜12と比較し、すぐれた耐チッピング性を有しているのは、おそらく、本発明工具が上記のような上部層と下部層の組合せにより、上部層にAl(11−26)粗大粒が存在することで上部層の引張応力が緩和されたためと考えられる。
また、参考被覆工具13〜16は下部層の改質TiCN層において、TiCN{110}結晶粒が、度数全体の50〜70%の割合を占め、かつ上部層のAl層において、Al(11−26)結晶粒の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%の割合を占めているが、Al(0001)結晶粒の該傾斜角区分に存在する度数の合計が10%未満と低いため、本発明工具と比較すると高速断続切削時に耐チッピングにより短時間で工具寿命となったと考えられる。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に、高熱発生を伴い、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工でもすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (3)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層が、3〜20μmの合計平均層厚を有し、かつ、化学蒸着形成された少なくとも1層のTiの炭窒化物層を含むTi化合物層、
    (b)上部層が、2〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層、
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具において、
    (c)上記(a)の下部層のうちの少なくとも1層のTiの炭窒化物層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体の断面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、上記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(TiCN{110}結晶粒で示す)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の40〜70%の割合を占めるTiの炭窒化物であり、
    (d)上記(b)の上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体の断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、上記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、35〜45度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(11−26)結晶粒という)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%〜85%の割合を占め、0〜10度の範囲内の傾斜角を有する結晶粒(Al(0001)結晶粒という)の該傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の15%〜25%の割合を占める酸化アルミニウム層であり、
    (e)上記Al(11−26)結晶粒は、電界放出型走査電子顕微鏡で組織観察した場合に、層厚方向に垂直な面内で粗大な結晶粒からなる組織構造を有し、さらに、上記Al(11−26)結晶粒の平均結晶粒径は、Al(11−26)結晶粒以外の結晶粒の平均結晶粒径の2〜5倍である、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 上記(a)のTi化合物層が、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上と、少なくとも1層のTiの炭窒化物層とからなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 上記Al(11−26)結晶粒は、層厚方向にみて、上記(c)のTiCN{110}結晶粒の形成されている位置の直上または層厚方向延長線上に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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