JP5482989B2 - 皮膜の製造方法と皮膜形成部材 - Google Patents

皮膜の製造方法と皮膜形成部材 Download PDF

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本発明は、皮膜の製造方法と皮膜形成部材に関する。さらに詳しくは、生体材料、携帯電話やパソコン等の電子部品筐体の構成材料に使用されるマグネシウム又はマグネシウム合金の表面に耐食性皮膜を形成する皮膜の製造方法とその皮膜が形成されてなる皮膜形成部材に関する。
マグネシウム及びその合金の分野においては、新規耐食性皮膜の形成に関する技術が注目されている。例えば、アナターゼ型TiO2は、耐食性が高く光触媒効果により清浄表面を形成できる耐食性材料として注目が集まっている。また、MgF2は、マグネシウムおよびその合金の耐食性材料として注目されている。
アナターゼ型TiO2の皮膜を基材の表面に形成させる方法としては、従来、アナターゼ微粉末を塗布した後に焼結を行う方法やゾルゲル法によってゲル膜を形成した後に焼結する方法が知られている。しかしながら、マグネシウム又はその合金で構成される基材の表面に皮膜を形成させる場合、基材と皮膜との密着性が低いという問題があった。また、これらの方法では、アナターゼ型TiO2への結晶化を行うために加熱処理が必要であり、プロセス工程が複雑になるという問題もあった。さらに、加水分解反応を制御するための湿度制御を実現するための環境を整備する必要があること、加熱処理に伴う、高エネルギー消費、高CO2排出、有機溶媒の使用など環境負荷の問題もあった。
MgF2の皮膜を基材の表面に形成させる方法としては、ハロゲンガスと接触させることによってMgF2を主成分とする耐食性皮膜を形成させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法はハロゲンガスを用いるため高環境負荷型のプロセスになる問題があった。
このようにアナターゼ型TiO2の皮膜の形成方法及びMgF2の皮膜の形成方法においては、環境への負荷が小さく、簡便な皮膜の形成方法が望まれている。
ところで、アナターゼ型TiO2とMgF2を組み合わせた混合皮膜を製造することができれば、アナターゼ型TiO2皮膜とMgF2皮膜の両者の特徴を備え、耐食性に優れた皮膜になると考えられる。そしてこのような混合皮膜についてもアナターゼ型TiO2の皮膜やMgF2の皮膜の形成方法と同様に環境への負荷が小さく、簡便な皮膜の製造方法が望まれている。
特開2004−269951号公報
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた皮膜を環境への負荷が小さく、且つ簡便な方法で製造することができる皮膜の製造方法及びその皮膜が形成されてなる皮膜形成部材を提供することを課題としている。
本発明は、第1には、フッ化チタン塩を含む溶液とマグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材とを接触させることにより基材の表面に酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜を生成させることを特徴とする。
第2には、上記第1の発明において、フッ化チタン塩が、ヘキサフルオロチタン(IV)酸アンモニウム([NH4]2TiF6)、ヘキサフルオロチタン(IV)酸ナトリウム(Na2[TiF6])またはヘキサフルオロチタン(IV)酸カリウム(K2[TiF6])であることを特徴とする。
第3には、上記第1または第2の発明において、フッ化チタン塩を含む溶液が、フッ化チタン塩水溶液であることを特徴とする。
第4には、上記第3の発明において、フッ化チタン塩水溶液にフッ素イオンを捕捉する添加剤を添加して酸化チタンの過飽和水溶液の調製した後、この酸化チタンの過飽和水溶液と基材とを接触させることを特徴とする。
第5には、上記第4の発明において、フッ素イオンを捕捉する添加剤が、ホウ酸であることを特徴とする。
第6には、上記第3から第5のいずれかの発明において、フッ化チタン塩水溶液のpHを6以下に調整して基材と接触させることを特徴とする。
第7には、上記第3から第6のいずれかの発明において、フッ化チタン塩水溶液の温度が、50〜99℃の範囲であることを特徴とする。
第8には、上記第1から第7のいずれかの発明において、基材は、その表面に真空紫外光照射による前処理が施されていることを特徴とする。
第9には、マグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材の表面に酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜を有する皮膜形成部材であって、前記皮膜は、アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶を含むことを特徴とする。
第10には、上記第9の発明において、皮膜は、酸化チタンとフッ化マグネシウムの粒子から構成されることを特徴とする。
第11には、上記第10の発明において、粒子は、その表面に針状結晶を有することを特徴とする。
本発明によれば、複雑な前処理を施すことなく、優れた耐食性を有する結晶性の酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜をマグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材の表面に1プロセスで形成することが可能である。また、結晶化のための高温加熱処理を必要とせず、水溶液プロセスにおいて前記皮膜の形成が可能である。したがって、環境への負荷が小さく、簡便な方法で耐食性に優れた皮膜を形成することができる。しかも、本発明によれば、有機物を用いていないので、不純物の混入を回避することができる。さらに、皮膜形成のための処理装置を簡易な構成とすることができるので、自由度の高い処理装置を設置できるという利点も有する。
AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間6時間)のX線回折パターンである。 AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間6時間)の断面TEM像である。 (a)AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間6時間)のSEMによる二次電子像写真である。(b)(c)は、それぞれ(a)の拡大写真である。 (a)AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間24時間)のSEMによる二次電子像写真である。(b)(c)は、それぞれ(a)の拡大写真である。 (a)AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間48時間)のSEMによる二次電子像写真である。(b)(c)は、それぞれ(a)の拡大写真である。 マグネシウム基材上に形成した皮膜(浸漬時間24時間)のX線回折パターンである。 アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる皮膜を被覆したAZ31基材および未処理のAZ31基材の腐食電位測定結果である。 アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる皮膜を被覆したAZ31基材および未処理のAZ31基材の分極曲線の測定結果である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本発明は、下記式(1)で表されるフッ化チタン塩を含む水溶液中でのフッ化チタン塩の平衡反応を利用するとともに、後述するが、この水溶液に基材から溶解したマグネシウムイオンを積極的に化学反応に利用することにより、マグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材の表面に結晶性の酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜を析出させている。
出発原料となるフッ化チタン塩は、例えば、六フッ化チタンのアンモニウム塩やアルカリ金属塩であり、具体例としては、ヘキサフルオロチタン(IV)酸アンモニウム([NH4]2TiF6)、ヘキサフルオロチタン(IV)酸ナトリウム(Na2[TiF6])、ヘキサフルオロチタン(IV)酸カリウム(K2[TiF6])等が挙げられる。なかでも、取り扱い性等を考慮するとヘキサフルオロチタン(IV)酸アンモニウム([NH4]2TiF6)を用いることが好適である。
そして、基材上に皮膜を形成させるために、上記式(1)の反応を右に進め、フッ化チタン塩を含む水溶液から酸化チタンの過飽和水溶液にする必要がある。そのために本実施形態では、一例として、フッ素イオンを捕捉するための添加剤をフッ化チタン塩の水溶液に加えている。このような添加剤としては、例えば、ホウ酸、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩化物等が用いることができ、これらは粉末状態あるいは水溶液状態で使用される。ホウ酸以外の具体例としては、塩化アルミニウムや水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。本実施形態では、結晶性の酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜をより効果的に析出させるためにホウ酸を用いることが好適である。またホウ酸を用いることにより、フッ化マグネシウム生成のためにその水溶液のpHを別途調整する手間を省くことが可能である。以下にホウ酸の反応式を示す。
このようにフッ化チタン塩を含む水溶液にホウ酸を加えることで、フッ素と反応して水溶性の安定した錯体が形成され、上記式(1)の反応が右に進む。
本実施形態では、上記のようにして得た酸化チタンの過飽和水溶液をマグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材に接触させることにより、基材の表面に結晶性の酸化チタンが付着する。そして、以下に示すように、基材表面に生成するフッ化マグネシウムとともに皮膜を形成する。ここで、皮膜を構成するフッ化マグネシウムは下記反応式によって生成する。
上記式(3)の左辺のマグネシウムは、マグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材を出発原料とするものである。このマグネシウムを液相中に溶解してマグネシウムイオンを生成させるためには、一例として、液相の液性を酸性にすることが考慮される。好ましくはpH6以下、さらに好ましくは、反応性や使用後の廃液処理を考慮してpH2〜5に調整する。本実施形態において上記したようにホウ酸を使用する場合、例えば、フッ化チタン塩の水溶液と等モルに調製したホウ酸水溶液を準備し、フッ化チタン塩の水溶液に等量のホウ酸水溶液を加えると、pH3.5の水溶液(酸化チタンの過飽和水溶液)を得ることができるので、別途、液相のpHを調整することは不要である。そして、pH3.5の水溶液中にマグネシウムが溶解してマグネシウムイオンが生成する。
生成したマグネシウムイオンは、式(1)の反応により生成したフッ素イオンと反応して式(5)で表されるようにフッ化マグネシウムが生成する。
上記反応において、酸化チタンの過飽和水溶液中では、アナターゼTiO2粒子の均一核生成および成長が起こり、TiO2粒子が生成する。TiO2粒子はさらに成長しサイズも増大し、緩やかに沈降する。それらのTiO2粒子は基板上に付着し、皮膜の成長を引き起こしている。TiO2粒子の成長とともに溶液中に溶解したマグネシウムイオンとフッ素イオンとが反応し、MgF2となって基材上に析出する。そしてこれらTiO2粒子とMgF2粒子とが混合皮膜として基材の表面に形成される。ここで、皮膜を構成するTiO2粒子の粒径は、反応時間によって異なるが、例えば、20nm〜700nm程度であり、後述する実施例では、最大670nmの大きさの粒子が確認されている。また、混合皮膜の膜厚も、反応時間によって異なるものの100nm〜1500nm程度とすることが可能である。
本実施形態における反応温度は、水溶液の凝固点以上沸点以下(およそ0-99℃)の範囲である。好適には温度50〜99℃の範囲である。この場合、より反応を促進させ、またマグネシウムイオンを効果的に生成させることができるので、皮膜を基材上に効率よく形成させることができる。
フッ化チタン塩を含む水溶液におけるフッ化チタン塩や、酸化チタンの過飽和水溶液調製のために使用する添加剤の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、フッ化チタン塩を含む水溶液に添加剤を加えた混合溶液中のフッ化チタン塩および添加剤の各々の濃度が、0.01〜3.0mol/Lであることが望ましい。なかでも0.05〜1.0mol/Lが望ましい。濃度が低すぎると経済的に不利であり、低すぎると反応が遅く効率が悪いからである。
フッ化チタン塩と添加剤の相対量については、皮膜を構成する酸化チタンとフッ化マグネシウムとの混合比を所望のものとするために適宜設定される。例えば、上記式から明らかなように、1モルのフッ化チタン塩に対してホウ酸を1モル添加した場合には、酸化チタンとフッ化マグネシウムは同じ割合で生成する。なお、生成した全ての酸化チタンが基材上に付着するとは限らないので、皮膜における酸化チタンとフッ化マグネシウムは同じ割合になるとは限らないが、フッ化チタン塩と添加剤の相対量を変えることにより、皮膜を構成する酸化チタンとフッ化マグネシウムとの混合比を変えることができる。また、フッ化チタン塩や添加剤のそれぞれの濃度、液相のpH、反応温度等を制御することによっても、皮膜を構成する酸化チタンとフッ化マグネシウムとの混合比を制御することが可能である。特に、膜厚方向に任意の傾斜組成を形成させることができる。
使用する基材は、純マグネシウム又はマグネシウム合金で構成されるものであり、その種類については特に限定されるものではない。マグネシウム合金としては、例えば、Mg-Al合金、Mg-Al-Zn合金、Mg-Al-Mn合金、Mg-Zn-Zr合金、Mg-希土類元素合金、Mg-Zn-希土類元素合金などが挙げられる。より具体的には、AZ91D合金、AZ31合金、AZ61合金、AM60合金、AM120合金などである。また、基材の形状は、平板状、粒子状等、任意の形状の基材を使用することができる。
また、本実施形態においては、予め、基材表面を洗浄し又は活性化させるための前処理を施しておいてもよい。具体的には、基材の表面に真空紫外光(波長100〜200nmの範囲の紫外線)を照射する処理を施したり、適当な液体に基材を浸漬させて超音波振動を加える処理を施しておくことが考慮される。
以上の実施形態では、フッ化チタン塩の水溶液にフッ素イオンを捕捉するための添加剤を加えた実施形態について説明したが、このような添加剤を加えなくても酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜を形成させることが可能である。例えば、基材のマグネシウムが溶解してマグネシウムイオンが生成するような反応系であればよい。一例として、フッ化チタン塩の水溶液の液性を酸性に調整することにより、上記式(3)の反応によりマグネシウムイオンが生成し、フッ素イオンと反応して式(5)で表されるようにフッ化マグネシウムが生成する。そして、この反応により上記式(1)の反応は右に進むので、酸化チタンの過飽和水溶液を得ることができる。この結果、酸化チタンとフッ化マグネシウムが生成するので、基材上にこれらの皮膜を形成することができる。また、水熱反応を利用するものであってもよい。水溶液を熱水とすることにより、基材と反応してマグネシウムイオンが生成しうる。
また、上記した実施形態の反応系は水溶液反応系であるが、酸化チタン及びフッ化マグネシウムが生成する反応系であれば、有機溶液等の、非水溶液反応系も用いることができる。
以上のようにして得られた皮膜は、その組織を構成するアナターゼTiO2結晶とMgF2結晶とを各々有しており、優れた耐食性を示す。そして、その効果は、基材上に皮膜を形成した皮膜形成部材として実現される。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
<実施例1>
実施例1では、アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる耐食性皮膜をAZ31マグネシウム合金上に作製した。以下にその作製方法について説明する。
フッ化チタン酸アンモニウム([NH4]2TiF6)(1.9795 g)およびホウ酸(0.6183g)を、それぞれ50℃の蒸留水100mLに溶解した。
AZ31マグネシウム合金基材を波長185nmの真空紫外光に30分間照射し、基材表面のコンタミネーションを除去するとともに、基材表面を活性化処理した。
両水溶液を混合し、光照射後のAZ31マグネシウム合金基材を浸漬した後、water bathを用いて50℃で所定時間(3-48時間)保持した。ここで、フッ化チタン酸アンモニウムおよびホウ酸の混合溶液中での濃度はそれぞれ0.05M、0.05Mである。この溶液条件にて、pHは約3.5となる。
混合溶液は、反応開始10分後程度から白濁しはじめた。その後、溶液中で生成した粒子は徐々に沈降し、数時間後には溶液上部は透明になった。
所定時間保持した後、混合溶液から基材を取り出し、蒸留水で基板を洗浄し、自然乾燥させた。
基材上の皮膜形成箇所は、僅かに白く着色していた。これは、皮膜表面および内部における数百nmオーダーの凹凸や粒界によって可視光の一部が散乱されたことによるものと考えられる。また、着色した副生成物が存在しないことを示している。白色は皮膜全面に渡って均一であり、膜厚の均一性を示している。
この白色度は、浸漬時間の増加とともに増していった。これは膜厚の増加による効果と考えられる。
AZ31マグネシウム合金基材上に形成した皮膜(浸漬時間6時間)のXRDパターンを図1に示す。
2θ = 25.3, 37.7および53.9°の位置に回折線が観察され、アナターゼTiO2 (ICSD No. 9852)の101, 004および211回折線に帰属された。また、2θ = 41.3の位置に回折線が観察され、MgF2結晶の111回折線に帰属された。この結果から、AZ31マグネシウム合金基材上に形成した皮膜は、アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶を有することが確認された。
(004)面に垂直方向の結晶子サイズは、回折線半値幅よりシェラーの式を用いて20nmと見積もられた。また、基板由来のピークも2θ = 32, 34, 37, 48, 58, 63, 69°付近に観察された。
基材を混合溶液に6時間浸漬した後の基材表面のTEM像を図2に示す。この結果から、膜厚は、約350 nmであった。
図3(a)は、AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間6時間)のSEMによる二次電子像写真であり、(b)(c)はそれぞれ(a)の拡大写真である。図4(a)は、AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間24時間)のSEMによる二次電子像写真であり、(b)(c)はそれぞれ(a)の拡大写真である。また、図5(a)は、AZ31基板上に形成した皮膜(浸漬時間48時間)のSEMによる二次電子像写真であり、(b)(c)はそれぞれ(a)の拡大写真である。この結果から、皮膜は、粒子から構成され、表面には凹凸構造を有していることが確認された。
図3の結果から、浸漬時間6時間の皮膜を構成する粒子の粒径は約100-600 nmであり、粒界にはクラックも観察された。これらのクラックは、乾燥過程において、皮膜の収縮にともなって形成されたものと考えられる。
粒子は、表面に多くの針状結晶を有しており、多針体構造をとっていると考えられる(図3(c))。そのため、皮膜は、粒子から構成されていることによる大きな凹凸と、粒子表面の針状結晶による微細な凹凸構造を同時に有している。
皮膜の膜厚は、浸漬時間の増加と共に、6、24、48時間において、それぞれ350 nm、800 nm、1300 nmと増加した。皮膜の表面の粒子による大きな凹凸は、時間と共に徐々に平坦化していった(図3(b)、図4(b)、図5(b))。それに伴い、SEM像における白黒コントラストも低下していった。一方、クラックのサイズは浸漬時間の増加とともに増大した。
厚い皮膜は高い強度を有するため、応力の蓄積が起こり、小さなクラックの生成を抑制し、大きなクラックの成長を促しているものと考えられる。
浸漬時間6、24、48時間における皮膜を構成する粒子の粒径は、それぞれ約100-600nm、450-600nm、550-670 nmと見積もられた。
<実施例2>
実施例2では、アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる耐食性皮膜をマグネシウム基材上に作製した。以下にその作製方法について説明する。
フッ化チタン酸アンモニウム ([NH4]2TiF6)(1.9795 g)およびホウ酸(0.6183 g)を、それぞれ50℃の蒸留水100mLに溶解した。
マグネシウム基材を波長185nmの真空紫外光に30分間照射し、基材表面のコンタミネーションを除去するとともに、基材表面を活性化処理した。
両水溶液を混合し、光照射後のマグネシウム基材を浸漬した後、water bathを用いて50℃で所定時間(24-48時間)保持した。ここで、フッ化チタン酸アンモニウムおよびホウ酸の混合溶液中での濃度はそれぞれ0.05 M、0.05 Mである。この溶液条件にて、pHは約3.5となる。
混合溶液は、反応開始10分後程度から白濁しはじめた。その後、溶液中で生成した粒子は徐々に沈降し、数時間後には溶液上部は透明になった。
所定時間保持した後、混合溶液から基材を取り出し、蒸留水で基板を洗浄し、自然乾燥させた。
基材上の皮膜形成箇所は、僅かに白く着色していた。これは、皮膜表面および内部における数百nmオーダーの凹凸や粒界によって可視光の一部が散乱されたことによるものと考えられる。また、着色した副生成物が存在しないことを示している。白色は皮膜全面に渡って均一であり、膜厚の均一性を示している。
この白色度は、浸漬時間の増加とともに増していった。これは膜厚の増加による効果と考えられる。
マグネシウム基材上に形成した皮膜(浸漬時間24時間)のXRDパターンを図6に示す。
2θ = 25.3, 37.7および53.9°の位置に弱い回折線が観察され、アナターゼTiO2 (ICSD No. 9852)の101, 004および211 回折線に帰属された。また、2θ = 26.2, 40.2, 41.3および67.5°の位置に回折線が観察され、MgF2結晶の110, 111, 210, 301回折線に帰属された。この結果から、マグネシウム基材上に形成した皮膜は、アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶を有することが確認された。
(004)面に垂直方向の結晶子サイズは、回折線半値幅よりシェラーの式を用いて23
nmと見積もられた。また、基板由来のピークも2θ = 32, 34, 37, 48, 58, 63, 69°付近に観察された。
皮膜の膜厚は、浸漬時間の増加と共に、24、48時間において、それぞれ700 nm、1200 nmと増加した。
以上、実施例1−2において形成された皮膜は以下のように形成されたと考えられる。
反応初期の混合溶液の白濁からも示されるように、まず、アナターゼTiO2粒子の均一核生成および成長が起こり、TiO2粒子が生成した。TiO2粒子はさらに成長しサイズも増大し、緩やかに沈降する。それらの粒子は、基板上へも付着する。そのため、速いTiO2膜の成長を引き起こしている。基板上での不均一核生成も同時に進行する。反応初期は、溶液中のイオン濃度も高いため、TiO2の結晶成長速度も速く、TiO2膜厚の増加を促進する。溶液中のイオン濃度は、TiO2粒子の生成やTiO2膜の成長によって徐々に減少するため、TiO2膜厚の増加も、徐々に緩やかとなっていく。浸漬約3時間以降では、均一核生成による粒子生成量は少なく、イオンの取り込みによるTiO2膜の結晶成長が支配的と考えられる。TiO2膜表面の観察では、TiO2膜の成長に伴い、粒子による凹凸は平滑化し、粒界が不鮮明になる様子が観察された。これらのTiO2粒子の成長とともに溶液中に溶解したMg2+イオンとF-イオンが反応し、MgF2となって基材上に析出した。
<耐食性の評価>
実施例1で作製したアナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる皮膜を被覆したAZ31基材および未処理のAZ31基材の腐食電位を測定した。その結果を図7に示す。
アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる皮膜を被覆したAZ31基材の腐食電位の方が未処理のAZ31基材よりも貴な電位を示しており、耐食性が向上していることが確認された。
また、実施例1で作製したアナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる皮膜を被覆したAZ31基材および未処理のAZ31基材の分極曲線の測定結果を図8に示す。
電位の掃引速度は0.5mV/sである。アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる皮膜を被覆したAZ31基材および未処理のAZ31基材の腐食電位は、それぞれ-1.426 V (vs. SCE)、-1.502 V (vs. SCE)であり、アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶からなる皮膜を被覆したAZ31基材の腐食電位の方が貴であった。この結果は、皮膜を被覆した方が高い耐食性になることを示す。
また、その腐食電流は、それぞれ-1.89×10-6A/cm2、2.14×10-5A/cm2であり、皮膜を被覆したものの腐食電流が1桁以上小さい値を示した。さらに、この曲線から得られる分極抵抗は、それぞれ11649Ω/cm2、282Ω/cm2であり、皮膜を被覆したものの方が40倍以上大きく、遙かに高い耐食性を示した。

Claims (11)

  1. フッ化チタン塩を含む溶液とマグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材とを接触させることにより基材の表面に酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜を生成させることを特徴とする皮膜の製造方法。
  2. フッ化チタン塩が、ヘキサフルオロチタン(IV)酸アンモニウム([NH4]2TiF6)、ヘキサフルオロチタン(IV)酸ナトリウム(Na2[TiF6])またはヘキサフルオロチタン(IV)酸カリウム(K2[TiF6])であることを特徴とする請求項1に記載の皮膜の製造方法。
  3. フッ化チタン塩を含む溶液が、フッ化チタン塩水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の皮膜の製造方法。
  4. フッ化チタン塩水溶液にフッ素イオンを捕捉する添加剤を添加して酸化チタンの過飽和水溶液の調製した後、この酸化チタンの過飽和水溶液と基材とを接触させることを特徴とする請求項3に記載の皮膜の製造方法。
  5. フッ素イオンを捕捉する添加剤が、ホウ酸であることを特徴とする請求項4に記載の皮膜の製造方法。
  6. フッ化チタン塩水溶液のpHを6以下に調整して基材と接触させることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
  7. フッ化チタン塩水溶液の温度が、50〜99℃の範囲であることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
  8. 基材は、その表面に真空紫外光照射による前処理が施されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
  9. マグネシウム又はマグネシウム合金で構成される基材の表面に酸化チタンとフッ化マグネシウムの皮膜を有する皮膜形成部材であって、前記皮膜は、アナターゼTiO2結晶とMgF2結晶を含むことを特徴とする皮膜形成部材。
  10. 皮膜は、酸化チタンとフッ化マグネシウムの粒子から構成されることを特徴とする請求項9に記載の皮膜形成部材。
  11. 粒子は、その表面に針状結晶を有することを特徴とする請求項10に記載の皮膜形成部材。
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