JP5481718B2 - 粉末冶金用金属粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粉末冶金用金属粉末の製造方法に関するものである。
例えば、粉末冶金法では、金属粉末とバインダとを含む組成物を、所望の形状に成形して成形体を得た後、成形体を脱脂・焼結することにより、焼結体を製造する。このような焼結体の製造過程では、金属粉末の粒子同士の間で原子の拡散現象が生じ、これにより成形体が徐々に緻密化することによって焼結に至る。
このような粉末冶金に用いられる金属粉末は、一般に、水アトマイズ法、還元法、カルボニル法、粉砕法等の粉末製造方法により製造される(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、金属粉末の組成によっては、これらの粉末製造方法では高品質の金属粉末を製造することができない場合がある。例えば、Y、Zr、Inのような成分を含む金属材料では、溶融金属が冷却・固化される際に、これらの成分が金属間化合物を生成してしまう問題がある。この金属間化合物は焼結体の緻密化を阻害するため、このような組成の金属材料は、粉末冶金用の金属粉末を製造するには不適当である。
特公平3−55522号公報
本発明の目的は、溶融金属が冷却・固化される際に金属間化合物を生成し易い組成であっても、その生成を確実に防止しつつ、粉末冶金に好適に用いられる金属粉末を容易に製造する粉末冶金用金属粉末の製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法は、焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような組成の遷移金属元素を主成分とし、該主成分よりも含有率の少ない副成分として、Y、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属材料を、前記金属材料の融点をTm[℃]としたときにTm+50〜Tm+500[℃]で溶融し、溶融金属を得る第1の工程と、
前記溶融金属を飛散させつつ冷却・固化させることにより、金属粉末を得る第2の工程と、を有し、
前記第2の工程は、前記溶融金属を、筒状体の内壁面に沿って冷却液を旋回させることによって生じた流速10〜100m/secの冷却液流に接触させることにより、前記溶融金属を飛散させつつ、冷却・固化させる工程であり、
前記溶融金属が固化するまでの冷却速度が、10K/sec以上であることを特徴とする。
これにより、溶融金属が冷却・固化される際に金属間化合物を生成し易い組成であっても、その生成を防止しつつ、粉末冶金に好適に用いられる金属粉末を容易に製造することができる。
また、溶融金属が冷却液と接触すると、溶融金属の周囲に蒸気の膜が生成される。この蒸気の膜は、溶融金属と冷却液流との熱伝導を妨げることとなり、溶融金属の冷却速度が低下してしまう。ここで、冷却液を旋回させてなる冷却液流に溶融金属を接触させると、冷却液流が蒸気の膜を剥ぎ取るように作用することとなり、溶融金属の冷却速度の低下が防止される。その結果、各粒子を構成する成分が均一かつ均質になった、粉末冶金に好適に用いられる金属粉末が容易に得られる。
また、冷却液流の流速を前記範囲内にすることにより、冷却液流に衝突した溶融金属から、その周囲に発生した冷却液の蒸気の膜を剥ぎ取る作用が十分に得られる。
また、金属材料の融点を前記範囲内にすることにより、溶融金属の温度が融点より十分に高くなり、溶融金属の流動性を高めることができる。その結果、溶融金属中の主成分と副成分とが十分に混在し、溶融金属が冷却・固化する際に、金属間化合物が生成し難くなる。また、溶融金属を分断させる際に、より微細に分断させることができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記第2の工程において、前記溶融金属を、流体ジェットに衝突させ、飛散させた後、前記飛散させた溶融金属を、筒状体の内壁面に沿って冷却液を旋回させることによって生じた冷却液流に接触させることにより、冷却・固化させることが好ましい。
これにより、溶融金属は、流体ジェットによる一次分断と、冷却液流による二次分断とを経て粉末化する。このため、より微細な金属粉末を製造することができる。また、冷却液流に衝突する時点では、溶融金属がより細かく分断された状態で衝突するため、溶融金属と冷却液流との接触面積が増大し、溶融金属の冷却速度のさらなる向上を図ることができる。さらに、流体ジェットの流体の種類や流速を適宜設定することにより、金属粉末の粒径や粒度分布等の粉末特性を容易に制御することができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記冷却液流は、前記筒状体の鉛直上方から下方に向かって螺旋状に降下するよう形成されていることが好ましい。
これにより、冷却液流に衝突した溶融金属およびその周囲に形成された冷却液の蒸気の膜には、遠心力と重力とが複雑に作用する。このため、溶融金属の周囲から蒸気の膜が剥ぎ取られる作用が増大し、溶融金属の冷却速度がより向上する。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記筒状体の内壁面には、前記筒状体の内径が部分的に縮小するように前記内壁面から突出したリング状の凸部が設けられており、
前記冷却液流の一部が、前記凸部にせき止められていることが好ましい。
せき止められた冷却液流は、流下速度が遅くなるため、冷却液流に衝突した溶融金属は、冷却液流に対してより長く接触し続ける。その結果、熱容量の大きい溶融金属であっても、十分に冷却することができる
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記副成分の含有率は、0.01〜5質量%であることが好ましい。
これにより、副成分を添加しても、金属粉末において主成分が有する特性を損なうことなく、金属粉末の焼結性を十分に高めることができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記主成分の含有率は、95質量%以上であることが好ましい。
これにより、副成分を添加しても、金属粉末において主成分が有する特性が低下するのを確実に防止することができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記主成分は、Fe、CoおよびNiから選択される少なくとも1種を含む単体または合金であることが好ましい。
これにより、粉末冶金用金属粉末は、緻密であり機械的特性や電磁気的特性が特に良好な構造部品や電磁気用部品を製造するための原料粉末として、好ましく用いることができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記主成分は、オーステナイト系ステンレス鋼またはCo−Cr−Mo系合金であることが好ましい。
これにより、機械的特性および化学的特性(耐候性)に優れる構造部品として好適に用いられる緻密な焼結体や、機械的特性に優れ、欠損等のおそれのない焼結体を確実に作製することができる粉末冶金用金属粉末が得られる。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記Co−Cr−Mo系合金は、Crを26〜30質量%の割合で含有し、かつMoを4.5〜7質量%の割合で含有するCo基合金であることが好ましい。
これにより、機械的特性に優れ、医療用デバイスの構成材料として特に好適に用いられる焼結体を確実に作製することができる粉末冶金用金属粉末が得られる。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法では、前記第2の工程において、得られる金属粉末の平均粒径が1〜30μmとなるように、前記溶融金属を飛散させる条件を設定することが好ましい。
これにより、成形時の圧縮性の低下を避けつつ、最終的に十分に緻密な焼結体を製造可能な粉末冶金用金属粉末が得られる。
以下、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法および粉末冶金用金属粉末について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
粉末冶金用金属粉末は、以前から、原材料を粉末化することにより製造されている。そして、原材料を粉末化する方法として、多くの粉末製造方法が提案されてきた。
しかしながら、粉末冶金用金属粉末の組成によっては、従来の粉末製造方法では、高品質の金属粉末を製造することができなかった。具体的には、遷移金属中に、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、In(インジウム)のような成分を含む金属材料では、金属間化合物を生成し易いという問題があった。
上記のような問題に鑑み、本発明者は、金属間化合物を生成し易い組成であっても、各組成が金属間化合物を生成することなく、均一かつ均質に存在してなる金属粉末を容易に製造するための条件について鋭意検討した。その結果、遷移金属元素を主成分とし、該主成分よりも含有率の少ない副成分として、Y、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属材料を溶融した後、この溶融金属を飛散させつつ、溶融金属が固化するまでの冷却速度が10K/sec以上になるように冷却・固化させる方法によれば、上記問題を解決する上で有効であることを見出した。
このような方法(本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法)によれば、Y、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含む副成分が、主成分等と反応して金属間化合物を生成してしまうことを確実に防止することができる。このため、金属粉末の各組成において、それぞれが均一かつ均質に分布した高品質の金属粉末を得ることができる。このような金属粉末は、焼結する際に、主成分と副成分とが金属間化合物を生成し難いものとなるため、粉末冶金に好適に用いられるものとなる。
以下、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法についてさらに詳述するが、それに先立って、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法を行うことができる金属粉末製造装置について説明する。
図1は、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法において用いる金属粉末製造装置の構成を示す模式図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す金属粉末製造装置1は、原材料となる金属材料を溶融してなる溶融金属32を、筒体2の内壁面に沿って水(冷却液)を旋回させることによって生じた水流(冷却液流)に接触させることにより、水勢によって溶融金属32を飛散させつつ、冷却・固化させ、金属粉末を製造する装置である。
このような金属粉末製造装置1は、内壁面に沿って水が流下するよう構成された筒体2と、溶融金属を貯留し、筒体2の内部に形成した水流に向けて、溶融金属を供給する供給部(タンディシュ)3とを有する。
筒体2は、円筒形状をなしており、その軸線方向が鉛直方向にほぼ平行になるよう設置されている。筒体2の上端には、開口部210を有する蓋体21が装着されている。一方、筒体2の下端は、内径および外径が下方に向かって漸減する漏斗部22となっている。
また、筒体2の上部の内壁面には、筒体2の内部に水を供給する配管23の吐出口231が開口している。なお、配管23は、吐出口231付近の管軸方向が、筒体2の内周面の接線方向の沿っており、かつ、筒体2の軸線に対して直交する方向に配設されている。これにより、配管23の吐出口231から吐出された水は、筒体2の内壁面に沿って回転しつつ、重力にしたがって流下する旋回流を形成する。
また、配管23の吐出口231と反対側は、水を貯留したタンク5に接続されている。そして、配管23の途中には、ポンプ232が設けられている。このポンプ232を動作させることにより、タンク5に貯留した水を吸い上げて、配管23を介して筒体2の内部に供給することができる。
また、筒体2の吐出口231と漏斗部22との間の内壁面には、筒体2の内径が部分的に縮小するように前記内壁面から突出したリング状の凸部24と、その下方に設けられたリング状の凸部25が、所定の離間距離で設けられている。この各凸部24、25は、吐出口231から吐出された水をせき止めることにより、旋回流の流下速度を低下させる。その結果、凸部24の上方に水の一部が滞留し、凸部24の高さ分の厚さの水層241が形成されるとともに、残部は凸部24を乗り越えて、その下方に流下する。同様に、凸部25の上方に水の一部が滞留し、凸部25の高さ分の厚さの水層251が形成されるとともに、残部は凸部25を乗り越えて、その下方に流下する。
なお、各凸部24、25は、それぞれ筒体2から取り外して交換可能になっている。したがって、所望の高さの各凸部24、25を適宜用いることにより、各水層241、251の厚さを調整することができる。
また、本実施形態では、凸部24の高さが、凸部25の高さより高くなっている。このため、凸部24の上方に形成された水層241の厚さは、凸部25の上方に形成された水層251の厚さより厚くなっている。
また、筒体2の凸部25と漏斗部22との間の壁部は、網状体26で構成されている。この網状体26は、多数の孔を有しているため、筒体2の内部を流下してきた水は、網状体26を介して筒体2の外部に流れ出る。
さらに、網状体26の外側には、網状体26を取り囲むようにカバー4が設けられている。このカバー4は、有底筒状をなしており、網状体26から筒体2の外部に流れ出た水を受け止めるよう構成されている。
なお、カバー4の底部の端には、筒体2から流れ出た水を回収し、カバー4から排出するための排出口41が設けられている。そして、排出口41から回収した水は、タンク5内に戻るようになっている。これにより、タンク5内の水を繰り返し使用することができるようになっている。
筒体2の上方には、供給部3が設けられている。
供給部3は、有底筒状をなしており、その内部に製造すべき金属粉末の原材料を溶融した溶融金属32を貯留する。
供給部3の外周には、供給部3を加熱するコイル33が巻き回されている。このコイル33に通電し、供給部3を加熱することにより、原材料を溶融するとともに、供給部3に貯留された溶融金属の温度が低下しないようになっている。
また、供給部3の底部に貫通孔31が設けられている。この貫通孔31からは、筒体2の開口部210を通過するように溶融金属32が吐出される。
なお、供給部3は、その内部に不活性ガスを導入することができるようになっており、不活性ガスの導入量を調整することにより、内部圧力を調整可能になっている。このように供給部3の内部圧力を調整することによって、貫通孔31から押し出され、吐出される溶融金属32の吐出量を制御することができる。
また、図1に示す供給部3においては、貫通孔31の軸線が、その延長が筒体2内に形成された水層241に位置している。これにより、貫通孔31から吐出された溶融金属32は、貫通孔31の軸線に沿って飛行し、水層241に衝突する。その結果、溶融金属32は、水層241の水勢によって飛散(分断)されるとともに、急激に冷却される。そして、溶融金属32は、その融点を下回り、固化に至る。このようにして、水層241中に金属粉末が生成される。
また、図2は、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法において用いる金属粉末製造装置の他の構成例を示す模式図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図2に示す金属粉末製造装置1は、原材料となる金属材料を溶融してなる溶融金属32を、ノズル6から噴射させたガスジェットまたは液体ジェットのような流体ジェット61に衝突させて飛散させた後、粒子状に分断された溶融金属32を、筒体2の内壁面に沿って水を旋回させることによって生じた水流に接触させることにより、水勢によって溶融金属32をさらに飛散させつつ、冷却・固化させ、金属粉末を製造する装置である。
このような図2に示す金属粉末製造装置1は、下記に示す部位が異なること以外は、図1に示す金属粉末製造装置1と同様である。
図2に示す金属粉末製造装置1は、溶融金属32を水層241に衝突させる前に、ガスジェットまたは液体ジェットのような流体ジェット61に対して、溶融金属32を衝突させて飛散させた後、粒子状に分断された溶融金属32を水層241に衝突させるよう構成されている。すなわち、図2に示す金属粉末製造装置1は、流体ジェット61を噴射するノズル6を複数有している。
また、筒体2は、円筒形状をなしており、その軸線方向が鉛直方向に対して傾斜するよう設置されている。また、筒体2の吐出口231と漏斗部22との間の内壁面には、筒体2の内径が部分的に縮小するように前記内壁面から吐出したリング状の凸部24が設けられている(図2において、図1に示す凸部25は省略されている)。
このような図2に示す金属粉末製造装置1によれば、溶融金属32が、流体ジェット61による一次分断と、水層241による二次分断とを経て粉末化する。このため、より微細な金属粉末を製造することができる。また、水層241に衝突する時点では、溶融金属32がより細かく分断された状態で衝突するため、溶融金属32と水層241との接触面積が増大し、溶融金属32の冷却速度のさらなる向上を図ることができる。
また、流体ジェット61の流体の種類や流速を適宜設定することにより、金属粉末の粒径や粒度分布等の粉末特性を容易に制御することができる。
さらに、図2に示す金属粉末製造装置1では、一次分断された溶融金属32が、凸部24によってせき止められ、その厚さが厚くなった水層241に衝突するよう構成されている。せき止められた水層241は、流下速度が遅くなるため、一次分断された溶融金属32は、水層241に対してより長く接触し続ける。その結果、熱容量の大きい溶融金属32であっても、十分に冷却することができる。
次に、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法の一例として、上記の図1に示す金属粉末製造装置1を用いて金属粉末を製造する方法について説明する。
図3は、Fe−Niの状態図、図4は、Fe−Crの状態図、図5は、Fe−Cの状態図である。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法は、前述したように、遷移金属元素を主成分とし、該主成分よりも含有率の少ない副成分として、Y、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属材料を溶融し、溶融金属を得る溶融工程(第1の工程)と、溶融金属を飛散させつつ、固化に至るまで10K/sec以上の冷却速度で冷却・固化させることにより、金属粉末を得る粉末化工程(第2の工程)とを有する。
このような方法で得られた金属粉末は、各粒子において、遷移金属元素と前述した副成分とが、均一かつ均質に存在したものとなる。
以下、各工程について順次説明する。なお、本明細書中において、「主成分」とは、金属粉末中で最も含有率の多い成分のことを言う。
[1]溶融工程(第1の工程)
まず、遷移金属元素を主成分とし、副成分として、Y、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属材料を用意する。そして、この金属材料を金属粉末製造装置1の供給部3内に投入し、コイル33に通電して金属材料を溶融する。これにより、供給部3に溶融金属32が貯留される。
このとき、溶融金属32の温度は、金属材料の融点をTm[℃]としたとき、Tm+50〜Tm+500℃程度であるのが好ましく、Tm+100〜Tm+300℃程度であるのがより好ましい。溶融金属32の温度を前記範囲内に設定することにより、溶融金属32の温度が融点より十分に高くなり、溶融金属32の流動性を高めることができる。その結果、溶融金属32中の主成分と副成分とが十分に混在し、溶融金属32が冷却・固化する際に、金属間化合物が生成し難くなる。また、溶融金属32を分断させる際に、より微細に分断させることができる。
上述したような副成分は、主成分よりも少ない含有率で金属粉末に含まれる成分である。このため、金属粉末の特性は、主成分が有する特性が支配的になっており、副成分は、この主成分が有する特性を損なわない程度に添加されているのが好ましい。
[2]粉末化工程(第2の工程)
次に、溶融金属を飛散させつつ、固化に至るまで10K/sec以上の冷却速度で冷却・固化させることにより、金属粉末を得る。
具体的には、供給部3に貯留した溶融金属32を、貫通孔31を介して、筒体2内に向けて吐出する。吐出された溶融金属32は、筒体2の蓋体21に設けられた開口部210を通過し、筒体2の内壁面に形成された水層241に衝突する。これにより、溶融金属32は、水層241の水勢によって飛散(分断)されるとともに、急激に冷却される。その結果、溶融金属32は、その融点を下回り、固化に至る。このようにして、水層241中に金属粉末が生成される。なお、金属粉末の各粒子において、主成分と副成分は合金化する(または、金属間化合物を形成する)。
この冷却過程において、溶融金属32に接触した水層241は、急激に沸騰し、溶融金属32の周囲に水蒸気の膜を形成する。
ところが、仮に水層241が筒体2に対して相対的に停止している、換言すれば、流下していないとすると、この水蒸気の膜は、溶融金属32の周囲に長く留まることとなる。このようになると、水蒸気の膜が断熱材の作用をもたらすため、溶融金属32と水層241との間の熱伝導性が低下し、水蒸気の膜が溶融金属32の冷却速度が低下させてしまう。このため、溶融金属32が固化に至るまでに長い時間がかかってしまい、その間に溶融金属32中に金属間化合物が生成してしまうおそれがあった。
しかしながら、金属粉末製造装置1によれば、水層241は、筒体2の内壁面を螺旋状に回転しつつ流下する水によって形成されたものである。このような水層241においては、水勢が溶融金属32に及ぼす力と、水蒸気膜に及ぼす力とが異なる。すなわち、溶融金属32が分断されてなる粒子に比べ、水蒸気膜は低密度でありかつ体積が大きいため、水層241が水蒸気膜に及ぼす力の方が溶融金属32に及ぼす力に比べて必然的に大きくなる。その結果、水層241は、溶融金属32の周囲に形成された水蒸気の膜を剥ぎ取るように作用することとなり、溶融金属32と水層241とが水蒸気の膜を介することなく直接接触するようになる。これにより、溶融金属32と水層241との熱伝導性が向上し、溶融金属32の冷却速度の低下が防止される。その結果、溶融金属32が固化に至るまでの冷却速度は10K/sec以上となり、各粒子を構成する成分が均一かつ均質になった、粉末冶金に好適に用いられる粉末冶金用の金属粉末が容易に得られる。
また、水層241が、螺旋状に回転しつつ流下する水によって形成されたものであるため、水層241に衝突した溶融金属32および水蒸気膜には、遠心力と重力とが複雑に作用する。このため、上述したような溶融金属32の周囲から水蒸気膜が剥ぎ取られる作用が増大し、溶融金属32の冷却速度がより向上する。
このようにして生成された金属粉末は、水に懸濁した状態で筒体2内を流下し、網状体26で濾し取られる。そして、金属粉末は、漏斗部22内を降下して筒体2の下端から回収される。一方、網状体26を通過し、筒体2の外部から流れ出た水は、カバー4によって集められ、タンク5内に戻される。
ここで、水層241を形成する冷却用の水の流速は、5〜100m/sec程度であるのが好ましく、10〜70m/sec程度であるのがより好ましい。水の流速が前記範囲内であれば、前述した水蒸気の膜を溶融金属32の周囲から剥ぎ取る作用が十分に得られる。
なお、水の流速が前記上限値を上回ってもよいが、冷却速度のそれ以上の向上は期待できないばかりか、水の流速が速くなり過ぎて、筒体2の内壁面が水との摩擦によって摩耗してしまうおそれがある。
以上、金属粉末製造装置1によれば、10K/secを大きく上回る冷却速度を容易に得られるため、この装置を用いて得られた粉末冶金用金属粉末は、主成分と副成分との相溶性にかかわらず、各粒子においてこれらの成分が均一に分布したものとなる。
また、金属粉末製造装置1によれば、筒体2内に水と溶融金属32とをそれぞれ連続的に供給することによって、金属粉末が連続的に生成されるため、大量生産が容易である。このため、金属粉末の製造コストの低コスト化を図ることができる。
また、図1に示すように、水層241に溶融金属32を衝突させる位置を、凸部24のやや上方に設定することにより、水が十分な厚さの水層241を形成している部分に溶融金属32を衝突させることができる。これにより、溶融金属32と水とが接触している時間をある程度長く確保することができ、溶融金属32の冷却速度をより高めることができる。
なお、本実施形態では、金属粉末製造装置1を用いて金属粉末を製造する方法について説明しているが、本粉末化工程は、この方法に限定されず、溶融金属32を10K/sec以上で冷却し得る方法であればよい。
このような方法としては、例えば、溶融金属32を液体窒素、液体ヘリウム等の液体に接触する方法等が挙げられる。
また、金属粉末製造装置1を用いることにより、真球に比較的近い球形状をなす金属粉末が得られる。このような金属粉末は、バインダに対する分散性や流動性に優れたものとなる。このため、このような金属粉末を含む組成物を成形型に充填して成形する際に、その充填性を高めることができ、最終的により緻密な焼結体を得ることができる。
ここで、本発明に原材料として用いる金属材料は、前述したように、遷移金属元素を主成分とし、副成分として、Y、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含むものである。
このうち、金属材料における主成分は、遷移金属元素のうち、焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような組成であるのが好ましい。このような主成分を含む金属材料を用いて、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法により製造された金属粉末は、粉末冶金に好適に用いられるものとなり、粉末冶金によって製造された焼結体は、原子が面心立方格子構造に配列した金属材料に特有の優れた機械的特性を示すものとなる。
ここで、焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような金属粉末は、金属間化合物を生成し易いため、これにより焼結が阻害され、粉末冶金の際の焼結性が低いという問題が以前から知られていた。このため、このような金属粉末を用いて製造された焼結体は、緻密化が不十分になってしまうことが問題となっていた。
これに対し、焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような組成の主成分に、Y、Zr、In等の副成分を添加してなる金属粉末においては、副成分が、主成分の焼結性を改善するように作用する。さらに、本発明で得られた上述したような金属粉末は、各粒子において、主成分と副成分とが均一かつ均質に存在したものとなるため、上述したような副成分の作用が、主成分に対して確実に発揮される。その結果、焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような組成を主成分とする金属粉末であっても、緻密で機械的特性に優れた高品質の焼結体を得ることができる。
このような副成分は、金属材料における含有率が、0.01〜5質量%程度であるのが好ましく、0.03〜3質量%程度であるのがより好ましい。副成分の含有率が前記範囲内であれば、副成分を添加しても、主成分が有する特性を損なうことなく、粉末の焼結性を十分に高めることができる。
なお、副成分の含有率が前記下限値を下回った場合には、副成分の焼結性を高める作用が著しく低下するおそれがある。一方、副成分の含有率が前記上限値を上回った場合には、金属粉末の特性として、副成分が有する特性が顕在化し、本来、発現すべき主成分が有する特性が埋没するおそれがある。
ここで、焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような組成の主成分としては、例えば、Al、Fe、Co、Ni、Cu等の各金属元素が挙げられ、これらのうちの1種を含む単体または基合金が挙げられる。
この中でも、前記主成分は、Fe、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種を含む単体または基合金であるのが好ましい。このような主成分の金属粉末から得られる焼結体は、機械的特性および電磁気的特性に優れていることから、種々の構造部品や電磁気用部品等に広範囲にわたって好適に用いられるものである。したがって、これらの主成分を含む金属粉末に、前述した副成分を添加してなる粉末冶金用金属粉末は、緻密であり機械的特性や電磁気的特性が特に良好な構造部品や電磁気用部品を製造するための原料粉末として、好ましく用いることができる。
また、金属粉末における主成分の含有率は、95質量%以上であるのが好ましく、97質量%以上であるのがより好ましい。主成分の含有率が前記範囲内であれば、副成分を添加しても、粉末冶金用金属粉末において主成分が有する特性が低下するのを確実に防止することができる。
なお、主成分の含有率が前記下限値を下回った場合には、主成分が有する特性が低下するおそれがあり、主成分の含有率が前記上限値を上回った場合には、副成分の作用が十分に発揮されないおそれがある。
また、粉末冶金用金属粉末が特にFe系合金で構成されている場合、主成分であるFe系合金中のFeの含有率が高くなるほど、デルタフェライト(δ鉄)相が析出するおそれがある。デルタフェライトは耐食性に劣るため、焼結体中に多量に含まれると耐食性の低下を招く。
これに対し、前述したような副成分を含むことにより、本発明の粉末冶金用金属粉末は、デルタフェライトの析出を抑制し得るものとなる。これにより、耐食性に富んだ粉末冶金用金属粉末が得られ、最終的に耐食性に富んだ焼結体が得られる。
ここで、粉末冶金用金属粉末の粉末冶金における上述したような副成分の作用は、以下の(I)〜(III)の3つのメカニズムのうちの少なくとも1つに起因しているものと推察される。
(I)Y、ZrおよびInの各元素は、焼結の際に、前述した遷移金属元素が主成分となる金属粒子の粒界を液相状態にさせるよう作用する。この粒界の液相部分は、毛細管力に基づいて粒子間の隙間に浸透し、粒子同士を引き寄せるよう振る舞う。これにより、前述した主成分と副成分とを含む金属粒子間では液相拡散が生じ、粒子間距離が急速に縮まって緻密化が進行する。その結果、成形体(脱脂体)が速やかに焼結する。
(II)Zrは、フェライト生成元素であるため、Zrを含む副成分が含まれることにより、焼結の際に、前述したAl、Fe、Co、Ni、Cu等が主成分となる金属粒子、すなわち、焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような金属材料の粒子の粒界に、体心立方格子相が析出する。この体心立方格子相は、面心立方格子相に比べて焼結性に優れていることが知られている。これは、体心立方格子相と面心立方格子相との間の、原子配列の充填性の差に伴う柔軟性の違いによるものと考えられる。このような理由から、前述した主成分と副成分とを含む金属粒子間の焼結性が高くなり、成形体(脱脂体)が速やかに焼結する。
(III)Y、ZrおよびInの各元素は、焼結の際に、前述した遷移金属元素の主成分に酸化物として微量に含まれた酸素を除去する脱酸剤として作用する。この主成分に含まれた酸化物は、金属粉末の焼結を阻害し、焼結性低下の一因となっていると考えられる。したがって、副成分が脱酸剤として作用することにより、焼結性の阻害要因である酸化物を除去し、前述した主成分と副成分とを含む金属粉末の焼結性を高めることができる。その結果、成形体が速やかに焼結する。
なお、(III)のメカニズムによれば、Y、ZrおよびInの各元素を添加することにより、焼結体中の酸化物が減少する。その結果、酸素含有率の低い、高品質の焼結体が得られる。
この場合、焼結体の酸素含有率は、粉末冶金用金属粉末の酸素含有率に対して、10質量%以上の減少が期待できる。
以上のような3つのメカニズムのうちの少なくとも1つにより、前述したような副成分の作用が発揮されると考えられる。
ところで、上述したようなAl、Fe、Co、Ni、Cu等を含む金属の具体例としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト系耐熱鋼、低炭素鋼、パーマロイ、Co−Cr−Mo系合金等が挙げられるが、特に、オーステナイト系ステンレス鋼を用いるのが好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼は、焼結性に劣るが、ステンレス鋼の中でも特に機械的特性および化学的特性(耐食性)に優れるものである。このため、前述の副成分を添加したことによって良好な焼結性を付与したオーステナイト系ステンレス鋼粉末は、構造部品として好適に用いられる緻密な焼結体を確実に製造することができる。
なお、上述したような合金のうち、Fe基合金の場合は、原子が面心立方格子を構築するよう配置した相のことを「γ相」と言う。γ相を含む本発明の粉末冶金用金属粉末を用いて製造された焼結体は、γ相を含むFe基合金が靭性等の機械的特性や耐食性等の化学的特性において元々有する優れた特性に加え、密度が高くなるように焼結されたものであるため、引張強度や硬度等の機械的特性にも優れたものとなる。
また、オーステナイト系ステンレス鋼としては、JIS G 4303〜4309等に規定のステンレス鋼のうち、例えば、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS309、SUS310、SUS316、SUS317、SUS321、SUS347、SUS384等が挙げられる。
また、オーステナイト系耐熱鋼としては、JIS G 4311〜4312等に規定の耐熱鋼のうち、例えば、SUH31、SUH35、SUH36、SUH37、SUH38、SUH309、SUH310、SUH330、SUH660、SUH661等が挙げられる。
なお、ステンレス鋼および耐熱鋼は、主にFe、Ni、Cr等の成分を含む鋼種であるが、これらの鋼種が焼結温度において面心立方格子構造を析出するか否かは、図3、4に示す状態図から把握することができる。すなわち、例えば、Fe等の成分の比率と温度とが、図3、4に示す状態図のγ相の領域に一致するように適宜設定することにより、γ相を含むステンレス鋼および耐熱鋼を確実に調製することができる。
また、低炭素鋼は、一般に、炭素含有率が0.02〜0.3質量%程度の炭素鋼を指す。なお、炭素鋼についても、焼結温度において面心立方格子構造を析出するか否かは、図5に示す状態図から把握することができる。すなわち、Fe、Cの成分の比率と温度とが、図5に示す状態図のγ相の領域に一致するように適宜設定することにより、γ相を含む炭素鋼を確実に調製することができる。
また、パーマロイとしては、例えば、JIS C 2531等に規定の鉄ニッケル軟質磁性材料等が挙げられる。
また、前記主成分には、Co−Cr−Mo系合金を用いるのが好ましい。Co−Cr−Mo系合金は、やはり焼結性に劣るものの、人工関節等の医療用デバイス(インプラント)に好適に用いられる。
ここで、主成分としてCo−Cr−Mo系合金を用い、副成分としてY、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含む組成の粉末冶金用金属粉末を用いて医療用デバイスを製造することにより、機械的特性に優れ、欠損等のおそれのない医療用デバイスを確実に得ることができる。
ところで、上述したようなCo−Cr−Mo系合金は、CrとMoとを含むCo基合金であるが、具体的には、Crの含有率は、26〜30質量%程度であるのが好ましく、27〜29質量%程度であるのがより好ましい。また、Moの含有率は、4.5〜7質量%程度であるのが好ましく、5〜6.5質量%程度であるのがより好ましい。このような組成のCo−Cr−Mo系合金は、特に機械的強度に優れたものとなるため、前述したような医療用デバイスの構成材料として、特に好適に用いられるものとなる。
なお、このようなCo−Cr−Mo系合金は、さらに、Be、B、C、N、O、Si、P、S、Ti、Mn、Fe、Ni、W等の添加物または製造時に不可避的に含まれる不純物を含んでいてもよい。その場合、焼結製品の特性上、これらの添加物または不純物の含有量の合計は、20質量%以下であるのが好ましい。
また、特に、Cの含有率は、0.35質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以下であるのがより好ましい。
また、Siの含有率は、1質量%以下であるのが好ましい。
また、Tiの含有率は、10質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましい。
また、Mnの含有率は、20質量%以下であるのが好ましく、3質量%以下であるのがより好ましい。
また、Feの含有率は、6質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましい。
さらに、Niの含有率は、1質量%以下であるのが好ましい。
なお、前記粉末化工程における冷却用の水の流速や水層241、251の厚さ、溶融金属32の吐出量等の各種条件は、製造する粉末冶金用金属粉末の粒径等に基づいて決定される。具体的には、粉末冶金用金属粉末の平均粒径が1〜30μm程度になるように各種条件を設定するのが好ましく、1〜20μm程度になるように設定するのがより好ましい。このような粒径の粉末冶金用金属粉末は、成形時の圧縮性の低下を避けつつ、最終的に十分に緻密な焼結体を製造可能なものとなる。
なお、平均粒径が前記下限値未満である場合、粉末冶金用金属粉末が凝集し易くなり、成形時の圧縮性が著しく低下するおそれがある。一方、平均粒径が前記上限値を超える場合、粉末の粒子間の隙間が大きくなり過ぎて、最終的に得られる焼結体の緻密化が不十分になるおそれがある。
また、例えば粉末冶金用金属粉末がFe系合金、Ni系合金またはCo系合金で構成されている場合、粉末冶金用金属粉末のタップ密度は、3.5g/cm以上であるのが好ましく、4g/cm以上であるのがより好ましい。このようにタップ密度が大きい粉末冶金用金属粉末であれば、成形体を得る際に、粒子間の充填性が特に高くなる。このため、最終的に、特に緻密な焼結体を得ることができる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末の比表面積は、0.1m/g以上であるのが好ましく、0.2m/g以上であるのがより好ましい。このように比表面積の広い粉末冶金用金属粉末であれば、表面の活性(表面エネルギー)が高くなるため、より少ないエネルギーの付与でも容易に焼結することができる。したがって、成形体を焼結する際に、より短時間で焼結することができる。
次に、上述したような本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法により製造された粉末冶金用金属粉末(本発明の粉末冶金用金属粉末)を用いて、焼結体を得る方法について説明する。
図6は、焼結体の製造方法を説明するための工程図である。
焼結体の製造方法は、図6に示すように、[A]組成物を用意する組成物調製工程と、[B]成形体を製造する成形工程と、[C]脱脂処理を施す脱脂工程と、[D]焼成を行う焼成工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
[A]組成物調製工程
まず、本発明の粉末冶金用金属粉末と、バインダとを用意し、これらを混練機により混練し、混練物(組成物)を得る。
この混練物(コンパウンド)中では、粉末冶金用金属粉末が均一に分散している。
バインダとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、またはこれらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等の各種有機バインダが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
このうち、バインダとしては、ポリオレフィンを主成分とするものが好ましい。ポリオレフィンは、還元性ガスによる分解性が比較的高い。このため、ポリオレフィンをバインダの主成分として用いた場合、より短時間で確実に成形体の脱脂を行うことができる。
また、バインダの含有率は、混練物全体の2〜20質量%程度であるのが好ましく、5〜10質量%程度であるのがより好ましい。バインダの含有率が前記範囲内であることにより、成形性よく成形体を形成することができるとともに、密度を高め、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、これにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得られる焼結体の寸法精度の低下を防止することができる。
また、混練物中には、必要に応じて、可塑剤が添加されていてもよい。この可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
さらに、混練物中には、粉末冶金用金属粉末、バインダ、可塑剤の他に、例えば、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物を必要に応じ添加することができる。
なお、混練条件は、用いる粉末冶金用金属粉末の金属組成や粒径、バインダの組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、混練温度:50〜200℃程度、混練時間:15〜210分程度とすることができる。
また、混練物は、必要に応じ、ペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば、1〜15mm程度とされる。
なお、混練物に代えて、造粒粉末を製造するようにしてもよい。
[B]成形工程
次に、混練物を成形して、目的の焼結体と同形状の成形体を製造する。
成形体の製造方法(成型方法)としては、特に限定されず、例えば、圧粉成形(圧縮成形)法、金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)法、押出成形法等の各種成形法を用いることができる。
このうち、圧粉成形法の場合の成形条件は、用いる粉末冶金用金属粉末の組成や粒径、バインダの組成、およびこれらの配合量等の諸条件によって異なるが、成形圧力が200〜1000MPa(2〜10t/cm)程度であるのが好ましい。
また、金属粉末射出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温度が80〜210℃程度、射出圧力が50〜500MPa(0.5〜5t/cm)程度であるのが好ましい。
また、押出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温度が80〜210℃程度、押出圧力が50〜500MPa(0.5〜5t/cm)程度であるのが好ましい。
このようにして得られた成形体は、金属粉末の複数の粒子の間隙に、バインダが一様に分布した状態となる。
なお、作製される成形体の形状寸法は、以降の脱脂工程および焼成工程における成形体の収縮分を見込んで決定される。
[C]脱脂工程
次に、得られた成形体に脱脂処理(脱バインダ処理)を施し、脱脂体を得る。
具体的には、成形体を加熱して、バインダを分解することにより、成形体中からバインダを除去して、脱脂処理がなされる。
この脱脂処理は、例えば、成形体を加熱する方法、バインダを分解するガスに成形体を曝す方法等が挙げられる。
成形体を加熱する方法を用いる場合、成形体の加熱条件は、バインダの組成や配合量によって若干異なるものの、温度100〜750℃×0.1〜20時間程度であるのが好ましく、150〜600℃×0.5〜15時間程度であるのがより好ましい。これにより、成形体を焼結させることなく、成形体の脱脂を必要かつ十分に行うことができる。その結果、脱脂体の内部にバインダ成分が多量に残留してしまうのを確実に防止することができる。
また、成形体を加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、大気のような酸化性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
一方、バインダを分解するガスとしては、例えば、オゾンガス等が挙げられる。
なお、このような脱脂工程は、脱脂条件の異なる複数の過程(ステップ)に分けて行うことにより、成形体中のバインダをより速やかに、そして、成形体に残存させないように分解・除去することができる。
また、必要に応じて、脱脂体に対して切削、研磨、切断等の機械加工を施すようにしてもよい。脱脂体は、硬度が比較的低く、かつ比較的可塑性に富んでいるため、脱脂体の形状が崩れるのを防止しつつ、容易に機械加工を施すことができる。このような機械加工によれば、最終的に寸法精度の高い焼結体を容易に得ることができる。
[D]焼成工程
前記工程[C]で得られた脱脂体を、焼成炉で焼成して焼結体を得る。
この焼結により、粉末冶金用金属粉末は、粒子同士の界面で拡散が生じ、焼結に至る。この際、前述したようなメカニズムによって、脱脂体が速やかに焼結される。その結果、全体的に緻密な高密度の焼結体が得られる。
焼成温度は、成形体および脱脂体の製造に用いた粉末冶金用金属粉末の組成や粒径等によって異なる。
ここでは、一例として、この粉末冶金用金属粉末が、Co−Cr−Mo系合金を主成分とし、前述したような副成分を0.01〜5質量%程度含むような組成の金属粉末である場合について説明する。
このような組成の粉末冶金用金属粉末で製造された脱脂体を焼成する場合、その焼成条件は、温度1100〜1350℃×0.2〜7時間程度であるのが好ましく、温度1200〜1300℃×1〜4時間程度であるのがより好ましい。これにより、焼結が進み過ぎて過焼結となり、結晶組織が肥大化するのを防止しつつ、脱脂体全体を十分に焼結させることができる。その結果、高密度であり、かつ特に機械的特性に優れた焼結体を得ることができる。
また、焼成の際の雰囲気は、特に限定されないが、金属粉末の酸化を防止することを考慮した場合、水素のような還元性ガス雰囲気、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
このようにして得られた焼結体は、相対密度の高いものが得られる。
すなわち、本発明の粉末冶金用金属粉末とバインダとを含む組成物を、成形した後、脱脂・焼結して製造された焼結体は、その相対密度が、前記主成分を含みかつ前述した副成分を含まない金属粉末とバインダとを含む組成物を、成形した後、脱脂・焼結して製造された焼結体の相対密度よりも高くなる。これは、主成分のみを含む金属粉末は、焼結性が不十分であるものの、このような主成分に、前述したようなY、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種の副成分を添加したことにより、金属粉末の焼結性が向上したためである。
具体的には、粉末冶金用金属粉末の組成によって若干異なるものの、2%以上の相対密度の向上が期待できる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末とバインダとを含む組成物を、成形した後、脱脂・焼結して製造された焼結体は、その引張強さや0.2%耐力が、前記主成分を含みかつ前述した副成分を含まない金属粉末とバインダとを含む組成物を、成形した後、脱脂・焼結して製造された焼結体の引張強さや0.2%耐力よりも大きくなる。これは、前述した主成分のみを金属粉末は、焼結性が不十分であるため、引張強さや0.2%耐力等の機械的特性が低いものの、このような主成分に、前述したようなY、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種の副成分を添加したことにより、金属粉末の焼結性を高め、これにより機械的特性が向上したためである。
具体的には、粉末冶金用金属粉末の組成によって若干異なるものの、10%以上の引張強さの向上、10%以上の0.2%耐力の向上がそれぞれ期待できる。
以上のことから、本発明の粉末冶金用金属粉末を用いることにより、焼結に伴って主成分が析出してしまうような組成であっても、焼結における緻密化を図ることができる。その結果、本発明の粉末冶金用金属粉末によれば、例えば、従来では製造することが困難であった、γ相を主成分とし、かつ高密度で機械的特性に優れた焼結体を容易に製造することができるようになる。このようにして得られたγ相を主成分とする焼結体は、γ相に特有の優れた機械的特性を有するため、例えば、構造部品等として極めて有用なものとなる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法によれば、このような優れた焼結体を製造するのに好適な粉末冶金用金属粉末を容易に製造することができる。
また、このようにして得られた焼結体において、γ相の含有率が大きいほど、γ相に特有の機械的特性が顕著になることは言うまでもないが、この含有率は、好ましくは80原子%以上、より好ましくは90原子%以上とされる。なお、この含有率は、例えば、X線回折法によって測定することができる。
以上、本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法および粉末冶金用金属粉末について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、粉末冶金用金属粉末の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
1.粉末冶金用金属粉末および焼結体の製造
(実施例1)
[1]まず、Co−Cr−Mo系合金材料を用意した。このCo−Cr−Mo系合金材料には、副成分としてY(イットリウム)を含んでいる。そして、この合金材料を、図1に示す金属粉末製造装置1の供給部3内に投入し、1700℃で加熱して溶融した。これにより、供給部3内に溶融金属を得た。なお、用意したCo−Cr−Mo系合金材料の融点は、1590℃である。
[2]次に、図1に示す筒体2内に水を吐出して内壁面に水層241を形成するとともに、この水層241に接触するように、溶融金属32を筒体2内に噴射した。これにより、溶融金属32を飛散させるとともに、水層241との接触により冷却・固化させ、粉末冶金用金属粉末を得た。なお、このときの溶融金属の冷却速度は、10K/secであった。また、筒体2内に吐出した水の流速は、50m/secとした。
そして、得られた粉末冶金用金属粉末の組成を、誘導結合高周波プラズマ発光分析法(ICP法)により同定した。なお、ICP分析には、(株)リガク製、ICP装置(CIROS120型)を用いた。分析結果を表1に示す。
また、得られた粉末冶金用金属粉末の粉末特性(平均粒径、タップ密度および比表面積)を測定し、表1に示す。
Figure 0005481718
[3]次に、有機バインダを水(溶媒)に溶解してバインダ溶液を調製した。
なお、バインダ溶液における有機バインダの量は、粉末冶金用金属粉末1kg当たり10gとした。また、バインダ溶液における水の量は、有機バインダ1g当たり50gとした。
[4]次に、粉末冶金用金属粉末を、造粒装置の処理容器内に投入した。そして、処理容器内の粉末冶金用金属粉末に向けて、造粒装置のスプレーノズルからバインダ溶液を噴霧しつつ、粉末冶金用金属粉末を転動・造粒し、造粒粉末を得た。
[5]次に、得られた造粒粉末を用い、以下の成形条件で成形し、成形体を得た。
<成形条件>
・成形方法:圧粉成形
・成形圧力:600MPa(6t/cm
[6]次に、この成形体を以下の脱脂条件で脱脂、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・加熱温度 :470℃
・加熱時間 :1時間
・加熱雰囲気:アルゴン雰囲気
[7]次に、得られた脱脂体を、以下の焼成条件で焼成し、焼結体を得た。
<焼成条件>
・加熱温度 :1280℃
・加熱時間 :3時間
・加熱雰囲気:アルゴン雰囲気
(実施例2〜3)
粉末冶金用金属粉末の組成が、表1に示すような組成になるように、金属粉末製造装置に投入する金属材料の組成を変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末を得た。そして、この粉末冶金用金属粉末を用いて、それぞれ前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
(実施例4)
筒体2に吐出した水の流速を5m/sとした以外は、前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末を得た。そして、この粉末冶金用金属粉末を用いて、前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
(実施例5)
Co−Cr−Mo系合金材料の溶融温度を1630℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末を得た。そして、この粉末冶金用金属粉末を用いて、前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
(実施例6)
図2に示す金属粉末製造装置1を用いた以外は、前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末を得た。なお、このときの溶融金属の冷却速度は、10K/secであった。また、筒体2内に吐出した水の流速は、50m/sとした。また、流体ジェット61として、ガスジェットを用いた。そして、この粉末冶金用金属粉末を用いて、前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
(実施例7〜16)
粉末冶金用金属粉末の組成が、表1に示すような組成になるように、Co−Cr−Mo系合金材料の組成を変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末を得た。そして、この粉末冶金用金属粉末を用いて、それぞれ前記実施例1と同様にして焼結体を得た。なお、原材料の溶融温度は、それぞれ表1に示す温度とした。
(比較例1)
Co−Cr−Mo系合金材料の組成を、副成分を含まない組成に変更した以外は、前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末を得た。そして、この粉末冶金用金属粉末を用いて、前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
(比較例2)
前記実施例1の工程[2]において、以下に示すような金属粉末製造装置を用いた以外は、前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末を得た。そして、この粉末冶金用金属粉末を用いて、前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
この比較例に用いた金属粉末製造装置は、下向きに収れんする円錐を形成するように水を噴射させ、この円錐の頂点に向けて溶融金属を自然落下させるよう構成されている。 前記頂点付近において、溶融金属と水とが衝突すると、水勢によって溶融金属が飛散されるとともに、冷却・固化される。その結果、金属粉末が形成される。
なお、このときの溶融金属の冷却速度は、10K/secであった。
2.評価
2.1 焼結体の切断面の組成分布
各実施例および比較例2で得られた焼結体について、X線マイクロアナライザー(EPMA)による面分析によって、切断面の組成分布を評価した。
その結果、各実施例で得られた焼結体では、いずれも、主成分と副成分とがほぼ均一に分布していることが認められた。
一方、比較例2で得られた焼結体では、金属間化合物が生成していることが認められた。
2.2 焼結密度の測定
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、それぞれの焼結密度を測定した。なお、焼結密度の測定は、アルキメデス法(JIS Z 2501に規定)に準じた方法により行った。
また、測定された焼結密度と、各実施例および各比較例で用いたCo−Cr−Mo系合金の真密度とから、各実施例および各比較例の相対密度を算出した。
2.3 引張強さおよび0.2%耐力の測定
各実施例3、4、8、9および比較例1、2で得られた焼結体について、それぞれの引張強さを測定した。なお、引張強さの測定は、JIS Z 2241に規定の方法に準じて行った。
また、JIS Z 2241に規定の耐力の測定方法に準じて、永久伸び0.2%のときの耐力(0.2%耐力)を測定した。
2.4 酸素含有率の測定
各実施例3、4、8、9および比較例1、2で得られた焼結体について、それぞれの酸素含有率を測定した。
以上、2.2〜2.4の測定結果を表2に示す。
Figure 0005481718
表2から明らかなように、各実施例では、いずれも、各比較例に比べて高密度の焼結体が得られた。これにより、副成分を含む粉末冶金用金属粉末は、焼結性を高め得ることが明らかとなった。
なお、実施例3と比較例で得られた焼結体の研磨断面の光学顕微鏡観察像を図7に示す。図7において、淡色部はCo−Cr−Mo系合金を示し、濃色部は空隙部を示す。図7からも、実施例3で得られた焼結体の観察像(図7(a))は、比較例1で得られた焼結体の観察像(図7(b))に比べて濃色部の空隙部の面積が少ないことが認められる。
一方、比較例1では、粉末冶金用金属粉末に副成分が含まれていないため、主成分であるCo−Cr−Mo系合金の焼結性が低いという問題が顕在化し、焼結体の密度が低かった。
また、比較例2では、粉末冶金用金属粉末が副成分を含んでいるものの、冷却速度が遅かったため、各粒子において、金属間化合物が生成してしまい、焼結体の密度が低かったと考えられる。
また、各実施例で得られた高密度の焼結体は、いずれも比較例で得られた焼結体に比べて、引張強さ、0.2%耐力のような機械的特性に優れていた。
また、各実施例で得られた焼結体では、それぞれ、焼結前の粉末冶金用金属粉末に比べて酸素含有量の減少が認められた。一方、比較例では、そのような酸素含有量の減少は認められなかった。これらのことから、本発明によれば、焼結性の改善に加え、酸素含有量の少ない焼結体が得られるという利点もあることが明らかとなった。
本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法において用いる金属粉末製造装置の構成を示す模式図(縦断面図)である。 本発明の粉末冶金用金属粉末の製造方法において用いる金属粉末製造装置の他の構成例を示す模式図(縦断面図)である。 Fe−Niの状態図である。 Fe−Crの状態図である。 Fe−Cの状態図である。 焼結体の製造方法を説明するための工程図である。 実施例3と比較例1で得られた焼結体の研磨断面の光学顕微鏡観察像である。
符号の説明
1……金属粉末製造装置 2……筒体 21……蓋体 210……開口部 22……漏斗部 23……配管 231……吐出口 232……ポンプ 24、25……凸部 241、251……水層 26……網状体 3……供給部 31……貫通孔 32……溶融金属 33……コイル 4……カバー 41……排出口 5……タンク 6……ノズル 61……流体ジェット A……組成物調製工程 B……成形工程 C……脱脂工程 D……焼成工程

Claims (10)

  1. 焼結温度において原子配列が面心立方格子となるような組成の遷移金属元素を主成分とし、該主成分よりも含有率の少ない副成分として、Y、ZrおよびInからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属材料を、前記金属材料の融点をTm[℃]としたときにTm+50〜Tm+500[℃]で溶融し、溶融金属を得る第1の工程と、
    前記溶融金属を飛散させつつ冷却・固化させることにより、金属粉末を得る第2の工程と、を有し、
    前記第2の工程は、前記溶融金属を、筒状体の内壁面に沿って冷却液を旋回させることによって生じた流速10〜100m/secの冷却液流に接触させることにより、前記溶融金属を飛散させつつ、冷却・固化させる工程であり、
    前記溶融金属が固化するまでの冷却速度が、10K/sec以上であることを特徴とする粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  2. 前記第2の工程において、前記溶融金属を、流体ジェットに衝突させ、飛散させた後、前記飛散させた溶融金属を、筒状体の内壁面に沿って冷却液を旋回させることによって生じた冷却液流に接触させることにより、冷却・固化させる請求項1に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  3. 前記冷却液流は、前記筒状体の鉛直上方から下方に向かって螺旋状に降下するよう形成されている請求項1または2に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  4. 前記筒状体の内壁面には、前記筒状体の内径が部分的に縮小するように前記内壁面から突出したリング状の凸部が設けられており、
    前記冷却液流の一部が、前記凸部にせき止められている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  5. 前記副成分の含有率は、0.01〜5質量%である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  6. 前記主成分の含有率は、95質量%以上である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  7. 前記主成分は、Fe、CoおよびNiから選択される少なくとも1種を含む単体または合金である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  8. 前記主成分は、オーステナイト系ステンレス鋼またはCo−Cr−Mo系合金である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  9. 前記Co−Cr−Mo系合金は、Crを26〜30質量%の割合で含有し、かつMoを4.5〜7質量%の割合で含有するCo基合金である請求項8に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
  10. 前記第2の工程において、得られる金属粉末の平均粒径が1〜30μmとなるように、前記溶融金属を飛散させる条件を設定する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末の製造方法。
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