JP5479174B2 - ポリウレタンフォーム積層体及びその製造方法並びにガスケット - Google Patents

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Description

本発明は、ポリウレタンフォーム積層体及びその製造方法並びにガスケットに関する。更に詳しくは、本発明は、特定の難燃剤を含み、難燃剤がブリードアウトすることがなく、柔軟であり、且つ、傷が付き難く、外観性に優れるポリウレタンフォーム層と、樹脂フィルム層とを備え、難燃性に優れるポリウレタンフォーム積層体及びその製造方法、並びに、このポリウレタンフォーム積層体を用いてなり、難燃性及びシール性に優れるガスケットに関する。
従来、携帯電話機等の携帯通信機器、デジタルカメラ、カーナビゲーション等の電子機器では、内部への水分及び塵埃等の侵入を抑えるため、筐体の周縁部等にガスケットが配設されている。また、特に高温雰囲気等の過酷な環境下で用いられる電子機器及び精密機器等、並びに発熱性の高い電子機器及び精密機器等では、UL94に規定される難燃基準であるHBF規格に合格する難燃性を有している必要がある。このような難燃性を付与するため、(1)有機臭素化合物、有機塩素化合物等のハロゲン系難燃剤、(2)三酸化アンチモン、(3)有機リン系化合物、(4)金属水酸化物(例えば、特許文献1参照。)等の各種の難燃剤を配合した樹脂フォームを用いたガスケットが提案されている。
しかし、上記の各種の難燃剤には、それぞれ以下のような問題点がある。
(1)ハロゲン系難燃剤は、燃焼時、環境負荷の大きいハロゲン化物が発生するため好ましくない。
(2)三酸化アンチモンは、環境負荷が大きく、且つ有害であることが確認されており好ましくない。
(3)有機リン系化合物は液状であることが多く、大量に配合するとフォーム物性が低下する、ブリードアウトして筐体等に移行するという問題が懸念される。また、樹脂フィルムと樹脂フォームとを一体化してなるガスケットでは、例えば、UL94に規定される難燃試験において、基材である樹脂フィルムが収縮し、試験片がフォーム側にカールすることを抑えることができず、結果としてHBF規格に合格しないという問題がある。
(4)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属化合物は、前記のような環境負荷及び人体に対する影響等は殆どなく、安全なガスケットとすることができるが、例えば、HBF規格に合格する難燃性を有するガスケットとするためには、樹脂フォームに大量に配合する必要がある。しかし、メカニカルフロス法では、フォーム原料に粉粒体を配合すると増粘に繋がり、特に密度の低い樹脂フォームの製造時には増粘が顕著になり、メカニカルフロス法による樹脂フォームが本来有する微細セル構造の形成が困難であり、フォームの表面が荒れる、所謂、セル荒れが発生する等の問題がある。
特開2005−171102号公報 特開2007−44972号公報
特許文献1には、特定の密度を有し、難燃剤である金属水酸化物をポリオール100重量部に対して25〜50重量部混合した難燃性シール材が開示されている。この特許文献1には、低密度であると、空気との接触面積が大きくなり、難燃性が低下すると説明されている。また、この難燃性シール材では、金属水酸化物が50重量部を越えると硬くなったり、脆性が発現したりしてシール性に問題が発生すると説明されており、多量の金属水酸化物を配合したときの問題点が記載されている。更に、この問題に対処する方法として、整泡剤の希釈媒体としてポリオールを用いることで、整泡剤をポリウレタンの分子内に取り込んでしまい、難燃化の阻害要因となる整泡剤の揮発を防止する方法が記載されている。
また、特許文献2には、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成されたポリウレタン発泡体層とを備える物品が開示されており、この物品として、携帯電話機等のディスプレイなどに用いられるシール部材が例示されている。更に、ポリウレタン泡混合物に任意の添加剤を添加してもよいと記載されており、添加物として難燃剤が例示されている。
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、難燃剤がブリードアウトすることがなく、柔軟であり、且つ、傷が付き難く、外観性に優れるポリウレタンフォーム層と、樹脂フィルム層とを備え、難燃性に優れるポリウレタンフォーム積層体及びその製造方法、並びに、このポリウレタンフォーム積層体を用いてなり、難燃性及びシール性に優れるガスケットに関する。
本発明は以下のとおりである。
1.ポリイソシアネート、ポリオール及び難燃剤を含有するフォーム原料と、気体とを混合して、気液混合物を生成させ、その後、該気液混合物を樹脂フィルム上に供給し、次いで、該気液混合物を加熱し、該フォーム原料を反応させて得られた、該樹脂フィルムからなる樹脂フィルム層と、生成したポリウレタンフォームからなるフォーム層とを有するポリウレタンフォーム積層体において、
上記フォーム原料に含まれる上記難燃剤は、金属水酸化物粉末と、液状難燃剤とを含み、上記ポリオールを100質量部とした場合に、該金属水酸化物粉末は20〜60質量部であり、該液状難燃剤は5〜20質量部であって、
上記ポリオールは、平均分子量が400〜5000の範囲にあり、且つ、互いに異なる平均分子量を有する化合物を2種用い、
上記液状難燃剤がリン系難燃剤であり、
上記金属水酸化物粉末の平均粒径が10〜100μmであり、
上記気液混合物の形成に用いる上記気体の使用量は、該気体及び上記フォーム原料の合計を100体積%とした場合に、77〜86体積%であり、
上記フォーム層の密度が100〜280kg/mであり、且つ、
上記ポリウレタンフォーム積層体を、温度70℃で、50%圧縮したときの圧縮残留歪が10.0%以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム積層体。
.上記金属水酸化物が水酸化アルミニウムである上記に記載のポリウレタンフォーム積層体。
.上記樹脂フィルム層がポリエチレンテレフタレートを含み、該樹脂フィルム層の厚さが25〜125μmである上記1又は2に記載のポリウレタンフォーム積層体。
.上記フォーム層の平均セル径が50〜300μmである上記1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
.上記フォーム層が、上記樹脂フィルム層に積層された面とは反対側の面にスキン層を有する上記1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
.40%圧縮したときの荷重が0.002〜0.02MPaである上記1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
.ガスケット用である上記1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
.ポリイソシアネート、ポリオール及び難燃剤を含有するフォーム原料と、気体とを混合して、気液混合物を生成させ、その後、該気液混合物を樹脂フィルム上に供給し、次いで、該気液混合物を加熱し、該フォーム原料を反応させて、該樹脂フィルムからなる樹脂フィルム層と、該フォーム原料の反応硬化により生成したポリウレタンフォームからなるフォーム層とを有するポリウレタンフォーム積層体を製造する方法において、
上記フォーム原料に含まれる上記難燃剤は、金属水酸化物粉末と、リン系難燃剤からなる液状難燃剤とを含み、上記ポリオールを100質量部とした場合に、該金属水酸化物粉末は20〜60質量部であり、該液状難燃剤は5〜20質量部であって、
上記ポリオールは、平均分子量が400〜5000の範囲にあり、且つ、互いに異なる平均分子量を有する化合物を2種用い、
上記液状難燃剤がリン系難燃剤であり、
上記金属水酸化物粉末の平均粒径が10〜100μmであり、
上記気液混合物の形成に用いる上記気体の使用量は、該気体及び上記フォーム原料の合計を100体積%とした場合に、77〜86体積%であり、
上記フォーム層の密度が100〜280kg/mであり、且つ、
上記ポリウレタンフォーム積層体を、温度70℃で、50%圧縮したときの圧縮残留歪が10.0%以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
.上記1乃至のうちのいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム積層体を用いてなることを特徴とするガスケット。
10.厚さが0.4〜1.5mmである上記に記載のガスケット。
本発明のポリウレタンフォーム積層体によれば、難燃剤として、それぞれ所定量の金属水酸化物粉末と、液状難燃剤とを含有するため、難燃剤がブリードアウトすることがなく、柔軟であり、且つ、傷が付き難く、外観性に優れるフォーム層と、樹脂フィルム層とを備える。そして、全体として、柔軟性に優れ、高温雰囲気等の苛酷な環境下で使用される機器、発熱性を有する機器等に配設される、難燃性に優れたガスケット等のシール材として好適である。
上記液状難燃剤がリン系難燃剤であるので、このリン系難燃剤と金属水酸化物粉末との組み合わせにより、難燃剤がフォーム層の表面にブリードアウトすることがなく、所定の密度を有し且つ柔軟なフォーム層を備え、難燃性に優れる。
上記樹脂フィルム層がポリエチレンテレフタレートを含み、該樹脂フィルム層の厚さが25〜125μmである場合には、ポリウレタンフォーム積層体は、形状安定性に優れる。そして、このポリウレタンフォーム積層体を、ガスケットとして用いると、機器の筐体等を構成する2つの部材の周縁部における封止を、完全なものとすることができる。即ち、上記周縁部と、上記樹脂フィルム層との密着性に優れる。
上記フォーム層の平均セル径が50〜300μmである場合には、フォーム層における圧縮残留歪が小さく、ガスケットとして用いたときに、長期にわたって優れたシール性等が得られる。
また、上記フォーム層が、樹脂フィルム層に積層された面とは反対側の面にスキン層を有する場合には、機器の筐体等を構成する2つの部材の周縁部における封止を、完全なものとすることができる。即ち、樹脂フィルム層側における密着性と同様に、フォーム層側も上記周縁部に密着させることができるので、携帯電話機等の筐体等のガスケット等として用いたときに、より優れたシール性等が得られる。
本発明のポリウレタンフォーム積層体における40%圧縮時荷重が、0.002〜0.02MPaである場合には、十分に柔軟である。そして、このポリウレタンフォーム積層体に対して、打ち抜き型により打ち抜く等の加工により、携帯電話機等の筐体等のガスケット等を作製する際に、フォーム層が傷付いたり、加工部の周縁等において欠けたりすることがない。また、本発明のポリウレタンフォーム積層体を、ガスケット等として用いたときに、優れたシール性等が得られる。
また、本発明のポリウレタンフォーム積層体において、温度70℃、50%圧縮時の圧縮残留歪が10.0%以下であるので、携帯電話機等の筐体等のガスケット等として、特に高温等の苛酷な環境下で用いたときに、優れたシール性等が、より長期にわたって維持される。
上記フォーム層の平均セル径が50〜300μmである場合には、圧縮残留歪が小さい等の優れた物性を有するポリウレタンフォーム積層体とすることができる。
本発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法によれば、難燃剤がブリードアウトすることがなく、セル荒れを生じることがなく、良好な外観を有するフォーム層と、樹脂フィルム層とを備え、難燃性に優れるポリウレタンフォーム積層体を製造することができる。
また、水又は発泡剤を用いて製造された密度が同程度の通常の軟質スラブポリウレタンフォームと比べて、フォーム層の平均セル径を小さくすることができる。
上記フォーム原料に含まれる金属水酸化物粉末の平均粒径が10〜100μmであるので、フォーム原料及び気液混合物が過度に増粘せず、取扱いが容易である。また、このフォーム原料と、気体とを用いて、気液混合物を生成させる際に、両者の混合が容易であり、金属水酸化物粉末の沈降を抑制しつつ、均質な気液混合物を効率よく調製することができる。
上記樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートを含む場合には、この樹脂フィルムが十分な強度、耐熱性等を有するため、気液混合物の加熱の際には、容易に伸長することもなく、フォーム層及び樹脂フィルム層の密着性に優れたポリウレタンフォーム積層体を安定して製造することができる。
本発明のガスケットによれば、難燃性、柔軟性及びシール性に優れ、フォーム層に傷が付き難く、携帯電話機等の筐体部材の間等に配設する際の作業も容易である。また、携帯電話機等は、薄型化の傾向にあり、従来のガスケットを用いて、機器を完成させると、筐体部材が反ってしまうことがある。しかし、本発明のガスケットを用いると、反りが発生することがなく、優れたシール性を有する機器が得られる。
また、ガスケットの厚さが0.4〜1.5mmである場合には、携帯電話機等の小型機器における筐体部材の間等に配設する際の作業が容易である。また、その配設に際して、ガスケットを過度に圧縮する必要もない。そのため、優れたシール性等が、長期にわたって維持される。
本発明のポリウレタンフォーム積層体の製造工程を説明するための模式図である。 フォーム層と樹脂フィルム層とからなるガスケットの一例の斜視図である。
11;オークスミキサ、12;ロールコーター、13;加熱炉、2;ポリウレタンフォーム積層体、21;フォーム層、21a;気液混合物、21b;未硬化層、22;樹脂フィルム層、22a樹脂フィルム、3;離型紙又は離型処理がなされた樹脂フィルム、10;ガスケット、101;フォーム層、102;樹脂フィルム層。
以下、本発明を詳しく説明する。
1.ポリウレタンフォーム積層体及びその製造方法
本発明のポリウレタンフォーム積層体は、ポリイソシアネート、ポリオール及び難燃剤を含有するフォーム原料と、気体とを混合し、気液混合物を生成させ、その後、得られた気液混合物を樹脂フィルム上に供給し、次いで、この気液混合物を加熱し、フォーム原料を反応させて得られた、樹脂フィルムからなる樹脂フィルム層と、生成したポリウレタンフォームからなるフォーム層とを有する積層体である。そして、上記フォーム原料に含まれる難燃剤は、平均粒径が10〜100μmである金属水酸化物及びリン系難燃剤からなる液状難燃剤を含み、その含有量は、ポリオールを100質量部とした場合に、それぞれ、20〜60質量部及び5〜20質量部であり、上記ポリオールは、平均分子量が400〜5000の範囲にあり、且つ、互いに異なる平均分子量を有する化合物を2種用い、上記気液混合物の形成に用いる上記気体の使用量は、該気体及び上記フォーム原料の合計を100体積%とした場合に、7786体積%である。また、形成されるフォーム層の密度は100〜280kg/mであり、且つ、ポリウレタンフォーム積層体を、温度70℃で、50%圧縮したときの圧縮残留歪が10.0%以下である。
1−1.フォーム原料
上記フォーム原料は、ポリイソシアネート、ポリオール及び難燃剤を含有する組成物であり、必要に応じて、後述する他の成分を含む。
上記ポリイソシアネートは、特に限定されず、従来、ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリイソシアネートを用いることができる。このポリイソシアネートとしては、通常、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗MDI、トリレンジイソシアネート等が用いられる。これらの他、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化MDI、イソホロンジイソシアネート等の芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネート、プレポリマー型のポリイソシアネート等を用いることもできる。上記ポリイソシアネートは、2種以上を併用することもあるが、1種のみを用いることが多い。
ポリイソシアネートは、イソシアネートインデックスが、好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1となるように配合される。
上記ポリオールは、特に限定されず、従来、ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオールを用いることができる。このポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを共重合させたポリエーテルエステルポリオール等を用いることができる。また、十分な引張強度等を有するフォーム層とすること等を目的として、ポリマーポリオールを併用することもできる。このポリマーポリオールは、例えば、ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物を、固形分換算で、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜30質量%、グラフト重合させたポリオールである。
上記ポリオールの平均分子量は、400〜5000、より好ましくは800〜4000である。
上記難燃剤としては、金属水酸化物粉末と、液状難燃剤とを併用する。
上記金属水酸化物粉末としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等からなる粉末が挙げられる。金属水酸化物粉末は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。これらのうちでは、ヒドロキシル基を3個有し、分解点が200℃程度と低い水酸化アルミニウムの粉末が好ましい。この水酸化アルミニウム粉末を用いると、液状難燃剤との併用により、特に優れた難燃性を付与することができる。
更に、金属水酸化物粉末の平均粒径は、10〜100μm、特に好ましくは25〜75μmである。金属水酸化物粉末の平均粒径が10〜100μmであると、フォーム原料及び気液混合物が過度に増粘せず、取扱いが容易である。また、このフォーム原料と、気体とを用いて、気液混合物を生成させるときに、両者の混合が容易であり、金属水酸化物粉末の沈降を抑制しつつ、均質な気液混合物を効率よく調製することができる。尚、上記平均粒径は、粒度分布測定装置により測定された値である。
また、上記液状難燃剤は、リン系難燃剤であり、好ましくは、25℃で液体の難燃剤である。この液状難燃剤を用いると、フォーム原料の粘度を低下させることができる。そして、フォーム原料及び気体の混合効率が向上し、均質な気液混合物とすることができる。その結果、難燃剤の分散性に優れた、均質なフォーム層を形成することができる。
上記リン系難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤、ポリリン酸系難燃剤等の有機リン化合物が挙げられる。これらのうち、リン酸エステル系難燃剤が好ましい。尚、これらの有機リン化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リン酸エステル系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート等が挙げられる。
上記2種の難燃剤を、特定の含有量としたフォーム原料を用いることにより、難燃性に優れたフォーム層を備えるポリウレタンフォーム積層体とすることができる。
上記フォーム原料に含まれる金属水酸化物粉末の含有量は、ポリオールを100質量部とした場合に、20〜60質量部であり、好ましくは30〜60質量部、特に好ましくは30〜50質量部である。金属水酸化物粉末の含有量が20〜60質量部であると、フォーム原料及び気液混合物が過度に増粘しないため、セル荒れ等の抑制されたフォーム層を形成することができる。この金属水酸化物粉末の含有量は、通常、ポリウレタンフォーム積層体の圧縮時荷重及び圧縮残留歪等の物性を勘案しながら、設定される。
また、上記フォーム原料に含まれる液状難燃剤の含有量は、ポリオールを100質量部とした場合に、5〜20質量部であり、好ましくは7〜18質量部、特に好ましくは10〜15質量部である。液状難燃剤の含有量が5〜20質量部であると、フォーム原料及び気液混合物の増粘が十分に抑えられ、液状難燃剤がブリードアウトすることのないフォーム層を形成することができる。また、難燃性及び柔軟性等も高く維持することができる。この液状難燃剤の含有量は、通常、ポリウレタンフォーム積層体の圧縮時荷重及び圧縮残留歪等の物性を勘案しながら、設定される。
上記フォーム原料には、ポリイソシアネート、ポリオール及び難燃剤の他、触媒、整泡剤、架橋剤等が含有される。
上記触媒としては、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物、ニッケルアセチルアセトエート、ニッケルジアセチルアセトエート等の有機ニッケル化合物、鉄アセチルアセトエート等の有機鉄化合物、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、フェノキシド等の金属触媒、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等の3級アミン系触媒、有機酸塩等が挙げられる。これらのうち、有機錫化合物が好ましい。尚、触媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
上記フォーム原料に含まれる触媒の含有量は、その種類、フォーム層の形成条件等にもよるが、ポリオールを100質量部とした場合に、好ましくは0.05〜2.0質量部、特に好ましくは0.05〜1.0質量部である。
上記整泡剤としては、通常、シリコーン系整泡剤が用いられる。このシリコーン系整泡剤としては、ジメチルシロキサン系化合物、ポリエーテルジメチルシロキサン系化合物、フェニルメチルシロキサン系化合物等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。また、これらの化合物は、有機官能基を有する化合物であってもよい。本発明においては、ポリエーテルジメチルシロキサン系化合物が好ましく、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体が特に好ましく用いられる。
上記フォーム原料に含まれる整泡剤の含有量は、その種類、所望のフォーム物性等にもよるが、ポリオールを100質量部とした場合に、好ましくは2.0〜10質量部、特に好ましくは3.0〜8.0質量部である。
上記架橋剤としては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等を開始剤として、ε−カプロラクトンで鎖延長したエステル系オリゴマー、分子量400〜700程度の3官能ポリエーテルポリオール等の分子量の高い架橋剤や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の短鎖ジオール系の架橋剤が挙げられる。高分子量の架橋剤を用いた場合、より硬度の低いフォームとすることができる。また、短鎖ジオール系の架橋剤を用いた場合、ハードセグメントの割合が高くなる傾向があるため、この点を考慮して配合量を設定することが好ましい。架橋剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
上記フォーム原料に含まれる架橋剤の含有量は、その種類、所望のフォーム物性等にもよるが、ポリオールを100質量部とした場合に、好ましくは1.0〜10質量部、特に好ましくは2.0〜5.0質量部である。
上記フォーム原料には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機及び無機充填剤、着色剤等の、ポリウレタンフォームの製造において一般に用いられる添加剤を適量配合することができる。
1−2.ポリウレタンフォーム積層体の製造方法
本発明のポリウレタンフォーム積層体の製造用原料は、上記構成を有するフォーム原料及び気体を含む気液混合物、並びに、樹脂フィルムである。
上記フォーム原料と混合される気体は、特に限定されず、窒素ガス、不活性ガス、乾燥空気等を用いることができる。これらのうち、窒素ガスが好ましい。
本発明では、上記フォーム原料と、気体とを、混合機11を用いて、攪拌等して、気液混合物21aとする。その後、この気液混合物21aを樹脂フィルム22a上に塗布するように供給し、次いで、流延する気液混合物21aの表面に、その上方側から、離型紙(又は離型用処理がなされた樹脂フィルム)3を供給する。そして、この積層状態のまま、ロールコーター12等を通過させることにより、気液混合物21aからなる未硬化層21bの厚さを調整する。尚、離型紙3の使用の有無は、問わないが、この離型紙3を用いると、未硬化層21bの厚さの調整が容易であり、熱処理後に得られるフォーム層21の表面(離型紙3側)にスキン層を形成することができる。これらの工程により、未硬化層21bの一面側(下面)に樹脂フィルム22a(樹脂フィルム層22となる。)を有し、他面側(上面)に離型紙3が積層された3層型の積層物を得る。
その後、この積層物を、熱処理装置により加熱する。これにより、フォーム原料を反応させ、未硬化層21bを硬化させてフォーム層21が形成されたポリウレタンフォーム積層体2を得ることができる。このポリウレタンフォーム積層体2において、フォーム層21及び樹脂フィルム層22は、強固に接合されている。得られたポリウレタンフォーム積層体2は、3層構造のまま、紙管等に巻き取ってロール体としてもよいし、図1に示すように、離型紙3を剥離した後、2層型積層体として巻き取ってロール体としてもよい。また、製造ライン上で所定の大きさに切断し、シートとすることもできる。次いで、このシートを積み重ね、これを梱包してもよい。この場合も、3層のまま積み重ねてよいし、2層型積層体として積み重ねてもよい。
以下、ポリウレタンフォーム積層体の製造方法を、具体的に説明する。
上記のように、ポリウレタンフォーム積層体の製造用原料は、フォーム原料及び気体を用いて得られた気液混合物21a、並びに、樹脂フィルム22aである。
上記フォーム原料の調製方法は、特に限定されないが、好ましくは、ポリイソシアネートと、ポリイソシアネートを含まず、ポリオール、難燃剤、触媒等を含有する混合物(以下、「第1混合物」という。)とを混合する方法である。尚、必要に応じて配合される添加剤は、通常、第1混合物に含まれる。
上記気液混合物21aの調製方法は、特に限定されず、フォーム原料及び気体の体積割合が、両者の合計100体積%としたときに、それぞれ、好ましくは1423体積%及び7786体積%となるように、フォーム原料及び気体が混合される。この混合割合により、上記特定の密度を有するフォーム層の形成に好適な気液混合物21aを調製することができる。また、フォーム原料と気体との混合に用いる混合機11は、特に限定されないが、好ましくは、オークスミキサ、ホバートミキサ等が用いられる。これらの混合機11により、フォーム原料と気体とを均一に混合することができ、泡化の制御が容易であり、泡化された気液混合物21aを、より均質なものとして生成させることができる。
尚、フォーム原料及び気体を混合する方法は、好ましくは、混合用のチャンバー等に、予め、収容されたフォーム原料に、気体を吹き込む方法、及び、このチャンバーに、フォーム原料及び気体を同時に供給する方法である。これらの場合、フォーム原料は、このチャンバーに、ポリイソシアネートと、上記第1混合物とを、別々に、供給してもよい。
上記気液混合物を用いたフォーム層は、好ましくはメカニカルフロス法により形成される。この方法によれば、使用する気液混合物の体積、及び、得られるポリウレタンフォームの体積を、ほぼ同一とすることができる。従って、ポリウレタンフォームの密度は、気液混合物の組成、即ち、上記フォーム原料に対する気体の導入量により調整することができる。
フォームの密度を所定の値とするために、気液混合物の形成に用いる気体の混合量は、以下のようにして決定することができる。
まず、所定質量のフォーム原料に含まれる各成分の密度(真比重)の加重平均を求め、これを、フォーム原料全体の密度(ρ)とする。そして、用いるフォーム原料の質量を上記密度(ρ)で除することにより、フォーム原料の総体積を算出する。
次に、フォーム原料の総体積と、目標とするフォームの密度(目標密度)とから、フォーム原料に導入する気体の体積量を求めることができる。これを実際の製造に利用し、所望の密度を有するポリウレタンフォーム層とすることができる。
上記樹脂フィルム22aは、フォーム層形成時の変形、変質等を引き起こすものでなければ、特に限定されない。また、フォーム層を支持するための支持材としての引張強度、引裂強度、耐熱性等を有するものが好ましい。この樹脂フィルム22aとしては、通常、合成樹脂製のフィルムが用いられる。合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらのうち、強度、耐熱性等の観点で、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。また、これらの樹脂を含む樹脂フィルムを有する本発明のポリウレタンフォーム積層体を、2つの部材を封止するガスケットとして用いた場合に、優れた密着性及びシール性を得ることができる。本発明において、上記樹脂フィルム22aは、ポリエステル樹脂がより好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
上記樹脂フィルム22aの厚さ(ポリウレタンフォーム積層体を構成する樹脂フィルム層22の厚さである。)も特に限定されない。好ましい厚さは25μm以上であり、より好ましくは25〜125μm、更に好ましくは25〜100μm、特に好ましくは30〜70μmである。この厚さが25μm以上であると、図1に示すような、連続的な製造を進める場合に、フォーム層11の成形方向への引張応力にも十分に耐え、ポリウレタンフォーム積層体の安定な製造が可能となる。また、上記樹脂フィルム22aがポリエチレンテレフタレートであり、且つ、その厚さが25〜125μmであると、形状安定性に優れる。更に、この構成のポリウレタンフォーム積層体を、ガスケットとして用いると、過度に剛直になることがなく、携帯電話機等の筐体部材間に介在させるときの作業が容易であり、優れたシール性等が得られる。
上記気液混合物21aは、上記樹脂フィルム22aの表面に供給され、その後、流延する気液混合物21aの表面に、その上方側から、離型紙3が供給され、積層物とする。次いで、この3層型の積層物を、所定の温度に設定された熱処理装置13により加熱し、未硬化層21bに含まれるフォーム原料を反応させて、フォーム層21を形成する。
上記3層型積層物の加熱方法は、特に限定されず、熱処理装置13の種類等により、適宜、選択される。
加熱温度は、未硬化層21bに含まれるフォーム原料を硬化させるために、ポリオール及びポリイソシアネートの種類等に応じて、適宜、選択される。この加熱温度は、好ましくは120℃〜200℃、好ましくは140℃〜180℃、特に好ましくは150℃〜170℃である。
また、加熱時間は、好ましくは1〜10分間、より好ましくは1〜5分間である。
上記熱処理装置13としては、加熱炉、遠赤外線照射装置等が挙げられる。加熱炉を用いる場合には、装置内に固定された熱源を利用して、3層型積層物を静止又は移動させつつ、熱処理することができる。このとき、熱風を供給してもよい。尚、ポリウレタンフォーム積層体を連続的に製造する場合には、3層型積層物を、加熱炉の中で移動させつつ、加熱することが好ましい。
上記3層型積層物に対する加熱は、樹脂フィルム側及び離型紙側、のいずれか一方の側、又は、両側から行うことができる。本発明においては、その全体を均一に加熱し、より均質なフォーム層21を効率よく形成するために、3層型積層物の両側から加熱することが好ましい。
本発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法を、図1に示す製造システムとした場合には、気液混合物21aの調製、気液混合物21aの樹脂フィルム22a上への供給、及び、未硬化層21bの上面への離型紙等の供給、ロールコーター等による厚さ調整、並びに、3層型積層物の加熱を、連続的に進めて、ポリウレタンフォーム積層体を連続的に製造することができる。即ち、混合機11で調製された気液混合物21aは、連続的に送出され、移動する樹脂フィルム22a上に、所定の供給速度で連続的に供給され、流延する気液混合物21aの表面には、離型紙3が樹脂フィルム22aと同じ速度で供給され、ロールコーター12により厚さが調整される。その後、3層型積層物は、ロールコーター12に近接して配置された熱処理装置13、例えば、加熱炉に導入される。加熱炉を用いる場合、通常、3層型積層物を、その一方の開口部から導入し、樹脂フィルム22aと同じ又はそれに近い移動速度で、加熱炉内を移動させ、他方の開口部から導出させればよい。これにより、離型紙3を有するポリウレタンフォーム積層体が製造される。この後、必要に応じて、離型紙3を取り除いて、フォーム層21及び樹脂フィルム層22とからなるポリウレタンフォーム積層体とすることができる。
尚、本発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法においては、樹脂フィルム層22の両面にフォーム層21を形成することができる。その方法としては、フォーム層21を片面ずつ形成する方法、及び、樹脂フィルム22aの両面に未硬化層21bを形成した後、同時に加熱して、同時にフォーム層21を形成する方法である。
本発明のポリウレタンフォーム積層体は、上記のように、フォーム原料に、水及び発泡剤を配合しない、メカニカルフロス法により製造することができる。また、フォーム原料に、水及び/又は発泡剤を配合する、所謂、ケミカルフロス法により製造することもできる。この場合、水としては、イオン交換水、水道水、蒸留水等を用いることができる。水の使用量は、特に限定されないが、ポリオールを100質量部とした場合に、通常、0.1〜0.5質量部、特に好ましくは0.2〜0.4質量部である。更に、発泡剤は、特に限定されず、炭化水素、代替フロン等を用いることができる。この発泡剤の使用量もまた、特に限定されない。このように、メカニカルフロス法に代えて、水及び/又は発泡剤が配合されたフォーム原料を用いるケミカルフロス法である場合も、気液混合物の起泡状態が安定して維持され、セル荒れ等を生じることもなく、所望の密度及び厚さを有するフォーム層を容易に形成することができる。その結果、優れた物性を備えるフォーム層を備えるポリウレタンフォーム積層体とすることができる。
1−3.ポリウレタンフォーム積層体の物性
本発明のポリウレタンフォーム積層体は、上記の方法により製造された、フォーム層21及び樹脂フィルム層22の接合物である。上記フォーム層の密度は、100〜280kg/mであり、好ましくは120〜260kg/m、特に好ましくは150〜240kg/mである。
上記フォーム層の密度は、積層体の質量から樹脂フィルム層の質量を差し引いた質量を、フォーム層の体積で除して算出することができる。尚、フォーム層の体積は、次のようにして算出することができる。即ち、積層体を、例えば、長方形に切り出して、試験片を作製し、この試験片の縦横の寸法をノギス等で測定する。そして、試験片の全厚さをダイヤル厚さ計等で測定した後、樹脂フィルム層の厚さを差し引くことでフォーム層の厚さを得る。そして、上記縦横の寸法と、フォーム層の厚さとからフォーム層の体積が算出される。
従来、難燃剤として、金属水酸化物粉末のみを配合し、密度が、例えば、280kg/m以下の、低密度のフォーム層を形成した場合には、セル荒れ等が生じてしまい、実用に供することができるポリウレタンフォーム積層体とすることができなかった。しかしながら、本発明の製造方法によれば、金属水酸化物及び液状難燃剤を併用することにより、上記特定の密度を有し、セル荒れ等の不具合が抑制された、柔軟なフォーム層とすることができ、且つ、難燃性に優れたポリウレタンフォーム積層体とすることができる。
また、フォーム層を形成しているポリウレタン樹脂部には、難燃剤として、金属水酸化物粉末及び液状難燃剤が含まれているが、これらは、ブリードアウトすることなく、保持されている。また、後述する用途等において、圧縮等の負荷を受けた場合にも、同様である。金属水酸化物粉末及び液状難燃剤の含有量は、ポリウレタン100質量部に対して、それぞれ、好ましくは20〜60質量部及び5〜20質量部、より好ましくは20〜40質量部及び5〜10質量部である。
上記本発明の方法により製造されたポリウレタンフォーム積層体においては、従来、公知の化学発泡法により製造された軟質スラブポリウレタンフォームと比べて、セル径の小さいフォーム層を備えることができる。即ち、上記フォーム層における平均セル径は、好ましくは50〜350μm、特に好ましくは50〜250μmである。フォーム層のセル径が上記範囲にあると、圧縮残留歪が小さい等の優れた物性を有するポリウレタンフォーム積層体とすることができる。圧縮残留歪の小さいポリウレタンフォーム積層体を、2つの部材を封止するガスケットとして用いたときに、ポリウレタンフォーム積層体における樹脂フィルム層側表面及びフォーム層側表面の両方を、2つの部材に十分に密着させることができ、優れたシール性等を得ることができる。
上記平均セル径は、フォーム層の断面を、走査型電子顕微鏡により倍率200倍で観察し、セル径の合計を、セルの個数で除して算出することができる。
上記フォーム層の厚さは、目的、用途等により、適宜、選択されるが、通常、0.4〜1.5mmである。
また、本発明のポリウレタンフォーム積層体の厚さは、特に限定されないが、通常、0.5〜1.8mm、特に好ましくは0.5〜1.0mmである。
本発明のポリウレタンフォーム積層体は、上記のように、樹脂フィルム層の両面にフォーム層を備える積層体とすることができる。この場合、2つのフォーム層における、密度、平均セル径及び厚さは、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
また、本発明のポリウレタンフォーム積層体におけるフォーム層の露出面(樹脂フィルム層に積層された面とは反対側の面)には、スキン層が形成されていることが好ましい。このスキン層を有するポリウレタンフォーム積層体を、ガスケットとして用いる場合には、機器の筐体等を構成する2つの部材の周縁部における封止を、完全なものとすることができる。上記スキン層は、フォーム層の断面を電子顕微鏡等で観察することにより確認することができる。
本発明のポリウレタンフォーム積層体の40%圧縮時荷重は、好ましくは0.002〜0.02MPa、特に好ましくは0.005〜0.015MPaである。この40%圧縮時荷重は、JIS K 6254に準拠して測定された40%CLDである。
また、ポリウレタンフォーム積層体において、温度70℃で、50%圧縮させたときの圧縮残留歪は、10.0%以下、特に好ましくは6.0%以下である。尚、下限は、通常、0.3%である。この圧縮残留歪は、JIS K 6401に準拠して測定することができる。
2.ポリウレタンフォーム積層体の用途
本発明のポリウレタンフォーム積層体は、ガスケット等の用途において有用なポリウレタンフォーム積層体である。
本発明のガスケットは、目的、用途等による形状とすることができる。例えば、図2に示すガスケット100は、本発明のポリウレタンフォーム積層体を加工して得られたものであり、樹脂フィルム層102と、この樹脂フィルム層102の表面に接合されたフォーム層101とを備える環状のガスケットであり、フォーム層101の表面(図2では上面)に、好ましくはスキン層を有している。このように、ガスケット100の一面側が樹脂フィルム層102により構成され、他面側にスキン層を有するフォーム層101が形成されたガスケット100を、機器の筐体等を構成する2つの部材の周縁部における封止に用いた場合には、2つの部材の間から、塵埃が侵入することを抑制することができる。即ち、ガスケット100の両面側(フォーム層101の側、及び、樹脂フィルム層102の側)において十分に防止される。
本発明のガスケットの形状は、図2に示すような、本体部分より大きな開口部を有するものに限定されるものではなく、例えば、所定形状のシート(ポリウレタンフォーム積層体)に対して、小面積の開口部を有するものであってもよい。
上記ガスケットの厚さは、特に限定されないが、通常、0.4〜1.5mm、特に好ましくは1.0〜1.5mmである。ガスケットの厚さが0.4〜1.5mmであると、ポリウレタンフォーム積層体の柔軟性を生かしつつ、優れたシール性が得られる。
図2に示すような環状構造を有するガスケット100を得る方法は、特に限定されず、打ち抜き型を用いて打ち抜く方法、裁断機により連続的に切り出す方法等が挙げられる。これらのうち、打ち抜き法が好ましい。また、上記のように、フォーム層101は低密度であり、且つ柔軟性に優れるため、打ち抜き等の際に、フォーム層101が傷付いたり、加工部における周縁等において欠けたりすることがない。
本発明のガスケットは、電子機器の筐体部材間に介在させて用いることができる。この電子機器は、特に限定されず、携帯電話機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯型コンピュータ、携帯型音楽機器、携帯型ゲーム機、ナビゲーション装置等の携帯型電子機器等が挙げられる。これらの電子機器のうちでは、特に多くの人が所有し、且つ外出時に持ち歩くことが多く、衣服等の繊維と接触し易い携帯電話機に、本発明のガスケットを使用することが好ましい。
電子機器の筐体は、通常、対向する複数の筐体部材により構成されており、筐体部材間にはガスケットが介在しているが、近年、電子機器の小型化、高性能化に伴って、介在させるときの作業が容易であり、筐体部材にガスケットを嵌め込むための溝を必要とせず、且つ優れたシール性を有するガスケットが必要とされている。また、筐体部材が薄肉化されており、従来と同様に部材どうしを締結させた場合、筐体部材が反ってしまうことがあるため、十分な柔軟性を有するガスケットが必要とされている。このような状況下、本発明のガスケットは、低密度であり、且つ十分に柔軟であって、電子機器の小型化、特に薄型化に対応するという面でも有利である。
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。尚、下記において、「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
ポリウレタンフォーム積層体の製造に用いた原料は、以下のとおりである。
(1)ポリエーテルポリオールA
三洋化成社製「GP−3000」(商品名)を用いた。
(2)ポリエーテルポリオールB
三洋化成社製「GP−600」(商品名)を用いた。
(3)触媒
城北化学社製スタナスオクトエートを用いた。
(4)整泡剤
モメンティヴ社製シリコーン系整泡剤「L−5617」(商品名)を用いた。この製品は、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体である。
(5)金属水酸化物粉末
昭和電工社製水酸化アルミニウム粉末「ハイジライト H−10」(商品名)を用いた。
(6)リン系難燃剤
大八化学工業社製脂肪族縮合リン酸エステル「DAIGUARD880」(商品名)を用いた。この製品は、25℃において淡黄色の透明液体である。
(7)ポリイソシアネート
日本ポリウレタン社製粗MDI「C−1130」(商品名)を用いた。イソシアネート基の含有量は31%である。
(8)樹脂フィルム
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
実施例1〜並びに比較例1〜8及び10〜13
ポリエーテルポリオール100部(ポリエーテルポリオールAとBとを90/10の質量比で用いた。)、触媒0.1部、整泡剤5部、並びに表1〜表4に記載の配合量の金属水酸化物粉末及びリン系難燃剤を、混合、攪拌し、第1混合物を調製した。
その後、この第1混合物と、イソシアネートインデックスが0.9〜1.1となる配合量のポリイソシアネートとを、オークスミキサに配設されたチャンバーに投入した。そして、同時に、表1〜表4に記載したフォーム層の目標密度となるように、表1〜表4に記載した、所定の体積割合となる量の窒素ガスを注入した。
次いで、チャンバーにおいて、上記成分を撹拌、混合し、泡化された気液混合物を調製した。そして、この気液混合物を、5m/分の速度で送出されている樹脂フィルム上に供給し、流延する気液混合物の表面に、その上方側から、樹脂フィルムと同じ速度で離型紙を供給し、ロールコーターにより、所定厚さに調整し、気液混合物からなる未硬化層を形成した(図1参照)。
その後、樹脂フィルム、未硬化層及び離型紙からなる3層の積層物を、遠赤外線ヒータにより160℃に調温されている加熱炉に導入して加熱した(加熱炉の長さは5mであり、加熱時間は1分間となる。)。次いで、積層体から離型紙を剥離し、樹脂フィルムと、フォーム層とが接合されてなるポリウレタンフォーム積層体を紙管に巻き取った。ポリウレタンフォーム積層体の厚さは、ダイヤル厚み計により測定した(表1〜表4)。
比較例9
ポリエーテルポリオールとして、ポリエーテルポリオールAのみを100部用いた以外は、上記と同様にして、ポリウレタンフォーム積層体を得た(表)。
上記のようにして製造したポリウレタンフォーム積層体から試験片を切り出し、フォーム層の密度、平均セル径、40%圧縮時荷重及び圧縮残留歪を測定し、フォーム層の外観、ブリードの有無、スクラッチの有無及び難燃性を評価した。その結果を表1〜表4に示す。
(1)フォーム層の密度
得られたポリウレタンフォーム積層体を、正方形状(50mm×50mm)に切り出して、試験片を作製し、この試験片の縦横の寸法をノギスで正確に測定した。そして、各表に示した積層体の厚さから、樹脂フィルムの厚さを差し引くことで、フォーム層の厚さを得た。その後、上記縦横の寸法と、フォーム層の厚さとを用いて、フォーム層の体積を算出する。次いで、試験片の質量から、樹脂フィルム層の質量を差し引いて得られた質量を、上記フォームの体積で除して、フォーム層の密度を得た。
(2)平均セル径
得られたポリウレタンフォーム積層体におけるフォーム層の断面を、走査型電子顕微鏡により倍率200倍で観察し、画像中の50個の発泡セルについて、大きさを測定した。そして、これらのセル径の合計を、セルの個数で除して、平均セル径を得た。
(3)40%圧縮時荷重
JIS K 6254に準拠して測定した。具体的には、ポリウレタンフォーム積層体に対して、打ち抜き加工を行い、直径50mmの円形試験片を得た。そして、この試験片と同径の圧縮治具を、試験片に同心円状に接触させ、圧縮試験機を使用し、温度23℃において、1mm/分の速度で40%圧縮させ(圧縮前の60%の厚さになる。)、そのときの荷重を測定した。得られた荷重から、40%圧縮時荷重(単位:MPa)を、下記式により算出した。
40%圧縮時荷重=[40%圧縮時の荷重(N)/試験片の面積(mm)]
(4)圧縮残留歪
JIS K 6401に準拠して測定した。具体的には、ポリウレタンフォーム積層体に対して、打ち抜き加工を行い、50mm×50mmの試験片を得た。そして、この試験片を、圧縮試験機を使用し、温度70℃において、50%圧縮させ、このまま22時間放置した。その後、圧縮を開放して、23℃で30分間放置した後、試験片の厚さを測定した。圧縮試験の前後の厚さを用いて、圧縮残留歪を、下記式により算出した。
圧縮残留歪(%)=[(圧縮前の厚さ−開放後の厚さ)/圧縮前の厚さ]×100
(5)フォーム層の外観
ポリウレタンフォーム積層体のフォーム層の表面を、光学顕微鏡により観察し、10cm四方に存在する径(最大寸法)700μm以上の大径セルの個数を計数し、フォーム層の外観を評価した。表における「良好」は、大径セルが20個未満であることを、「セル荒れ」は、大径セルが20個以上観察されたことを、意味する。
(6)ブリードの有無
ポリウレタンフォーム積層体に対して、切削加工を行い、50mm×50mmの試験片を得た。そして、この試験片のフォーム層の表面に、銅箔(60mm×60mm×0.1mm)を載置した後、圧縮試験機を使用し、温度70℃において、50%圧縮して、このまま168時間放置した。次いで、圧縮を開放し、剥離した銅箔の表面(フォーム層との接触面)を目視により観察して、リン系難燃剤のブリード性を評価した。表における「無」は、銅箔表面に異物が観察されず、ブリードアウトしていないことを、「有」は、銅箔表面に異物が観察され、ブリードアウトしていることを、意味する。
(7)スクラッチの有無
ポリウレタンフォーム積層体に対して、切削加工を行い、直径50mmの円形の試験片を得た。そして、この試験片のフォーム層を上方に向けて、試験装置の円盤形の載置台の上面の中央部に載置した。その後、上方から直径50mmのステンレス鋼製の押圧体を試験片と同心円状になるように接触させ、押圧体に1.2kgの荷重を加えた。次いで、載置台を、試験片とともに43回転/分の速度で回転させ(試験片の外縁部の任意の位置に付された目印が回転に伴って移動する速度は50mm/分になる。)、10回転させた時点で回転を停止した。そして、試験片のフォーム層を目視で観察し、スクラッチ性を評価した。表における「○」は、フォーム層表面に傷が観察されなかったことを、「△」は、最大寸法5mm未満の傷が観察されたことを、「×」は、最大寸法5mm以上の傷が観察されたことを、意味する。
(8)難燃性
UL94に規定される難燃基準であるHBF規格に合格するか否かで難燃性を評価した。表における「○」は、HBF規格に合格したことを、「×」は、HBF規格に合格しなかったことを意味する。
Figure 0005479174
Figure 0005479174
Figure 0005479174
Figure 0005479174
表1〜表から明らかなように、ポリオールの含有量に対して、所定量の金属水酸化物粉末とリン系難燃剤とを含有するフォーム原料を用いて形成された、所定の密度範囲のフォーム層を有する実施例1〜のポリウレタンフォーム積層体では、40%圧縮時荷重が十分に小さく、且つ圧縮残留歪も小さいことが分かる。また、全ての実施例でフォーム層の外観は良好であり、リン系難燃剤のブリードアウトもなく優れている。更に、スクラッチの有無では、フォーム層の密度がより低い一部の実施例で少数のスクラッチが観察されるが、特に大きな問題ではなく、ガスケット等の用途で十分に使用し得るポリウレタンフォーム積層体であることが分かる。更に、全ての実施例でHBF規格に合格しており、優れた難燃性を有していることが分かる。
一方、表から明らかなように、フォーム層の密度が好ましい範囲内であっても、リン系難燃剤が含有されていない比較例1では、セル荒れ及びスクラッチが発生した。また、金属水酸化物粉末が含有されていない比較例2では、難燃性が不合格であった。また、金属水酸化物粉末が含有されていない比較例2及び比較例3では、圧縮残留歪が著しく大きくなった。更に、所定量の金属水酸化物粉末とリン系難燃剤とを含有しているものの、フォーム層の密度が低過ぎる比較例4及び比較例7では、セル荒れ及びスクラッチが発生した。また、比較例5及び比較例6では、物性面では特に問題はないが、フォーム層の密度が高過ぎたため、特にガスケットの用途において実用に供し得ないポリウレタンフォーム積層体である。
尚、本発明は、上記具体的な実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、フォーム原料に0.2〜0.4部程度(ポリオールを100部とする。)の水を配合し、所謂、ケミカルフロス法によって同様のポリウレタンフォーム積層体を製造することもできる。
本発明は、水及び塵埃等の侵入を防止する必要のある各種の製品分野において利用することができる。また、近年、薄型化、小型化及び高性能化が著しく、優れた意匠性をも必要とされる各種の電子機器の分野においてより利用価値が高く、携帯電話機、デジタルカメラ、ナビゲーション装置等の多くの人が所有し、且つ持ち歩くことの多い電子機器、特に普及が著しく、常に持ち歩く携帯電話機では特に有用である。

Claims (10)

  1. ポリイソシアネート、ポリオール及び難燃剤を含有するフォーム原料と、気体とを混合して、気液混合物を生成させ、その後、該気液混合物を樹脂フィルム上に供給し、次いで、該気液混合物を加熱し、該フォーム原料を反応させて得られた、該樹脂フィルムからなる樹脂フィルム層と、生成したポリウレタンフォームからなるフォーム層とを有するポリウレタンフォーム積層体において、
    上記フォーム原料に含まれる上記難燃剤は、金属水酸化物粉末と、液状難燃剤とを含み、上記ポリオールを100質量部とした場合に、該金属水酸化物粉末は20〜60質量部であり、該液状難燃剤は5〜20質量部であって、
    上記ポリオールは、平均分子量が400〜5000の範囲にあり、且つ、互いに異なる平均分子量を有する化合物を2種用い、
    上記液状難燃剤がリン系難燃剤であり、
    上記金属水酸化物粉末の平均粒径が10〜100μmであり、
    上記気液混合物の形成に用いる上記気体の使用量は、該気体及び上記フォーム原料の合計を100体積%とした場合に、77〜86体積%であり、
    上記フォーム層の密度が100〜280kg/mであり、且つ、
    上記ポリウレタンフォーム積層体を、温度70℃で、50%圧縮したときの圧縮残留歪が10.0%以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム積層体。
  2. 上記金属水酸化物が水酸化アルミニウムである請求項1に記載のポリウレタンフォーム積層体。
  3. 上記樹脂フィルム層がポリエチレンテレフタレートを含み、該樹脂フィルム層の厚さが25〜125μmである請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム積層体。
  4. 上記フォーム層の平均セル径が50〜300μmである請求項1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
  5. 上記フォーム層が、上記樹脂フィルム層に積層された面とは反対側の面にスキン層を有する請求項1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
  6. 40%圧縮したときの荷重が0.002〜0.02MPaである請求項1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
  7. ガスケット用である請求項1乃至のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体。
  8. ポリイソシアネート、ポリオール及び難燃剤を含有するフォーム原料と、気体とを混合して、気液混合物を生成させ、その後、該気液混合物を樹脂フィルム上に供給し、次いで、該気液混合物を加熱し、該フォーム原料を反応させて、該樹脂フィルムからなる樹脂フィルム層と、該フォーム原料の反応硬化により生成したポリウレタンフォームからなるフォーム層とを有するポリウレタンフォーム積層体を製造する方法において、
    上記フォーム原料に含まれる上記難燃剤は、金属水酸化物粉末と、液状難燃剤とを含み、上記ポリオールを100質量部とした場合に、該金属水酸化物粉末は20〜60質量部であり、該液状難燃剤は5〜20質量部であって、
    上記ポリオールは、平均分子量が400〜5000の範囲にあり、且つ、互いに異なる平均分子量を有する化合物を2種用い、
    上記液状難燃剤がリン系難燃剤であり、
    上記金属水酸化物粉末の平均粒径が10〜100μmであり、
    上記気液混合物の形成に用いる上記気体の使用量は、該気体及び上記フォーム原料の合計を100体積%とした場合に、77〜86体積%であり、
    上記フォーム層の密度が100〜280kg/mであり、且つ、
    上記ポリウレタンフォーム積層体を、温度70℃で、50%圧縮したときの圧縮残留歪が10.0%以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
  9. 請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム積層体を用いてなることを特徴とするガスケット。
  10. 厚さが0.4〜1.5mmである請求項に記載のガスケット。
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