前記把持装置には、大きな把持力が要求されることがある。特に、頑強な処理対象物の破砕を目的とするものは、極めて大きな駆動力を要することから、シリンダ装置として大出力のものを具備する必要がある。その反面、強力な破砕等を目的とした大型の把持装置では、小さな処理対象物を破壊せずに把持することは難しい。かかる強力な把持装置では、操縦者の僅かな操作によっても把持力が大きく変動するので、その操縦によって把持力を微妙に調整するのは困難である。
そして、前記特許文献1の把持装置では、大出力のシリンダ装置を採用することにより強力な破砕を実現できるものの、シリンダ装置の駆動力がそのまま処理対象物に伝達されるため、その把持力の微細な調整を行うことが難しかった。
そこで、大きな把持力による処理対象物の把持と、微細な把持力の調整との両立を図るための把持装置が提案されている。具体的に、この把持装置は、処理対象物を把持するための一対の把持部材と、これら把持部材の先端部を開閉動作させるシリンダ装置と、このシリンダ装置と把持部材との間に設けられたばね部材とを備えている。そして、ばね部材は、把持部材と処理対象物とが接触する前の段階においては伸張状態を維持したままシリンダ装置からの駆動力を把持部材に伝えるとともに、各把持部材が処理対象物に接触した時点(処理対象物を挟持した時点)からは処理対象物から受ける反力により弾性変形して、その弾発力により、処理対象物に対する把持部材の接触圧を増加させるようになっている。したがって、この把持装置では、各把持部材に処理対象物が接触してからばね部材の弾性変形可能な範囲内においては、シリンダ装置からの駆動力にかかわらず、ばね部材の弾発力に応じた把持力で処理対象物を把持することができる一方、ばね部材の弾性変形可能な範囲を超えるとシリンダ装置からの駆動力を各把持部材に直接伝えて大きな把持力を得ることができる。
しかしながら、前記提案された把持装置を用いて処理対象物の把持を行った場合、前記ばね部材の弾性変形可能な範囲を超えた瞬間に、両把持部間の把持力がばね部材による弾発力からシリンダ装置からの駆動力に切り換わるため、当該各把持部材による把持力が急激に増大するという問題があった。したがって、処理対象物を破壊せずに把持しようと考えている操縦者がそれまでの閉じ操作を維持しているにもかかわらず、急激な把持力の増大により処理対象物を破壊してしまうおそれがあった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大きな把持力による処理対象物の把持と、微細な把持力の調整との両立を図りながら、これら把持力の急激な切り換わりを抑制することができる把持駆動装置及びこれを備えた作業機械を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、先端が変位可能な作業腕をもつ作業機械に設けられ、処理対象物を把持するとともにその把持力を制御する把持駆動装置であって、前記作業腕の先端部に設けられた第1把持部材と、前記作業腕の先端部に回動可能に支持され、前記第1把持部材との間で処理対象物を把持するように当該第1把持部材に対して相対的に回動可能な第2把持部材と、伸縮動作を行うことにより、前記処理対象物を把持するように前記第2把持部材を前記第1把持部材に対して相対的に回動させる把持シリンダと、前記第2把持部材と前記把持シリンダとの間に設けられ、前記把持シリンダの駆動に伴い当該把持シリンダからの駆動力を前記第2把持部材に伝えるとともに、前記第2把持部材の回動により接触する前記処理対象物から受ける反力により弾性変形して前記第2把持部材に対する前記把持シリンダの変位を許容し、かつ、その弾発力により、前記処理対象物に対する前記両把持部材の接触圧を増加させるばね部材と、使用者からの操作を受けることにより当該操作量に応じた指令を出力する操作部材と、前記操作部材からの指令に応じて前記把持シリンダを駆動させる駆動部と、前記把持シリンダの駆動力が前記操作部材からの指令に応じた目標駆動力となるように前記駆動部を制御する制御部と、前記ばね部材の弾性変形を伴う第2把持部材に対する前記把持シリンダの変位量が所定量に至り、前記把持シリンダの駆動力が前記第2把持部材に対して直接伝達可能となるように前記把持シリンダと第2把持部材とが連結された伝達可能状態にあるか否かを検出する伝達可能状態検出手段とを備え、前記制御部は、前記伝達可能状態にあると検出された場合に、当該検出時における駆動力を前記目標駆動力に上昇させることができる最短の時間よりも長い所定の遅延時間をかけて前記把持シリンダの駆動力を連続的に上昇させることにより、前記検出時における駆動力から前記目標駆動力に至るまでの間に遅延を生じさせることを特徴とする把持駆動装置を提供する。
本発明によれば、把持シリンダの動作に伴い、第2把持部材が閉じ方向に回動し、この第2把持部材が処理対象物に接触し、かつ、この処理対象物から受ける反力によりばね部材の弾性変形を伴いながら第2把持部材が把持シリンダに対して変位する。この第2把持部材の変位の範囲では、把持シリンダの駆動力にかかわらず、処理対象物に対する把持部材の接触圧は、ばね部材の弾発力に相当する圧力となるため、当該接触圧の微細な調整を行うことが可能となる。その一方、第2把持部材の変位が所定範囲を超えた時点からは、把持シリンダと第2把持部材とが連結されて把持シリンダの駆動力が直接第2把持部材に伝達可能となるため、処理対象物を大きな把持力で把持することが可能となる。
さらに、本発明では、前記把持シリンダと第2把持部材とが連結されていると検出された場合に、この検出時における駆動力から目標駆動力に至るまでの間に所定時間の遅延を生じさせるため、把持シリンダと第2把持部材とが連結された瞬間に両把持部材による把持力が前記ばね部材による弾発力から目標駆動力に相当する力に急激に切り換わるのを抑制することができる。したがって、本発明によれば、前記把持力が目標駆動力まで上昇するまでの間に、操縦者に対して処理対象物を把持するのか(操作部材を両把持部材を開ける方向に戻すのか)、処理対象物を破壊するのか(操作部材の操作量をそのまま保持するのか)を判断するための時間を与えることができる。
このように、本発明に係る把持駆動装置では、処理対象物に対して大きな把持力を与えるのに先立って、当該処理対象物が把持すべきものか破壊すべきものかを判断するための時間を操縦者に与えることができるため、例えば処理対象物の中からリサイクルの対象となる部品を取り分ける作業を行なう場合に、当該リサイクル対象となる部品の商品価値を保持したまま当該部品を取り分けることが可能となる。
前記遅延を生じさせるために把持シリンダの供給側の流量を調整するブリードオフ制御を除外する趣旨ではないが、前記駆動部は、作動油の供給源と、前記第2把持部材が閉じる方向に駆動するように前記供給源から前記把持シリンダへ供給される作動油のリリーフ圧を調整可能な可変リリーフ弁とを備え、前記制御部は、前記可変リリーフ弁により規定されるリリーフ圧を調整することにより前記遅延を生じさせることが好ましい。
この構成によれば、ブリードオフ制御のように供給源から供給される作動油の流量と、供給側の油路からタンクに排出される流量との2つの流量を調整することにより把持シリンダに対する作動油の圧力を調整する場合と異なり、可変リリーフ弁のリリーフ圧を調整することにより把持シリンダの駆動力を調整することができるので、制御対象を少なくして制御を簡素化することができる。
前記把持駆動装置において、前記制御部は、前記伝達可能状態にはないと検出された場合に、前記可変リリーフ弁により規定されるリリーフ圧の最低値に相当する力を前記目標駆動力に設定するとともに、前記伝達可能状態にあると検出された場合に、前記操作部材からの指令に応じた駆動力を前記目標駆動力に設定することが好ましい。
この構成によれば、把持シリンダと第2把持部材とが連結していないと検出されている間には、リリーフ圧が最低値に設定されているため、後に伝達可能状態にあると検出された場合に、その検出時点における駆動力を前記最低値に相当する力に抑えることができる。したがって、この構成では、伝達可能状態である検出された場合に生じさせる遅延の始点となる駆動力をより小さく抑えることができるため、伝達可能状態にあると検出された時点において処理対象物が受ける力をより小さくすることが可能となる。なお、伝達可能状態にはないと検出されている間にリリーフ圧を最低値に設定しても、両把持部材による把持力は、ばね部材の弾性力により定まるため、当該把持力が不足することはない。
前記把持駆動装置において、前記制御部は、前記操作部材からの指令に応じた目標駆動力を記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された目標駆動力を変更するための指令を入力するための入力部とを備え、前記記憶部に記憶された目標駆動力の中から前記操作部材の操作量に対応するものを読み出すことが好ましい。
この構成によれば、記憶部に記憶された目標駆動力を入力部によって変更することができるため、これから行う作業が破壊ではなく把持を主とすることが明らかな場合に、記憶部に記憶された目標駆動力を予め低めに設定しておくことにより、前記伝達可能状態にあると検出された時以降の把持力を低く抑えることができる。したがって、前記構成によれば、伝達可能状態にあると検出された時以降における処理対象物の破損をより有効に抑制することが可能となる。
前記把持駆動装置において、前記第1把持部材は、前記作業腕の先端部に回動可能に支持され、前記第1把持部材及び第2把持部材は、前記把持シリンダの伸縮動作に応じて開閉動作し、前記第1把持部材と前記把持シリンダとの間に設けられ、前記把持シリンダの駆動に伴い当該把持シリンダからの駆動力を前記第1把持部材に伝えるとともに、前記第1把持部材の回動により接触する前記処理対象物から受ける反力により弾性変形して前記第1把持部材に対する前記把持シリンダの変位を許容し、かつ、その弾発力により、前記処理対象物に対する前記両把持部材の接触圧を増加させる第2ばね部材をさらに備えた構成とすることもできる。
また、本発明は、前記作業機械本体と、この作業機械本体に設けられ、当該作業機械本体に対して先端が変位するように動作可能な作業腕と、前記把持駆動装置とを備えたことを特徴とする作業機械を提供する。
本発明によれば、大きな把持力による処理対象物の把持と、微細な把持力の調整との両立を図りながら、これら把持力の急激な切り換わりを抑制することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る作業機械の全体構成を示す左側面図である。この図1では、作業機械として油圧ショベルを利用したものが例示されているが、本発明に係る作業機械は、これに限られず、先端が変位可能な作業腕をもつ様々の作業機械について本発明の適用が可能である。
油圧ショベル1は、下部走行体2と、その上に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、この上部旋回体3に取り付けられる後述の把持装置16を駆動する駆動部30(図3参照)と、この駆動部30を制御する制御部40(図3参照)とを備えている。上部旋回体3は、旋回フレーム4を有し、旋回フレーム4上に、カウンタウェイト5、キャビン6、及び作業腕7が搭載される。
前記作業腕7は、ブーム8及びアーム9と、これらをそれぞれ駆動するためのブームシリンダ10及びアームシリンダ11を備えている。ブーム8は、旋回フレーム4上に起伏可能に(すなわち旋回フレーム4の左右方向の軸回りに回動可能に)搭載され、ブームシリンダ10の伸縮により当該起伏方向に駆動される。アーム9は、ブーム8の先端部に回動可能に連結され、アームシリンダ11の伸縮により当該回動方向に駆動される。これらブーム8及びアーム9の回動動作と、旋回フレーム4の旋回動作との組み合わせにより、当該アーム9の先端部は、自在に変位することが可能である。
なお、本発明に係る作業機械は、旋回可能なものに限られない。また、作業腕7は、一の関節を有するもの、あるいは多数の関節を有するものであってもよい。
前記アーム9の先端部には、通常、図略のバケットがバケットピン12を介してか移動可能に取り付けられるとともに、バケットシリンダ14によって当該回動方向に駆動される。具体的には、アーム9にアイドラリンク15の一端が回動可能に取り付けられるとともに当該リンク15の他端がバケットシリンダ14に連結され、このアイドラリンク15の他端に前記バケットがバケットリンクを介して連結される。そして、前記バケットシリンダ14の伸縮によりアイドラリンク15、バケットリンク及び図略のバケットが駆動される。そして、この実施形態では、前記バケットに代えて作業アタッチメントとして把持装置16が着脱可能に装着される。
この把持装置16は、図2にも示すように、把持装置本体17と、互いに対をなす第1把持部材18A及び第2把持部材18Bと、これらの把持部材18A、18Bを駆動するための把持シリンダ19とを備えている。把持装置本体17の基端部には、取付部21(図1参照)が設けられ、この取付部21がアーム9及びアイドラリンク15に着脱可能に連結される。
両把持部材18A、18Bは、図略の処理対象物を両側から把持するためのもので、それぞれ、把持部材本体22と、リンク部材23と、コイルばね24とをそれぞれ含む。
両把持部材本体22は、当該両把持部材本体22を貫通するピン20A、20Bを中心として回動可能となるように、その途中部が前記把持装置本体17にそれぞれ連結されている。また、両把持部材本体22には、当該両把持部材本体22を貫通してピン20A、20Bの軸線と平行に延びる2本の軸25及び軸27が設けられている。軸25は、ピン20A、20Bの外側位置で両把持部材本体22を貫通し、リンク部材23の一端を回動可能に軸支する。軸27は、前記軸25よりもアーム9側で当該軸25と略平行する方向に延び、コイルばね24の一端を回動可能に軸支する。さらに、両把持部材本体22には、前記軸25を中心とする円弧形状で両把持部材本体22を貫通する貫通溝22aが形成されている。
両リンク部材23は、両把持部材本体22と把持シリンダ19とを連結するためのものである。具体的に、両リンク部材23の基端部は、前記軸25によって両把持部材本体22に対して回動可能に軸支されている。また、両リンク部材23の途中部には、前記軸25と略平行する方向に延びて両リンク部材23を貫通する軸23aが設けられ、この軸23aは、前記貫通溝22a内で摺動可能となるように当該貫通溝22a内に挿通されている。具体的に、軸23aは、貫通溝22aの内側端部に当接する位置と、貫通溝22aの外側端部に当接する位置との間で当該貫通孔22a内で摺動可能とされている。そして、両リンク部材23の先端部には、前記軸25、23aと略平行する方向に延びる軸26が設けられ、この軸26によって両リンク部材23と把持シリンダ19とが回動可能に連結されている。具体的に、一方の軸26は、リンク部材23と把持シリンダ19のヘッド側端部とを回動可能に連結し、他方の軸26は、リンク部材23と把持シリンダ19のロッドの先端部とを回動可能に連結する。したがって、把持シリンダ19が伸張動作を行うと、両リンク部材23は、その先端部が互いに離間する方向に軸25回りに回動する一方、把持シリンダ19が縮小動作を行うと、両リンク部材23は、その先端部が互いに近接する方向に軸25回りに回動する。
両コイルばね24は、その内側端が前記軸26に対して回動可能に支持されているとともに、その外側端が前記軸27に対して回動可能に支持されている。
以下、前記把持装置16の動作について説明する。
把持シリンダ19が伸張動作を開始すると、両コイルばね24はその長さを維持したまま把持シリンダ19からの駆動力がピン20A、20B回りの回動のための力として把持部材本体22に伝達され、当該把持部材本体22は、その先端部が近接する方向に回動する。把持シリンダ19の伸張動作を継続し、把持部材本体22の間に処理対象物が挟持されると、当該処理対象物からの反力を受けて把持部材本体22の回動が規制されるため、当該把持部材本体22の回動位置が変わることなくコイルばね24を縮ませながらリンク部材23が回動する。さらに、リンク部材23の回動が進行して、軸23aが貫通溝22aの外側端部に当接すると、把持部材本体22に対するリンク部材23の回動が規制されることにより、コイルばね24の縮みが停止し、把持シリンダ19の駆動力がリンク部材23を介して把持部材本体22に直接伝達可能となるように把持部材本体22と把持シリンダ19とが連結された伝達可能状態となる。一方、把持シリンダ19が縮小動作を行うと、両コイルばね24は、軸26と軸27との間隔が広がることに応じて弾性復帰する。
以下、前記把持装置16を駆動するための駆動部30及びこの駆動部30を制御する制御部40について図3を参照して説明する。
図3を参照して、駆動部30は、前記把持シリンダ19に作動油を供給するための油圧ポンプP1と、この油圧ポンプP1から吐出される作動油の流路を切り換えるコントロールバルブ31と、このコントロールバルブ31と把持シリンダ19のヘッド側室とを連結する油路に連通する可変リリーフ弁32と、前記コントロールバルブ31と把持シリンダ19のロッド側室とを連結する油路に連通するリリーフ弁33と、前記コントロールバルブ31に対してパイロット圧を供給するためのパイロットポンプP2と、コントロールバルブ31の操作に関する操縦者からの操作を受ける操作レバー(操作部材)34とを備えている。コントロールバルブ31は、把持シリンダ19の動作を停止させる中立位置Aと、把持シリンダ19を縮小動作させる縮小位置Bと、把持シリンダ19を伸張動作させる伸張位置Cとを有する3位置切換弁である。操作レバー34は、パイロットポンプP2からの作動油をコントロールバルブ31のパイロットポートに導くためのパイロットバルブ(図示せず)と連結されており、前記コントロールバルブ31を切り換える操作の向き及びその操作の量を、レバーの傾動の向き及び操作量によって入力可能とされている。可変リリーフ弁32は、コントロールバルブ31と把持シリンダ19のヘッド側室とを連結する油路内の油圧が予め設定されたリリーフ圧を超えたときに開弁して、当該油路内の作動油を排出するようになっている。また、可変リリ−フ弁32のリリーフ圧は、後述するコントローラ41から出力される電気信号によって変更することが可能とされている。
制御部40は、前記コントロールバルブ31と把持シリンダ19のヘッド側室とを連結する油路内の圧力を検出する圧力センサ(伝達可能状態検出手段)44と、前記操作レバー34の操作の向き及び操作量を検出する操作量センサ45と、各センサ44、45からの検出信号が入力されるコントローラ(記憶部)41と、このコントローラ41からの指令に応じて所定の情報を表示する表示器42と、前記コントローラ41に所定の情報を入力可能な入力部43とを備えている。
操作量センサ45は、前記コントロールバルブ31の両パイロットポートに接続されたパイロット油路内の圧力を検出することにより、前記操作レバー34の操作の向き及び操作量を検出する。具体的に、操作量センサ45は、コントロールバルブ31を前記伸張位置Cに操作するためのパイロット圧を検出する。
コントローラ41は、前記圧力センサ44及び操作量センサ45からの検出信号に基づいて前記可変リリーフ弁32のリリーフ圧を調整する。具体的に、コントローラ41は、図4の実線L1に示すように、操作レバー34の操作量に対応して可変リリーフ弁32に設定すべきリリーフ圧を予め記憶しており、前記操作量センサ45により検出された操作量に基づいて設定すべきリリーフ圧を特定する。このようにコントローラ41に記憶されたリリーフ圧は、入力部43を用いた入力操作によって書き換えることが可能とされている。具体的な書換方法としては、例えば、図4の破線L2、L3に示すように、操作レバー34の操作量の増加に対するリリーフ圧の上昇率が小さくなるようにリリーフ圧特性の傾きを小さくすることや、図4の二点鎖線L4、L5に示すように、所定の操作量以上の範囲においてリリーフ圧の上限値を定めることが挙げられる。
また、コントローラ41は、前記圧力センサ44により検出された把持シリンダ19のヘッド側油路内の圧力に基づいて、前記把持装置16が伝達可能状態にあるか否かを判定する。具体的に、コントローラ41は、圧力センサ44により検出された圧力が前記コイルばね24の弾性力により規定される設定圧以上である場合には、伝達可能状態にあり、設定圧未満であるときに伝達可能状態にはないと判定する。つまり、前記設定圧は、コイルばね24の縮むことができる範囲内においては生じ得ない程に高い圧力に設定されている。そして、コントローラ41は、図6の矢印M2bに示すように、伝達可能状態にあると判定された場合に、当該判定時t2における把持力F3から操作レバー34の操作量に応じて特定される目標把持力F1まで至るまでの間に所定時間(t2からt3までの時間)の遅延を生じさせるようになっている。そのため、図6の矢印M3に示すように、伝達可能状態にあると判定された時点t2において把持力F3から目標把持力F1まで急激に上がるのを回避することができる。ここで、上述したように入力部43を用いてコントローラ41に記憶されたリリーフ圧の設定値を低めに設定した場合(図4のL2〜L4参照)には、図6の把持力F2のように目標となる把持力を小さくすることができるので、矢印M4に示すように、伝達可能状態となった後に処理対象物に与えられる把持力をより小さく抑えることが可能となる。なお、図6において、時点t1は、両把持部材本体22に対して処理対象物が接触した時であり、この時点t1からt2までの間には、コイルばね24の弾発力に相当する把持力M1が生じることになる。
前記遅延を生じさせる方法としては、例えば、遅延時間(t2からt3までの時間)を予め設定しておくことや、把持力F3から目標把持力F1へ至る把持力の増加の勾配を一定にすること、又は、図6の二点鎖線M2bで示すように、把持力F3から目標把持力F1を曲線に結ぶようにその曲線の接線の傾きを予め設定しておくことが挙げられる。
表示器42は、前記コントローラ41からの指令に基づいて把持装置16による把持力に関する情報を表示する。把持力に関する情報としては、例えば、図4に示すように操作レバー34の操作量に基づいて現在設定されているリリーフ圧、又はこのリリーフ圧から換算される把持力を数値として表示することや、図6に示すように把持力の推移をグラフとして表示することが挙げられる。さらに、表示器42にスピーカを内蔵させて前記表示情報を音声で案内することもできる。
以下、前記コントローラ41により実行される処理について説明する。図5は、図3のコントローラ41により実行される処理を示すフローチャートである。
図5を参照して、コントローラ41による処理が実行されると、前記操作量センサ45による検出結果に基づいて操作レバー34が操作されているか否かが判定される(ステップS1)。このステップS1で操作レバー34が操作されていると判定されると(ステップS1でYES)、操作量センサ45の検出結果に基づいて操作量を特定するとともに圧力センサ44の検出結果に基づいて把持シリンダ19のヘッド側油路内の圧力を特定する(ステップS2)。
次いで、把持シリンダ19のヘッド側油路内の圧力が、前記伝達可能状態であるか否かの閾値である設定圧以上であるか否かを判定する(ステップS3)。このステップS3において設定圧以上であると判定されると(ステップS3でYES)、前記操作レバー34の操作量に対応するリリーフ弁の設定圧(図4参照)を読み出すとともに、この設定圧を目標圧として設定する(ステップS4)。つまり、この目標圧により生じる把持力が図6に示す目標把持力F1となる。一方、ステップS3において設定圧未満であると判定されると(ステップS3でNO)、可変リリーフ弁32に規定される最低のリリーフ圧を目標圧に設定する(ステップS5)。つまり、後述する伝達可能状態を迎えた瞬間に処理対象物に与える把持力をできるだけ小さくするために、コイルばね24が縮小できる範囲内においては、把持シリンダ19の駆動力をできるだけ小さく保持しておく。
次いで、ステップS4、S5において設定された目標圧までの圧力の推移を決定する(ステップS6)。具体的に、前記ステップS3において伝達可能状態にあると判定された場合には、図6に示すように、当該判定時t2の把持力F3から目標圧に対応する把持力F1までの間に遅延を生じさせるための矢印M2a(又は二点鎖線M2b)のような圧力の増加推移を決定する。なお、ステップS3において伝達可能状態にはないと判定された場合には、即座に目標圧(最低のリリーフ圧)に上昇し、その目標圧を維持するような推移を決定する。
次いで、ステップS6において決定された推移で圧力を増加させるために指令すべきリリーフ圧を指令電流に変換するとともに(ステップS7)、このリリーフ圧の設定により生じることになる把持力に関する情報を表示器42に表示させ(ステップS8)、前記指令電流を可変リリーフ弁32に出力する(ステップS9)。
次に、圧力センサ44により圧力を検出し(ステップS10)、検出された圧力がステップS4又はS5で設定された目標圧に到達したか否かを判定する(ステップS11)。ここで、検出圧が目標圧に到達していないと判定されると(ステップS11でNO)、操作レバー34の操作量が変更されているか否かを判定し(ステップS12)、変更されていない場合には前記ステップS7にリターンする一方、変更されている場合には前記ステップS2にリターンする。なお、本実施形態では、操作レバー34の操作量が変更されている場合(ステップS12でYESの場合)に、ステップS2にリターンして当該操作量に応じた処理が実行されることとしているが、この操作量の変更が操作レバー34を中立位置に戻す操作である場合(コントロールバルブ31を中立位置Aに戻す操作である場合)には、現時点で設定されているリリーフ圧をそのまま保持するようにすることもできる。このようにすれば、操作レバー34を中立位置に戻すという簡便な操作で処理対象物に与える把持力を保持することができるため、適当な把持状態を維持するために操作レバー34を微調整してこの状態を保持するという操縦者の負担を軽減することができる。
一方、前記ステップS11において目標圧に到達したと判定されると(ステップS10でYES)、前記ステップS1にリターンする。
以上説明したように、前記実施形態によれば、把持シリンダ19の動作に伴い、把持部材18A、18Bが閉じ方向に回動し、両把持部材18A、18Bが処理対象物に接触し、かつ、この処理対象物から受ける反力によりコイルばね24の弾性変形を伴いながら両把持部材18A、18Bが把持シリンダ19に対して変位する。これら把持部材18A、18Bの変位の範囲では、把持シリンダ19の駆動力にかかわらず、処理対象物に対する把持部材18A、18Bの接触圧は、コイルばね24の弾発力に相当する圧力となるため、当該接触圧の微細な調整を行うことが可能となる。その一方、両把持部材18A、18Bの変位が所定範囲を超えた時点からは、把持シリンダ19と把持部材18A、18Bとが連結されて把持シリンダ19の駆動力が直接両把持部材18A、18Bに伝達可能となるため、処理対象物を大きな把持力で把持することができる。
さらに、前記実施形態では、把持シリンダ19と両把持部材18A、18Bとが連結されていると検出された場合に、この検出時における駆動力から目標駆動力に至るまでの間に所定時間の遅延を生じさせるため、把持シリンダ19と両把持部材18A、18Bとが連結された瞬間に両把持部材18A、18Bによる把持力がコイルばね24による弾発力から目標リリーフ圧に相当する力に急激に切り換わるのを抑制することができる。したがって、前記実施形態によれば、把持力が目標リリーフ圧に相当する力まで上昇するまでの間に、操縦者に対して処理対象物を把持するのか、処理対象物を破壊するのかを判断するための時間を与えることができる。
このように、本実施形態では、処理対象物に対して大きな把持力を与えるのに先立って、当該処理対象物が把持すべきものか破壊すべきものかを判断するための時間を操縦者に与えることができるため、例えば処理対象物の中からリサイクルの対象となる部品を取り分ける作業を行なう場合に、当該リサイクル対象となる部品の商品価値を保持したまま当該部品を取り分けることができる。
前記実施形態のように、可変リリーフ弁32のリリーフ圧を調整することにより前記遅延を生じさせる構成によれば、ブリードオフ制御のように油圧ポンプから供給される作動油の流量と、供給側の油路からタンクに排出される流量との2つの流量を調整することにより把持シリンダ19に対する作動油の圧力を調整する場合と異なり、可変リリーフ弁32のリリーフ圧を調整することにより把持シリンダ19の駆動力を調整することができるので、制御対象を少なくして制御を簡素化することができる。なお、ブリードオフ制御によって把持シリンダ19に対する作動油の圧力を制御する構成を除外する趣旨ではない。
前記実施形態のように、伝達可能状態にはないと検出された場合に可変リリーフ弁32の最低圧を目標圧に設定する構成によれば、把持シリンダ19と把持部材18A、18Bとが連結していない間には、リリーフ圧が最低値に設定されているため、後に伝達可能状態にある検出された場合に、その検出時点における駆動力を前記最低値に相当する力に抑えることができる。したがって、この構成では、伝達可能状態である検出された場合に生じさせる遅延の始点となる把持力をより小さく抑えることができるため、伝達可能状態にあると検出された時点において処理対象物が受ける力をより小さくすることができる。
前記実施形態のように、操作レバー34の操作量に応じたリリーフ圧を記憶するコントローラ41と、前記リリーフ圧を書き換えるための入力部43とを備えた構成によれば、コントローラ41に記憶されたリリーフ圧を書き換えることができるため、これから行う作業が破壊ではなく把持を主とすることが明らかな場合に、コントローラ41に記憶されたリリーフ圧を図4のL2〜L5に示すように予め低めに設定しておくことにより、伝達可能状態にあると検出された時以降の把持力を低く抑えることができる。したがって、前記実施形態によれば、伝達可能状態にあると検出された時以降における処理対象物の破損をより有効に抑制することができる。
なお、前記実施形態では、両把持部材18A、18Bのそれぞれがピン20A、20B回りに回動可能に軸支されているが、両把持部材18A、18Bのうちの少なくとも一方が回動可能とされていればよい。この場合には、回動可能に軸支された把持部材と把持シリンダ19との間にのみコイルばね24を設ければよい。
また、前記実施形態では、圧力センサ44によって把持シリンダ19と把持部材18A、18Bとが伝達可能状態にあるか否かを検出することとしているが、伝達可能状態にあるか否かを検出するための構成は圧力センサに限定されることはなく、例えば、両把持部材18A、18Bの回動位置を検出するためのロータリエンコーダや、両把持部材18A、18Bが処理対象物から受ける押圧力を検出するための歪センサ等を用いることもできる。