JP5477717B2 - 紙軸用原紙 - Google Patents
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Description
紙軸は、所定の長方形に切り抜きした紙シートに接着剤を塗布し、巻回して製造されるものである。紙製の軸は、木製やプラスチック製の軸に比べ柔軟であるため、用途によっては紙軸の剛性が不足して、製品として不具合を生じることがある。例えば、綿棒で軸の剛性が不足すると、拭き取り性が劣るという問題が生じる。また、前述したように紙軸は長方形に切り抜きした紙シートに接着剤を塗布し、巻回して製造されるため、原紙の紙質によっては、カールによる紙詰り、接着不良によるメクレやシワ入りなどの紙軸製造に特有のトラブルを生じることがある。
パルプに合成繊維を混合して抄紙したり、合成樹脂を塗布または含浸させたり、合成樹脂フィルムをラミネートする方法により紙軸の剛性を向上させることができるが、これらの合成樹脂は石油を原料とするものであり、省資源という点で望ましくない。
そこで、紙素材のみで製造され、剛性が向上された紙軸用原紙が要望されている。
特許文献1の考案は、軸方向を紙の繊維の向きに一致させて巻くことを特徴とする紙軸であり、さらに牛乳パックの古紙から作った再生紙を原料として使用することで資源の有効利用と紙軸の強度アップを図るというものである。しかし、紙の繊維配向性や、紙の剛性についての詳細な検討はない。
特許文献2には、合成繊維を混合して抄造する、合成樹脂を塗布または含浸させる、合成樹脂フィルムをラミネートするなどにより、強度をアップすることが記載されている。しかし、前述したように合成繊維や合成樹脂の使用は省資源という点では望ましくない。
特許文献3には、紙軸の表面に酸化珪素を適用して固化し、耐水性、熱耐水性を付与するというものである。しかし、これらの処理は紙軸の製造工程が増えるという問題がある。
第一発明の紙軸用原紙は、
シート状の紙を巻回・接着して形成される紙軸用の原紙であって、以下の条件を満たすことを特徴とする。
(1)原料パルプとして、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。
(2)前記NBKPのカナダ標準ろ水度が400〜650mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が400〜500mlCSFに叩解されている。
(3)坪量が30〜70g/m2の範囲である。
(4)ステキヒトサイズ度が5秒以上である。
(5)紙軸がCD方向巻き付け(MD方向が軸)であり、引張り強さの縦横比(縦÷横)が1.4〜2.4の範囲である。
(6)クラークこわさの縦横比(縦÷横)が1.5〜2.3の範囲である。
第二発明の紙軸用原紙は、
前記原紙が片艶紙であり、製造工程において湿紙に紙力増強剤がスプレー塗布され、密度が0.70g/cm3以上とされていることを特徴とする請求項1に記載の紙軸用原紙。である。
剛性が向上され、加工適性の良い紙軸用原紙を提供することができる。
さらに、前記原紙が片艶紙であり、製造工程において、湿紙に紙力増強剤がスプレー塗布され、密度が0.70g/cm3以上とされていることにより、いっそう加工適性の良い紙軸用原紙を提供することができる。
まず、紙軸加工について説明する。
紙軸加工は、所定の大きさにカットした原紙を緩く丸まった状態にし、糊付けを行いながらロールで抑えて巻回し、軸にした後、乾燥する。紙軸用原紙は、カットされて紙軸加工機へ供給されるので、カール傾向が強いと紙詰りのトラブルを生じることがあり、紙軸加工機に供給する前に原紙に蒸気を当てて、カールを矯正することもある。
また、原紙の品質によって、製造された紙軸にメクレやシワ入りの不良が発生することがある。メクレとは、接着した紙の端部が剥がれ、外観が悪くなったり、軸強度が低下する現象である。シワ入りは、糊付け、巻回する際に発生するほか、例えば綿棒の製造では紙軸に綿付けを行う際に、ベルト間に紙軸を挟んだ状態で紙軸を転がしながら綿付けを行うので、紙軸が均一でないと発生することがある。
紙軸の径は必要な強度と使用時の使いやすさを考慮し設定され、通常は1.0〜3.0mm程度である。紙軸の長さは使いやすい長さに設定され、通常は50〜160mm程度である。巻き込みの回数は10〜40回程度である。
本発明にかかる紙軸用原紙は、原料パルプとして、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、その質量比率が20:80〜80:20であることが望ましく、前記NBKPのカナダ標準ろ水度が400〜650mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が400〜500mlCSFに叩解されていることが望ましい。
この範囲とすることで、紙軸としての強度を高くできるとともに、地合いが良好となることから紙軸加工時のシワ入りトラブルがなくなる。NBKPがこの範囲を超えて多いと、地合いが悪くなり紙軸加工適性が悪くなり、シワのほか、接着不良によるメクレが発生することがある。NBKPがこの範囲を超えて少ないと、紙軸強度が不足する。紙軸用原紙の坪量は紙軸の径にあわせて設定するが、30〜70g/m2であれば紙軸加工が容易であり望ましい。坪量が30g/m2未満であると、紙軸加工の際に接着剤の塗布による紙の伸縮が大きくなってシワ入りとなる場合があり、70g/m2を超えると紙の剛性が高すぎ、紙軸加工の巻回の際にシワ入りや接着不良を生じることがある。
本発明の原紙は紙軸用に使用するため、印刷用紙や新聞用紙やコピー用紙などの一般的な用紙とは、その繊維配向性が異なっているものである。
すなわち、上述の一般的な用紙は見映え、地合い、印刷適性、カールの問題などの観点から、可能な限り繊維を均一に分散させる。しかしながら、本発明の紙軸用原紙は繊維を一定範囲でMD方向に並ぶように調整し、紙軸としての強度、加工適性を付与している。
前述のように構成することで、クラークこわさの縦横比(縦÷横)が1.5〜2.3の範囲となり、このようにすることで、紙軸の軸強度を高くすることができる。
クラークこわさ(縦)は紙軸の軸強度に直接影響する値であり、その値は大きいほどよいが、坪量60g/m2の場合で50cm3/100以上であることが望ましい。このとき、原料が一様と考えられ、クラークこわさが坪量の2乗に比例することを考慮すると、次の(式1)で表わすクラークこわさ指数で1.4以上が望ましいことになる。
(式1)クラークこわさ指数=クラークこわさ[cm3/100]/(坪量[g/m2])2×100
これによると、例えば坪量40g/m2の紙軸用原紙では、クラークこわさ(縦)が22cm3/100以上であることが望ましい。
本発明の紙軸用原紙はCD方向巻き付けで使用される紙軸に関するものである。
すなわち、紙力増強剤のスプレー塗布により、紙軸用原紙の密度が高くなり軸強度が高くなることに加え、ヤンキードライヤーへの接着が良くなり、カールを防止することができるから、紙軸加工時に紙詰まりのトラブルを生じることがなくなる。
前述したように、本発明の紙軸用原紙は、軸強度を得るために繊維がMD方向に並ぶように調整しているので、吸湿や放湿によるCD方向の伸縮が大きく、カールを起こしやすい傾向がある。よって、カールを防止することを目的に紙力増強剤のスプレー塗布を行うことが望ましい。
表面処理剤の塗布量は固形分で0.30〜2.0g/m2とするのが好ましい。また、表面処理剤の塗布量は有姿で30〜200g/m2とするのが好ましく、70〜100g/m2とするのがさらに好ましい。このような範囲にすることで表面処理剤の効果が最適化される。
JISP8122によるステキヒトサイズ度が5秒以上であることが望ましい。
ステキヒトサイズ度が5秒に満たないと、接着剤の浸透が速過ぎて接着不良によるメクレが生じることがある。
また、密度が0.70g/cm3以上とされている。このようにすることで紙軸加工時のシワ入りを防止することができる。
NBKP45質量部(ろ水度650mlCSF)、LBKP55質量部(ろ水度460mlCSF)からなる原料パルプを使用し、硫酸バンド2.5質量%(アルミナ換算濃度8%品:有姿)、酸性ロジンサイズ剤(星光PMC株式会社製 商品名:AL1206)0.5質量%、ポリアクリルアミド系紙力増強剤(星光PMC株式会社製 商品名:DS4789)0.25質量%、カチオン澱粉(ジー・エス・エルジャパン株式会社製 商品名:ジェルトロン24)0.5質量%を添加して抄紙した。ワイヤーパートを通過した後のプレスパートで、湿紙オモテ面に紙力増強剤としてカチオン澱粉(日本NSC株式会社製 商品名:CATO304)を濃度0.60%に調整し、塗布量0.60g/m2(有姿100g/m2)となるようにスプレーし、坪量60g/m2の紙軸用原紙を製造した。なお、スプレー直後の1番プレスでは、紙のオモテ面がプレーンロールに接し、ウラ面がフェルトを介してサクションロールに接するようになっており、紙のオモテ面からウラ面の方向へサクションプレスロールにより吸引脱水を行っている。スプレー装置は、フラット散水型スプレーノズル(株式会社ニイクラ製 1/4 S0495)を抄紙機の幅方向5cm間隔で配列したものを3系列使用した。
その他の条件としては、次のとおりとした。
J/W比1.010、リール水分7.0%、抄速360m/min、カレンダー処理なし
得られた紙軸用原紙の密度、引張り強さ、クラークこわさ、ステキヒトサイズ度の各評価結果を表1に示す。また、紙軸加工を行いその加工適性としてのカール、シワ、メクレの評価と、軸強度の官能評価の結果を表1に示す。
NBKP75質量部(ろ水度600mlCSF)、LBKP25質量部(ろ水度460mlCSF)からなる原料パルプを使用したこと以外は、実施例1と同様に紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
NBKP75質量部(ろ水度500mlCSF)、LBKP25質量部(ろ水度400mlCSF)からなる原料パルプを使用したこと以外は、実施例1と同様に紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
J/W比を1.000とした以外は実施例3と同様にして紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
J/W比を0.990とした以外は実施例3と同様にして紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
NBKP20質量部(ろ水度650mlCSF)、LBKP80質量部(ろ水度460mlCSF)からなる原料パルプを使用したこと以外は、実施例1と同様に紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
J/W比を1.015とした以外は実施例6と同様にして紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
J/W比を0.980としたことと、酸性ロジンサイズ剤の添加量を0.3質量%としたこと以外は実施例3と同様にして紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
NBKP40質量部(ろ水度650mlCSF)、LBKP60質量部(ろ水度460mlCSF)からなる原料パルプを使用したことと酸性ロジンサイズ剤の添加量を0.5質量%としたこと以外は、比較例1と同様に紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
J/W比を1.020とした以外は実施例3と同様にして紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
紙力増強剤のスプレーを行わなかったこと以外は比較例3と同様にして紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
J/W比を1.020とした以外は実施例6と同様にして紙軸用原紙を製造した。得られた紙軸用原紙の評価結果を表1に示す。
(密度)JISP8118:1998紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法
(引張り強さ)JISP8113:2006紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法
(クラークこわさ)JISP8143:2009紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法
(ステキヒトサイズ度)JISP8122:2004紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法
(カール評価)紙軸加工機での原紙の加工適性により、次の3段階で評価した。◎カールの傾向はなかった。△カールの傾向はあったが、加湿により対処できた。×カールが大きく加湿してもカールによる紙詰りが頻発した。
(シワ評価)製造した綿棒からランダムに100本サンプリングし、シワの有無を目視で確認して次の3段階で評価した。◎100本中シワの発生が1本以下であった。○100本中シワの発生が2〜3本であった。×100本中シワの発生が4本以上であった。
(メクレ評価)製造した綿棒からランダムに100本サンプリングし、紙軸の接着部の端部を爪で引っ掛け、メクレの有無を確認し、次の3段階で評価した。◎100本中メクレの発生が1本以下であった。○100本中メクレの発生が2〜3本であった。×100本中メクレの発生が4本以上であった。
(軸強度評価)製造した綿棒の使用感を10人で評価した。評価基準は、◎優れている、○軸がやや柔らかいが使用できる、×軸が柔らかく使用しにくい の3段階とし、多数評価をそのサンプルの評価とした。
Claims (2)
- シート状の紙を巻回・接着して形成される紙軸用の原紙であって、以下の条件を満たすことを特徴とする紙軸用原紙。
(1)原料パルプとして、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20 である。
(2)前記NBKPのカナダ標準ろ水度が400〜650mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が400〜500mlCSFに叩解されている。
(3)坪量が30〜70g/m2の範囲である。
(4)ステキヒトサイズ度が5秒以上である。
(5)紙軸がCD方向巻き付け(MD方向が軸)であり、引張り強さの縦横比(縦÷横)が1.4〜2.4の範囲である。
(6)クラークこわさの縦横比(縦÷横)が1.5〜2.3の範囲である。 - 前記原紙が片艶紙であり、製造工程において湿紙に紙力増強剤がスプレー塗布され、密度が0.70g/cm3以上とされていることを特徴とする請求項1に記載の紙軸用原紙。
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