JP2019157324A - 和風地合いの用紙及び化粧シート - Google Patents

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Abstract

【課題】和紙調の風合い(和紙特有の柔らかな風合い)を有しながらも容易に製造できる用紙を提供することを目的とする。【解決手段】原料として木材パルプを主体に抄紙される用紙であって、以下1〜5の条件を満たすことを特徴とする。1.主原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。2.前記NBKPのカナダ標準ろ水度が400〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が300〜600mlCSFとされている。3.坪量が30〜150g/m2の範囲である。4.厚さ変動係数が5.0〜15%である。5.不透明度が93%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、平袋、角底袋、手提げ袋などの包装材料や各種パッケージの材料となる用紙及び化粧シートに関するものである。
一般的に和紙の特徴は、「洋紙に比べて格段に繊維が長いため、薄くとも強靭で寿命が比較的長く、独特の風合いを持つ」と言われている。現在、原料繊維として天然繊維や化学繊維を抄紙した食品用等の包装材には、美麗な模様等の意匠性が要求され、特に和紙調の独特の風合い、肌触り、高級感等の優れた特性が求められるものがある。
このような要求に対して、レーヨン繊維を含む原料繊維を抄紙した模様加工紙が提案されている(特許文献1参照)。レーヨン繊維は繊維長や繊維径を自由に設定できるので木材パルプよりも有利であり、レーヨン繊維を抄紙すると、和紙調の柔らかな風合いを出すことができる。しかし、レーヨン繊維は繊維自体の絡み合いが少ないことから、得られた紙の引張り強さは一般に低い。紙の強度が低いと、包装材や内容物の破損、損傷等の原因ともなり、特に食品用包装材の用途では、好適に用いることができない。紙の強度の低下を防ぐためにバインダー繊維等の紙力向上成分を紙に多く添加することも考えられるが、レーヨン繊維にバインダー繊維を多く添加すると、紙は水中で離解し難くなり、これらを原料としてリサイクルすることは困難となる。また、レーヨン繊維は、多段階に亘る複雑な製造工程を経て製造されるため、木材パルプよりも高価でもある。
一方、特許文献2では、マーセル化パルプを所定の割合で含む原料を抄紙して、和紙調の風合いを再現することが提案されており、紙の密度、表面の算術平均粗さ、離解パルプのフリーネス等が特定されている。しかし、マーセル化パルプは、レーヨン繊維より安価であるが、入手先が限られている特殊な原料といえ、それほど多用されていないのが実状である。
特開2011−1645号公報 特開2014−109082号公報
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、和紙調の風合い(和紙特有の柔らかな風合い)を有しながらも木材パルプを主体に用いて容易に製造できる用紙を提供することを目的とする。
本発明者は、上記不具合を解決するために鋭意検討を重ねた結果、原料の木材パルプの構成や用紙の特性を規定することで、和紙調の風合いを有した用紙とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
第一発明の用紙は、原料として木材パルプを主体に抄紙される用紙であって、以下1〜5の条件を満たすことを特徴とする。
1.主原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。
2.前記NBKPのカナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が200〜600mlCSFとされている。
3.坪量が30〜150g/mの範囲である。
4.厚さ変動係数が5.0〜15%である。
5.不透明度が93%以下である。
第二発明の用紙は、原料として木材パルプを主体に抄紙される用紙であって、以下1〜5の条件を満たすことを特徴とする。
1.主原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。
2.前記NBKPのカナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が200〜600mlCSFとされている。
3.坪量が30〜150g/mの範囲である。
4.坪量変動指数が10%以上である。
5.不透明度が93%以下である。
第三発明の用紙は、第一発明または第二発明において、前記用紙がヤンキー抄紙機で製造された片艶紙であり、艶面の光沢度が20%以下であることを特徴とする用紙である。
第四発明は、第一発明〜第三発明のいずれかにおいて、前記用紙の片面に有色シートを貼り合わせたことを特徴とする化粧シートである。
本発明によれば、原料として木材パルプを主体に抄紙される用紙であって、
1.主原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。
2.前記NBKPのカナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が200〜600mlCSFとされている。
3.坪量が30〜150g/mの範囲である。
4.厚さ変動係数が5.0〜15%である。
5.不透明度が93%以下である。
を満たす構成をとることにより、和紙調の風合いの用紙を提供することができる。
あるいは、原料として木材パルプを主体に抄紙される用紙であって、
1.主原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。
2.前記NBKPのカナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が200〜600mlCSFとされている。
3.坪量が30〜150g/mの範囲である。
4.坪量変動指数が10%以上である。
5.不透明度が93%以下である。
を満たす構成をとることにより、和紙調の風合いの用紙を提供することができる。
さらに、前記用紙がヤンキー抄紙機で製造された片艶紙であり、艶面の光沢度が20%以下であることにより、いっそう和紙調の風合いを有する用紙を提供することができる。さらにまた、用紙の片面に有色シートを貼り合わせたことを特徴とする化粧シートにより、いっそう和紙調の風合いを表現することができる。
本発明の用紙の裏面に黒色シートを重ねた画像 一般の印刷用紙の裏面に黒色シートを重ねた画像
本発明の実施の形態を説明する。本発明にかかる用紙は、原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が主体に使用されており、その質量比率が20:80〜80:20である。このようにすることで、用紙の強度を高くできるとともに、地合いが適切となり、抄紙性が安定する。NBKPの質量比率がこの範囲を超えて多いと、フロック地合いの傾向が強くなり、加工時にしわが発生することがある。NBKPがこの範囲を超えて少ないと、和紙調の風合いが得られない。
本発明にかかる用紙は、原料としてNBKPとLBKPが主体に使用されるが、それ以外の原料を使用してもよい。例えば、古紙パルプ、機械パルプ等を使用してもよい。古紙パルプとしては、新聞古紙脱墨パルプ、上質古紙脱墨パルプ等の古紙脱墨パルプ(DIP)が使用できる。機械パルプとしては、ストーングラウンドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等を使用することができる。これらの原料を使用する場合の配合率は、原料のパルプ全体を100%とした場合、30%以下、望ましくは20%以下、さらに望ましくは10%以下である。配合率が高いほど用紙の不透明度が低下して、和紙調の風合いが損なわれる。
前記NBKPのカナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が200〜600mlCSFとされていることが望ましい。NBKPのカナダ標準ろ水度は、一般的な包装用紙や加工原紙に適用される範囲より高いものである。紙の代表的な強度である、引張り強さ、引裂き強さのバランスをとるには、NBKPのカナダ標準ろ水度200〜600mlCSF程度とするのが一般的であるが、本願発明の用紙では、地合いを和紙調にするために、カナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、好ましくは400〜800mlCSFという高い値としている。
用紙の坪量は用途に合わせて設定することができるが、30〜150g/mが望ましい。坪量が30g/m未満では、用紙にピンホールが目立ち製造が難しく、150g/mを超えると乾燥むらが大きくなり、巻取り時にしわ入りを生じることがある。
本発明で原料に内添する薬品としては、サイズ定着剤、サイズ剤、紙力増強剤などが使用できる。サイズ定着剤としては、硫酸バンド、カチオン澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂などが使用できる。サイズ剤としては、鹸化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸などのサイズ剤が使用できる。紙力増強剤としては、カチオン澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂などが使用できる。その他、必要に応じ、湿潤紙力増強剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の添加剤を使用することができる。
本発明の用紙の製造方法では、少なくとも、紙料を脱水するワイヤーパートと、脱水された湿紙を搾水するプレスパートと、搾水された湿紙を乾燥するドライヤーパートが連設された抄紙機を用いる。本発明の用紙は、和紙調の風合いを出すため、一般の印刷用紙や包装用紙よりも意図的に地合いを崩している。
すなわち、一般の印刷用紙や包装用紙は、印刷適性を重視し、パルプ繊維を均一に分散させ地合いを良好にすることが志向される。しかし、本発明の用紙は風合いを重視し、パルプ繊維を一定範囲で凝集させ、和紙調の風合いを得ている。
地合いの形成にはワイヤー上での繊維配置と脱水の程度が影響する。特に脱水は地合い形成との関連が強い。そのためワイヤー上に形成した湿潤シートの含有水分を調整する操作が特に重要になる。それはパルプの種類やろ水性、濃度、内添薬品量などもある程度の影響を及ぼすが、最も影響のあるのは抄紙機での抄造条件である。それは例えば、フォイルやバキュームでの脱水の程度等である。抄紙機のスピード,J/W比、リップ開度、等も挙げられるが、抄紙機の特性に応じた対応条件があり、本発明では特に限定するものではない。
具体的には、用紙の厚さ変動係数が5.0〜15%となるようにする。このようにすることで、和紙調の風合いの用紙とすることができる。5.0%より小さいと、均一な地合いとなり通常の印刷用紙との違いが乏しい。15%より大きいと、坪量の小さい用紙では、ピンホールが発生し、加工工程で問題となることがあるし、坪量の大きい用紙では抄紙機での乾燥むらが生じやすく、巻き取り時のしわ入りなどの問題があり製造が困難となる。ところで、一般の印刷用紙よりも上述した厚さ変動係数の大きい紙としては、抄紙機のプレスパートで用具マークを意図的に付与し模様を形成させた用紙や、エンボス加工により模様を形成した用紙、あるいは、ノット粕などのパルプ繊維よりも厚みのある物を混抄した用紙などがあるが、本願発明の用紙は、これらの用紙とは異なり、あくまで抄紙機のワイヤーパートにおける地合い形成により、厚さ変動係数を特定範囲としたことに特徴がある。
厚さ変動係数の求め方は、以下のとおりである。
(厚さ変動係数)
JISP8118:2014紙及び板紙−厚さ、密度および比容積の試験方法に基づき厚さを測定する。ただし、測定箇所は縦方向(MD方向)に概ね直線上に配列する50箇所を測定する。その平均値をX、標準偏差をσとすると、変動係数(%)はσ/X×100で表す。ここで、測定箇所を縦方向(MD方向)に概ね直線上に配列する箇所とした理由は、横方向に配列する箇所とした場合、近接した箇所のデータが比較的近い値となる傾向がみられため、標準偏差を取るデータとして不適と判断したためである。
厚さ変動係数をこのような範囲にするには、一般的な地合いの調整により行うことができる。例えば、抄紙機のインレットから噴出される原料の速度(J)と抄紙機のワイヤー速度(W)の比、すなわちジェットワイヤー比(J/W比)によって調整することができる。また、ワイヤーでの脱水状態に関わる原料のろ水度や原料濃度、フォイルアレンジ、ワイヤーシェーキングの有無等によっても調整することができる。
厚さ変動係数にかえて坪量変動指数を特定してもよい。(坪量変動指数の定義は後述する。)具体的には、用紙の坪量変動指数が10%以上となるようにする。このようにすることで、和紙調の風合いの用紙とすることができる。坪量変動指数が10%より小さいと、均一な地合いとなり通常の印刷用紙との違いが乏しい。坪量変動指数の上限は特に制限はないが過大であると、坪量の小さい用紙では、ピンホールが発生し、加工工程で問題となることがあるし、坪量の大きい用紙では抄紙機での乾燥むらが生じやすく、巻き取り時のしわ入りなどの問題があり製造が困難となる。ところで、一般の印刷用紙よりも坪量変動指数の大きい用紙としては、ノット粕などのパルプ繊維よりも厚みのある物や、模様を形成するために、樹皮や色付きのプラスチックビーズなどを混抄した用紙などがあるが、本願発明の用紙は、これらの用紙とは異なり、あくまで木材パルプを主体に使用し抄紙機のワイヤーパートにおける地合い形成により、坪量変動指数を特定範囲としたことに特徴がある。
坪量変動指数の求め方は、以下のとおりである。
(坪量変動指数)A4サイズの用紙に、目視判断で厚い部分と薄い部分をでマーキングし、それぞれについて、孔径6mmのパンチにより100個の試料を採取し、その合計質量により、厚い部分の坪量M(g/m)と、薄い部分の坪量m(g/m)を求める。そして、次式により坪量変動指数(%)を求める。
(M−m)/BW×100(%)
ただし、BW(g/m)はJISP8124:2011紙及び板紙−坪量の測定方法 による坪量とする。なお、上記目視判断は、用紙を黒色のシートの上に乗せたり、ランプの透過光により地合いを観察して行うとよい。また、質量の測定はJISP8124に基づき調湿条件で行う。
坪量変動指数の調整は、前述した厚さ変動係数の場合と同様に行うことができる。
本発明の用紙の不透明度は93%以下であることが望ましい。不透明度が93%以下であれば、適度に裏抜けがあり、地合いが視認しやすいので、いっそう本発明の用紙の特徴を活かすことができる。
本発明の用紙はヤンキー抄紙機で製造された片艶紙であり、艶面の光沢度が20%以下であることが望ましい。艶面とはヤンキードライヤーに接する艶のある面であり、通常、反対側の反艶面よりも平滑性が良く、光沢度が高くなる。片艶紙とすることにより、艶面と反艶面の2面性があるので、一般の印刷用紙(洋紙)に対して差別化し、和紙の風合いを得ることができる。そして、艶面の光沢度が20%以下となるようにすることで、手触りを和紙調に仕上げることができる。
片艶紙の場合、片艶紙の製造工程において、湿紙に紙力増強剤を含む表面処理剤をスプレー塗布することもできる。このようにすることで、紙むけを防止したり、印刷適性を向上させることができる。特に本願発明の用紙は、和紙の風合いを得るために、パルプのフリーネスを高くしているので、パルプ繊維の結合が弱く表面強度が低くなる傾向があるので、それを補うために表面処理剤をスプレー塗布するのが望ましい。
スプレー塗布を行う場合、抄紙機にスプレー装置が設置されていて、湿紙のオモテ面に紙力増強剤を含む表面処理剤をスプレーする。そして、紙力増強剤を含む表面処理剤のスプレー塗布と同時または直後に、湿紙のオモテ面からウラ面の方向に吸引脱水を行い、スプレーした表面処理剤を紙層内部に浸透させるのが好ましい。なお、湿紙のオモテ面とは、ヤンキードライヤーに接して片艶紙の艶面となる面を表し、湿紙のウラ面とは、片艶紙の反艶面となる面を表す。
スプレー塗布では、塗布むらを少なくするため、スプレーノズルの形状や配置、塗布濃度、塗布量の最適化が必要であるが、オモテ面にスプレー塗布と同時または直後にオモテ面からウラ面の方向に吸引脱水を行うことにより、表面処理剤が紙層内に適度に分散するので、前述した最適化が容易であり、表面処理剤の効果が十分に発揮される。
抄紙機のプレスパートに使用されるロールとしては、表面が平坦なプレーンロール、ゴム被覆表面に、幅0.2〜0.5mm、深さ2〜3mm、ピッチ3mm前後の溝を切ったグルーブドロール、ロール内部にサクション部を設けて搾水と同時に水を吸引するサクションロール(サクションロールに溝を設けたサクショングルーブドロールも含む)がある。通常、これらのロールが組み合わされた一対のニップ部が複数段設置されてプレスパートが構成されている。表面処理剤をオモテ面にスプレーし、スプレーと同時または直後にオモテ面からウラ面の方向に吸引脱水を行う必要があり、このような位置で湿紙に表面処理剤をスプレー塗布するのが望ましい。
片艶紙を製造する抄紙機のプレスパートは、前述したロールによる一対のニップ部を通常3段〜4段有している。スプレーの位置は、スプレー装置の設置できる箇所であればいずれでも良いが、より上流の箇所が好ましく、このようにすれば、表面処理剤スプレー後の湿紙がより多くのニップ部を通過することになるので、表面処理剤を紙層内に均一に分散させることができる。
スプレーする紙力増強剤としては、トウモロコシ、タピオカ、馬鈴薯、小麦、米の澱粉やこれらの酸化澱粉、カチオン澱粉等の変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂やポリビニルアルコール、スチレンブタジエン共重合体ラテックスなどを使用することができるが、薬品の定着性、表面強度の向上効果を考慮すると、カチオン澱粉を使用するのが好ましい。さらに表面処理剤にドライヤー剥離剤、ドライヤー接着剤、粘度調整剤、防腐剤などを添加してもよい。
表面処理剤をスプレーする際の湿紙水分は60〜90%が好ましい。60%より低いとスプレー塗布された表面処理剤の紙層内部での分散が不十分となり、90%より高いとプレスパートでの搾水時に表面処理剤の流失が多くなるという問題がある。
水分率の高い湿紙に表面処理剤をスプレー塗布し、塗布と同時または直後に吸引脱水を行い、表面処理剤の紙層への浸透、均一化を行う。吸引脱水を行う吸引装置としてはサクションボックスやサクションロールを用いることができる。
表面処理剤の塗布量は固形分で0.30〜2.0g/mとするのが好ましい。また、表面処理剤の塗布量は有姿で30〜200g/mとするのが好ましく、70〜100g/mとするのがさらに好ましい。このような範囲にすることで表面処理剤の効果が最適化される。
表面処理剤の塗布濃度は、0.50〜2.0質量%とするのが好ましい。表面処理剤の塗布濃度が0.50質量%より低いと、薬品効果を得るに十分な塗布量が得られにくい。表面処理剤の塗布濃度が2.0質量%より高いと吸引脱水による表面処理剤の均一化が難しくなるし、ヤンキードライヤーで乾燥する際に湿紙とヤンキードライヤーの接着が強くなり過ぎて、紙面の毛羽立ちが発生しやすくなる。
スプレー方式は1流体スプレー、気−液の2流体スプレーのいずれも使用できる。スプレーの噴霧パターンは扇形、充円錐、空円錐のいずれも使用できる。スプレーノズルについては塗布むらができないように設置間隔や設置本数を調整する。
本発明の用紙の製造方法では、ドライヤーで乾燥後に、カレンダー装置により平滑化や紙厚を均一化することができる。かかるカレンダー装置としては、チルドカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダーなどの一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。
以上のようにして得られた用紙の片面に有色シートを貼り合わせることにより、和紙調の風合いを有する化粧シートを提供することができる。有色シートを貼り合わせることにより、用紙の地合いが容易に視認できるようになるため、いっそう和紙調の風合いが表現できることになる。有色シートとしては、紙、あるいは不織布や、樹脂製のフィルム等が使用でき、前記用紙よりも濃色であることが望ましい。
以下、実施例及び比較例により、本発明の効果を具体的に表す。なお、%は特に断りのない限り、固形分換算での質量%を表し、添加量は絶乾パルプ100質量部に対する量で表す。
(実施例1)
NBKP60質量部(ろ水度700mlCSF)、LBKP40質量部(ろ水度520mlCSF)からなる原料を使用し、硫酸バンド2.5質量%(アルミナ換算濃度8%品:有姿)、酸性ロジンサイズ剤(星光PMC株式会社製 商品名:AL1206)0.35質量%、ポリアクリルアミド系紙力増強剤(星光PMC株式会社製 商品名:DS4789)0.25質量%、カチオン澱粉(ジー・エス・エルジャパン株式会社製 商品名:ジェルトロン24)1.0質量%を添加して坪量設定100g/mの用紙を抄紙した。
ワイヤーパートを通過した後のプレスパートで、湿紙オモテ面に紙力増強剤としてカチオン澱粉(日本NSC株式会社製 商品名:CATO304)を濃度0.60%に調整し、塗布量0.60g/m(有姿で100g/m)となるようにスプレーし、坪量設定100g/mの用紙を製造した。なお、スプレー直後の1番プレスでは、紙のオモテ面がプレーンロールに接し、ウラ面がフェルトを介してサクションロールに接するようになっており、紙のオモテ面からウラ面の方向へサクションプレスロールにより吸引脱水を行っている。スプレー装置は、フラット散水型スプレーノズル(株式会社ニイクラ製 1/4 S0495)を抄紙機の幅方向5cm間隔で配列したものを3系列使用した。その他の製造条件としては、ヤンキードライヤータッチロールの線圧40kN/m、J/W比1.010、リール水分7.2%、抄速210m/min、カレンダー処理なしとした。得られた用紙の評価結果を表1に示す。
(実施例2)
J/W比1.130とした以外は、実施例1と同様に用紙を製造した。得られた用紙の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
NBKP40質量部(ろ水度490mlCSF)、LBKP60質量部(ろ水度370mlCSF)からなる原料を使用したこと、坪量設定を35g/mとしたこと、さらに、J/W比0.900、リール水分5.2%、抄速490m/minとした以外は、実施例1と同様に用紙を製造した。得られた用紙の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
坪量設定を120g/mとしたこと以外は、実施例1と同様に用紙を製造した。得られた用紙の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
NBKP35質量部(ろ水度600mlCSF)、LBKP65質量部(ろ水度450mlCSF)からなる原料を使用したこと、ヤンキードライヤータッチロールの線圧100kN/mとした以外は実施例2と同様にして用紙を製造した。得られた用紙の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
坪量設定を160g/mとしたこと、ヤンキードライヤータッチロールの線圧を40kN/m、抄速200m/minとしたこと以外は、比較例1と同様に用紙を得た。
(比較例3)
J/W比1.015、ヤンキードライヤータッチロールの線圧100kN/mとした以外は、実施例3と同様に用紙を得た。
実施例、比較例の用紙の評価方法は次のとおりである。
(坪量)JISP8124:2011紙及び板紙−坪量の測定方法
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法
(厚さ変動係数)JISP8118:2014紙及び板紙−厚さ、密度および比容積の試験方法に基づき厚さを測定する。ただし、測定箇所は縦方向に概ね直線上に配列する50箇所の測定データにより、平均値をX、標準偏差をσとすると、変動係数(%)はσ/X×100で表す。
(坪量変動指数)A4サイズの用紙に、目視判断で厚い部分と薄い部分をでマーキングし、それぞれについて、孔径6mmのパンチにより100個の試料を採取し、その合計質量により、厚い部分の坪量M(g/m)と、薄い部分の坪量m(g/m)を求める。そして、次式により坪量変動指数(%)を求める。
(M−m)/BW×100(%)
ただし、BW(g/m)はJISP8124:2011紙及び板紙−坪量の測定方法 による坪量
(光沢度)JISP8142:2005紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法
(和紙調風合いの評価)
各用紙を10名により次の3水準で評価し、最多評価をその用紙の評価とした。評価は目視と手触りで行い、目視評価は用紙をA4の大きさにカットし、黒色の紙の上に重ねた状態で評価した。(評価水準:◎優れる ○良い ×一般の用紙と変わらない)
表1のとおり、本願発明の実施例1〜4では、和紙調風合いの評価が良好となっている。比較例では、目視、手触りのいずれかの評価結果が悪くなっている。比較例1は、NBKPの質量比率が35%と少なく、厚さ変動係数が4.8%と小さく、光沢度が24.8%と高いので目視評価、手触り評価ともに悪くなっている。
比較例2は、光沢度が17.0%と低いので手触り評価は良いが、厚さ変動係数が4.5%と小さく、坪量が161g/mと大きいため不透明度が93.8%と高く、目視評価が悪くなっている。
比較例3は、厚さ変動係数が2.1%と小さく、光沢度が22.3%と高いので目視評価、手触り評価ともに悪くなっている。
以上のように、本発明の実施例では、和紙調の風合いを有する用紙が得られている。
本発明の用紙は、各種包装材料のほか、書道用紙、敷紙、あるいは、独特の光透過性を活用したふすま紙やランプシェードの材料として使用できる可能性がある。

Claims (4)

  1. 原料として木材パルプを主体に抄紙される用紙であって、以下1〜5の条件を満たすことを特徴とする。
    1.主原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。
    2.前記NBKPのカナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が200〜600mlCSFとされている。
    3.坪量が30〜150g/mの範囲である。
    4.厚さ変動係数が5.0〜15%である。
    5.不透明度が93%以下である。
  2. 原料として木材パルプを主体に抄紙される用紙であって、以下1〜5の条件を満たすことを特徴とする。
    1.主原料として、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が使用されており、NBKPとLBKPの質量比率が20:80〜80:20である。
    2.前記NBKPのカナダ標準ろ水度が300〜800mlCSF、前記LBKPのカナダ標準ろ水度が200〜600mlCSFとされている。
    3.坪量が30〜150g/mの範囲である。
    4.坪量変動指数が10%以上である。
    5.不透明度が93%以下である。
  3. 前記用紙がヤンキー抄紙機で製造された片艶紙であり、艶面の光沢度が20%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の用紙。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の用紙の片面に有色シートを貼り合わせたことを特徴とする化粧シート。
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