特許文献1に記載された原稿給送装置(原稿搬送装置)は、原稿読取装置の読取箇所において空気流を利用することにより、原稿のプラテンガラスとの分離性が高められるので、原稿のプラテンガラスへの張り付き防止という点に関して言えば、搬送性能の向上を図ることが可能となる。しかしながら、原稿読取部において、原稿搬送方向下流側から送風しているので、原稿の搬送自体に関して言えば、ブレーキが掛かる形になり、原稿の搬送性能を効果的に向上させているとは言い難い。
また、特許文献2に記載された自動原稿送り装置、及び特許文献3に記載された自動原稿搬送装置は、原稿載置トレイに積み上げられた原稿束に対して空気を吹き当てることにより、原稿供給時の原稿の分離性を高め、供給性能の向上を図ることが可能となる。しかしながら、この空気流は、原稿供給時の原稿の分離を助長するためだけに利用されるものであって、前記原稿のプラテンガラスとの分離のためや、その他の搬送性能の向上のために利用されるわけではない。したがって、空気流を発生させるための構成や電力が、効率良く利用されていない。
一方、原稿搬送装置は、搬送ローラを駆動するモータやその制御基板、さらに両面印刷用の原稿読取装置等を内蔵する場合がある。原稿搬送装置内部に熱がこもり、温度が上昇すると、原稿面に形成された画像や、制御基板、原稿読取装置に悪影響が及び、原稿読取精度が低下する恐れがある。したがって、原稿搬送装置は、その内部を効率良く冷却する必要がある。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、ファンにより、装置内部を効率良く冷却することに加えて、原稿の搬送性能を効果的に向上させることができ、原稿搬送の安定性が大幅に高められた原稿搬送装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、原稿載置トレイに積み上げられた原稿を、原稿面の画像データを読み取るべく1枚ずつ分離して搬送する原稿搬送装置において、内部を冷却するファンを、原稿搬送方向上流側から下流側に向かって空気を流通させる向きで設けるとともに、その空気がファンの吸気側及び排気側で原稿搬送路を流通するように設けて、その排気口が原稿の画像データを読み取る原稿読取装置及び/または原稿搬送装置を制御する制御基板と、前記原稿載置トレイに積み上げられた原稿束の下流側端面とを指向することとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記排気口から排出された空気が前記原稿載置トレイに積み上げられた原稿束の下流側端面を指向することとなる排気ルーバーを、原稿束の下流側端面のすぐ下流側に位置する壁部に設けることとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記排気ルーバーと原稿束の下流側端面との間に空間を設けて、前記排気ルーバーを前記壁部に設けることとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記原稿載置トレイに積み上げられた原稿束の下流側端面に向かって排出された空気の、少なくとも一部が、原稿搬送路の最下流に設けられた原稿排出トレイに原稿を排出する原稿排出口に向かって流通することとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記排気口から排出された空気が前記原稿排出口を指向することとなる排気ダクトを設けることとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記ファンは、その吸気側が、ファンの原稿搬送方向上流側の前記原稿搬送路を通過する原稿の原稿面を指向することとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記ファンは、その吸気口が、ファンの原稿搬送方向上流側に設けられた搬送ローラの周面に接触する原稿面を指向することとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記搬送ローラは、原稿搬送方向と直角をなす原稿幅方向に複数個備えられ、前記ファンは、これら隣り合う2個のローラ間に空気を流通させるように設けることとした。
また、上記構成の原稿搬送装置において、前記原稿載置トレイと、前記原稿排出トレイとが、互いの原稿搬送方向を逆にして、上下二段にして構成されるとともに、原稿載置トレイから原稿を送り出す原稿供給口と、原稿排出トレイに原稿を排出する前記原稿排出口とが、各トレイの同じ側に設けられ、原稿供給口から原稿排出口まで延びる原稿搬送路が、上下方向にU字状に湾曲していることとした。
本発明の構成によれば、原稿載置トレイに積み上げられた原稿を、原稿面の画像データを読み取るべく1枚ずつ分離して搬送する原稿搬送装置において、内部を冷却するファンを、原稿搬送方向上流側から下流側に向かって空気を流通させる向きで設けるとともに、その空気がファンの吸気側及び排気側で原稿搬送路を流通するように設けることとしたので、ファンによる空気流が原稿搬送の流れに沿うことになり、ブレーキを掛けることなく、原稿を搬送することができる。そして、ファンの上流側で原稿を引っ張る形となり、原稿の搬送を助長することが可能となる。さらに、ファンは、その排気口が原稿の画像データを読み取る原稿読取装置及び/または原稿搬送装置を制御する制御基板と、原稿載置トレイに積み上げられた原稿束の下流側端面とを指向することとしたので、ファンによる空気流を原稿読取装置及び制御基板と原稿束の端面とに吹き当てることができる。これにより、原稿読取装置及び制御基板を冷却しつつ原稿の分離を助長することができ、供給性能の向上を図ることが可能となる。したがって、ファンによる空気流を、原稿の搬送性能を高めたり、原稿供給時の原稿の分離を助長したりするためにも利用することができる。このようにして、ファンにより、装置内部を効率良く冷却することに加えて、原稿の搬送性能を効果的に向上させることができ、原稿搬送の安定性が大幅に高められた原稿搬送装置を提供することが可能である。
また、排気口から排出された空気が原稿載置トレイに積み上げられた原稿束の下流側端面を指向することとなる排気ルーバーを、原稿束の下流側端面のすぐ下流側に位置する壁部に設けることとしたので、ファンによる空気流が、原稿束の端面に向かって進み易くなる。これにより、原稿束の端面に空気を強く吹き当てることができ、原稿を分離させる作用を高めることができる。したがって、原稿供給時におけるその供給性能が向上する。
また、排気ルーバーと原稿束の下流側端面との間に空間を設けて、排気ルーバーを壁部に設けることとしたので、ファンによる空気流が排気ルーバーから流出し易くなる。これにより、原稿束の端面に空気を的確に吹き当てることができ、原稿を分離させる作用を高めることができる。したがって、原稿供給時におけるその供給性能が向上する。
また、原稿載置トレイに積み上げられた原稿束の下流側端面に向かって排出された空気の、少なくとも一部が、原稿搬送路の最下流に設けられた原稿排出トレイに原稿を排出する原稿排出口に向かって流通することとしたので、ファンの排気により、原稿を、原稿排出口から積極的に原稿排出トレイに押し出すようにすることができる。これにより、原稿排出トレイに排出した原稿が、原稿排出口の箇所で滞り、その近傍に設けられた排出ローラ等に引っ掛かり、意図しない箇所に巻き込んで破損するといった不具合の発生を防止することが可能である。したがって、原稿の搬送性能の向上に加えて、原稿排出口の箇所における原稿の破損も防止することが可能となる。
また、排気口から排出された空気が原稿排出口を指向することとなる排気ダクトを設けることとしたので、原稿を、原稿排出口から積極的に原稿排出トレイに押し出す作用を高めることができる。したがって、原稿排出口の箇所における原稿の破損に対する予防の効果が向上する。
また、ファンは、その吸気側が、ファンの原稿搬送方向上流側の原稿搬送路を通過する原稿の原稿面を指向することとしたので、ファンの吸引力を利用して原稿を引っ張り易くなる。これにより、原稿の搬送を一層助長することが可能となる。したがって、原稿の搬送性能を向上させることができる。
また、ファンは、その吸気口が、ファンの原稿搬送方向上流側に設けられた搬送ローラの周面に接触する原稿面を指向することとしたので、ファンの吸引により、搬送ローラに原稿を張り付かせることが可能になる。これにより、搬送ローラと原稿との密着性が増大し、すべりが生じることなく、搬送ローラにより原稿を搬送することができる。したがって、原稿の搬送性能をさらに向上させることが可能となる。
また、搬送ローラは、原稿搬送方向と直角をなす原稿幅方向に複数個備えられ、ファンは、これら隣り合う2個のローラ間に空気を流通させるように設けることとしたので、搬送ローラと原稿とが接触する箇所に一層近い箇所で、搬送ローラに原稿を張り付かせる作用を働かせることが可能となる。これにより、搬送ローラと原稿とをさらに密着させることができ、原稿の搬送性能を高めることが可能である。
また、原稿載置トレイと、原稿排出トレイとが、互いの原稿搬送方向を逆にして、上下二段にして構成されるとともに、原稿載置トレイから原稿を送り出す原稿供給口と、原稿排出トレイに原稿を排出する原稿排出口とが、各トレイの同じ側に設けられ、原稿供給口から原稿排出口まで延びる原稿搬送路が、上下方向にU字状に湾曲していることとしたので、このような形でコンパクトに設計された原稿搬送装置において、ファンにより、装置内部を効率良く冷却することに加えて、原稿の搬送性能を効果的に向上させることができ、原稿搬送の安定性を大幅に高めることが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図1〜図9に基づき説明する。
最初に、本発明の実施形態に係る原稿搬送装置について、図1を用いてその構造の概略を説明する。図1は、原稿搬送装置の模型的垂直断面正面図である。図中の実線矢印は、用紙の搬送経路、及び搬送方向を示す。なお、本発明の実施形態に係る原稿搬送装置は、画像形成装置である複写機、ファクシミリ、または複写機やファクシミリ等の機能を兼ね備えた複合機の上部に搭載された原稿搬送装置として設計されたものとする。
原稿搬送装置1は、図1に示すように、原稿載置トレイ2、原稿送り部10、及び原稿排出トレイ3を備えている。
原稿載置トレイ2は、原稿搬送装置1の上部に設けられている。原稿載置トレイ2には、原稿を上方から載置して、積み上げることができる。原稿載置トレイ2は、原稿搬送方向の上流から下流、すなわち図1において右方から左方に向かって傾斜をなす構成となっている。
原稿載置トレイ2の原稿搬送方向下流部には、リフト部材4が設けられている。リフト部材4は、原稿載置トレイ2の載置面に沿った形をなす板状部材で構成されている。そして、リフト部材4は、その上流端に設けられた支軸4aを中心とし、下流端を自由端として、垂直面内で回転可能にして設けられている。リフト板4は、図示しないモータにより、支軸4aを中心として回転駆動せしめられ、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿の下流端が、その上方に配置された供給ローラ12に常時接触するように、上方に向かって付勢されている。
原稿送り部10は、原稿載置トレイ2の原稿搬送方向下流端に、原稿供給口11と、供給ローラ12とを備えている。供給ローラ12は、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿を最上層から1枚ずつ分離して供給する。原稿供給口11の下流側には、原稿送り部10の内部に向かって原稿搬送路13が延びている。
原稿搬送路13の先は、原稿搬送装置1の底面に到達し、この箇所に第1の原稿読取部14が設けられている。第1の原稿読取部14に送り込まれた原稿は、原稿搬送路13上をさらに下流側へ、すなわち図1において第1の原稿読取部14の箇所を左方から右方へと移動する最中に、その下方に設けられた画像形成装置本体の原稿読取装置(図示せず、以下第1の原稿読取装置と称す)により、下側の面である第1面の画像データが読み取られる。
原稿搬送路13の、第1の原稿読取部14の下流には、第2の原稿読取部15が設けられている。原稿両面の画像データの読み取りが必要な場合、第2の原稿読取部15に送り込まれた原稿は、原稿搬送路13上をさらに下流側へ、すなわち図1において第2の原稿読取部15の箇所を左方から右方へと移動する最中に、その上方に設けられた第2の原稿読取装置16により、上側の面である第2面の画像データが読み取られる。
原稿搬送路13の下流端には、原稿排出口17が設けられている。画像データの読み取りが済んだ原稿は、原稿排出口17から原稿排出トレイ3に排出される。
原稿排出トレイ3は、原稿載置トレイ2のすぐ下方に備えられ、これらのトレイが上下二段にして構成されている。原稿載置トレイ3に排出された原稿は、原稿搬送装置1の手前側から取り出すことができる(図7参照)。
原稿載置トレイ2と、原稿排出トレイ3とは、互いの原稿搬送方向を逆にして、すなわち図1において原稿載置トレイ2は原稿を左方に送り出し、原稿排出トレイ3は原稿を右方に送り出す形にして構成されている。これにより、原稿供給口11と、原稿排出口17とが、各トレイの同じ側、すなわち図1において左側に設けられている。そして、原稿供給口11から原稿排出口17まで延びる前記原稿搬送路13は、図1に示すように、上下方向にU字状に湾曲した形で設けられている。
上記構成により、原稿搬送装置1は、原稿載置トレイ2に載置された原稿を、原稿送り部10内に送り込み、原稿読取部でその画像データを読み取った後、原稿排出トレイ3に排出する。
続いて、原稿搬送装置1の原稿送り部10の詳細な構成について、図1に加えて、図2を用いて説明する。図2は、原稿搬送装置の原稿送り部を示す模型的垂直断面正面図である。なお、図2において、実線矢印は原稿の搬送経路及び搬送方向を、白抜き矢印は空気の流通経路及び流通方向を示す。
原稿送り部10は、前述のように、原稿載置トレイ2の原稿搬送方向下流端に、原稿供給口11と、供給ローラ12とを備えている(図2参照)。供給ローラ12は、原稿搬送方向と直角をなす原稿幅方向略中央部に設けられ(図7参照)、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束の最上層に圧接し、原稿を下流側へと送り出す。原稿搬送路13は、原稿供給口11の下流側に、斜め下方に向かって延びている。
原稿搬送路13上において、原稿供給口11のすぐ下流には、図2に示すように、互いに圧接し合う分離ローラ18aと給紙ローラ18bとが設けられている。分離ローラ18aと給紙ローラ18bとは、供給ローラ12から受け取った原稿を1枚ずつ分離して、その下流側の第1の原稿読取部14の方へと送り出す。
搬送ローラ対18の箇所の下流には、レジストローラ対19が設けられている。レジストローラ対19は、互いに圧接し合うレジストローラ19aとコロ19bとで構成され、第1の原稿読取部14へと向かう原稿に対して、正確な読み取りが実行できるよう斜め送りを矯正してから送り出す。
レジストローラ対19の箇所の下流には、比較的大径の搬送ローラ20が設けられている。原稿搬送路13は、この大径搬送ローラ20の周面約半周分の長さで、周面に沿った形で下流へと続いている。これにより、原稿搬送路13は、大径搬送ローラ20の上流側では図2において左方に向かって延び、下流側では右方に向かって延びている。この間、原稿搬送路13には、大径搬送ローラ20に圧接する3個のコロ21、22、23が設けられている。
大径搬送ローラ20に圧接する3個のコロのうち、コロ22とコロ23との間には、第1の原稿読取部14が設けられている。この第1の原稿読取部14に送り込まれた原稿は、原稿搬送路13上をさらに下流側へ、すなわち図2において第1の原稿読取部14の箇所を左方から右方へと移動する最中に、その下方に設けられた第1の原稿読取装置100である画像形成装置本体の原稿読取装置により、下側の面である第1面の画像データが読み取られる。
第1の原稿読取部14の下流側であって、コロ23の箇所のさらに下流には、第2の原稿読取部15が備えられている。この第2の原稿読取部15には、密着型イメージセンサで構成された第2の原稿読取装置16と、搬送ローラ24とが設けられている。第2の原稿読取装置16は、原稿搬送路13を挟んで搬送ローラ24に対向し、原稿搬送路13の上方に設けられている。搬送ローラ24は、原稿搬送路13の下方に設けられ、その対向部材である第2の原稿読取装置16との間に原稿を挿通して搬送する。この第2の原稿読取部15に送り込まれた原稿は、原稿搬送路13上をさらに下流側へ、すなわち図2において第2の原稿読取部15の箇所を左方から右方へと移動する最中に、その上方に設けられた第2の原稿読取装置16により、上側の面である第2面の画像データが読み取られる。
第2の原稿読取部15の下流側であって、原稿搬送路13の下流端には、原稿排出口17、及び原稿排出ローラ対25が設けられている。画像データの読み取りが済んだ原稿は、排出ローラ25aと排出コロ25bとで構成される原稿排出ローラ対25によって、原稿排出口17から原稿排出トレイ3(図1参照)に排出される。
上記構成の原稿搬送装置1の原稿送り部10において、原稿供給口11から原稿排出口17まで、上下方向にU字状に湾曲した形で延びる原稿搬送路13の内側部分の構成要素は、搬送ユニット30としてユニット化して構成されている。
次に、この原稿搬送装置1の搬送ユニット30の詳細な構成について、図2に加えて、図3〜図5を用いて説明する。図3は図2に示す原稿送り部の搬送ユニットの斜視図にして、図2の左方から見たもの、図4は搬送ユニットの斜視図にして、図2の右方から見たもの、図5は搬送ユニットを上方から見た斜視図にして、搬送ガイド部材を取り外した状態を示すものである。
図3、及び図4に示すように、搬送ユニット30は、図2において原稿供給口11から原稿排出口17まで、上下方向にU字状に湾曲した形で延びる原稿搬送路13で囲まれた部分がユニット化されたものである。
搬送ユニット30は、その上部に、原稿搬送路13の、搬送ローラ18a及びレジストローラ19a周辺の箇所の、下側の搬送ガイド部材31を備えている。そして、搬送ユニット30には、大径搬送ローラ20が備えられ、第2の原稿読取装置16を包含している(図2参照)。大径搬送ローラ20は、図3に示すように、原稿幅方向に延びる共通の支軸20aが、5個の比較的幅の狭いローラ20bを貫通する形で構成されている。
搬送ユニット30から、搬送ガイド部材31を取り外すと、図5に示すようにその内部構造が露出する。搬送ユニット30の内部には、その上部に、第2の原稿読取装置16を制御する2枚の制御基板32、33が配置されている。第2の原稿読取装置16、及び制御基板32、33は、原稿搬送装置1を駆動することにより発熱する。
搬送ユニット30の、大径搬送ローラ20の原稿搬送方向下流側の箇所には、原稿搬送装置1の内部を冷却する2個のファン34が設けられている。2個のファン34は、各々、原稿幅方向に5個備えられたローラ20bのうちの、隣り合う2個の間に位置するように別々にして配置されている。
そして、ファン34は、図2に示すように、その吸気口34aが、大径搬送ローラ20の内側から、原稿搬送路13の大径搬送ローラ20の周面の箇所、すなわちこの周面に接触する原稿面を指向するように設けられている。これにより、ファン34を駆動することで、隣り合う2個のローラ20bの間に空気が流通する。
さらに、ファン34は、図2に示すように、その排気口34bが、原稿搬送方向下流側にある第2の原稿読取装置16、2枚の制御基板32、33、及び原稿排出口17を指向するように設けられている。そして、この排気口34bから排出された空気が向かう搬送ユニット30の下流端には、図2、及び図4に示すように排気グリル35が設けられている。ファン34を駆動し、排気口34bから排出される空気は、第2の原稿読取装置16、及び2枚の制御基板32、33を冷却しつつ、排気グリル35から搬送ユニット30の外部に送り出される。
上記構成の搬送ユニット30の、ファン34による空気流通方向下流側であって、排気グリル35の外側には、図2に示すように、排気ルーバー26が備えられている。
続いて、この排気ルーバー26周辺の詳細な構成について、図6〜図8を用いて説明する。図6は排気ルーバー周辺を示す垂直断面部分拡大正面図、図7は原稿載置トレイの方向から見た原稿搬送装置の斜視図、図8は原稿載置トレイの方向から見た図7と同様の原稿搬送装置の斜視図にして、原稿載置トレイを取り外した状態を示すものである。なお、図6において、実線矢印は原稿の搬送経路及び搬送方向を、白抜き矢印は空気の流通経路及び流通方向を示す。
図6に示すように、排気ルーバー26は、搬送ユニット30が設けられた箇所と、原稿載置トレイ2が設けられた箇所との間において、これら2箇所の空間の間で空気が流通するように、壁部27に設けられている。排気ルーバー26は、図6〜図8に示すように、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束Dmの下流側端面のすぐ下流側に配置されている。そして、排気ルーバー26は、搬送ユニット30側から原稿載置トレイ2側に向かって、やや上方を向くような形で構成されている(図6参照)。
このような排気ルーバー26により、ファン34の排気口34b(図2参照)から排出された空気は、排気グリル35を通って搬送ユニット30から排出され、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束Dmの下流側端面を指向することとなる。
次に、原稿搬送が進んだ際の上記排気ルーバー26の作用について、図6に加えて、図9を用いて説明する。図9は、図6と同様の排気ルーバー周辺を示す垂直断面部分拡大正面図にして、図6より原稿の搬送が進んだ状態を示すものである。なお、図6同様、図9において、実線矢印は原稿の搬送経路及び搬送方向を、白抜き矢印は空気の流通経路及び流通方向を示す。
まず、図6は、原稿搬送開始前の状態を示している。この状態において、原稿載置トレイ2には多くの原稿Dが載置され、リフト部材4は比較的下方に位置している。そして、原稿Dの画像データの読み取りを開始するために、読み取り開始ボタンを押すなどして原稿搬送装置1を起動すると、装置内を冷却すべくファン34が回転する。
ファン34の排気口34b(図2参照)から排出された空気は、上述のように、排気グリル35を通って搬送ユニット30から排出され、排気ルーバー26を通って原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束Dmの下流側端面に吹き当てられる。これにより、上層の原稿Dを浮揚させ、分離を助長することができる。
その後、原稿Dの画像データの読み取りが続くと、図9に示すように、原稿載置トレイ2の原稿Dはその数が減少する。これにより、リフト部材4は、図示しないモータによってその下流端が上昇せしめられる。そして、リフト部材4の下流端が上昇すると、図9に示すように、リフト部材4の下流側端面が排気ルーバー26の出口を塞ぐ形になる。したがって、排気ルーバー26を通って原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束Dmの下流側端面に向かって排出された空気は、その一部が、行く手を阻まれ、下方に導かれることとなる。
ここで、排気グリル35の外側であって、排気グリル35及び排気ルーバー26の下方には排気ダクト28が備えられている。排気ダクト28は、搬送ユニット30の排気グリル35から排出された空気が、原稿搬送路13の下流端にある原稿排出口17を指向するように設けられている。
排気ルーバー26の箇所でリフト部材4の下流側端面により行く手を阻まれ、下方に導かれた空気は、図9に示すように、排気ダクト28を通ってさらに下方に、原稿排出口17の箇所まで導かれる。
一方、原稿の搬送が進み、原稿載置トレイ2の原稿Dの数が減少すると、原稿排出トレイ3では、読み取り済みの原稿Dの数が増加する。そして、原稿Dは、原稿排出口17の箇所まで導かれたファン34の排気により、原稿排出トレイ3に向かって押し出される形となる。
このようにして、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿Dを、原稿面の画像データを読み取るべく1枚ずつ分離して搬送する原稿搬送装置1において、内部を冷却するファン34を、空気が、ファン34の上流側で原稿搬送路13を流通し、且つ原稿搬送方向上流側から下流側に向かって流通する向きで設けたので、ファン34による空気流が原稿搬送の流れに沿うことになり、ブレーキを掛けることなく、原稿Dを搬送することができる。そして、ファン34の上流側で原稿Dを引っ張る形となり、原稿Dの搬送を助長することが可能となる。さらに、ファン34は、その排気口34bが、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束Dmの下流側端面を指向するので、ファン34による空気流を原稿束Dmの端面に吹き当てることができる。これにより、原稿Dの分離を助長することができ、供給性能の向上を図ることが可能となる。したがって、ファン34による空気流を、原稿Dの搬送性能を高めたり、原稿供給時の原稿Dの分離を助長したりするためにも利用することができる。このようにして、ファン34により、装置内部を効率良く冷却することに加えて、原稿Dの搬送性能を効果的に向上させることができ、原稿搬送の安定性が大幅に高められた原稿搬送装置1を提供することが可能である。
また、排気口34bから排出された空気が原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束Dmの下流側端面を指向することとなる排気ルーバー26を、原稿束Dmの下流側端面のすぐ下流側に位置する壁部27に設けたので、ファン34による空気流が、原稿束Dmの端面に向かって進み易くなる。これにより、原稿束Dmの端面に空気を強く吹き当てることができ、原稿Dを分離させる作用を高めることができる。したがって、原稿供給時におけるその供給性能が向上する。
また、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿束Dmの下流側端面に向かって排出された空気の、少なくとも一部が、原稿搬送路13の最下流に設けられた原稿排出トレイ3に原稿Dを排出する原稿排出口17に向かって流通するので、ファン34の排気により、原稿Dを、原稿排出口17から積極的に原稿排出トレイ3に押し出すようにすることができる。これにより、原稿排出トレイ3に排出した原稿Dが、原稿排出口17の箇所で滞り、その近傍に設けられた排出ローラ25a等に引っ掛かり、意図しない箇所に巻き込んで破損するといった不具合の発生を防止することが可能である。したがって、原稿Dの搬送性能の向上に加えて、原稿排出口17の箇所における原稿Dの破損も防止することが可能となる。
また、排気口34bから排出された空気が原稿排出口17を指向することとなる排気ダクト28を設けることとしたので、原稿Dを、原稿排出口17から積極的に原稿排出トレイ3に押し出す作用を高めることができる。したがって、原稿排出口17の箇所における原稿Dの破損に対する予防の効果が向上する。
そして、ファン34は、その吸気口34aが、ファン34の原稿搬送方向上流側に設けられた大径搬送ローラ20の周面に接触する原稿面を指向するので、ファン34の吸引により、大径搬送ローラ20に原稿Dを張り付かせることが可能になる。これにより、大径搬送ローラ20と原稿Dとの密着性が増大し、すべりが生じることなく、大径搬送ローラ20により原稿Dを搬送することができる。したがって、原稿Dの搬送性能をさらに向上させることが可能となる。
また、大径搬送ローラ20は、原稿搬送方向と直角をなす原稿幅方向に複数個備えられ、ファン34は、これら隣り合う2個のローラ20b間に空気を流通させるように設けたので、大径搬送ローラ20と原稿Dとが接触する箇所に一層近い箇所で、大径搬送ローラ20に原稿Dを張り付かせる作用を働かせることが可能となる。これにより、大径搬送ローラ20と原稿Dとをさらに密着させることができ、原稿Dの搬送性能を高めることが可能である。
さらに、原稿載置トレイ2と、原稿排出トレイ3とが、互いの原稿搬送方向を逆にして、上下二段にして構成されるとともに、原稿載置トレイ2から原稿Dを送り出す原稿供給口11と、原稿排出トレイ3に原稿Dを排出する原稿排出口17とが、各トレイの同じ側に設けられ、原稿供給口11から原稿排出口17まで延びる原稿搬送路13が、上下方向にU字状に湾曲しているので、このような形でコンパクトに設計された原稿搬送装置1において、ファン34により、装置内部を効率良く冷却することに加えて、原稿Dの搬送性能を効果的に向上させることができ、原稿搬送の安定性を大幅に高めることが可能となる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、上記実施形態において、ファン34は、隣り合うローラ20bの間に別々に2個設けることとしたが、その数量、配置箇所等についてはこれに限定されるわけではなく、他の構成であっても構わない。