本発明の実施形態のハイブリッド車両について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態のハイブリッド車両は、動力伝達装置1を備えると共に、動力発生源としてエンジン2と、エンジン2を始動可能な電動機(モータ・ジェネレータ)3とを有する。エンジン2は、本発明における内燃機関に相当する。
動力伝達装置1は、エンジン2及び/又は電動機3の動力(動力)を被駆動部である駆動輪4に伝達して、駆動輪4を駆動可能に構成されている。また、動力伝達装置1は、エンジン2からの動力及び/又は駆動輪4からの動力を電動機3に伝達して、電動機3により回生動作可能に構成されている。また、動力伝達装置1は、エンジン2及び/又は電動機3の動力を、車両に搭載された補機5を駆動可能に構成されている。補機5は、例えば、エアーコンディショナーのコンプレッサ、ウォータポンプ、オイルポンプ等である。
エンジン2は、例えば、ガソリン、軽油、アルコール等の燃料を燃焼させることにより動力(トルク)を発生する内燃機関である。エンジン2は、発生した動力を動力伝達装置1に入力するための駆動力入力軸(本発明における機関出力軸)2aを有する。このエンジン2は、通常の自動車のエンジンと同様に、図示しない吸気路に備えられたスロットル弁の開度を制御する(エンジン2の吸気量を制御する)ことによって、エンジン2よる動力が調整される。
電動機3は、本実施形態では3相のDCブラシレスモータである。電動機3は、ハウジング内に回転自在に支持された中空のロータ(回転体)3aと、ステータ(固定子)3bとを有する。本実施形態のロータ3aには、複数の永久磁石が備えられている。ステータ3bには、3相分のコイル3baが装着されている。ステータ3bは、動力伝達装置1の外装ケース等、車体に対して静止した不動部に設けられたハウジングに固定されている。
コイル3baは、インバータ回路を含む駆動回路であるパワー・ドライブ・ユニット(以下、「PDU」という)6を介して直流電源としてのバッテリ(蓄電器、二次電池)7に電気的に接続されている。また、PDU6は、電子制御ユニット(以下、ECUという)8に電気的に接続されている。
図2に示すように、ECU8は、車両に備えられた各センサ等からの信号に基づいて、車両の各構成要素を統括的に制御する。ECU8は、CPU(Central Processing Unit)41とメモリ42とを有する。ECU8は、例えばCPU41がメモリ42に記憶されたプログラムを実行することにより、動力伝達装置1、エンジン2、電動機3等を制御する。詳細については、後述する。
動力設定部9は、運転者の操作や走行状態であるアクセル開度と車速とに基づいて、駆動輪4に要求される動力を設定可能である。各種センサ11については、後述する。冷却部12は、ECU8の制御により、電動機3を冷却可能に構成されている。この冷却部12は、電動機3を冷却する冷却量(単位時間当り冷却量)を、ECU8により制御可能に構成されている。冷却部12としては、油冷装置、水冷装置、空冷装置等を採用することができる。
次に、本実施形態の動力伝達装置1の各構成要素について説明する。動力伝達装置1は、エンジン2の動力と電動機3の動力(トルク)を合成する動力合成機構13を有する。動力合成機構13としては、本実施形態では遊星歯車装置を採用する。動力合成機構13については後述する。
エンジン2の駆動力入力軸2aはエンジン2に接続されており、エンジン2内部の燃料の燃焼により生じる動力が駆動力入力軸2aに伝達される。駆動力入力軸2aは、第1クラッチC1により、第1主入力軸(本発明における第1入力軸)14と断接可能になるよう構成されている。この第1主入力軸14は、駆動力入力軸2aに平行に配置され、エンジン2からの動力が第1クラッチC1を介して入力される。第1主入力軸14は、エンジン2側から電動機3側に亘って延在している。また、本実施形態の第1主入力軸14は、電動機3のロータ3aに連結されている。
第1クラッチC1は、ECU8の制御により、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14とを断接可能に構成されている。第1クラッチC1により駆動力入力軸2aと第1主入力軸14とが接続されると、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との間で動力伝達が可能となる。また、第1クラッチC1により駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との接続が切断されると、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との間で動力伝達が切断される。
第1主入力軸14に対して、第1副入力軸15が同軸心に配置されている。第2クラッチC2は、ECU8の制御により、駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との間を断接可能に構成されている。第2クラッチC2により駆動力入力軸2aと第1副入力軸15とが接続されると、駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との間で動力伝達が可能となる。
また、第2クラッチC2により駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との接続が切断されると、駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との間で動力伝達が切断される。第1クラッチC1と第2クラッチC2は、第1主入力軸14に軸心方向に隣接して配置されている。本実施形態の第1クラッチC1と第2クラッチC2は、湿式多板クラッチで構成されている。
なお、第1クラッチC1による駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との接続についての制御と、第2クラッチC2による駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との接続についての制御とが制御手段に該当する。
上述したように、動力伝達装置1では、第1クラッチC1が、駆動力入力軸2aの回転を第1主入力軸14に解除自在に伝達し、第2クラッチC2が駆動力入力軸2aの回転を第1副入力軸15に解除自在に伝達するように構成されている。
第1主入力軸14に対して平行にリバース軸16が配置されている。リバース軸16には、リバースギヤ軸17が回転自在に軸支されている。リバースギヤ軸17にはギヤ17aが固定され、リバースギヤ軸17とギヤ17aとが一体回転可能に構成されている。一方、第1主入力軸14にはギヤ14aが固定され、第1主入力軸14とギヤ14aとが一体回転可能に構成されている。
ギヤ17aとギヤ14aとは噛合しているため、第1主入力軸14とリバースギヤ軸17とは常時結合している。また、ギヤ列18は、第1主入力軸14上に固定されたギヤ14aとリバースギヤ軸17に設けられたギヤ17aとが噛合して構成されている。
リバース軸16に対して、ひいては、第1主入力軸14に対して平行に中間軸19が配置されている。中間軸19とリバース軸16とは、ギヤ列20を介して常時接続されている。このギヤ列20は、中間軸19上に一体回転可能に固定されたギヤ19aとリバース軸16上に一体回転可能に固定されたギヤ16aとが噛合して構成されている。
また、中間軸19と第1副入力軸15とは、ギヤ列21を介して常時接続されている。このギヤ列21は、中間軸19上に一体回転可能に固定されたギヤ19aと第1副入力軸15に一体回転可能に固定されたギヤ15aとが噛合して構成されている。
中間軸19に対して、ひいては、第1主入力軸14に対して平行に第2主入力軸(本発明における第2入力軸)22が配置されている。第2主入力軸22と中間軸19とは、ギヤ列23を介して常時接続されている。このギヤ列23は、中間軸19上に一体回転可能に固定されたギヤ19aと第2主入力軸22上に一体回転可能に固定されたギヤ22aとが噛合して構成されている。したがって、第1副入力軸15と第2主入力軸22とは、常時接続されている。
第1主入力軸14は、変速比の異なる複数の変速段のうち、変速比順位で奇数番目又は偶数番目の変速段(本実施形態では奇数番目の3速段及び5速段)の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支すると共に、電動機3に連結されている。
詳細には、第1主入力軸14に対して、第2副入力軸24が同軸心に配置されている。第2副入力軸24は、第1副入力軸15よりも電動機3側に配置されている。第1主入力軸14と第2副入力軸24とは、第1同期噛合機構S1(本実施形態ではシンクロメッシュ機構)を介して接続される。第1同期噛合機構S1は、第1主入力軸14に設けられ、3速ギヤ24aと5速ギヤ24bとを第1主入力軸14に選択的に連結する。
第1同期噛合機構S1はシンクロクラッチ等の周知のものであり、シフトフォーク及び図示しないアクチュエータで、スリーブS1aを第2副入力軸24の軸方向に沿って移動させることにより、3速ギヤ24aと5速ギヤ24bとを第1主入力軸14に選択的に接続させる。スリーブS1aが図示の中立位置から3速ギヤ24a側に移動した場合、3速ギヤ24aと第1主入力軸14とが接続される。一方、スリーブS1aが図示の中立位置から5速ギヤ24b側に移動した場合、5速ギヤ24bと第1主入力軸14とが接続される。なお、本実施形態では、第2副入力軸24の電動機3側に3速ギヤ24aが設けられると共に、第2副入力軸24のエンジン2側に5速ギヤ24bが設けられている。
第2主入力軸22は、変速比の異なる複数の変速段のうち、変速比順位で偶数番目又は奇数番目の変速段(本実施形態では偶数番目の2速段及び4速段)の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する。詳細には、第2主入力軸22に対して、第3副入力軸25が同軸心に配置されている。第2主入力軸22と第3副入力軸25とは、第2同期噛合機構S2(本実施形態ではシンクロメッシュ機構)を介して接続される。
第2同期噛合機構S2は、第2主入力軸22に設けられ、2速ギヤ25aと4速ギヤ25bとを第2主入力軸22に選択的に連結するように構成されている。第2同期噛合機構S2は、シンクロクラッチ等の周知のものであり、シフトフォーク及び図示しないアクチュエータで、スリーブS2aを第3副入力軸25の軸方向に移動させることにより、2速ギヤ25aと4速ギヤ25bとを第2主入力軸22に選択的に連結させる。
スリーブS2aが図示の中立位置から2速ギヤ25a側に移動した場合、2速ギヤ25aと第2主入力軸22とが連結される。一方、スリーブS2aが図示の中立位置から4速ギヤ25b側に移動した場合、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とが連結される。なお、本実施形態では、第3副入力軸25の電動機3側に2速ギヤ25aが設けられると共に、第3副入力軸25のエンジン2側に4速ギヤ25bが設けられている。
第3副入力軸25と出力軸26とは、ギヤ列27を介して結合されている。このギヤ列27は、第3副入力軸25上に一体回転可能に固定された2速ギヤ25aと出力軸26に一体回転可能に固定されたギヤ26aとが噛合して構成されている。また、第3副入力軸25と出力軸26とは、ギヤ列28を介して結合されている。このギヤ列28は、第3副入力軸25上に一体回転可能に固定された4速ギヤ25bと、出力軸26に一体回転可能に固定されたギヤ26bとが噛合して構成されている。
出力軸26と第2副入力軸24とは、ギヤ列29を介して結合されている。このギヤ列29は、出力軸26に固定されたギヤ26aと第2副入力軸24上に固定されたギヤ24aとが噛合して構成されている。また、出力軸26と第2副入力軸24とは、ギヤ列30を介して結合されている。このギヤ列30は、出力軸26に固定されたギヤ26bと第2副入力軸24上に固定されたギヤ24bとが噛合して構成されている。なお、出力軸26に固定される各ギヤ列のギヤ26a,26bを従動ギヤという。
また、出力軸26には、ファイナルギヤ26cが固定されている。出力軸26の回転は、ファイナルギヤ26c、差動歯車ユニット31及び車軸32を介して駆動輪4に伝達するように構成されている。
本実施形態の動力合成機構13は、電動機3の内側に設けられている。電動機3を構成するロータ3a、ステータ3b、及びコイル3baの一部又は全部は、第1主入力軸14の軸線方向と直交する方向に沿って、動力合成機構13と重なるように配置されている。
動力合成機構13は、第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を互いに差動回転可能な差動装置により構成されている。動力合成機構13を構成する差動装置は、本実施形態では、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、3つの回転要素として、サンギヤ13s(第1回転要素)と、リングギヤ13r(第2回転要素)と、このサンギヤ13sとリングギヤ13rとの間で、サンギヤ13sとリングギヤ13rに噛合された複数のプラネタリギヤ13pを回転自在に支持するキャリア(第3回転要素)13cとを同軸心に備えている。これらの3つの回転要素13s,13r、13cは、互いの間で動力を伝達可能であると共に、それぞれの回転数(回転速度)の間の関係を一定の共線関係を保ちつつ回転する。
サンギヤ13sは、第1主入力軸14と連動して回転するように、第1主入力軸14に一体回転可能に固定され、第1主入力軸14に連結されている。また、サンギヤ13sは、電動機3のロータ3aと連動して回転するように、ロータ3aに連結されている。これにより、サンギヤ13s、第1主入力軸14、ロータ3aは連動して回転する。
リングギヤ13rは、第3同期噛合機構SLにより、不動部であるハウジング33に対して固定する状態と、非固定状態とを切換自在に構成されている。詳細には、第3同期噛合機構SLのスリーブSLaを、リングギヤ13rの回転軸方向に沿って移動させることにより、ハウジング33とリングギヤ13rとを固定した状態と、非固定状態とを切換自在となるように構成されている。また、キャリア13cは、第2副入力軸24と連動して回転するように、第2副入力軸24の電動機3側の一端部に連結されている。
リバース軸16に対して、補機5の入力軸5aが平行に配置されている。リバース軸16と、補機5の入力軸5aとは、例えば、ベルト機構34を介して結合されている。このベルト機構34は、リバースギヤ軸17上に固定されたギヤ17bと、入力軸5a上に固定されたギヤ5bとがベルトを介して連結されて構成されている。補機5の入力軸5aには、補機用クラッチ35が介設されている。ギヤ5bと補機5の入力軸5aとが補機用クラッチ35を介して同軸心に連結されている。
補機用クラッチ35は、ECU8の制御の下で、ギヤ5bと補機5の入力軸5aとの間を接続又は切断するように動作するクラッチである。この場合、補機用クラッチ35を接続状態に動作させると、ギヤ5bと補機5の入力軸5aとが互いに一体に回転するように、補機用クラッチ35を介して結合される。また、補機用クラッチ35を切断状態に動作させると、補機用クラッチ35によるギヤ5bと補機5の入力軸5aとの間の結合が解除される。この状態では、第1主入力軸14と補機5の入力軸5aへの動力伝達が切断される。
リバースギヤ軸17上には、リバースギヤ軸17上に一体回転可能に固定された後退ギヤ17cが設けられている。また、リバース軸16には、リバース軸16との連結及び切断を切換可能な後退同期噛合機構SRが設けられている。
次に、各変速段について説明する。上述したように、本実施形態の動力伝達装置1は、変速比の異なる複数の変速段の各ギヤ列を介して入力軸の回転速度を複数段に変速して出力軸26に出力するように構成されている。また、動力伝達装置1では、変速段が大きいほど変速比が小さいように規定されている。
エンジン始動時、第1クラッチC1を接続状態にして、電動機3を駆動し、エンジン2を始動させる。即ち、電動機3はスタータとしての機能を兼ね備えている。
1速段は、第3同期噛合機構SLにより、リングギヤ13rとハウジング33とを連結した状態(固定状態)とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第2クラッチC2を切断状態(以降、OFF状態という)、第1クラッチC1を接続状態(以降、ON状態という)にする。エンジン2から出力される動力が、サンギヤ13s、キャリア13c、第2副入力軸24、ギヤ列29、出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
エンジン2を駆動させると共に、電動機3を駆動させれば、1速段での電動機3によるアシスト走行(エンジン2の動力を電動機3で補助する走行)を行うこともできる。更に、第1クラッチC1をOFF状態とすれば、電動機3のみで走行するEV走行を行うこともできる。また、減速回生運転中では、電動機3を制動することにより車両を減速状態として電動機3で発電させ、PDU6を介してバッテリ7に充電させることができる。
2速段は、第3同期噛合機構SLによりリングギヤ13rとハウジング33とを非固定状態とし、第2同期噛合機構S2を、第2主入力軸22と2速ギヤ25aとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第2クラッチC2をON状態とする。
この2速段では、エンジン2から出力される動力が、第2クラッチC2、第1副入力軸15、ギヤ列21、中間軸19、ギヤ列23、第2主入力軸22、ギヤ列27、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、2速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、この状態でエンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。エンジン2による駆動を止める場合には、例えばエンジン2をフューエルカット状態や休筒状態としてもよい。又、2速段で減速回生運転を行うことができる。
第1クラッチC1をOFF状態とし、第2クラッチC2をON状態とし、エンジン2の駆動により2速段で走行中、ECU8が車両の走行状態により3速段へアップシフトが予想されると判断した場合に、第1同期噛合機構S1により、第1主入力軸14と3速ギヤ24aとを連結させた状態(プリシフト状態)とすることも可能である。これにより2速段から3速段へのアップシフトをスムーズに行うことができる。
3速段は、第1同期噛合機構S1を、第1主入力軸14と3速ギヤ24aとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第1クラッチC1をON状態とする。この3速段では、エンジン2から出力される動力が、第1主入力軸14、ギヤ列29、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、3速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、第1クラッチC1をOFF状態とし、EV走行を行うこともできる。なお、EV走行時に、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。又、3速段で減速回生運転を行うことができる。
3速段で走行中、ECU8が車両の走行状態に基づいて、次に変速される変速段が2速段又は4速段であるかを予測することも可能である。ECU8が、2速段へのダウンシフトを予測した場合には、第2同期噛合機構S2を、2速ギヤ25aと第2主入力軸22とを連結する状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とする。ECU8が、4速段へのアップシフトを予測した場合には、第2同期噛合機構S2を、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とを連結する状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とする。これにより、3速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
4速段は、第2同期噛合機構S2を、第2主入力軸22と4速ギヤ25bとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第2クラッチC2をON状態とする。この4速段では、エンジン2から出力される動力が、第1副入力軸15、ギヤ列21、中間軸19、ギヤ列23、第2主入力軸22、ギヤ列28、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
第2クラッチC2をON状態とし、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、4速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、この状態でエンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。
エンジン2の駆動により4速段で走行中、ECU8が車両の走行状態に基づいて、次に、変速される変速段が3速段又は5速段であるかを予測することも可能である。ECU8が、3速段へのダウンシフトを予測した場合には、第1同期噛合機構S1により、第1主入力軸14と3速ギヤ24aとを連結させた状態、又は、この状態に近づけるプリシフト状態とする。ECU8が、5速段へのアップシフトを予測した場合には、第1同期噛合機構S1により、第1主入力軸14と5速ギヤ24bとを連結させた状態、又は、この状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより、4速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
5速段は、第1同期噛合機構S1を、第1主入力軸14と5速ギヤ24bとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第1クラッチC1をON状態とする。この5速段では、エンジン2から出力される動力が、第1主入力軸14、ギヤ列30、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、5速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、第1クラッチC1をOFF状態とし、EV走行を行うこともできる。又、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。又、5速段で減速回生運転を行うことができる。
5速段で走行中、ECU8が車両の走行状態に基づいて、次に変速される変速段が4速段であると判断した場合に、ECU8が、第2同期噛合機構S2を、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とを連結する状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とすることもできる。これにより、5速段から4速段へのダウンシフトをスムーズに行うことができる。
後進段は、後退同期噛合機構SRを、リバース軸16と後退ギヤ17cとを連結させた状態とし、第2同期噛合機構S2を、例えば、例えば第2主入力軸22と2速ギヤ25aとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第1クラッチC1をON状態とする。この後進段では、エンジン2から出力される動力が、第1主入力軸14、ギヤ列18、リバースギヤ17c、リバース軸16、ギヤ列20、中間軸19、ギヤ列23、第2主入力軸22、ギヤ列27、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
なお、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、後進段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、第1クラッチC1をOFF状態とすることで、EV走行を行うこともできる。後進段で減速回生運転を行うことができる。
次に、ECU8の詳細について、図2に基づいて説明する。ECU8の制御処理により実現される機能として、エンジン2の動作を図示しないスロットル弁用のアクチュエータ等エンジン制御用のアクチュエータを介して制御する機能、後述する各種クラッチや各種同期装置のスリーブの動作を図示しないアクチュエータ又は駆動回路を介して制御する機能、車速やエンジン2の回転数等から駆動輪4に要求される動力を設定する動力設定部9からの信号を受け、その要求動力や走行状態に応じて各構成要素を制御する機能等を制御する。
また、ECU8は、PDU6を介してコイル3baに流れる電流を制御することによって、電動機3がロータ3aから出力する動力(トルク)を調整する。この場合、PDU6を制御することによって、電動機3は、バッテリ7から供給される電力でロータ3aに力行トルクを発生する力行運転を行い、モータとして機能する。すなわち、ステータ3bに供給された電力が、ロータ3aにより動力に変換されて出力される。
また、PDU6を制御することで、電動機3は、ロータ3aに与えられる回転エネルギによって発電して、バッテリ7を充電しつつ、ロータ3aに回生トルクを発生する回生運転を行う。つまり、電動機3はジェネレータとしても機能する。すなわち、ロータ3aに入力された動力が、ステータ3bで電力に変換される。
また、ECU8は、各種センサ50と接続されており、これにより接続されているギヤ群の情報、電動機から出力される動力の情報等の各種情報を得ることができる。各種センサには、エンジン回転数センサ51、各スリーブ位置センサ52、アクセル開度センサ53、ストロークセンサ54、車速センサ55、温度センサ56、電圧センサ57、トルクセンサ58が含まれる。
エンジン回転数センサ51は、エンジン2の回転数を検出するセンサであり、実際には駆動力入力軸2aの回転数を検出している。また、各スリーブ位置センサ52は、後述するシフトフォークの位置を検出するセンサであり、各シフトフォークに対応して設けられている。したがって、後述する同期噛合機構S1、S2、SLの位置は、各同期噛合機構に対応するシフトフォークの位置を検出することにより求めることができる。
また、アクセル開度センサ53は、アクセル開度を検出するセンサである。また、各ストロークセンサ54は、第1クラッチと第2クラッチとにそれぞれ対応して設けられている。第1クラッチC1に対応するストロークセンサ54aは、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との係合の可否を検出するセンサである。第2クラッチC2に対応するストロークセンサ54bは、駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との係合の可否を検出するセンサである。
また、車速センサ55は、車速を検出するセンサである。また、温度センサ56は、PDU6及びロータ3aの温度を測定するセンサである。また、電圧センサ57は、バッテリ7の電圧を測定するセンサであり、バッテリ7の電圧から充電量を検出することが可能である。また、トルクセンサ58は、エンジン2や電動機3からの動力を検出するセンサである。
次に、ECU8の制御処理を、図3〜図7を参照してより詳細に説明する。図3、4はECU8のエンジン始動時における全体的処理を示すフローチャート、図5は要求トルクが検出されたトルクから求められた所定のトルクと比較して大きい場合の処理を示すフローチャート、図6は回転体3aの回転運動に対する動力伝達を解除する場合の処理を示すフローチャート、図7は図3、4のフローチャートの処理に関するタイミングチャートである。
まず、図3に基づいて、ECU8の制御処理を説明する。本実施形態の車両は、走行開始時では、バッテリ7に蓄えられている電力に基づいて走行している(EV走行)。この、バッテリ7に蓄えられている電力に基づく走行が、電動走行手段に該当する。
このとき、電動機3(モータ)の出力が所定値Mt以下か否かが判断される(ステップS11)。モータ出力は、トルクセンサ58により検出される。また、所定値Mtは、バッテリ7の充電量等に基づいて、実験的に求められる。
動力検出手段により検出された電動機3の動力が所定値Mtよりも大きいときは、ステップS11で「NO」と判断される。このときは、電動機3を駆動させるためのバッテリ7の充電量が十分にあると判断される。そのため、EV走行が継続して実行されて、このフローチャートに基づく制御が終了される。一方、電動機3の動力が所定値Mt以下のときは、ステップS11で「YES」と判断される。
このときは、電動機3を駆動させるためのバッテリ7の充電量が少ないか、PDU6の温度上昇のため、ECU8は電動機3の出力が不十分であると判断する。このときは、ECU8は、エンジン2からの動力により車両を走行させる制御へと移行する。なお、ECU8がトルクセンサ58に基づいて駆動力入力軸2aの回転数を検出する手段を回転数検出手段とする。
次に、回転数検出手段により検出される駆動力入力軸2aの回転数が所定値よりも大きいか否かが判断される(ステップS12)。駆動力入力軸2aの回転数が所定値Nsよりも大きいときは、ステップS12で「YES」と判断される。このときは、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとを第1クラッチC1を介して接続することにより、電動機3の動力を用いた駆動力入力軸2aの回転が可能となる。そのため、この駆動力入力軸2aの回転に基づいてエンジン2を始動させることが可能である。
したがって、通常のインテグレーテッド・モータ・アシスト(IMA)に基づいてエンジン2が始動して、このフローチャートに基づく制御を終了する(ステップS19)。なお、ECU8がエンジン回転数センサ51に基づいて駆動力入力軸2aの回転数を検出する手段を回転数検出手段とする。
また、駆動力入力軸2aの回転数が所定値Ns以下のときは、ステップS12で「NO」と判断される。このときは、エンジン2の始動に用いるために駆動力入力軸2aの回転速度を増加させる必要が生じ、必要なバッテリ7の容量が多くなる。そのため、車両の走行に電動機3からの動力を使用すると、エンジン2の始動に用いるために必要なバッテリ7の容量不足を生じる可能性がある。そのため、以下のステップによる制御で、エンジン2の始動に用いるために必要な電動機3の動力を確保する。
次に、ECU8は、ロータ3aへの通電を停止して、ロータ3aの回転を停止する制御を実行する(ステップS13)。これにより、電動機3から第1主入力軸14への動力の伝達が解除されて、後述するステップS14に示すリングギヤ13rとハウジング33との係合の解除が可能となる。
次に、ECU8は、遊星歯車機構13のリングギヤ13rとハウジング33との係合を解除する(ステップS14)。具体的には、このステップS14では、第3同期噛合機構SLを移動させることにより、リングギヤ13rとハウジング第3同期噛合機構SLにより、リングギヤ13rを不動部であるハウジング33に対して非固定状態とする。これにより、キャリア13cが空転し、電動機3と被駆動部である駆動輪4との接続が絶たれる。
次に、ECU8は、第1クラッチC1を係合する制御を実行する(ステップS15)。これにより、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとが係合されて、第1主入力軸14からエンジン2へのトルク伝達が可能となる。第1クラッチC1が本発明における第1係合手段に該当する。
次に、ECU8は、電動機3の動力を用いてエンジン2を始動すると共に、第2クラッチC2を半クラッチとして係合する制御を実行する(ステップS16)。したがって、電動機3の動力を用いたエンジン2の始動は、電動機3をいわゆるスタータとして用いたものである。第2クラッチC2が本発明における第2係合手段に該当する。
また、ステップS16においては、第1同期噛合機構S1がニュートラル位置にあるため、第1主入力軸14と第2副入力軸24との係合は解放されている。また、ステップS16では、第2同期噛合機構S2が噛合されているため、第2主入力軸22と第3副入力軸25とは一体回転をするよう係合されている。そのため、エンジン2の始動時において、駆動力入力軸2aのトルクは第2主入力軸22を介して出力軸26に伝達される。
以上のように、ステップS15に示されている第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとの係合と、ステップS16に示されている電動機3の動力を用いたエンジン2の始動とにより、内燃機関であるエンジン2の始動の際に電動機3からエンジン2への動力伝達が可能となる。
次に、ECU8は、電動機3によるエンジン2の始動を終了する(ステップS17)。これは、エンジン2が始動したため、電動機3がスタータとしての役割を終えたことによるものである。
次に、ECU8は、第1クラッチC1の係合を解除する制御を実行する(ステップS18)。この制御により、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との係合が解除される。このとき、第2主入力軸22と第3副入力軸25とは一体回転をするよう係合されているため、車両はエンジン2からの動力により、2段速若しくは4段速で走行する。
次に、ECU8は、バッテリ7の充電量が所定値SOCx以上であるか否かが判断される(ステップS110)。バッテリ7の充電量が所定値SOCx以上であるときは、ステップS110で「YES」と判断される。このときは、ECU8は、エンジン2からの動力に基づいて車両を走行させる制御を、リングギヤ13rを不動部であるハウジング33に対する非固定状態で実行する。
一方、バッテリ7の充電量が所定値SOCxに達していないときは、ステップS110で「NO」と判断される。このときは、バッテリ7の充電量を確保するために、回生電力の発生効率を向上させるための制御が実行される。
次に、ECU8は、リングギヤ13rとハウジング33とを係合することにより、リングギヤを固定する制御を実行する(ステップS111)。具体的には、このステップS19では、第3同期噛合機構SLを移動させることにより、リングギヤ13rを不動部であるハウジング33に対して固定状態とする。
このとき、第1同期噛合機構S1はニュートラル状態であり、第1主入力軸14と第2副入力軸24との係合は解除されている。また、第2同期噛合機構S2は、第2主入力軸22と第3副入力軸25とを係合している。
したがって、エンジン2からの動力は、第1主入力軸14を経由せずに、第2主入力軸22を経由して出力軸26に伝達されるため、エンジン2による走行中に1段速へのギヤ段となるように第3同期噛合機構SLを移動させることができる。この第3同期噛合機構SLの移動が、プレシフトに該当する。
次に、図5を用いて、エンジン2からの動力若しくは電動機3からの動力もしくはエンジン2と電動機3との両方の動力を用いた走行時において、スロットル開度や車速等の走行状態から算出される要求トルクがトルクセンサ58により検出されるトルクと比較して大きく、2速段での走行ではトルクが不足する場合の制御について、説明する。
ECU8は、エンジン回転数やスロットル開度等の走行状態を検出することにより算出される要求トルクが、所定値Tc以上か否かを判断する(ステップS21)。所定値Tcは、変速比やスロットル開度等の走行状態に応じて変動する値であり、マップに基づいて定まる。この要求トルクが所定値Tcよりも小さいときは、ステップS21で「NO」と判断される。
このときは、ECU8は、車両の走行状態から算出される要求トルクと検出されるトルクとを比較して要求トルクが足りていると判断する。そのため、変速段を下げることにより変速比を大きくして、出力トルクを増大させる制御は実行されず、この制御は終了する。
一方、この要求トルクが所定値Tc以上のときは、ステップS21で「YES」と判断される。このときは、ECU8は、車両の走行状態から算出される要求トルクと検出されるトルクとを比較して要求トルクが不足していると判断する。そのため、出力トルクを増大させるための制御として、以下の制御(ステップS22、S23)を実行する。
ECU8は、2段速を構成しているギヤ列27と第2主入力軸22との係合を解除する制御が実行される(ステップS22)。具体的には、第2主入力軸22と第3副入力軸25とを係合する第2同期噛合機構S2をニュートラルとする制御が実行される。したがって、この制御により、エンジン2から出力されるトルクは、第2主入力軸22を経由して出力軸26に伝達されることはない。
次に、ECU8は、1段速を構成している第3同期噛合機構SLを移動させて、リングギヤ13rとハウジング33とを係合させる制御を実行する(ステップS23)。これにより、リングギヤ13rは、第3同期噛合機構SLにより、不動部であるハウジング33に対して固定する状態となる。このとき、第1主入力軸14に入力されているトルクは、キャリア13cと接続されている第2副入力軸24とギヤ列29を介して出力軸26に伝達される。
また、遊星歯車機構13のリングギヤ13rが固定され、サンギヤ13sがトルクの入力側、ピニオンギヤ13pがトルクの出力側を構成するため、第2副入力軸24の回転速度は、第1主入力軸14の回転速度よりも遅くなる。そのため、変速比は大きくなり、より大きなトルクを出力軸26に伝達させることが可能となる。そして、1段速への変速が実行されることにより、この制御が終了する。
次に、図6を用いて、PDU6の温度が高い場合の制御について説明する。本制御は、偶数段(2段速又は4段速)で走行している際において、PDU6の温度が高い場合に、ロータ3aの回転速度を減少させ、あるいは回転運動を停止させることにより、PDU6の温度を下げる制御である。
まず、偶数段での走行時、すなわち第2主入力軸22と第3副入力軸25とが第2同期噛合機構S2によって係合されている時に、ECU8はPDU6の温度が所定値Ti以上であるか否かを判断する(ステップS31)。PDU6の温度が所定値Tiよりも低いときは、ステップS31において、「NO」と判断される。このときは、PDU6の温度を下げるための特別な制御は実行されず、このフローチャートにもとづく制御が終了する。また、PDU6の温度が所定値Ti以上であるときは、ECU8は、ステップS31において「YES」と判断して、次のステップS32に移行する。
次に、ECU8は、第1同期噛合機構S1がニュートラルの位置に移動する制御を実行する(ステップS32)。これにより、第1主入力軸14と第2副入力軸24との係合の解除が実行される。このため、第1副入力軸15からギヤ列23、第2主入力軸22、第3副入力軸25、出力軸26、第2副入力軸24、第1主入力軸14を介して、ロータ3aに伝達される回転運動が解除される。したがって、ロータ3aは、第1主入力軸14の慣性による回転運動に基づいて回転運動をするため、ロータ3aの回転速度が減少し、あるいは回転運動が停止する。
次に、図7に示したタイミングチャートを参照して、電動機3からの動力により車両を走行させる電動走行手段からエンジン2からの動力による車両を走行させる内燃機関走行手段への移行について説明する。
図7の一番上には、縦軸を電動機3から第1主入力軸14に伝達されるトルクとし、横軸を時間として、電動機3から第1主入力軸14に伝達されるトルクの推移が示されている。モータトルクのONは電動機3からのトルクが第1主入力軸に伝達されている状態を示し、モータトルクのOFFは電動機3からのトルクが第1主入力軸に伝達されていない状態を示している。
図7の上から2番目には、縦軸を第3同期噛合機構SLによる係合の有無とし、横軸を時間として、リングギヤ13rとハウジング33との係合の推移が示されている。第3同期噛合機構SLのONは、リングギヤ13rが第3同期噛合機構SLによりハウジング33に対して固定している状態を示す。第3同期噛合機構SLのOFFは、第3同期噛合機構SLがニュートラルであるため、リングギヤ13rがハウジング33に対して非固定である状態を示す。
図7の上から3番目には、縦軸を第1クラッチC1による係合の有無とし、横軸を時間として、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとの係合の推移が示されている。第1クラッチC1のONの場合には、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとが係合して一体回転可能となる状態を示す。また、第1クラッチC1のOFFは、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとの係合が解放されている状態を示している。このため、第1クラッチC1のOFFの場合には、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとは一体回転をすることなく各々回転運動をする。
図7の上から4番目には、縦軸をエンジン回転数とし、横軸を時間として、エンジン回転数の推移が示されている。
図7の一番下には、縦軸を第2クラッチC2による係合の有無とし、横軸を時間として、第1副入力軸15と駆動力入力軸2aとの係合の推移が示されている。第2クラッチC2のOFFは、第2クラッチC2駆動力入力軸2aから解放されている状態を示している。このため、第2クラッチC2のOFFの場合には、第1副入力軸15と駆動力入力軸2aとは一体回転をすることなく各々回転運動をする。
また、第2クラッチC2がONとOFFの間にある場合は、第2クラッチC2が半クラッチである状態を示している。このため、第2クラッチC2がONとOFFの間にある場合は、第1副入力軸15と駆動力入力軸2aとは同期作用により連れ回り回転を行う。
図7の時刻t0から時刻t1は、電動機3からの動力により車両を走行させる電動走行手段に基づく走行時を示している。このときは、電動機3から第1主入力軸14にトルクが伝達されており、モータトルクは「ON」で示される。また、時刻t0から時刻t1は1段速での走行を示しているため、第3同期噛合機構SLによってリングギヤ13rがハウジング33に固着されている。
また、第1クラッチC1及び第2クラッチC2は共に係合されていないため、第1クラッチC1及び第2クラッチC2は「OFF」で示される。また、時刻t0から時刻t1では、エンジン2は始動していないため、エンジン回転数Neは0となる。
次に、時刻t1から時刻t6では、電動走行手段に基づく1段速での走行から、第1クラッチC1と第2クラッチC2との両方を連結させた状態で内燃機関走行手段へ移行する際の状態が示されている。時刻t1では電動機3からのトルクが第1主入力軸14に伝達されて「ON」とされているが、時刻t2になるにしたがって電動機3から第1主入力軸14に伝達されるトルクが減少し、時刻t2で電動機3から第1主入力軸14に伝達されるトルクが0となり「OFF」とされる。
時刻t2では、第3同期噛合機構SLによってリングギヤ13rがハウジング33に固着されており、「ON」となっている。この第3同期噛合機構SLは、時刻t3になるにつれて、リングギヤ13rがハウジング33に対して非固着状態となるように移動し、リングギヤ13rがハウジング33に対して非固着状態を構成するときに「OFF」となっている。
時刻t3から時刻t4では、第1クラッチC1が制御される。時刻t3の時点では、1速段の状態から第3同期噛合機構SLが抜かれた状態であり、第1主入力軸14と第2主入力軸22は1速段から5速段のいずれとも接続していない。時刻t3から時刻t4にかけて、ECU8は第1クラッチC1を移動させる制御を実行する。時刻t4の時には、第1クラッチC1の移動により、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとが係合する。このとき、第1クラッチC1は「ON」として示される。
時刻t4から時刻t6では、第1主入力軸14の回転により生じるトルクを駆動力入力軸2aを介してエンジン2に伝達させて、エンジン2を始動させる制御が実行されている。時刻t4では、エンジン2を始動させるための駆動力入力軸2aを回転させるために、電動機3からのトルクが駆動力入力軸2aに伝達されている。このトルクの伝達がモータトルクの「ON」として示されている。電動機3から駆動力入力軸2aへのトルク伝達は、エンジン2の始動が完了する時刻t6まで実行される。エンジン2の始動は、エンジン回転数Neが一定の値に達したときに完了する。
時刻t4から時刻t6においては、第1クラッチC1は「ON」であり、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとが一体回転可能に噛合されている。また、時刻t4から時刻t6においては、第2クラッチC2は「OFF」から「ON」と「OFF」との間に移行する。すなわち、時刻t4においては、第2クラッチはニュートラル状態であるため、第1副入力軸15と駆動力入力軸2aとの同期はない。
また、時刻t6においては、第1副入力軸15と駆動力入力軸2aとは第2クラッチC2により係合されているが、一体回転可能に噛合されていない。そのため、第1副入力軸15と駆動力入力軸2aとは回転速度の異なる連れ周り回転を可能とするように第2クラッチC2を介して係合されている。したがって、時刻t4から時刻t6では、エンジン2からのトルクは第2主入力軸22を経由して出力軸26に伝達される。そして、時刻t6で、エンジン2を始動するための制御が終了する。
時刻t6以降では、エンジン2の始動後、所定の変速段のもと走行するための制御が行われる。時刻t6から時刻t7では、第1クラッチC1を抜いてニュートラルとする制御が実行される。そして、時刻t6では第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとが係合しているが、時刻の経過と共に第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとの係合が解除され、時刻t7で第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとの係合が解除されて「OFF」となる。
したがって、時刻t7では、第1副入力軸15と駆動力入力軸2aとが第2クラッチC2を介して連れ周り回転可能に係合されていると共に、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとの係合が解除されており、リングギヤ13rがハウジング33に対して非固着状態を構成している。
第1クラッチC1の「OFF」のタイミングに応じて、第3同期噛合機構SLの係合が開始される。第3同期噛合機構SLの係合は、時刻t8になるにつれて、リングギヤ13rがハウジング33に対して固着状態となるように移動し、リングギヤ13rがハウジング33に対して固着状態を構成するときに「ON」となる。
時刻t8から時刻t9の間では、第1クラッチC1は「OFF」から「ON」と「OFF」との間に移行する。すなわち、時刻t8においては、第1クラッチC1は解放されているため、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとの同期はない。また、時刻t9においては、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとは第1クラッチC1により半クラッチとして係合されている。そのため、第1主入力軸14と駆動力入力軸2aとは連れ周り回転を可能とするように第1クラッチC1を介して係合されている。
なお、本実施の形態は、前進5段後進1段の変速を確保しているが、この変速段に限らず、複数の入力軸に変速用のギヤ列が設けられているものに変形することが可能である。
また、本実施の形態は、動力合成機構をシングルピニオン型の遊星歯車装置による機構として説明したが、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であっても良い。
なお、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の駆動制御装置において、電動機からの駆動力によって車両を発進させた場合には、電動機からの動力に基づく走行(以下、「EV走行」という)から、エンジンからの動力に基づく走行(以下、「エンジン走行」という)に切り替える制御が必要となる。その際、EV走行を可能にする電動機と、エンジンを始動させるスタータとしての電動機とが異なる(別個に設けられている)ときは、両方の電動機を駆動させることにより、EV走行をしながらエンジンを始動させることが可能である。
しかしながら、EV走行を可能にする電動機と、エンジンを始動させるスタータとしての電動機とが同じ(共通の)電動機であるときは、この電動機をEV走行とスタータとの両方について、同時に使用することができない。したがって、EV走行としての電動機の使用とスタータとしての電動機の使用とを切り替えるために、動力伝達経路を切り替える制御が行われる。
動力伝達経路の切り替えを電動機の出力が不足している場合に実行したときは、エンジン走行に切り替わる前にEV走行が不能となる可能性がある。そのため、電動機の出力が不足している場合には、EV走行からエンジン走行への切り替え時間を短縮する必要がある。
そこで、EV走行からエンジン走行への切り替え時間を短縮できるハイブリッド車両の駆動制御装置を提供することが目的となる場合もある。
この目的を達する場合の第1の態様は、駆動源として内燃機関及び電動機とを有し、該電動機又は内燃機関から被駆動部への動力伝達及び該電動機と内燃機関との動力伝達を断続可能とする制御手段とを備えたハイブリッド車両の駆動制御装置であって、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、前記電動機から前記被駆動部への動力を検出する動力検出手段とを有し、前記制御手段は、前記動力検出手段により検出された動力が所定の動力よりも小さく、かつ前記回転数検出手段により検出された回転数が所定の回転数よりも低いときに、前記電動機と前記被駆動部との接続を断つと共に、前記内燃機関の始動の際に前記電動機から内燃機関への動力伝達を可能とし、かつ前記内燃機関から前記被駆動部への動力伝達を可能とすることを特徴とする。
これによれば、内燃機関を停止した状態で車両を走行させる場合において、検出される電動機の動力が所定値以下のときは、電動機と被駆動部との接続が断たれ、これにより動力伝達が解除される。そして、この電動機の動力が内燃機関に伝達されて、内燃機関が始動する。このとき内燃機関の回転数が所定の回転数より低いと、電動機の動力伝達に基づくEV走行から内燃機関の動力によるエンジン走行への切り替えがなされる前に電動機の動力が不足する可能性がある。
そこで、内燃機関から被駆動部への動力伝達に基づく走行を行いながら、電動機からの動力に基づいて内燃機関を始動させる。これにより、電動機からの動力によるEV走行からエンジン走行への切り替え時間を短縮できると共に、電動機からの動力が不足している場合でもEV走行からエンジン走行への切り替えを可能にしている。また、この切り替え時間を短縮することにより、所定の変速段による走行に早く移行することができ、ドライバビリティが向上する。
また、上記目的を達する場合の第2の態様は、駆動源として内燃機関及び電動機とを有し、該電動機又は内燃機関から被駆動部への動力伝達及び該電動機と内燃機関との動力伝達を断続可能とする制御手段とを備えたハイブリッド車両の駆動制御装置であって、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、前記電動機から前記被駆動部に伝達される動力を検出する動力検出手段とを有し、前記制御手段は、前記動力検出手段により検出された動力が所定動力よりも小さく、かつ該回転数検出手段により検出された回転数が所定の回転数よりも高いときに、前記電動機から前記被駆動部への動力伝達を可能とし、かつ前記電動機の動力により前記内燃機関を始動させることを特徴とする。
この場合、内燃機関を停止した状態で車両を走行させる場合において、電動機から被駆動部に伝達される動力は所定値よりも小さいが、内燃機関の回転数は所定の回転数以上である。そのため、内燃機関による走行への切り替えをスムーズにすることができる。
また、上記目的を達する場合の第3の態様は、上記第1の態様において、前記電動機と前記内燃機関との動力伝達を断続可能とする第1係合手段と、前記内燃機関と前記被駆動部との動力伝達を断続可能とする第2係合手段とを備え、前記制御手段は、前記第1係合手段と前記第2係合手段の両方を接続することを特徴とする。
この場合、第1係合手段と第2係合手段との両方を接続するため、EV走行からエンジン走行への切り替えの際に、内燃機関から被駆動軸に動力を伝達させることができる。そのため、この切り替え時間を短縮することが可能となり、所定の変速段による走行に早く移行することができ、ドライバビリティが向上する。
また、上記目的を達する場合の第4の態様は、上記第1〜第3の態様において、前記電動機の駆動により生じる回生電力を充電可能なバッテリを有し、前記制御手段は、前記バッテリの充電量が前記内燃機関の始動している状態で所定量以下の場合に、前記内燃機関の回転数と前記被駆動部の回転数の比を最大にすることが望ましい。
この場合、電動機による走行から内燃機関による走行への切り替え時に、バッテリの充電量が少ないときには、内燃機関の回転数と被駆動部の回転数の比を最大とすることにより、回生電力の発生効率を向上させることができる。そのため、バッテリの充電効率が向上する。
また、上記目的を達する場合の第5の態様は、上記第1〜第4の態様において、前記制御手段は、前記動力検出手段により検出される動力が車両の状態から推定される動力よりも小さいときは、前記内燃機関の回転数と前記被駆動部の回転数の比を最大とすることが望ましい。
この場合、エンジン走行の際に検出された動力が車両の状態から推定される動力よりも小さいときは、内燃機関から被駆動部に伝達されている動力が不足していると考えられる。そのため、内燃機関から被駆動部に伝達される動力を増大させるために、電動機の回転数と被駆動部の回転数の比を最大とする制御を実行する。これにより、被駆動部に出力される動力を増大させて、必要な動力を得ることができる。
また、上記目的を達する場合の第6の態様は、上記第1〜第5の態様において、前記電動機を駆動するインバータを有し、前記インバータの温度が所定の温度以上のときに前記電動機と前記被駆動部との接続を絶つことが望ましい。
この場合、電動機と被駆動部との接続を切断することにより、被駆動部から電動機への動力伝達がなされなくなる。そのため、インバータの温度が所定の温度以上のときには電動機への動力の伝達を絶つため、インバータへの負荷が減少する。