JP5466901B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関し、さらに詳しくは、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして透明性、機械的強度、電気的性質、耐熱性、寸法安定性などに優れているので、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類などの幅広い分野で使用されている。
これらの使用分野の中で、薄膜トランジスタ(TFT)を初めとする、コンピュータやテレビ等の情報表示装置では、液晶表示装置のバックライト用反射板、そして照光式プッシュスイッチや光電スイッチの反射板など、高度の光線反射率が要求される反射板を組み込んだ表示装置が一般的になりつつある。
これらの高度の光線反射率が要求される光反射部材は、光反射性、成形性、衝撃強度の点から酸化チタン等の微粒子含有量の高いポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体等が使用されている。
また、ポリカーボネート樹脂組成物からなる光反射部材は、難燃化の要望が強く、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シロキサン系化合物、ポリフルオロエチレン等を配合して難燃化する技術が多数提案されている。最近では、環境に対する配慮から、臭素系難燃剤あるいはリン系難燃剤を使用せず、他の難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物も望まれている。
これまで非リン系難燃剤および酸化チタンを併用した難燃性ポリカーボネートの例として特許文献1〜2が挙げられるが、いずれも燃焼性を高めるために難燃剤を配合しなければならず、その組合せがシルバーストリークによる外観不良の原因となっていた。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂に、シリカにポリオルガノシロキサン重合体を担持したシリコーン系難燃剤、ポリテトラフルオロエチレンからなるUL難燃性が1.5mmV−0からなる樹脂組成物について記載されている。しかしながら難燃剤中の無機シリカによる成形時のフローマーク、および低粘度のポリジメチルシロキサンの脱離によるシルバーストリーク等の外観不良を生じるため、特に意匠性が要求される部材としては充分な性能とはいえない。
また、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン、有機金属塩、シリコーン化合物と酸化チタンを加えた難燃性樹脂組成物について記載されている。しかしながらこれらの組成物は高温および滞留安定性に乏しく、衝撃性および外観が著しく劣る。
また、酸化チタンを含有する難燃性ポリカーボネートの例として、特許文献3〜4が挙げられるが、いずれも充分な性能を有するものとは言い難い。
特許文献3には、ポリカーボネート樹脂に、酸化チタン、アルキルベンゼンスルホン酸系帯電防止剤1〜8重量部を添加した樹脂組成物について記載されている。しかしながらアルカリ金属塩の添加量が多いため成形時にポリカーボネートの分子量低下が大きく、成形性および難燃性能が低下する。
特許文献4には、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン、有機金属塩、シリコーン化合物に更に特定の酸化チタンを加えた樹脂組成物について記載されている。しかしながらシルバーストリークのような外観不良は酸化チタンの二次凝集の状態に大きく依存し、満足な結果は得られない。またシリコーン化合物の添加により、外観不良が発生する。
酸化チタンを表面処理することについては、例えば、特許文献5に、ポリカーボネート樹脂にポリオルガノシロキサンで処理した針状酸化チタンを使用することが記載されている。しかしながら、単に酸化チタンをポリオルガノシランで表面処理するだけでは、シルバーストリークス等の外観不良が発生しやすくなる。
特許第3124488号公報 特開2003−183491号公報 特開平11−181267号公報 特開2006−241262号公報 特開平8−59976号公報
こうした状況下、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物の開発が強く望まれていた。
本発明の目的は、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂成形品、具体的には光反射部品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく、酸化チタンとオルガノシロキサン処理剤の酸化チタン表面での状態を鋭意検討し、酸化チタン上の炭素の量と、酸化チタンの含有量を特定の範囲にすることにより、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、オルガノシロキサンで表面処理された酸化チタン系添加剤(B)3〜30質量部及びパラトルエンスルホン酸ナトリウム及び/又はパラトルエンスルホン酸カリウム(C)0.01〜1質量部を含有してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記B成分における炭素含有量[c]が0.2質量%以上であり、かつ、
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の総量100質量%に対するB成分の含有量[B](質量%)と前記炭素含有量[c]との関係が、
式(1) [c]×[B]≦9
の条件を満足し、1.0mm厚におけるUL94垂直燃焼試験による燃焼性がV−0であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、オルガノシロキサンが、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンである芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1または2の発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品が提供される。
さらに、本発明の第の発明によれば、第の発明において、成形品が光反射部材である成形品が提供される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
[1.概要]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、オルガノシロキサンで表面処理された酸化チタン系添加剤(B)と、有機金属塩系難燃剤(C)とを含有し、B成分における炭素が特定の量で含有され、さらにこの炭素の量とB成分の含有率とが特定の関係式を満足することを特徴とする。
[2.芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整したポリカーボネート樹脂を使用することができる。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくは、ビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下の分岐剤、即ち、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述した芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、用途により適宜選択して決定すればよいが、成形性、強度等の点から、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量[Mv]で、10,000〜40,000、更には10,000〜30,000のものが好ましい。このように、粘度平均分子量を10,000以上とすることで機械的強度がより向上する傾向にあり、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、40,000以下とすることで流動性低下を、より抑制し改善する傾向にあり、成形加工性容易の観点からより好ましい。
粘度平均分子量は中でも、10,000〜22,000、更には12,000〜22,000、特に14,000〜20,000であることが好ましい。また粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよく、この際には、粘度平均分子量が上記好適範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。この場合、混合物の粘度平均分子量は上記範囲となるのが望ましい。
[3.酸化チタン系添加剤(B)]
本発明における酸化チタン系添加剤(B成分)は、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品の遮光性、白度、光線反射特性等を向上させるように機能する。酸化チタン系添加剤(B)に用いられる酸化チタンは、製造方法、結晶形態および平均粒子径などは、特に限定されるものではない。酸化チタンの製造方法には硫酸法および塩素法があるが、硫酸法で製造された酸化チタンは、これを添加した組成物の白度が劣る傾向があるため、本発明の目的を効果的に達成するには、塩素法で製造されたものが好適である。
酸化チタンの結晶形態には、ルチル型とアナターゼ型があるが、耐光性の観点からルチル型の結晶形態のものが好適である。酸化チタン系添加剤(B成分)の平均粒子径は、0.1〜0.7μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4μmである。平均粒子径が0.1μm未満では成形品の光線遮蔽性に劣り、0.7μmを超える場合は、成形品表面に肌荒れを起こしたり、成形品の機械的強度が低下したりする。なお本発明においては、平均粒径の異なる酸化チタンを2種類以上混合して使用してもよい。
なお、酸化チタン系添加剤(B)は、後記するオルガノシロキサン系の表面処理剤で表面処理する前に、アルミナ系表面処理剤で前処理するのが好ましい。アルミナ系表面処理剤としてはアルミナ水和物が好適に用いられる。さらにアルミナ水和物とともに珪酸水和物で前処理しても良い。前処理の方法は特に限定されるものではなく、任意の方法によることが出来る。アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物による前処理は、酸化チタンに対して1〜15重量%の範囲で行なうのが好ましい。
アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物で前処理された酸化チタンは、更にその表面をオルガノシロキサン系の表面処理剤で表面処理することによって、熱安定性を改善することが出来る他、ポリカーボネート樹脂組成物中での均一分散性および分散状態の安定性を向上させる。
オルガノシロキサン系表面処理剤としては、なかでも無機化合物粒子の表面と反応する反応性の官能基を持つ反応性官能基含有有機珪素化合物が好ましい。反応性の官能基としては、Si−H基、Si−OH基、Si−NH基、Si−OR基が挙げられるが、Si−H基、Si−OH基、Si−OR基を持つものがより好ましく、Si−H基をもつSi−H基含有有機珪素化合物が、特に好ましい。
Si−H基含有有機珪素化合物としては、分子中にSi−H基を持つ化合物であれば特に制限されず、適宜選択して用いればよいが、なかでも、ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリシクロ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(エチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(フェニルハイドロジェンシロキサン)、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(エチルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジエチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ヘキシルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(オクチルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(フェニルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジエトキシシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメトキシシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(ジハイドロジェンシロキサン)((2−メトキシエトキシ)メチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(ジハイドロジェンシロキサン)(フェノキシメチルシロキサン)]コポリマー等のポリオルガノ水素シロキサンが好ましい。
酸化チタンのオルガノシロキサン系の表面処理剤による表面処理法には、(1)湿式法と(2)乾式法とがある。湿式法は、オルガノシロキサン系の表面処理剤と溶剤との混合物に、アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物で前処理された酸化チタンを加え、撹拌した後に脱溶媒を行い、更にその後100〜300℃で熱処理する方法である。乾式法は、上記と同様に前処理された酸化チタンとポリオルガノハイドロジェンシロキサン類とをヘンシェルミキサーなどで混合する方法、前処理された酸化チタンにポリオルガノハイドロジェンシロキサン類の有機溶液を噴霧して付着させ、100〜300℃で熱処理する方法などが挙げられる。
オルガノシロキサン系表面処理剤の量は、酸化チタン表面を直接又は間接に被覆するオルガノシロキサン系表面処理剤の炭素含有量[c]として規定される。すなわち、酸化チタン系添加剤(B成分)全体の質量100質量%に対する炭素含有量[c]が、0.2質量%以上である。好ましい炭素含有量[c]は、0.2〜2質量%、より好ましくは、0.2〜1.5質量%である。0.2質量%未満では、酸化チタン表面の疎水性が失われ表面処理酸化チタンとポリカーボネートとの密着性が低下するため、強度・外観に劣る。またオルガノシロキサン処理量の不足により炭素含有量が低下、充分な表面処理が施されないため熱安定性に劣る。
炭素含有量[c]の調整は、前記した表面処理の際に、使用するオルガノシロキサン表面処理剤溶液の濃度、浸漬時間、噴霧時間、熱処理の温度・時間等を調整することによって制御できる。
なお、炭素含有量[c]は、酸化チタン系添加剤(B成分)を、高周波誘導加熱炉方式の炭素分析装置用い、酸化チタン表面の表面処理剤の炭素を燃焼させ、燃焼ガスの量から測定される。
炭素含有量[c]は、酸化チタン表面を直接に又は間接に被覆するオルガノシロキサンの炭素の存在量を示すものである。表面処理剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを使用した場合を例に説明すると、ポリメチルハイドロジェンシロキサンは、酸化チタン上で、(1)その−OH基が酸化チタン表面の−OH基とあるいは他の反応性の基と化学結合(共有結合)して存在するか、(2)全くいかなる結合もせずに遊離状態で存在するもの並びに弱い水素結合により何らかの相互作用がある状態で存在するものからなる。そして、本発明において、炭素含有量[c]は、これら(1)又は(2)として存在しているメチル炭素の総量を意味している。
したがって、炭素含有量[c]は、この(1)化学結合したオルガノシロキサンの炭素含有量[c1]と、それ以外の上記(2)の炭素含有量[c2]に区分けすることができ、[c1]と[c2]の好ましい割合は、[c1]:[c2]=10〜90:90〜10、より好ましくは[c1]:[c2]=20〜90:80〜10、さらには30〜80:70〜20であり、特には[c1]が50%以上であることが好ましい。なお、上記(1)成分と(2)成分の分離は、(2)をメタノール等の溶剤で抽出することにより分離可能である。
このような酸化チタン系添加剤(B)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、3〜30質量部の範囲である。酸化チタン系添加剤(B)の配合量が3質量部未満の場合は、樹脂組成物から得られる成形品の遮光性および反射特性が不十分となり、30質量部を超える場合は樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となる。酸化チタン系添加剤(B)の好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、3〜25質量部、更に好ましくは5〜20質量部である。なお、酸化チタン系添加剤(B)の質量は、アルミナ水和物、珪酸水和物、オルガノシロキサン系の表面処理剤によって表面処理されている場合は、これらの処理剤も含めた全質量を意味する。
さらに、本発明においては、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物全体100質量%に対する上記酸化チタン系添加剤(B成分)の含有量[B](質量%)と前記炭素含有量[c]との関係が、式(1) [c]×[B]≦9 の条件を満足することを特徴とする。
この際のB成分の含有量[B]は、前記(A)〜(C)成分に、必要によりさらに配合される他の成分、添加剤等を含む樹脂組成物全体を100質量%としたときの含有量である。
式(1)の[c]×[B]の値が、9を超えると、成形時にガスを発生する等の問題が生じてしまい、また成形品にシルバーストリークが発生する等の表面性状が悪くなる。 [c]×[B]の値を9以下にすることで、樹脂組成物の耐衝撃強度の低下が改善され、ポリカーボネート樹脂の分解が抑制される。
好ましい[c]×[B]の値は、8以下、さらには7以下であり、その下限の好ましい値は、1、さらには2である。
[4.有機金属塩系難燃剤(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、有機金属塩系難燃剤を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01〜1質量部含有する。このように金属塩化合物を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
有機金属塩系難燃剤の含有量が0.01質量部より少ないと、得られるポリカーボネート樹脂組成物の難燃性改良効果が不十分となり、逆に1質量部を超えると、ポリカーボネート樹脂の成形時の熱安定性の低下および湿熱試験における物性が低下し、また、ポリカーボネート樹脂組成物の成形品の外観不良及び機械的強度の低下が生ずる。含有量の下限は、好ましくは0.03質量部以上、特には0.05質量部以上であり、その上限は、好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下、特には0.4質量部以下である。
有機金属塩化合物としては、例えば、有機スルホン酸金属塩、有機スルホンアミドの金属塩、有機カルボン酸金属塩、有機ホウ酸金属塩、有機リン酸金属塩等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート樹脂と混合した場合の熱安定性の点から、有機スルホン酸金属塩、有機スルホンアミドの金属塩、有機リン酸金属塩が好ましく、特に有機スルホン酸金属塩、中でも芳香族スルホン酸金属塩が特に好ましい。
芳香族スルホン酸金属塩としては、ポリカーボネートに添加し、難燃性を改良することが出来る金属塩である。なかでも芳香族アルキルスルホン酸金属塩およびその誘導体が好ましく用いられる。
芳香族スルホン酸金属塩の金属としては、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属が好ましい。アルカリ金属、およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウム等が挙げられる。中でもアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが、またアルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、セシウムが、ポリカーボネート樹脂との相溶性及び難燃性付与の点から好ましく、芳香族スルホン酸金属塩は、2種以上の混合物であってもよい。
芳香族スルホン酸金属塩の例として、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンナトリウム、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンカリウム、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3ースルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸ジカリウムが挙げられる。なかでも非ハロゲン芳香族スルホン酸金属塩の例としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、なかでも難燃性・熱安定性・取り扱いの面からパラトルエンスルホン酸ナトリウム、またはパラトルエンスルホン酸カリウムが好ましく用いられる。
[5.ポリフルオロエチレン(D)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリフルオロエチレンを含有することも好ましい。ポリフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jや、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンF201L、FA500B、FA500Cが挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液として、ダイキン化学工業(株)製のフルオンD−1や、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するポリフルオロエチレン化合物が挙げられる。いずれのタイプも本発明の樹脂組成物に用いることができる。
ポリフルオロエチレンを含有した難燃性樹脂組成物を射出成形した成形品の外観をより向上させるためには、有機系重合体で被覆された特定の被覆ポリフルオロエチレン(以下、被覆ポリフルオロエチレンと略記することがある)を使用することができる。特定の被覆ポリフルオロエチレンとは、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95質量%の範囲内となるものであり、中でも、43〜80質量%、更には45〜70質量%、特には47〜60質量%となるものが好ましい。特定の被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン社製のメタブレンA−3800、A−3700、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等が使用できる。
ポリフルオロエチレン(D)の好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1.5質量部であり、0.05〜0.9質量部がより好ましく、0.1〜0.7質量部が特に好ましい。なお、被覆ポリフルオロエチレンの場合、添加量はポリフルオロエチレン純分の量に相当する。(C)ポリフルオロエチレンの配合量が0.01質量部未満の場合には、難燃性が低下する場合があり、一方1.5質量部を超えると成形品外観の低下が起こる場合がある。
[6.その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、所望の諸物性を損なわない範囲で、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂、各種の樹脂添加剤などが挙げられる。
・その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(ABS)などが挙げられる。
・樹脂添加剤
樹脂添加剤としては、耐衝撃性改良剤、離型剤、染顔料、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤が挙げられ、無機系樹脂添加剤としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、珪酸カルシウム、カーボンブラック、グラファイト等の無機フィラーが挙げられる。これらは、一種または任意の割合で二種以上を併用してもよい。
・・熱安定剤および酸化防止剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、溶融加工時や、高温下での長期間使用時等に生ずる黄変抑制、更に機械的強度低下抑制等の目的で、熱安定剤や酸化防止剤を含有することが好ましい。
熱安定剤としてはリン系化合物が、リン系化合物は一般的に、ポリカーボネート樹脂を溶融混練する際、高温下での滞留安定性や樹脂成形体使用時の耐熱安定性向上に有効であり、フェノール化合物は一般的に、耐熱老化性等の、ポリカーボネート樹脂成形体使用時の耐熱安定性に効果が高い。またリン系化合物とフェノール化合物を併用することによって、着色性の改良効果が一段と向上する。
熱安定剤及び酸化防止剤の含有量は、好ましくは、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.0001〜0.5質量部であり、0.0003〜0.3質量部が好ましく、0.001〜0.1質量部が特に好ましい。熱安定剤や酸化防止剤の含有量が少なすぎると効果が不十分であり、逆に多すぎてもポリカーボネート樹脂の分子量低下や、色相低下が生ずる場合がある。
・・・熱安定剤
熱安定剤としては、リン系化合物が好ましく、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも3価のリンを含み、変色抑制効果を発現しやすい点で、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
また、アシッドホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
亜リン酸エステルの中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、耐熱性が良好であることと加水分解しにくいという点で、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
・・酸化防止剤
酸化防止剤としてはフェノール化合物が好ましく、より好ましくは、特定構造を分子内に有するフェノール化合物、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
中でも、ポリカーボネート樹脂と混練される際に黄変抑制が必要なことから、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが好ましく、特に、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
・・離型剤
離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種のものが用いられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
離型剤の好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して2質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。2質量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。該離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
[7.ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、本発明に係るポリカーボネート樹脂と表面処理された酸化チタンと有機金属塩系難燃剤、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸又は二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法等が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
[8.成形品]
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、任意の形状に成形して成形品として使用する。成形品の形状、模様、寸法などに制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。適用できる成形方法は、ポリカーボネート樹脂の成形に適用できる方法をそのまま適用することができ、射出成形法、押出成形法、中空成形法、回転成形法、圧縮成形法、差圧成形法、トランスファー成形法などが挙げられる。
成形体の例を挙げると、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、特に電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品に用いて好適であり、特に電気電子機器の部品に用いて好適である。
電気電子機器としては、例えば、パソコン、ゲーム機、テレビなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話等が挙げられる。
特に、本発明に係る成形品は、シルバーストリーク等の表面欠陥がなく外観性に優れ、さらに光反射性と耐衝撃性と難燃性に優れるため、液晶表示部材等の反射部材に好適であり、液晶表示装置のバックライト用光線反射板、光反射枠または光反射シート、電気・電子機器、広告灯などの照明用装置、自動車用メーターパネルなどの自動車用機器などの、光反射部材として幅広く使用できる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は、以下のとおりである。
・測定・評価方法
[酸化チタン表面の炭素量[c]の測定]
、堀場製作所社製の高周波誘導加熱炉方式EMIA−921V炭素分析装置を用い、陽極出力:2.3kW、周波数:18MHz、175mAの高周波電流を負荷することにより算出した。
[酸化チタンの平均粒径測定方法]
実施例および比較例に使用した酸化チタン系添加剤の1次粒子径の測定は、以下の方法にて試料を調製し、測定を行った。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂中に、実施例および比較例に使用した(B)酸化チタン系添加剤5質量部を添加し、実施例比較例と同様の混練方法にてペレットを製造した。このペレットからSTEM観察用の約200nmの厚さの超薄肉切片をウルトラミクロトームで切り出し、日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−4800を用い、STEM観察(倍率:50,000倍)で酸化チタンの1次粒子像を得た。1次粒子の長径と短径の平均値を1次粒径とし、1次粒径の測定は1次粒子30個の平均値(0.05μm刻みの値)を用いた。
[成形品の物性評価方法]
(1)燃焼性
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物について、日本製鋼所社製射出成形機J50を用い、設定温度280℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚1.0mmの成形品を試験片として得た。得られた試験片について、UL94に準拠した垂直燃焼試験を行い、燃焼性結果は良好な順からV−0、V−1、V−2とし、規格外のものをNGと分類した。
(2)衝撃性
衝撃性の評価として、シャルピー衝撃強さを用い、ISO179−2に準拠し、厚み3mm、ノッチあり試験片を用いて測定した。試験片の成形は住友重機械工業社製射出成形機SG75を用い、設定温度280℃および300℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行った。
(3)外観
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物について、東芝機械社製射出成形機EC160N−II−4Aを用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で厚み2mmの箱型成形品(底面:150mm×150mm、側面:20mm×150mm、ピンゲート径φ1mm)を成形し、目視観察して成形品外観を評価した。シルバー、樹脂焼けなどが認められず外観の良好なものを「○」とし、外観不良が大きく発生したものを「×」と判定した。
(4)反射率
外観評価で使用したプレート3mm厚部分の反射率を測定した。測定はコニカミノルタ社製分光測色計CM3600dを用い、D65/10度視野、SCI通常測定モードにて行い、波長440nmでの反射率の値を用いた。
[使用材料]
実施例・比較例にて使用した材料は、以下のとおりである。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ユーピロン(登録商標)H−3000」
粘度平均分子量18,000
(B)酸化チタン系添加剤
以下の表1に示す、ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)で表面処理をした酸化チタンを準備した。
Figure 0005466901
(C)有機金属塩系難燃剤
芳香族スルホン酸金属塩
(C−1)トルエンスルホン酸ナトリウム塩
Chembridge International社製
「Chemguard(商品名)NATS」
(C−2)トルエンスルホン酸カリウム塩
Chembridge International社製
「Chemguard(商品名)PABS」
(D)ポリフルオロエチレン(PTFE)
ダイキン工業社製「ポリフロン(商品名)F−201L」
(E)熱安定剤
(E−1)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
ADEKA社製「AS2112」
(E−2)ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ADEKA社製「PEP36」
(F)離型剤
ペンタエリスリト−ルジステアレート、日油社製「ユニスター(商品名)H476D」
[実施例1〜6及び比較例1〜3]
上記した各成分を表2及び表3に示した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて混合した後、日本製鋼所社製2軸押出機(12ブロック、TEX30XCT)のホッパーに投入した。各樹脂成分を、シリンダー温度270℃、200rpm、押出速度25kg/時間の条件下で溶融混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物は、上記した方法により各種評価を行った。結果を表2および表3に示す。
Figure 0005466901
Figure 0005466901
表2の結果より、本発明の実施例1〜6の樹脂組成物は、優れた外観、燃焼性、強度、反射特性を有する。実施例4〜6は酸化チタン系添加剤の種類を変更したものであるが、実施例1〜3と同等の効果を発揮する。
一方、表3を見ると、比較例1は酸化チタン系添加剤の添加量が多く、式(1)の上限を満たさないため外観に劣る。比較例2は酸化チタン系添加剤の添加量が不足しているため充分な反射率が得られず燃焼性に劣る。比較例3ではオルガノシロキサン処理中の炭素含有量が不足しているため外観、燃焼性および衝撃性が悪化する。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によれば、シルバーストリーク等の表面欠陥の発生がなく、外観性に優れ、優れた耐衝撃性を有し、さらに高反射性で難燃性のポリカーボネート樹脂組成物が得られるので、例えば、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器などの広範囲の分野に利用でき、特に、液晶表示装置のバックライト用光線反射板、光反射枠または光反射シート、電気・電子機器、広告灯などの照明用装置、自動車用メーターパネルなどの自動車用機器などの光反射部材として使用できるので、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (4)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、オルガノシロキサンで表面処理された酸化チタン系添加剤(B)3〜30質量部及びパラトルエンスルホン酸ナトリウム及び/又はパラトルエンスルホン酸カリウム(C)0.01〜1質量部を含有してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    前記B成分における炭素含有量[c]が0.2質量%以上であり、かつ、
    芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の総量100質量%に対するB成分の含有量[B](質量%)と前記炭素含有量[c]との関係が、
    式(1) [c]×[B]≦9
    の条件を満足し、1.0mm厚におけるUL94垂直燃焼試験による燃焼性がV−0であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. オルガノシロキサンが、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品。
  4. 成形品が光反射部材である請求項に記載の成形品。
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