以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
実施形態1の金属屋根構造は、図1に示すように、下屋根1と上屋根4とを備えた二重屋根構造に適用されている。下屋根1および上屋根4は、いずれも、折板屋根により構成されている。つまり、本実施形態の縦葺き用金属屋根は、折板屋根である。
二重屋根構造は、下屋根1と上屋根4との間の間隔が、屋根面全面に亙って略一定の間隔となっている。二重屋根構造としては、下屋根1と上屋根4との間に断熱材を充填したものであってもよいし、既存の下屋根1の改修のために、下屋根1の上方に上屋根4をカバーしたものであってもよい。なお、本実施形態の金属屋根構造は、既存の下屋根1の上に新設の上屋根4を葺く所謂カバー工法に適用される。
下屋根1および上屋根4は、屋根勾配を有している。屋根勾配方向は、軒棟方向と平行な方向として定義される。なお、下屋根1および上屋根4が葺かれた建物に棟が設けられていない場合(例えば、片流れ屋根等)には、屋根面に沿って流下する雨水の流れ方向に平行な方向が、屋根勾配方向として定義される。
下屋根1は、既設の縦葺き屋根である。下屋根1は、図1(a)に示すように、屋根下地材2の上に葺設される。屋根下地材2は、例えば、母屋21と、タイトフレーム22とを備えている。なお、屋根下地材2としては、野地板の上方にタイトフレーム22が設置されたものであってもよく、特に限定されるものではない。
タイトフレーム22には、下屋根1が取り付けられる。タイトフレーム22は、屋根勾配方向とは直角な水平方向に長さを有し、長さ方向とは直角な水平方向に幅を有している。タイトフレーム22は、母屋21上に固定される。タイトフレーム22の長さ方向は、母屋21の長手方向に略平行となっている。タイトフレーム22は、帯状の金属板を曲げ加工することで形成されている。
タイトフレーム22は、複数の突出部23を備えている。各突出部23は、タイトフレーム22の長手方向に一定のピッチで並設される。各突出部23の頂部には、吊子24が固定される。吊子24は、下屋根1をタイトフレーム22に固定するものである。吊子24は、例えば、固着具を介してタイトフレーム22に固定される。
母屋21は、複数設けられている。母屋21の長手方向は、屋根勾配方向とは直角な水平方向と略平行となっている。母屋21は、屋根勾配方向に離間して複数並設される。屋根勾配方向に並設された母屋21は、屋根勾配方向の上流側に向かうほど、上方に位置するように配置されている。母屋21は、例えば、H型鋼やC型鋼やリップ付き溝型鋼などにより構成される。
下屋根1は、屋根下地材2上に設置されている。下屋根1は、例えば、折板屋根、立ちはぜ葺き、瓦坊葺き、波板葺き、円筒葺き等の縦葺き屋根により構成される。なお、本実施形態の下屋根1は、折板屋根により構成されている。
下屋根1は、山部11と谷部12とを有している。山部11と谷部12とは、屋根勾配方向とは直角な方向に交互に並設されている。山部11および谷部12は、屋根勾配方向に長さを有している。山部11および谷部12は、断面略U字状の下縦葺き材13が屋根勾配方向とは直角な方向に連結されることで形成されている。
下縦葺き材13は、屋根勾配方向とは直角な方向に複数連結することで下屋根1を構成する。下縦葺き材13は、縦葺き用の金属屋根であり、折板材により構成されている。下縦葺き材13は、断面略U字状に形成されており、屋根勾配方向に長さを有している。下縦葺き材13の長さは、下屋根1の屋根勾配方向の略全長に亙る長さに形成される。下縦葺き材13としては、例えば、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板により構成される。
下縦葺き材13は、平坦部14と、立設部15と、接続部16とを備えている。平坦部14は、下屋根1の谷部12の底面を構成する部分である。平坦部14は、屋根勾配方向に長さを有し、屋根勾配方向とは直角な方向に幅を有している。立設部15は、平坦部14の幅方向の各両端から上方に向かって延出している。各立設部15は、上方に向かうほど、対向間の距離が拡がるよう傾斜している。接続部16は、各立設部15の上端から、平坦部14が設けられた側とは反対側に向かうよう略水平方向に延出している。各接続部16は、屋根勾配方向とは直角な方向に隣接する他の下縦葺き材13の接続部16との間に、吊子24を介装した状態で連結される。この隣り合う接続部16同士は、例えば、はぜ締めされ、これにより吊子24を介してタイトフレーム22に固定される。このとき、立設部15及び接続部16により形成される上方に凸となった部分が、下屋根1における山部11を形成する。下縦葺き材13は、平坦部14と立設部15と接続部16とが、一枚の金属板を曲げ加工することで形成されている。
下屋根1は、次のようにして取付施工される。まず施工者は、母屋21の長手方向に沿ってタイトフレーム22を設置する。施工者は、タイトフレーム22を、各母屋21に設置する。このとき施工者は、各母屋21に設置するタイトフレーム22について、隣り合う突出部23の間の下方に凹となった部分が屋根勾配方向にまっすぐ並ぶよう、各タイトフレーム22を配置する。
次いで施工者は、下縦葺き材13をタイトフレーム22に設置する。施工者は、下縦葺き材13を、屋根勾配方向に並ぶタイトフレーム22に架設し、各タイトフレーム22の突出部23間の下方に凹となった部分に嵌め込む。施工者は、下縦葺き材13を、屋根勾配方向とは直角な方向に順に配置する。このとき、施工者は、隣り合う下縦葺き材13の隣り合う接続部16同士を上下に重ね、接続部16同士の間にタイトフレーム22の吊子24を挟みこむ。施工者は、下縦葺き材13の接続部16と吊子24とを、一緒に巻き込んで折り曲げる(つまり、はぜ継ぎ固定する)。
なお、この下縦葺き材13の取り付けにおいては、はぜ締めによる固定でなくてもよく、例えば、ボルト留めや嵌合方式により固定されていてもよい。また、はぜ継ぎ固定の折り曲げた形状としては、例えば、角ハゼ形状や丸ハゼ形状等が挙げられ、特に限定されるものではない。
ところで、長期に亙って使用することで金属屋根(下屋根1)が老朽化等した場合には、この金属屋根を撤去して新たに屋根を葺きなおすことが考えられる。しかしながら、例えば、建物が工場などの場合、屋根を撤去して新たに屋根を葺きなおすには、工場の操業を停止しなければならない。そこで、既設の金属屋根(下屋根1)の上から上屋根4をカバーするカバー工法が考え出された。このカバー工法により、既設の金属屋根の撤去作業を行なうことなく、新設の折板屋根を葺くことができ、この結果、工場の操業などを停止しなくても屋根の補修作業を行なうことができる。
一方、縦葺き用の金属屋根は、通常、屋根面の屋根勾配方向の略全長に亙る長さに形成されるものである。この屋根面の屋根勾配方向の略全長に亙る長さに形成された縦葺き用の金属屋根について、工場で製作した上で現場に搬入しようとしても、トラックの荷台の大きさの制約により行なうことができない。このため、通常、ロール成形機と、金属板がロール状に巻かれたフープ材とを現場に搬入し、現場でロール成形を行い、縦葺き用の金属屋根を形成しながら、これを屋根上に設置するような施工が行われている。
しかしながら、建物建設時には、作業スペースを広くとることができたとしても、カバー工法による改修作業を行なう際には、作業スペースを広くとることができない場合が多い。この場合、ロール成形機を現地に搬入できないという問題がある。
そこで、上屋根4を形成するための縦葺き用の金属屋根を、屋根勾配方向に複数連結することで、上屋根4を形成することが考え出された。これにより、縦葺き用の金属屋根の長さを、トラックで運搬可能な所定の長さ以下にすることができるため、縦葺き用の金属屋根を工場で製造した上で現場に搬入することができるようになる。
ところが、この場合、上屋根4には連結部分が存在するため、その連結部分の止水性が問題となる。この点について、本実施形態の縦継ぎ用金属屋根の連結構造は、この連結部分の止水性を良好に保つことができ、その上、施工性も良好なものである。以下、詳細を説明する。
本実施形態の二重屋根の構造は、図1(a)(b)に示すように、下屋根1の上に支持具3が取り付けられ、この支持具3に上屋根4が取り付けられる。支持具3は、下屋根1における山部11に取り付けられる。支持具3は、タイトフレーム22の上方に取り付けられる。
支持具3は、下屋根1の上方に上屋根4を取り付けるに当たり、下屋根1よりも所定寸法上方に上屋根4を設置するために用いられる。支持具3は、図2に示すように、下屋根1の山部11の一側方に配置される第一部材33と、下屋根1の山部11の他側方に配置される第二部材34と、第一部材33の上端面に固定される上吊子部32(図3参照)とを備えている。第一部材33と第二部材34とは、固着具35を介して連結され、これにより、はぜ固定部17を挟持する。第一部材33は、例えば、Uボルト36を介してタイトフレーム22に固定される。なお、はぜ固定部17は、下縦葺き材13の接続部16をはぜ継ぎ固定することで形成され、山部11の頂面から上方に向かって突出した断面逆L字状の部分である。
上屋根4は、新設の金属屋根である。上屋根4は、例えば、折板屋根、立ちはぜ葺き、瓦坊葺き、波板葺き、円筒葺き等の縦葺き屋根により構成され、下屋根1と同じ形状の屋根により構成される。なお、本実施形態の上屋根4は、折板屋根により構成されている。
上屋根4は、折板葺きにより形成された縦葺き屋根である。上屋根4は、図4に示すように、屋根勾配方向に複数の縦葺き材が連結され、さらに、この屋根勾配方向に連結された複数の縦葺き材が、屋根勾配方向に直角な方向に向かって、順に連結されることで形成されている。
上屋根4は、図1に示すように、下屋根1と同様、山部41と谷部42とを有している。山部41と谷部42とは、屋根勾配方向とは直角な方向に交互に並設されている。山部41および谷部42は、屋根勾配方向に長さを有している。山部41および谷部42は、断面略U字状の縦葺き材が、屋根勾配方向とは直角な方向に連結されることで形成されている。
複数の縦葺き材は、図4に示すように、屋根勾配方向において、水下側(軒側)から水上側(棟側)に向かって順に連結される。以下においては、この複数の縦葺き材として、屋根勾配方向の下流側から順に、第1の縦葺き材5、第2の縦葺き材6・・・として区別して説明する。なお、上屋根4の屋根勾配方向の全長を構成する縦葺き材の数量は、2つであっても3つ以上であってもよく、つまり、複数であればよい。
第1の縦葺き材5は、断面略U字状をした折板材である。第1の縦葺き材5は、屋根勾配方向に所定の長さを有している。第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の所定の長さは、屋根面の屋根勾配方向の全長よりも短い。第1の縦葺き材5は、下縦葺き材13と同じ断面形状となっている。
第1の縦葺き材5は、平坦部51と、立設部52と、上平面部53と、接続部54とを備えている。平坦部51は、上屋根4の谷部41の底面を構成する部分である。平坦部51は、屋根勾配方向に長さを有し、屋根勾配方向とは直角な方向に幅を有している。立設部52は、平坦部51の幅方向の各両端から上方に向かって延出している。各立設部52は、上方に向かうほど、対向間の距離が拡がるよう傾斜している。上平面部53は、各立設部52の上端から、平坦部51が設けられた側とは反対側に向かうよう略水平方向に延出している。接続部54は、各上平面部53の外側の先端に設けられている。各接続部54は、屋根勾配方向とは直角な方向に隣接する他の縦葺き材の接続部54との間に、支持具3の上吊子部32を介装した状態で連結される。この隣り合う接続部54同士は、例えば、はぜ締めされ、これにより支持具3を介してタイトフレーム22に固定される。このとき、立設部52、上平面部53および接続部54により形成される上方に凸となった部分が、上屋根4における山部41を形成する。なお、第1の縦葺き材5は、平坦部51と立設部52と上平面部53と接続部54とが、一枚の金属板を曲げ加工することで形成されている。
第2の縦葺き材6は、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側端部に、上方から重ねて連結される。第2の縦葺き材6は、屋根勾配方向に所定の長さを有している。第2の縦葺き材6の長さは、第1の縦葺き材5と同じ長さとすることもできる。第2の縦葺き材6は、第1の縦葺き材5よりも水上側に配置される。具体的に説明すると、第2の縦葺き材6の水下側の端部は、第1の縦葺き材5の水上側の端部に上方から重ねて連結される。
なお、第2の縦葺き材6は、平坦部51と、立設部52と、上平面部53と、接続部54とを備えており、第1の縦葺き材5の構造と同じ構造であるため、説明は省略する。
本実施形態の金属屋根構造は、止水部材7を備えている。この止水部材7は、第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との重ね部分(以下、連結部という)に、介装されるものである。なお、本実施形態の止水部材7は、金属板により形成された止水板70により構成されている。
止水板70は、図5に示すように、本体部71と、本体部71に設けられた下突条部72と、本体部71に設けられた上突条部73と、上突条部73および下突条部72に設けられた通水部74と、本体部71の屋根勾配方向の上流側端部に設けられたパッキン部75とを備えている。
なお、止水板70は、第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との連結部に介装された状態(以下、設置状態という)の屋根勾配方向の下流側の端部が、前端部として定義され、設置状態の屋根勾配方向の上流側の端部が、後端部として定義される。
本体部71は、断面略U字状となっており、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6と同じ断面形状となっている。なお、ここでいう「同じ断面形状」とは、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6の断面形状に、厳密に一致する断面形状のみをいうのではなく、「同じ断面形状」であるとみなせる形状であれば、「同じ断面形状」の範疇に含むものとする。言い換えると、止水板70は、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6と略同じ断面形状の板材により構成されている。
本体部71は、底面部711と、側面部712と、上横面部713とを備えている。本体部71は、これら底面部711・側面部712・上横面部713が、一枚の金属板を曲げ加工することで形成される。
本体部71は、例えば、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板により構成される。なお、本体部71は、金属板により構成されたものでなくてもよく、例えば、樹脂板により構成されたものであってもよい。
底面部711は、前後方向に長さを有し、前後方向とは直角な方向(つまり、左右方向)に幅を有している。底面部711は、設置状態において、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6の平坦部51に対向配置される。底面部711の幅寸法は、第1の縦葺き材5の平坦部51の幅寸法と略同じ長さに形成されている。
側面部712は、底面部711の幅方向の各両端から、上方に向かって延出している。各側面部712は、上方に向かうほど、対向間の距離が拡がるよう傾斜している。各側面部712は、設置状態において、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6の立設部52に対向配置される。側面部712の延出長さは、立設部52の平坦部51から上平面部53までの長さと略同じ長さに形成されている。
上横面部713は、各側面部712の上端から、底面部711が設けられた側とは反対側に向かうよう左右方向に延出している。上横面部713は、設置状態において、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6の上平面部53に対向配置される。
下突条部72は、下方に向かって突出しており、これにより、設置状態において、第1の縦葺き材5側に向かって突出する。このとき、下突条部72は、図6に示すように、第1の縦葺き材5の上面に当接または近接対向し、これにより、本体部71が、第1の縦葺き材5に面状に密着するのを防ぐ。下突条部72は、図5に示すように、本体部71の底面部711、側面部712、上横面部713に跨って形成されている。下突条部72は、本体部71の左右方向(屋根勾配方向に直交する方向)の略全長に亙って形成されている。言い換えると、下突条部72は、屋根勾配方向に交差する方向に沿って形成されている。また、下突条部72は、屋根勾配方向に複数(本実施形態では2つ)並設されている。
下突条部72は、本体部71を、プレス機などによりエンボス加工することで形成されている。つまり、下突条部72は、下面が下方に凸となり、上面が下方に凹となっており、本体部71が突曲されることで形成されている。なお、下突条部72は、エンボス加工により形成されたものでなくてもよく、例えば、ホットメルト樹脂を突条状に塗布して硬化させたものであってもよい。
上突条部73は、上方に向かって突出しており、これにより、設置状態においては、図6に示すように、第2の縦葺き材6側に向かって突出する。このとき、上突条部73は、第2の縦葺き材6の下面に当接または近接対向し、これにより、本体部71が、第2の縦葺き材6に面状に密着するのを防ぐ。上突条部73は、図5に示すように、本体部71の底面部711、側面部712、上横面部713に跨って形成されている。上突条部73は、本体部71の左右方向(屋根勾配方向に直交する方向)の略全長に亙って形成されている。言い換えると、上突条部73は、屋根勾配方向に交差する方向に沿って形成されている。また、上突条部73は、屋根勾配方向に複数(本実施形態では2つ)並設されている。
上突条部73は、下突条部72と同様、本体部71を、プレス機などによりエンボス加工することで形成されている。つまり、上突条部73は、上面が上方に凸となり、下面が上方に凹となっており、本体部71が突曲されることで形成されている。なお、上突条部73は、エンボス加工により形成されたものでなくてもよく、例えば、ホットメルト樹脂を突条状に塗布して硬化させたものであってもよい。
下突条部72と上突条部73とは、前後方向に並ぶよう互いに略平行に形成されている。また、上突条部73と下突条部72とは、前側から後側に向かって交互に形成されている。これにより、止水板70が第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との連結部に介装されると、第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との間に所定の間隔を形成し、これらが面状に密着するのを防ぎ、毛細管現象による雨水の引き込みを防止する。
なお、上突条部73と下突条部72とは、交互に形成されていなくてもよい。つまり、例えば、上突条部73のすぐ後側に別の上突条部73が設けられていてもよいし、下突条部72のすぐ後側に別の下突条部72が設けられていてもよい。
また、上突条部73は、止水板70の前後方向に複数形成されている。このため、図6に示すように、止水板70が連結部に介装されると、隣り合う一対の上突条部73と、第2の縦葺き材6の下面との間には、減圧空間8が形成される。また、下突条部72は、止水板70の前後方向に複数形成されている。このため、止水板70が連結部に介装されると、隣り合う一対の下突条部72と、第1の縦葺き材5の上面との間には、減圧空間8が形成される。このように、設置状態において減圧空間8が形成されることで、風雨が強くても、最終止水部であるパッキン部75にまで至る雨水を大幅に減らすことができ、この結果、パッキン部75を越えて浸水するのを防ぐことができる。
上突条部73および下突条部72は、図7に示すような形状であってもよい。上突条部73および下突条部72は、側面部712において、下方に向かうほど水上側に位置するよう傾斜し、底面部711において、幅方向中央側に向かうほど水下側に位置するよう傾斜している。すなわち、上突条部73および下突条部72は、それぞれ、屋根勾配方向に交差する方向に長く形成される。なお、上突条部73の長手方向の一部(上突条部73の端部)および下突条部72の長手方向の一部(下突条部72の端部)には、通水部74が形成されている。
また上突条部73および下突条部72とは、図8に示すような形状であってもよい。上突条部73および下突条部72は、左右方向の略全長に亙って形成されているが、通水部74が多数形成されており、これにより、上突条部73および下突条部72は、断続的に形成されている。すなわち、上突条部73および下突条部72は、それぞれ、屋根勾配方向に交差する方向に沿って形成される。
このように上突条部73および下突条部72の形状は、屋根勾配方向に交差する方向に沿って形成されていればよく、特に限定されるものではない。
通水部74は、設置状態において、上突条部73よりも屋根勾配方向の上流側に浸入した水を下流側に通水させるために形成される。また、通水部74は、設置状態において、下突条部72よりも屋根勾配方向の上流側に浸入した水を下流側に通水させるために形成される。言い換えると、通水部74は、上突条部73または下突条部72よりも屋根勾配方向の上流側に浸入した水を屋根勾配方向の下流側に通水させる。
通水部74は、図5に示すように、上突条部73の長手方向の一部に設けられた非突出部分により構成されている。また、通水部74は、下突条部72の長手方向の一部に設けられた非突出部分により構成されている。通水部74は、複数箇所に設けられている。具体的には、通水部74は、本体部71を貫通する貫通孔740により構成されており、本体部71の底面部711に設けられている。
貫通孔740は、前後方向に幅を有し、上突条部73および下突条部72の長手方向と同方向に長さを有している。貫通孔740の幅は、上突条部73および下突条部72の幅よりも長く形成されている。これにより、上突条部73または下突条部72に通水部74が設けられた部分は、本体部71の表面から非突出となっている。
本実施形態の止水板70には通水部74が設けられているため、仮に、上突条部73または下突条部72を越えて、屋根勾配方向の上流側に雨水が入り込んだとしても、通水部74を介して、雨水を下流側に通過させて排出することができる。
特に、本実施形態の通水部74は貫通孔740により構成されている。下突条部72および上突条部73は、エンボス加工により形成されているため、成形時に残留応力が生じやすいが、通水部74を貫通孔740で形成することにより、この内部応力を逃がすことができる。また、下突条部72は、上面が下方に凹となっており、その部分に雨水が溜まる場合があるが、本実施形態の通水部74は貫通孔740で形成されているため、下突条部72の上面に溜まる水を排水することもできる。
貫通孔740は、図9,10に示すような構造であってもよい。なお、図9(b)は後方側上方からみた斜視図であり,図10(b)は前方側下方からみた斜視図である。また図中の矢印において、Aが屋根勾配方向の下流側(軒側)を示し、Bが屋根勾配方向の上流側(棟側)を示す。また、図9(a)(b)は上突条部73を示し、図10(a)(b)は下突条部72を示す。
上突条部73に設けられる貫通孔740は、図9に示すように、上突条部73の頂点から後方側(棟側)に向かって設けられる。この貫通孔の後方側(棟側)の端部は、上突条部73の基部と同位置であってもよいし、本体部71の平面部に位置していてもよい。つまり、上突条部73の長手方向の一部に設けられた貫通孔740は、上突条部73における屋根勾配方向の上流側の(前後方向の後側の)半部に設けられる。
また、下突条部72に設けられる貫通孔740は、図10に示すように、下突条部72の前後方向の幅と同じ大きさか又はそれよりも大きく形成される。下突条部72に設けられる貫通孔740は、平面視矩形状であってもよいが、前方側(軒側)に向かうほど幅狭に(左右方向の対向間の距離が短くなるように)形成されていることが好ましい。この貫通孔740として、例えば、平面視台形状や平面視三角形状となったものが挙げられる。
このように、上突条部73に設けられる貫通孔740が、上突条部73の前後方向の後側の半部に設けられると、上突条部73の前側半部は、止水部として機能するため、前方から(つまり、軒から棟に向かう方向に沿って)浸入する雨水を効果的に止水することができる。その上、雨水が、上突条部73よりも棟側に浸入した場合であっても、貫通孔740が上突条部73の前後方向の後側の半部に設けられているから、この貫通孔740を介して排水することができる。
また、下突条部72に設けられる貫通孔740が、下突条部72の幅の全長に亙って設けられ、且つ前方側に向かうほど左右方向の対向間の距離が短くなるように形成されているため、前方に向かって開口する開口面積を極力小さくすることができる。これにより、下突条部72は、後方から(下突条部72よりも棟側から)の雨水を、通水部74を介して、軒側に向かって排水することができながら、それでいて、前方から浸入する雨水を効果的に止水することができる。しかも、止水板70の上面側に付着した雨水も、この下突条部72の貫通孔740を介して、下面側へ排水することができる。
なお、上突条部73に設けられる貫通孔740が、上突条部73の幅の全長に亙って設けられ、且つ前方側に向かうほど左右方向の対向間の距離が短くなるように形成されてもよい。
また、通水部74は、貫通孔740により構成されていなくてもよい。通水部74は、例えば、上突条部73および下突条部72の非形成部分(つまり、本体部71の平面部)により構成されてもよい。また、上突条部73または下突条部72がホットメルト樹脂により形成されている場合、通水部74は、貫通孔740ではなく、上突条部73または下突条部72の非形成部分で構成されてもよい。
パッキン部75は、図5に示すように、上突条部73および下突条部72よりも、後方側に設けられている。言い換えると、パッキン部75は、下突条部72および上突条部73よりも屋根勾配方向の上流側に設けられている。また、パッキン部75は、本体部71の左右方向の略全長に亙って設けられている。なお、パッキン部75は、本体部71の左右方向の長さよりも長く形成されてもよい(図16参照)。
パッキン部75は、図11に示すように、本体部71の上面および下面にそれぞれ設けられている。これにより、パッキン部75は、設置状態において、第1の縦葺き材5および前記第2の縦葺き材6にそれぞれ当接する。言い換えると、設置状態においてパッキン部75は、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6にそれぞれ屋根勾配方向に交差する方向(屋根勾配方向に直角な方向)の略全長に亙って当接する。具体的に言うと、パッキン部75は、下パッキン材752と、上パッキン材751とを備えている。
下パッキン材752は、本体部71の下面に固定されている。下パッキン材752は、例えば、接着により本体部71に固定される。下パッキン材752は、設置状態において、第1の縦葺き材5の上面に水密的に当接する。
上パッキン材751は、本体部71の上面に固定されている。上パッキン材751は、例えば、接着により本体部71に固定される。上パッキン材751は、設置状態において、第2の縦葺き材6の下面に水密的に当接する。
上パッキン材751および下パッキン材752には、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム等のゴムや、ホットメルト樹脂などが用いられるが、特に限定されるものではない。
ところで、第1の縦葺き材5は支持具3を介して下屋根1上に固定されている。しかし、支持具3は,タイトフレーム22上に配置される必要があるため、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の先端に配置されない場合が多い。この場合、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の先端は自由端になる。この状態で、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の端部に止水板70を配置し、さらに、第2の縦葺き材6を上方から配置すると、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の先端が下方に押圧されて撓む場合がある。この場合、止水性の低下が懸念されるため、本実施形態の金属屋根構造では、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の先端を支持する取付用部材9を備えている。
取付用部材9は、下屋根1の平坦部51に載置されて、上屋根4の平坦部51の下方を支持する。取付用部材9は、図12に示すように、断面L字状に形成された支持脚部91と、支持脚部91の上端に設けられた取付部92とを備えている。支持脚部91は、下屋根1の平坦部51に載置される。取付部92は、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の先端に固定される。取付部92は、例えば、断面略コ字状に形成される。
この取付用部材9の取付部92には、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の端部と共に止水板70が固定される。言い換えると、取付用部材9は、止水板70を第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の端部に取り付ける。取付部92には固着具93(例えばねじ具)が装着されており、これにより、止水板70が取り付けられる。
止水板70の後端部には、図11(a)に示すように、取付部92に取り付けられる被取付部76が設けられている。被取付部76は、パッキン部75よりも後方に設けられている。被取付部76は、丸孔761(いわゆる、バカ孔)を備えている。丸孔761には、取付部92の固着具93が挿入される。これにより止水板70は、設置状態では、移動不能に固定されている。
なお、本実施形態の被取付部76は丸孔761を備えているが、図11(b)のように、流れ方向に長い長孔760を備えてもよい。
この場合、被取付部76は、流れ方向(前後方向)に長い長孔760を有している。長孔760には、取付部92の固着具93が挿入される。これにより止水板70は、設置状態では、屋根勾配方向に所定の範囲で移動可能に固定されている。
止水板70は、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側端部に移動不能な状態で固定されていると(例えば、被取付部76の丸孔761により固定されていると)、パッキン部75に負荷が大きく掛かってしまう。すなわち、止水板70が、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側端部に、図11(a)のように移動不能な状態で固定されていると、熱膨張等により、第1の縦葺き材5が屋根勾配方向にL1伸び、第2の縦葺き材6が屋根勾配方向にL2伸びた場合には、上パッキン材751に対し、L1+L2の変位に係る負担が掛かってしまう。
これに対し、図11(b)のように、止水板70が、屋根勾配方向に所定の範囲で移動可能に固定されていると、L1+L2の変位に係る負担が、略均等に上パッキン材751と下パッキン材752とに分散される。つまり、上パッキン材751と下パッキン材752とにそれぞれ(L1+L2)/2の変位に係る負担が掛かる事になり、上パッキン材751に係る負荷を軽減させることができる。
なお、上記のように、止水板70の被取付部76が備える孔は、丸孔761であっても、流れ方向に長い長孔760であってもよいが、左右方向に調整可能なように左右方向に長い長孔であってもよい。また、止水板70の被取付部76が左右方向に長い長孔である場合に、取付用部材9の取付部92に前後方向に長い長孔を設け、被取付部76の左右に長い長孔と取付部92の前後に長い長孔とに固着具を挿入すれば、止水板70を屋根勾配方向および左右方向に移動可能に取り付けることが可能である。つまり、止水板70の孔と取付用部材9の孔との組み合わせは、丸孔、左右方向に長い長孔、前後方向に長い長孔を任意に選択して組み合わせることができる。これにより、止水板70と、第1の縦葺き材5または第2の縦葺き材6とがずれて設置されるのを防ぐことができ、止水性の低下を防止できる。
また、パッキン部75は、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6の屋根勾配方向への伸縮により、屋根勾配方向における上流側・下流側への繰り返し荷重を受けるが、同時に、圧縮方向への力を受け続けることになる。パッキン部75は、圧縮力を強く受けながらせん断(流れ)方向に繰り返し荷重を受けると、早期に劣化してしまうため、適切な圧縮力を保つ必要がある。
そこで、本実施形態の止水板70には、下パッキンの過圧縮を防止するための下圧縮量規制部77と、上パッキンの過圧縮を防止するための上圧縮量規制部78とが設けられている。
下圧縮量規制部77は、図13(b)に示すように、本体部71の下パッキン材752の後方に設けられた第一当接部771と、下パッキン材752の前方に設けられた第二当接部772とを備えている。第一当接部771および第二当接部772は、共に、本体部71から下方に向かって突出している。第一当接部771および第二当接部772の本体部71の下面からの突出寸法は、設置状態で、下パッキン材752が適切な圧縮量となるよう設定されている。第一当接部771および第二当接部772は、同じ突出量となっている。なお、第一当接部771および第二当接部772は、本体部71にエンボス加工を施すことにより形成されている。
上圧縮量規制部78は、本体部71の上パッキン材751の後方に設けられた第一当接部781と、上パッキン材751の前方に設けられた第二当接部782とを備えている。第一当接部781および第二当接部782は、共に、本体部71から上方に向かって突出している。第一当接部781および第二当接部782の本体部71の上面からの突出寸法は、設置状態で、上パッキン材751が適切な圧縮量となるよう設定されている。第一当接部781および第二当接部782は、同じ突出量となっている。なお、第一当接部781および第二当接部782は、本体部71にエンボス加工を施すことにより形成されている。
第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6の連結部に止水板70が介装されると、第1の縦葺き材5の上面が、下パッキン材752に当接しながら下パッキン材752を圧縮させ、この後、下圧縮量規制部77に当接する。このように、下圧縮量規制部77は、パッキン部75において、第1の縦葺き材5が止水板70に一定の距離以上近接するのを規制し、これにより、下パッキン材752の過圧縮を防止することができる。
第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6の連結部に止水板70が介装されると、第2の縦葺き材6の下面が、上パッキン材751に当接しながら上パッキン材751を圧縮させ、この後、上圧縮量規制部78に当接する。このように、上圧縮量規制部78は、パッキン部75において、第2の縦葺き材6が止水板70に一定の距離以上近接するのを規制し、これにより、上パッキン材751の過圧縮を防止することができる。
なお、図13(b)の例では、上圧縮量規制部78および下圧縮量規制部77が、両方設けられていたが、いずれか一方だけ設けられたものであってもよい。例えば、図13(a)のように、下圧縮量規制部77が設けられず、上圧縮量規制部78だけが設けられてもよい。特に、本実施形態のように、被取付部76に丸孔761が設けられている場合には、上パッキン材751に掛かる負荷が大きいため、図13(a)のように、上圧縮量規制部78が設けられるだけでも効果的である。
なお、下圧縮量規制部77と上圧縮量規制部78とは、例えば、図13(c)に示すような形状であってもよい。下パッキン材752は、本体部71から上方に凹没した凹所に配置される。下圧縮量規制部77は、下パッキン材752の後方に設けられた第一当接部771と、下パッキン材752の前方に設けられた第二当接部772とを備えている。第一当接部771と第二当接部772とは、本体部71の下面により構成されている。この第一当接部771と第二当接部772とは、第1の縦葺き材5に当接し、これにより、下パッキン材752の過圧縮を防止する。
また上パッキン材751は、本体部71の上面に配置される。上圧縮量規制部78は、上パッキン材751の後方に設けられた第一当接部781と、上パッキン材751の前方に設けられた第二当接部782とを備えている。この第一当接部781は、下パッキン材752が配置される凹所の裏面により構成されている。第二当接部782は、本体部71の上面から上方に向かって突出している。この第一当接部781と第二当接部782とは、第2の縦葺き材6に当接し、これにより、上パッキン材751の過圧縮を防止する。
また、下圧縮量規制部77と上圧縮量規制部78とは、例えば、図13(d)に示すような形状であってもよい。下圧縮量規制部77は、図13(c)のものと同じ構造である。上圧縮量規制部78の第二当接部782は、上突条部73により構成されている。
このような構成の止水板70は、次のようにして設置される。
施工者は、下屋根1の山部11の所定の箇所に支持具3を固定する(図1参照)。次いで、施工者は、支持具3の上方から第1の縦葺き材5を配置する。このとき、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の先端に取付用部材9を設置する(図11参照)。
次いで施工者は、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側端部に、止水板70を配置する。このとき、施工者は、止水板70の下パッキン材752が第1の縦葺き材5の上面に当接するよう、止水板70を配置し、被取付部76を取付用部材9の取付部92に固定する。
その後、施工者は、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側端部に、上方から覆うようにして、第2の縦葺き材6の屋根勾配方向の下流側端部を重ね合わせる。すると、止水板70の上パッキン材751が第2の縦葺き材6の下面に当接する。
次いで施工者は、屋根勾配方向に連結した縦葺き材に対し、屋根勾配方向とは直角な方向に、別の縦葺き材を配置する。施工者は、同じようにして、屋根勾配方向とは直角な方向に、順に縦葺き材を葺設する。
なお、このとき、連結部が、屋根勾配方向とは直角な方向に重ならないようにすることが好ましい。すなわち、屋根勾配方向とは直角な方向に並ぶ連結部が、屋根勾配方向にずれて位置することが好ましい。
この後、この配置状態において、施工者は、順次、接続部54同士及び支持具3の上吊子部32をはぜ継ぎ締結する。なお、はぜ継ぎ固定の作業には、手動または自動による専用のカシメ工具を使用することができる。このようにして、上屋根4を下屋根1の上に設置することができる。
以上、本実施形態の金属屋根構造は、第1の縦葺き材5と、第2の縦葺き材6とを備えている。第2の縦葺き材6は、第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側端部に上方から重ねて連結されている。第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との重ね部分には、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6と略同じ断面形状の止水部材7が介装されている。止水部材7は、下突条部72と、上突条部73と、通水部74と、パッキン部75とを備えている。下突条部72は、第1の縦葺き材5側に向かって突出しており、屋根勾配方向に交差する方向に沿っている。上突条部73は、第2の縦葺き材6側に向かって突出しており、屋根勾配方向に交差する方向に沿っている。通水部74は、上突条部73または下突条部72よりも屋根勾配方向の上流側に浸入した水を、屋根勾配方向の下流側に通過させる。パッキン部75は、下突条部72および前記上突条部73よりも屋根勾配方向の上流側に設けられている。またパッキン部75は、第1の縦葺き材5および第2の縦葺き材6に、それぞれ、屋根勾配方向とは直角な方向の略全長に亙って当接する。
このように、本実施形態の金属屋根構造によれば、第1の縦葺き材5や第2の縦葺き材6に、突条などの加工を施す必要がないため、大型のプレス機が必要ではなくなる。また、止水部材7には、上突条部73と下突条部72とが設けられているため、暴風雨が起こったとしても、最終止水部であるパッキン部75にまで入り込む雨水を少なくすることができ、第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との連結部からの浸水を極力防ぐことができる。
また、止水部材7には、通水部74が設けられているため、仮に、上突条部73または下突条部72を超えて、雨水が入り込んだとしても、通水部74を通して、その雨水を排出することができる。これにより、連結部に雨水が滞留しにくくできるので第1の縦葺き材5及び第2の縦葺き材6の腐食を防ぐことができる。
また本実施形態の上突条部73および下突条部72は、エンボス加工により形成されている。通水部74は、上突条部73の長手方向の一部および下突条部72の長手方向の一部にそれぞれ設けられた貫通孔740により構成されている。
このため、上突条部73を超えて入り込んだ水を、通水部74を介して、第1の縦葺き材5に流下させることができ、また、下突条部72の上面の凹所に入り込んだ水を、通水部74を介して第1の縦葺き材5に流下させることができる。これにより、連結部に雨水が滞留しにくくできるので、第1の縦葺き材5及び第2の縦葺き材6の腐食を防ぐことができる。
また本実施形態の止水部材7は、樹脂板または金属板により構成されている。パッキン部75は、下パッキン材752と、上パッキン材751とを備えている。下パッキン材752は、止水部材7の下面に設けられており、第1の縦葺き材5に当接する。上パッキン材751は、止水部材7の上面に設けられており、第2の縦葺き材6に当接する。また止水部材7は、下圧縮量規制部77および上圧縮量規制部78の、いずれか一方または両方を備えている。下圧縮量規制部77は、下パッキン材752の屋根勾配方向の下流側と上流側とに設けられており、下パッキン材752の過圧縮を防止する。また上圧縮量規制部78は、上パッキン材751の屋根勾配方向の下流側と上流側とに設けられており、上パッキン材751の過圧縮を防止する。
このように、本実施形態の止水板70には、下圧縮量規制部77と、上圧縮量規制部78とが設けられているため、上パッキン材751と下パッキン材752とが圧縮され過ぎるのを防ぐことができる。特に、本実施形態の第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6とは、昼夜で温度差がある場合、長手方向に伸縮しやすい。この場合、上パッキン材751と下パッキン材752とが過圧縮されていると、上パッキン材751と下パッキン材752の劣化が早まってしまうが、本実施形態の止水板70は、上圧縮量規制部78と下圧縮量規制部77とを有しているため、上パッキン材751と下パッキン材752とが最適な圧縮量で保たれている。このため、本実施形態の金属屋根構造によれば、長期間に亙って止水性を保つことができる。
また、本実施形態の金属屋根構造は、止水板70を第1の縦葺き材5の屋根勾配方向の上流側の端部に取り付ける取付用部材9を備えている。この取付用部材9は、止水板70を屋根勾配方向に所定の範囲で移動可能に固定するものである。
このため、本実施形態の金属屋根構造によれば、第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との伸縮により与えるパッキン部75への負担を、上パッキン材751と下パッキン材752とに略均等に振り分けることができて、パッキン材への過度な負担を軽減させることができる。
次に、実施形態2について説明する。本実施形態は、実施形態1と大部分において同じ構造であるため、同じ部分については説明を省略する。
実施形態2の金属屋根構造は、実施形態1と同様、下屋根4と上屋根1との二重屋根構造である。本実施形態の下屋根1の構造は、実施形態1と同じ構造である。また、本実施形態の上屋根4の構造は、止水部材7の構造について実施形態1の構造とは異なるが、その他の構造は実施形態1と同じ構造である。
本実施形態の止水部材7は、図14,15に示すように、本体部71と、本体部71に設けられた下突条部72と、本体部71に設けられた上突条部73と、上突条部73および下突条部72に設けられた通水部74と、本体部71の屋根勾配方向の上流側端部に設けられたパッキン部75とを備えている。
本体部71は、弾性変形可能なシート材により構成されている。このシート材は、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、シリコン、ゴム、ポリプロピレン等により構成される。本体部71は、図15に示すように、底面部711と、側面部712と、上横面部713とを備えているが、工場出荷時に断面略U字状に形成されたものであってもよいし、工場出荷時には平板状であってもよい。本体部71は、第1の縦葺き材5上に載置されると、この第1の縦葺き材5に沿って弾性変形するようになっている。
下突条部72、上突条部73、通水部74は、実施形態1の止水板70と同様、本体部71に設けられている。下突条部72、上突条部73、通水部74は、実施形態1の止水板70と同じ構造であるため、説明を省略する。
パッキン部75は、本体部71の屋根勾配方向の上流側(棟側)の端部に設けられている。パッキン部75は、本体部71に一体成形されたものであってもよいし、実施形態1と同様、別体であってもよい。なお、パッキン部75のその他の説明は、実施形態1と同様であるため、省略する。
第1の縦葺き材5の棟側の端部に、シート材により構成された止水部材7が配置されると、この止水部材7は、図15に示すように、第1の縦葺き材5に沿って弾性変形する。その後、施工者は、止水部材7の上から、第2の縦葺き材6の屋根勾配方向の下流側の端部と第1の縦葺き材5の上流側の端部とを重ねるようにして、第2の縦葺き材6を配置する。
なお、実施形態2の止水板部7は、実施形態1の止水板70と同様にして第1の縦葺き材5に取り付けられる。このため、この取り付け方法は省略する。
以上説明したように本実施形態の金属屋根構造は、止水部材7が第1の縦葺き材5に沿って変形可能なシート材により構成されている。
本実施形態の止水部材7によれば、一つの種類の止水部材7に対して、様々な種類の断面形状の縦葺き材5,6に適用することができる。つまり、本実施形態の止水部材7によれば、第1の縦葺き材5や第2の縦葺き材6の断面形状によらずに、止水部材7を設置することができる。この結果、止水部材7の製造コストを低減させることができる。
また、止水部材7が弾性変形可能なシート材により構成されているため、止水部材7は、第1の縦葺き材5と第2の縦葺き材6との形状になじみ易く、止水性を向上させることができる。
また、実施形態2の止水部材7も、実施形態1の止水部材7と同様、上圧縮量規制部78および下圧縮量規制部77の両方またはいずれか一方を有している。実施形態2の本体部71は、弾性変形可能なシート材により構成されているが、上圧縮量規制部および下圧縮量規制部は、例えば、厚みを有する突起部により構成される。この突起部は、シート材における他の部分よりも弾性変形しにくくなっており、パッキン部75の過圧縮を防止することができる。
次に、実施形態3について説明する。本実施形態は、実施形態1と大部分において同じ構造であるため、同じ部分については説明を省略する。
実施形態3の金属屋根構造は、実施形態1と同様、下屋根4と上屋根1との二重屋根構造である。本実施形態の下屋根1の構造は、実施形態1と同じ構造である。また、本実施形態の上屋根4の構造は、止水部材7の構造について実施形態1の構造とは異なるが、その他の構造は実施形態1と同じ構造である。
本実施形態の止水部材7は、図16に示すように、本体部71と、本体部71に設けられた下突条部72と、本体部71に設けられた上突条部73と、上突条部73および下突条部72に設けられた通水部74と、本体部71の屋根勾配方向の上流側端部に設けられたパッキン部75とを備えている。
本体部71の底面部711に設けられた通水部74は、台形状の貫通孔740によって構成される。上突条部73に設けられた貫通孔740の水下側の端縁は、上突条部73の頂点に位置している。下突条部72に設けられた貫通孔740の水上側の端縁は、底面部711の平坦な箇所に位置している。
なお、上突条部73に設けられた貫通孔740の水下側の端縁は、図17に示すように、上突条部73の頂点Pよりも水上側Bに位置していてもよい。すなわち、貫通孔740は、上突条部73の水上側Bの突出基部を含む範囲で、且つ、貫通孔740の水下側Aの端縁が上突条部73の頂点を越えない範囲に設けられていればよい。
また、本体部71の側面部712には、上突条部73と下突条部72との間に、透孔741が設けられている。透孔741は、本体部71の側面部712を貫通する。本実施形態の止水部材7は、透孔741が設けられていることにより、止水部材7と第1の縦葺き材5との間の雨水が蒸発した場合に、透孔741を介して蒸気を逃がすことができる。この結果、第1の縦葺き材5と止水部材7との間に水が滞留しても、当該部分を速やかに乾燥させることができる。
パッキン部75の長手方向の両端部は、止水板70の長手方向の端部よりも外側に突出している。これにより、止水部材7が第1の縦葺き材5の上に配置されると、パッキン部75の突出した部分が、第1の縦葺き材5の接続部54上に重なり、止水性が向上する。
また、上突条部73および下突条部72の屈曲する箇所には、孔79が設けられている。この孔79を曲げ加工前に予め設けることにより、本体部71の曲げ加工を容易に行うことができるようになる。
なお、本実施形態の止水部材7においても、上圧縮量規制部および下圧縮量規制部の両方またはいずれか一方を設けてもよい。
以上、実施形態1〜3の縦葺き用金属屋根は、二重屋根構造となっていたが、本発明の金属屋根構造においては、二重屋根構造のものに限られない。すなわち、一重の金属屋根の構造であってもよく、特に限定されない。
また、実施形態1〜3の縦葺き用金属屋根は、止水部材7を取り付けるための取付用部材9が設けられていたが、本発明において、取付用部材は必ずしも必要なものではなく、取付用部材は必須構成要件ではない。