JP5463860B2 - プロピレンの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、C5留分を主原料とするプロピレンの製造方法に関し、さらに詳しくは、C5留分に含まれる1,3−ペンタジエンなどを選択的に水素化して2−ペンテンなどを得て、その2−ペンテンなどとエチレンとをオレフィンメタセシス反応させることによりプロピレンを製造する方法において、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率が改良されたプロピレンの製造方法に関する。
プロピレンは、エチレンの生産を主目的とするナフサなどの熱分解において副生され、従来はこのようにして得られるプロピレンにより、その需要が賄われていた。しかし、近年、ポリプロピレンや酸化プロピレンなどのプロピレン誘導体の需要が増加しており、それに伴って、プロピレンの需要が増加している。
しかしながら、ナフサなどの熱分解において得られる成分の比率は、その原料に応じて概ね一定であり、特定の成分のみを大幅に増産することは困難である。さらに、近年では、産油国などにおいて、天然ガスに含まれるエタンを原料とするエチレンの生産設備が多く新設されており、そのような生産設備ではプロピレンが副生されないため、プロピレンの需給はひっ迫している。
そのため、新たなプロピレンの製造方法が模索されており、その方法の一つとして、炭素数5の炭化水素を主として含む石油留分であるC5留分を原料として得られる2−ペンテンなどのオレフィンを、エチレンとオレフィンメタセシス反応させて、プロピレンを製造する方法が注目されている。例えば、特許文献1には、2−ペンテンや1,3−ペンタジエンなどを含むC5留分を選択的水素化反応に付して、留分中の1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させ、それにより得られる成分中のC6成分を除去した後に、その成分に含まれる2−ペンテンなどをエチレンとオレフィンメタセシス反応させることにより、プロピレンや1−ブテンなどの混合物を得ることが記載されている。
また、特許文献2には、C5留分を選択的水素化反応に付した後、得られる成分を酸触媒の存在下でアルコールと反応させて成分中のイソペンテンなどをエーテルに転化させて除去し、残りの2−ペンテンなどを含む成分をエチレンとオレフィンメタセシス反応させて、プロピレンや1−ブテンなどの混合物を得ることが記載されている。この特許文献2では、得られる1−ブテンについても、2−ブテンに異性化させた後に、エチレンとオレフィンメタセシス反応させて、さらにプロピレンを得ることも記載されている。
特許文献1や2に記載された方法において、C5留分を選択的水素化反応に付して、C5留分中の1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させる直接の目的は、オレフィンメタセシス反応を阻害する1,3−ペンタジエンを反応系から除くことにあるが、1,3−ペンタジエンをプロピレンを得るために必要な成分である2−ペンテンに転化させることができるので、プロピレンの収率を高くすることができる点においても利点がある。しかしながら、それでもなお、これらの方法における、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率は十分でなく、その収率の改善が強く望まれていた。
本発明は、C5留分に含まれる1,3−ペンタジエンなどを選択的に水素化して2−ペンテンなどを得て、その2−ペンテンなどとエチレンとをオレフィンメタセシス反応させることによりプロピレンを製造する方法において、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率を改良することを目的とする。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、C5留分に元来含まれ、また、C5留分に元来含まれるシクロペンタジエンが選択的水素化反応工程において転化されることによっても生じるシクロペンテンの存在が、オレフィンメタセシス反応工程におけるエチレンの供給量に対するプロピレンの収率を下げる大きな要因となっていることを見出した。本発明者は、この知見に基づき、オレフィンメタセシス反応工程の反応系からシクロペンテンを除く手法についてさらに鋭意研究し、選択的水素化反応に付す前のC5留分からシクロペンテンを分離する手法よりも、選択的水素化反応に付した後の成分からシクロペンテンを分離する手法のほうが、分離の効率が良いことを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
かくして、本発明によれば、1,3−ペンタジエンおよびシクロペンテンを含んでなるC5留分を原料とするプロピレンの製造方法であって、下記の工程(1)〜(4)を有することを特徴とするプロピレンの製造方法が提供される。
(1)C5留分を選択的水素化反応に付し、C5留分中の1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させる工程
(2)工程(1)で得られた成分からシクロペンテンを分離し、シクロペンテン含量が低減された、2−ペンテンを含む成分を得る工程
(3)メタセシス触媒の存在下において、工程(2)で得られた成分にエチレンを接触させることにより、工程(2)で得られた成分中の2−ペンテンをエチレンと反応させて、プロピレンおよび1−ブテンを生成させる工程
(4)工程(3)で得られた成分からプロピレンを回収する工程
(1)C5留分を選択的水素化反応に付し、C5留分中の1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させる工程
(2)工程(1)で得られた成分からシクロペンテンを分離し、シクロペンテン含量が低減された、2−ペンテンを含む成分を得る工程
(3)メタセシス触媒の存在下において、工程(2)で得られた成分にエチレンを接触させることにより、工程(2)で得られた成分中の2−ペンテンをエチレンと反応させて、プロピレンおよび1−ブテンを生成させる工程
(4)工程(3)で得られた成分からプロピレンを回収する工程
上記のプロピレンの製造方法では、工程(2)におけるシクロペンテンの分離を蒸留により行うことが好ましい。
本発明によれば、C5留分に含まれる1,3−ペンタジエンなどを選択的に水素化して2−ペンテンなどを得て、その2−ペンテンなどとエチレンとをオレフィンメタセシス反応させることによりプロピレンを製造する方法において、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率を大幅に改良することができる。
本発明のプロピレンの製造方法は、1,3−ペンタジエンおよびシクロペンテンを含んでなるC5留分を主たる原料とするものである。本発明で用いるC5留分は、上記の特定成分を含むものである限りにおいて、その由来は特に限定されるものではないが、ナフサなどの炭化水素原料を熱分解して生じる留分であって、炭素数5の炭化水素化合物を主として含む留分が好適に用いられる。
本発明で用いるC5留分は、1,3−ペンタジエンを含むものである必要がある。本発明のプロピレンの製造方法において、C5留分中の1,3−ペンタジエンは、選択的水素化反応により2−ペンテンに転化され、得られる2−ペンテンは、エチレンとのオレフィンメタセシス反応により、プロピレンと1−ブテンを生じる。なお、C5留分に含有される1,3−ペンタジエンは、シス−1,3−ペンタジエンであっても良いし、トランス−1,3−ペンタジエンであっても良いし、これらを任意の比で含む異性体混合物であっても良い。炭化水素原料を熱分解して生じるC5留分では、通常、シス−1,3−ペンタジエンおよびトランス−1,3−ペンタジエンの両方が含有される。本発明で用いるC5留分における1,3−ペンタジエンの含有量は、通常10〜95重量%であり、好ましくは20〜90重量%である。
本発明で用いるC5留分は、イソプレンを含んでいても良い。本発明のプロピレンの製造方法において、C5留分中のイソプレンは、選択的水素化反応により2−メチル−2−ブテンに転化され、得られる2−メチル−2−ブテンは、エチレンとのオレフィンメタセシス反応により、プロピレンとイソブテンを生じる。したがって、C5留分中に含まれるイソプレンはプロピレンの原料として用いることができる。但し、イソプレンはそれ自体が有用性の高い化合物であるから、エチレンを消費してまでプロピレンに転化させることは経済性に欠ける。したがって、本発明で用いるC5留分は、予めイソプレンを分離・回収したものであることが好ましい。C5留分からイソプレンを分離・回収する手法は、特に限定されないが、通常は、蒸留により分離することが可能であり、例えば、沸点が38℃以下の留分を除くことによりイソプレンを分離・回収することができる。C5留分中の1,3−ペンタジエン:イソプレンの重量比としては、50:50〜100:0が好ましく、80:20〜100:0がより好ましい。
本発明で用いるC5留分は、1,3−ペンタジエンおよびイソプレン以外の鎖状C5炭化水素を含んでいても良い。そのような鎖状C5炭化水素としては、1,2−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンなどの非共役ジエン;2−ペンテン、2−メチル−2−ブテンなどの内部オレフィン;1−ペンテンなどの末端オレフィン;n−ペンテン、イソペンテンなどのアルカン;を例示することができる。これらの内、2−ペンテン、2−メチル−2−ブテンなどの内部オレフィンは、オレフィンメタセシス反応の工程において、エチレンと反応することにより、プロピレンを生じさせることができる。
本発明で用いるC5留分は、シクロペンテンを含むものである必要がある。シクロペンテンを含むC5留分を用いる場合において、本発明のプロピレンの製造方法を適用すると、オレフィンメタセシス反応でのエチレンの供給量に対するプロピレンの収率を改良することができるからである。C5留分中のシクロペンテンの含有量は、特に限定されないが、5重量%以上、好ましくは10重量%以上であるときに、本発明のプロピレンの製造方法を適用することによる収率改良の効果が大きくなる。
本発明で用いるC5留分は、シクロペンテン以外の環状C5炭化水素を含んでいても良い。そのような環状C5炭化水素としては、シクロペンタジエン、1−メチルシクロブテン、3−メチルシクロブテン、メチレンシクロブタン、メチルシクロブタジエンを例示することができる。これらの内、シクロペンタジエンは、選択的水素化反応においてシクロペンテンに転化されるので、後述するシクロペンテンを分離する工程において、C5留分に元来含まれるシクロペンテンと共に分離することができる。但し、C5留分中のシクロペンタジエンは二量化させてジシクロペンタジエンとすれば、蒸留などの手法によって容易にC5留分から分離することができる。したがって、本発明では、予めシクロペンタジエンを分離し、シクロペンタジエン含量を低減させたC5留分を用いることが好ましい。
本発明で用いるC5留分は、上記したような鎖状C5炭化水素および環状C5炭化水素以外の成分を含んでいても良く、例えば、炭素数5以外の炭化水素成分などを含んでいても良い。
本発明では、炭化水素原料を熱分解して生じるC5留分をそのまま用いても良いが、任意の処理を行ってから選択的水素化反応に付しても良い。特に、C5留分中に、選択的水素化反応に悪影響を与える成分(例えば、含硫黄化合物や含窒素化合物)が含まれる場合には、そのような成分を除去する処理を行うことが好ましい。含硫黄化合物や含窒素化合物などをC5留分から除去する処理としては洗浄処理や吸着処理を例示することができる。洗浄処理の例としては、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、純水などによる洗浄を挙げることできる。また、吸着処理に用いる吸着剤の例としては、活性白土、酸性白土、活性炭、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミノシリケート、ハイドロタルサイト、モレキュラーシーブを挙げることでき、これらは単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
本発明のプロピレンの製造方法では、まず、上記のようなC5留分を選択的水素化反応に付し、C5留分中の1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させる。選択的水素化反応は一般に用いられる方法を採用して行えば良く、通常、触媒の存在下で1,3−ペンタジエンと水素とを反応させることにより行われる。選択的水素化反応に用いる触媒は、1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させることができるものであれば特に限定されず、液相状態の反応原料中に溶解した状態で作用する均一系触媒を用いても良いし、イオン性液体、パーフルオロアルカンあるいは水のように反応原料および生成物と分離が容易な液体に触媒を溶解させた液相多相系触媒を用いても良いし、固相の不均一系触媒を用いても良い。これらのなかでも、反応後の触媒と反応物との分離の効率の観点から、液相多相系または固相不均一系触媒を用いるのが好ましく、経済性の観点から、固相不均一系触媒を用いるのが特に好ましい。
選択的水素化反応に用いる触媒における活性成分の種類は特に限定されないが、少なくとも1種の遷移金属元素を活性成分として含む触媒を用いることが好ましい。触媒活性の観点からは、これらのなかでも、8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含むことが好ましく、そのなかでも、10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含む触媒を用いることが好ましい。
選択的水素化反応に用いる触媒は、活性成分に加えて、助触媒成分を含有していても良い。助触媒成分を用いることにより、触媒の活性、反応選択性、寿命などを向上させることができる。助触媒の種類は、目的に応じて選択すればよく、無機物、有機物のどちらであっても良く、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
固相不均一系の触媒を用いる場合において、触媒は、活性成分のみ、または活性成分および助触媒成分のみからなる固体として用いても良いし、適当な担体に担持させて用いても良いが、触媒の扱いやすさの観点からは、担体に担持させて用いるのが好ましい。担体の種類は特に限定されず、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、アルミノシリケート、ハイドロタルサイト、モレキュラーシーブなど工業的に一般に用いられる触媒用担体を使用することができる。これらの担体は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
担体に触媒の成分を担持させる手法は特に限定されないが、触媒の成分またはその前駆体の溶液に担体を浸漬して、それを乾燥させた後、必要に応じて活性化処置を施すなどの一般的な手法を採用することができる。担体は粉状であっても成型されていても良いが、後述するような連続流通式反応を行う場合には、反応器の圧力損失を低減するために、球状、円筒状、円柱状、円盤状などの形状に成型されていることが望ましい。
選択的水素化反応に用いる水素源としては水素ガス、ボラン、ヒドラジン、金属水素化物、ギ酸、ギ酸アンモニウムなどの水素化反応に用いられる公知の水素源を用いることができる。これらのなかでも、水素ガスが特に好適に用いられる。水素源の量は、特に限定されないが、通常、理論上必要な水素量の1.0〜100倍の量の水素が供給されるように設定される。
選択的水素化反応は、C5留分、水素源、および必要に応じて添加される触媒のみが存在する状態で行っても良く、これらの成分を希釈するための溶媒またはガスが存在する状態で行っても良い。また、反応の転化率、選択性、触媒寿命などを改良するなどの目的で、さらに他の成分が存在する状態で行っても良い。
選択的水素化反応は、C5留分が気相状態であるような条件下で行っても良いし、液相状態であるような条件下で行っても良いし、気相および液相の混合状態であるような条件下で行っても良い。また、C5留分が超臨界状態であるような条件下で行うこともできる。
選択的水素化反応の反応温度は、特に限定されないが、通常0〜500℃、好ましくは10〜400℃、より好ましくは20〜300℃である。また、反応圧力も、特に限定されないが、通常−0.1〜20MPaG、好ましくは−0.05〜10MPaG、より好ましくは0〜5MPaGである。
選択的水素化反応は、バッチ式で行っても良いし、連続流通式で行っても良いが、反応器効率の面からは連続流通式が望ましい。バッチ式で反応を行う場合は、水素源の使用量の全てを反応器に加えてから反応を開始してもよく、反応の進行に応じて水素源を逐次加えても良い。また、連続流通式で反応を行う場合は、予め水素源の使用量の全てを反応器に加えてからC5留分を反応器に連続的に供給しても良いし、反応器に水素源供給経路を設けて反応の進行に応じた量の水素源連続的に供給しても良い。
選択的水素化反応は、十分な水素化が行えることができれば1回の反応で行っても良く、必要に応じて、複数回の反応を行っても良い。複数回の反応を行う場合、触媒の種類、温度、圧力などの条件は、各回で同一であっても異なっていても良い。
オレフィンメタセシス反応において、モノオレフィン以外の不飽和化合物が反応系に多く存在すると、目的のオレフィンメタセシス反応が阻害されるおそれがある。したがって、選択的水素化反応において十分な水素化を行うことにより、選択的水素化反応の生成物におけるモノオレフィン以外の不飽和化合物の含有量を十分に低減させることが望ましい。具体的には、選択的水素化反応の生成物におけるモノオレフィン以外の不飽和化合物の含有量が、100重量ppm未満であることが好ましく、50重量ppm未満であることがより好ましい。
以上のようにC5留分を選択的水素化反応に付すことにより、C5留分中の1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させることができる。なお、得られる2−ペンテンは、原料である1,3−ペンタジエンと同様に、シス体であっても良いし、トランス体であっても良いが、通常は、これらを任意の比で含む異性体混合物である。
本発明のプロピレンの製造方法では、以上のようにして得られる2−ペンテンを含む選択的水素化反応の生成物(成分)から、シクロペンテンを分離して、シクロペンテン含量が低減された、2−ペンテンを含む成分を得る必要がある。シクロペンテンは、エチレンとオレフィンメタセシス反応して、有用性の低い1,6−ヘプタジエンを生じるため、オレフィンメタセシス反応の反応系に存在すると、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率を押し下げる原因となるからである。
選択的水素化反応の生成物から、シクロペンテンを分離する手法は特に限定されないが、蒸留による分離が好適に用いられる。選択的水素化反応前のC5留分に含まれる1,3−ペンタジエンとシクロペンテンとは、沸点が極めて近いために蒸留で分離することが困難であるが、2−ペンテンとシクロペンテンとでは十分な沸点差があるので、蒸留によって十分な分離が可能である。なお、選択的水素化反応の生成物に、シクロペンタンなどの、シクロペンテン以外の環状C5炭化水素が含まれる場合には、この蒸留により、それらの環状C5炭化水素も2−ペンテンを含む成分から分離することができる。
選択的水素化反応の生成物からシクロペンテンを分離するための蒸留は、バッチ式、連続式のいずれの形態でも実施し得るが、プロセス全体の効率を向上させる観点からは、連続式が好ましい。
用いる蒸留装置は、特に限定されないが、分離能の高い精留装置を用いることが望ましい。精留装置としては棚段式蒸留装置や充填式蒸留装置など従来公知の蒸留装置を用いることが出来る。用いる蒸留装置の分離能力は、理論段数で、10段以上であることが好ましく、20段以上であることがより好ましく、30段以上であることが特に好ましい。また、蒸留装置は、塔頂の凝縮液の一部を蒸留塔内に還流させ、凝縮液の残部を蒸留装置外に抜き出すための還流装置を備えるものであることが好ましい。
充填式蒸留装置を用いる場合における塔内充填物としては、ラシヒリング、レッシングリング、スルザーパッキンなどの公知の充填物を用いれば良く、その材質にも特に制限はなく、磁器や各種金属製の充填物を用いることができる。
蒸留装置の塔頂圧力にも、特に制限はないが、−0.1〜10MPaGの範囲が好ましく、−0.05〜5MPaGの範囲がより好ましく、−0.02〜3MPaGの範囲が特に好ましい。圧力が低すぎると、蒸留塔頂の凝縮器を低温にする必要があり装置運転上のコストを増大させるおそれがある。一方、圧力が高すぎると、塔内温度を上げるために装置に供給するエネルギー量が増大する上、高耐圧の蒸留装置が必要となり、設備のコストが増大するおそれがある。
以上のような選択的水素化反応の生成物からシクロペンテンを分離して、シクロペンテン含量が低減された、2−ペンテンを含む成分を得る工程では、工程の前後で、シクロペンテンの含有率(重量%)を1/2以下とすることが好ましく、1/5以下とすることがより好ましい。すなわち、この工程に付した後の成分におけるシクロペンテン含有率(重量%)は、この工程に付す前の選択的水素化反応の生成物(成分)中のシクロペンテン含有率(重量%)の1/2以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。このような比率でシクロペンテン含量を低減させることにより、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率をより効果的に改良することができる。
本発明のプロピレンの製造方法において、用いるC5留分に例えば1−ペンテンなどの末端オレフィンが含有される場合には、その末端オレフィンを、2−ペンテンなどの内部オレフィンに異性化させる工程を設けても良い。この工程を設けることにより、C5留分中の末端オレフィンを、オレフィンメタセシス反応におけるプロピレンの原料となる内部オレフィンに変換することができるので、C5留分の使用量に対するプロピレンの収率を改良することができる。末端オレフィンを内部オレフィンに異性化させる方法は特に限定されず公知の方法を採用できるが、触媒を用いる方法が一般的である。末端オレフィンを内部オレフィンに異性化させるために用いうる触媒としては、金属酸化物を活性成分とする触媒が挙げられ、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、アルミナを例示することができる。これらの触媒は、そのまま用いても良いし、担体に担持させて用いても良い。
末端オレフィンを内部オレフィンに異性化させる工程は、オレフィンメタセシス反応を行う工程より後でなければいつ行っても良く、例えば、選択的水素化反応工程と同時、選択的水素化反応工程とシクロペンテン分離工程との間、シクロペンテン分離工程と同時、シクロペンテン分離工程とオレフィンメタセシス反応を行う工程との間、またはオレフィンメタセシス反応と同時に行うことができる。また、異性化は、1つの工程で行っても良いし、複数の工程において行っても良い。これらのなかでも、選択的水素化反応工程と同時、またはシクロペンテン分離工程と同時に、末端オレフィンを内部オレフィンに異性化させることが好ましい。
選択的水素化反応工程と同時に異性化を行うためには、選択的水素化反応工程において、水素化触媒および異性化触媒を併用するか、両方の機能を有する触媒を用いれば良い。水素化および異性化の両方の機能を有する触媒としては、活性成分として、8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含む触媒を挙げることができる。
シクロペンテンの分離を蒸留で行う場合において、その蒸留と同時に異性化を行うためには、蒸留装置内、具体的には蒸留塔内の充填物などに異性化触媒を混合すれば良い。また、蒸留装置内に、水素化触媒および異性化触媒の両方、または水素化および異性化の両方の機能を有する触媒を配置することにより、蒸留装置内において、未反応で残った1,3−ペンタジエンなどと水素との選択的水素化反応を完結させ、さらに、末端オレフィンを内部オレフィンに異性化する反応を行うことができる。
本発明のプロピレンの製造方法では、以上のようにして得られるシクロペンテン含量が低減された2−ペンテンを含む成分を、メタセシス触媒の存在下においてエチレンと接触させることにより、2−ペンテンをエチレンと反応(オレフィンメタセシス反応)させて、プロピレンおよび1−ブテンを生成させる。なお、反応させる成分に、例えば2−メチル−2−ブテンなどの、2−ペンテン以外の内部オレフィンが含まれる場合には、その内部オレフィンもオレフィンメタセシス反応させてプロピレンを得るための原料として用いることができる。2−ペンテンをエチレンと反応させるにあたっては、シクロペンテンの分離工程を経た2−ペンテンを含む成分をそのまま用いても良いし、その成分にさらなる処理を加えたものを用いても良い。特に、用いる成分中に、オレフィンメタセシス反応の触媒毒となる成分(例えば、含酸素化合物、含硫黄化合物、水分など)が含まれる場合には、そのような触媒毒となる成分を除去する処理を行うことが好ましい。触媒毒となる成分を除去する処理としては、吸着剤による吸着処理が挙げられる。吸着処理に用いる吸着剤の例としては、活性白土、酸性白土、活性炭、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミノシリケート、ハイドロタルサイト、モレキュラーシーブを挙げることでき、これらは単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
オレフィンメタセシス反応におけるエチレンの使用量は、特に限定されないが、通常、反応させる内部オレフィンの量に対して、0.5〜100倍モルであり、好ましくは、1〜10倍モルである。エチレンの使用量が少なすぎると、C5留分の使用量に対するプロピレンの収率が不十分となり、一方、エチレンの使用量が多すぎると、未反応のエチレンを回収する労力が大きくなる。なお、オレフィンメタセシス反応に用いるエチレンは、特に限定されず、一般にポリマーグレードなどと呼ばれる高純度品を用いても良いし、触媒毒となる成分を含まない限りにおいて、例えばメタンなどの不純物を含むものを用いても良い。
オレフィンメタセシス反応に用いるメタセシス触媒は、2−ペンテンをエチレンとオレフィンメタセシス反応させて、プロピレンおよび1−ブテンを生成させるものであれば特に限定されず、固相不均一系触媒、均一系触媒、液相多相系触媒などのいずれであっても良いが、反応生成物からの触媒分離の容易さの観点からは、固相不均一系触媒または液相多相系触媒であることが好ましく、経済性の観点から、固相不均一系触媒を用いるのが特に好ましい。
メタセシス触媒における活性成分の種類は特に限定されないが、少なくとも1種の遷移金属元素を活性成分として含む触媒を用いることが好ましい。6〜8族の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素を活性成分として含む触媒を用いることが好ましい。なかでも、モリブデン、レニウムおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の金属元素を活性成分として含む触媒が好適である。
メタセシス触媒は、活性成分に加えて、助触媒成分を含有していても良い。助触媒成分を用いることにより、触媒の活性、反応選択性、寿命などを向上させることができる。助触媒の種類は、目的に応じて選択すればよく、無機物、有機物のどちらであっても良く、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
メタセシス触媒は、活性成分のみ、または活性成分および助触媒成分のみからなる固体として用いても良いし、適当な担体に担持させて用いても良いが、触媒の扱いやすさの観点からは、担体に担持させて用いるのが好ましい。担体の種類は特に限定されず、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、アルミノシリケート、ハイドロタルサイト、モレキュラーシーブなど工業的に一般に用いられる触媒用担体を使用することができる。これらの担体は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
担体に触媒の成分を担持させる手法は特に限定されないが、触媒の成分またはその前駆体の溶液に担体を浸漬して、それを乾燥させた後、必要に応じて活性化処置を施すなどの一般的な手法を採用することができる。担体は粉状であっても成型されていても良いが、後述するような連続流通式反応を行う場合には、反応器の圧力損失を低減するために、球状、円筒状、円柱状、円盤状などの形状に成型されていることが望ましい。
オレフィンメタセシス反応は、2−ペンテンを含む成分、エチレン、および必要に応じて添加される触媒のみが存在する状態で行っても良く、これらの成分を希釈するための溶媒またはガスが存在する状態で行っても良い。また、反応の転化率、選択性、触媒寿命などを改良するなどの目的で、さらに他の成分が存在する状態で行っても良い。
オレフィンメタセシス反応は、2−ペンテンを含む成分およびエチレンの混合物が気相状態であるような条件下で行っても良いし、液相状態であるような条件下で行っても良いし、気相および液相の混合状態であるような条件下で行っても良い。また、この混合物が超臨界状態であるような条件下で行うこともできる。
オレフィンメタセシス反応の反応温度は、特に限定されないが、通常0〜500℃、好ましくは5〜450℃、より好ましくは10〜400℃である。また、反応圧力も、特に限定されないが、通常−0.1〜30MPaG、好ましくは−0.05〜25MPaG、より好ましくは0〜20MPaGである。
オレフィンメタセシス反応は、バッチ式で行っても良いし、連続流通式で行っても良いが、反応器効率の面からは連続流通式が望ましい。
本発明のプロピレンの製造方法では、以上のようにして得られるオレフィンメタセシス反応の生成物から、目的の成分であるプロピレンを回収する。プロピレンを回収する手法は特に限定されないが、蒸留による分離が好適に用いられる。オレフィンメタセシス反応の生成物を蒸留することにより、生成物中のプロピレンと1−ブテンなどの炭素数4の成分とを異なる留分として容易に分離して回収することができる。また、生成物中に、未反応エチレン、炭素数5の成分、炭素数6以上の成分などが含まれる場合には、これらもそれぞれ異なる留分として分離して回収することができる。プロピレンを回収するために用いられる、蒸留装置および蒸留条件は特に限定されず、例えば、シクロペンテンの分離で用いるものとして例示した蒸留装置および蒸留条件を用いることができる。
プロピレンを回収する工程において得られる1−ブテンを含む炭素数4の成分は、異性化反応に付することにより、1−ブテンなどの末端オレフィンを2−ブテンなどの内部オレフィンに異性化させた後、エチレンとのオレフィンメタセシス反応に付すことができる。このようにすることにより、さらに、プロピレンを製造することが可能である。なお、1−ブテンを含む炭素数4の成分の異性化反応は、単独で行っても良いし、上述した1−ペンテンの異性化工程において、1−ペンテンを含む成分と混合して異性化することもできる。
プロピレンを回収する工程において、未反応エチレンが得られる場合には、そのエチレンは、再度、オレフィンメタセシス反応で用いるエチレンとして用いることができる。また、プロピレンを回収する工程において、未反応の2−ペンテンなどの内部オレフィンを含む炭素数5の成分が得られる場合には、その成分をオレフィンメタセシス反応の反応成分として用いることができる。さらに、プロピレンを回収する工程において、1−ペンテンなどの末端オレフィンを含む炭素数5の成分が得られる場合には、その成分を、内部オレフィンへの異性化工程に付して、オレフィンメタセシス反応の反応成分として用いることができる。
以上のような本発明のプロピレンの製造方法では、選択的水素化反応に付したC5留分中からシクロペンテンを分離するので、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率を押し下げる原因となるシクロペンテンの分離を十分に行うことができる。したがって、本発明によれば、同様の反応を用いる従来のプロピレンの製造方法に比して、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率が大幅に改良される。
次に、本発明のプロピレンの製造方法を実施するためのプロセスの例を説明するが、本発明はこれらの例に制限されるものではない。
図1〜5は、それぞれ、本発明のプロピレンの製造方法を実施するためのプロセスの第1〜5の例を表す概念図である。図1〜5において、R1は選択的水素化反応を行う反応器を表し、R2およびR2’はオレフィンメタセシス反応を行う反応器を表し、R3およびR3’は異性化反応を行う反応器を表し、D1、D2およびD2’は蒸留装置を表す。また、図1〜5において、C5DEは1,3−ペンタジエンおよびシクロペンテンを含んでなるC5留分を表し、H2は水素を表し、HBは蒸留工程における高沸点成分を表し、Etはエチレンを表し、Prはプロピレンを表し、C4Eは炭素数4の成分を表し、C6+は炭素数6以上の成分を表す。
図1に示す第1のプロセス例では、まず、C5留分に水素を加えて、選択的水素化反応器R1において、C5留分中の1,3−ペンタジエンやシクロペンタジエンなどのジエン成分を2−ペンテンやシクロペンテンなどのオレフィンに転化させて、成分(1)を得る。得られた成分(1)は、蒸留装置D1により蒸留し、シクロペンテンを多く含む高沸点成分を分離することにより、シクロペンテン含量が低減された2−ペンテンを含む成分(2)を得る。なお、選択的水素化反応において未反応の水素が残る場合には、蒸留装置D1またはその上流から水素を回収して、選択的水素化反応に用いる水素としてリサイクルすることができる。
得られた成分(2)にはエチレンを加えて、オレフィンメタセシス反応器R2において反応させることにより、プロピレンと1−ブテンなどの末端オレフィンを生成させる。この反応により得られる成分(3)は、蒸留装置D2により蒸留に付して、プロピレンを回収することができる。また、蒸留により得られる炭素数5の成分(4)を含む留分は異性化反応器R3に送り、1−ブテンなどの炭素数4の成分を含む留分や炭素数6以上の成分を含む留分は系外に抜き出す。なお、オレフィンメタセシス反応において未反応のエチレンが残る場合には、蒸留装置D2からエチレンを回収して、オレフィンメタセシス反応に用いるエチレンとしてリサイクルすることができる。
異性化反応器R3に送られた炭素数5の成分(4)は、異性化反応に付され、含まれる1−ペンテンなどの末端オレフィンが2−ペンテンなどの内部オレフィンに転化される。このようにして得られる成分(5)は、オレフィンメタセシス反応器R2に送ることにより、オレフィンメタセシス反応の原料として用いることができる。なお、成分(5)をオレフィンメタセシス反応器R2に送るにあたり、系中に反応に関与しない成分(飽和炭化水素など)が蓄積しないように、成分(5)の一部をパージ流として系外に抜き出すこともできる。
図2に示す第2のプロセス例は、第1のプロセス例に対して、異性化反応器R3’、オレフィンメタセシス反応器R2’、蒸留装置D2’を付加したものである。第2のプロセス例では、蒸留装置D2で得られる1−ブテンなどの炭素数4の成分を含む留分を系外に抜き出さずに異性化反応器R3’に送る。そして、異性化反応器R3’において、1−ブテンなどの末端オレフィンが2−ブテンなどの内部オレフィンに転化される。このようにして得られる成分(5’)にはエチレンが加えられて、オレフィンメタセシス反応器R2’においてオレフィンメタセシス反応に付される。このオレフィンメタセシス反応により、さらにプロピレンが生成される。なお、2−ブテンとエチレンとでのオレフィンメタセシス反応では、2−ブテンおよびエチレンの各1当量に対して、2当量のプロピレンが得られる。
オレフィンメタセシス反応器R2’における反応により得られる成分(3’)は、蒸留装置D2’により蒸留に付して、プロピレンを回収することができる。なお、未反応のエチレンはリサイクル可能であり、また、プロピレンを回収した後の残りの成分については、必要に応じて一部をパージ流として系外に抜き出した上で、異性化反応器R3’における異性化反応の原料として用いることができる。
図3に示す第3のプロセス例は、第2のプロセス例の蒸留装置D2’を省略したものである。この第3のプロセス例では、オレフィンメタセシス反応器R2’での反応により得られる成分(3’)が、蒸留装置D2に送られて、オレフィンメタセシス反応器R2から送られる成分(3)とともに蒸留される。
図4に示す第4のプロセス例は、第1のプロセス例において、オレフィンメタセシス反応器R2に送られていた成分(5)を、蒸留装置D1に送るものである。このプロセス例では、蒸留装置D2から、炭素数4の成分や炭素数6以上の成分を抜き出す必要はなく、炭素数5の成分(4)を含む留分と共に、異性化反応器R3に送ることができる。異なる炭素数の成分の異性化を同時に行うことに何ら問題はなく、また、炭素数6以上の成分は、蒸留装置D1において高沸点成分として分離することができるからである。
図5に示す第5のプロセス例は、第4のプロセス例における異性化反応器R3を省略する代わりに、選択的水素化反応器R1において異性化触媒の機能をも果たす水素化触媒を用い、プロピレンが抜き取られた成分(4)を、その選択的水素化反応器R1に送るものである。このプロセス例では、選択的水素化反応器R1において、供給されるC5留分や成分(4)に含まれる末端オレフィンが内部オレフィンに転化されるので、異性化反応器R3を別個に設ける必要がない。
以上述べたプロセス例において、反応器および蒸留装置は、必ずしも別個に設ける必要はなく、両方の機能を兼ね備えるものと採用することができる。また、異性化反応器R3、R3’は、異性化反応を必要としない場合や、他の反応器や蒸留装置において異性化反応を行える場合には、省略することができる。さらに、必要に応じて、触媒毒を除去する処理などの他の処理を行う装置を設けても良い。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例〕
〔C5留分の選択的水素化反応〕
プロピレンの原料として用いるC5留分としては、特公昭47−41322号公報および特公昭47−41323号に記載された方法に基づいて、ナフサを熱分解して得られる炭素数5の炭化水素を主として含む留分から精製イソプレンを回収する際に副生するC5留分を用いた。具体的には、次のように得られるC5留分を用いた。ナフサを熱分解した際に生じる炭素数5の炭化水素を主として含む留分を100℃に加熱してシクロペンタジエンの大部分を二量化させてジシクロペンタジエンとした後、蒸留によりジシクロペンタジエンを除去し、ジメチルホルムアミドを用いた抽出蒸留により鎖状アルカン、鎖状モノオレフィンを塔頂留分として除去し、塔底留分から放散塔でジメチルホルムアミドを除去し、主としてイソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタン、および炭素数6の炭化水素からなる留分を得た。次いで、この留分の主たる成分の内、最も沸点の低いイソプレンを蒸留分離し、残りの留分を100℃に加熱して、シクロペンタジエンの大部分を二量化させてジシクロペンタジエンとした後、蒸留により沸点50℃以上の留分(ジシクロペンタジエンおよび炭素数6の炭化水素)を除去して得られる留分をC5留分として用いた。このC5留分をガスクロマトグラフィーにより組成分析した結果を表1に示す。
〔C5留分の選択的水素化反応〕
プロピレンの原料として用いるC5留分としては、特公昭47−41322号公報および特公昭47−41323号に記載された方法に基づいて、ナフサを熱分解して得られる炭素数5の炭化水素を主として含む留分から精製イソプレンを回収する際に副生するC5留分を用いた。具体的には、次のように得られるC5留分を用いた。ナフサを熱分解した際に生じる炭素数5の炭化水素を主として含む留分を100℃に加熱してシクロペンタジエンの大部分を二量化させてジシクロペンタジエンとした後、蒸留によりジシクロペンタジエンを除去し、ジメチルホルムアミドを用いた抽出蒸留により鎖状アルカン、鎖状モノオレフィンを塔頂留分として除去し、塔底留分から放散塔でジメチルホルムアミドを除去し、主としてイソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタン、および炭素数6の炭化水素からなる留分を得た。次いで、この留分の主たる成分の内、最も沸点の低いイソプレンを蒸留分離し、残りの留分を100℃に加熱して、シクロペンタジエンの大部分を二量化させてジシクロペンタジエンとした後、蒸留により沸点50℃以上の留分(ジシクロペンタジエンおよび炭素数6の炭化水素)を除去して得られる留分をC5留分として用いた。このC5留分をガスクロマトグラフィーにより組成分析した結果を表1に示す。
選択的水素化反応を行う反応器としては、内径11mm、長さ150mmのSUS316製気化器と、パラジウム/γ−アルミナ触媒(球状、平均粒径2mm、パラジウム担持量2重量%)を充填した内径23mm、長さ200mmのSUS316製反応管からなる反応装置を用いた。反応器の下流には、反応ガス冷却凝縮器を設置し、非凝縮ガスは大気圧に開放するようにした。
電気ヒーターにより気化器および反応管を140℃に加熱し、表1に示す組成のC5留分を2.3g/分で気化器に供給し、気化器出口のC5留分ガスに水素ガスを流量700SCCM(標準体積(cm3)/分)で混合し、その混合ガスを反応管に供給した。反応管出口からの留出ガスを冷却凝縮して反応混合物を得て、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果は表1に示すとおりであり、C5留分中の1,3−ペンタジエンなどのジエン成分が、2−ペンテンなどのモノオレフィンに転化されたことが確認された。
〔蒸留によるシクロペンテンの分離〕
C5留分の選択的水素化反応により得られた反応混合物100重量部を、窒素気流下で、還流装置を備えた理論段数50段のスルーザー蒸留塔により、塔頂の圧力0MPaG(常圧)、蒸留/還流比=1/5で蒸留を行った。この蒸留により得られた(塔頂留出物:塔底物)の重量比は、72:28であった。また、得られた塔頂留出物および塔底物については、それぞれ、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果は表2に示す通りである。表1および表2から分かるように、シクロペンテンの分離工程に付した後の成分(表2の塔頂留出物)におけるシクロペンテン含有率(2.4重量%)は、シクロペンテンの分離工程に付す前の選択的水素化反応の生成物(表1の水素化反応後成分)中のシクロペンテン含有率(17.3重量%)の1/7.2であった。
C5留分の選択的水素化反応により得られた反応混合物100重量部を、窒素気流下で、還流装置を備えた理論段数50段のスルーザー蒸留塔により、塔頂の圧力0MPaG(常圧)、蒸留/還流比=1/5で蒸留を行った。この蒸留により得られた(塔頂留出物:塔底物)の重量比は、72:28であった。また、得られた塔頂留出物および塔底物については、それぞれ、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果は表2に示す通りである。表1および表2から分かるように、シクロペンテンの分離工程に付した後の成分(表2の塔頂留出物)におけるシクロペンテン含有率(2.4重量%)は、シクロペンテンの分離工程に付す前の選択的水素化反応の生成物(表1の水素化反応後成分)中のシクロペンテン含有率(17.3重量%)の1/7.2であった。
〔オレフィンメタセシス反応〕
蒸留により得られた塔頂留出物は、モレキュラーシーブ13Xを加えた後、窒素気流下で24時間静置した後に、原料として反応に供した。オレフィンメタセシス反応を行う反応器としては、内径11mm、長さ300mmのSUS316管の底部100mmに石英ウールを充填し、次いで7.5重量%酸化タングステン/シリカ触媒(球状、平均粒径1.5mm)1.5gと7重量%酸化マグネシウム・1重量%酸化ナトリウム/アルミナ触媒(球状、平均粒径1.5mm)4.5gとを混合した触媒を充填し、更にその上に石英ウールを充填したものを用いた。また、内径11mm、長さ150mmのSUS316製気化器を反応器の上流に設け、反応ガス冷却凝縮器および背圧弁を反応器の下流に設けた。
蒸留により得られた塔頂留出物は、モレキュラーシーブ13Xを加えた後、窒素気流下で24時間静置した後に、原料として反応に供した。オレフィンメタセシス反応を行う反応器としては、内径11mm、長さ300mmのSUS316管の底部100mmに石英ウールを充填し、次いで7.5重量%酸化タングステン/シリカ触媒(球状、平均粒径1.5mm)1.5gと7重量%酸化マグネシウム・1重量%酸化ナトリウム/アルミナ触媒(球状、平均粒径1.5mm)4.5gとを混合した触媒を充填し、更にその上に石英ウールを充填したものを用いた。また、内径11mm、長さ150mmのSUS316製気化器を反応器の上流に設け、反応ガス冷却凝縮器および背圧弁を反応器の下流に設けた。
まず、背圧弁の設定値は0MPaGとして、気化器および反応器を電気ヒーターにより550℃に加熱し、乾燥空気を流量50SCCMで8時間流通させた。次いで、乾燥空気に代えて一酸化炭素を同流量で30分間流通させて触媒を活性化した。次いで、背圧弁の設定値を3.0MPaGに代え、一酸化炭素に代えて窒素を流通させる一方、電気ヒーターの設定温度を下げて気化器および反応器の温度が300℃で安定するまで放置した。そして、窒素の流通を止めて、原料を1.27g/分の流量で気化器に供給し、気化器出口の原料ガスにエチレンガスを流量1.1stdL/Min(標準L/分)で混合し、反応管に供給し、反応管出口から流出ガスとして反応混合物を得た。反応管に供給する直前の原料ガスおよび反応管出口からの流出ガスについて、それぞれ、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果は表3に示す通りである。
〔蒸留によるプロピレンの回収〕
上記したオレフィンメタセシス反応を20時間連続して行い、反応管出口からの流出ガスを冷却凝縮することにより、反応混合物を回収した。この反応混合物を脱エチレン塔および脱プロピレン塔からなる連続加圧蒸留塔で蒸留し未反応のエチレンと生成したプロピレンを回収した。脱エチレン塔は理論段数20段で塔頂圧力2.5MPaG、蒸留/還流比=1で運転し、脱プロピレン塔は理論段数30段で0.5MPaG、蒸留/還流比=1で運転した。脱プロピレン塔の塔頂留出物として得られる精製プロピレンは、ガスクロマトグラフィーによる分析により、99.9重量%以上のプロピレンを含有する、純度の高いものであることが確認された。
上記したオレフィンメタセシス反応を20時間連続して行い、反応管出口からの流出ガスを冷却凝縮することにより、反応混合物を回収した。この反応混合物を脱エチレン塔および脱プロピレン塔からなる連続加圧蒸留塔で蒸留し未反応のエチレンと生成したプロピレンを回収した。脱エチレン塔は理論段数20段で塔頂圧力2.5MPaG、蒸留/還流比=1で運転し、脱プロピレン塔は理論段数30段で0.5MPaG、蒸留/還流比=1で運転した。脱プロピレン塔の塔頂留出物として得られる精製プロピレンは、ガスクロマトグラフィーによる分析により、99.9重量%以上のプロピレンを含有する、純度の高いものであることが確認された。
〔比較例〕
蒸留により得られた塔頂留出物に代えて、選択的水素化反応の反応混合物を直接用いたこと以外は、実施例と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。反応管に供給する直前の原料ガスおよび反応管出口からの留出ガスについて、それぞれ、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果は表4に示す通りである。
蒸留により得られた塔頂留出物に代えて、選択的水素化反応の反応混合物を直接用いたこと以外は、実施例と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。反応管に供給する直前の原料ガスおよび反応管出口からの留出ガスについて、それぞれ、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果は表4に示す通りである。
実施例のオレフィンメタセシス反応における、消費エチレンに対する生成プロピレンの収率は、99.8%(=(17.2/42.1)/{(51.9−40.4)/28.1})である。一方、比較例のオレフィンメタセシス反応における、消費エチレンに対する生成プロピレンの収率は、85.6%(=(13.9/42.1)/{(51.7−41.0)/28.1})である。したがって、シクロペンテンの分離工程を有する本発明のプロピレンの製造方法を採用することにより、エチレンの供給量に対するプロピレンの収率を大幅に改良することができるといえる。
1 選択的水素化反応により得られる成分
2 シクロペンテン含量が低減された2−ペンテンを含む成分
3 オレフィンメタセシス反応により得られる成分
4 異性化反応に供する成分
5 異性化反応により得られる成分
2 シクロペンテン含量が低減された2−ペンテンを含む成分
3 オレフィンメタセシス反応により得られる成分
4 異性化反応に供する成分
5 異性化反応により得られる成分
Claims (2)
- 1,3−ペンタジエンおよびシクロペンテンを含んでなるC5留分を原料とするプロピレンの製造方法であって、下記の工程(1)〜(4)を有することを特徴とするプロピレンの製造方法。
(1)C5留分を選択的水素化反応に付し、C5留分中の1,3−ペンタジエンを2−ペンテンに転化させる工程
(2)工程(1)で得られた成分からシクロペンテンを分離し、シクロペンテン含量が低減された、2−ペンテンを含む成分を得る工程
(3)メタセシス触媒の存在下において、工程(2)で得られた成分にエチレンを接触させることにより、工程(2)で得られた成分中の2−ペンテンをエチレンと反応させて、プロピレンおよび1−ブテンを生成させる工程
(4)工程(3)で得られた成分からプロピレンを回収する工程 - 工程(2)におけるシクロペンテンの分離を蒸留により行う請求項1に記載のプロピレンの製造方法。
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