JP5462650B2 - 複合材料の製造方法 - Google Patents

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本発明は、炭化ホウ素の強化材と金属ケイ素のマトリックスとからなる複合材料の製造方法に関する。
近年、炭化ホウ素の強化材と金属ケイ素のマトリックスとの複合材料(以下、BC/Si複合材料)が様々な分野で利用されている。このような複合材料の製造工程において金属ケイ素を炭化ホウ素のプリフォームへ浸透させる際に炭化ホウ素の強化材と反応し、クラックが生じる場合がある。そして、このようなクラックの防止するための炭化ホウ素複合体の製造方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
特許文献1記載の炭化ホウ素複合体の製造方法は、反応性炭素質成分の不在の下で溶浸を行い、ケイ素化した炭化ホウ素を製造する。そして、ケイ素溶浸材が炭化ホウ素に接触する前に、ホウ素源もしくは炭素源、またはホウ素と炭素の両方をケイ素中に合金化または溶解させることによって炭化ホウ素と溶浸中のケイ素との反応を抑制している。
特表2007−513854号公報
上記のように、特許文献1記載の炭化ホウ素複合体の製造方法は、炭化ホウ素成分を事前に金属ケイ素に溶解させることによりクラックを防止している。しかしながら、例えば同文献では事前溶解させる炭化ホウ素成分として、炭化ホウ素の粉末やプリフォームが用いられているが、どちらの場合でもワークとは別に準備が必要であり、コストと手間が増すという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、底面側の浸透口付近にクラックが発生しても、製品として回収するワーク部分には及ばないようにすることで、クラックの無い複合材料が得られる複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の複合材料の製造方法は、炭化ホウ素の強化材と金属ケイ素のマトリックスとからなる複合材料の製造方法であって、浸透口側を底面としたときの側面にスリットを設けた炭化ホウ素のプリフォームを配置する工程と、主に金属ケイ素で構成された溶融材料を前記プリフォームに浸透させる工程と、前記溶融材料が浸透したプリフォームを冷却した後、前記スリットより浸透口側の部分を切除する工程と、を含むことを特徴としている。
このように、スリットを設けたプリフォームに溶融材料を浸透させるため、底面側の浸透口付近に発生するクラックがスリットより上の上面側に及ぶのを防止することができる。そして、スリットより浸透口側の部分を切除することで、クラックの無い複合材料を得ることができる。
(2)また、本発明の複合材料の製造方法は、前記スリットの深さは、前記プリフォームの厚みの20%以上50%以下であることを特徴としている。スリットの深さをプリフォームの厚みの20%以上にすることでクラックが浸透口の反対側に及ぶのを防止し、50%以下にすることで浸透の際にプリフォームが必要とする強度を維持することができる。
(3)また、本発明の複合材料の製造方法は、前記スリットの幅は、2mm以上5mm以下であることを特徴としている。スリットの幅を2mm以上にすることでクラックが浸透口の反対側に及ぶのを防止し、5mm以下にすることで浸透の際にプリフォームが必要とする強度を維持することができる。
(4)また、本発明の複合材料の製造方法は、前記スリットの位置は、前記浸透口から4mm以上であることを特徴としている。スリットを浸透口側の底面から4mm以上の位置に設けることで、クラックが浸透口の反対側に及ぶのを防止できる。
本発明によれば、底面側の浸透口付近に発生するクラックがスリットより上の上面側に及ぶのを防止し、クラックの無い複合材料を得ることができる。
第1の実施形態で用いられるプリフォームを示す斜視図である。 第1の実施形態で用いられるプリフォームを示す側面図である。 第1の実施形態で用いられるプリフォームを示す正断面図である。 第1の実施形態に係る複合材料の製造方法の一場面を示す断面図である。 第1の実施形態に係る複合材料の製造方法の一場面を示す側面図である。 第2の実施形態に係る複合材料製造方法の一場面を示す断面図である。 第3の実施形態で用いられるプリフォームを示す斜視図である。 第3の実施形態で用いられるプリフォームを示す平断面図である。 第3の実施形態で用いられるプリフォームを示す斜視図である。 第3の実施形態で用いられるプリフォームを示す平断面図である。 第4の実施形態で用いられるプリフォームを示す側面図である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
[第1の実施形態]
本発明の製造方法により製造されるBC/Si複合材料(複合材料)は、炭化ホウ素の強化材と金属ケイ素のマトリックスとからなり、マトリックス中に強化材が分散した構造を有している。BC/Siは、炭化ホウ素(BC、ボロンカーバイド)のプリフォームに金属ケイ素を浸透することで得られる。用いられる金属ケイ素は、単体でも合金でもよい。なお、BC/Si複合材料は、実質的に炭化ホウ素の強化材と金属ケイ素のマトリックスとからなるものであり、若干の不純物を含んでいてもよい。
(プリフォーム)
図1は、炭化ホウ素のプリフォーム100を示す斜視図である。プリフォーム100は、その本体110の浸透口側の底面110aに対して側面110bにスリット120を有している。本体110は、概ね矩形に形成されていることが取り扱い上好ましいが、側面にスリットを設けられる形状であれば特にこれに限定されない。スリット120は、矩形溝状に形成され、本体110の側面110bに設けられている。図2は、プリフォーム100を示す側面図、図3は、プリフォーム100を示す正断面図である。なお、図3は、図2の断面Aを見た図である。
図3に示すスリット120の深さD1は、プリフォーム100の厚みd1の20%以上50%以下であることが好ましい。これにより、クラックが浸透口の反対側に及ぶのを防止し、50%以下にすることで浸透の際にプリフォームが必要とする強度を維持することができる。
また、図2に示すスリット120の幅W1は、2mm以上5mm以下であることが好ましい。スリットの幅を2mm以上にすることでクラックが浸透口の反対側に及ぶのを防止し、5mm以下にすることで浸透の際にプリフォームが必要とする強度を維持することができる。スリットの長さL1は、ほぼ本体110の長手方向の全長にわたる程度であることが好ましい。スリット120によるクラック防止効果を高めるためである。
図3に示すスリット120の位置P1は、浸透口(たとえば図3では底面110a)から4mm以上であることが好ましい。これにより、クラックが浸透口の反対側に及ぶのを防止できる。スリットの位置P1は、浸透口(底面110a)から5mm程度であればさらに好ましい。なお、浸透口とは、プリフォームが側面まで溶融金属に浸かる場合には溶融金属の表面の位置を指し、底面110aのみ溶融金属に浸かっているときには底面110aを指す。
図3の例では、スリット120は、本体110の互いに反対側にある側面の対称の位置にバランス良く設けられていることが好ましい。スリット120の底面付近では本体110は薄く形成されている。なお、スリット120は、一方の側面110bにのみ設けられていてもよい。
スリット120は、深く広いものであればあるほど、クラックの進展を防ぐことができる。たとえば、本体110の側面を打ち抜いたスリット120であってもよい。ただし、一点だけで局所的に繋がっている形状になるともはやスリット120とはいえず、形状を維持したままの浸透が困難になるため、スリット120を挟んで上下部分が安定して結合している形状が好ましい。
(製造工程)
まず、このようにスリット120を設けた炭化ホウ素のセラミック多孔質体からなるプリフォーム100を作製し、容器200内に配置する。配置は、いわゆる縦置きとし、浸透口側の面を底面として、側面に水平方向に伸びたスリット120を有するように配置する。容器200は、有底開口の容器であり、溶融金属ケイ素の浸透時に溶融材料300を保持可能なものを準備する。溶融材料300は、1450℃以上の温度に維持し溶融させる。溶融材料300は、金属ケイ素に炭化ホウ素含有材料を溶かしたものでもよい。
次に、主に金属ケイ素で構成された溶融材料300をプリフォーム100に浸透させる。図4は、複合材料の製造方法の一場面(浸透工程)を示す断面図である。溶融材料300が十分に浸透したら、容器200内を自然冷却し、室温まで冷却する。溶融材料300が浸透したプリフォーム100は冷却され、複合材料400が得られる。その後、複合材料400のスリット120より浸透口側の部分420を切除する。図5は、複合材料の製造方法の一場面(切除工程)を示す断面図である。切除された浸透口側の部分420は、いわゆる死に代となるが、後述のセッターを用いた製造方法においては、形状等が適合すればセッターとしての再利用も可能である。
このように、スリット120を設けたプリフォーム100に溶融材料300を浸透させるため、底面側の浸透口付近に発生するクラックがスリット120より上の上面110c側の部分410に及ぶのを防止することができる。そして、スリット120より浸透口側の部分420を切除することで、クラックの無い複合材料410を得ることができる。得られた複合材料410は、たとえば耐衝撃材料として用いることができる。
このように、スリット120を設けることで、浸透口の反対側の複合材料410について金属浸透時の変質により発生する割れやクラックを防止することができる。特に、複合材料410を耐衝撃部材として使用する際には、クラックのような不良は人命にも関わるため、効果が大きい。
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、溶融材料300を、直接、プリフォーム100に浸透させるが、熱膨張率の差から生じるクラックを防止するために、両者の間にBC/Si複合材料のセッターを介してもよい。炭化ホウ素の熱膨張率は4.5×10−6/K、ケイ素の熱膨張率は2.6×10−6/Kであるため、金属ケイ素の熱膨張率は、強化材を形成する炭化ホウ素の熱膨張率より小さく、(金属ケイ素の熱膨張率)<(複合材料の熱膨張率)<(炭化ホウ素の熱膨張率)の関係が成立している。BC/Siの熱膨張率は3.0×10−6/Kである。
(スリットを用いた製造工程)
図6は、複合材料の製造方法の一場面を示す断面図である。図6に示すように、容器200内に、セッター500を敷き、セッター500上に、セラミック多孔質体の炭化ホウ素のプリフォーム100を設置する。そして、容器200内に設置した金属ケイ素を溶融させ溶融材料300を、セッター500を介してプリフォーム100に浸透させる。セッター500を介して溶融材料300をプリフォーム100に浸透させるため、複合材料は、残留金属ケイ素に、直接、接触しない。
溶融材料300は、金属ケイ素が主成分であり、プリフォーム100を形成するBCセラミックスの熱膨張率より小さい熱膨張率を有する。したがって、浸透させる溶融材料300の熱膨張率は、得られる複合材料の熱膨張率より小さい。仮にセッター500を設けていなければ、冷却時の複合材料の収縮により複合材料に引張力が生じるが、BC/Si複合材料のセッター500を設けているため、引張力を小さくすることができる。なお、溶融材料300が直接に接触しないようにセッター500上に治具を設け、プリフォーム100をセッター500から浮かせてもよい。
次に、容器200内を自然冷却し、室温まで冷却する。複合材料は、セッター500および溶融材料300とともに冷却により収縮するが、材質に応じて収縮率が異なる。複合材料の収縮率は、金属ケイ素よりもセッター500の収縮率に近い。したがって、セッター500には金属ケイ素による引張力が働くが、複合材料に働く引張力はセッター500によるもののみとなり小さくなる。その結果、形成された複合材料にクラックが発生し難くなる。このようにして冷却された複合材料をセッター500から分離して取り出すことで、複合材料を得ることができる。
なお、上記のセッター500として炭化ホウ素セラミック多孔質体で形成されているものを用いることもできる。その場合、セッター500を介して溶融材料300をプリフォーム100に浸透させるとセッター500にも溶融材料300が浸透する。
この場合も、溶融材料300が浸透したセッター500が複合材料に直接に接触することになり、複合材料は、残留金属ケイ素と接触しない。そして、(金属の熱膨張率)<(浸透工程後のセッターの熱膨張率)の関係が成り立ち、浸透工程に利用した後のセッター500は、製造される複合材料の熱膨張率以上の熱膨張率を有する。したがって、複合材料は冷却時に外部との熱膨張差により受ける引張力が小さくなり、複合材料にクラックが発生し難くなる。
このようにプリフォーム100の下に、複合材料と同様若しくは溶融材料300よりもプリフォーム100との熱膨張差が小さい材質のセッター500を敷き浸透することにより、冷却収縮による引張力が軽減され、クラックの発生が防止される。また、この場合についても複合材料の浸透口側を切除することで残った複合材料を活かすことができる。
[第3の実施形態]
上記の実施形態では、プリフォーム100の形状は直方体であるが、立方体、多角形な複雑形状、円柱などの形状であってもよい。図7および図8は、それぞれ立方体に形成されたプリフォーム600を示す斜視図および平断面図である。図8の平断面図は、スリット620の位置を断面としている。プリフォーム600は、立方体の形状を有しており、底面610a側を浸透口側とし、上面610c側をワーク部分とするとき、本体610の側面610bに一周にわたり設けられたスリット620を有している。このとき、スリット620の深さD2は、プリフォーム600の厚みd2に対し20%以上50%以上とするのが好ましい。
また、図9および図10は、それぞれ円柱状に形成されたプリフォーム700を示す斜視図および平断面図である。図9の平断面図は、スリット720の位置を断面としている。プリフォーム700は、円柱の形状を有しており、底面710a側を浸透口側とし、上面710c側をワーク部分とするとき、本体710の側面710bに一周にわたり設けられたスリット720を有している。このとき、スリット720の深さD3は、プリフォーム700の直径d3に対し20%以上50%以上とするのが好ましい。
[第4の実施形態]
上記の実施形態では、スリットの位置が浸透口から一定であるが、複数の位置に別個のスリットが設けられていてもよい。図11は、スリットが別々の位置に設けられているプリフォーム800を示す側面図である。プリフォーム800は、直方体に形成されており本体810の側面810bにスリット820a、820bを有している。スリット820aの方がスリット820bより底面に近い位置に設けられている。各製品によって求められる形状は異なるため、スリットを設けるべき位置も異なる場合がある。特に、製品が左右対称でない複雑形状の場合、対称の面にスリットを施工できるとは限らないため、1つの側面に複数本のスリットを入れるべき場合が生じやすい。また、スリット820a、820bは、いずれも途切れ途切れの断続的な形状を有している。このように、スリットの形状も製造しようとする製品形状や必要な製造方法に応じて様々に形成することができる。
100、600、700,800 プリフォーム
110、610、710、810 本体
120、620、720,820a、820b スリット
200 容器
300 溶融材料
400 複合材料
410 上面側の部分(複合材料)
420 浸透口側の部分(複合材料)
500 セッター
P1 スリットの位置
W1 スリットの幅
D1、D2、D3 スリットの深さ
L1 スリットの長さ
d1、d2 プリフォームの厚み
d3、プリフォームの直径

Claims (4)

  1. 炭化ホウ素の強化材と金属ケイ素のマトリックスとからなる複合材料の製造方法であって、
    浸透口側を底面としたときの側面にスリットを設けた炭化ホウ素のプリフォームを配置する工程と、
    主に金属ケイ素で構成された溶融材料を前記プリフォームに浸透させる工程と、
    前記溶融材料が浸透したプリフォームを冷却した後、前記スリットより浸透口側の部分を切除する工程と、を含むことを特徴とする複合材料の製造方法。
  2. 前記スリットの深さは、前記プリフォームの厚みの20%以上50%以下であることを特徴とする請求項1記載の複合材料の製造方法。
  3. 前記スリットの幅は、2mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の複合材料の製造方法。
  4. 前記スリットの位置は、前記浸透口から4mm以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
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