また、特許文献1のような方法では、非水系の電池は当然必要とされる露点が−25℃
以下のドライ環境で満充電された電池を解体し、電極体を抜き取ると、書かれているのみで、開口方法が何ら提案されていない。
さらに、特許文献2では、蓄電池の安全な開口方法として、アルゴンガスなどの不活性ガス環境下で行うことが開示されているが、開口方法が何ら提案されておらず、開口切断方法によっては、例えば、切断刃が、正電極と負電極とを短絡させてしまい、不活性ガス下においても発火などが起こるおそれがある。
また、特許文献3では、蓄電池をカシメ部分で切断することのみ開示されており、いかに安全に切断するかなどは全く考慮されておらず、この場合にも、切断方法によっては、例えば、切断刃が、正電極と負電極とを短絡させてしまい、発火などが起こるおそれがある。
いずれにしても、従来の方法では、蓄電池の満充電状態では、発火などが起こるおそれがあり、蓄電池の満充電状態の評価試験などを行うことは困難であった。
本発明は、このような現状に鑑み、従来のように、大掛かりな装置、設備が不要で、しかも、安全に、蓄電池を切断して内容物である電極体を取り出すことができ、安全性において非常に優れ、例えば、従来困難であった、満充電時の蓄電池の性能テストなどを実施することができる、封入容器内の電極体を封入容器から取り出すための蓄電池の切断方法を提供することを目的とする。
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の蓄電池の切断方法は、
封入容器内に封入された蓄電池の電極体を取り出すための蓄電池の切断方法であって、
蓄電池固定機構によって蓄電池を所定位置に固定し、
切断機本体の切断位置調整機構によって、切断刃の切断位置を、所定の位置になるように調整し、
前記蓄電池固定機構にて所定位置に固定された蓄電池を、切断位置調整機構にて所定の切断位置に調整された切断刃によって、蓄電池のセパレーターの外端部から、負電極の外端部の間に位置するとともに正電極が存在しない絶縁切断位置にて切断することを特徴とする。
このように構成することによって、蓄電池固定機構によって蓄電池を所定位置に固定して、切断機本体の切断位置調整機構によって、回転刃の切断位置を、所定の位置になるように調整する。
そして、蓄電池固定機構にて所定位置に固定された蓄電池を、切断位置調整機構にて所定の切断位置に調整された切断刃によって、絶縁切断位置にて正確に切断することができる。
このため、常に正確な切断位置に蓄電池と切断刃が位置することになるので、絶縁フィルムからなるセパレーター106の位置で正確に切断することができ、切断の際に正電極102と負電極104とが短絡し、発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
このように絶縁切断位置にて切断した後、切断部分を取り除き、上部または下端に開口した部分から、蓄電池の電極体を簡単に引き抜き、取り出すことができ、例えば、従来困難であった、満充電時の蓄電池の性能テストなどを実施することができる。
なお、この場合、切断刃としては、いわゆるフライス加工と呼ばれる切断刃が回転刃からなり回転し、ワークである蓄電池100が固定した構成するのが望ましいが、いわゆる旋盤加工(切断刃が回転せず固定で、ワークが回転)で、切断することも可能である。
また、例えば、切断刃としては、回転刃以外に、バイトなどは、突っ切りバイトや溝入れバイトを使用することも可能である。
また、本発明では、前記絶縁切断位置が、蓄電池の上方絶縁切断位置と下方絶縁切断位置の2箇所の絶縁切断位置であることを特徴とする。
このように絶縁切断位置が、蓄電池の上方絶縁切断位置と下方絶縁切断位置の2箇所の絶縁切断位置であれば、絶縁切断位置にて切断した後、切断部分を取り除き、上部または下端に開口した部分から、蓄電池の電極体を簡単に引き抜き、取り出すことができる。
このように絶縁切断位置が、蓄電池100のセパレーター106の外端部から、負電極104の外端部の間に位置していれば、絶縁フィルムからなるセパレーター106の位置で正確に切断することができ、負電極104と、負電極104の内側に位置する正電極102とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、前記封入容器の底部を押圧治具を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内で電極体を上方に押し上げた状態で、蓄電池を上方絶縁切断位置、下方絶縁切断位置の少なくとも一方の絶縁切断位置にて切断することを特徴とする。
このように封入容器の底部を押圧治具を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内で電極体を上方に押し上げた状態では、封入容器の底部から、蓄電池100のセパレーター106の外端部まで切断スペースが確保されることになる。
従って、下方絶縁切断位置の設定の幅が大きくとれるとともに、下方絶縁切断位置において負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、負電極104と、負電極104の内側に位置する正電極102とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
しかも、下方絶縁切断位置において負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、回転刃として、市販品であり、安価で、種類が豊富である(厚さが0.1mmまである)メタルソーが使える、交換が容易であり、しかも、機能的にも、寿命、切れ味(バリ)、切削抵抗(切削温度)において優れている。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、前記上方絶縁切断位置にて、蓄電池を切断した後、封入容器の底部を押圧治具を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内で電極体を上方に押し上げた状態で、蓄電池を下方絶縁切断位置にて切断することを特徴とする。
このように上方絶縁切断位置にて、蓄電池を切断した後、封入容器の底部を押圧治具を用いて下方から押圧して変形させれば、封入容器の上部が開口した状態であるので、変形させた際に、封入容器内で電極体を上方に容易にかつ正確に押し上げることができる。
従って、封入容器の底部から、蓄電池100のセパレーター106の外端部まで切断スペースが確実に確保されることになる。
従って、下方絶縁切断位置の設定の幅が大きくとれるとともに、下方絶縁切断位置において負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、負電極104と、負電極104の内側に位置する正電極102とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、前記封入容器の底部を押圧治具を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内で電極体を上方に押し上げた後、蓄電池を絶縁切断位置にて切断することを特徴とする。
先に上方絶縁切断位置にて、蓄電池を切断した場合には、封入容器の上部が開口した状態であるので、封入容器の底部を押圧変形するための押圧治具は、切断機本体と同様に、不活性雰囲気などに設置する必要がある。
これに対して、蓄電池を絶縁切断位置にて切断する前に、先に押圧治具で封入容器の底部を押圧して変形させれば、蓄電池位置決め治具と同様に、押圧治具による封入容器の底部の押圧、変形を、大気中で行うことが可能となる。
従って、作業性の向上が図ることができ、しかも、不活性ガス雰囲気の作業室である、小型のグローブボックスやドライチャンバーには、スペースが限られており、収納する装置の大きさには、制約があるため、収納する治具点数が少ない方が良いと言え、この点からも非常に優れている。
また、本発明では、前記切断刃(回転刃)が、メタルソーから構成されているのが望ましい。
すなわち、封入容器の底部を押圧治具を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内で電極体を上方に押し上げた状態で、蓄電池を絶縁切断位置にて切断する場合には、下方絶縁切断位置において負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、回転刃として、市販品であり、安価で、種類が豊富である(厚さが0.1mmまである)メタルソーが使える、交換が容易であり、しかも、機能的にも、寿命、切れ味(バリ)、切削抵抗(切削温度)において優れている。
また、本発明では、前記切断刃が、少なくとも刃先が非導電性材料から構成されているのが望ましい。
このように構成することによって、回転刃が、少なくとも刃先が非導電性材料から構成されているので、正電極102と負電極104とを万一同時に切断してしまっても、正電極102と負電極104とが短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
この場合、非導電性材料としては、アルミナ、ジルコニアといったセラミクスが挙げられる。これをメタルソーのような刃物形状に加工して、切断刃として使うことができる。また、金属パイプの切断に使われるような、砥材としてアルミナ質(WA)や炭化ケイ素(GC)を使用したレジノイド切断砥石を切断刃として使うことができる。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、前記蓄電池固定機構において、蓄電池位置決め治具を用いて、蓄電池の外周の所定位置に予め固定された固定部材の端部を、載置台座部に当接させて、蓄電池を所定の位置に固定することを特徴とする。
このように構成することによって、蓄電池位置決め治具を用いて、蓄電池の外周の所定位置に予め固定された固定部材の端部を、載置台座部に当接させて、蓄電池を所定の位置に固定するので、蓄電池固定機構において蓄電池を所定位置に正確に固定することができる。
従って、このように正確な所定位置に固定された蓄電池を、切断位置調整機構にて所定の切断位置に調整された回転刃によって、絶縁切断位置にて正確に切断することができる。
このため、常に正確な切断位置に蓄電池と回転刃が位置することになるので、絶縁フィルムからなるセパレーター106の位置で正確に切断することができ、正電極102と負電極104とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、
前記蓄電池位置決め治具を用いて、蓄電池の外周の所定位置に予め固定された固定部材の位置が、蓄電池の上方絶縁切断位置から固定部材の上方の端部までの距離と、蓄電池の下方絶縁切断位置から固定部材の下方の端部までの距離が等しくなるように固定して、
前記蓄電池固定機構の載置台座部に、蓄電池を反転載置することによって、蓄電池の上方絶縁切断位置と下方絶縁切断位置の2箇所の絶縁切断位置で切断することを特徴とする。
このように構成することによって、蓄電池位置決め治具を用いて、固定部材の位置が、蓄電池の上方絶縁切断位置から固定部材の上方の端部までの距離と、蓄電池の下方絶縁切断位置から固定部材の下方の端部までの距離が等しくなるように、蓄電池の外周の所定位置に予め固定部材を固定する。
そして、蓄電池固定機構の載置台座部に、蓄電池を反転載置することによって、蓄電池の上方絶縁切断位置と下方絶縁切断位置の2箇所の絶縁切断位置で簡単でしかも正確な位置で切断することができる。
しかも、このように絶縁切断位置が、蓄電池の上方絶縁切断位置と下方絶縁切断位置の2箇所の絶縁切断位置であれば、絶縁切断位置にて切断した後、切断部分を取り除き、上部または下端に開口した部分から、蓄電池の電極体を簡単に引き抜き、取り出すことができる。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、前記蓄電池固定機構において、回転機構によって円柱形状の蓄電池をその軸を中心に回転させることを特徴とする。
このように蓄電池固定機構において、回転機構によって円柱形状の蓄電池をその軸を中心に回転させることによって、円柱形状の蓄電池であっても、その全周にわたって絶縁切断位置にて切断することができ、切断部分を取り除くことができ、上部または下端に開口した部分から、蓄電池の電極体を簡単に引き抜き、取り出すことができ、例えば、従来困難であった、満充電時の蓄電池の性能テストなどを実施することができる。
また、本発明の蓄電池の切断装置は、前記切断刃(回転刃)の回転方向と、蓄電池の回転方向が相互に反対方向に回転するように構成されているのが望ましい。
このように回転刃の回転方向と、蓄電池の回転方向が相互に反対方向になるように回転させることによって、効率良くかつスムーズに絶縁切断位置にて切断することができる。
また、本発明の蓄電池の切断装置は、前記切断機本体には、切断刃(回転刃)に付着した切粉を除去するブラシ部材が付設されているのが望ましい。
このように切断機本体において、ブラシ部材を、回転刃に当接させ、切粉を回転刃より
除去するので、切粉が蓄電池の封入容器内に侵入して、正電極102と負電極104とを短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
また、ブラシ部材に非水系の油をつけ、刃物の磨耗や冷却を行うことができる。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、前記蓄電池固定機構において、チャック部材によって、四角柱形状の蓄電池を、短手方向と長手方向の2方向から支持して所定位置に固定することを特徴とする。
このように蓄電池固定機構において、チャック部材によって、四角柱形状の蓄電池を、短手方向と長手方向の2方向から支持して所定位置に固定するので、四角柱形状の蓄電池を確実に固定でき、ずれることなく、正確に絶縁切断位置にて切断することができる。
また、本発明の蓄電池の切断装置は、前記チャック部材が、蓄電池の固定位置を、所定の位置に調整する固定位置調整機構を備えるのが望ましい。
このようにチャック部材の固定位置調整機構によって、蓄電池の固定位置を、所定の位置に調整するので、四角柱形状の蓄電池を確実にかつ正確な位置に固定でき、正確に絶縁切断位置にて切断することができる。
また、本発明の蓄電池の切断方法は、前記切断機本体を、蓄電池固定機構にて所定位置に固定された蓄電池に対して、平行な方向に往復移動させることを特徴とする。
このように切断機本体を、蓄電池固定機構にて所定位置に固定された蓄電池に対して、平行な方向に往復移動させるので、蓄電池固定機構にて所定位置に固定された蓄電池の切断が終了した後に、切断機本体を切断位置から退避位置まで移動することができる。従って、例えば、蓄電池を上下反転して、切断位置を変更したり、切断の終了した蓄電池を蓄電池固定機構から取り外して、次の切断する蓄電池との交換作業を容易に行うことができる。
また、本発明の蓄電池の切断装置は、前記蓄電池の切断装置が、不活性ガス雰囲気の作業室内に配置されているのが望ましい。
このように蓄電池の切断を、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気の作業室内に配置して切断を行うので、蓄電池の封入容器内の電解液などが反応して発火などの事故が発生するのが防止することができる。
また、本発明の蓄電池位置決め治具は、
前述のいずれかにに記載の蓄電池の切断装置において切断される蓄電池に、蓄電池の外周の所定位置に固定部材を固定するための蓄電池位置決め治具であって、
前記蓄電池の外周に装着した固定部材の下端に当接する固定台座部材と、
前記固定台座部材の開口部を貫通して垂下する蓄電池の下端に当接して、蓄電池の下端の位置を調整する位置調整部材と、
前記位置調整部材により、蓄電池の下端の位置と固定部材の下端位置を、所定の位置にして、係止部材によって、蓄電池の外周の所定位置に固定部材を固定するように構成するのが望ましい。
このように構成することによって、蓄電池の外周に装着した固定部材の下端を、固定台座部材に当接させた状態で、固定台座部材の開口部を貫通して垂下する蓄電池の下端に、位置調整部材を当接させて、蓄電池の下端の位置を調整する。
そして、この位置調整部材により、蓄電池の下端の位置と固定部材の下端位置を、所定の位置にして、係止部材によって、蓄電池の外周の所定位置に正確に固定部材を固定することができる。
これにより、本発明の蓄電池の切断装置において、蓄電池固定機構にて所定位置に固定された蓄電池を、切断位置調整機構にて所定の切断位置に調整された回転刃によって、絶縁切断位置にて正確に切断することができる。
本発明によれば、蓄電池固定機構によって蓄電池を所定位置に固定して、切断機本体の切断位置調整機構によって、切断刃の切断位置を、所定の位置になるように調整する。
そして、蓄電池固定機構にて所定位置に固定された蓄電池を、切断位置調整機構にて所定の切断位置に調整された切断刃によって、絶縁切断位置にて正確に切断することができる。
このため、常に正確な切断位置に蓄電池と切断刃が位置することになるので、絶縁フィルムからなるセパレーター106の位置で正確に切断することができ、正電極102と負電極104とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
このように絶縁切断位置にて切断した後、切断部分を取り除き、上部または下端に開口した部分から、蓄電池の電極体を簡単に引き抜き、取り出すことができ、例えば、従来困難であった、満充電時の蓄電池の性能テストなどを実施することができる。
また、本発明によれば、封入容器の底部を押圧治具を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内で電極体を上方に押し上げた状態では、封入容器の底部から、蓄電池100のセパレーター106の外端部まで切断スペースが確保されることになる。
従って、下方絶縁切断位置の設定の幅が大きくとれるとともに、下方絶縁切断位置において負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、負電極104と、負電極104の内側に位置する正電極102とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
しかも、下方絶縁切断位置において負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、回転刃として、市販品であり、安価で、種類が豊富である(厚さが0.1
mmまである)メタルソーが使える、交換が容易であり、しかも、機能的にも、寿命、切れ味(バリ)、切削抵抗(切削温度)において優れている。
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の蓄電池の切断装置の正面図、図2は、図1の蓄電池の切断装置のA方向矢視図、図3は、図1の蓄電池の切断装置の切断機本体と蓄電池固定機構の部分の拡大正面図、図4は、図3のB方向矢視図、図5は、図1の蓄電池の切断装置の切断機本体と蓄電池固定機構の部分の拡大斜視図、図6は、図5の蓄電池固定機構のC方向矢視図、図7は、図6の蓄電池固定機構の上面図、図8は、本発明の蓄電池の切断装置で用いる蓄電池位置決め治具の正面図、図9は、図8の蓄電池位置決め治具のD方向矢視図、図10は、本発明の蓄電池の切断装置の作動の概略を説明する概略図、図11は、回転刃42の断
面図である。
図1〜図2において、符号10は、全体で本発明の蓄電池の切断装置を示している。
図1〜図2に示したように、本発明の蓄電池の切断装置10は、作業室12を備えており、この作業室12内には、切断作業の際に、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気となるように不活性ガスが供給されるようになっている。なお、不活性ガスの種類としては、特に限定されるものではなく、公知の不活性ガスを使用することができる。
この作業室12の前方には、開閉自在な作業用扉14が設けられており、装置のメンテナンス、すなわち、後述するように、切断すべき蓄電池100の交換、回転刃42の取り換え、蓄電池固定機構18の交換、各種部品の保守、交換などの作業ができるように構成されている。
また、作業室12の前壁16には、図示しないが、作業室12内で、各種作業が行えるように操作手袋などが装着された操作用開口部が形成され、両手で、不活性ガスが漏洩しない状態で上記の各種作業が行えるように構成されている。
なお、作業室12は、切断作業の確認などができるように、透明な材料から構成されており、また、作業用扉14などの開閉部分には、不活性ガスが外部に漏洩しないようにシール部材によってシールされている。
また、本発明の蓄電池の切断装置10には、図3〜図5に示したように、作業室12内に、蓄電池100を所定位置に固定するための蓄電池固定機構18と、切断機本体20とを備えている。
蓄電池固定機構18は、図5〜図7に示したように、作業室12の床部12aに固定された、断面逆U字形状のフレーム22を備えており、このフレーム22に、モータ24が付設されている。
また、フレーム22の上部には、このモータ24の回転軸に連結され、所定の回転速度で回転する載置台座部26が設けられており、この載置台座部26の段部26aに、後述するように、蓄電池位置決め治具50を用いて、蓄電池100の外周の所定位置に予め固定された固定部材52の端部52a、52bが当接するように構成されている。
さらに、この載置台座部26には、4つに分断されたチャック部材28が設けられている。このチャック部材28には、締め付けリング30が設けられており、この締め付けリング30を締め付けることによって、蓄電池100を装着した状態で、固定部材52を締め付け、これにより蓄電池100を固定することができるようになっている。
一方、切断機本体20は、図3〜図5に示したように、作業室12の床部12aに固定されたLMガイドなどのガイド部材32上を、図3、図5の矢印に示した方向に、すなわち、蓄電池固定機構18にて所定位置に固定された蓄電池100に対して、平行な方向に往復移動自在に構成されている。
すなわち、切断機本体20は、電動スライダー34の駆動によって、ガイド部材32上を移動可能なフレーム部材31を備えており、このフレーム部材31の上側方に突設するように切断装置36が設けられている。
この切断装置36には、駆動用モータ38を備えており、駆動用モータ38の回転軸に連結された回転刃支持部材40が設けられ、この回転刃支持部材40に脱着自在に切断刃として回転刃42が装着されている。
さらに、切断機本体20には、下記のような構成を有する、回転刃42の切断位置を所定の位置に調整する切断位置調整機構11を備えている。
すなわち、切断装置36の基端部44は、断面略L字形状の位置調整用フレーム部材33に、上下動自在に装着されており、切断位置調整機構として、位置調整用フレーム部材33に固定された上下位置調整用マイクロメータ46が設けられている。
この上下位置調整用マイクロメータ46を調整することによって、上下位置調整用マイクロメータ46の先端が、切断装置36の基端部44に当接する。これによって、切断装置36が、位置調整用フレーム部材33に対して上下方向に移動して、切断装置36の回転刃42の上下方向の位置が微調整することができるようになっている。
一方、この位置調整用フレーム部材33は、フレーム部材31の上部に、図示しないガイドに沿って、蓄電池固定機構18の方向、ずなわち、蓄電池固定機構18に固定された蓄電池100に対して、接近離反する方向(前後方向)に移動できるように装着されている(図5の矢印参照)。
そして、フレーム部材31の上部の側部には、切断位置調整機構として、前後方向位置調整用マイクロメータ48が設けられている。
この前後方向位置調整用マイクロメータ48を調整することによって、前後方向位置調整用マイクロメータ48の先端が、位置調整用フレーム部材33に側方に突設した突設部51に当接する。これによって、位置調整用フレーム部材33が、フレーム部材31に対して前後方向に移動して、位置調整用フレーム部材33に装着されている切断装置36が、蓄電池固定機構18に固定された蓄電池100に対して、接近離反する方向、すなわち、前後方向に移動するように構成されている。
その結果、切断装置36の回転刃42の前後方向の位置が微調整することができるようになっている(図4の矢印参照)。
なお、回転刃42としては少なくとも刃先が非導電性材料から構成されればよく、図11に示したように、回転刃本体42aと、非導電性材料から構成される刃先部42bから構成してもよいが、回転刃42全体を非導電性材料から構成しても良い。
このように構成することによって、回転刃42が、少なくとも刃先が非導電性材料から構成されているので、正電極102と負電極104とを万一同時に切断してしまっても、正電極102と負電極104とが短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
この場合、非導電性材料としては、非導電性であればよく特に限定されるものではなく、セラミックス、セラミックス粒子を刃先に塗布したもの、DLC(Diamond Like Carbon(ダイヤモンドの様なカーボン))などが使用可能である。
一方、本発明の蓄電池の切断装置10で用いる蓄電池位置決め治具50は、図8〜図9に示したように構成されている。
すなわち、蓄電池位置決め治具50は、略円筒形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定する治具である。
蓄電池位置決め治具50は、基台53と、基台53上に固定された断面略L字形状のフレーム部材54を備えており、このフレーム部材54の上部に、固定台座部材56が立設されている。
この固定台座部材56には、貫通する開口部58が設けられており、開口部58の上部に段部60が形成されており、この段部60に、固定部材52を載置して、固定部材52の下端52aに当接するように構成されている。
一方、固定台座部材56の下方には、フレーム部材54に、上下位置調整用の位置調整部材13として、上下位置調整用マイクロメータ62が固定されている。
従って、使用に際しては、固定台座部材56の段部60に、固定部材52の下端52aを当接するように配置して、固定部材52の内部開口部に、蓄電池100を挿着して、位置調整部材13である上下位置調整用マイクロメータ62を調整する。
これにより、蓄電池100の下端100aの位置と固定部材52の下端位置52aを、所定の位置にして、係止部材であるネジ部材64によって、蓄電池100の外周の所定位置に固定部材52を固定するようになっている。
具体的には、図8において一点鎖線で示したように、固定部材52の上端52bと蓄電池100の上方絶縁切断位置Aとの距離L1と、固定部材52の下端52aと下方絶縁切断位置Bとの距離L2が同じ距離となるように蓄電池100の外周の所定位置に固定部材52を固定するようになっている。
なお、図70に示したように、蓄電池100では、負電極104の内側に正電極102位置するように構成されており、これらの上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bは、蓄電池100のセパレーター106の外端部から、負電極104の外端部の間に位置するのが望ましい。
このように絶縁切断位置が、蓄電池100のセパレーター106の外端部から、負電極104の外端部の間に位置していれば、絶縁フィルムからなるセパレーター106の位置で正確に切断することができ、負電極104と、負電極104の内側に位置する正電極102とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
なお、上方絶縁切断位置Aは、図69に示した蓄電池100の上部のかしめ部(ネッキング部分)の下方近傍、下方絶縁切断位置Bは、蓄電池100の下端から、0.5mm程度の位置にあるのが好適であるが、蓄電池100の種類、形状、サイズにより適宜変更可能である。
このように蓄電池位置決め治具50を用いて、略円筒形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定すれば、蓄電池固定機構18の載置台座部26の段部26aに、蓄電池100を反転載置した場合に、回転刃42と、これらの上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bとが常に上下方向に一致することになる。
これにより、蓄電池100の上方絶縁切断位置Aと下方絶縁切断位置Bの2箇所の絶縁
切断位置で簡単でしかも正確な位置で切断することができる。
しかも、このように絶縁切断位置が、蓄電池100の上方絶縁切断位置Aと下方絶縁切断位置Bの2箇所の絶縁切断位置であれば、絶縁切断位置にて切断した後、切断部分を取り除き、上部または下端に開口した部分から、蓄電池の電極体を簡単に引き抜き、取り出すことができる。
このように構成される本発明の蓄電池の切断装置10は、以下のように作動される。
先ず、上記のように、蓄電池位置決め治具50を用いて、略円筒形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定する。
この状態で、作業用扉14を開けて、蓄電池固定機構18の載置台座部26の締め付けリング30を緩めて、チャック部材28の間に、載置台座部26の段部26aに固定部材52の下端52aを当接するまで挿着する。
そして、この状態で、締め付けリング30を締め付けて、これにより蓄電池100を固定する。
なお、切断機本体20の切断位置調整機構11の上下位置調整用マイクロメータ46を調整して、切断装置36の回転刃42の上下方向の位置を微調整して、回転刃42の上下方向の位置が、蓄電池100の上方絶縁切断位置Aとなるように予め、蓄電池100の種類毎に調整しておく。
また、切断機本体20の切断位置調整機構11である、前後方向位置調整用マイクロメータ48を調整して、切断装置36の回転刃42の蓄電池固定機構18に固定された蓄電池100に対して、接近離反する方向、すなわち、前後方向の位置を微調整して切断の切り込み深さを、予め、蓄電池100の種類毎に調整しておく。
この状態で、作業用扉14を閉めて、制御ユニット66のスイッチを入れることによって、作業室12内には、切断作業の際に、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気となるように不活性ガスが供給される。
その後、蓄電池固定機構18のモータ24が駆動して、載置台座部26が回転して、載置台座部26に固定された蓄電池100が、比較的速度の遅い所定の回転速度(例えば、4rpmの回転速度)で回転する。
一方、図5、図10に示したように、待機位置にあった切断機本体20は、駆動用モータ38が駆動して、切断装置36の回転刃42が所定の速度(この実施例の場合には、3000rpm)で回転し始める。
なお、載置台座部26に固定された蓄電池100の回転速度と、切断装置36の回転刃42の回転速度は、蓄電池100の種類、封入容器の材質によって適宜変更可能であって特に限定されるものではない。
その後、待機位置にあった切断機本体20は、電動スライダー34の駆動によって、ガイド部材32上をフレーム部材31が移動することによって、切断位置へと所定の速度で移動して、蓄電池固定機構18に固定された蓄電池100を、蓄電池100の上方絶縁切断位置Aで切断するようになっている。
その後、切断機本体20は、電動スライダー34の駆動によって、ガイド部材32上をフレーム部材31が移動することによって、再び待機位置へと移動するようになっている。
なお、図10に示したように、切断装置36の回転刃42の回転方向と、蓄電池100の回転方向が相互に反対方向になるように回転させるように構成されており、これにより、効率良くかつスムーズに絶縁切断位置にて切断することができる。
なお、この蓄電池100の所定の回転速度と、切断機本体20の移動速度は同期されるように、制御ユニット66によって予めプロムラミングされており、蓄電池100が360度以上回転する間に、切断機本体20の回転刃42が通過するように設定されている。
また、図5、図10の矢印に示したように、切断機本体20には、回転刃42に当接して、切粉を回転刃42より除去するブラシ部材bが付設されている。
このように切断機本体20において、ブラシ部材bを、回転刃42に当接させ、切粉を回転刃42により除去するので、切粉が蓄電池100の封入容器内に侵入して、正電極102と負電極104とを短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
以上のような一連の切断、すなわち、蓄電池100の上方絶縁切断位置Aで切断した後、作業室12の前壁16の図示しない操作用開口部を介して、蓄電池固定機構18の載置台座部26の締め付けリング30を緩めて、蓄電池固定機構18に固定された蓄電池100を取り外して、蓄電池100を反転載置し、載置台座部26の段部26aに固定部材52の上端52bが当接するまで挿着する。
そして、この状態で、締め付けリング30を締め付けて、これにより蓄電池100を固定する。
以後は、上記の一連の切断動作によって、蓄電池固定機構18に固定された蓄電池100を、蓄電池100の下方絶縁切断位置Bで切断するようになっている。
そして、切断作業の後、作業用扉14を開けて、蓄電池固定機構18の載置台座部26の締め付けリング30を緩めて蓄電池100を取り外して、上部または下端に開口した部分から、蓄電池100の内容物を引き抜き、取り出すことができ、例えば、従来困難であった、満充電時の蓄電池の性能テストなどを実施することができる。
このように構成することによって、常に正確な切断位置に蓄電池100と回転刃42が位置することになるので、絶縁フィルムからなるセパレーター106の位置で正確に切断することができ、正電極102と負電極104とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。しかも、この場合、回転刃42が、少なくとも刃先が非導電性材料から構成されているので、正電極102と負電極104とを万一同時に切断してしまっても、正電極102と負電極104とが短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
このように絶縁切断位置A、Bにて切断した後、切断部分を取り除き、上部または下端に開口した部分から、蓄電池の電極体を簡単に引き抜き、取り出すことができ、例えば、従来困難であった、満充電時の蓄電池の性能テストなどを実施することができる。
なお、この実施例の蓄電池の切断装置10では、蓄電池100の上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bの両方で切断するようにしたが、蓄電池100の種類によって、封入容器から蓄電池100の内容物を取り出せるのであれば、片方の絶縁切断位置のみで切断することが可能である。
また、この場合、蓄電池100の上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bの切断順序は、いずれが先であっても構わない。
また、この実施例では、一枚の回転刃42で、一度の切断作業で、蓄電池100の上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bのいずれか一方を切断するように構成したが、回転刃42を2枚離間して設けておき、一度に、蓄電池100の上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bの両方で切断することもできる。
この場合には、図示しないが、蓄電池固定機構18において、蓄電池100の固定部材52を、チャック部材28、締め付けリング30で締め付け固定した際に、蓄電池100の上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bが露出するように蓄電池固定機構18を構成すれば良い。
また、この実施例では、蓄電池固定機構18を移動不能として、切断機本体20を移動するようにしたが、逆に、切断機本体20を移動不能として、蓄電池固定機構18を移動可能とすることも、さらには、蓄電池固定機構18と切断機本体20の双方を相対的に移動することも可能である。
なお、この実施例では、切断作業を常温で行うようにしたが、蓄電池100の内容物の反応を抑制するような低温で行うことももちろん可能である。
上記の実施例の変更態様に関しては、以下の実施例の場合にも基本的に適用可能であることはもちろんである。
なお、この場合、切断刃としては、いわゆるフライス加工と呼ばれる切断刃が回転刃からなり回転し、ワークである蓄電池100が固定した構成するのが望ましいが、いわゆる旋盤加工(切断刃が回転せず固定で、ワークが回転)で、切断することも可能である。
また、例えば、切断刃としては、回転刃以外に、バイトなどは、突っ切りバイトや溝入れバイトを使用することも可能である。
図12は、本発明の蓄電池の切断装置の別の実施例の図5と同様な切断機本体と蓄電池固定機構の部分の拡大斜視図、図13は、図12の蓄電池固定機構の斜視図、図14は、図13の蓄電池固定機構の上面図、図15は、図12の蓄電池の切断装置で用いる蓄電池位置決め治具の正面図、図16は、図15の蓄電池位置決め治具のG方向矢視図である。
この実施例の蓄電池の切断装置10は、図1〜図11に示した切断装置10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例の蓄電池の切断装置10では、図12に示したように、蓄電池固定機構18が、四角柱形状の蓄電池100を、短手方向と長手方向の2方向から支持して所定位置に固定するチャック部材70、72を備えている。
すなわち、フレーム22の上部に、略L字形状となるように、第1の当接部材74と、第2の当接部材76が固定されている。
そして、第1の当接部材74に対峙するように、固定位置調整機構として、第1の位置調整用マイクロメータ78が設けられており、この第1の位置調整用マイクロメータ78の先端に第1の位置調整部材80が形成されている。
一方、第2の当接部材76に対峙するように、固定位置調整機構として、第2の位置調整用マイクロメータ82が設けられており、この第2の位置調整用マイクロメータ82の先端に第2の位置調整部材84が形成されている。この第2の位置調整部材84は、略L字形状となっており、図13、図14の状態から、蓄電池100を90°向きを変えて載置した場合に、第2の位置調整部材84の凹部84aに蓄電池100の外周の固定部材52の長手方向の端部52c、52dが嵌合するように構成されている。
なお、第2の当接部材76の高さは、図13に示したように、蓄電池100の高さよりも低く形成されており、これにより、上方絶縁切断位置A、または下方絶縁切断位置Bが露出するようになっており、第2の当接部材76に沿って回転刃42が通過して、四角柱形状の蓄電池100の一辺を切断することができるようになっている。
このように構成される蓄電池固定機構18では、例えば、図13、図14に示したように、蓄電池100の外周の固定部材52の長手方向の端部52c、52dが、第1の当接部材74と第1の位置調整用マイクロメータ78の先端の第1の位置調整部材80に当接するようにして、第1の位置調整用マイクロメータ78を調整することによって、蓄電池100の長手方向の位置を調整できるようになっている。
この状態では、蓄電池100の外周の固定部材52の短手方向の端部52e、52fが、第2の当接部材76と第2の位置調整用マイクロメータ82の先端の第2の位置調整部材84に当接するようにして、第2の位置調整用マイクロメータ82を調整することによって、蓄電池100の短手方向の位置を調整できるようになっている。
このようにして、第2の当接部材76に沿って回転刃42が通過して、四角柱形状の蓄電池100の一辺(長手方向)を切断する。
その後、図13、図14の状態から、蓄電池100を90°向きを変えて載置した場合に、第2の位置調整部材84の凹部84aに蓄電池100の外周の固定部材52の長手方向の端部52c、52dが嵌合するように固定して、同様にして、第2の当接部材76に沿って回転刃42が通過して、四角柱形状の蓄電池100の一辺(短手方向)を切断する。
このようして、上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bについて、それぞれ4辺、合計8辺を切断することによって、上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bにおいて蓄電池100を切断することができる。
なお、図15、図16に示したように、この実施例の蓄電池の切断装置10で用いる蓄電池位置決め治具50は、四角柱形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定する治具であり、基本的には、円柱形対応が、四角註形状対応になっただけであり、図8、図9の実施例の蓄電池位置決め治具50と同様な構成であり、その使用方法も同様である。
このように蓄電池固定機構18において、チャック部材70、72によって、四角柱形状の蓄電池100を、短手方向と長手方向の2方向から支持して所定位置に固定するので、四角柱形状の蓄電池100を確実に固定でき、ずれることなく、正確に絶縁切断位置に
て切断することができる。
また、このようにチャック部材70、72の固定位置調整機構によって、蓄電池100の固定位置を、所定の位置に調整するので、四角柱形状の蓄電池100を確実にかつ正確な位置に固定でき、正確に絶縁切断位置にて切断することができる。
図17は、押圧治具を用いた本発明の蓄電池の切断方法の押圧前の状態を説明する正面図、図18は、図17の側面図、図19は、図17のH−H線での断面図、図20は、図19のI部分の拡大図、図21は、図19のJ部分の拡大図、図22は、押圧治具を用いた本発明の蓄電池の切断方法の押圧状態を説明する正面図、図23は、図22の側面図、図24は、図22のH−H線での断面図、図25は、図24のI部分の拡大図、図26は、図24のJ部分の拡大図、図27は、押圧治具を用いた本発明の蓄電池の切断方法の押圧前の状態を説明する斜視図、図28は、図27のK−K線での断面図である。
押圧治具85は、図17〜図19に示したように、基台86と、この基台86から立設されたフレーム87を備えており、このフレーム87の先端に、トグルクランプ88が装着されている。
このトグルクランプ88の上部には、操作レバー89を備えているとともに、クランプ88の下端には、上治具ホルダー90を備えている。この上治具ホルダー90に、図20の拡大図に示したように、加圧上治具91が装着されている。
一方、基台86の上面には、加圧下治具92を備えており、この加圧下治具92には、図21の拡大図に示したように、蓄電池100の封入容器101の容器本体108の上部開口部を支持する加圧受け座93が設けられている。なお、この加圧受け座93には、正極タブ(正極リード)114を収容するための凹部94が形成されている。
また、基台86上のフレーム87側には、ストッパー95が設けられており、操作レバー89を押し下げて、加圧上治具91を下降させた際に、上治具ホルダー90の下面に当接して、加圧受け座93から所定の距離に、すなわち、蓄電池100の封入容器101の容器本体108の底部108aを所定の寸法に変形させるように、加圧上治具91を停止させるように構成されている。
このような押圧治具85を用いた本発明の蓄電池の切断方法について、以下に説明する。
図27、図28に示したように、上記の実施例と同様に、蓄電池位置決め治具50を用いて、略円筒形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定する。
この状態で、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、円筒形の蓄電池100を、上方絶縁切断位置Aにて切断した後、図27、図28に示したように、封入容器101の容器本体108の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、変形部105を上方に突出させて、封入容器内101内で電極体103を上方に押し上げる。
すなわち、図17〜図21に示したように、蓄電池100の封入容器101の容器本体108の上部開口部を、加圧受け座93に当接するように載置した後、操作レバー89を押し下げて、加圧上治具91を下降させる。
なお、図17〜図26の説明では、蓄電池100の封入容器101が天地が逆になって
おり、上下方向は逆に説明していることに留意されたい。
これにより、図25に示したように、封入容器101の底部が、上治具ホルダー90によって押圧されて、封入容器101の底部が変形して、変形部105が形成される。
なお、この場合、ストッパー95が、操作レバー89を押し下げて、加圧上治具91を下降させた際に、上治具ホルダー90の下面に当接して、蓄電池100の封入容器101の容器本体108の底部108aを所定の寸法に変形させるように、加圧上治具91が停止される。
この状態では、図25に示したように、封入容器101の底部から、蓄電池100のセパレーター106の外端部まで切断スペースSが確保されることになる。
また、この状態では、図26に示したように、電極体103が、加圧受け座93から下方に押し下げられた状態となっている。
そして、この状態で、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、下方絶縁切断位置Bにおいて切断する。
なお、この場合、蓄電池100は、蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を固定したままであるので、再度位置決めする必要はない。
このように封入容器101の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内101で電極体103を上方に押し上げた状態では、封入容器101の底部から、蓄電池100のセパレーター106の外端部まで切断スペースが確保されることになる。
特に、このように上方絶縁切断位置Aにて、蓄電池100を切断した後、封入容器101の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させれば、封入容器101の上部が開口した状態であるので、変形させた際に、封入容器101内で電極体103を上方に容易にかつ正確に押し上げることができる。
従って、封入容器101の底部から、蓄電池100のセパレーター106の外端部まで切断スペースが確実に確保されることになる。
従って、下方絶縁切断位置Bの設定の幅が大きくとれるとともに、下方絶縁切断位置Bにおいて負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、負電極104と、負電極104の内側に位置する正電極102とを同時に切断して短絡して発火などの事故が発生することがなく、安全性において非常に優れている。
しかも、下方絶縁切断位置Bにおいて負電極104と正電極102が確実に存在しない状態であるので、回転刃として、市販品であり、安価で、種類が豊富である(厚さが0.1mmまである)メタルソーが使え、交換が容易であり、しかも、機能的にも、寿命、切れ味(バリ)、切削抵抗(切削温度)において優れている。
この場合、回転刃42が、メタルソーから構成することができる。
すなわち、封入容器101の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器101内で電極体103を上方に押し上げた状態で、蓄電池100を絶縁切断位置にて切断する場合には、下方絶縁切断位置Bにおいて負電極104と正電極102が確実に存在しない状態である。
従って、回転刃42として、市販品であり、安価で、種類が豊富である(厚さが0.1mmまである)メタルソーが使え、交換が容易であり、しかも、機能的にも、寿命、切れ味(バリ)、切削抵抗(切削温度)において優れている。
この場合、押圧治具85を、先に上方絶縁切断位置Aにて、蓄電池100を切断した場合には、封入容器101の上部が開口した状態であるので、蓄電池の封入容器内の電解液などが反応して発火などの事故が発生するのが防止するためには、作業室12内に配置することが望ましい。
なお、この場合、封入容器101の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器101内で電極体103を上方に押し上げた後、蓄電池101を絶縁切断位置、ずなわち、上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bにて切断することもできる。
先に上方絶縁切断位置Aにて、蓄電池100を切断した場合には、封入容器101の上部が開口した状態であるので、封入容器101の底部を押圧変形するための押圧治具85は、切断機本体20と同様に、不活性雰囲気などに設置する必要がある。
これに対して、蓄電池100を絶縁切断位置にて切断する前に、先に押圧治具85で封入容器101の底部を押圧して変形させれば、蓄電池位置決め治具50と同様に、押圧治具85による封入容器101の底部の押圧、変形を、大気中で行うことが可能となる。
従って、作業性の向上が図ることができ、しかも、不活性ガス雰囲気の作業室12である、小型のグローブボックスやドライチャンバーには、スペースが限られており、収納する装置の大きさには、制約があるため、収納する治具点数が少ない方が良いと言え、この点からも非常に優れている。
なお、この実施例の発明の蓄電池の切断装置および切断方法においては、封入容器101の上部と、負電極104の外端部の間に距離があり、封入容器101の底部と負電極104の外端部の間に距離がない場合に有効である(図29〜図31、図40〜図42参照)。
この場合、図28に示したように、押し上げ距離L3としては、封入容器101の材質、負電極104の外端部の間の距離にもよるが、例えば、2mm〜10mm程度とするのが望ましい。
なお、この場合、押し上げ距離L3が、10mm程度であれば、電極体103の上部の掴み代が十分とれることになるので、蓄電池100の封入容器101を下方絶縁切断位置Bで切断する必要はない。
図17〜図28の押圧治具85は、円筒形状の蓄電池100に適用したものであるが、図59〜図68は、それぞれ図17〜図28に対応しており、この押圧治具85は、四角柱形状の蓄電池100に適用したものであって、その作動は同様であるので、その詳細な説明は省略する。
本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、以下のように蓄電池100の解体を実施した(実施例1〜実施例4参照)。
実施例1では、円筒形状の蓄電池100を、上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bにおいて、上下連続で切断し、実施例2では、四角柱形状の蓄電池100を、上方絶縁切
断位置A、下方絶縁切断位置Bにおいて、上下連続で切断した。
一方、実施例3では、円筒形の蓄電池100を、上方絶縁切断位置Aにて切断した後、封入容器101の容器本体108の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、封入容器内で電極体を上方に押し上げた。その後、蓄電池100を、下方絶縁切断位置Bにおいて切断し、上下連続で切断した。
図29〜図31に示したように、円筒形状の蓄電池100として、円筒形リチウムイオン二次電池(サイズ:18650(外径φ18mm、高さ65mm)、封入容器101の材質:鉄にニッケルメッキ、肉厚t0.25mm)を、切断前の電圧が3.6Vになるように充電した状態で用いた。
この蓄電池100を、蓄電池位置決め治具50を用いて、円筒形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定した。
そして、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、蓄電池100の封入容器101を上方絶縁切断位置Aで切断した(図32〜図34参照)。
この場合、図34に示したように、上方絶縁切断位置Aが、絶縁部材116より上方にあるので、電極体103を切断することがない。また、絶縁部材116が、切断された切粉受けとなる。
その後、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、蓄電池100の封入容器101を下方絶縁切断位置Bで切断した(図35〜図37参照)。
この場合、図37に示したように、絶縁部材118の上方を切断しており、電極体103が切断面から露出しており、電極体103のセパレーター106のみ切断していることになる。
なお、この場合、蓄電池100の上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bの切断順序は、いずれが先であっても構わない。
なお、切断条件としては、回転刃42として、メタルソー(材質ハイス(高速度工具鋼)/外径45mm/厚み0.2mm/刃数90)を、蓄電池固定機構18の載置台座部26の回転数が4rpm、回転刃42の回転数が2400rpm、0.5mmの切り込み量、アッパーカットの切削回転方向で、大気中で、25℃の雰囲気温度で行った。
そして、切断中は、K型熱電対を用いて温度測定を行うとともに、テスターを用いて電圧測定によりモニタリングを実施した。
次に、ピンセット等で切断した部分を開き、正極タブ(正極リード)114をニッパー等でカットした。金属でも良いが、誤って短絡させないよう、絶縁体のピンセット(ポリ
プロピレン)とハサミ(セラミックス)を使用した。なお、蓄電池100の封入容器101
を片側で切断したら、切断部を分離しても構わない。
その後、電極体103を、封入容器101から引き抜き、取り出した。
なお、この電極体103の引き抜き、取り出しは、金属でも良いが、誤って短絡させないよう、図38〜図39に示したように、絶縁体の押し棒(テフロン(登録商標))15
を使用した。この場合、缶上下、どちらから押し出しても構わない。また、電極体の押し出し量は10mm程度と、掴み代ができれば、簡単に抜き取れる。
その結果、切断後の電圧降下はなく、切断前の電圧と変わらなかった。
切断中の温度も、最大で2℃程度の上昇だった。
また、電極体103を取り出し、観察したところ、上側(蓋部材112側)のセパレーター106は切れていないが、下側のセパレーター106は僅かに(0.5mm程度)切れていた。
セパレーター106には、1mm程の覆い代が残っており、短絡の問題はないことが確認できた。すなわち、電極を保護するセパレーターの覆い代が十分にあることが分かった。
図40〜図42に示したように、四角柱形状の蓄電池100として、角形リチウムイオン二次電池103450(厚み10mm/幅34mm/高さ50mm/隅R3mm)、封入容器101の材質:アルミ。肉厚t0.5mm)を、切断前の電圧が3.6Vになるように充電した状態で用いた。
この蓄電池100を、蓄電池位置決め治具50を用いて、四角柱形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定した。
そして、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、蓄電池100の封入容器101を上方絶縁切断位置Aで切断した(図43〜図45参照)。
その後、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、蓄電池100の封入容器101を下方絶縁切断位置Bで切断した(図46〜図48参照)。
なお、この場合、蓄電池100の上方絶縁切断位置A、下方絶縁切断位置Bの切断順序は、いずれが先であっても構わない。
なお、切断条件としては、回転刃42として、メタルソー(材質ハイス(高速度工具鋼)/外径45mm/厚み0.2mm/刃数90)を、電動スライダー34の送り速度が3mm/s、回転刃42の回転数が2400rpm、幅方向0.7mm/厚み方向2.7mmの切り込み量、アッパーカットの切削回転方向で、大気中で、25℃の雰囲気温度で行った。
そして、切断中は、K型熱電対を用いて温度測定を行うとともに、テスターを用いて電圧測定によりモニタリングを実施した。
次に、ピンセット等で切断した部分を開き、正極タブ(正極リード)114をニッパー等でカットした。金属でも良いが、誤って短絡させないよう、絶縁体のピンセット(ポリ
プロピレン)とハサミ(セラミックス)を使用した。なお、蓄電池100の封入容器101
を片側で切断したら、切断部を分離しても構わない。
その後、電極体103を、封入容器101から引き抜き、取り出した。
なお、この電極体103の引き抜き、取り出しは、金属でも良いが、誤って短絡させな
いよう、絶縁体の押し棒(テフロン(登録商標))を使用した。この場合、缶上下、どちらから押し出しても構わない。また、電極体の押し出し量は10mm程度と、掴み代ができれば、簡単に抜き取れる。
その結果、切断後の1V程度と電圧降下が、顕著に認められた。電圧を測定しながら切断していたため、電圧が下がったのは、蓄電池100の封入容器101を下方絶縁切断位置Bで切断したのみであることを確認した。
その際の封入容器101の温度は、50℃近辺まで上昇した。
そして、電極体103を封入容器101から取り出し、観察したところ、下側(封入容器101の底側)のみ電極ごと切断していることを確認した(図48参照)。
図29〜図31に示したように、円筒形状の蓄電池100として、円筒形リチウムイオン二次電池(サイズ:18650(外径φ18mm、高さ65mm)、封入容器101の材質:鉄にニッケルメッキ、肉厚t0.25mm)を、切断前の電圧が3.6Vになるように充電した状態で用いた。
この蓄電池100を、蓄電池位置決め治具50を用いて、円筒形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定した。
そして、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、蓄電池100の封入容器101を上方絶縁切断位置Aで切断した。
次に、ピンセット等で切断した部分を開き、正極タブ(正極リード)114をニッパー等でカットした。金属でも良いが、誤って短絡させないよう、絶縁体のピンセット(ポリ
プロピレン)とハサミ(セラミックス)を使用した。
その後、図27、図28に示したように、封入容器101の容器本体108の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、変形部105を上方に突出させて、封入容器内101内で電極体103を2mm程度上方に押し上げた。
そして、この状態で、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、下方絶縁切断位置Bにおいて切断した(図49〜図51参照)。
なお、この場合、蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52は固定したままであるので、再度位置決めする必要はない。
なお、切断条件としては、回転刃42として、メタルソー(材質ハイス(高速度工具鋼)/外径45mm/厚み0.2mm/刃数90)を、蓄電池固定機構18の載置台座部26の回転数が4rpm、回転刃42の回転数が2400rpm、0.5mmの切り込み量、アッパーカットの切削回転方向で、大気中で、25℃の雰囲気温度で行った。
そして、切断中は、K型熱電対を用いて温度測定を行うとともに、テスターを用いて電圧測定によりモニタリングを実施した。
次に、ピンセット等で切断した部分を開き、負電極104の負極リード110をニッパー等でカットした。金属でも良いが、誤って短絡させないよう、絶縁体のピンセット(ポ
リプロピレン)とハサミ(セラミックス)を使用した。
その後、電極体103を、封入容器101から引き抜き、取り出した。
なお、この電極体103の引き抜き、取り出しは、金属でも良いが、誤って短絡させないよう、図38〜図39に示したように、絶縁体の押し棒(テフロン(登録商標))15を使用した。この場合、缶上下、どちらから押し出しても構わない。また、電極体の押し出し量は10mm程度と、掴み代ができれば、簡単に抜き取れる。
その結果、切断後の電圧降下はなく、切断前の電圧と変わらなかった。
切断中の温度も、最大で2℃程度の上昇だった。
また、電極体103を取り出し、観察したところ、上側(蓋部材112側)のセパレーター106、下側のセパレーター106のいずれも全く切断されておらず、電極体103の上下に挟まれた絶縁部材116、118も全く切断されていなかった。
図40〜図42に示したように、四角柱形状の蓄電池100として、角形リチウムイオン二次電池103450(厚み10mm/幅34mm/高さ50mm/隅R3mm)、封入容器101の材質:アルミ。肉厚t0.5mm)を、切断前の電圧が3.6Vになるように充電した状態で用いた。
この蓄電池100を、蓄電池位置決め治具50を用いて、四角柱形状の蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52を、蓄電池100の外周の所定の位置に固定した。
そして、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、蓄電池100の封入容器101を上方絶縁切断位置Aで切断した。
次に、ピンセット等で切断した部分を開き、正極タブ(正極リード)114をニッパー等でカットした。金属でも良いが、誤って短絡させないよう、絶縁体のピンセット(ポリ
プロピレン)とハサミ(セラミックス)を使用した。
その後、図52〜図55に示したように、封入容器101の容器本体108の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、変形部105を上方に突出させて、封入容器内101内で電極体103を2mm程度上方に押し上げた。
そして、この状態で、本発明の蓄電池の切断装置10を用いて、下方絶縁切断位置Bにおいて切断した(図56〜図58参照)。
なお、この場合、蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52は固定したままであるので、再度位置決めする必要はない。
なお、切断条件としては、回転刃42として、メタルソー(材質ハイス(高速度工具鋼)/外径45mm/厚み0.2mm/刃数90)を、電動スライダー34の送り速度が3mm/s、回転刃42の回転数が2400rpm、幅方向0.7mm/厚み方向2.7mmの切り込み量、アッパーカットの切削回転方向で、大気中で、25℃の雰囲気温度で行った。
そして、切断中は、K型熱電対を用いて温度測定を行うとともに、テスターを用いて電圧測定によりモニタリングを実施した。
次に、ピンセット等で切断した部分を開き、負電極104の負極リード110をニッパー等でカットした。金属でも良いが、誤って短絡させないよう、絶縁体のピンセット(ポ
リプロピレン)とハサミ(セラミックス)を使用した。
その後、電極体103を、封入容器101から引き抜き、取り出した。
なお、この電極体103の引き抜き、取り出しは、金属でも良いが、誤って短絡させないよう、絶縁体の押し棒(テフロン(登録商標))を使用した。この場合、缶上下、どちらから押し出しても構わない。また、電極体の押し出し量は10mm程度と、掴み代ができれば、簡単に抜き取れる。
その結果、切断後の電圧降下はなく、切断前の電圧と変わらなかった。
切断中の温度も、最大で2℃程度の上昇だった。
また、電極体103を取り出し、観察したところ、上側(蓋部材112側)のセパレーター106、下側のセパレーター106のいずれも全く切断されておらず、電極体103の上下に挟まれた絶縁部材116、118も全く切断されていなかった。
以上の実施例1〜実施例4の結果、実施例1においては、切断後の電圧降下はなかった
。
また、実施例2では、電圧降下が顕著に見られた。電圧を測定しながら、切断していたため、電圧が下がったのは、封入容器101の底部を切断した際のみであることを確認した。
切断後に電極体103を取り出し、確認したが、実施例1では、下側のセパレーター106のみが僅かに切断されており、電極を保護するセパレーター106の覆い代は十分にあることが分かった。
一方、実施例2では、下側のみ、電極ごと切ってしまっていた。これは、回転刃42に金属を使用していることもあるが、蓄電池100の構造に大きく起因するものと考えられる。上側には切断スペースがあるが、下側には切断スペースが限られているからである(図31参照)。
電極体103は、正電極102と負電極104が短絡しないよう、厚み20ミクロン程度のセパレーター106を間に挟み、幅も電極に比べ1.5mm程度と長くされ、覆い代がある。しかしながら、封入容器101に挿入された状態では、この覆い代が上下ともに内側に折られ、ほとんどないことが分かっている。
セパレーター106を内側に折る目的は、決められたサイズの中で、電池容量が望まれるため、デットスペースを少なくすること、また、製造工程での金属粉などのコンタミが、電極には入らないようにするためであることが知られている。
封入容器101の上側は、封口や集電のため、切断できるようなスペースがあるが、封入容器101の下側は切断スペースが限られている(図31参照)。
特に四角柱形状の角型の蓄電池100では、電極が完全に封入容器101の底部まで押し込まれ、セパレーター106の下側は完全に折られ、セパレーター106の厚み程度し
かなくなり、実際の封入容器101の底部の切断スペースはないことが分かっている。
一般的に電池の集電は、円筒形電池は、正極は蓋部材112側(上側)、負極は容器本体108の底部(下側)から、正極リード(タブ)114、負極リード(タブ)110により行われ、角形電池は、正極負極ともに蓋部材112側(上側)からタブにより行われているため、角型電池の電極体103は、缶底まで押し込むことが可能であり、下側のセパレーター106は内側に完全に折られた状態になっている。
本発明の蓄電池の切断装置10により、切断位置(Z方向)、切り込み量(X方向)を調整すれば、封入容器101の容器本体108の厚み分で切断できると考えるが、非常に難しいと考える。それは限られたスペースで、高容量を望まれる今の電池に、余分なスペースはほとんどないからである。
セパレーター106の外周は、余分に巻かれているのは一周程度であり、切り込み量の調整が難しい。封入容器101の容器本体108を完全に切らない程度の切り込み量(簡単に切断箇所が取れる程度)で切断できるように調整しても、短絡が生じたり、切断部が取れなかったりと、何個も続けて同じように切断できないと考えられる。
実際に切断する電池には、電池本来の性能とは関係のない、必要以上の外形精度が要求される。また回転刃42の磨耗も無視できない。
容器本体108の底部のみは、回転刃42に換えて、エンドミルや正面フライスなどで、底板を切削する方法や、エンドミルなどで、穴を開ける方法も考えられるが、上記の理由により、困難であると考えられる。短絡の問題や、切削温度の問題が生じる。
一方、セラミックスなどの絶縁刃であれば、仮に正極と負極を切るような高さ位置(Z方向)で切断しても、電圧低下が起こらないと考えられる。メタルソーなどに比べると、特殊に製作する必要があり、非常に高価な刃物となる。また、工具の寿命、切れ味(バリ)、切削抵抗(切削温度)、など多くの点でメタルソーに劣る。また電極を切るような高さ位置で切断すると、切断箇所は、正極負極セパレーターの幅が一緒になってしまい、ハンドリングの際に短絡させ易い構造になってしまう。また切断時の切粉により、短絡させてしまう可能性がある。
このような課題を解決したのが、実施例3および4である。
回転は42として、実施例1、2では、切断や浅い溝入れに適したメタルソーを使用している。
本発明の蓄電池の切断装置10により、切断スペースがある上部をまず切断する。
次に押圧治具85により、封入容器101の容器本体108の底部を押圧治具85を用いて下方から押圧して変形させて、変形部105を上方に突出させて、封入容器内101内で電極体103を2mm程度上方に押し上げた。
これにより、下側の切断スペースを確保することに成功した。蓄電池100の位置決めを行うための固定部材52は固定したままでなので(位置決めする必要もなく)、反対側(封入容器101の容器本体108の底部側)を本発明の蓄電池の切断装置10に装着し、切断した。
その結果、円筒も角形も、電圧降下がなく、切断することに成功した。電極体103を
取り出し観測した結果、挿入された状態を維持していた。
また、セパレーター106、電極体103の上下に挟まれた絶縁部材116、118のいずれも全く切断されていなかった。これによって、切粉による短絡を防止できる。
ところで、アッパーカット、薄い刃物、集塵機により、切粉の内部への混入を減らすことはできるが、切断する以上、切粉は発生するので、切粉による短絡が懸念されるが、切粉は絶縁部材116、118に落ちる。また、セパレーター106が内側に折られているので、電極までは届かない。
また、回転刃42として、メタルソーが使える。すなわち、市販品であり、安価、種類が豊富(t0.1mmまで)であるので、交換が容易である。また機能的にも、寿命、切れ味(バリ)、切削抵抗(切削温度)で優れる。切断箇所近傍に熱電対を貼り、切断中の温度を実測したが、温度は最大で2℃程度しか上がらなかった。これは切断による温度上昇が小さく、電極体103への温度の影響を与えないことを意味する。
以上の点から、本発明は、電池の構造を考慮した有効な専用切断装置および切断方法』である。また、『強制内部短絡試験の手順(JIS C 8714:2007付属書A)』内、A.3.1項『充電済み電池の解体』には、『A.2の手順で充電した単電池を解体し、電極体を取り出す』と記されている。本発明により、『充電済み電池の解体』として有効な専用装置と方法を提供できるものである。
すなわち、充電された蓄電池100を、電圧降下無く、電極体の中身に損傷が無く、簡単に確実に解体する方法』として、実施例3、実施例4は優れている。
また、『充電されていない、電圧降下を考慮しない、解体できれば良い』という目的であれば、実施例1、実施例2の方法で十分であると考えられる。例えば、実施例1では、円筒形の蓄電池100について、電圧降下なく解体できたものである。
また、同じ規格の電池サイズであっても、製造メーカ、充電の有無、電極体の抜き取り易さに差が生じる。上側を切っただけで、取れる場合もある。また、電池が、上側同様、封入容器101の容器本体108の底部側にも切断スペースがあれば、実施例1、実施例2の方法でも、電圧降下なく、切断可能である。
充電された電池の切断(出火の危険性)は、装置を小型化し、ブローブボックス(不活性雰囲気)に収納できるようにした。この点においては、不活性雰囲気での切断が最善と考えられるが、ドライルームやドライチャンバーで切断することも可能である。
すなわち、『強制内部短絡試験の手順(JIS C 8714:2007付属書A)』には、充電した電池を解体する雰囲気は、『周囲温度20±5℃、露点−25℃以下』と記載されており、『不活性雰囲気のみ』という限定はされないことはもちろんである。
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、いわゆる縦置き型の切断装置として構成したが、いわゆる横置き型の切断装置として構成することも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。