JP5456609B2 - 異音検査装置及び方法、並びにプログラム - Google Patents
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Description
なお、このようなビビリ音が発生しているか否かの異音検査を、以下、単に「ビビリ音の異音検査」と呼ぶ。
このような官能検査では、検査員の能力差や体調等の各種要因で、検査結果にバラつきが生じていた。即ち、ビビリ音の異音検査の精度を一定以上に確保することは困難であった。
車両の室内に搭載されたスピーカの作動に起因して当該室内の内装部材が振動することによって発生する異音(例えば実施形態でいうビビリ音)の有無を検査する異音検査装置であって、
検査対象の車両(例えば実施形態における車両11)に搭載されたスピーカ(例えば実施形態におけるスピーカ21)が作動したときに取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から一定時間内の音のデータを、検査対象音のデータとして取得する検査対象音取得手段(例えば実施形態における検査対象音取得部401)と、
前記検査対象音取得手段により前記検査対象音のデータが取得される前に、前記異音が発生しない車両に搭載されたスピーカが作動したときに予め取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から前記一定時間内の音のデータを、基準音のデータとして取得する基準音取得手段(例えば実施形態における基準音取得部402)と、
前記検査対象音取得手段により取得された前記検査対象音のデータと、前記基準音取得手段により取得された前記基準音のデータとを比較し、その比較結果に基づいて、前記異音が発生しているか否かを判定する比較判定手段(例えば実施形態における比較判定部403)と、
を備えることを特徴とする。
このように、人の官能検査によらず、異音検査装置が、スピーカの作動時刻から一定時間内の時間領域のデータを比較し、ビビリ音の発生の有無を判定する処理を自動的に実行することができる。従って、人の官能検査による異音検査で発生した検査結果のバラつきは抑制され、一定以上の精度が確保される。
即ち、ビビリ音の有無の検査を、一定以上の精度を確保して自動的に実行することが可能な異音検査装置を提供することが可能になる。
このため、本発明者らは、官能検査と同様の条件で、ビビリ音が発生していない車両の室内の音(以下、「基準音」と呼ぶ)と、ビビリ音が発生している車両の室内の音(以下、「ビビリ発生時音」と呼ぶ)とを測定することから開始した。
図1に示すように、車両11のフロントドアの車室側には、スピーカ21が搭載されている。なお、スピーカ21は、図1においては左側のフロントドアにのみ搭載されているように図示されているが、実際には、少なくとも右側のフロントドアにも搭載されている。
マイクロフォン31A,31Bは、車両11の左前の座席に着座した人間の左右の耳のそれぞれの位置の近傍に配設されている。なお、本発明の理解を容易なものとすべく、図1においては、車両11の室内に人間が着座しているが、異音検査の際に人間が着座していることは必須な条件ではない。
図2は、このような測定により得られたビビリ発生時音のデータの一例を示している。
図2において、横軸は時間(秒)を示しており、縦軸は音圧を示している。
なお、図2に示すように、横軸が時間となっている時系列の音のデータを、以下、「時間領域の音のデータ」と呼ぶ。また、後述する図3や図4に示すように、横軸が周波数となっている周波数分布を示す音のデータを、以下、「周波数領域の音のデータ」と呼ぶ。ただし、「時間領域」や「周波数領域」は、「データ」に係る修飾語であるため、係り受けの位置は適宜変化する。
そこで、本発明者らも、先ず、周波数領域の基準音及びビビリ発生時音の各データを見比べることによって、基準音とビビリ発生時音との差異点を見極める試みをした。その試みの結果が、図3及び図4に示されている。
即ち、図3は、図2の全期間Taにおける周波数領域のビビリ発生時音及び基準音の各データの一例を示す図である。
なお、全期間Taとは、測定開始時刻を基準時刻(0秒)とした場合に、30.533(秒)乃至34.416(秒)までの期間をいう。
即ち、図4は、図2の一部の期間Tbにおける周波数領域のビビリ発生時音及び基準音の各データの一例を示す図である。
なお、一部の期間Tbとは、全期間Taの最初の一部の期間、即ち、30.533(秒)から一定時間を経過するまでの期間をいう。
そこで、本発明人らは、次のようにして、この理由を検討した。
図5は、ビビリ音の発生の原理の概略を説明する図である。
図5は、図1の車両11のフロントドア41の近傍の概略構成を示す上面断面図である。なお、説明の便宜上、図5においては、右側のフロントドア41が図示されている。
図5に示すように、フロントドア41は、車外側のアウターパネル41oと、車室側のインナーパネル41iと、を備えている。
スピーカ21は、アウターパネル41oとインナーパネル41iとの間に搭載されており、オーディオ装置(図示せず)から供給された音声信号を、空気の振動(音波)に変化させることで、音を発生させる。
このように、スピーカ21から発生される音とは、空気の振動(音波)であり、スピーカ21から各種方向(指向性が無ければ同心円状)に伝達される。
このスピーカ21からの空気の振動(音波)が、インナーパネル41iを介して、直接波51としてマイクロフォン31に到達する。なお、このような直接波51によりマイクロフォン31に入力される音を、以下、「音源からの直接音」と呼ぶ。ここで、音源とは、図5の例ではスピーカ21を意味する。
一方で、スピーカ21からの空気の振動のエネルギーは、フロントドア41の構成部品が吸収し、その結果、当該構成部品の少なくとも一部が共振し、この共振による音波52がマイクロフォン31に到達すると、ビビリ音として入力される。
以上が、ビビリ音の発生の原理である。
このような原理を考慮すると、マイクロフォン31において、ビビリ音の音圧は、音源からの直接音の音圧に比較して遥かに小さくなることがわかる。
即ち、FFT解析の特性の1つとして、周波数成分を明確化するため、何らかの平均化処理が実行されていることが挙げられる。
具体的には、一般的なFFT解析では、時間領域の音のデータが、一定区間を単位として複数単位に分割され、それぞれの単位毎に周波数領域の音のデータに変換される。次に、複数の単位毎の周波数領域の音のデータ(周波数成分、即ち周波数毎の音圧レベルを示すデータ)の二乗平均が取られる。そして、このようにして二乗平均された各周波数成分(音圧レベルを示すデータ)の周波数分布が、FFT解析の結果として出力される。
即ち、FFT解析の特性として、上述の如く、平均化処理が伴うことが挙げられる。このため、音圧の小さな音のデータは、それよりも音圧の高い音のデータに埋もれてしまい、周波数成分として表れにくい傾向になる。この傾向は、二乗平均を取っている場合に特に強くなる。
ここで、ビビリ音の発生の原理によれば、上述の如く、マイクロフォン31において、ビビリ音の音圧は、音源からの直接音の音圧に比較して遥かに小さくなる。
従って、FFT解析では平均化処理が伴うため、音圧の小さな「ビビリ音」のデータは、それよりも音圧の高い「音源からの直接音」のデータに埋もれてしまい、周波数成分として表れにくい傾向になる。この傾向は、二乗平均を取っている場合に特に強くなる。
これが、周波数領域のビビリ発生時音及び基準音の各データの間には差異点として着目できるほどの顕著な違いが存在しないことの理由である。
その結果、本発明人らは、図6に示すように時間領域のビビリ発生時音及び基準音の各データを比較することによって、ビビリ音の特徴、即ち、基準音とビビリ発生時音との差異点を見極めることに成功した。
図6において、横軸は時間(秒)を示しており、縦軸は音圧レベル(dB)を示している。ここで、横軸に示す数字は、測定開始時刻を基準時刻(0秒)とした場合の相対的な時刻を示している。
また、図6において、実線が、時間領域のビビリ発生時音のデータの波形を示しており、点線が、時間領域の基準音のデータの波形を示している。
図6に示すように、ピーク音期間61−Kの音圧レベル(以下、「ピーク音圧」と呼ぶ)は、バラつきがあり、図6には図示しないが、車両毎によっても異なる。スピーカ21や図示せぬオーディオ装置のアンプの特性にバラつきがあるからである。
しかしながら、ビビリ発生期間62−Kはピーク音期間61−Kの後に発生し、ビビリ発生期間62−K中の音圧レベルはピーク音圧よりも低い、という傾向は一致していることがわかった。
ここで、ピーク音期間61−Kとは、スピーカ21が作動して音が発生した時刻(以下、「スピーカ作動時刻」と呼ぶ)に相当する。なお、音にも一定の速度があるため、厳密には、スピーカ21が作動して音が発生した時刻と、ピーク音期間61−Kの開始時刻とは一定の時間差が生ずるが、この時間差は、スピーカ21とマイクロフォン31との間の距離からすると無視してよいレベルである。
即ち、ビビリ音の特性として、スピーカ作動時刻の後概ね0.5秒以内に、ビビリ発生期間62−Kが発生することがわかった。
そして、このビビリ発生期間62−Kにおける、時間領域のビビリ発生時音及び基準音の各データには明確な差異点、即ち、ビビリ発生時音の方が基準音よりも音圧レベルが高いという差異点が存在することがわかった。
即ち、異音検査装置は、検査対象の車両11のスピーカ21を作動したときにマイクロフォン31に入力される音の時間領域のデータのうち、スピーカ作動時刻から一定時間内の音のデータを、検査対象音のデータとして取得する。
ここで、一定時間は、ビビリ発生期間62−Kの少なくとも一部を含むことが可能な時間であれば足り、設計者等が任意に設定すすることが可能である。本実施形態では、図6の例にあわせて、一定時間として0.5秒が採用されている。
また、異音検査装置は、ビビリ音が発生しない車両11(検査対象の車両11とは異なる基準となる車両11)のスピーカ21が作動したときに予め取得された音の時間領域のデータのうち、スピーカ作動時刻から一定時間内の音のデータを、上述した基準音のデータとして取得する。なお、基準音のデータは、当該異音検査装置内部のメモリに保持されていてもよいし、別の装置により保持されていてもよい。
そして、異音検査装置は、検査対象音と基準音の各データを比較することによって、ビビリ音が発生しているか否かを判定する。
即ち、異音検査装置は、検査対象音の方が基準音の音圧レベルよりも高い場合、検査対象音のデータはビビリ発生期間62−Kを含むデータであるため、検査対象音にはビビリ音が含まれていると、即ちビビリ音が発生していると判定する。これに対して、異音検査装置は、検査対象音と基準音の各々の音圧レベルに差異が認められない場合、検査対象音にはビビリ音が含まれていないと、即ちビビリ音が発生していないと判定する。
具体的には、異音検査装置は、検査対象音のデータの平均値と、基準音のデータに基づいて予め設定された所定の閾値とを比較する。そして、異音検査装置は、当該平均値が当該閾値を超えた場合、検査対象音のデータはビビリ発生期間62−Kを含むデータであるため、検査対象音にはビビリ音が含まれていると、即ちビビリ音が発生していると判定する。これに対して、異音検査装置は、当該平均値が当該閾値以下である場合、検査対象音にはビビリ音が含まれていないと、即ちビビリ音が発生していないと判定する。
具体的には、異音検査装置は、検査対象音と基準音のデータの差分の時間方向の積分値と、所定の閾値を比較する。そして、異音検査装置は、当該積分値が当該閾値を超えた場合、検査対象音のデータはビビリ発生期間62−Kを含むデータであるため、検査対象音にはビビリ音が含まれていると、即ちビビリ音が発生していると判定する。これに対して、異音検査装置は、当該積分値が当該閾値以下である場合、検査対象音にはビビリ音が含まれていないと、即ちビビリ音が発生していないと判定する。
図7において、横軸は時間(秒)を示しており、縦軸は音圧レベル(dB)を示している。ここで、横軸に示す数字は、測定開始時刻を基準時刻(0秒)とした場合の相対的な時刻を示している。
また、図7において、実線が、時間領域のビビリ発生時音のデータの波形を示しており、点線が、時間領域の基準音のデータの波形を示している。
図7に示す面積値S1乃至S6の総和が、ビビリ発生時音(検査対象音の一例)と基準音の各データの差分(音圧差)の時間方向の積分値の概略を示している。
このように、検査対象音がビビリ発生時音であれば、面積値S1乃至S6の総和、即ち検査対象音と基準音の各データの差分の時間方向の積分値が大きくなる。そこで、第2のビビリ音検査手法では、検査対象音と基準音の各データの差分の時間方向の積分値と、所定の閾値とを比較することによって、精度よい異音検査を実現している。
この場合、さらに適切な指標値を用いて、さらなる異音検査の高精度化が求められる場合、次のような第1の補正手法と第2の補正手法とを採用すればよい。
図8において、横軸は時間(秒)を示しており、縦軸は音圧レベル(dB)を示している。ここで、横軸に示す数字は、測定開始時刻を基準時刻(0秒)とした場合の相対的な時刻を示している。
また、図8において、実線が、時間領域のビビリ発生時音のデータの波形を示しており、点線が、時間領域の基準音のデータの波形を示している。
図8に示すように、特にピーク音期間71−1乃至71−3に示すように、ビビリ発生時音(検査対象音の一例)のデータと、基準音のデータとの時間成分(各時刻の音圧レベル)にはズレが発生している。これは、ビビリ発生時音のデータと、基準音のデータとは、別々の時間帯に測定が開始されて取得されたものであるため、スピーカ21の作動時刻(測定開始時刻からの経過時間)にズレが生じるためである。
しかしながら、本発明が適用されるビビリ音検査手法において、検査対象音と基準音の各データの比較で基準となるタイミングは、各々の測定開始時刻ではなく、スピーカ21の作動時刻(測定開始時刻からの経過時間)である。
そこで、第1の補正手法では、スピーカ21の作動時刻(測定開始時刻からの経過時間)が一致するように、即ち図8の例ではピーク音期間71−1乃至71−3が一致するように、検査対象音と基準音のうちの少なくとも一方のデータが補正される。
従って、図9が示すものは、図8が示すものと同一であるため、これらのものの説明は省略する。
図9に示すように、特にピーク音期間71−1乃至71−3に示すように、ビビリ発生時音(検査対象音の一例)のピーク音圧と、基準音のピーク音圧とにはズレが発生している。これは、ビビリ発生時音のデータが取得された車両11と、基準音のデータが取得された車両11とが異なるため、スピーカ21や図示せぬオーディオ装置のアンプ等にバラつきが存在するためである。
ここで、面積指標を用いたビビリ音検査手法で用いられる閾値は、検査対象となる車両11が異なっても同一のものが採用されている。
従って、同一の閾値と比較される指標値としては、スピーカ21や図示せぬオーディオ装置のアンプ等のバラつきの影響を受けないように、一定の基準に従って定量化された値、即ちいわゆる正規化された値を採用すると好適である。
即ち、同一の閾値と比較される指標値とは、検査対象音と基準音の各データの差分の時間積分値(面積値)であることから、正規化された指標値を得るためには、一定の基準に従って定量化されたデータ同士の差分、即ち、いわゆる正規化されたデータ同士の差分を取る必要がある。
そこで、第2の補正手法では、例えばピーク音圧が一致するように、検査対象音と基準音の各データの波形の音圧レベルを調整すべく、検査対象音と基準音のうちの少なくとも一方のデータが補正される。
このような第1の補正手法と第2の補正手法が適用された、面積指標を用いたビビリ音検査手法を採用することで、面積換算すると埋もれてしまうような小さな音圧レベルのビビリ音でも指標値にしっかりと反映されるようになる。その結果、図10に示すように、さらなる異音検査の高精度化が実現される。
図10において、横軸は検査員評点を示し、縦軸は定量化指標値を示している。
検査員評点は、従来の官能検査に採用されていた評価点であって、評価点が高いほどビビリ音の発生度合が大きいことを意味している。
定量化指標値とは、第1の補正手法と第2の補正手法が適用された、面積指標を用いたビビリ音検査手法によって演算された指標値を意味している。即ち、第1の補正手法と第2の補正手法とにより、検査対象音と基準音のうちの少なくとも一方のデータが補正され、補正後の各データの差分の時間積分値を定量化した値が、定量化指標値である。
図10に示すように、定量化指標値は検査員評点と高い相関が得られており、面積指標を用いたビビリ音検査手法が有効であることがわかる。
換言すると、図10に示す相関を用いて、面積指標を用いたビビリ音検査手法で用いる閾値を設定すると好適である。例えば、従来、検査員評点が3点以下の場合、ビビリ音が発生していると評価されていた場合、3点の検査員評点に対応する定量指標値は約22000である。そこで、このような場合には、2200前後を閾値に設定すればよい。
次に、本発明のビビリ音検査手法が適用された異音検査装置の一実施形態について、図11以降の図面を参照して説明する。
図11に示すように、車両検査装置110は、検査対象の車両11の室内に置かれ、当該室内に到達する音や振動を検査する。
特に、本実施形態では、車両検査装置110には、ビビリ音検査手法が適用された異音検査装置として機能する高速演算処理媒体212が内蔵されている。よって、車両検査装置110は、ビビリ音の異音検査を精度よく自動的に実行できる。
車両検査装置110は、車両11に積載されるECU(Engine Control Unit)111に対して取り外し可能に電気的に接続される。車両検査装置110は、端末211と、高速演算処理媒体212と、マイクロフォン213と、ケーブル214,215と、を備えている。
高速演算処理媒体212は、車両検査装置110全体の動作を制御するために、各種演算処理を実行する。例えば、高速演算処理媒体212は、本発明の一実施形態に係る異音検査装置として機能し、ビビリ音の異音検査に伴う各種演算処理を実行する。さらなる高速演算処理媒体212の詳細については、図12や図13を参照して後述する。
マイクロフォン213は、図1のマイクロフォン31A,31Bとして機能し、車両11の座席に着座した人間221の耳の位置の近傍に配設されている。なお、本発明の理解を容易なものとすべく、図11においては、車両11の室内に人間221が着座しているが、上述したように、異音検査の際に人間221が着座していることは必須な条件ではない。マイクロフォン213は、ケーブル215により、高速演算処理媒体212に電気的に接続される。
この場合、本体部251は、特に、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)タイプII又はPCMCIA タイプIIIのICカードで構成されると好適である。
PCMCIA タイプII又はPCMCIA タイプIIIは、名刺サイズ(54mm×84mm)のカードであって、タイプIIは、厚さが5mm、タイプIIIは、厚さが10.5mmに規格化されているため、汎用性が高く、着脱や携帯が容易だからである。
なお、高速演算処理媒体212は、特にICカードで構成されている必要はなく、その他例えば、USB(Universals Serial Bus)の規格に準拠した各種媒体により構成することができる。
即ち、ケーブル215が音入力端子261に差し込まれることによって、高速演算処理媒体212とマイクロフォン213とは、ケーブル215によって電気的に接続される。
この場合、高速演算処理媒体212は、マイクロフォン213に入力された音を、時間領域の音のデータに変換して、ビビリ音の異音検査をするための各種演算処理を実行する。
即ち、当該ケーブルが振動入力端子262に差し込まれることによって、高速演算処理媒体212と振動センサとは、当該ケーブルによって電気的に接続される。これにより、高速演算処理媒体212は、検査対象の車両11の室内の振動を取得することができる。
換言すると、振動の検査が不要な場合は、振動入力端子262は省略してもよい。
即ち、分岐ハーネス214aが車速等入力端子263に差し込まれることによって、高速演算処理媒体212とECU111(図11)とは、分岐ハーネス214a及びケーブル214によって電気的に接続される。これにより、高速演算処理媒体212は、車速、エンジン回転速度、トランスミッションのシャフト回転速度等を取得することができる。
換言すると、車速、エンジン回転速度、トランスミッションのシャフト回転速度等の検査が不要な場合は、車速等入力端子263は省略してもよい。
端末211は、筐体311と、握り部312と、キー類から構成される操作部313と、ディスプレイ314と、高速演算処理媒体スロットル315と、差し込み口316と、を備えている。
即ち、高速演算処理媒体212が高速演算処理媒体スロットル315に挿入され、かつ、ケーブル214が差し込み口316に差し込まれた状態で、検査員が、片方の手で握り部312を握り、他方の手で操作部313を操作することによって、車両11の各種検査を行うことができる。検査結果等の各種情報は、ディスプレイ314に適宜表示されることによって、検査員に提示される。
高速演算処理媒体212は、切替部351と、増幅部352と、A/D変換部353と、主制御部354と、端末211との間で各種情報を授受するインタフェース部355と、を備えている。
従って、例えばビビリ音の異音検査が行われる場合、切替部351の入力信号は、音入力端子261から供給される信号、即ち、マイクロフォン213から出力されてケーブル215により伝達される音のアナログ信号に切り替えられる。
また例えば、振動の検査が行われる場合、切替部351の入力信号は、振動入力端子262から供給される信号、即ち、図示せぬ振動センサから出力されたアナログ信号に切り替えられる。
また例えば、車速、エンジン回転速度、トランスミッションのシャフト回転速度等の検査が行われる場合、切替部351の入力信号は、車速等入力端子263から供給される信号、即ち、ECU111(図11)から出力されたアナログ信号に切り替えられる。
この場合、マイクロフォン213から出力されて、ケーブル215を介して伝達される音のアナログ信号が、切替部351から増幅部352に供給される。
A/D変換部353は、増幅部352により増幅された音のアナログ信号に対して、A/D変換処理(Analog to Digital変換処理)を施し、その結果得られる音のデジタル信号を主制御部354に供給する。
本実施形態では、主制御部354は、上述したビビリ音検査手法に従った処理(以下、「ビビリ音検査処理」と呼ぶ)を実行することができる。
即ち、主制御部354は、ビビリ音検査処理の実行機能を発揮すべく、検査対象音取得部401と、基準音取得部402と、比較判定部403と、記憶部404と、を備えている。
この場合、検査対象音のデータは、A/D変換部353から供給される時間領域の音のデータ(生データ)そのものを採用してもよいが、本実施形態では、複数の周波数帯毎の時間領域の音のデータが採用されるものとする。
従って、本実施形態では、検査対象音取得部401は、A/D変換部353から供給される時間領域の検査対象音のデータ(生データ)に対してオクターブ解析処理を施すことによって、複数の周波数帯毎の時間領域の検査対象音のデータを生成する。
この場合、検査対象音のデータは、特にその形態は限定されないが、検査対象音のデータの形態とあわせる必要があるため、本実施形態では、複数の周波数帯毎の時間領域の音のデータが採用されるものとする。
従って、本実施形態では、基準音取得部402は、時間領域の基準音の生データに対してオクターブ解析処理を施すことによって、複数の周波数帯毎の時間領域の基準音のデータを生成する。
ただし、複数の周波数帯毎の時間領域の基準音のデータが予め与えられている場合には、基準音取得部402によるオクターブ解析処理は不要である。
ここで、本実施形態では、比較判定部403は、上述した面積指標を用いたビビリ音検査手法に従って、ビビリ音が発生しているか否かを判定するものとする。
即ち、比較判定部403は、複数の周波数帯毎に、検査対象音と基準音の各時間領域のデータの差分(音圧差)を面積換算し、当該面積値に基づいて、ビビリ音有無の指標値を求める。なお、本実施形態では、複数の周波数帯毎の面積値のうち最大の面積値に基づいて、指標値が求められるものとする。そして、比較判定部403は、指標値と所定の閾値とを比較することによって、ビビリ音の有無を判定する。
さらに、比較判定部403は、必要に応じて、図8を参照して上述した第1の補正手法や、図9を参照して上述した第2の補正手法に従って、検査対象音と基準音のうちの少なくとも一方の時間領域のデータを複数の周波数帯毎に補正する。この場合、補正後の検査対象音と基準音の各時間領域のデータに基づいて、指標値が求められる。
図14は、ビビリ音検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。
同様に、基準音取得部402は、時間領域の基準音の生データに対してオクターブ解析処理を施すことによって、複数の周波数帯毎の時間領域の基準音のデータを生成する。なお、複数の周波数帯毎の時間領域の基準音のデータが予め与えられている場合には、基準音取得部402によるオクターブ解析処理は不要である。
ここで、図14の例では、25乃至10000Hzの範囲内で、25Hzずつ順次区分された各周波数帯の各々の検査対象音及び基準音の各データが生成されるものとする。
図14の例では、検査対象音及び基準音の各データは、25乃至10000Hzの範囲内で25Hzずつ順次区分された周波数帯毎に生成されている。そこで、ステップS4の処理では、注目周波数帯i=25に設定される。
注目周波数帯iの面積値が記憶部404に記憶されると、処理はステップS6に進む。
注目周波数帯iが10000Hz未満の場合、ステップS7においてNOであると判定されて、処理はステップS5に戻され、それ以降の処理が繰り返される。即ち、25乃至10000Hzの範囲内で25Hzずつ区分された各周波数帯の各々が、注目周波数帯iに順次設定されて、各々の面積値が順次演算される。
注目周波数帯i=10000Hzの面積値が演算されるステップS5の処理が終了すると、次のステップS6の処理で、注目周波数帯i=10025Hzになる。その結果、次のステップS7の処理でYESであると判定されて、処理はステップS8に進む。
ステップS10において、比較判定部403は、ステップS1の処理で生データが取得された検査対象音にはビビリ音が含まれていると、即ち、ビビリ音が発生していると判定する。
これにより、ビビリ音検査処理は終了となる。
ステップS11において、比較判定部403は、ステップS1の処理で生データが取得された検査対象音にはビビリ音が含まれていないと、即ち、ビビリ音が発生していないと判定する。
これにより、ビビリ音検査処理は終了となる。
検査対象音取得部401は、検査対象の車両11(図1)に搭載されたスピーカ21が作動したときにマイクロフォン213に入力される音の時間領域のデータのうち、スピーカ作動時刻から一定時間内の音のデータを、検査対象音のデータとして取得する。
基準音取得部402は、ビビリ音が発生しない車両(検査対象の車両とは異なる基準となる車両)に搭載されたスピーカが作動したときにマイクロフォン213に入力された音の時間領域のデータのうち、スピーカ作動時刻から一定時間内の音のデータを、基準音のデータとして取得する。
比較判定部403は、検査対象音と基準音のそれぞれの時間領域のデータを比較し、その比較の結果に基づいて、ビビリ音が発生しているか否かを判定する。
これにより、本実施形態によれば、例えば、以下の(1)のような効果がある。
このように、本実施形態では、人の官能検査によらず、異音検査装置が、スピーカ作動時刻から一定時間内の時間領域のデータを比較し、ビビリ音の発生の有無を判定する処理を自動的に実行することができる。従って、人の官能検査による異音検査で発生した検査結果のバラつきは抑制され、一定以上の精度が確保される。
即ち、ビビリ音の有無の検査を、一定以上の精度を確保して自動的に実行することが可能な異音検査装置を提供することが可能になる。
例えば、異音検査装置は、高速演算処理媒体212によって構成される例として説明した。
しかしながら、本発明は、特にこれに限定されず、上述した一連の処理を実行可能な情報処理装置一般に広く適用することができ、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯型ナビゲーション装置等に幅広く適用可能である。
RAM503にはまた、CPU501が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
出力部507は、各種情報を出力する。例えば、出力部507には、図示せぬ表示部が設けられており、車両11の検査結果等の各種情報は、当該表示部に適宜表示される。
記憶部508は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部509は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信を制御する。
21 スピーカ
31 マイクロフォン
110 車両検査装置
111 ECU
211 端末
212 高速演算処理媒体
213 マイクロフォン
251 本体部
252 端子部
354 主制御部
401 検査対象音取得部
402 基準音取得部
403 比較判定部
404 記憶部
501 CPU
Claims (7)
- 車両の室内に搭載されたスピーカの作動に起因して当該室内の内装部材が振動することによって発生する異音の有無を検査する異音検査装置であって、
検査対象の車両に搭載されたスピーカが作動したときに取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から、前記内装部材の振動によるビビリ発生期間の少なくとも一部を含むことが可能な予め設定された一定時間内の音のデータを、検査対象音のデータとして取得する検査対象音取得手段と、
前記検査対象音取得手段により前記検査対象音のデータが取得される前に、前記異音が発生しない車両に搭載されたスピーカが作動したときに予め取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から前記一定時間内の音のデータを、基準音のデータとして取得する基準音取得手段と、
前記検査対象音取得手段により取得された前記検査対象音のデータと、前記基準音取得手段により取得された前記基準音のデータとを比較し、その比較結果に基づいて、前記異音が発生しているか否かを判定する比較判定手段と、
を備える異音検査装置。 - 前記比較判定手段は、前記検査対象音のデータの平均値と、前記基準音のデータに基づいて予め設定された閾値とを比較し、当該平均値が当該閾値を超えた場合、前記異音が発生していると判定し、当該平均値が当該閾値以下である場合、前記異音が発生していないと判定する、
請求項1に記載の異音検査装置。 - 前記比較判定手段は、前記検査対象音のデータと前記基準音のデータの差分の時間方向の積分値と、予め設定されている閾値とを比較し、当該積分値が当該閾値を超えた場合、前記異音が発生していると判定し、当該積分値が当該閾値以下である場合、前記異音が発生していないと判定する、
請求項1に記載の異音検査装置。 - 前記閾値は、前記異音の有無の官能検査の結果と関連付けられて設定されている、
請求項3に記載の異音検査装置。 - 前記異音検査装置は、検査対象の前記車両を検査する車両検査装置に内蔵されている、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の異音検査装置。 - 車両の室内に搭載されたスピーカの作動に起因して当該室内の内装部材が振動することによって発生する異音の有無を検査する車両検査装置の車両検査方法であって、
検査対象の車両に搭載されたスピーカが作動したときに取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から、前記内装部材の振動によるビビリ発生期間の少なくとも一部を含むことが可能な予め設定された一定時間内の音のデータを、検査対象音のデータとして取得する検査対象音取得ステップと、
前記検査対象音取得ステップの処理により前記検査対象音のデータが取得される前に、前記異音が発生しない車両に搭載されたスピーカが作動したときに予め取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から前記一定時間内の音のデータを、基準音のデータとして取得する基準音取得ステップと、
前記検査対象音取得ステップの処理により取得された前記検査対象音のデータと、前記基準音取得ステップの処理により取得された前記基準音のデータとを比較し、その比較結果に基づいて、前記異音が発生しているか否かを判定する比較判定ステップと、
を含む異音検査方法。 - 車両の室内に搭載されたスピーカの作動に起因して当該室内の内装部材が振動することによって発生する異音の有無を検査する制御を実行するコンピュータに、
検査対象の車両に搭載されたスピーカが作動したときに取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から、前記内装部材の振動によるビビリ発生期間の少なくとも一部を含むことが可能な予め設定された一定時間内の音のデータを、検査対象音のデータとして取得する検査対象音取得ステップと、
前記検査対象音取得ステップの処理により前記検査対象音のデータが取得される前に、前記異音が発生しない車両に搭載されたスピーカが作動したときに予め取得された音の時間領域のデータのうち、当該スピーカの作動時刻から前記一定時間内の音のデータを、基準音のデータとして取得する基準音取得ステップと、
前記検査対象音取得ステップの処理により取得された前記検査対象音のデータと、前記基準音取得ステップの処理により取得された前記基準音のデータとを比較し、その比較結果に基づいて、前記異音が発生しているか否かを判定する比較判定ステップと、
を含む制御処理を実行させるプログラム。
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