JP2014052275A - 音響検査装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】動作の際に動作音を発生させる、駆動源及び駆動源以外の部分から構成される被検査装置を効率よく、また正確に検査するための検査装置及び検査方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態は、被検査装置に含まれる駆動源を動作させるための電流または磁界を検出し、またこれと同期させるように被検査装置から発生する動作音を検出する。電流または磁界及び被検査装置の動作音を音響分離部の入力とし、検出した電流又は磁界を用いて、被検査装置の動作音から駆動源及び駆動源以外の部分のそれぞれから発生した動作音を分離する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の実施形態は、被検査装置に含まれる駆動源を動作させるための電流または磁界を検出し、またこれと同期させるように被検査装置から発生する動作音を検出する。電流または磁界及び被検査装置の動作音を音響分離部の入力とし、検出した電流又は磁界を用いて、被検査装置の動作音から駆動源及び駆動源以外の部分のそれぞれから発生した動作音を分離する。
【選択図】図1
Description
本発明は、検出された音響信号から所望の音の信号を分離・抽出するための音響検査装置及び方法に関する。
車両、電化製品等においては、例えばパワーシートやサンルーフなどのように、モータ、歯車などの機構部品が用いられている。これらの機構部品は、動作音として、様々な音を発し、時には不快な雑音として把握されることもある。従来は、人間の聴感によって動作音を検査していたが、このような検査は検査者の経験、主観に依存するところが大きく、必ずしも検査の客観性を担保できない。このため、検査装置を用いて動作音を検査する試みがなされてきた。
例えば特許文献1に記載の装置は、動作音の周波数をモータの回転数で正規化した値(次数)を用いることによって、異音の検出を行っている。この装置においては、動作音はモータの回転数によって正規化されるため、動作音の波形は回転数の変動の影響を受けなくなる。よってモータが加減速状態でも、動作音を分析することが可能であることが記載されている。
また、特許文献2には、振動と流体の2つの要因により騒音が発生している場合において、2つのセンサを用いて振動による騒音と流体による騒音の寄与を求める方法が記載されている。すなわち、振動音と流体音が混在した場合であったとしても、振動音と流体音の寄与率を求めることができる音源寄与解析方法が提案されている。
特許文献1に開示された検査装置は、動作音の波形を周波数で正規化して得られた次数を用い、異音の判別を行っている。しかしながら、モータ、歯車のように、複数の音源からの動作音が同時に発せられた場合、検出音において、それぞれの音源に起因する音を特定することは出来ない。これは、モータ及び歯車の双方とも動作音を生じさせるため、一方の動作音が他方の動作音に埋もれてしまい、それぞれの音を分離することができないためである。また、特許文献1に係る検査装置は、動作音の波形を周波数で正規化した次数を用いているが、モータ、歯車の双方とも回転を伴うため、次数を用いたとしてもそれぞれの音を分離することはできない。
また特許文献2に開示された方法は、流体音を検知するための音響センサに振動音が混入している場合に、振動センサとマイクロホンとの間の寄与率を求めて、振動音の除去を行っている。この方法においては、振動に起因する音源の近傍には振動センサが設けられ、流体に起因する音源の近傍にはマイクロホン等の音響センサが設けられている。
しかしながら、振動センサ、音響センサはともに物質の振動を検出するものであるため、モータと歯車のように複数の音源が近接している場合には、それぞれの音源の振動が混在して検出されてしまう。このため、モータから発せられる音と、歯車から発せられる音とを分離することは極めて困難である。特に歯車とモータとは連結されているため、振動センサ、音響センサを用いたとしても、モータ音と歯車音を正確に分離することはできない。
また一般的にモータの音圧は歯車の音圧よりも大きいため、歯車音はモータ音によってかき消されてしまう。従って、特に歯車音の検査を行うことは困難である。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、被検査装置に含まれる駆動源を駆動するための電流または磁界を検出する電気磁気センサと、被検査装置から発せられた音を検出する音響センサとを用いることにより、駆動源から生じる音の信号及び駆動源以外の部分から生じる音の信号を分離することにある。
このような目的を達成するために、本発明による音響検査装置は、被検査装置に含まれる駆動源を駆動するための電流または磁界を検出し、電気磁気信号を出力する電気磁気センサと、前記被検査装置から発せられた音を検出し、検出音信号を出力する音響センサと、前記電気磁気信号に基づき、前記駆動源から生じる音の信号及び前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号を、前記検出音信号から分離する音響分離部とを有する。
更に本発明による音響検査装置においては、前記音響分離部は適応フィルタと加算器を備え、前記電気磁気信号は前記適応フィルタに入力され、前記検出音信号及び前記適応フィルタの出力は前記加算器に入力され、前記適応フィルタは、前記検出音信号と前記適応フィルタの出力との差が最小となるようにフィルタ係数を最適化し、前記適応フィルタの出力を前記駆動源から生じる音の信号として出力し、前記差信号を前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号として出力する。
更に本発明による音響検査装置においては、前記電気磁気センサは前記駆動源に供給される電流を検出する電流センサである。更に本発明による音響検査装置においては、前記駆動源はモータを含み、前記駆動源以外の部分は前記モータの駆動力を伝達する伝達機構を含む。更に本発明による音響検査装置は、前記音響分離部によって分離された、前記駆動源から生じる音の信号または前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号の良否を判定する解析判定部を備える。
本発明によれば、被検査装置の動作音を、駆動源から生じる音の信号と、駆動源以外の部分から生じる音の信号に分離・抽出することが可能となる。その結果、駆動源以外の部分から生じる音が音圧の差により駆動源から生じる音にかき消されているような場合において、正確に駆動音以外の部分から生じる音の信号を抽出できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る音響検査装置1、被検査装置2、電源3のブロック図である。音響検査装置1は、被検査装置から発せられた音から所望の音源の音を分離及び抽出すると共に、分離された音の良否を判定するための装置である。被検査装置2は例えば車両用のパワーシート、サンルーフ、電動ステアリング等のように、駆動源であるモータ、歯車等の伝達機構を備えている。被検査装置2は、電力による駆動源を備えているものであれば、その種類を問わない。電源3は被検査装置2のモータ21(駆動源)へ供給される電流を生成するためのバッテリ、駆動回路等により構成される。
図1は、本発明の第1実施形態に係る音響検査装置1、被検査装置2、電源3のブロック図である。音響検査装置1は、被検査装置から発せられた音から所望の音源の音を分離及び抽出すると共に、分離された音の良否を判定するための装置である。被検査装置2は例えば車両用のパワーシート、サンルーフ、電動ステアリング等のように、駆動源であるモータ、歯車等の伝達機構を備えている。被検査装置2は、電力による駆動源を備えているものであれば、その種類を問わない。電源3は被検査装置2のモータ21(駆動源)へ供給される電流を生成するためのバッテリ、駆動回路等により構成される。
音響検査装置1は、電流センサ4、アンプ5、マイクロホン6、アンプ7、音響分離部8、解析判定部9を備えて構成されている。電流センサ4は電源3と被検査装置2とを結ぶ電線に設けられており、被検査装置2に供給される電流を検出し、検出電流信号を出力可能である。アンプ5はトランジスタ、オペアンプ等から構成される電圧増幅回路であって、電流センサ4からの検出電流信号を増幅可能である。アンプ5は音響分離部8に接続されており、増幅後の検出電流信号を音響分離部8に出力する。
マイクロホン6は被検査装置2の近傍に設けられており、被検査装置2から発せられた音を検出し、検出音信号を出力可能である。被検査装置2から発せられる音は、モータ21から発せられるモータ音及び歯車22から発せられる歯車音が含まれている。これらのモータ音及び歯車音は合成され、マイクロホン6に到達する。マイクロホン6は合成された音を検出し、電気信号で表された検出音信号を出力する。
マイクロホン6はコンデンサ型、リボン型、コイル型を問わない。また、マイクロホン6の指向性も無指向性、単一指向性のいずれであっても良い。但し、被検査装置2以外の周辺雑音を検出しないためには、嗜好性を備えたマイクロホン6を使用することが望ましい。更に、被検査装置2の稼動音を幅広い周波数帯で原音を忠実に感知できるものが望ましい。しかしながら、本発明のマイクロホン6はあくまで被検査装置2からの稼動音を感知するための手段であって、本発明はマイクロホンに使用される方式や種類によって限定されない。
アンプ7はアンプ5と同様の電圧増幅回路であって、マイクロホン6からの検出音信号を増幅可能である。図1において、アンプ5、7を設けたが、アンプ5を電流センサ4に含め、アンプ7をマイクロホン6に含めても良い。また、アンプ5,7を音響分離部8の内部に設けても良い。
音響分離部8はパーソナルコンピュータ等により構成されており、電流センサ4からの電流信号に基づき、マイクロホン6からの検出音信号において、モータ21によるモータ音信号と、モータ21以外の部分、例えば歯車22による歯車音信号とを分離する機能を有している。解析判定部9も同様にパーソナルコンピュータ等により構成され、音響分離部8によって分離されたモータ音信号及び歯車音信号の良否を判定する機能を有している。判定結果は、図示されていないディスプレイ、記憶媒体等に出力される。
図2は被検査装置2の一例としての車両用パワーシートのブロック図である。この被検査装置2は、駆動源としてのモータ21と、モータ21の駆動力の伝達機構としての歯車22と、自動車の座席としての座席部23と、座先部23が移動する軌条としてのレール24と、座席部23とレール24を連結する連結部25を含んでいる。モータ21は本実施形態においては直流モータであるが、交流モータであっても良い。モータ21は電源3と接続され、電源3から電力の供給を受け、供給された電力により駆動力を発生させる。歯車22はモータ21と連結され、モータ21から発生した駆動力を連結部25に伝達する。歯車22から駆動力の伝達を受けた連結部25はレール24上に沿って座席部23を移動させる。
モータ21が動作すると、モータ21に固有のモータ音が発生し、同時に歯車22の動作に伴い、歯車音が発生する。これらのモータ音及び歯車音は同時に被検査装置2から発せられ、マイクロホン6によって一つの検出音信号として検出される。
図3は電流センサ4の一例の構成図である。一般に、同図に示された電流センサ4はいわゆる磁気平衡型であって、直流電流及び交流電流の両方の電流信号を感知でき、更に良好な応答性と直線性故に高精度な感知が可能である。なお、本発明は、時期平衡型に限定されることは無く、シャント抵抗型、カレントトランス型、磁気比例型等、いかなる方式の電流センサも用いることができる。
図3に示すように電流センサ4は、磁性芯41と、巻線42と、ホール素子43と、定電流源44と、増幅器45とで構成されている。
磁性芯41は、電源3からモータ21に供給される電流を伝送する電線46を囲むように構成されており、またその一部が閉じておらず隙間を有している。電線46に電流が流れると、その電流の大きさに応じた磁界が磁性芯41に発生する。巻線42は磁性芯41の一部に巻かれている。巻線42の一端から電流が流れると、電線46に電流が流れる際に磁性芯41に生じる磁界とは反対の向きの磁界を発生するように構成されている。巻線42の他端は電流センサ4の出力となる。ホール素子43は磁性芯41の隙間に設けられ、磁性芯41からの磁界の大きさに応じてホール効果による電圧を出力する。定電流源44はホール素子43と接続され、ホール素子44に電流を供給する。増幅器45はホール素子及び巻線42の一端と接続される。増幅器45はホール素子43の出力電圧を増幅する。増幅後の信号は電流に変換され、巻線42の一端から電流センサ4外部へ電流信号として出力される。
巻線42は、電線46による磁性芯41の内部に発生する磁界とは反対の向きの磁界を発生するように構成されている。これにより、磁性芯41の隙間の磁界は常に打ち消しあうようになり、磁性芯41の内部に強い磁界が発生した際でも磁性芯41が飽和して直進性が損なわれずに済む。
図4は音響分離部8の構成を示すブロック図である。音響分離部8は、A/D変換器81、82と、適応フィルタ83と、加算器84とを含む。A/D変換器81は、アナログ信号である検出音信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器82はアナログ信号である電流信号をデジタル信号に変換する。加算器84はA/D変換器81及び適応フィルタ83の出力と接続され、検出音信号と最適化された電流信号の差分を出力する。適応フィルタ83は、最適化アルゴリズムに従ってフィルタ係数を最適化するフィルタである。この適応フィルタ83には、参照信号としての電流信号が入力され、所望信号としての検出音信号とフィルタ出力との差分が入力される。なお、図4においては検出音信号用のA/D変換器81と電流信号用のA/D変換器82を設けたが、本発明はこれに限定されない。例えばひとつのA/D変換器を用いて検出音信号及び電流信号を変換しても良く、またA/D変換器を音響分離部8の外部に設けても良い。
図5は適応フィルタ83の構成を示すブロック図である。適応フィルタ83は係数可変フィルタ831と適応アルゴリズム832を含む。係数可変フィルタ831は、適応フィルタ83の可変のフィルタ係数を有し、適応フィルタ83に入力された信号に対する可変の伝達関数を示す。適応アルゴリズム832は入力信号を最適化するための手段を示すアルゴリズムである。適応フィルタ83に入力された電流信号は係数可変フィルタ831を通して加算器84に出力される。加算器84は検出音信号と適応フィルタ83の出力信号の差分を計算する。この差分をエラー信号と呼ぶ。エラー信号は適応アルゴリズム832に帰還される。適応フィルタ83は係数可変フィルタ831、適応アルゴリズム832を用いて、エラー信号が最小になるように、フィルタ係数を逐次変更することができる。
適応アルゴリズム832は、エラー信号を可能な限り小さくし、係数可変フィルタ831に補正されたフィルタ係数を提供する。適応フィルタのためのアルゴリズムには最小二乗平均、最急降下、漸化的最小二乗など数多くの方式が知られている。本発明においてはいかなる適応フィルタのためのアルゴリズムも用いることができる。ただし、アルゴリズムによって収束速度と計算量は異なり、収束速度と計算量はトレードオフの関係にある。従って本発明を実施するシステムの性能及び環境に即したアルゴリズムを選択することが望ましい。
係数可変フィルタ831は適応アルゴリズム832からの出力に基づき、適応フィルタ83のフィルタ係数を修正することができる。係数可変フィルタ831は適応アルゴリズム832によって計算された結果である補正されたフィルタ係数に基づいて、エラー信号が最小になるようにそのフィルタ係数を変更する。電流信号は最適化されたフィルタ係数によって変換され出力される。つまり電流信号が適応フィルタ83に入力されると、適応フィルタ83は入力された電流信号を検出音信号に最も近い値になるように変換し、出力する。
このように、適応フィルタ83によって最適化された電流信号はモータ音信号として出力される。また、最適化された電流信号と検出音信号との差分、つまりエラー信号は歯車音信号として出力される。すなわち、音響分離部8は、モータ音信号及び歯車音信号を分離し、出力することができる。音響分離部8から出力されたモータ音信号及び歯車音信号は解析判定部9に入力される。
図6は解析判定部9の構成を示すブロック図である。解析判定部9は、抽出信号解析部91と、異常有無判定部92と、記憶媒体93と、表示装置94とを含む。抽出信号解析部91は入力されたモータ音信号、歯車音信号を時間軸から周波数軸へスペクトル変換する。異常有無判定部92は抽出信号解析部91と接続され、モータ音信号、歯車音信号のスペクトル特性に基づいて異常音の有無を判定する。記憶媒体93は異常有無判定部92と接続され、モータ21、歯車22が正常であるときの動作音のスペクトル特性をデータとして格納している。表示装置94は異常有無判定部92と接続され、異常有無判定部92が判定した結果を表示する。
抽出信号解析部91は、入力信号でありまた時間の関数であるモータ音信号及び歯車音信号を周波数領域に変換する周波数分析器(図示せず)を含む。周波数分析器は周波数分析のために高速フーリエ変換等、任意のアルゴリズムを用いることができる。抽出信号解析部91はモータ音信号、歯車音信号を周波数成分の大きさを表すスペクトルに変換し、これらモータ音信号、歯車音信号のスペクトル特性を異常有無判定部に出力する。
異常有無判定部92は、異常有無判定部92の入力信号でありまた周波数の関数であるモータ音信号、歯車音信号のスペクトル特性に基づきモータ21と歯車22に異常が無いかを判定する。判定の際には、正常なモータ、歯車の動作音のスペクトル特性に関するデータを提供するよう記憶媒体93に要求することができる。
記憶媒体93は正常なモータ、歯車の動作音のスペクトルに関するデータを格納している。また記憶媒体93は異常有無判定部92からの要求に対して、格納されているデータを異常有無判定部92に提供することができる。更に記憶媒体93は異常有無判定部92が判定した判定結果のデータを格納することができる。記憶媒体93はデータを格納するための手段であり、記憶方式及び装置数を問わない。例えば、記憶媒体は不揮発性であることが望ましいが、磁気記憶式、相変化式、強誘電体型などいかなる方式の記憶媒体でもよい。また、正常な動作音を示すデータを格納するための記憶媒体と、異常有無判定部92が判定したデータを格納するための記憶媒体とをそれぞれ異ならせても良い。
次にフローチャートを用いて本発明における実施の形態について説明する。図7は本発明の音響検査方法を示すフローチャートである。
まず、電源3を用いて被検査装置2を動作させる(ステップS710)。被検査装置2を動作させることで、被検査装置2に含まれる駆動源としてのモータ21と伝達機構としての歯車22が動作音を発生させる。このとき、被検査装置2から発生する動作音の音圧はモータ音の音圧のほうが大きく、逆に歯車音はモータ音に埋もれてかき消されている。
被検査装置2の近傍に設置されたマイクロホン6は、被検査装置2からの動作音を検出する。マイクロホン6は検出した動作音を電気信号に変換する。マイクロホン6が変換した信号は検出音信号となる。マイクロホン6は、検出音信号をアンプ7へ出力する(ステップS720)。
アンプ7は、ステップS720において検出した検出音信号を増幅する。アンプ7は、増幅した検出音信号をA/D変換器81に出力する(ステップS730)。
A/D変換器81は、ステップS730において増幅した検出音信号をA/D変換する(ステップS740)。
一方、ステップS720と同期して電流センサ4は、電源3から被検査装置2に供給される電流値を検出する。電流センサ4は、検出した電流値である電流信号をアンプ5へ出力する(ステップS722)。ステップS720においてマイクロホン6が検出音信号を、ステップS722において電流センサ5が電流値である電流信号を、それぞれ検出する。
アンプ5は、ステップS722において計測した電流信号を増幅する。アンプ5は、増幅した電流信号をA/D変換部82に出力する(ステップS732)。
A/D変換器82は、ステップS732において増幅した電流信号をA/D変換する(ステップS742)。
音響分離部8の適応フィルタ83は、ステップS742において増幅した電流信号を最適化する。すなわち、音響分離部8は、最適化した電流信号に基づいて、ステップS720において検出した検出音信号からモータの動作に起因するモータ音信号と歯車の動作に起因する歯車音信号とに分離する(ステップS750)。
解析判定部9は、ステップS750において分離したモータ音信号と歯車音信号を解析する。解析判定部9は、解析結果に基づいて被検査装置2に不良が無いか判定する(ステップS760)。このように、モータ音信号と歯車音信号とを分離することによって、それぞれの音の良否を正確に判断することが可能となる。
図8は、ステップS750における信号の分離の詳細な手順を示すフローチャートである。
A/D変換器82は、ステップS742においてA/D変換した電流信号を適応フィルタ83に入力する(ステップS751)。
適応フィルタ83は、電流信号を最適化する。具体的には適応フィルタ83は、適応フィルタ83に入力された電流信号を係数可変フィルタ831と適応アルゴリズム832を用いて、入力された電流信号とマイクロホン6による検出音信号との差分が最小になるように変換する(ステップS752)。
電流信号はモータ音と相関があり、またモータ音は歯車音に比べ音圧が大きい。従って歯車音はモータ音によってかき消されている。適応フィルタ83によって検出音信号との差分が最小になるように最適化された電流信号は検出音信号から歯車音が除去されたモータ音の信号に相当する。よって電流信号を適応フィルタ83にて最適化することによりモータ音を抽出することが可能となる。
適応フィルタ83は、最適化した電流信号、すなわちモータ音信号を加算器84に入力する(ステップS753)。同様にモータ音と歯車音の合成音の信号、すなわち検出音信号を加算器84に入力する(ステップS754)。
加算器84は、モータ音信号と検出音信号の差分を算出する(ステップS755)。上述したように、差分を示す信号であるエラー信号は、モータ音と歯車音の合成音である検出音信号からモータ音の信号を差し引いたものである。すなわち、エラー信号は歯車音を示す歯車音信号となる。従って、検出音信号から最適化された電流信号の差分を取ることにより、モータ音によってかき消されていた歯車音を抽出することが可能となる。
以上の手順により、モータ音と歯車音とが合成された信号である検出音信号から、モータ音信号、歯車音信号それぞれを分離及び抽出することが可能となる。以上図8に示す手順によりモータ音、歯車音が抽出された後に、本発明の実施形態は図7のフローチャートのステップS760に進む。
以下にステップS760における信号の解析及び検査について更に詳しいフローチャートを用いて説明する。図9は、ステップS760の詳細な手順を示すフローチャートである。
音響分離部8は、抽出したモータ音信号及び歯車音信号を解析判定部9の抽出信号解析部91に入力する(ステップS761)。
抽出信号解析部91は、時間の関数であるモータ音信号及び歯車音信号を周波数領域にスペクトル変換する(ステップS762)。この手順により、モータ音のスペクトル特性と共に、聴感上は埋もれていて感知できなかった歯車音のスペクトル特性を得ることができる。
抽出信号解析部91は、スペクトル変換されたモータ音及び歯車音のスペクトル特性を示すデータを異常有無判定部92に入力する(ステップS763)。
異常有無判定部92は、正常なモータ音、歯車音を示すスペクトル特性のデータを動作音記憶媒体93に要求する。記憶媒体93は、記憶媒体93にあらかじめ格納されていた正常なモータ音、歯車音を示すスペクトル特性のデータを異常有無判定部92に提供する(ステップS764)。
異常有無判定部92は、抽出したモータ音及び歯車音のスペクトル特性を、記憶媒体93から提供された正常なモータ音、歯車音を示すスペクトル特性と比較する(ステップS765)。この際、異常の有無の判定は、例えば定量的にある閾値を設けてそれを超えると異常があると自動的に判定してもよく、また、正常時のデータからの逸脱の程度から総合的に判断しても良い。更に、分離されたモータ音と歯車音のどちらか片方のみを評価して判定しても良く、両方のデータを評価して判定しても良い。
表示部94は、ステップS765における比較、判定の結果を出力する(ステップS766)。
以上の手順により、モータ音と歯車音それぞれのスペクトル特性から、モータ及び歯車の不良の有無が判定される。以上で被検査装置2の検査が終了する。
以下に本発明による検査装置1による検査結果について図を用いて説明する。図10aはマイクロホン6による検出音信号、すなわちモータ音と歯車音の合成音のスペクトル特性を示す。また図10bは電流センサ4による電流信号のスペクトル特性を示す。本発明による検査装置1は、これら検出音信号、電流信号のスペクトル特性に基づいて、検出音信号をモータ音信号と歯車音信号に分離及び抽出する。適応フィルタ83は図10bに示す電流信号を入力として、エラー信号が最小になるように電流信号を最適化して出力する。図10cに適応フィルタ83の入力信号及び出力信号を示す。図中、破線は入力信号(電流信号)を示し、実線は最適化後の出力信号、すなわちモータ音信号を示している。最適化のために用いられるアルゴリズムにより、収束速度及び計算量が異なるが、本発明は最適化のためのいかなる適応アルゴリズムによっても実施が可能である。使用するアルゴリズムはシステムの性能や環境に応じて適宜適したものを選択すればよい。
前述の通り、適応フィルタによって最適化された電流信号は検出音信号から抽出したモータ音を表すスペクトル特性である。図11は被測定装置2の動作音である検出音信号のスペクトル特性と、抽出したモータ音信号のスペクトル特性との比較を示す。図中、破線は検出音信号のスペクトル特性であり、実線は抽出したモータ音信号のスペクトル特性である。図11を参照すると、音圧が最も高いのは700Hzから2000Hzまでに観測された三つのピークの周波数である。この三つのピークにおいて検出音信号とモータ音の信号はほぼ重なっており、この周波数帯がモータ音の主成分であることを示している。このことから、被検査装置2の動作音は、モータ21に起因する動作音のほうが大きいことが確認できる。
図11に示した検出音信号と抽出したモータ音信号との差分がエラー信号であり、エラー信号は歯車音のスペクトル特性となる。図12は被測定装置2の動作音を示す検出音信号のスペクトル特性と、抽出した歯車音信号のスペクトル特性との比較を示す。図中破線は検出音信号のスペクトル特性であり、実線は抽出した歯車音信号のスペクトル特性である。図12を参照すると、700Hzから2000Hzまでの間において、実線で示された歯車音信号は破線で示された検出音信号とは異なるスペクトルを有している。従来は、この歯車音はモータ音によってかき消されてしまい、歯車音を抽出することが困難であった。これに対して、本実施形態によれば、検出音信号に埋もれた歯車音を抽出することが可能となる。すなわち、これにより今までモータ音にかき消されるため評価の極めて難しかった歯車の周波数帯の評価ができるようになる。その結果、700Hzから2000Hzの周波数帯に現れる異常音が歯車から発生した場合でも、歯車の異常を検出することが可能となる。また、図12は、2000Hz以上の周波数帯において、モータ音の音圧に比べ歯車音の音圧が大きくなっていることを示している。これは歯車の回転摺動が原因であり、この歯車の回転摺動に起因する動作音も明確に分離されていることがわかる。よって、本発明による検査装置1は歯車の摺動部に原因がある異常も検出することが可能になり、異常がある場合その異常の原因箇所を特定できるようになる。
なお、本実施形態では被検査装置2に供給される電流値を電流信号とする検査装置及び検査方法を説明したが、本発明はこれによって限定されない。例えば電流値の代わりに被検査装置2の周辺の磁界の変動を電流信号の代わりの信号として計測しても良い。
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係る音響検査装置1、被検査装置2、電源3のブロック図である。第2実施形態は、被検査装置2のモータ21の近傍に設けられた磁気センサ400を備えている。
図13は、第2実施形態に係る音響検査装置1、被検査装置2、電源3のブロック図である。第2実施形態は、被検査装置2のモータ21の近傍に設けられた磁気センサ400を備えている。
磁気センサ400はコイル、ホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子等からなり、モータ21から発せられた磁界を検出し、磁界信号を出力する。モータ21から発せられる磁界の大きさはモータ21に供給される電流量に比例している。このため、モータ21の磁界を検出することにより、モータ21に供給される電流を検出するのと同様の効果を得ることができる。磁気センサ400から出力された磁界信号は、アンプ5によって増幅された後、音響分離部8に入力される。その後は第1実施形態と同様に、音響分離部8は、検出した磁界信号とマイクロホン6からの検出音信号とを用いて、検出音信号をモータ音信号と歯車音とに分離することが可能である。そして解析判定部9は分離したモータ音、歯車音を解析し、異常の有無を判定する。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
本発明の実施における、信号の分離及び抽出、更には抽出された信号の周波数解析及び不良の判定にはパーソナルコンピュータなどの電子計算機が用いられる。電子計算機はCPU、メモリ、ハードディスク等で構成されており、電子計算機はこれらの構成要素を用いて本発明の実施に必要な演算をすることができることは当業者には自明である。
本発明による検査装置及び検査方法は、パワーシートやサンルーフなどモータ、歯車などの機構部品が用いられている製品の検査をより効率的に実施できるようにする。つまり、従来では人間の聴感及び経験に頼り異常の原因を推測していたが、本発明による検査装置及び検査方法は、モータのような駆動源の動作音と歯車のような伝達機構の動作音とを分離し、異常の要因別に評価できるようにする。これにより、従来のような、異常の発見、異常個所の推定、推定箇所の修正、再検査、の手順を繰り返す必要が無くなる。代わりにモータ及び歯車それぞれに適した改善策を適応でき、効率的に異常の原因を究明できるようになる。
また、従来では歯車などの伝達機構からの動作音がモータのような駆動源からの動作音に埋もれてしまうため、伝達機構からの異音の評価が難しかった。本発明は、埋もれていた伝達機構からの動作音を抽出することを可能にする。その結果、従来であれば聴覚によっては検出することが困難であった歯車の異常音を精度良く検出できるようになる。また、本発明は聴感上では検出が難しい異音を、スペクトル特性により定量的に評価する。
1 検査装置
2 被検査装置
3 電源
4 電流センサ
5 アンプ
6 マイクロホン
7 アンプ
8 音響分離部
9 解析判定部
21 モータ
22 歯車
41 磁性芯
42 巻線
43 ホール素子
44 定電流源
45 増幅器
81、82 A/D変換器
83 適応フィルタ
84 加算器
91 抽出信号解析部
92 異常有無判定部
93 記憶媒体
94 表示部
400 磁気センサ
831 係数可変フィルタ
832 適応アルゴリズム
2 被検査装置
3 電源
4 電流センサ
5 アンプ
6 マイクロホン
7 アンプ
8 音響分離部
9 解析判定部
21 モータ
22 歯車
41 磁性芯
42 巻線
43 ホール素子
44 定電流源
45 増幅器
81、82 A/D変換器
83 適応フィルタ
84 加算器
91 抽出信号解析部
92 異常有無判定部
93 記憶媒体
94 表示部
400 磁気センサ
831 係数可変フィルタ
832 適応アルゴリズム
Claims (10)
- 被検査装置に含まれる駆動源を駆動するための電流または磁界を検出し、電気磁気信号を出力する電気磁気センサと、
前記被検査装置から発せられた音を検出し、検出音信号を出力する音響センサと、
前記電気磁気信号に基づき、前記駆動源から生じる音の信号及び前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号を、前記検出音信号から分離する音響分離部とを有する音響検査装置。 - 前記音響分離部は適応フィルタと加算器を備え、
前記電気磁気信号は前記適応フィルタに入力され、前記検出音信号及び前記適応フィルタの出力は前記加算器に入力され、
前記適応フィルタは、前記検出音信号と前記適応フィルタの出力との差信号が最小となるようにフィルタ係数を最適化し、
前記音響分離部は、前記適応フィルタの出力を前記駆動源から生じる音の信号として出力し、前記差信号を前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号として出力する請求項1に記載の音響検査装置。 - 前記電気磁気センサは前記駆動源に供給される電流を検出する電流センサである、請求項1または2のいずれか1項に記載の音響検査装置。
- 前記駆動源はモータを含み、前記駆動源以外の部分は前記モータの駆動力を伝達する伝達機構を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の音響検査装置。
- 前記音響分離部によって分離された、前記駆動源から生じる音の信号または前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号の良否を判定する解析判定部を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の音響検査装置。
- 電気磁気センサによって、被検査装置に含まれる駆動源を駆動するための電流または磁界を検出し、検出電気磁気信号を出力するステップと、
音響センサによって、前記被検査装置から発せられた音を検出し、検出音信号を出力するステップと、
前記電気磁気信号に基づき、前記駆動源から生じる音の信号及び前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号を、前記検出音信号から分離するステップとを有する音響検査方法。 - 前記分離ステップは、
適応フィルタに前記電気磁気信号を入力するステップと、
加算器に前記検出音信号及び前記適応フィルタの出力を入力するステップと、
前記適応フィルタによって、前記検出音信号と前記適応フィルタの出力との差信号が最小となるようにフィルタ係数を最適化するステップと、
前記適応フィルタの出力を前記駆動源から生じる音の信号として出力し、前記差信号を前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号として出力するステップとを更に備える請求項6に記載の音響検査方法。 - 前記電気磁気センサは前記駆動源に供給される電流を検出する電流センサである、請求項6または7のいずれか1項に記載の音響検査方法。
- 前記駆動源はモータを含み、前記駆動源以外の部分は前記モータの駆動力を伝達する伝達機構を含む、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の音響検査方法。
- 前記音響分離ステップによって分離された、前記駆動源から生じる音の信号または前記被検査装置における前記駆動源以外の部分から生じる音の信号の良否を判定するステップを備える、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の音響検査方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012196730A JP2014052275A (ja) | 2012-09-07 | 2012-09-07 | 音響検査装置及び方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2014052275A true JP2014052275A (ja) | 2014-03-20 |
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ID=50610868
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JP2012196730A Pending JP2014052275A (ja) | 2012-09-07 | 2012-09-07 | 音響検査装置及び方法 |
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JP (1) | JP2014052275A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018198315A1 (ja) * | 2017-04-28 | 2018-11-01 | 株式会社オプティム | コンピュータシステム、設備異常音判定方法及びプログラム |
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-
2012
- 2012-09-07 JP JP2012196730A patent/JP2014052275A/ja active Pending
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