本発明は、差動用電動機と走行用電動機とが異なる軸上に配置された車両用ハイブリッド駆動装置に関するものである。
エンジンからの動力を差動用電動機および出力部材に分配する差動機構を有し、その差動用電動機の運転状態が制御されることにより変速比を制御する電気式変速部と、前記差動用電動機と同軸上に(同心に)配置されて上記出力部材に連結された走行用電動機とを備えた車両用ハイブリッド駆動装置が知られている。たとえば、特許文献1に記載されたものがそれである。
これに対し、上記電気式変速部と、その電気式変速部の差動用電動機の出力軸に平行な出力軸を有してその差動用電動機と異なる軸上に配置された走行用電動機とを備え、電気式変速部の出力部材と走行用電動機の出力軸に設けられた出力歯車とをそれぞれ介して駆動輪を駆動する車両用ハイブリッド駆動装置が知られている。たとえば、特許文献2に記載されたものがそれである。このように電気式変速部の差動用電動機と走行用電動機とが異なる軸上に配置された型式の車両用ハイブリッド駆動装置は、特許文献1のものと比較して各回転体を小径化することができると共に軸長を短くすることができる。
特開平9−226392号公報
特開2001−260669号公報
ところで、上記特許文献2に示す従来の車両用ハイブリッド駆動装置においては、電気式変速部の出力部材と駆動輪との間に設けられた動力伝達軸であるカウンタシャフトに対して、走行用電動機の出力軸がその出力軸に設けられた出力歯車を含む所定のギヤ対を介して連結されている。そのため、走行用電動機の出力が無い或いは小さいときは、上記ギヤ対の各歯車同士が相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となり、エンジン等の回転変動が上記ギヤ対の噛合歯に伝達されることにより、それら噛合歯の歯面同士が互いに打ち合うことで歯打ち音が発生するという問題があった。しかも、上記特許文献2に示す従来の車両用ハイブリッド駆動装置は、特許文献1のものと比較してギヤ類等の各回転体が小径化されてそれら回転体の回転慣性が減少しているため、上記歯打ち音が比較的に発生し易いという問題があった。
これに対して、上記歯打ち音が発生する条件となった場合にはエンジン回転速度を上げることで歯打ち音の発生を回避することが考えられる。しかし、これによると、エンジンの動作点が予め設定された最適燃費曲線に沿うようにそのエンジンを動作させることができず、車両燃費が低下するという欠点があった。
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、走行用電動機の出力が無いときにおいて歯打ち音が発生するのを抑制することができる車両用ハイブリッド駆動装置を提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a-1) エンジンからの動力を差動用電動機および出力部材に分配する差動機構を有し、その差動用電動機の運転状態が制御されることにより変速比を制御する電気式変速部と、(a-2) 前記差動用電動機の出力軸に平行な出力軸を有する走行用電動機とを備え、(a-3) その走行用電動機の出力軸に設けられた出力歯車を介して駆動輪を駆動する車両用ハイブリッド駆動装置であって、(b) 前記電気式変速部の出力を前記駆動輪へ伝達するためにその出力を前記走行用電動機の出力軸に伝動する伝動装置を含み、(c) 前記走行用電動機の出力軸は、その走行用電動機のロータが固設されたロータシャフトと、そのロータシャフトにスプライン嵌合により同心に連結され、前記出力歯車が固設された連結軸とにより構成され、(d) 前記伝動装置は、前記電気式変速部の出力をそのロータシャフトに伝動するものであることにある。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記伝動装置は、前記電気式変速部の出力部材および前記走行用電動機の出力軸にそれぞれ固設された一対の伝動回転体と、その一対の伝動回転体に巻き掛けられた伝動部材とにより構成されることにある。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記伝動装置は、前記電気式変速部の出力部材に固設されたドライブギヤと、前記走行用電動機の出力軸に固設されたドリブンギヤと、そのドライブギヤとドリブンギヤとの間に設けられてそれらにそれぞれ噛み合わされたアイドラギヤとにより構成されることにある。
請求項1にかかる発明の車両用ハイブリッド駆動装置によれば、電気式変速部の出力を駆動輪へ伝達するためにその出力を走行用電動機の出力軸に伝動する伝動装置を含むことから、電気式変速部の出力部材と駆動輪との間の動力伝達経路においてその出力部材と走行用電動機の出力軸とが伝動装置を介して直列に連結され、走行用電動機の出力が無いときであっても電気式変速部の出力が走行用電動機の出力軸に伝達され、電気式変速部および走行用電動機の出力を駆動輪へ伝達するためにその走行用電動機の出力軸に設けられた出力歯車を含むギヤ対が常に動力伝達状態とされるので、上記ギヤ対の各歯車同士が相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となることが抑制され、走行用電動機の出力が無いときにエンジン等の回転変動が上記ギヤ対の噛合歯に伝達されることで歯打ち音が発生するのを抑制することができる。すなわち、動力伝達のない中立状態で回転するギヤ対を減らすことで歯打ち音を低減することができる。そのため、上記歯打ち音が発生しようとする場合においてエンジン回転速度を上げることで歯打ち音の発生を回避するという対策が不要であり、エンジンの動作点が予め設定された最適燃費曲線に沿うようにそのエンジンを動作させることができるので、車両燃費が向上する。また、前記走行用電動機の出力軸は、その走行用電動機のロータが固設されたロータシャフトと、そのロータシャフトにスプライン嵌合により同心に連結され、前記出力歯車が固設された連結軸とにより構成され、前記伝動装置は、電気式変速部の出力を上記ロータシャフトに伝動するものであることから、走行用電動機の出力が無いときであっても電気式変速部の出力が走行用電動機のロータシャフトに伝達され、ロータシャフトと連結軸とのスプライン嵌合部が常に動力伝達状態とされるので、上記スプライン嵌合部がフローティング状態となることが抑制され、走行用電動機の出力が無いときにエンジン等の回転変動が上記スプライン嵌合部の噛合歯に伝達されることで歯打ち音が発生するのを抑制することができる。
また、請求項2にかかる発明の車両用ハイブリッド駆動装置によれば、前記伝動装置は、電気式変速部の出力部材と走行用電動機の出力軸とにそれぞれ固設された一対の伝動回転体と、その一対の伝動回転体に巻き掛けられた伝動部材とにより構成されることから、走行用電動機の出力が無いときであっても電気式変速部の出力が伝動部材を介して走行用電動機の出力軸に伝達され、走行用電動機の出力軸に設けられた出力歯車を含むギヤ対が常に動力伝達状態とされるので、上記ギヤ対の各歯車同士が相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となることが抑制され、走行用電動機の出力が無いときにエンジン等の回転変動が上記ギヤ対の噛合歯に伝達されることで歯打ち音が発生するのを抑制することができる。
また、請求項3にかかる発明の車両用ハイブリッド駆動装置によれば、前記伝動装置は、前記電気式変速部の出力部材に固設されたドライブギヤと、前記走行用電動機の出力軸に固設されたドリブンギヤと、そのドライブギヤとドリブンギヤとの間に設けられてそれらにそれぞれ噛み合わされたアイドラギヤとにより構成されることから、走行用電動機の出力が無いときであっても電気式変速部の出力がアイドラギヤ等を介して走行用電動機の出力軸に伝達され、走行用電動機の出力軸に設けられた出力歯車を含むギヤ対が常に動力伝達状態とされるので、上記ギヤ対の各歯車同士が相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となることが抑制され、走行用電動機の出力が無いときにエンジン等の回転変動が上記ギヤ対の噛合歯に伝達されることで発生する歯打ち音を低減することができる。
本発明の一実施例の車両用ハイブリッド駆動装置の構成を説明する骨子図である。
差動機構における各回転要素の回転速度の相対的関係を示す共線図である。
図1の車両用ハイブリッド駆動装置のうち、第1電動機、第2電動機、およびカウンタシャフトを同一の平面内に示す断面図である。
横軸にエンジン回転速度、縦軸に駆動系で生じる振動の大きさの度合いを表す入力軸の回転変動量を示す二次元座標内において、車両用ハイブリッド駆動装置の振動伝達特性を示した図である。
本発明の他の実施例の車両用ハイブリッド駆動装置のうち、第1電動機、第2電動機、およびカウンタシャフトを同一の平面内に示す断面図である。
本発明の他の実施例の車両用ハイブリッド駆動装置のうち、第1電動機、第2電動機、およびカウンタシャフトを同一の平面内に示す断面図である。
従来の車両用ハイブリッド駆動装置の構成を説明する骨子図である。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の車両用ハイブリッド駆動装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用ハイブリッド駆動装置10は、車両の主駆動力源としてのエンジン12と、そのエンジン12から入力軸13を介して伝達された動力を第1電動機MG1および出力部材14に分配する差動機構16を有し、その第1電動機MG1の運転状態が制御されることにより変速比を制御する電気式変速部18と、第1電動機MG1の第1出力軸20に平行な第2出力軸22を有する第2電動機MG2と、電気式変速部18の出力を駆動輪24へ伝達するためにその出力を第2電動機MG2の第2出力軸22に伝動する伝動装置26と、第2出力軸22とそれに平行なカウンタシャフト28との間に設けられた第1減速歯車対30、およびカウンタシャフト28とデフケース32との間に設けられた第2減速歯車対34を有する減速歯車装置36と、その減速歯車装置36を介してデフケース32に伝達されたトルクを、左右一対の車軸38を介して左右一対の駆動輪24にそれぞれ伝達する差動歯車装置40とを備えている。この車両用ハイブリッド駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両に好適に用いられるものである。上記第1電動機MG1は本発明における差動用電動機に相当し、また、上記第2電動機MG2は本発明における走行用電動機に相当するものである。また、上記第1出力軸20は本発明における差動用電動機の出力軸に相当し、また、上記第2出力軸22は本発明における走行用電動機の出力軸に相当するものである。
エンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関であり、マイクロコンピュータを主体とする図示しない電子制御装置によって吸入空気量、燃料供給量、および点火時期等が電気的に制御されることで、エンジン回転速度およびエンジントルクが変化させられるように構成されている。上記電子制御装置は、例えばエンジン回転速度とエンジントルクとで構成される二次元座標内において車両の運転性とエンジン12の燃費性とが両立するように予め実験的に求められて記憶された最適燃費曲線に沿うようにエンジン12を作動させつつ、目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度とエンジントルクとなるように、エンジン12を制御すると共に第1電動機MG1を制御する。
第1電動機MG1および第2電動機MG2は、電動機(モータ)としての機能および発電機(ジェネレータ)としての機能のうち少なくとも一方を備えた例えば同期電動機であって、好適には、発動機又は発電機として選択的に作動させられるモータジェネレータである。これら第1電動機MG1および第2電動機MG2は、図示しないインバータを介してバッテリやコンデンサ等の蓄電装置に接続されており、前記電子制御装置によって上記インバータが制御されることにより第1電動機MG1および第2電動機MG2の出力トルクあるいは回生トルクが調節されるようになっている。上記第2電動機MG2の第2出力軸22は、第2電動機MG2のロータ42が固設されたロータシャフト22aと、前記第1減速歯車対30の第1駆動歯車30aが固設されてロータシャフト22aにスプライン嵌合により同心に連結された連結軸22bとにより構成されている。上記第1駆動歯車30aは、本発明における出力歯車に相当するものであり、車両用ハイブリッド駆動装置10は、この第1駆動歯車30aを介して駆動輪24を駆動する。
差動機構16は、エンジン12から出力される動力を第1電動機MG1と出力部材14とに分配する動力分配装置として機能するものであって、第1電動機MG1の第1出力軸20に連結されたサンギヤSと、そのサンギヤSと同心に設けられて円筒状の出力部材14の内周部に一体に設けられたリングギヤRと、サンギヤSおよびリングギヤRにそれぞれ噛み合うピニオンギヤPを自転且つ公転自在に支持するキャリアCAとを備えるシングルピニオン型の遊星歯車装置から構成されている。この差動機構16は、エンジン12および第1電動機MG1と同心に設けられている。
差動機構16における各回転要素の回転速度の相対的関係は、図2の共線図により示される。この共線図において、縦軸S、縦軸CA、および縦軸Rは、サンギヤSの回転速度、キャリアCAの回転速度、およびリングギヤRの回転速度をそれぞれ表す軸であり、縦軸S、縦軸CA、および縦軸Rの相互の間隔は、縦軸Sと縦軸CAとの間隔を1としたとき、縦軸CAと縦軸Rとの間隔が所定値ρ(サンギヤSの歯数Zs/リングギヤRの歯数Zr)となるように設定されたものである。電気式変速部18においては、出力部材14の回転速度が一定であるときに第1電動機MG1の回転速度が上下に変化させられることにより、エンジン12の回転速度が無段階に変化させられるようになっている。すなわち、電気式変速部18は、第1電動機MG1の回転速度が前記電子制御装置によって制御されることにより、出力回転速度(出力部材14の回転速度)と入力回転速度(エンジン12の回転速度)との比すなわち変速比を無段階に変化させる電気的な無段変速機として作動させられる。図2の破線は、第1電動機MG1の回転速度を実線で示す値から下げたときにエンジン12の回転速度が低下する状態を示している。
図1に戻って、第1減速歯車対30は、第2出力軸22の連結軸22bに固設された第1駆動歯車30aと、カウンタシャフト28に固設されて第1駆動歯車30aに噛み合わされた第1被動歯車30bとを備えている。また、第2減速歯車対34は、カウンタシャフト28に固設された第2駆動歯車34aと、デフケース32に固設されて第2駆動歯車34aに噛み合わされた第2被動歯車34bとを備えている。減速歯車装置36は、連結軸22bに伝動されてその連結軸22bから第1駆動歯車30aに伝達された電気式変速部18および第2電動機MG2の出力を差動歯車装置40へ伝動するものである。
図3は、図1の車両用ハイブリッド駆動装置10のうち、第1電動機MG1、第2電動機MG2、およびカウンタシャフト28を同一の平面内に示す断面図である。以下、本実施例の伝動装置26を図1および図3を参照して詳細に説明する。図1および図3に示すように、伝動装置26は、電気式変速部18の出力部材14および第2電動機MG2の第2出力軸22の連結軸22bにそれぞれ固設された一対のチェーンスプロケット44と、それら一対のチェーンスプロケット44に巻き掛けられたチェーン46とにより構成される。例えばサイレントチェーンから成る上記チェーン46は、本発明における伝動部材に相当するものである。また、例えばサイレントチェーンスプロケットから成る上記チェーンスプロケット44は、本発明における伝動回転体に相当するものである。図3に示すように、一対のチェーンスプロケット44のうちの出力部材14側の一方は、出力部材14の外周面に嵌着されることでその出力部材14と一体的に設けられている。また、一対のチェーンスプロケット44のうちの連結軸22b側の他方は、連結軸22bの外周面に嵌着されることでその連結軸22bと一体的に設けられている。
以上のように構成される車両用ハイブリッド駆動装置10においては、電気式変速部18の出力が伝動装置26を介して第2電動機MG2の第2出力軸22へ伝動され、第2電動機MG2の出力および上記第2出力軸22へ伝動された電気式変速部18の出力が減速歯車装置36および差動歯車装置40を介して駆動輪24へ伝達されるようになっている。
本実施例の車両用ハイブリッド駆動装置10は、電気式変速部18の出力を駆動輪24へ伝達するためにその出力を第2電動機(走行用電動機)MG2の第2出力軸22の連結軸22bに伝動する伝動装置26を含む。上記伝動装置26は、電気式変速部18の出力部材14および第2電動機MG2の第2出力軸22の連結軸22bにそれぞれ固設された一対のチェーンスプロケット44と、それら一対のチェーンスプロケット44に巻き掛けられたチェーン46とにより構成される。そのため、電気式変速部18の出力部材14と駆動輪24との間の動力伝達経路において電気式変速部18と第2電動機MG2とが伝動装置26を介して直列に連結され、第2電動機MG2の出力が無いときであっても電気式変速部18の出力が第2出力軸22の連結軸22bに伝達され、電気式変速部18および第2電動機MG2の出力を駆動輪24へ伝達するために第2出力軸22の連結軸22bに設けられた第1駆動歯車(出力歯車)30aを含む第1減速歯車対30が常に動力伝達状態とされるので、上記第1減速歯車対30の各歯車30a、30bが相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となることが抑制され、第2電動機MG2の出力が無いときにエンジン12等の回転変動が上記第1減速歯車対30の噛合歯30a、30bに伝達されることでそれらの間で歯打ち音が発生するのを抑制することができる。そのため、上記歯打ち音が発生しようとする場合においてエンジン回転速度NEを引き上げることで歯打ち音の発生を回避するという対策が不要であり、エンジン12の動作点が予め設定された最適燃費曲線に沿うようにそのエンジン12動作させることができるので、車両燃費が向上する。
因みに、図7は、従来の車両用ハイブリッド駆動装置100の構成を説明する骨子図である。図7に示すように、従来の車両用ハイブリッド駆動装置100は、エンジン12からの動力を第1電動機MG1および出力部材102に分配する差動機構16を有する電気式変速部104と、その電気式変速部104の出力を駆動輪24へ伝達するためにその出力を減速しつつデフケース32に伝動する減速歯車装置106と、第2電動機MG2の出力を駆動輪24へ伝達するためにその出力を減速しつつ減速歯車装置106のカウンタシャフト108へ伝達する出力歯車110とを備えて構成される。上記出力部材102は、内周面にリングギヤRが固設された外側円筒部102aと、その外側円筒部102aの一端部から内周側へ突設されたフランジ部102bと、そのフランジ部102bの内周部から回転中心線方向へ突設された内側円筒部102cとを有して構成される。このように第1電動機MG1と第2電動機MG2とが異なる軸上に並列に配置された型式の車両用ハイブリッド駆動装置100は、第1電動機MG1と第2電動機MG2とが同軸上に配置された型式のものに比べて、ギヤ類等の各回転体を小径化することができると共に軸長を短くすることができる。
ところが、上記従来の車両用ハイブリッド駆動装置100においては、電気式変速部104の出力部材102と駆動輪24との間に設けられた動力伝達軸であるカウンタシャフト108に対して、第2電動機MG2の第2出力軸22がその第2出力軸22に設けられた出力歯車110および被動歯車112を介して連結されている。そのため、第2電動機MG2の出力が無い或いは小さいときは、上記出力歯車110が被動歯車112に対して動力伝達のない中立状態で回転するフローティング状態となり、エンジン等の回転変動が上記出力歯車110および被動歯車112の噛合歯に伝達されることにより、図7中に矢印Aで示す部位の噛合歯の歯面同士が互いに打ち合うことで歯打ち音が発生するという問題があった。しかも、車両用ハイブリッド駆動装置100は、上記各電動機が同軸上に配置された型式のものと比較してギヤ類等の各回転体が小径化されてそれら回転体の回転慣性が減少しているため、図4に破線で示すように、横軸にエンジン回転速度NE[rpm]、縦軸に駆動系で生じる振動の大きさの度合いを表す入力軸13の回転変動量X[rpm]を示す二次元座標内において、共振周波数が高速度側へずらされてしまう。そして、大体1300〜1500[rpm]の間にある所定エンジン回転速度NE1以上の常用回転速度域において、駆動系で生じる振動の大きさの度合いを表す入力軸13の回転変動量Xが比較的に大きくなり、上記歯打ち音およびこもり音が比較的に発生し易いという問題があった。
これに対して、本実施例の車両用ハイブリッド駆動装置10では、図4に実線で示すように、常用回転速度域において入力軸13の回転変動量Xが比較的に小さくなるので、上記歯打ち音の発生を抑制することができる。
また、本実施例の車両用ハイブリッド駆動装置10によれば、出力部材14が従来の車両用ハイブリッド駆動装置100の出力部材102と比較してフランジ部102bおよび内側円筒部102cを有しておらず、その出力部材14を軽量化することができる。
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図5は、本発明の他の実施例の車両用ハイブリッド駆動装置50のうち、第1電動機MG1、第2電動機MG2、およびカウンタシャフト28を同一の平面内に示す断面図である。図5に示すように、本実施例の伝動装置52は、電気式変速部18の出力部材14に固設されたドライブギヤ54と、第2電動機MG2の第2出力軸22に固設されたドリブンギヤ56と、そのドライブギヤ54とドリブンギヤ56との間に設けられてそれらにそれぞれ噛み合わされたアイドラギヤ58とにより構成される。図5に示すように、ドライブギヤ54は、出力部材14の外周面に嵌着されることでその出力部材14と一体的に設けられている。また、ドリブンギヤ56は、連結軸22bの外周面に嵌着されることでその連結軸22bと一体的に設けられている。また、アイドラギヤ58は、カウンタシャフト28の外周面に嵌着された軸受60を介してそのカウンタシャフト28に相対回転可能に支持されている。
以上のように構成される車両用ハイブリッド駆動装置50においては、電気式変速部18の出力が伝動装置52を介して第2電動機MG2の第2出力軸22へ伝動され、第2電動機MG2の出力および上記第2出力軸22へ伝動された電気式変速部18の出力が減速歯車装置36および差動歯車装置40を介して駆動輪24へ伝達されるようになっている。
本実施例の車両用ハイブリッド駆動装置50は、電気式変速部18の出力を駆動輪24へ伝達するためにその出力を第2電動機(走行用電動機)MG2の第2出力軸22の連結軸22bに伝動する伝動装置52を含む。上記伝動装置52は、電気式変速部18の出力部材14に固設されたドライブギヤ54と、第2電動機MG2の第2出力軸22に固設されたドリブンギヤ56と、そのドライブギヤ54とドリブンギヤ56との間に設けられてそれらにそれぞれ噛み合わされたアイドラギヤ58とにより構成される。そのため、電気式変速部18の出力部材14と駆動輪24との間の動力伝達経路において電気式変速部18と第2電動機MG2とが伝動装置52を介して直列に連結され、第2電動機MG2の出力が無いときであっても電気式変速部18の出力が第2出力軸22の連結軸22bに伝達され、電気式変速部18および第2電動機MG2の出力を駆動輪24へ伝達するために第2出力軸22の連結軸22bに設けられた第1駆動歯車(出力歯車)30aを含む第1減速歯車対30が常に動力伝達状態とされるので、実施例1と同様に、上記第1減速歯車対30の各歯車30a、30bが相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となることが抑制され、第2電動機MG2の出力が無いときにエンジン12等の回転変動が上記第1減速歯車対30の噛合歯30a、30bに伝達されることでそれらの間で歯打ち音が発生するのを抑制することができる。そのため、実施例1と同様に、上記歯打ち音が発生しようとする場合においてエンジン回転速度NEを引き上げることで歯打ち音の発生を回避するという対策が不要であり、エンジン12の動作点が予め設定された最適燃費曲線に沿うようにそのエンジン12動作させることができるので、車両燃費が向上する。
図6は、本発明の他の実施例の車両用ハイブリッド駆動装置70のうち、第1電動機MG1、第2電動機MG2、およびカウンタシャフト28を同一の平面内に示す断面図である。図6に示すように、本実施例の伝動装置72は、電気式変速部18の出力部材14および第2電動機MG2の第2出力軸22のロータシャフト22aにそれぞれ固設された一対のチェーンスプロケット74と、それら一対のチェーンスプロケット74に巻き掛けられたチェーン76とにより構成される。例えばサイレントチェーンから成る上記チェーン76は、本発明における伝動部材に相当するものである。また、例えばサイレントチェーンスプロケットから成る上記チェーンスプロケット74は、本発明における伝動回転体に相当するものである。図6に示すように、一対のチェーンスプロケット74のうちの出力部材14側の一方は、出力部材14の外周面に嵌着されることでその出力部材14と一体的に設けられている。また、一対のチェーンスプロケット74のうちのロータシャフト22a側の他方は、ロータシャフト22aの外周面に嵌着されることでそのロータシャフト22aと一体的に設けられている。
以上のように構成される車両用ハイブリッド駆動装置70においては、電気式変速部18の出力が伝動装置72を介して第2電動機MG2の第2出力軸22のロータシャフト22aへ伝動され、第2電動機MG2の出力および上記ロータシャフト22aへ伝動された電気式変速部18の出力が、図6中に矢印Bで示すロータシャフト22aと連結軸22bとのスプライン嵌合部、減速歯車装置36、および差動歯車装置40を介して駆動輪24へ伝達されるようになっている。
本実施例の車両用ハイブリッド駆動装置70は、電気式変速部18の出力を駆動輪24へ伝達するためにその出力を第2電動機(走行用電動機)MG2の第2出力軸22のロータシャフト22aに伝動する伝動装置72を含む。上記伝動装置72は、電気式変速部18の出力部材14および第2電動機MG2の第2出力軸22のロータシャフト22aにそれぞれ固設された一対のチェーンスプロケット74と、それら一対のチェーンスプロケット74に巻き掛けられたチェーン76とにより構成される。そのため、電気式変速部18の出力部材14と駆動輪24との間の動力伝達経路において電気式変速部18と第2電動機MG2とが伝動装置72を介して直列に連結され、第2電動機MG2の出力が無いときであっても電気式変速部18の出力が第2出力軸22のロータシャフト22aに伝達され、電気式変速部18および第2電動機MG2の出力を駆動輪24へ伝達するために第2出力軸22の連結軸22bに設けられた第1駆動歯車(出力歯車)30aを含む第1減速歯車対30と、ロータシャフト22aと連結軸22bとのスプライン嵌合部とが常に動力伝達状態とされるので、上記第1減速歯車対30の各歯車30a、30bが相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となることが抑制されると共に、ロータシャフト22aと連結軸22bとが相互に動力伝達のない中立状態でそれぞれ回転するフローティング状態となることが抑制される。それ故に、第2電動機MG2の出力が無いときにエンジン12等の回転変動が上記第1減速歯車対30の噛合歯30a、30bやロータシャフト22aと連結軸22bとのスプライン嵌合部に伝達されることでそれらの間で歯打ち音が発生するのを抑制することができる。そのため、上記歯打ち音が発生しようとする場合においてエンジン回転速度NEを引き上げることで歯打ち音の発生を回避するという対策が不要であり、エンジン12の動作点が予め設定された最適燃費曲線に沿うようにそのエンジン12動作させることができるので、車両燃費が向上する。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
例えば、伝動回転体および伝動部材として必ずしもチェーンスプロケット44(74)およびチェーン46(76)が設けられる必要はなく、例えばプーリおよびベルト等であってもよい。
また、アイドラギヤ58は、必ずしもカウンタシャフト26に設けられる必要はなく、例えばその他の軸に設けられてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10,50,70:車両用ハイブリッド駆動装置
12:エンジン
14:出力部材
16:差動機構
18:電気式変速部
20:第1出力軸(差動用電動機の出力軸)
22:第2出力軸(走行用電動機の出力軸)
22a:ロータシャフト
22b:連結軸
24:駆動輪
26,52,72:伝動装置
30a:第1駆動歯車(出力歯車)
44,74:チェーンスプロケット(伝動回転体)
46,76:チェーン(伝動部材)
54:ドライブギヤ
56:ドリブンギヤ
58:アイドラギヤ
MG1:第1電動機(差動用電動機)
MG2:第2電動機(走行用電動機)