JP5453331B2 - 塗装前処理方法及び塗装方法 - Google Patents
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Description
「糊残り」とは、糊残り又はその塗装その他の表面処理への悪影響をいう。
「金属体」とは金属製の物品をいい、紫外線による処理が可能である限り、その材質に特に制限はない。その「金属」の典型例は、ステンレス鋼、チタニウム又はその合金、アルミニウム又はその合金である。
「表面保護フィルム」の材質の典型例は、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、ポリオレフィンなどであり、フィルムの糊の例は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤などである。
本発明の第1の実施形態は、次の工程を有する。
工程A:疵発生防止用のシートが表面に貼られた金属板を用意する工程、
工程B:金属板表面からの当該シートを剥離する工程、及び
工程C:当該シートの剥離により露出する金属板表面を紫外線が発生している環境に晒す工程。
紫外線照射処理装置1を通過させる回数も、金属板2の種類、表面状況などによって一回又は複数回とする。複数本の紫外線ランプをアレイ状に配置してなる紫外線照射部を備える紫外線照射装置を1回通過させる代わりに、より少ない本数の紫外線ランプを具備してなる紫外線照射部を備える紫外線照射装置を複数回通過させるように構成してもよい。
まず、金属板としてステンレス鋼板を用意し、そのステンレス鋼板から疵防止用シートを剥離した後、ステンレス鋼板に適した通常の前処理として、アルカリ脱脂、水洗(湯洗、純水洗を含む複数段の水洗)及び乾燥を順に行い、液体塗料で塗装を行った。すると塗装直後の段階で塗料が、局所的に、複数箇所においてはじかれた(外観的には撥水状態に見える箇所である)。この塗料のはじきは、糊残りに起因するものであり、はじきの発生は塗装品質の低下の直接の原因となる塗装欠陥の発生に直結する。
本発明の第2の実施形態は、次の工程を有する。
工程A:表面保護フィルムが表面に貼られた金属板を用意する工程、
工程X:工程Bの前に、当該表面保護フィルムの上から金属板を強く擦る工程、
工程B:金属板表面からの当該表面保護フィルムを剥離する工程、及び
工程C:当該表面保護フィルムの剥離により露出する金属板表面を紫外線が発生している環境に晒す工程。
この点を考慮しつつ行ったものが、以下の実施例5〜7である。この場合、紫外線照射処理装置及びUV照射条件はいずれも第1の実施形態の場合と同じにした。ただし、UV時間は60秒とした。
これに対して、疵防止用シートの上からステンレス鋼板の表面をヘラ状の道具で強く擦り、次いで疵防止用シートを剥離した後、上記の紫外線照射処理装置を用いてUV照射処理を施し、引き続き上記通常の前処理を施すことなく、液体塗料で塗装を行った。すると塗装直後の段階で確認できていた塗料のはじきが、当該所定の領域においてもその他の領域においても、UV照射処理を施した範囲に限り、殆ど確認できなくなった。
UV照射時間、UV照射距離、UV照射量を種々変えることにより、糊残り除去効果が認められるUV照射処理の条件について調べた。紫外線照射処理装置は第1の実施形態において使用したものと同じであり、金属体及びこれを覆う表面保護フィルムは、それぞれ、ステンレス鋼板及びアクリル系粘着剤を糊とするポリエチレン系フィルム(日東電工株式会社製)とした。
図2は、横軸をUV照射距離L(mm)、縦軸をUV照射時間(秒)とし、UV照射処理を施した結果糊残りを除去できた最短のUV照射時間Tp(秒)と、糊残りを除去できなかった最長のUV照射時間Tf(秒)をプロットした図である。あるUV照射距離Lのとき、UV照射時間がTpよりも長ければUV照射処理による糊残り除去効果が認められ、それよりも短ければ、特にTfよりも短ければ糊残り除去効果が認められないことになる。ここで、「糊残りを除去できた」とは、UV照射処理前の塗料のはじきを100としたとき、UV照射処理後の塗料のはじきが5以下であったことをいう。「糊残りを除去できなかった」とはUV照射処理前の塗料のはじきを100としたとき、UV照射処理後の塗料のはじきが15以上であったことをいう。
表1は、UV照射距離L(mm)の範囲(10mm刻み)に対応して決まるUV照射処理による糊残り除去効果が認められる最短のUV照射時間Tp(秒)をまとめたものである。この表1を参照すると、たとえば、次のことがわかる。
・ UV照射距離が0mmより大きく10mm以下である場合において糊残りを除去するためには、最短でも45秒のUV照射が必要である(換言すれば、45秒以上のUV照射を行えば糊残りを除去できる)。
・ UV照射距離が10mmより大きく20mm以下である場合において糊残りを除去するためには、最短でも60秒のUV照射を行う必要がある(換言すれば、60秒以上のUV照射を行えば糊残りを除去できる)。
・ UV照射距離が30mmより大きく40mm以下である場合において糊残りを除去するためには、最短でも75秒のUV照射を行う必要がある(換言すれば、75秒以上のUV照射を行えば糊残りを除去できる)
・ UV照射距離が60mmより大きく70mm以下である場合において糊残りを除去するためには、最短でも100秒のUV照射を行う必要がある(換言すれば、100秒以上のUV照射を行えば糊残りを除去できる)。
・ UV照射距離が110mmより大きく120mm以下である場合において糊残りを除去するためには、最短でも150秒のUV照射を行う必要がある(換言すれば、150秒以上のUV照射を行えば糊残りを除去できる)。
図3は、横軸をUV照射距離L(mm)、縦軸をUV照射量(mWsec/cm2)とし、UV照射処理を施した結果糊残りを除去できた最少のUV照射量Qs(mWsec/cm2)、糊残りを十分除去できたUV照射量Qt(mWsec/cm2)及びQsとQtの平均のUV照射量Qm(mWsec/cm2)をプロットした図である。あるUV照射距離Lのとき、UV照射量がQsよりも多ければUV照射処理による糊残り除去効果が認められ、それよりも少なければ、糊残り除去効果が認められない又は不十分ということになる。ここで、「糊残りを除去できた」とは、UV照射処理前の塗料のはじきを100としたとき、UV照射処理後の塗料のはじきが5以下であったことをいう。「糊残りを十分除去できた」とはUV照射処理前の塗料のはじきを100としたとき、UV照射処理後の塗料のはじきが1以下であったことをいう。Qtは、Qsよりも、糊残り除去効果を与えるUV照射量としてより好ましい。
・ UV照射距離が0mmより大きく10mm以下である場合において糊残りを除去するためには、最少でも1094(mWsec/cm2)のUV照射量が必要であり(換言すれば、1094(mWsec/cm2)以上のUV照射を行えば糊残りを除去でき)、1215(mWsec/cm2)以上が好ましい。
・ UV照射距離が10mmより大きく20mm以下である場合においてに糊残りを除去するためには、最少でも1434(mWsec/cm2)のUV照射量が必要であり(換言すれば、1434(mWsec/cm2)以上のUV照射を行えば糊残りを除去でき)、1554(mWsec/cm2)以上が好ましい。
・ UV照射距離が30mmより大きく40mm以下である場合においてに糊残りを除去するためには、最少でも1695(mWsec/cm2)のUV照射量が必要であり(換言すれば、1695(mWsec/cm2)以上のUV照射を行えば糊残りを除去でき)、1808(mWsec/cm2)以上が好ましい。
・ UV照射距離が60mmより大きく80mm以下である場合においてに糊残りを除去するためには、最少でも1920(mWsec/cm2)のUV照射量が必要であり(換言すれば、1920(mWsec/cm2)以上のUV照射を行えば糊残りを除去でき)、2024(mWsec/cm2)以上が好ましい。
・ UV照射距離が110mmより大きく120mm以下である場合においてに糊残りを除去するためには、最少でも2295(mWsec/cm2)のUV照射量が必要であり(換言すれば、2295(mWsec/cm2)以上のUV照射を行えば糊残りを除去でき)、2448(mWsec/cm2)以上が好ましい。
1〜130mm程度の範囲の照射距離Lのうち、1〜50mm程度の範囲は、より出力の小さい、従って通常より安価な紫外線ランプを使用しても、照射距離Lを小さく設定しさえすれば本発明の効果を得ることができる範囲である。この意味から、コストパフォーマンスの高いUV照射処理を追求するのであれば、照射距離Lを1〜50mm程度の範囲に設定するのが好ましいといえる。
L・・・照射距離
Claims (2)
- 金属体表面の塗装前処理方法であって、表面保護フィルムが貼られている金属体を用意する工程と、用意された金属体の表面から表面保護フィルムを剥がす工程と、表面保護フィルムが剥がされた金属体の表面に塗装を施す前に表面保護フィルムに由来する糊残りをその表面から除去する糊残り除去工程とを有し、前記糊残り除去工程は、表面保護フィルムが剥がされた金属体の表面を紫外線が発生している環境に晒す工程を有することを特徴とする金属体表面の塗装前処理方法。
- 金属体表面の塗装方法であって、表面保護フィルムが貼られている金属体を用意する工程と、用意された金属体の表面から表面保護フィルムを剥がす工程と、表面保護フィルムが剥がされた金属体の表面を紫外線が発生している環境に晒し、これにより表面保護フィルムに由来する糊残りを除去する工程と、前記環境に晒された後の金属体の表面を塗装する工程と、を有することを特徴とする金属体表面の塗装方法。
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