JP5452513B2 - 原子炉の運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、原子炉の運転方法及び原子力発電プラントに係り、特に発電容量を増大させて、長期運転するのに好適な原子炉の運転方法及び原子力発電プラントに関する。
原子力発電プラントにおいて、発電容量を増加させ、さらに長期運転を行う場合は、炉心に装荷された燃料集合体の235Uの平均濃縮度を上げるなどして対応するのが一般的である。また、運転サイクル末期においては、不足する反応度を補うため、炉心流量を増加させて炉心内の蒸気の体積比率(ボイド率)を低下させ、中性子の減速を促進させるのが一般的である。また、反応度調整を目的とし炉心内のボイド率を変化させる一つの技術に、給水温度を変化させて炉心入口の冷却水温度を変化させる給水温度制御がある。給水温度制御により反応度を調整する技術が特許文献1及び2に開示されている。
特開平8−233989号公報 特開昭62−138794号公報
上述の従来技術のうち、発電容量の増加、及び長期運転時に燃料集合体の平均濃縮度を増大すると、長期運転により原子力発電プラントの設備利用率は増加するが、一般に燃料経済性が低下するという課題がある。また、炉心流量を増加させて反応度を補償する場合、現行炉では給水温度制御を行っていなく、また、給水流量は原子力発電プラントの出力、すなわち主蒸気流量に比例して決まるので以下の課題がある。すなわち、炉心流量を増加させても炉心の熱出力を変えないと給水流量と給水温度は特に変化せず、炉心流量が増加した分だけ、炉心流量に占める低温の給水流量の割合が減少する。このため、炉心入口の冷却水温度は、炉心流量増加前に比べて上昇し、炉心流量増加による炉心のボイド率低減効果が低下する。また、給水温度を調整して反応度を調整する従来技術では、給水温度を調節しているが、具体的にどのように調整するかというロジックについては運転サイクル前期,中期,末期等程度であり、炉心流量の変化と関連づけた記載はない。
本発明の目的は、原子力発電プラントの熱出力を増加し、運転サイクルを長くした場合でも、燃料経済性を向上できる原子炉の運転方法及び原子力発電プラントを提供することにある。
上記目的を達成する本発明の特徴は、原子炉の一つの運転サイクルにおいて原子炉出力が設定出力で運転されている前記原子炉の炉心に供給される冷却材の流量が増加するとき、前記原子炉に供給する給水の温度を低下させることにある。
本発明によれば、原子力発電プラントの熱出力を増加し、運転サイクルを長くした場合でも、燃料経済性を向上させることができる。特に、運転サイクル末期において炉心流量が増加した場合でも炉心入口における冷却材温度が上昇しないようにすることができ、運転サイクル末期における炉心流量増加時の反応度利得を、単に炉心流量を増加するときより大きくすることができる。
上記の目的を達成する本発明の他の特徴は、給水加熱手段を含み、原子炉に給水を供給する給水系と、前記原子炉内の炉心に供給される冷却材流量が増加するとき、前記給水加熱手段による前記給水の加熱量を調節することによって前記給水の温度を低下させる給水温度制御装置とを備えたことにある。
上記目的を達成するため本発明の他の特徴は、給水加熱手段を含み、原子炉に給水を供給する給水系と、
前記原子炉内の炉心に供給される冷却材流量が増加するとき、原子炉で発生する熱量と、原子炉から外部に出て行く熱量及び原子炉に外部から入ってくる熱量との熱バランス計算に基づいて、前記給水の温度の設定値を算出する熱バランス計算装置と、
前記熱バランス計算装置によって算出された給水温度設定値に基づいて、前記給水加熱手段による前記給水の加熱量を調節する給水温度制御装置とを備えたことにある。
本発明によれば、原子力発電プラントの熱出力を増加し、運転サイクルを長くした場合でも、燃料経済性を向上させることができる。
本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。 原子炉の運転サイクルにおける炉心流量及び炉心入口冷却材温度の変化を示す特性図である。 図1に示す熱バランス計算装置における演算処理及び給水温度制御装置における制御の内容を示す説明図である。 本発明の他の実施例である沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。 本発明の他の実施例で用いる、原子炉の運転サイクルにおける炉心流量及び炉心入口冷却材温度の変化を示す特性図である。
本発明の好適な一実施例である原子力発電プラントを、沸騰水型原子力発電プラントを例にとって、図1を用いて以下に説明する。
沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉1,高圧タービン3,低圧タービン5、及び復水器6を備えている。原子炉1は、原子炉圧力容器10内に多数の燃料集合体(図示せず)を装荷してなる炉心11を有する。円筒状の炉心29シュラウドが、原子炉圧力容器10内で炉心11の周囲を取り囲んでいる。インターナルポンプ12が、原子炉圧力容器10の下部に設けられる。インターナルポンプ12のインペラ13は、原子炉圧力容器10と炉心シュラウド29との間に形成される環状流路30内に配置される。環状流路30内でインペラ13の上流側と下流側の差圧を測定する差圧計14が設けられている。原子炉圧力容器10に接続される主蒸気配管2は、高圧タービン3,湿分分離過熱器(または湿分分離再熱器)4及び低圧タービン5を接続する。高圧タービン3及び低圧タービン5は、発電機(図示せず)に連結される。給水配管15が、復水器6,低圧給水加熱器7,給水ポンプ8及び高圧給水加熱器9をこの順序で接続し、原子炉圧力容器10に接続される。高圧タービン3に連絡される抽気配管16が、高圧給水加熱器9に接続される。湿分分離過熱器4に連絡される配管19、及び低圧タービン5に接続される配管20が、それぞれ、低圧給水加熱器7に接続される。蒸気流量調節弁17が抽気配管16に設置される。
高圧給水加熱器9に接続されるドレン配管18が、低圧給水加熱器7を経て復水器6に接続される。
原子炉圧力容器10内の圧力(蒸気の圧力)を検出する圧力計21が、原子炉圧力容器10の上部に設置される。蒸気流量を検出する流量計22、及び蒸気温度を検出する温度計23が、主蒸気配管2に設置される。給水流量を検出する流量計24、及び給水温度を検出する温度計25が、給水配管15に設置される。
原子力発電プラントは、更に、炉心流量制御装置26,給水温度制御装置27及び熱バランス計算装置28を備えている。
原子力発電プラントの運転中においては、インターナルポンプ12の回転によってインペラ13で昇圧された、環状流路30内の冷却水(冷却材)は、下部プレナム31より炉心11内に供給される。この冷却水は、炉心11にある燃料集合体内に供給され、核燃料物質の核分裂により発生する熱で加熱され、蒸気となる。蒸気は、原子炉圧力容器10内で炉心11上方に設置された気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)にて水分が除去され、主蒸気配管2に吐出される。蒸気は、高圧タービン3を回転させ、湿分分離過熱器4で湿分が除去されて過熱され、低圧タービン5に供給されて低圧タービン5を回転させる。高圧タービン3及び低圧タービン5の回転により、発電機が回転され、電気が発生する。低圧タービン5から排気された蒸気は、復水器6で凝縮されて水となる。この水は、給水として、給水配管15によって原子炉圧力容器10内に供給される。その給水は、低圧給水加熱器7で加熱され、給水ポンプ8で昇圧され、高圧給水加熱器9で更に高温に加熱され、原子炉圧力容器10内に供給される。低圧給水加熱器7は、配管19,20にて導かれる、湿分分離過熱器4から排出される高温のドレン水、低圧タービン5から抽気される蒸気及び凝縮水により、給水を加熱する。高圧給水加熱器9は、高圧タービン3から抽気されて抽気配管16で導かれる蒸気によって加熱される。
本実施例は、原子炉の運転サイクル末期において給水温度制御により反応度を増大させ、原子炉出力を増大させる運転を行うことを特徴とする。一つの運転サイクルは、原子炉1の運転開始後、原子炉1内の燃料集合体の交換のために原子炉1を停止するまでの期間を意味する。その給水温度制御による反応度増大の概要を、図2を用いて説明する。
本実施例及び給水温度制御を行わない従来例を対象とし、一つの運転サイクルでの炉心流量と炉心入口冷却水温度について、図2を用いて説明する。従来例の給水温度制御を行わない場合、炉心入口冷却水温度は、運転サイクルにおいて、炉心流量に追従して変化している。原子炉出力が一定である場合、給水流量は変化せず給水温度もほとんど変化しなく、また、原子炉1から主蒸気管2に吐出される蒸気の量も基本的には変化しない。さらに、給水は主に主蒸気が復水器6等で凝縮したものであり、基本的には主蒸気流量が変わらなければ給水流量も変わらない。復水器6から排出された低温の凝縮水は、給水加熱器9によって加熱されるが、現行の沸騰水型原子力発電プラントでは給水加熱量については初期設定値のまま、特に動的に制御しないのが一般的である。換言すれば、現行の沸騰水型原子力発電プラントは、給水温度を動的に制御する機構を備えていない。以上のことから、現行の沸騰水型原子力発電プラントでは、給水流量及び給水温度は原子炉出力が変化しない限り変化しない。一方で、沸騰水型原子炉では炉心流量は炉心内ボイド率変化を通じて炉心の核的反応度を調整するため、運転サイクルを通して適宜変更される。炉心流量が変化すると、原子炉圧力容器10内で高温の炉心2から流出して環状流路30,下部プレナム31を通って再び炉心2に戻るほぼ飽和温度の再循環水の流量が変化し、給水温度及び給水流量が一定の現行の沸騰水型原子力発電プラントでは、炉心入口温度は、図2に示すように、炉心流量が増えると上昇し、炉心流量が減少すると低下することになる。このように、炉心流量の変化に追随して炉心入口温度が変化する場合、特に、運転サイクル末期に炉心2の反応度不足を補うために炉心流量を増加させたときに、炉心入口の冷却水温度が炉心流量を増加させる前より上昇し、炉心流量の増加による炉心内のボイド率低減効果が減少するという問題が生じる。本実施例ではこの問題を解決するため、運転サイクル末期において炉心流量が増加した場合に、炉心入口冷却水温度を従来例と逆に低くなるように、給水加熱量を動的に制御する。この制御によって、特に、運転サイクル末期において炉心流量が増加した場合でも炉心入口における冷却水温度が上昇しないようにすることができ、運転サイクル末期における炉心流量増加時の反応度利得を、単に炉心流量を増加するときより大きくできる。このため、本実施例は、同じ運転期間であれば燃料経済性を向上させることができる。具体的には、炉心2内に装荷される燃料集合体の平均濃縮度を低減できる。また、同じ燃料経済性とするならば、沸騰水型原子力発電プラントの運転期間を長くすることができる。これは、原子力発電プラントの熱出力を増加し、運転サイクルを長くした場合においても、沸騰水型原子力発電プラントの設備利用率の向上につながり、プラント経済性を向上させることができる。
本実施例は、運転サイクル末期の炉心流量増加時における炉心入口冷却水温度の低減、すなわち原子炉1に供給する給水の温度の低減を実現するために、熱バランス計算装置28、及び熱バランス計算装置28で得られた給水温度に基づいて蒸気流量調節弁17の開度を制御する給水温度制御装置27を備えている。本実施例における給水温度制御を、図1及び図3に基づいて説明する。
炉心流量制御装置26は、差圧計14にて計測された、環状流路30内におけるインペラ13の上流側と下流側との差圧の計測値を入力し、この計測値に基づいて炉心流量を算出する。炉心流量制御装置26は、算出した炉心流量及び運転サイクルにおける炉心流量設定値に基づいて、インターナルポンプ12の回転数を制御し、炉心2に供給する冷却水流量(炉心流量)を制御する。
熱バランス計算装置28は、炉心2で発生した熱量、原子炉1から出て行く熱量(主に主蒸気として)及び原子炉1に入ってくる熱量(主に給水として)に基づいて、炉心流量のみをパラメータにエネルギーバランスを計算する。具体的には、熱バランス計算装置28は、運転サイクル末期で炉心流量が増加したとき、炉心入口冷却材温度を低下させるため、原子炉1に供給する給水の温度の減少量を計算する。
熱バランス計算装置28は、炉心流量制御装置26で算出された炉心流量を入力する(ステップ28A)。炉心流量制御装置26から炉心流量を入力する代わりに、熱バランス計算装置28が、差圧計14の差圧計測値を入力して炉心流量を算出してもよい。また、熱バランス計算装置28は、圧力計21で計測された原子炉圧力(蒸気圧力)、流量計22で計測された蒸気流量、温度計23で計測された蒸気温度、流量計24で計測された給水流量、及び温度計25で計測された給水温度を、それぞれ入力する(ステップ28B)。熱バランス計算装置28は、ステップ23Cで熱バランス計算を行い、給水温度を算出する。給水温度Tは、次の(1)式に基づいて算出される。
W×hcore={(W−Wfeed)×hsat(P)+Wfeed×h(T,P)} …(1)
ここで、hcoreは炉心入口エンタルピー、Wは炉心流量、Wfeedは給水流量、hsatは飽和水のエンタルピー(圧力によって決まる)、Pは原子炉圧力、Tは給水温度である。なお、hcoreは、T1=f(P1,hcore)に基づいて算出される。ここで、P1は原子炉1内の下部プレナム圧力、T1は炉心入口の冷却水温度である。下部プレナム圧力P1は、原子炉圧力Pに原子炉1内の環状流路30内冷却水の静水頭圧やインターナルポンプ12の昇圧分を加えて補正したものである。また、P1は直接測定してもよい。
(1)式中の、(W−Wfeed)×hsat(P)は原子炉1から出て環状流路30に入る再循環水(飽和水)の持つ熱量であり、Wfeed×h(T,P)は原子炉1の外部からダウンカマー30に入ってくる給水の熱量であり、W×hcoreは原子炉1に流入する水がもつ熱量である。給水温度Tは、原子炉1に流入する水がもつ熱量と、原子炉1から出てダウンカマー30に入る再循環水(飽和水)の持つ熱量及び原子炉1に外部から入ってくる給水の熱量とバランスを示す(1)式に基づいて算出される。
算出された給水温度Tは、給水温度設定値(給水温度目標値)として、給水温度制御装置27に出力される。給水温度制御装置27は、その給水温度設定値である給水温度T、及び温度計25で計測された給水温度の計測値に基づいて、給水温度計測値が給水温度設定値になるように蒸気流量調節弁17の開度を制御する。本実施例では、熱バランス計算装置28は、給水温度Tの算出を、一般に炉心流量が増加すること多い運転サイクル末期(例えば、一つの運転サイクルの80%経過後、その運転サイクル終了までの期間)で行っているため、給水温度制御装置27はその運転サイクル末期において給水温度Tを設定値として給水温度制御を行う。算出される給水温度Tの値は、運転サイクル末期の期間中では炉心流量の増大に伴って減少する。このため、運転サイクル末期において、原子炉1に供給される給水の温度は、運転サイクル終了時点に向かって減少していく。なお、運転サイクル末期よりも前の大部分の期間では、給水温度制御装置27は、図2に示すように、炉心入口冷却水温度がほぼ一定となる一つの給水温度設定値に基づいて蒸気流量調節弁17の開度を制御して給水温度制御を行う。このような運転サイクル末期における給水温度制御を行う本実施例は、図2に実線で示すように、運転サイクル末期において炉心入口の冷却水温度が減少し、前述したように運転サイクル末期での反応度利得を増大させることができる。なお、運転サイクル末期の期間に入る少し前から、熱バランス計算装置28で給水温度Tを算出し、給水温度制御装置27でこの給水温度Tを用いて給水温度制御を行うことも可能である。
本実施例では、熱バランス計算装置28は、給水温度Tの算出を、炉心流量が増加する運転サイクル末期(例えば、一つの運転サイクルの80%経過後、その運転サイクル終了までの期間)で行っているが、運転サイクル全体を通して給水温度Tを算出しても良い。この例では、給水温度制御装置27は、一つの運転サイクルを通して熱バランス計算装置28で算出した給水温度Tを給水温度設定値として用い、給水温度制御を行う。算出される給水温度Tは炉心流量が増大すると減少する。
給水加熱器では一般に電気ヒーター及び抽気蒸気による給水の加熱が行われている。上記した例では、蒸気流量調節弁17の開度調節による抽気蒸気の流量制御での給水温度制御について述べたが、給水加熱制御装置27は給水温度Tに基づいて電気ヒーターによる加熱制御で給水温度制御を行うことも可能である。また、抽気蒸気の流量制御及び電気ヒーターによるか熱量制御を併用してもよい。プラントの熱効率の観点からは抽気蒸気の流量制御が好ましいが、炉心流量変化に追随して給水温度を制御する場合の制御性の観点からは電気ヒーター加熱制御が好ましい。
また、一般に運転サイクル中でも反応度を制御棒で調整するための制御棒パターンチェンジが実施される。この場合、炉心流量を低下させて、炉心の熱出力を低下させて制御棒のパターンチェンジをして、その後、炉心流量を増加させて炉心の熱出力を定格値に戻すことが行われる。この制御棒パターンチェンジは特殊な運転モードである。このため、本実施例は、この制御棒パターンチェンジの期間中では炉心流量が増加しても前述した給水温度Tに基づいた給水温度制御を行わない。
本実施例は、給水温度制御を炉心流量変化にのみ着目し、運転サイクル末期の炉心流量増加時のみで実施する。このため、特開平8−233989号公報及び特開昭62−138794号公報の技術よりも反応度の制御に用いる基本変数が炉心流量のみと少なく、給水温度制御が容易な点で優れている。また、自動的に給水温度を制御する点でも運転員の負担軽減や誤動作等のリスクが低減でき優れている。
また、本実施例は、現行の原子力発電プラントに適用しても効果があるが、一つの運転サイクルにおいて燃料集合体から取り出す熱量を増加させた原子力プラントに適用することによって、本実施例の効果は特に顕著なものとなる。これは、一運転サイクルの運転期間が同じである場合、原子炉1の定格出力を増加させると、一運転サイクルにおいて燃料集合体から取り出す熱量が増加することになる。これは、炉心2でより多くの核分裂反応を起こす必要があることを意味している。一般に、10%未満の原子炉出力の増加であれば、炉心及び燃料集合体の設計最適化、さらには燃料棒設計の最適化(太径化)及び複数の燃料棒を9行9列に配置した燃料集合体からそれらを10行10列に配置した燃料集合体に替えて燃料棒本数を増やす、などによって、燃料集合体中のウラン装荷量を増加させるなどして原子炉出力を増加させても大きく燃料経済性が低下しない可能性が高い。しかし、10%を超えて原子炉出力を増加させるとなると、燃料集合体の235Uの濃縮度を増加させなければならなくなり、同じプラントで10%以上発電できる利点は大きいが、燃料経済性は低下する。このような意味から、本実施例は、原子炉出力をプラント建設時の定格出力より10%以上大きくした原子力発電プラントに適用すると効果が大きい。
また、現行の沸騰水型原子炉の炉心の出力密度は約50kw/lであることを考えると、同じ炉心で原子炉出力を10%以上増加させることは、炉心の出力密度を55kw/l以上に増加することと同じ意味となる。また、一つの運転サイクルの運転期間を10%以上延ばすことも、燃料集合体の交換無しで炉心から取り出す熱量を10%以上増やすことになるので、同じ期間で炉心の熱出力を10%以上増やすことにほぼ等しい。そういう意味で、通常の一運転サイクルは約12ヶ月であるので、14ヶ月以上の運転サイクルの炉心は同じ運転期間で熱出力を10%以上増加させた炉心とほぼ同等となる。
また、一つの運転サイクル期間に炉心で発生する熱量が多いということは、一つの運転サイクルで消費する核分裂性物質の量が多いことを意味する。従って、運転サイクル開始前における炉心への新燃料集合体の装荷体数が増加する。一般に、炉心内に装荷されている燃料集合体の体数を、燃料交換により炉心内に新たに装荷される新燃料集合体の体数で割った値をバッチ数という。バッチ数が小さいほど一つの運転サイクルにおいて燃料集合体1体から取り出される熱量が多いことになる。一般に10%以上の大幅な増出力をして、運転サイクルも設備利用率向上を目的に24ヶ月程度にすると、バッチ数は3を切る。このような炉心では反応度維持のため、燃料集合体の濃縮度の増大も大きくなり、また、反応度制御のため可燃性毒物を多く使う必要があるため、燃料経済性は低下する。本実施例における炉心入口冷却水温度の制御は、このような炉心で用いると効果がより大きくなる。
本発明の他の実施例である沸騰水型原子力発電プラントを、図4に基づいて説明する。本実施例の原子力発電プラントは、図1に示す原子力発電プラントの構成から熱バランス計算装置28を除いた構成を有する。前述した実施例は、原子力発電プラントの運転中に、熱バランス計算装置28によって給水温度Tを算出し、給水温度制御装置27がその給水温度Tを用いて自動的に蒸気流量調節弁17の開度を調節して給水温度を制御している。これに対し、本実施例は、熱バランス計算装置28で行う熱バランス計算を原子力発電プラントの各運転サイクルの開始前に実施し、運転サイクル末期における炉心流量の増加に対応して減少する給水温度(前述の実施例における給水温度Tで給水温度設定値)を事前に算出する。算出された複数の給水温度(給水温度設定値)はそれぞれに対応する複数の炉心流量と個々に関係付けて、給水温度制御装置27Aに事前に記憶させておく。炉心流量制御装置26で算出された炉心流量を入力した給水温度制御装置27Aは、その炉心流量に対応する給水温度設定値、及び温度計25で計測された給水温度に基づいて、給水温度計測値が給水温度設定値になるように蒸気流量調節弁17の開度を制御する。
本実施例は、前述した図1に示す実施例と同様な効果を得ることができる。本実施例は、熱バランス計算装置28が不要になり、原子力発電プラントの構成が単純化される。
本発明の他の実施例である沸騰水型原子力発電プラントを、以下に説明する。
本実施例の沸騰水型原子力発電プラントは、図5に示すように、炉心流量が上昇する運転サイクル末期において、給水温度制御装置27Aが給水温度を一定になるように制御する。この制御は、給水温度制御装置27Aに、運転サイクル末期にいて給水温度設定値を一定に設定することによって実現することができる。このような給水温度制御によっても、図1に示す実施例ほどではないが、運転サイクル末期の炉心流量増加時における反応度利得を大きくすることができる。このため、同じ運転期間であれば燃料経済性を向上させることができる。本実施例は、図4に示す沸騰水型原子力発電プラントにおいて、前述したように、運転サイクル末期での給水温度設定値を一定にすることによって達成できる。
また、運転サイクル末期において自動的に炉心入口冷却水温度を一定に制御する点でも運転員の負担軽減や誤動作等のリスクが低減でき優れている。更に炉心の反応度管理のための評価計算も炉心入口冷却水温度を一定に制御することにより容易になり、プラント運転・管理に係わる経済性の向上も期待できる。
上記実施例のシステムを用いるとさらに以下のことを可能にすることもできる。
一つの運転サイクルにおいて反応度が過大な運転期間は炉心入口冷却水温度を高くするような給水温度制御ロジックを、給水温度制御装置に運転サイクル開始前に組込む。その制御ロジックによって、その運転期間で炉心内のボイド率を大きくし、過大な反応度を抑制するようにして、制御棒による反応度操作を減らすとともに、制御棒による反応度ロスを小さくして燃料経済性を向上させることが可能となる。一般に、反応度か過大な運転期間はサイクル前半から中期であるので、そのような制御ロジックを給水温度制御装置に組み込んでも、運転サイクル末期における給水温度の低減制御とは重複しない。
また、運転サイクル開始前の炉心特性評価時に、熱的余裕(最小限界出力比)が過大なときは炉心入口冷却水温度を低くするように、熱的余裕(最小限界出力比)が少ないときは炉心入口冷却水温度を高くするような他の制御ロジックを、給水温度制御装置に組み込むことによって、全運転サイクルに渡って熱的余裕を一定にできる。このため、無駄な熱的余裕を削って、炉心の燃料装荷パターン等を最適化することも可能で、これによっても燃料経済性を向上可能である。
1…原子炉圧力容器、2…主蒸気管、3…高圧タービン、4…湿分分離過熱器(もしくは湿分分離再熱器)、5…低圧タービン、7…低圧給水加熱器、8…給水ポンプ、9…高圧給水加熱器、10…原子炉圧力容器、11…炉心、12…インターナルポンプ、15…給水配管、17…上記流量調節弁、21…圧力計、22,24…流量計、23,25…温度計、26…炉心流量制御装置、27…給水温度制御装置、28…熱バランス計算装置、29…シュラウド、30…環状流路、31…下部プレナム。

Claims (5)

  1. 燃料集合体を装荷してなる炉心と、前記炉心の周囲を取り囲む炉心シュラウドと、前記炉心を有する原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器と前記炉心シュラウドとの間に形成される環状流路と、前記原子炉圧力容器に接続される主蒸気配管及び給水配管と、前記環状流路内の冷却水が下部プレナムより前記炉心に供給される沸騰水型原子力発電プラントの運転方法であって、
    前記炉心によって生成した蒸気が前記主蒸気配管に供給されるとともに、前記炉心から排出された冷却水が前記環状流路に導かれ、
    前記給水配管から前記環状流路に供給された冷却水はインターナルポンプによって前記下部プレナムより炉心に供給され、
    一つの運転サイクルの末期において設定出力となるように、前記原子炉圧力容器内の下部プレナムから前記炉心に供給される冷却水の炉心流量が上昇し、
    前記一つの運転サイクルの末期において前記炉心に供給される冷却水の炉心流量が上昇したとき、前記一つの運転サイクル末期の期間に入る前から、給水配管を通じて供給される冷却水の温度を低下させることで、前記原子炉圧力容器内の前記環状流路に供給される冷却水の温度を低下させるとともに、
    前記運転サイクルは原子炉の運転開始後、原子炉内の燃料集合体の交換のために原子炉を停止するまでの期間であることを特徴とする沸騰水型原子力発電プラントの運転方法。
  2. 前記設定出力が定格出力である請求項1に記載の原子炉の運転方法。
  3. 一つの前記運転サイクルが14ヶ月以上である請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の原子炉の運転方法。
  4. 前記炉心のバッチ数が3以下である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の原子炉の運転方法。
  5. 前記原子炉の炉心の出力密度が55kw/l以上である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子炉の運転方法。
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