本発明は、原子炉の運転方法及び原子力発電プラントに係り、特に発電容量を増大させて、長期運転するのに好適な原子炉の運転方法及び原子力発電プラントに関する。
原子力発電プラントにおいて、発電容量を増加させ、さらに長期運転を行う場合は、炉心に装荷された燃料集合体の235Uの平均濃縮度を上げるなどして対応するのが一般的である。また、運転サイクル末期においては、不足する反応度を補うため、炉心流量を増加させて炉心内の蒸気の体積比率(ボイド率)を低下させ、中性子の減速を促進させるのが一般的である。また、反応度調整を目的とし炉心内のボイド率を変化させる一つの技術に、給水温度を変化させて炉心入口の冷却水温度を変化させる給水温度制御がある。給水温度制御により反応度を調整する技術が特許文献1及び特許文献2に開示されている。特に、特許文献1には、運転サイクルの大半の期間において給水温度を最高給水温度に維持し、運転サイクル終了時点で給水温度を最低給水温度にすることが記載されている。
特開平8−233989号公報
特開昭62−138794号公報
機械設計便覧、昭和48年1月、機械設計便覧編集委員会編、1996頁〜2010頁、丸善株式会社
HLR−006訂1「沸騰水形原子力発電所 3次元核熱水力計算手法について」昭和59年9月、2頁〜11頁、株式会社 日立製作所
上述の従来技術のうち、発電容量の増加、及び長期運転時に燃料集合体の平均濃縮度を増大すると、長期運転により原子力発電プラントの設備利用率は増加するが、一般に燃料経済性が低下するという課題がある。また、炉心流量を増加させて反応度を補償する場合、現行炉では給水温度制御を行っていなく、また、給水流量は原子力発電プラントの出力、すなわち主蒸気流量に比例して決まるので以下の課題がある。すなわち、タービンからの抽気により給水を加熱する再熱サイクルでは、タービンからの抽気量をできるだけ多くすることで熱効率を向上できるが、タービンの抽気量は、炉心流量が最大流量となったときの炉心入口の冷却水温度によって設定されるため、炉心流量が最大流量未満である状態ではタービンの抽気量を増加できる余地があり、熱効率を向上できる余地がある。また、炉心流量を増加させても炉心の熱出力を変えないと給水流量と給水温度は特に変化せず、炉心流量が増加した分だけ、炉心流量に占める低温の給水流量の割合が減少する。このため、炉心入口の冷却水温度は、炉心流量増加前に比べて上昇し、炉心流量増加による炉心のボイド率低減効果が低下する。また、給水温度を調整して反応度を調整する従来技術では、給水温度を調節しているが、具体的にどのように調整するかというロジックについては運転サイクル前期、中期、末期等程度であり、炉心流量の変化と関連づけた記載はない。
本発明の目的は、原子力発電プラントの稼働率を向上させることができる原子炉の運転方法及び原子力発電プラントを提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉出力が設定出力で運転される一つの運転サイクルが、原子炉の炉心に供給される冷却材流量が増大する前記運転サイクルの末期である第2期間、及び前記第2期間よりも前の第1期間を含んでおり、前記第1期間及び第2期間は、前記原子炉に供給される給水の温度を制御することにより前記原子炉の炉心入口での冷却材の温度を、前記炉心に前記冷却材を供給するポンプにおいてキャビテーションが発生しない上限の温度付近の温度でその上限の温度よりも低い温度である設定温度に保持し、第2期間における前記冷却材の温度の前記設定温度への保持は、前記給水温度を低下させることにより行われ、炉心熱的制限監視装置が前記炉心流量及び前記炉心に配置された局所出力領域モニタの計測値に基づいて第1最小限界出力比を求め、前記炉心流量をW、前記炉心入口のエンタルピーをh core 、前記給水の流量をW feed 、飽和水のエンタルピーをh sat 、及び原子炉圧力をPとしたとき、給水温度Tを下記の式を用いて算出して、前記算出した給水温度Tに対応する第2最小限界出力比を求め、
W×h core ={(W−W feed )×h sat (P)+W×h(T,P)}
前記第1期間及び前記第2期間における前記給水の温度制御は、前記第1最小限界出力比よりも大きな原子炉の前記第2最小限界出力比に対応する前記給水温度である給水温度設定値に基づいて行われることにある。
上記の特徴を有する本発明は、最小限界出力比が増大するので、原子力発電プラントの稼働率を向上させることができる。
上記の目的は、原子炉の一つの運転サイクルが、前記原子炉の炉心に挿入された全ての制御棒が全引抜されて炉心流量が設定炉心流量に達する時点よりも前の第1期間、及びその時点以降の第2期間を含んでおり、前記第1期間内で、複数の前記制御棒の操作によって複数の制御棒パターンを形成し、前記第1期間における、形成された同一の制御棒パターンの期間において、前記原子炉に供給される給水の温度が、ステップ状に少なくとも1回制御され、前記第2期間における前記給水の温度は、前記同一の制御棒パターンの期間においてステップ状に制御されて生じる複数の給水温度のうち最も低い給水温度よりも低くなるように制御されることによっても達成することができる。
第2期間における前記給水の温度は、第1期間内の同一の制御棒パターンの期間においてステップ状に制御されて生じる複数の給水温度のうち最も低い給水温度よりも低くなるように制御されるので、運転サイクルの期間を従来よりも延ばすことができる。このため、原子力発電プラントの稼働率を向上させることができる。
原子炉の一つの運転サイクルが、前記原子炉の炉心に供給される冷却材流量が増大する前記運転サイクルの末期である第2期間、及び前記第2期間よりも前の第1期間を含んでおり、前記第1期間内で、複数の前記制御棒の操作によって複数の制御棒パターンを形成し、前記第1期間における、形成された同一の制御棒パターンの期間において、前記原子炉に供給される給水の温度が、ステップ状に少なくとも1回制御されることは、本発明の他の特徴である。
この特徴においては、第1期間における、形成された同一の制御棒パターンの期間において、原子炉に供給される給水の温度が、ステップ状に少なくとも1回制御されるので、炉心入口での冷却材温度を従来よりも高くすることができる。したがって、原子炉の熱効率を向上させることができる。
原子炉の一つの運転サイクルが、前記原子炉の炉心に挿入された全ての制御棒が全引抜されて炉心流量が設定炉心流量に達する時点よりも前の第1期間、及びその時点以降の第2期間を含んでおり、前記第1期間内で、複数の前記制御棒の操作によって複数の制御棒パターンを形成し、前記第1期間における、形成された同一の制御棒パターンの期間において、前記原子炉に供給される給水の温度が、ステップ状に少なくとも1回制御されることによっても、原子炉の熱呼応率を向上させることができる。
本発明によれば、原子力発電プラントの稼働率を向上させることができる。
本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
本発明の好適な一実施例である原子力発電プラントを、沸騰水型原子力発電プラントを例にとって、図1〜図3を用いて以下に説明する。
沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉1、高圧タービン3、低圧タービン5及び復水器6、炉心流量制御装置26、給水温度制御装置27、熱バランス計算装置28及び炉心熱的制限監視装置35を備えている。原子炉1は、原子炉圧力容器10内に多数の燃料集合体(図示せず)を装荷してなる炉心11を有する。円筒状の炉心29シュラウドが、原子炉圧力容器10内で炉心11の周囲を取り囲んでいる。インターナルポンプ12が、原子炉圧力容器10の下部に設けられる。インターナルポンプ12のインペラ13は、原子炉圧力容器10と炉心シュラウド29との間に形成されるダウンカマー(環状流路)30内に配置される。ダウンカマー30内でインペラ13の上流側と下流側の差圧を測定する差圧計14が設けられている。原子炉圧力容器10に接続される主蒸気配管2は、高圧タービン3、湿分分離過熱器(または湿分分離再熱器)4及び低圧タービン5を接続する。高圧タービン3及び低圧タービン5は、発電機(図示せず)に連結される。給水配管15が、復水器6、低圧給水加熱器7、給水ポンプ8及び高圧給水加熱器9をこの順序で接続し、原子炉圧力容器10に接続される。高圧タービン3に連絡される抽気配管16が、高圧給水加熱器9に接続される。湿分分離過熱器4に連絡される配管19、及び低圧タービン5に接続される配管20が、それぞれ、低圧給水加熱器7に接続される。蒸気流量調節弁17が抽気配管16に設置される。高圧給水加熱器9に接続されるドレン配管18が、低圧給水加熱器7を経て復水器6に接続される。
原子炉圧力容器10内の圧力(蒸気の圧力)を検出する圧力計21が、原子炉圧力容器10の上部に設置される。蒸気流量を検出する流量計22、及び蒸気温度を検出する温度計23が、主蒸気配管2に設置される。給水流量を検出する流量計24、及び給水温度を検出する温度計25が、給水配管15に設置される。
原子力発電プラントの運転中では、インターナルポンプ12の回転によってインペラ13で昇圧された、ダウンカマー30内の冷却水(冷却材)は、下部プレナム31より炉心11内に供給される。この冷却水の一部は、炉心11にある燃料集合体内に供給され、核燃料物質の核分裂により発生する熱で加熱され、蒸気となる。蒸気は、原子炉圧力容器10内で炉心11上方に設置された気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)にて水分が除去され、主蒸気配管2に吐出される。この蒸気は、高圧タービン3を回転させ、湿分分離過熱器4で湿分が除去されて過熱され、低圧タービン5に供給されて低圧タービン5を回転させる。高圧タービン3及び低圧タービン5の回転により、発電機が回転され、電気が発生する。低圧タービン5から排気された蒸気は、復水器6で凝縮されて水となる。この水は、給水として、給水配管15によって原子炉圧力容器10内に供給される。その給水は、低圧給水加熱器7で加熱され、給水ポンプ8で昇圧され、高圧給水加熱器9で更に高温に加熱され、原子炉圧力容器10内に供給される。低圧給水加熱器7は、配管19,20にて導かれる、湿分分離過熱器4から排出される高温のドレン水、低圧タービン5から抽気される蒸気及び凝縮水により、給水を加熱する。高圧給水加熱器9は、高圧タービン3から抽気されて抽気配管16で導かれる蒸気によって加熱される。このように、高圧タービン3及び低圧タービン5から抽気される蒸気及び凝縮水を用いて給水を加熱する方法は再熱サイクルと呼ばれ、復水に捨てられる熱量を減少させることができる。再熱サイクルは、熱効率が向上するため、沸騰水型原子炉に一般的に適用される。ここで、低圧タービン5及び高圧タービン3からの抽気量を増やして原子炉に供給される給水温度を高めるほど熱効率が向上する。しかし、一方で、原子炉に供給される給水温度は、原子炉再循環系の健全性を保つ観点から制限される。具体的には、給水温度を上げすぎると、インターナルポンプ12のインペラ13において冷却水に気泡(キャビテーション)が発生しインペラ13に損傷を与える恐れが生じるため、キャビテーションが発生しない上限の温度以下に給水温度を制限している。ここで、キャビテーションが発生しない上限の温度は、インペラ13の形状などによって異なるが、現行の原子炉においては飽和温度よりも約10℃低い温度となっている。
本実施例は、原子炉の炉心に供給される冷却材の温度を、運転サイクルを通してキャビテーションが発生しない上限の温度付近に設定された設定温度に保持して運転を行うことを特徴とする。一つの運転サイクルは、原子炉1の運転開始後、原子炉1内の燃料集合体の交換のために原子炉1を停止するまでの期間を意味する。その給水温度制御による熱効率向上の概要を、図2を用いて説明する。
本実施例、及び給水温度制御を行わない従来例を対象とし、一つの運転サイクルでの炉心流量と炉心入口での冷却水温度(以下、炉心入口冷却水温度という)について、図2を用いて説明する。従来例の給水温度制御を行わない場合、炉心入口冷却水温度は、運転サイクルにおいて、炉心流量の変化に追従して変化している。原子炉出力が定格出力(100%出力)に保持される場合、給水流量は変化せず給水温度もほとんど変化しなく、また、原子炉1から主蒸気管2に吐出される蒸気の量も基本的には変化しない。さらに、給水は主に主蒸気が復水器6等で凝縮したものであり、基本的には主蒸気流量が変わらなければ給水流量も変わらない。復水器6から排出された低温の凝縮水は、給水加熱器9によって加熱されるが、現行の沸騰水型原子力発電プラントでは給水加熱量については初期設定値のまま、特に動的に制御しないのが一般的である。換言すれば、現行の沸騰水型原子力発電プラントは、給水温度を動的に制御する機構を備えていない。以上のことから、現行の沸騰水型原子力発電プラントでは、給水流量及び給水温度は原子炉出力が変化しない限り変化しない。一方で、沸騰水型原子炉では炉心流量は炉心内ボイド率変化を通じて炉心の核的反応度を調整するため、運転サイクルを通して適宜変更される。炉心流量が変化すると、原子炉圧力容器10内で高温の炉心2から流出してダウンカマー30、下部プレナム31を通って再び炉心2に戻るほぼ飽和温度の再循環水の流量が変化する。給水温度及び給水流量が一定の現行の沸騰水型原子力発電プラントでは、炉心入口での冷却水温度は、図2に示すように、炉心流量が減少すると低下し、炉心流量が増えると上昇する。このとき、給水加熱量は、炉心入口冷却水温度が最高となる条件、すなわち炉心流量が最大となった場合でも、炉心入口冷却水温度の設定温度は、キャビテーションが発生しない上限の温度以下となるように設定される。従って、炉心流量が最大未満の場合には、炉心入口冷却水温度は、キャビテーションが発生しない上限の温度よりも低くなる。これは、給水温度を高められる余地があり、従って熱効率を向上できる余地があることを意味する。本実施例は、この問題を解決するため、炉心入口冷却水温度を、炉心流量の変化に関わらず、運転サイクルを通してキャビテーションが発生しない上限の設定温度に保持するように、給水加熱量を動的に制御する。ここで、キャビテーションが発生しない上限の温度はインターナルポンプ12のインペラ13の形状などによって異なるが、実験やシミュレーションにより設定することができる(非特許文献1)。
この制御によって、タービンからの抽気量を最大にし、復水に捨てられる熱量を最小にすることができ、沸騰水型原子力発電プラントの熱効率を向上させることができる。なお、炉心流量が最大の場合において、炉心入口冷却水温度は従来と同じであるため、燃料経済性は従来と同等となる。
ところで、給水温度制御を反応度制御に用いる方法は、前述の特許文献1及び2に示されているが、従来の制御棒の制御及び炉心流量制御による反応度制御とどのように組み合わせるかについての具体的な説明はない。発明者らは、給水温度制御を反応度制御に用いる場合、熱的余裕確保の観点から、給水加熱量を動的に制御するための新たな知見を見出した。この新たな給水加熱量の動的制御は、図2に示すように、炉心流量の変化に関わらず、炉心入口冷却水温度を、運転サイクルを通してインターナルポンプ12(または再循環ポンプ)でキャビテーションが発生しない上限の温度付近の設定温度に保持するように行うことである。図4は、炉心反応度に対する、熱的余裕の指標の一つである最小限界出力比(MCPR)の変化を、炉心入口冷却水温度を変化させた場合、及び炉心流量を変化させた場合について示している。熱的余裕は、MCPRが小さくなるほど小さくなる。図4の特性から、炉心反応度を同じだけ減少させる場合、炉心入口冷却水温度の増加は、炉心流量の減少よりも、熱的余裕の減少幅を小さくすることが分かった。すなわち、運転サイクル前半では炉心反応度を抑制する必要があるが、制御棒挿入量が同じである場合には、炉心入口冷却水温度の増加による反応度抑制は、炉心流量の減少によるその制御よりも、MCPRを増加できる。逆に、MCPRが同じである場合には、炉心入口冷却水温度の増加は、炉心流量の減少よりも、炉心反応度をより抑制できる。MCPRが増加する分、または炉心反応度を抑制できる分だけ、制御棒挿入量を減らすことができる。このため、制御棒の寿命が伸び、制御棒の取替体数を減らすことができる。従って、図2に示すように、炉心入口冷却水温度をキャビテーションが発生しない上限の温度に保持することによって、MCPRの増加、あるいは制御棒取替体数の減少といった効果が得られる。
本実施例は、炉心流量が最大流量未満である場合の炉心入口冷却水温度の増加、すなわち原子炉1に供給する給水の温度の増加を実現する。このため、給水温度制御装置27は、炉心熱的制限監視装置35で得られたMCPRを考慮して熱バランス計算装置28で求められた給水温度設定値を基に、蒸気流量調節弁17の開度を制御する。本実施例における給水温度制御を、図1及び図3に基づいて説明する。
炉心流量制御装置26は、差圧計14にて計測された、ダウンカマー30内におけるインペラ13の上流側と下流側との差圧の計測値を入力する。さらに、入力したその計測値に基づいて炉心流量を算出する。炉心流量制御装置26は、算出した炉心流量及び運転サイクルにおける炉心流量設定値に基づいて、インターナルポンプ12の回転数を制御し、炉心2に供給する冷却水流量(炉心流量)を制御する。
炉心熱的制限監視装置35は、炉心流量制御装置26で算出した炉心流量、及び炉心11に配置されたLPRM(図示せず)で計測されたLPRM計測値38に基づいてMCPR(以後、MCPR(0)という)を求める。炉心熱的制限監視装置35は、MCPR(0)が運転制限MCPR(OLMCPR)以下になっていないことを監視する。なお、実際のプラントにおいてはOLMCPRの対して一定割合の運転余裕を持つこともあり、その場合はOLMCPRに各プラントにおいて決められた運転余裕を加えた値をここでは運転制限MCPRとする。
熱バランス計算装置28は、炉心2で発生した熱量、原子炉1から出て行く熱量(主に主蒸気として)及び原子炉1に入ってくる熱量(主に給水として)に基づいて、炉心流量のみをパラメータにエネルギーバランスを計算する。具体的には、熱バランス計算装置28は、炉心流量が最大流量未満である場合に、炉心入口冷却材温度を増加させるため、原子炉1に供給する給水の温度の増加量を計算する。
熱バランス計算装置28は、炉心流量制御装置26で算出された炉心流量を入力する(ステップ28A)。炉心流量制御装置26から炉心流量を入力する代わりに、熱バランス計算装置28が、差圧計14の差圧計測値を入力して炉心流量を算出してもよい。また、熱バランス計算装置28は、圧力計21で計測された原子炉圧力(蒸気圧力)、流量計22で計測された蒸気流量、温度計23で計測された蒸気温度、流量計24で計測された給水流量、及び温度計25で計測された給水温度を、それぞれ入力する(ステップ28B)。熱バランス計算装置28は、ステップ28Cで熱バランス計算を行い、給水温度を算出する。給水温度Tは、次の(1)式に基づいて算出される。
W×hcore={(W−Wfeed)×hsat(P)+Wfeed×h(T,P)} …(1)
ここで、hcoreは炉心入口エンタルピー、Wは炉心流量、Wfeedは給水流量、hsatは飽和水のエンタルピー(圧力によって決まる)、Pは原子炉圧力、Tは給水温度である。なお、hcoreは、T1=f(P1,hcore)に基づいて算出される。ここで、P1は原子炉1内の下部プレナム圧力、T1は炉心入口の冷却水温度である。下部プレナム圧力P1は、原子炉圧力Pに原子炉1内のダウンカマー30内冷却水の静水頭圧やインターナルポンプ12の昇圧分を加えて補正したものである。また、P1は直接測定してもよい。
(1)式中の、(W−Wfeed)×hsat(P)は原子炉1から出てダウンカマー30に入る再循環水(飽和水)の持つ熱量であり、Wfeed×h(T,P)は原子炉1の外部からダウンカマー30に入ってくる給水の熱量であり、W×hcoreは原子炉1に流入する水がもつ熱量である。給水温度Tは、原子炉1に流入する水がもつ熱量と、原子炉1から出てダウンカマー30に入る再循環水(飽和水)の持つ熱量及び原子炉1に外部から入ってくる給水の熱量とバランスを示す(1)式に基づいて算出される。
算出された給水温度Tに対応するMCPR(T)を算出する(ステップ28D)。給水温度Tに基づいて炉心入口エンタルピーhcoreを算出する。MCPR(T)は、炉心入口エンタルピーhcoreを用いて求められる。MCPR(T)がMCPR(0)より大きいかが判定される(ステップ28E)。MCPR(0)は、後述するように、炉心熱的制限値監視装置35から出力される。MCPR(T)はOLMCPRよりも大きい。ステップ28Eで「NO」(MCPR(T)がMCPR(0)以下)と判定された場合には、ステップ28Cにおいて、MCPR(0)より大きいMCPR(T)を得ることができる給水温度Tを算出する。ステップ28Eの判定が「YES」である(MCPR(T)がMCPR(0)よりも大きい)場合には、MCPR(0)よりも大きなMCPR(T)に対応する給水温度Tは、給水温度設定値(給水温度目標値)として、熱バランス計算装置28から給水温度制御装置27に出力される。
給水温度制御装置27は、その給水温度設定値である給水温度T(以下、給水温度設定値Tという)、及び温度計25で計測された給水温度の計測値に基づいて、給水温度計測値が給水温度設定値Tになるように蒸気流量調節弁17の開度を制御する。算出される給水温度設定値Tは、運転サイクル末期(例えば、一つの運転サイクルの80%経過後、その運転サイクル終了までの期間)の期間中では炉心流量の増大に伴って減少する。このため、運転サイクル末期において、原子炉1に供給される給水の温度は、運転サイクル終了時点に向かって減少していく。しかしながら、本実施例の給水温度制御が行われる運転サイクル末期においては、炉心流量は増加するが、炉心入口冷却水温度は、図2において実線で示すように、上記の設定温度に保持される。なお、運転サイクル末期よりも前の大部分の期間では、給水温度制御装置27は、図2に示すように、炉心入口冷却水温度がほぼ一定となる一つの給水温度設定値Tに基づいて蒸気流量調節弁17の開度を制御して給水温度制御を行う。このような、運転サイクルを通して、炉心入口冷却水温度をキャビテーションが発生しない上限の温度付近の設定温度(その上限の温度よりも低い温度)に保持する本実施例は、図2に実線で示すように、炉心流量が最大流量未満となる期間においては従来例よりも炉心入口冷却水温度が高くなる。従って、本実施例は、タービンからの蒸気の抽気量をより多くして熱効率を向上させることができる。
給水加熱器では一般に電気ヒーター及び抽気蒸気による給水の加熱が行われている。上記した例では、蒸気流量調節弁17の開度調節による抽気蒸気の流量制御での給水温度制御について述べたが、給水加熱制御装置27は給水温度Tに基づいて電気ヒーターによる加熱制御で給水温度制御を行うことも可能である。また、抽気蒸気の流量制御及び電気ヒーターによるか熱量制御を併用してもよい。プラントの熱効率の観点からは抽気蒸気の流量制御が好ましいが、炉心流量変化に追随して給水温度を制御する場合の制御性の観点から電気ヒーターによる加熱制御が好ましい場合はそうしてもよい。
また、一般に運転サイクル中でも反応度を制御棒で調整するための制御棒パターンチェンジが実施される。この場合、炉心流量を低下させて、炉心の熱出力を低下させて制御棒のパターンチェンジをして、その後、炉心流量を増加させて炉心の熱出力を定格値に戻すことが行われる。この制御棒パターンチェンジは特殊な運転モードである。このため、本実施例は、この制御棒パターンチェンジの期間中では炉心流量が変化しても前述した給水温度Tに基づいた給水温度制御を行わない。
本実施例は、熱バランス計算装置28で算出した給水温度Tに対応するMCPR(T)が炉心熱的制限監視装置35で算出した最小限界出力比(MCPR(0))より大きい場合に、その給水温度Tを給水温度設置値Tとし、この給水温度設定値Tを用いて給水温度制御を行う。また、給水温度Tに対応するMCPR(T)がMCPR(0)以下である場合には、MCPR(0)より大きいMCPR(T)を得ることができる給水温度Tを算出し、給水温度Tを給水温度設置値Tとして給水温度制御を行う。本実施例は、このようにMCPRを考慮して決定した給水温度設定値Tを用いて給水温度制御を行っているため、MCPRが従来よりも増大する、すなわち、原子炉の熱的余裕がより大きくなる給水温度制御を行うことができる。
本実施例は、このようにMCPRが増大するため、原子力発電プラントの定期検査ごとに行っていた炉心11内での燃料集合体の配置換え(シャッフリング)を低減することができる。これは、原子炉でのシャッフリングに要する時間を著しく短縮することにつながり、定期検査期間を短縮させることができる。原子力発電プラントの稼働率が向上する。
なお、シャッフリングは、炉心11内の燃料集合体ごと出力バランス(チャンネルピーキング)の抑制のために、定期検査ごとに行われる。炉心11には、一般に、一つの運転サイクルでの運転を経験した第2運転サイクル目から第5運転サイクル目、さらに初めて炉心11に装荷された第1運転サイクル目の核燃料集合体が存在する。第1運転サイクル目、第2運転サイクル目、……第5運転サイクル目を、それぞれ、第1サイクル、第2サイクル、……第5サイクルと称する。第3、第4及び第5サイクルの各燃料集合体は、核分裂性物質が減少しているため反応度が低くなり、第1及び第2サイクルの各燃料集合体の反応度が高くなる。このような炉心11においては、反応度の高い第1及び第2サイクルの燃料集合体の出力が高くなる。さらに、沸騰水型原子力発電プラントでは、出力大きい燃料集合体は、沸騰が促進されて圧力損失が大きくなり、燃料集合体内の冷却水流量も減少する。この結果、第1及び第2サイクルの各燃料集合体のMCPRが低下する。このような課題を解決するために、第1及び第2サイクルの燃料集合体が炉心11内で集中しないように、一つの運転サイクルでの原子炉の運転が終了した後、第1及び第2サイクルの燃料集合体が炉心11内で集中せず分散されるように、燃料集合体のシャッフリングが行われる。このようなシャッフリングによって、第1及び第2サイクルの各燃料集合体のMCPRを増大させることができる。
本実施例は、MCPRを考慮して決定した給水温度設定値Tを用いて給水温度制御を行っているため、一つの運転サイクル終了後に炉心11内での燃料集合体の配置換えの回数を低減でき、シャッフリングの期間を短縮することができる。
MOX燃料集合体を炉心11内に装荷した場合には、ボイド係数の絶対値の増加等によりOLMCPRが大きくなる可能性がある。しかしながら、MOX燃料集合体を炉心11に装荷した原子力発電プラントは、本実施例の給水制御を適用することによってMCPRをより大きくすることができる。このため、MOX燃料集合体を用いた原子力発電プラントも、稼働率を向上させることができる。
本実施例は、給水温度制御を炉心流量変化にのみ着目し、運転サイクル末期の炉心流量増加時のみで実施する。このため、特許文献1及び2記載の技術よりも反応度の制御に用いる基本変数が炉心流量のみと少なく、給水温度制御が容易な点で優れている。また、自動的に給水温度を制御する点でも運転員の負担軽減や誤動作等のリスクが低減でき優れている。
本発明の他の実施例である沸騰水型原子力発電プラントを例にとって、図5及び図6を用いて以下に説明する。
本実施例の沸騰水型原子力発電プラントは、実施例1の沸騰水型原子力発電プラントの構成から熱バランス計算装置28及び炉心熱的制限監視装置35を除いた構成を有する。炉心流量制御装置26で求められた炉心流量の情報は、給水温度制御装置27に入力される。図5において、36は炉心11に挿入されて原子炉出力を調節する制御棒である。制御棒36は、制御棒駆動装置37に連結される。制御棒駆動装置37は、制御棒36の炉心11内への挿入操作及び制御棒36の炉心11からの引き抜き操作を行うと共に、炉心11の高さ方向における制御棒36の位置を検出する。その位置の検出は、具体的には、制御棒駆動装置37に設けられた位置検出器(例えば、モーター駆動の制御棒駆動装置ではモーターに連結されたエンコーダー、水圧駆動の制御棒駆動装置では内部に設けられたリミットスイッチ)によって行われる。検出された制御棒位置の情報は給水制御装置27に入力される。原子炉1内に配置された各々の制御棒36ごとに、制御棒駆動装置37が設けられている。
それぞれの制御棒駆動装置37で検出された各制御棒位置は、給水制御装置27に入力される。また、給水制御装置27は、メモリ(図示せず)に炉心流量と給水温度(給水温度設定値)を対応付けたテーブル情報を記憶している。すなわち、本実施例は、熱バランス計算装置28で行う熱バランス計算を原子力発電プラントの各運転サイクルの開始前に実施し、炉心流量が最大流量未満となった場合に対応して増加する給水温度(前述の実施例における給水温度Tで給水温度設定値)を事前に算出する。算出された複数の給水温度(給水温度設定値)はそれぞれに対応する複数の炉心流量と個々に関係付けて、給水温度制御装置27Aの上記メモリに事前に記憶させておく。記憶される給水温度の設定値は、全制御棒36が炉心11から引き抜かれ、且つ炉心流量が最大炉心流量になる前までは、炉心入口冷却水温度が、炉心に冷却水を供給するポンプであるインターナルポンプ12でキャビテーションが発生しない上限の温度付近の設定温度(第1炉心入口冷却水温度設定値)になるように設定される。さらに、給水温度設定値は、全制御棒36が炉心11から引き抜かれ、且つ炉心流量が最大炉心流量に達した後では、炉心入口冷却水温度が減少するように設定される。
給水温度制御装置27は、炉心流量制御装置26から入力する炉心流量に対応する給水温度設定値を上記メモリから取り込み、炉心入口冷却水温度を上記上限の温度付近の設定温度に保持する給水温度設定値、及び温度計25で計測された給水温度に基づいて、給水温度計測値が給水温度設定値になるように蒸気流量調節弁17の開度を制御する。給水温度制御装置27は、入力する制御棒位置情報に基づいて原子炉1に設置された全制御棒36のそれぞれが炉心11から全部引き抜かれ、炉心流量制御装置26から入力する炉心流量が最大炉心流量に到達したと判定したとき、炉心入口冷却水温度が減少するように設定され給水温度設定値、及び温度計25で計測された給水温度に基づいて、給水温度計測値が給水温度設定値になるように蒸気流量調節弁17の開度を制御する。前者の給水温度制御によって炉心入口冷却水温度が上記設定温度に保持され、後者の給水温度制御によって炉心入口冷却水温度が減少される(図6の炉心冷却水温度(本実施例)参照)。
本実施例における給水制御を行った場合の、原子炉の運転方法の概念を、図6を用いて説明する。図6に示す原子炉の運転方法は、一つの運転サイクルにおいて、制御棒パターンを変更した場合においても同じ制御棒パターンでの運転では、核燃料の燃焼に伴う炉心反応度の減少を炉心流量の増加により補償する運転方法の一例である。この運転方法は、ある制御棒パターンでの運転において炉心流量が最大に達した場合に、炉心流量をミニマムフローまで低下させて原子炉出力を減少させた後、制御棒駆動装置37の操作により制御棒36が所定量だけ炉心11から引き抜かれる。この制御棒の引き抜き操作によって制御棒パターンが変更されるが、この制御棒の操作を制御棒パターンチェンジという。制御棒36の引き抜きが停止された後、炉心流量が増大されて原子炉出力が再び定格出力まで上昇されて、原子炉が運転される。その後、炉心流量が最大に達して行われる制御棒パターンチェンジによって、全ての制御棒36が炉心11から完全に引き抜かれた状態になったとする。この状態で炉心流量が最大炉心流量になったとき、前述のように、炉心入口冷却水温度を減少させる。このように炉心入口冷却水温度を減少させる制御は、炉心流量が最大炉心流量になったときから、この最大炉心流量の状態で臨界を維持できなくなるまでの期間内において開始すればよい。臨界を維持できなくなった場合には、原子炉出力は低下し始める。
給水温度制御を行わない従来例では、炉心入口冷却水温度は、運転サイクルにおいて、炉心流量に追従して変化し、炉心流量が増加するとともに炉心入口冷却水温度も上昇する。このため、炉心入口冷却水温度は、それぞれの制御棒パターンでの運転期間の最後にキャビテーションが発生しない上限の温度付近となるように変化する。
本実施例は、運転サイクル末期(全制御棒36が炉心11から完全に引抜かれ、かつ炉心流量が最大炉心流量に到達した以降の期間)を除き、炉心流量及び制御棒パターンの変化に関わらず、炉心入口冷却水温度をキャビテーションが発生しない上限の温度付近の設定温度になるように給水温度を動的に制御する。この給水温度の制御は、給水温度制御装置27により、上記したように蒸気流量調節弁17の開度を制御して高圧給水加熱器9での給水の加熱量を調節することによって行われる。また、本実施例による原子炉の運転(図6参照)は、全制御棒36が炉心11から完全に引抜かれ、かつ炉心流量が最大に達した後に、炉心反応度の減少に合わせて炉心入口冷却水温度を減少させる点で、実施例1の原子炉の運転(図2参照)と本質的に異なっている。本実施例は、まず、炉心入口冷却水温度をキャビテーションが発生しない上限の温度付近の設定値になるように給水温度を制御することで、図2の運転を行う実施例1と同様に、従来例よりも熱効率を向上できる。
従来例では、全制御棒が炉心から完全に引抜かれ、かつ炉心流量が最大炉心流量に達した時点で一つの運転サイクルが終了する。これに対し、本実施例は、全制御棒36が炉心11から完全に引抜かれ、かつ炉心流量が最大炉心流量に到達した時点(従来例における運転サイクル終了時)から炉心入口冷却水温度を低減させることによって反応度を増加できる。このため、従来例よりも一つの運転サイクルの期間を長くすることがきる(図6参照)。本実施例は、原子力発電プラントの稼働率を向上させることができる。本実施例は、上記の反応度の増加によって燃料経済性を高めることができる。また、本実施例は、運転サイクル末期に至るまでの、一つの運転サイクルの大部分の期間において、炉心入口冷却水温度をキャビテーションが発生しない上限の温度付近の設定温度になるように給水温度を制御している。本実施例の給水温度制御で得られる炉心入口冷却水温度は、特許文献1の給水温度制御で得られる炉心入口冷却水温度よりも高くなっている。本実施例での給水温度の変化幅は、特許文献1での給水温度の変化幅よりも大きくできる。このため、本実施例は、特許文献1よりも反応度利得も大きくなり、燃焼度を増大できる。
本実施例のように原子炉を運転するための原子炉運転計画方法を、図7を用いて説明する。炉心入口冷却水温度TCを初期値として炉心入口冷却水温度の上限に設定する(ステップ40)。炉心流量を最小にしたときに炉心がちょうど臨界になり、かつ熱的余裕が制限値以上となるような出力分布が得られるような制御棒パターンを予測して設定する(ステップ41)。炉心流量の初期値を最小炉心流量に設定する(ステップ42)。前述の(1)式を用い、熱バランスから給水温度を計算する(ステップ43)。核熱水力計算を行い、炉心の臨界固有値keff及び熱的余裕を算出する(ステップ44)。この核熱水力計算方法の詳細については、非特許文献2に記載されている。
核熱水力計算により得られた臨界固有値keffと1.0の差の絶対値が収束条件Δkより小さいかを判定する(ステップ45)。その差の絶対値がΔkより小さい場合には、ステップ47の処理に移る。その差の絶対値がΔk以上であれば、炉心流量Wを修正する(ステップ46)。ステップ46においては、もしkeffが1.0よりも大きければ炉心流量Wを減少させ、keffが1.0よりも小さければ炉心流量Wを増加させるように修正する。そして、修正した炉心流量に対して再びステップ43〜45の処理を繰り返す。ステップ47においては、熱的余裕が設計目標以上あるかを判定する。熱的余裕が設計目標以上の場合はステップ49の処理に進む。もし、熱的余裕が設計目標未満であれば、ステップ48において、制御棒パターンを調整する。この調整した制御棒パターンに対してステップ42〜47の処理を繰り返す。ステップ49において、炉心流量Wが最大炉心流量以下であるかを判定する。炉心流量が最大炉心流量以下であればステップ50に進んで、燃焼計算を行う。さらに、次の燃焼ステップに移る指令を出し(ステップ54)、次の燃焼スッテプに対してステップ41以降の処理を実行する。ステップ49で「No」と判定された場合、すなわち、炉心流量Wが最大炉心流量を超えている場合には、全ての制御棒が炉心から全引抜きされている状態(制御棒の全引抜き状態)であるかを判定する(ステップ51)。もし、制御棒が全引抜き状態でなければ制御棒パターンを調整し、ステップ42〜49を繰り返す。もし制御棒の全引抜き状態である場合は、炉心入口冷却水温度TCが炉心入口冷却水温度下限以上かを判定する(ステップ52)。炉心入口冷却水温度TCがその温度下限以上である場合には炉心入口冷却水温度TCを減少させてステップ41〜49、51及び52の処理を繰り返す。必要に応じて、ステップ46,48の処理が実行される。ステップ51の判定結果が「Yes」となる場合が、図6において本実施例の炉心入口冷却水温度が減少し始める時点に相当する。ステップ52において、炉心入口冷却水温度TCが温度下限より小さいと判定された場合は、原子炉が臨界を維持して通常運転を続けるのが不可能な状態であることを示している。このため、運転サイクル終了と判断して計算を終了する。
以上の計算により得られる制御棒パターン、給水温度、炉心流量の情報に基づいて図6に示した本実施例のように原子炉を運転できることが確認できる。
なお、本実施例では、炉心反応度が核燃料の燃焼に伴って単純に減少する場合を例とって説明したが、燃料集合体が核燃料及び可燃性毒物を添加した場合などは、必ずしも炉心反応度が単純に減少するとは限らず、例えば運転サイクルの途中で炉心反応度が最大となる場合もありうる。この場合でも本実施例を同様に適用することは可能であり、熱効率及び燃料経済性の両方を向上させることができる。
本発明の他の実施例である沸騰水型原子力発電プラントを、図8を用いて以下に説明する。本実施例の沸騰水型原子力発電プラントは、実施例1で用いた熱バランス計算装置28及び炉心熱的制限監視装置35を、実施例2の沸騰水型原子力発電プラントに用いた構成を有する。熱バランス計算装置28及び炉心熱的制限監視装置35の機能は、実施例1と同じである。本実施例の給水制御装置27は、前述のステップ28EでMCPR(0)よりも大きいと判定されたMCPR(T)を求める根拠になった給水温度T(給水温度設定値T)、温度計25で計測された給水温度の計測値、及び制御棒の検出された位置情報を用いて、実施例2と同様な給水制御を行う。
このような本実施例によれば、実施例2と同様に図6において実線で示す炉心入口冷却水温度を得ることができる。したがって、実施例2で生じる効果を得ることができる。また、本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。具体的に説明する。第1に、本実施例は、炉心熱的制限監視装置35で算出されたMCPR(0)よりも大きなMCPR(T)を求める根拠になった給水温度設定値Tを用いて給水温度制御を行うため、シャッフリングに要する期間が低減できる。また、第2に、本実施例は、全制御棒36が炉心11から引き抜かれ、且つ炉心流量が最大炉心流量に到達した以降において炉心入口冷却水温度を低減させることによって、運転サイクル期間を伸ばすことができる。第1及び第2の理由によって、本実施例は、実施例1及び2のそれぞれよりも、沸騰水型原子力発電プラントの稼働率を向上させることができる。
前述した本発明の各実施例は、現行の原子力発電プラントに適用しても効果がある。さらに、各実施例を、一つの運転サイクルにおいて燃料集合体から取り出す熱量を増加させた原子力プラントに適用することによって、それぞれの実施例で得られる効果は特に顕著なものとなる。これは、一つの運転サイクルの運転期間が同じである場合、原子炉1の定格出力を増加させると、一つの運転サイクルにおいて燃料集合体から取り出す熱量が増加することになる。これは、炉心2でより多くの核分裂反応を起こす必要があることを意味している。一般に、10%未満の原子炉出力の増加であれば、炉心及び燃料集合体の設計最適化、さらには燃料棒設計の最適化(太径化)及び複数の燃料棒を9行9列に配置した燃料集合体からそれらを10行10列に配置した燃料集合体に替えて燃料棒本数を増やす、などによって、燃料集合体中のウラン装荷量を増加させるなどして原子炉出力を増加させても大きく燃料経済性が低下しない可能性が高い。しかし、10%を超えて原子炉出力を増加させるとなると、燃料集合体の235Uの濃縮度を増加させなければならなくなり、同じプラントで10%以上発電できる利点は大きいが、燃料経済性は低下する。このような意味から、本実施例は、原子炉出力をプラント建設時の定格出力より10%以上大きくした原子力発電プラントに適用すると効果が大きい。
また、現行の沸騰水型原子炉の炉心の出力密度は約50kw/lであることを考えると、同じ炉心で原子炉出力を10%以上増加させることは、炉心の出力密度を55kw/l以上に増加することと同じ意味となる。また、一つの運転サイクルの運転期間を10%以上延ばすことも、燃料集合体の交換無しで炉心から取り出す熱量を10%以上増やすことになるので、同じ期間で炉心の熱出力を10%以上増やすことにほぼ等しい。そういう意味で、通常の一運転サイクルは約12ヶ月であるので、14ヶ月以上の運転サイクルの炉心は同じ運転期間で熱出力を10%以上増加させた炉心とほぼ同等となる。
また、一つの運転サイクル期間に炉心で発生する熱量が多いということは、一つの運転サイクルで消費する核分裂性物質の量が多いことを意味する。従って、運転サイクル開始前における炉心への新燃料集合体の装荷体数が増加する。一般に、炉心内に装荷されている燃料集合体の体数を、燃料交換により炉心内に新たに装荷される新燃料集合体の体数で割った値をバッチ数という。バッチ数が小さいほど一つの運転サイクルにおいて燃料集合体1体から取り出される熱量が多いことになる。一般に10%以上の大幅な増出力をして、運転サイクルも設備利用率向上を目的に24ヶ月程度にすると、バッチ数は3を切る。このような炉心では反応度維持のため、燃料集合体の濃縮度の増大も大きくなり、また、反応度制御のため可燃性毒物を多く使う必要があるため、燃料経済性は低下する。本実施例における炉心入口冷却水温度の制御は、このような炉心で用いると効果がより大きくなる。
本発明による他の実施例である原子炉の運転方法を、図5及び図9を用いて説明する。実施例1,2及び3は、1つの運転サイクルの末期(第2期間)よりも前におけるその運転サイクルでの運転期間(第1期間)で、給水温度設定値を連続的に変えた給水温度制御を実施し、第1期間において炉心入口の冷却水温度がこの設定温度に保持されるように、原子炉の運転を行っている。これに対し、本実施例は、第1期間内で同一の制御棒パターンが形成されている期間において、同一の制御棒パターンが形成されている期間の初期から末期に向って給水温度設定値をステップ状に減少させ、この給水温度設定値に基づいて給水温度制御を行っている。このような給水温度制御により、同一の制御棒パターンが形成されている期間の初期から末期に向って、給水温度がステップ状に減少する。ステップ状に設定された各給水温度設定値は、1つの運転サイクルの期間を通して炉心入口の平均冷却水温度が、従来例よりも高くなるように、設定されている。本実施例において、炉心流量が増大する運転サイクル末期である第2期間は、全ての制御棒が炉心から全引抜されて炉心流量が最大炉心流量に到達する時点以降の期間であり、第2期間より前の第1期間はその時点よりも前の期間である。
本実施例の原子炉の運転方法は、図5に示す沸騰水型原子力発電プラントで行われる。本実施例において、給水温度制御装置27は、1つの運転サイクルにおいて、同じ制御棒パターンで運転される期間(図9に示された期間P1,P2及びP3)で、給水温度設定値がそれぞれステップ状に設定されている。期間P3は炉心11から全制御棒36が全引き抜きされている制御棒パターンで運転される期間である。期間P1及びP2は、何本かの制御棒36が炉心11に挿入されているが、制御棒パターンが異なっている。期間P1及びP2は炉心流量が最大流量(100%流量)になったときに終了するが、その時点で制御棒パターンチェンジが行われる。
本実施例も、実施例2と同様に、沸騰水型原子力発電プラントの各運転サイクルの開始前に、熱バランス計算装置で実施例1と同様な熱バランス計算を行い、MCPR(0)よりも大きいMCPR(T)になるように給水温度設定値Tを求める。事前に、給水温度制御装置27のメモリに記憶される。本実施例は、期間P1,P2に対して2つの給水温度設定値Tが設定され、期間P3に対しては3つの給水温度設定値が設定される。設定される給水温度設定値Tとの関係で、期間P1,P2はさらに2つの期間に分けられ、期間P1は3つの期間に分けられる。すなわち、期間P1は期間f1及び期間s1を有し、期間P2は期間f2及び期間s2を有する。期間P3は、期間f3、s3及びt3を有する。
期間s1、s2及びs3における給水温度設定値Tは、これらの期間の末期に炉心入口冷却水温度が、実施例1及び2と同様に、インターナルポンプ12でキャビテーションが発生しない上限の温度付近の温度でその上限温度よりも低い温度になるように設定される。この炉心入口冷却水温度設定値を、第1炉心冷却水温度設定値という。そのような期間s1、s2及びs3における給水温度設定値Tを給水温度設定値T2と称する。本実施例では、給水温度設定値T2は従来例と同じ給水温度設定値になっている。期間P1,P2及びP3は期間s1、s2及びs3の前に期間f1、f2及びf3を有している。これらの期間f1、f2及びf3の給水温度設定値Tは、炉心入口の冷却水温度が従来例のその温度よりも高く上記の上限温度よりも低くなるように設定される。期間f1、f2及びf3の給水温度設定値Tを給水温度設定値T1と称する。給水温度設定値T1は給水温度設定値T2よりも高くなっている。期間P3において期間s3の後になる期間t3の給水温度設定値Tは、給水温度設定値T2よりも低く、期間t3での運転が終了する時点、すなわち、1つの運転サイクルでの運転が終了する時点で、実施例2と同じ給水温度まで低下するように設定されている。期間t3の給水温度設定値Tを給水温度設定値T3と称する。給水温度設定値T1,T2及びT3が、事前に、上記メモリに記憶される。例えば、給水温度設定値T1は225℃、給水温度設定値T2は215℃及び給水温度設定値T3は195℃である。
本実施例の原子炉運転方法を、具体的に説明する。或る運転サイクルにおいて、原子炉の起動後、炉心11内に挿入されている制御棒36が制御棒駆動装置37の操作によって炉心11から引抜かれる。原子炉出力がある値(例えば、60%出力)まで上昇したとき、制御棒36の引抜を停止し、インターナルポンプ12の回転数を増加させて炉心流量を増大させ、原子炉出力を定格出力(100%出力)まで上昇させる。上記の制御棒36の引抜が停止されたときに形成された第1の制御棒パターンで、期間P1の運転が行われる。この期間P1の運転は炉心流量が最大炉心流量(例えば、100%炉心流量)になるまで行われる。この最大炉心流量は、炉心流量の設定炉心流量である。
給水温度制御装置27は、期間P1内の期間f1では給水温度設定値T1を用いた給水温度制御を実施する。給水温度制御装置27は、温度計25で測定された給水温度が給水温度設定値T1になるように、蒸気流量調節弁17の開度を制御し、高圧給水加熱器9に供給する抽気蒸気の流量を調節する。期間f1では、給水温度が給水温度設定値T1である給水が、給水配管15を通って原子炉圧力容器10内に供給される。運転期間の経過に伴って燃料集合体内の核燃料物質に含まれる核分裂性燃料物質が消費され、原子炉出力が定格出力よりも減少しようとする。この原子炉出力の減少を補償するために、炉心流量制御装置26の制御によってインターナルポンプ12の回転数が増大され、炉心流量が増加される。期間f1では、給水温度が給水温度設定値T1に保持されるため、原子炉出力の減少を補償する炉心流量の増加に伴って炉心入口冷却水温度も上昇する。
炉心入口冷却水温度は、図5に図示されていないが、炉心11の入口に設置された温度計で測定され、給水温度制御装置27に入力されている。給水温度制御装置27は、炉心入口冷却水温度の測定値が、炉心入口冷却水温度の設定温度(第2炉心入口冷却水温度設定値と称する)まで上昇したとき、給水温度設定値を給水温度設定値T1から給水温度設定値T2に変更する。このように給水温度設定値が変更された時点で期間f1の運転が終了し、期間s1の運転が開始される。給水温度設定値を変更するトリガである第2炉心入口冷却水温度設定値は、インターナルポンプ12でキャビテーションが発生しない上限の温度付近の温度でその上限温度よりも低い温度に設定される。第2炉心入口冷却水温度設定値は、前述の第1炉心入口冷却水温度設定値(実施例2参照)よりも低くなっている。しかしながら、第2炉心入口冷却水温度設定値は第1炉心入口冷却水温度設定値と同じであっても良い。
給水温度制御装置27は、給水温度設定値T2に基づいて蒸気流量調節弁17の開度を制御し、原子炉圧力容器10に供給される給水の温度を給水温度設定値T2に調節する。このようにして、期間s1における給水温度が給水温度設定値T2に保持される。給水温度制御装置27によって給水温度が給水温度設定値T1から給水温度設定値T2に減少することによって、原子炉出力が定格出力を超えようとする。この原子炉出力の上昇を避けるために、炉心流量制御装置26は、インターナルポンプ12の回転数を減少させて原子炉出力を定格出力に保持する。このため、期間f1の終了時から期間s1の開始時において、図9に示すように、炉心流量が減少し、これに併せて炉心入口冷却水温度も減少する。核分裂性物質の消費に伴う原子炉出力の減少を補償するため、期間f1と同様に、期間s1においても炉心流量が増加される。炉心流量が最大炉心流量に達したとき、期間f1、すなわち、期間P1の運転が終了する。期間s1の終了時の直前において、炉心流量が最大炉心流量に達したとき、炉心入口冷却水温度は第1炉心入口温度設定値になる。
この時点で、実施例2と同様に、炉心流量がミニマムフローまで低下され、第1回目の制御棒パターンチェンジが行われる。この制御棒パターンチェンジは、制御棒駆動制御装置(図示せず)によって該当する制御棒駆動装置37が制御され、該当する制御棒36が操作されることによって行われる。第1回目の制御棒パターンチェンジが終了したとき、第1制御棒パターンが形成され、期間P2では、この第1制御棒パターンによって原子炉の運転が行われる。その制御棒パターンチェンジが終了した後、炉心流量の増加により原子炉出力が定格出力まで上昇される。期間s1の原子炉運転の終了時から期間f2のその運転開始時における、給水温度設定値T2から給水温度設定値T1への変更は、給水制御装置27において以下のように行われる。すなわち、給水温度制御装置27は、この制御装置が入力する、各制御棒駆動装置37で検出された制御棒36の炉心11の高さ方向における位置が、第1回目の制御棒パターンチェンジ終了後の制御棒パターンになっているとき、給水温度設定値T2から給水温度設定値T1への変更を行う。期間P2では、期間f2で給水温度設定値T1を用いた給水温度制御が、期間s2で給水温度設定値T2を用いた給水温度制御が、給水温度制御装置27によって、期間P1と同様に行われる。期間f2の終了時における給水温度設定値T1から給水温度設定値T2への変更は、期間P1でのそれらの設定値の変更と同様に行われる。期間s2の終了時の直前において、炉心流量が最大炉心流量に達したとき、炉心入口冷却水温度は第1炉心入口温度設定値になる。
期間s2において、炉心流量が最大炉心流量に到達したとき、期間P2の運転が終了し、2回目の制御棒パターンチェンジが1回目の制御棒パターンチェンジと同様に実施される。本実施例においては、この2回目の制御棒パターンチェンジは最後の制御棒パターンチェンジであり、全制御棒36が炉心11から全引き抜きされた第3制御棒パターンを形成する。2回目の制御棒パターンチェンジが実行された後、炉心流量が増加されて、原子炉出力が定格出力まで上昇される。第3制御棒パターンによる原子炉の運転が期間で行われる。2回目の制御棒パターンチェンジ以降の期間P3における期間f3及びs3では、期間f1及びs1で行われる給水温度制御が実施される。すなわち、期間f3では給水温度設定値T1による給水温度制御が、期間s3では給水温度設定値T2による給水温度制御が実行される。期間f3終了時における給水温度設定値T1から給水温度設定値T2への変更も、期間f1終了時でのその変更と同様に行われる。期間s3の終了時の直前において、炉心流量が最大炉心流量に達したとき、炉心入口冷却水温度は第1炉心入口温度設定値になる。
期間s3において、炉心流量が最大炉心流量に達したとき、給水温度制御装置27は、給水温度設定値T2を給水温度設定値T3に変更する。この給水温度設定値の変更は、給水温度制御装置27が、炉心流量制御装置26から入力する炉心流量が最大炉心流量に達したと判定したときに行われる。給水温度設定値T2が給水温度設定値T3に変更されたときには、給水温度設定値T1を給水温度設定値T2に変更したときと同様に、原子炉出力を定格出力保持するために、炉心流量が減少される。これに併せて、炉心入口冷却水温度も低下する。期間t3において、給水温度制御装置27は、給水温度設定値T3に基づいて蒸気流量調節弁17の開度を制御し、給水の温度を給水温度設定値T3に調節する。期間t3において原子炉圧力容器10に供給される給水の温度は給水温度設定値T3に保持される。炉心流量が期間t3において最大炉心流量に到達したとき、期間P3、すなわち、この運転サイクルでの原子炉の運転が終了する。この時点で原子炉が停止される。炉心入口冷却水温度は、期間t3の開始時よりも期間t3の終了時で高くなっている。
本実施例は、期間P1,P2,P3における給水温度設定値の変更、すなわち、給水温度設定値T1から給水温度設定値T2への変更が、炉心入口冷却水温度の測定値が第2炉心入口冷却水温度設定値に達したときに行っている。炉心入口冷却水温度は炉心流量の増加に比例して上昇する。このため、給水制御装置27は、炉心流量制御装置26から入力する炉心流量が、第2炉心入口冷却水温度設定値に対応して定まる炉心流量設定値に達したときに、給水温度設定値T1から給水温度設定値T2に変更することも可能である。
本実施例は、実施例2と同様に、全制御棒36が炉心11から完全に引き抜かれた状態で炉心流量が最大炉心流量に到達する時点以降の期間(第2期間)、すなわち、期間t3において、給水温度を、全制御棒36が炉心11から完全に引き抜かれた状態で炉心流量が最大炉心流量に到達する直前の給水温度よりも減少させているので、炉心入口冷却水温度の減少により反応度を増加させることができる。このため、本実施例は、従来例よりも1つの運転サイクルの期間を伸ばすことができ、原子力発電プラントの稼働率を向上させることができる。
本実施例は、1つの運転サイクルにおいて、全制御棒36が炉心11から完全に引き抜かれた状態で炉心流量が最大炉心流量に到達する時点よりも前の期間(第1期間)、すなわち、期間f1から期間s3において、期間f1、f2、f3での給水温度設定値T1を従来例の給水温度設定値よりも高くしているので、その分、期間f1、f2、f3における炉心入口冷却水温度を従来例のそれよりも高くすることができる。このため、本実施例は、給水温度設定値Tを第1期間において連続的に変化させる実施例2に比べて熱効率が低下するが、従来例よりも熱効率を増大させることができる。本実施例における燃料経済性も、従来例よりは向上する。
本実施例は、同じ制御棒パターンの期間において給水温度をステップ状に制御するので、給水温度を連続的に制御する実施例1,2及び3に比べて給水温度制御を単純化できる。このため、本実施例は、給水温度制御装置27及び熱バランス計算装置28を簡略化することができる。
本実施例は、1つの運転サイクル内での同一制御棒パターンの期間において、給水温度設定値の変更を1回だけ行っている、すなわち、給水温度を1回だけステップ状に変更している。しかし、その同一の制御棒パターンの期間において、給水温度設定値の変更を複数回行うことも可能である。これは、給水温度を複数回ステップ状に制御することになる。給水温度を複数回ステップ状に制御する場合には、同一の制御棒パターンの期間で用いる給水温度設定値は異なる給水温度で3つ以上設定される。3つ以上の給水温度設定値は、同一の制御棒パターンの期間の終了時からその期間の開始時に向かって給水温度が増大するように設定される。その期間において、最後に用いられる給水温度設定値は従来例のその設定値と同じである。このように、給水温度を同一の制御棒パターンの期間において複数回ステップ状に制御することによって、図9に示す給水温度を1回だけステップ状に制御する場合に比べて熱効率が増大する。
上記した実施例は、第2期間である期間t3において1つの給水温度設定値T3を用いて給水温度制御を行っている。しかし、この実施例において、期間t3内を複数の期間に分け、分けられた複数の期間における各給水温度設定値を、第2期間の初期から第2期間の終了時に向って低くなるように設定しても良い。
本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
原子炉の一つの運転サイクルにおける炉心流量及び炉心入口冷却材温度の変化を示す特性図である。
図1に示す熱バランス計算装置における演算処理及び給水温度制御装置における制御の内容を示す説明図である。
炉心流量及び炉心冷却材温度を変化させた場合の、炉心反応度と最小限界出力比(MCPR)の変化を比較した特性図である。
本発明の他の実施例である沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
図5に示す実施例で行われる、一つの運転サイクルにおける運転方法の概念を示す説明図である。
図5に示す実施例における原子炉の運転計画方法を示すフロー図である。
本発明の他の実施例である沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である原子炉の運転方法における、一つの運転サイクルでの炉心流量及び炉心入口冷却材温度の変化を示す特性図である。
符号の説明
1…原子炉、2…主蒸気管、3…高圧タービン、4…湿分分離過熱器(もしくは湿分分離再熱器)、5…低圧タービン、7…低圧給水加熱器、8…給水ポンプ、9…高圧給水加熱器、10…原子炉圧力容器、11…炉心、12…インターナルポンプ、14…差圧計、15…給水配管、17…蒸気流量調節弁、21…圧力計、22,24…流量計、23,25…温度計、26…炉心流量制御装置、27…給水温度制御装置、28…熱バランス計算装置、30…ダウンカマー、31…下部プレナム、36…制御棒、37…制御棒駆動装置。