JP2008128881A - 原子力プラントの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】出力向上時で原子炉熱出力を設定熱出力までより短時間に上昇でき、発電量を増加できる原子力プラントの運転方法を提供する。
【解決手段】既設の原子力プラントにおいて、出力向上は運転サイクルB以降で行い運転サイクルAでは実施しない。運転サイクルBでの定格熱出力B及び定格主蒸気流量Bは、運転サイクルAの定格熱出力A及び定格主蒸気流量Aより大きい。運転サイクルAの全期間での運転では定格熱出力A、定格主蒸気流量B及び定格給水温度が保持される。運転サイクルBでは原子炉熱出力が時刻T2Aで定格熱出力Bに到達する。給水温度は、運転サイクルBの初期(時刻T2B〜T2Cの期間)でその定格給水温度よりも低くなっており、時刻T2Dでその定格給水温度になる。これに併せて、主蒸気流量も、時刻T2B〜T2Cの期間では定格主蒸気流量Aになり、時刻T2Dで定格主蒸気流量Bに到達する。
【選択図】図1
【解決手段】既設の原子力プラントにおいて、出力向上は運転サイクルB以降で行い運転サイクルAでは実施しない。運転サイクルBでの定格熱出力B及び定格主蒸気流量Bは、運転サイクルAの定格熱出力A及び定格主蒸気流量Aより大きい。運転サイクルAの全期間での運転では定格熱出力A、定格主蒸気流量B及び定格給水温度が保持される。運転サイクルBでは原子炉熱出力が時刻T2Aで定格熱出力Bに到達する。給水温度は、運転サイクルBの初期(時刻T2B〜T2Cの期間)でその定格給水温度よりも低くなっており、時刻T2Dでその定格給水温度になる。これに併せて、主蒸気流量も、時刻T2B〜T2Cの期間では定格主蒸気流量Aになり、時刻T2Dで定格主蒸気流量Bに到達する。
【選択図】図1
Description
本発明は、原子力プラントの運転方法に係り、特に、既設の原子力プラント等の出力向上に適用するのに好適な原子力プラントの運転方法に関する。
従来の新設の原子力プラントは、例えば原子炉の炉心で発生する熱出力を増大させるために、炉心の構成または燃料集合体の構成等を改良して、炉心出口における主蒸気流量を増加させることによって電気出力を増大させている。この一例が特開平9−264983号公報に記載されている。特開平9−264983号公報に記載されている炉心は、燃料有効長が2.5m以上3.4m未満の複数の燃料集合体が装荷され、出力密度が52kW/lよりも大きくなっている。
特開2005−201696号公報及び特開2006−208238号公報は、既設の原子力プラントにおける出力向上策を記載している。この出力向上策は、ある運転サイクルでの運転が終了して、次の運転サイクルでの運転を行う場合に、給水温度を前の運連サイクルでの給水温度よりも減少させている。これによって、後者の運転サイクルでの原子炉出力が前者の運転サイクルでのそれよりも向上される。
特開2005−201696号公報及び特開2006−208238号公報は、既設の原子力プラントにおける出力向上策を記載している。この出力向上策は、ある運転サイクルでの運転が終了して、次の運転サイクルでの運転を行う場合に、給水温度を前の運転サイクルでの給水温度よりも減少させている。これによって、後者の運転サイクルでの原子炉出力が前者の運転サイクルでのそれよりも向上される。
特開2005−201696号公報及び特開2006−208238号公報に記載されたように、給水温度を低下させて出力向上を行う場合は、主蒸気流量が出力向上の前後の運転サイクルで変化しない。このため、出力向上に際して、原子力プラントの構成を大幅に変更しなくて済むというメリットがある。しかしながら、原子力プラントの熱効率が低下するという課題が生じる。この課題は、出力向上を行う運転サイクルにおいて給水温度を高めることによって解決することができる。
出力向上を行う運転サイクルとこの前で出力向上を行わない運転サイクルでの定格給水温度を同じにすると、以下に示す課題が生じることを発明者らが見出した。出力向上を行わない運転サイクルでは、原子炉の起動時で原子炉の熱出力の増加にほぼ比例して主蒸気流量が増加する。これに対し、出力向上を行う運転サイクルでは、原子力プラントは、熱出力の増加及び主蒸気流量の増加の両方の影響を同時に受けることになる。特に、主蒸気流量の増加は流体振動などを引き起こす可能性がある。これを避けるため、出力向上を最初に実施する運転サイクルでは、起動時において、原子炉の熱出力をゆっくりと上昇させなければならない。熱出力の上昇速度を遅くした場合には、定格熱出力で運転する期間が短くなるため、原子力プラントの総発電量が減少するという新たな課題が生じる。本発明は、発明者らが見出したその新たな課題を改善するために成されたものである。
本発明の目的は、原子炉熱出力を設定出力までより短時間に上昇させ、発電量を増加できる原子力プラントの運転方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の特徴は、ある運転サイクルにおける原子炉の起動時において熱出力を熱出力設定値まで上昇させ、
原子炉に供給する給水の温度を、熱出力が熱出力設定値に到達した後の設定期間において、給水温度設定値よりも低い温度にし、
給水の温度を設定期間経過後に給水温度設定値まで上昇させることにある。
原子炉に供給する給水の温度を、熱出力が熱出力設定値に到達した後の設定期間において、給水温度設定値よりも低い温度にし、
給水の温度を設定期間経過後に給水温度設定値まで上昇させることにある。
本発明は、原子炉に供給する給水の温度を、熱出力が熱出力設定値に到達した後の設定期間において、給水温度設定値よりも低い温度にし、給水の温度を設定期間経過後に給水温度設定値まで上昇させているので、熱出力が熱出力設定値に到達しても、その設定期間における主蒸気流量を熱出力設定値に対応した主蒸気流量設定値よりも少なくすることができる。このため、原子炉熱出力の増加による原子力プラントへの影響と主蒸気流量の増加によるそのプラントへの影響を分離して確認することができる。したがって、原子炉熱出力をより短時間に熱出力設定値まで上昇させることができ、原子力プラントの発電量を増加させることができる。
上記の目的は、第1運転サイクルにおける原子炉の起動時において、原子炉の熱出力を熱出力設定値まで上昇させ、原子炉に供給する給水の温度を、給水温度設定値よりも低い温度にし、
第1運転サイクルの後の第2運転サイクルにおける原子炉の起動時において、熱出力を熱出力設定値まで上昇させ、給水の温度を給水温度設定値まで上昇させることによっても達成できる。
第1運転サイクルの後の第2運転サイクルにおける原子炉の起動時において、熱出力を熱出力設定値まで上昇させ、給水の温度を給水温度設定値まで上昇させることによっても達成できる。
本発明によれば、原子炉熱出力を設定出力までより短時間に上昇させ、発電量を増加させることができる。
本発明の実施例を、以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力プラントの運転方法を以下に説明する。まず、本実施例の運転方法を実施する原子力プラントである沸騰水型原子力発電プラントを、図2を用いて説明する。沸騰水型原子力発電プラントは直接サイクル型原子力プラントの一種である。
沸騰水型原子力発電プラント17は、原子炉18、高圧タービン9、低圧タービン10及び復水器11を備える。原子炉18は、原子炉圧力容器1内に炉心2を配置している。炉心5には複数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。原子炉圧力容器1内には、炉心2を取囲む炉心シュラウド19、気水分離器3、蒸気乾燥器4及びジェットポンプ5が設置される。気水分離器3及び蒸気乾燥器4は炉心2の上方に配置される。複数のジェットポンプ5が、炉心シュラウド19を取囲んで原子炉圧力容器1と炉心シュラウド19の間に配置される。再循環配管20に再循環ポンプ6を設置した再循環系が設けられている。燃料集合体間に挿入され、原子炉18の熱出力を制御する制御棒7が設けられる。
原子炉圧力容器1内の冷却水は、再循環配管20内に流入し、再循環ポンプ6で昇圧されてジェットポンプ5内に噴出される。ジェットポンプ5は、この噴出流によって原子炉圧力容器1内の冷却水を更に吸い込み、この冷却水を炉心2より下方の下部プレナム21内に供給する。下部プレナム21内の冷却水は、炉心2内に導かれ、加熱されて一部が蒸気になる。炉心2内を上昇した蒸気は、気水分離器3及び蒸気乾燥器4を通る間に水分が除去され、主蒸気配管8に排出される。この蒸気は、高圧タービン9及び低圧タービン10に導かれ、これらのタービンを回転させる。タービンの回転力は、タービンに連結されている発電機(図示せず)を回転させる。低圧タービン10から排出された蒸気は、復水器11で凝縮されて水となる。この水は、給水ポンプ13で昇圧され、給水配管14を通って原子炉圧力容器1内に供給される。
複数の低圧給水加熱器12Aが給水ポンプ13より上流側で給水配管14に設置され、複数の高圧給水加熱器12Bが給水ポンプ13より下流側で給水配管14に設置されている。それぞれの低圧給水加熱器12Aは高圧タービン9より下流側の主蒸気配管8及び低圧タービン10に連絡される抽気配管15Aに接続される。それぞれの高圧給水加熱器12Bは高圧タービン9に連絡される抽気配管15Bに接続される。主蒸気配管8及び低圧タービン10から抽気された蒸気は、複数の抽気配管15Aを通って各低圧給水加熱器12Aに供給され、給水を加熱する。高圧タービン9から抽気された蒸気は、複数の抽気配管15Bを通って各高圧給水加熱器12Bに供給され、給水をさらに高温になるように加熱する。高温に加熱された給水が原子炉圧力容器1内に供給される。抽気配管15Bに設けられた抽気流量調節弁16の開度制御によって、高圧給水加熱器12Bに供給される蒸気の流量が調節される。これによって、給水の加熱量が調整され、給水温度が制御される。抽気流量調節弁16は、図示されていないが、全ての抽気配管15B及び全ての抽気配管15Aに設置されている。なお、一部の抽気流量調整弁16を全閉することによって、一部の給水加熱器への抽気蒸気の供給を停止してもよい。熱効率の低下をなるべく小さくして給水温度を下げるためには、下流側の給水加熱器(高圧給水加熱器12B)からの抽気蒸気の供給を止めることが望ましい。
本実施例における原子力プラントの運転方法を、図1を用いて、説明する。既設の沸騰水型原子力発電プラント17において、出力向上は運転サイクルB以降で行われるものとする。出力向上が行われる運転サイクルBでの定格熱出力(以下、定格熱出力Bという)及び定格主蒸気流量(以下、定格主蒸気流量Bという)は、出力向上が行われていない運転サイクルAの定格熱出力(以下、定格熱出力Aという)及び定格主蒸気流量(以下、定格主蒸気流量Aという)よりも大きくなっている。これは、運転サイクルBよりも後の運転サイクルでも同様である。運転サイクルAは、出力向上を行う運転サイクルBの前の運転サイクルである。給水温度の定格値は、運転サイクルA,Bで同じである。一つの運転サイクルは、原子力プラントの起動時から燃料集合体の交換のために原子力プラントの運転を停止するまでの期間である。
運転サイクルAにおける定格熱出力(熱出力設定値)、定格主蒸気流量(主蒸気流量設定値)及び定格給水温度(給水温度設定値)は100%である。沸騰水型原子力発電プラント17の起動時において、原子炉熱出力は、制御棒7を炉心2から引き抜くことにより例えば60%まで上昇し、その後、再循環ポンプ6の回転数を増加させることによって炉心2に供給される冷却水の流量(炉心流量)を増大させて100%まで上昇させる。主蒸気流量も、原子炉熱出力と同様に定格主蒸気流量Aである100%まで上昇する。給水温度も定格給水温度まで上昇する。原子炉熱出力、主蒸気流量及び給水温度は、ほぼ起動後の時刻T1でそれぞれ定格値に到達し、運転サイクルAでの運転を停止するまでの大部分の期間において実質的に定格値に保持される。原子炉熱出力の100%の保持は、制御棒のパターン交換及び炉心流量の増加によって行われる。前述の大部分の期間には、制御棒のパターン交換に要する期間は含まれていない。運転サイクルAの末期に炉心2内に全制御棒7が挿入されることによって、運転サイクルAでの、沸騰水型原子力発電プラント17の運転が終了する。
運転サイクルAにおける運転停止後に炉心2内の一部の燃料集合体が新燃料集合体と交換される。その後、出力向上の最初の運転サイクルである運転サイクルBでの、沸騰水型原子力発電プラント17の運転が開始される。運転サイクルBにおける定格熱出力及び定格主蒸気流量は、例えば、105%である。原子炉熱出力は、前述したように、制御棒7の引き抜き及び炉心流量の増加によって上昇される。この原子炉熱出力は、運転サイクルBにおける起動後の時刻T2Aで定格熱出力Aに到達し、時刻T2Bで出力向上時の定格熱出力(定格熱出力B)に達する。
給水温度は、運転サイクルBの初期において定格給水温度よりも低くなるように制御される。この給水温度の制御は、それぞれの抽気配管15A,15Bに設けられたそれぞれの抽気流量調節弁16の開度を低減させることによって行われる。すなわち、各低圧給水加熱器12A及び各高圧給水加熱器12Bに供給される抽気蒸気の流量が減少し、給水温度が低下する。給水温度は、運転サイクルBにおける起動後の時刻T2Bから時刻T2Cの間の期間(設定期間)において、定格給水温度よりも低い給水温度設定値に保持される。時刻T2Cが経過したとき、各抽気流量調節弁16の開度を徐々に増大させ、各低圧給水加熱器12A及び各高圧給水加熱器12Bに供給する抽気蒸気流量を徐々に増加させる。原子炉圧力容器1に供給される給水温度が増加し、その給水温度は時刻T2Dにおいて定格給水温度に達する。時刻T2Dで各抽気流量調節弁16の開度の増大が停止される。このため、時刻T2D以降において、給水温度は定格給水温度に保持される。原子炉熱出力、主蒸気流量及び給水温度は、時刻T2Dから運転サイクルBの末期までの大部分の期間においてそれぞれの定格値に保持される。この大部分の期間には、制御棒のパターン交換に要する期間は含まれていない。運転サイクルBの末期において全制御棒7が炉心2内に挿入されることによって、運転サイクルBにおける沸騰水型原子力発電プラント17の運転が終了する。
運転サイクルBの次の運転サイクル(図示せず)においても、運転サイクルBと同じ定格熱出力で出力向上が行われる。この運転サイクルでの沸騰水型原子力発電プラント17の運転は以下のように行われる。制御棒7の引き抜き及び炉心流量の増加によって、原子炉熱出力は、定格熱出力Bまで上昇する。給水温度は、抽気流量調節弁16の開度制御によって定格給水温度まで上昇される。本運転サイクルでは、運転サイクルBの初期において行われた給水温度を下げる操作は行われない。このため、主蒸気流量も、本運転サイクルでの定格主蒸気流量(定格主蒸気流量Bと同じ)まで上昇される。この主蒸気流量は、原子炉熱出力が定格熱出力Bに到達する時点で、定格主蒸気流量Bに到達する。本運転サイクルの末期まで、原子炉熱出力、主蒸気流量及び給水温度が、それぞれの定格値に保持される。本運転サイクルの末期において、沸騰水型原子力発電プラント17の運転が停止される。以降の運転サイクルでは、本運転サイクルで行われた沸騰水型原子力発電プラント17の運転が繰り返される。
本実施例は、給水温度を下げることによって、特開2005−201696号公報に記載されている理由により主蒸気流量を少なくすることができる。すなわち、時刻T2Bから時刻T2Cの間の期間では、給水温度を定格給水温度よりも低くすることによって、給水のエンタルピーを意図的に下げることができ、原子炉圧力容器1から排出される主蒸気のエンタルピーと給水のエンタルピーの差を大きくすることができる。このため、運転サイクルBにおいて、原子炉熱出力が定格熱出力Bまで上昇しても、主蒸気流量は、時刻T2Bから時刻T2Cの間の期間では、定格主蒸気流量Aまでしか増加しない。この主蒸気流量は、定格主蒸気流量Bよりも小さな値である。運転サイクルBにおける主蒸気流量は、時刻T2C以降での給水温度の上昇に伴って増大し、時刻T2Dで定格主蒸気流量Bに到達する。時刻T2Bから時刻T2Cの間の期間では、低い給水温度を保持したまま運転するので、原子炉熱出力は出力向上時の高い定格熱出力Bになるが、主蒸気流量は出力向上前の定格主蒸気流量Aとなる。時刻T2Dで、原子炉熱出力、給水温度及び主蒸気流量の全てが、出力向上時における定格値となる。
時刻T2Cから時刻T2Dの給水温度の増加によって炉心2に負の反応度が入るため、原子炉熱出力は減少する。原子炉熱出力の減少は一時的には許容されるが、原子炉熱出力を定格熱出力Bに保持することによって沸騰水型原子力発電プラントでのトータルの発電量を増加することができる。時刻T2Cから時刻T2Dの期間での原子炉熱出力の減少は、炉心流量を増加させるために再循環ポンプ6の回転数を増加させる操作、または制御棒7の炉心2からの引き抜き操作のいずれかを行うことによって防止することができる。給水温度が低い状態では一般的に炉心2の熱的余裕が大きくなるため、時刻T1Bから時刻T1Cまでの炉心流量は定格熱出力Bで運転中の原子炉における最低炉心流量よりも低い値とし、時刻T1Cから時刻T1Dにかけて炉心流量を増加させ、時刻T1Dにおいて炉心流量が定格熱出力Bで運転中の原子炉における最低炉心流量を超えるようにしても良い。
原子力プラントの出力向上時では、原子炉熱出力及び主蒸気流量のそれぞれの増加の影響を同時に受ける。そのため、出力向上を行う最初の運転サイクルの起動時において、図3に示すように、時刻T2Aで、一旦、原子炉熱出力を定格熱出力Aまで上昇させ、さらに、沸騰水型原子力プラントにかかる負荷を確認しながら定格熱出力Bまでゆっくりと原子炉熱出力を上昇させることが考えられる。この原子炉熱出力は、時刻T3Bで定格熱出力Bに達する。運転サイクルBにおいて、主蒸気流量も、原子炉熱出力と同様に、時刻T2Aから時刻T3Bに掛けてゆっくりと上昇され、時刻T3Bで定格主蒸気流量Bに到達する。図3は、原子炉熱出力及び主蒸気流量が連続的に増加する例を示しているが、これらをステップ状に増加させる場合も考えられる。
本実施例は、運転サイクルBの初期、例えば、時刻T2BからT2Cまでの期間で給水温度を定格給水温度よりも低くしているので、原子力プラントにおいて出力向上を実施した場合における原子炉熱出力の増加による影響と主蒸気流量の増加による影響を分離して確認することができる。すなわち、本実施例は、時刻T2BからT2Cまでの期間では、原子炉熱出力が定格熱出力Bになっているが、主蒸気流量が定格主蒸気流量Bよりも低い値になっており、時刻T2C以降において主蒸気流量が定格主蒸気流量Bまで上昇されている。換言すれば、原子炉熱出力が定格熱出力Bに到達する時期と主蒸気流量が定格主蒸気流量Bに到達する時期が異なっている。したがって、原子炉熱出力を定格熱出力Aよりも増加させたことによる沸騰水型原子力発電プラント17への影響と、主蒸気流量を定格主蒸気流量Aよりも増加させたことによる沸騰水型原子力発電プラント17への影響をそれぞれ確認することができる。
原子力プラントの出力向上の実績が豊富な米国では、出力向上時に蒸気乾燥器破損などのトラブルが発生している。このトラブルのほとんどは出力向上時における主蒸気流量増加の影響によるものである。このため、国内で出力向上を行う場合には、原子炉熱出力を少し増加させ、この状態で原子力プラントの機器の健全性が十分確認できるまで運転し、その後、原子炉熱出力を少しずつ増加させることが想定される。本実施例によれば、運転サイクルBの初期において上記のように主蒸気流量を増加させずに原子炉熱出力を増加できるので、図3に示す方法よりも短時間に原子炉熱出力を定格熱出力まで増加させることができる。すなわち、時刻T1、時刻T2B及び時刻T3Bの関係は、T1<T2B<T3Bとなる。給水温度が低い時刻T2BからT2Cまでの期間では熱効率が多少低下するが、本実施例は、原子炉熱出力の増加の影響が大きいため、沸騰水型原子力発電プラント17のトータルの発電量を増加できる。本実施例は、図3に示す運転方法に比べて斜線部Pの発電量を増加することができる。
本実施例は、上記したように、主蒸気流量が定格主蒸気流量Bに到達する時期が遅いため、出力向上時における主蒸気流量の増加による影響(例えば、蒸気乾燥器の破損等)を確実に確認することができる。また、本実施例は、特開2005−201696号公報及び特開2006−208238号公報のそれぞれの図4に示される出力向上時の運転サイクルのように、運転サイクルの全期間を通して給水温度(抽気流量)を低下させていないので、それらの公知技術に比べて熱効率を向上させることができる。
本実施例では時刻T2Bから時刻T2Cまでの期間において給水温度を定格給水温度よりも低く保っているが。どの程度低い温度にするかは出力向上の幅によって異なる。特開2005−201696号公報の表1に記載されているように、原子炉熱出力を増加させたときに主蒸気流量を増加させないためには、出力1%の増加について給水のエンタルピーを19kJ/kg減少させる必要がある。これは、沸騰水型軽水炉の一般的な原子炉圧力である7MPaで給水温度に換算すると出力1%あたり4℃の減少となる。米国での出力向上の実績から、2%程度の出力向上は計測設備の更新のみで実現できる。このため、2%程度の出力向上では沸騰水型原子力発電プラントへの負担増加を考慮しなくても良い。よって、本実施例は、2%を超える出力向上時に有効と考えられるため、給水温度は定格給水温度よりも8℃以上低くする。例えば、本実施例において原子炉熱出力を5%向上させる出力向上を行う場合には、給水温度を定格給水温度よりも20℃程度低くすれば良い。ただし、給水温度の低下幅はこれより小さくてもある程度の効果はある。
時刻T2Bから時刻T2Cまでの期間は、原子炉熱出力の増加による沸騰水型原子力発電所17への影響を調べるために利用することができ、沸騰水型原子力発電プラント17の各部のデータ採取等を行う。この期間は最大50時間程度になる。
実施例1では、原子炉熱出力を一度に定格熱出力まで増加させたが、出力の向上幅が大きい場合には、段階的に原子炉熱出力を定格熱出力Bまで増加させても良い。例えば、定格熱出力Aから定格熱出力Bに熱出力を20%増加させる場合、この出力の向上幅(20%)を4ステップに分け、原子炉熱出力を定格熱出力Aから1ステップ当たり5%ずつ上昇させる。このように、1ステップ当たりの出力向上幅が5%である場合には、給水温度の低下幅は20℃程度となる。主蒸気流量が定格主蒸気流量Bに達する時期は、原子炉熱出力が定格熱出力Bに到達する時期よりも遅くなっている。
本発明の他の実施例である実施例2の原子力プラントの運転方法を、図4を用いて以下に説明する。本実施例の運転方法も、図2に示す沸騰水型原子力発電プラント17を対象に実施される。図4に示される第1及び第2運転サイクルは、出力向上が行われている運転サイクルである。第1運転サイクルは、出力向上が行われていない運転サイクルの次の運転サイクルであり、出力向上が最初に行われる。第1運転サイクル以降の各運転サイクルでの定格熱出力(定格熱出力B)及び定格主蒸気流量(定格主蒸気流量B)は、出力向上が行われていない運転サイクルでの定格熱出力(定格熱出力A)及び定格主蒸気流量(定格主蒸気流量A)よりも大きくなっている。第1運転サイクル以降の各運転サイクルでの定格給水温度は、出力向上が行われていない運転サイクルでの定格給水温度と同じである。
第1運転サイクルでは、原子炉熱出力は、定格熱出力Bまで上昇され、その運転サイクルの末期まで定格熱出力Bに保持される。しかしながら、給水温度は、主蒸気流量が定格主蒸気流量Aになる、定格給水温度よりも低い温度まで上昇される。給水温度は、第1運転サイクルの末期までその低い温度に保持される。このため、主蒸気流量も、第1運転サイクルの期間中、定格主蒸気流量Aに保持される。第1運転サイクルでの運転が終了した後、炉心2内の一部の燃料集合体が新燃料集合体に交換され、第2運転サイクルでの運転が行われる。この第2運転サイクルの期間中、原子炉熱出力は定格熱出力Bに保持される。第2運転サイクルにおいて、給水温度は、上昇されて、原子炉熱出力が定格熱出力Bに到達する時刻に定格給水温度に達する。このため、主蒸気流量も、原子炉熱出力が定格熱出力Bに到達する時刻に定格主蒸気流量Bに達する。第2運転サイクルの期間の間、給水温度は定格給水温度に保持され、主蒸気流量は定格主蒸気流量Bに保持される。第2運転サイクルより後の各運転サイクルでは、第2運転サイクルと同じ運転が行われる。
本実施例は、給水温度を定格給水温度よりも低い温度に保持する第1運転サイクルを経て給水温度を定格給水温度にする第2運転サイクルの運転を実行するので、実施例1で生じる効果を得ることができる。ただし、第1運転サイクルの全期間に渡って給水温度を上記のように低くするので、熱効率が実施例1よりも低くなる。また、本実施例は、実施例1のように、時刻T1Cから時刻T1Dにかけて給水温度を徐々に上げるために必要な制御装置が不要になる。これは、第1運転サイクルの運転の終了から第2運転サイクルの運転開始までの定期検査の期間において、抽気流量調節弁16を手動により所定の開度(低格給水温度が得られる開度)まで開くことができるからである。第1運転サイクルの運転は、一回だけ実施しても良いし、複数回繰り返してもよい。本実施例では、第1運転サイクル及び第2運転サイクルで原子炉熱出力を等しくしたが、給水流量計などの計測装置の誤差が2%程度あると考えられるため、原子炉熱出力は2%以下の差を許容する。
また、本実施例は、沸騰水型原子力発電プラント17において出力向上時に異常が発生したときの運転方法としても使用できる。原子力プラントの出力向上の実績が豊富な米国での事例から、出力向上時のトラブルは主に蒸気流量増加が原因で発生すると考えられている。主蒸気流量などの増加によりトラブルが発生する場合は、沸騰水型原子力発電プラント17で用いられている機器の振動を伴うことが多い。このため、例えば原子炉圧力容器1内の炉内構造物、及び蒸気系及び給水系の機器に振動センサを設置する。振動センサが想定している振動よりも大きな振動を検知した場合には、本実施例の第1運転サイクルの運転を行い、異常が生じていなければそのまま第2運転サイクルの運転に移行する。この場合は、トラブルの原因が解明され、トラブルが解決するまでの期間は給水温度を低くした第1運転サイクルの運転を、複数回、継続して実施する。
実施例1における運転サイクルBの運転、及び実施例2における第1運転サイクルの運転は、原子力プラントにおいて最初に出力向上を行う運転サイクルで実施することが最も効果的である。しかし、運転サイクルBの運転及び第1運転サイクルの運転は、必ずしも出力向上を行う最初の運転サイクルで実施しなくても良く、また複数回実施しても良い。実施例2において、第1運転サイクルの運転及び第2運転サイクルの運転を連続して実施すると最も効果的であるが、第1運転サイクルの運転を複数回実施した後に第2運転サイクルの運転を実施しても良い。
さらに、実施例1及び実施例2の運転方法は、既設の原子力プラントで出力向上を行う場合に適用すると効果的であるが、既設の原子力プラントよりも原子炉熱出力が大きい新設の原子力プラントに適用することができる。
1…原子炉圧力容器、2…炉心、3…気水分離器、4…蒸気乾燥器、5…ジェットポンプ、6…再循環ポンプ、7…制御棒、8…主蒸気配管、9…高圧タービン、10…低圧タービン、11…復水器、12A…低圧給水加熱器、12B…高圧給水加熱器、13…給水ポンプ、14…給水配管、15A,15B…抽気配管、16…抽気流量調整弁、17…沸騰水型原子力発電プラント、18…原子炉、19…炉心シュラウド。
Claims (11)
- ある運転サイクルにおける原子炉の起動時において熱出力を熱出力設定値まで上昇させ、
前記原子炉に供給する給水の温度を、前記熱出力が前記熱出力設定値に到達した後の設定期間において、給水温度設定値よりも低い温度にし、
前記給水の温度を前記設定期間経過後に前記給水温度設定値まで上昇させることを特徴とする原子力プラントの運転方法。 - 前記ある運転サイクルにおける前記熱出力設定値は、前記ある運転サイクルよりも前の他の運転サイクルにおける熱出力設定値よりも大きくなっている請求項1に記載の原子力プラントの運転方法。
- 前記ある運転サイクル及び前記他の運転サイクルにおける前記給水温度設定値が実質的に等しくなっている請求項2に記載の原子力プラントの運転方法。
- 前記給水の温度を前記低い温度から前記給水温度設定値まで上昇させる期間では、前記原子炉に内蔵された炉心に供給する冷却材の流量を増加させる請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の原子力プラントの運転方法。
- 前記設定期間の間、前記冷却材の流量を、前記熱出力設定値での運転時の最低冷却材流量よりも低く保つ請求項4に記載の原子力プラントの運転方法。
- 前記給水の温度を前記低い温度から前記給水温度設定値まで上昇させる期間では、前記原子炉に内蔵された炉心から制御棒を引き抜く請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の原子力プラントの運転方法。
- 前記熱出力が前記熱出力設定値に到達してから前記給水の温度が前記給水温度設定値に到達するまでの期間において、前記熱出力が前記熱出力設定値に実質的に保持される請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の原子力プラントの運転方法。
- 前記給水の温度が前記給水温度設定値に到達してから前記ある運転サイクルの末期までの期間の大部分において、前記熱出力が前記熱出力設定値に実質的に保持される請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の原子力プラントの運転方法。
- 第1運転サイクルにおける原子炉の起動時において、原子炉の熱出力を熱出力設定値まで上昇させ、前記原子炉に供給する給水の温度を、給水温度設定値よりも低い温度にし、
前記第1運転サイクルの後の第2運転サイクルにおける原子炉の起動時において、前記熱出力を前記熱出力設定値まで上昇させ、前記給水の温度を前記給水温度設定値まで上昇させることを特徴とする原子力プラントの運転方法。 - 前記第1運転サイクルにおける前記熱出力設定値は、前記第1運転サイクルよりも前の他の運転サイクルにおける熱出力設定値よりも大きくなっている請求項9に記載の原子力プラントの運転方法。
- 前記第1運転サイクルの大部分の期間において、前記熱出力が前記熱出力設定値に実質的に保持され、前記給水の温度が、前記低い温度に実質的に保持され、
前記第2運転サイクルの大部分の期間において、前記熱出力が前記熱出力設定値に実質的に保持され、前記給水の温度が、前記給水温度設定値に実質的に保持される請求項9または請求項10に記載の原子力プラントの運転方法。
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JP2011038891A (ja) * | 2009-08-11 | 2011-02-24 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | 沸騰水型原子力プラント及び原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験方法 |
JP2017194312A (ja) * | 2016-04-19 | 2017-10-26 | 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 | 原子力プラントの出力制御装置及び方法 |
-
2006
- 2006-11-22 JP JP2006315534A patent/JP2008128881A/ja active Pending
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