JP5452027B2 - 疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板 - Google Patents

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本発明は、アルミニウム合金熱交換器用の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板(以下、アルミニウムをAlとも言う)に関するものである。本発明では、少なくとも心材アルミニウム合金板とアルミニウム合金犠牲防食材とをクラッドした積層板であって、ろう付けによって熱交換器とされる熱交換器用の素材をアルミニウム合金積層板あるいは単に積層板とも言う。また、少なくとも心材アルミニウム合金板とアルミニウム合金犠牲防食材とをクラッドし、ろう付け相当の加熱処理を施された積層板を、ろう付け相当加熱後のアルミニウム合金積層板あるいは単にろう付け相当加熱後の積層板とも言う。
自動車の車体軽量化のため、従来から使用されている銅合金材に代わって、熱交部材にも、アルミニウム合金材の適用が増加しつつある。そして、これら熱交部材用アルミニウム合金材は、多層化させた積層板(クラッド板、クラッド材とも言う)からなる耐食性アルミニウム合金材が用いられている。
前記積層板は、ろう付けにより熱交換器として組み立てられる場合には、一方の面にアルミニウム合金犠牲防食材(板)と、他面にアルミニウム合金ろう付け材(板)とをクラッドしたブレージングシートとして構成される。
図4に、アルミニウム合金製自動車用熱交換器(ラジエータ)の例を示す。図4のように、ラジエータ100は、一般的には、複数本設けられた扁平管状のアルミニウム合金製チューブ111の間に、コルゲート状に加工したアルミニウム合金製放熱フィン112を一体に形成し、このチューブ111の両端はヘッダ113とタンク(不図示)とで構成される空間にそれぞれ開口した構成となっている。かかる構成のラジエータ100は、一方のタンクの空間からチューブ111内を通して高温になった冷媒を、他方のタンク側の空間に送り、チューブ111および放熱フィン112の部分で熱交換して、低温になった冷媒を再び循環させる。
このアルミニウム合金材からなるチューブ111は、図5に断面を示す、アルミニウム合金製ブレージングシート101から構成される。この図5において、ブレージングシート101は、アルミニウム合金製心材102の一側面に、アルミニウム合金製犠牲陽極材(皮材とも言う)103を積層(クラッド)し、心材102の他側面に、アルミニウム合金製ろう材104を積層(クラッド)している。なお、この図5において、アルミニウム合金製クラッドシートの場合には、一方の面にアルミニウム合金犠牲防食材103のみをクラッドした積層板として構成される。
そして、このようなアルミニウム合金製ブレージングシート101を、成形ロールなどによって偏平管状に形成し、電縫溶接することによって、あるいは、ろう付け加熱することによって、ブレージングシート101自体がろう付けされて前記図4のチューブ111の流体通路が形成されている。
ラジエータの冷媒(クーラント)は、水溶性媒体が主成分であり、これに市販の防錆剤などを適宜含んだ冷媒が使用されている。しかし、防錆剤などが経時劣化した場合に酸を生成し、前記犠牲材や心材などのアルミニウム合金材が、これらの酸により腐食されやすくなるという問題がある。このため、水溶性媒体に対する高耐食性を有するアルミニウム合金材の使用が必須となる。
したがって、ブレージングシートやクラッドシートの積層板に用いるアルミニウム合金として、心材102は、耐食性と強度の観点から、JISH4000に規定されているような、例えば、Al−0.15質量%Cu−1.1質量%Mnなどの組成からなる、3003などのAl−Mn系(3000系)合金が用いられている。また、冷媒に常時触れている皮材103には、防食と心材102へのMg拡散による高強度化を狙って、Al−1質量%Znの組成などからなる7072などのAl−Zn系、または、Al−Zn−Mg系(7000系)合金が用いられている。更に、ろう材104には、低融点であるAl−10質量%Siなどの組成からなる4045などのAl−Si系(4000系)合金が用いられている。
ラジエータ100は、このようなブレージングシート101を用いて形成したチューブ111と、コルゲート加工を行った放熱フィン112と、その他の部材とを用いて、ブレージングにより一体に組み立てられる。ブレージングの手法としては、フラックスブレージング法、非腐食性のフラックスを用いたノコロックブレージング法などがあり、600℃前後の高温に加熱してろう付けされる。
このようにして組み立てられたラジエータ100内、特にチューブ111内は、高温から低温、かつ、高圧から常圧の、前記した液体冷媒が常時流通・循環することになる。すなわち、チューブ111には、これら繰り返しの内圧変動や、自動車自体の振動を含めて(加えて)、長時間にわたり、繰り返し応力がかかるため、これらに耐える疲労特性が要求される。仮に、疲労特性が低く、疲労破壊が生じた場合には、チューブ111のクラックとして発生、進展し、チューブ111を貫通すると、ラジエータからの液漏れの原因になる。このため、ラジエータチューブのこれら疲労特性の改善は重要課題とされている。
従来から、このラジエータチューブの疲労特性の改善が種々提案されている。例えば、特許文献1では、アルミニウム合金ブレージングシートにおける心材を、Cu、Ti、Mnを含み、Si、Fe、Mgを規制したアルミニウム合金とするとともに、心材の縦断面における圧延方向の平均結晶粒径Lを150〜200μmとして、チューブ1の溶接部の耐食性を向上させ、チューブ1の繰り返し曲げによる疲労破壊性=自動車の振動下での耐振動疲労特性を改善しようとしている。特許文献2では、犠牲防食材側の厚さ方向の平均結晶粒径を犠牲防食材の厚み未満として、犠牲防食材の耐食性を向上させ、チューブ1の繰り返し曲げや、繰り返し内圧負荷による疲労破壊性=疲労特性を改善しようとしている。
また、疲労特性は、静的な引張強度と関係していることが一般的に知られており、熱交換器においても素材の引張強度を向上させるため、例えば、特許文献3のように、Cuを添加した材料も提案されている。そして、特許文献4では、組織的な改善によって耐振動疲労特性を改善しようとしている。即ち、Cuを含有するアルミニウム合金心材、アルミニウム合金ろう材、ZnとMgを含有するアルミニウム合金犠牲材をクラッドした3層構造のアルミニウム合金ブレージングシートを用いた熱交換器において、ろう付け後のブレージングシートの心材と犠牲材の界面近傍の心材側界面部で、特定のAl−Cu−Mg−Zn系析出物を分布させることが提案されている。これは、Al−Cu−Mg−Zn系析出物による時効硬化によって、心材側界面部の強度を上げて、繰り返し内圧負荷による疲労破壊性=疲労特性を改善しようとしているものである。
更に、特許文献5では、熱交換器用アルミニウム合金製ブレージングシート(心材であるAl−Mn系合金板)における集合組織を、疲労特性向上の観点からX線回折強度比にて規定している。この特許文献5では、X線回折強度比の規定によって、その段落0019に記載する通り、Cube方位(<100>面)を板表面と平行に強く配向させて、ブレージングシートの圧延方向と平行な方向の塑性変形を均一に発生させやすくしている。
この特許文献5では、ブレージングシートの圧延方向に繰り返し応力が負荷された場合の疲労特性向上を意図しており、その実施例段落0035にも記載する通り、ブレージングシート(心材であるAl−Mn系合金板)の、圧延方向に対して平行な方向のX線回折強度比を測定している。したがって、この特許文献5では、ブレージングシートの圧延方向に対して平行な方向のCube方位を発達させようとしている。そして、これによって、ブレージングシートの圧延方向に引っ張りまたは圧縮の繰り返し応力が負荷された場合の、変形の局所的な集中を防止し、板厚方向への亀裂の進展を遅らせ、塑性域での疲労を含めた寿命を向上させることを狙いとしている。
特開2003−82427号公報 特開平11−100628号公報 特開平10−53827号公報 特開平9−95749号公報 特開2006−291311号公報
しかし、これら従来の自動車のラジエータチューブは比較的厚肉である。例えば、前記各特許文献の実施例における、耐疲労特性評価の対象としているブレージングシートの板厚(合計板厚)を参考にすると、特許文献1では0.4mm、特許文献2では0.25mm、特許文献4、5では0.20mmと、全て板厚は0.20mm以上である。これに対して、地球環境問題から来る燃費向上のための自動車軽量化によって、ラジエータの軽量化が図られている。このため、ラジエータチューブ、即ちアルミニウム合金ブレージングシートのより一層の薄肉化が検討されている。
ラジエータチューブが0.4mm程度の比較的厚肉である際には、チューブ自体の剛性が比較的高い。これに対して、ラジエータチューブ、主には、ブレージングシートなどの積層板の板厚が薄肉化された場合には、チューブ自体の剛性が低くなる。一方、使用される冷媒の圧力は、従来よりも高く設定されることが多くなっている。したがって、これらの相乗効果によって、ブレージングシートなど積層板の板厚が薄肉化された場合には、前記繰り返し応力による疲労破壊に対する感受性が高くなり、疲労特性が低下してしまう傾向がある。
このような疲労破壊が発生した場合には、ラジエータチューブに亀裂(クラック、割れ)が生じる。薄肉化されたラジエータチューブの場合には、このような亀裂の発生は、チューブを貫通し、ラジエータの液漏れにつながる可能性が高く、より深刻なダメージとなる。
しかし、このように薄肉化されたラジエータチューブの疲労特性については、これまで有効な改善策が見いだされていない。この有効な改善策が見いだされないと、ラジエータチューブ、即ちアルミニウム合金ブレージングシートなどの積層板が薄肉化できず、ラジエータの軽量化、ひいては自動車の軽量化に大きな限界が生じることとなる。
このような問題に鑑みて、本発明の目的は、ラジエータチューブ、即ちアルミニウム合金ブレージングシートなどの薄肉化が可能な、アルミニウム合金熱交換器用の、疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板を提供することにある。
この目的を達成するために、本発明の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板の要旨は、少なくとも心材アルミニウム合金板とアルミニウム合金犠牲防食材とをクラッドし、ろう付けによって熱交換器とされるアルミニウム合金積層板であって、前記心材アルミニウム合金板が、質量%で、Si:0.2〜1.5%、Cu:0.05〜1.2%、Mn:0.3〜1.8%、Ti:0.03〜0.3%を各々含有するとともに、Fe:1.0 %以下に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成を有し、この心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率が10%以上、15%以下である組織を有することである。
ここで、前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。また、前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、Mgを0.5 質量%以下に規制することが好ましい。また、前記積層板における心材アルミニウム合金板の板厚が0.25mm未満の薄肉であることが好ましい。また、前記積層板の板厚が0.3mm未満の薄肉であることが好ましい。
上記目的を達成するために、本発明の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板の別の要旨は、少なくとも心材アルミニウム合金板とアルミニウム合金犠牲防食材とがクラッドされ、前記心材アルミニウム合金板が、質量%で、Si:0.2〜1.5%、Cu:0.05〜1.2%、Mn:0.3〜1.8%、Ti:0.03〜0.3%を各々含有するとともに、Fe:1.0 %以下に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成を有し、更に、ろう付け相当の加熱後の組織として、この心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率が10%以上、15%以下であることである。
ここで、前記心材アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。また、前記心材アルミニウム合金板が、更に、Mgを0.5 質量%以下に規制することが好ましい。また、前記心材アルミニウム合金板が、更に、Mgを0.5 質量%以下に規制することが好ましい。また、前記積層板における心材アルミニウム合金板の板厚が0.25mm未満の薄肉であることが好ましい。また、前記積層板の板厚が0.3mm未満の薄肉であることが好ましい。
本発明者らは、前記積層板の板厚、あるいは、これに用いられる素材であるブレージングシートなどの前記積層板の板厚が薄肉化された場合、本発明が課題とする疲労特性に対して、Al−Mn系(3000系)の心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位が大きく影響することを知見した。この圧延方向に対して45°方向のCube方位は、通常問題とされる、あるいは通常制御の対象とされる、圧延方向に対して平行方向のCube方位ではなく、通常は測定されることが殆ど無い。言い換えると、本発明の圧延方向に対して45°方向のCube方位は、集合組織において、通常は注目されない方位因子である。
本発明者らの知見によれば、前記積層板の板厚が薄肉化された場合には、疲労破壊のメカニズムに対して、圧延方向に対して45°方向のCube方位が発達している方が疲労特性が向上する。したがって、本発明では、心材アルミニウム合金板に少なくともアルミニウム合金犠牲防食材をクラッドした積層板の疲労特性を向上させるために、心材アルミニウム合金板の組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位を発達させる。
なお、Al−Mn系(3000系)のアルミニウム合金板の集合組織における、通常の圧延方向に対して平行方向のCube方位は、本発明で課題とする疲労特性向上に寄与しない。また、例え、圧延方向に対して平行方向のCube方位を発達させても、圧延方向に対して45°方向のCube方位が発達するとは限らない。本発明が対象とするSiを含むAl−Mn系のアルミニウム合金板でも、他の合金系と同様、その製造条件(製造履歴)によって、いずれの方位の集合組織が発達するかが大きく分かれる。そして、圧延方向に対して平行方向のCube方位を発達させる製造条件と、圧延方向に対して45°方向のCube方位を発達させる製造条件とは、互いに大きく異なる。この点、本発明では、後述する通り、常法に比して、中間焼鈍前の前半の冷間圧延工程における圧下率を著しく高めて、圧延方向に対して45°方向のCube方位を発達させる。
本発明によれば、ラジエータチューブの板厚、あるいは、これに用いられるブレージングシートやクラッドシートなどの積層板の板厚が前記のように薄肉化された場合でも、これらの疲労特性を向上させることができる。
本発明積層板を示す断面図である。 アルミニウム合金製熱交換器を示す断面図である。 曲げ疲労試験を示す説明図である。 一般的なブレージングシートなどの積層板を示す断面図である。 一般的なアルミニウム合金製熱交換器を示す断面図である。
本発明の積層板、ろう付け相当加熱実施後(熱履歴)の積層板およびこれらの心材アルミニウム合金板を実施するための最良の形態について、図1、2を用いて説明する。図1は、本発明の熱交換器用アルミニウム合金積層板の断面図であり、図2は、図1の積層板(熱交換器用アルミニウム合金製チューブ)を用いた、本発明の積層板(自動車用ラジエータチューブ)の要部断面図である。なお、この図1、2の基本的な構成、構造自体は、前記した図4、5と同じである。
(積層板)
本発明の積層板は、熱交換器に組み立てられる前に、先ず、図1に示すアルミニウム合金積層板1として、予め製造される。この積層板1は、ろう付けされる場合には、心材アルミニウム合金板2の一方の面にアルミニウム合金犠牲防食材(板)3と、他面にアルミニウム合金ろう付け材(板)4とをクラッドしたブレージングシートとして構成される。
上記心材アルミニウム合金板2は、後述する特徴的な組織や組成の3000系アルミニウム合金からなる。また、上記ブレージングシートとしては、この心材2の内側である冷媒に常時触れている側(図1の上側)には、後述する犠牲防食材(犠材、内張材、皮材)3として、例えば、Al−Zn組成のJIS7000系などのアルミニウム合金がクラッドされる。更に、心材2の外側(図1の下側)には、例えば、Al−Si組成のJIS4000系などのアルミニウム合金ろう材4がクラッドされる。
本発明のブレージングシートなどの積層板とは、心材アルミニウム合金板2を中心とする、以上のような3層の圧延クラッド材(板)である。心材アルミニウム合金板の板厚が0.25mm未満の0.16〜0.24mmの場合、ろう材、犠牲防食材ともその厚さは通常20〜30μm程度の厚みとする。しかし、その被覆率は使われる熱交部材の板厚(用途の仕様)によって異なり、これらの値に限定するものではない。
但し、ブレージングシートなどの積層板1の板厚(主として心材アルミニウム合金板の板厚)は、前記した通り、熱交換器の軽量化の要となる。したがって、積層板の板厚は0.3mm未満の0.16〜0.29mm程度、心材は0.25mm未満の0.16〜0.24mm程度の薄板であることが好ましい。
これらブレージングシートは、均質化熱処理を施した心材アルミニウム合金板(鋳塊)の片面に、犠牲防食材(板)やろう材(板)を重ね合わせて熱間圧延し、次いで冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を順に施して、H14調質材などのシートを製造する。ここで、均質化熱処理を熱間圧延前に実施しても良い。
(熱交換器)
このブレージングシートなどのアルミニウム合金積層板1を、成形ロールなどにより幅方向に曲折して、管内面側に皮材3が配置されるように偏平管状に形成した後、これを電縫溶接等により、偏平管状のチューブを形成する。即ち、図2に示す、流体通路が形成された偏平管状のチューブ(積層部材)11とする。
このような偏平管状のチューブ(積層部材)11は、コルゲート加工を行った放熱フィン12や、ヘッダ13などの他の部材と、ブレージングにより一体に図2に示す、ラジエータ10などの熱交換器として作製される(組み立てられる)。チューブ(積層部材)11と放熱フィン12とが一体化された部分を熱交換器のコアとも言う。この際、ろう材4の固相線温度以上である、585〜620℃、好ましくは590〜600℃の高温に加熱してろう付けされる。この加熱温度が620℃を超えて高すぎると、過剰溶融やエロージョンなどが生じる。このブレージング工法としては、フラックスブレージング法、非腐食性のフラックスを用いたノコロックブレージング法等が汎用される。
図2の熱交換器において、偏平チューブ(積層部材)11の両端はヘッダー13とタンク(図示せず)とで構成される空間にそれぞれ開口している。そして、一方のタンク側の空間から偏平チューブ11内を通して、高温冷媒を他方のタンク側の空間に送り、チューブ11およびフィン12の部分で熱交換し、低温になった冷媒を再び循環させる。
(心材アルミニウム合金板組織)
以下に、本発明積層板における心材アルミニウム合金板の組織について説明する。ここで、積層板あるいはろう付け相当加熱(熱履歴)後の積層板における心材アルミニウム合金板は、3000系アルミニウム合金組成からなる。
通常のアルミニウム合金板の場合、主に、以下に示す如き、Cube方位、Goss方位、Brass 方位(以下、B方位ともいう)、Copper方位(以下、Cu方位ともいう)、S方位等と呼ばれる集合組織を形成し、それらに応じた結晶面が存在する。これらの集合組織の形成は、同じAl−Mn系のアルミニウム合金板でも、他の合金系と同様、その製造条件(製造履歴)によって、いずれの方位の集合組織が発達するかが大きく異なる。圧延による板材の集合組織の場合は、圧延面と圧延方向で表されており、圧延面は{ABC}で表現され、圧延方向は<DEF>で表現される。通常のアルミニウム合金板の集合組織は、かなり多くの方位因子からなるが、かかる表現に基づき、各方位は下記の如く表現される。
Cube方位 {001}<100>
回転Cube方位 {001}<110>(Cube方位が板面回転した方位)
Goss方位 {011}<100>
回転Goss方位 {011}<011>
Brass 方位(B方位){011}<211>
Copper方位(Cu方位){112}<111>
若しくはD方位 {4411}<11118>
S方位 {123}<634>
B/G方位 {011}<511>
B/S方位 {168}<211>
P方位 {011}<111>
ここで言うCube方位は、通常の圧延方向に対して平行な方向のCube方位である。そして、本発明の圧延方向に対して45°方向のCube方位とは、上記回転Cube方位{001}<110>のことである。但し、上記回転Cube方位とは、圧延方向に対して平行な方向のCube方位から、板面に平行に、圧延方向に対して0°を越え、180°未満の範囲の特定角度だけ回転した方位である。したがって、例えば、本発明の圧延方向に対して45°方向のCube方位と、この回転角度を規定しないと特定できない。このように、本発明の圧延方向に対して45°方向のCube方位は、前記した通り、通常は測定されない、言い換えると、通常は注目されない方位因子である。
(方位面積率の測定)
本発明における圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率の測定は、電界放射型走査電子顕微鏡FESEM(Field Emission Scanning Electron Microscope )による、後方散乱電子回折像EBSP(Electron Backscatter Diffraction Pattern )を用いた結晶方位解析方法により測定する。
圧延方向に対して45°方向のCube方位の測定を、上記EBSPを用いた結晶方位解析方法による測定にて行うのは、本発明で課題とする疲労特性を向上させるためには、板(板表面)のよりミクロな領域での組織(集合組織)が影響しているためである。上記EBSPを用いた結晶方位解析方法では、このミクロな領域の集合組織を定量化することができる。
これに対して、前記特許文献5などでも使用している、集合組織規定乃至測定のために汎用されるX線回折(X線回折強度など)では、上記EBSPを用いた結晶方位解析方法に比して、比較的マクロな領域の組織(集合組織)を測定していることとなる。このため、ミクロな領域の組織(集合組織)を正確に測定することができない。
後方散乱電子回折像EBSPを用いた結晶方位解析方法は、試料表面に斜めに電子線を当てたときに生じる後方散乱電子回折パターン(菊地パターン)に基づき、結晶方位を解析する。そして、この方法は、高分解能結晶方位解析法(FESEM/EBSP法)として、ダイヤモンド薄膜や各種合金などの結晶方位解析でも公知である。本発明と同じくアルミニウム合金の結晶方位解析をこの方法で行なっている例は、特開2006−161153号公報、特開2006−2000018号公報、特開2006−316332号公報、特開2004−292899号公報、などにも開示されている。
この結晶方位解析方法による解析手順は、まず、測定される材料の測定領域を通常、六角形等の領域に区切り、区切られた各領域について、試料表面に入射させた電子線の反射電子から、菊地パターンを得る。この際、電子線を試料表面に2次元で走査させ、所定ピッチ毎に結晶方位を測定すれば、試料表面の方位分布を測定できる。
次に、得られた上記菊池パターンを解析して、電子線入射位置の結晶方位を知る。即ち、得られた菊地パターンを既知の結晶構造のデータと比較し、その測定点での結晶方位を求める。同様にして、その測定点に隣接する測定点の結晶方位を求め、これら互いに隣接する結晶の方位差が±15°以内(結晶面から±10°以内のずれ)のものは同一の結晶面に属するものとする(見なす)。
より具体的には、前記素材積層板あるいは600℃、3分間の加熱(熱履歴)後の積層板における心材アルミニウム合金板から組織観察用の試験片を採取し、機械研磨およびバフ研磨を行った後、電解研磨して表面を調整する。このように得られた試験片について、試験片の測定方向を圧延方向に対して45°方向に調整する。
そして、例えば日本電子社製のFESEMと、TSL社製のEBSP測定・解析システムOIM(Orientation Imaging Macrograph)を用い、同システムの解析ソフトと(ソフト名「OIMAnalysis」)を用いて、各結晶粒が、対象とする圧延方向に対して45°方向のCube方位(理想方位から10°以内)か否かを判定し、測定視野における対象とする圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を求める。
この測定視野範囲は、500μm×500μm程度の微小(ミクロな)領域であり、X線回折の測定範囲に比較しても、著しく微小な領域である。したがって、疲労特性に影響する、板のよりミクロな領域の組織における方位密度測定を、X線回折による方位密度測定に比して、前記した通り、より詳細かつ高精度に行なうことができる。なお、これらの方位分布は板厚方向に変化しているため、板厚方向に何点か任意にとって平均をとることによって求める方が好ましい。
(圧延方向に対して45°方向のCube方位の意義)
本発明では、Al−Mn系(3000系)の心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を10%以上に発達させることによって、本発明が課題とする疲労特性を向上させる。
この面積率が10%以上の場合、チューブに曲げ応力が発生した場合の塑性変形を抑える効果が得られ、疲労破壊を抑制される。この面積率が10%未満の場合、このような曲げ応力に対する塑性変形を低減させる効果が不十分であり、疲労破壊が促進される。このため、ラジエータチューブの板厚、あるいは、これに用いられるブレージングシートやクラッドシートなどの積層板の板厚が、前記した0.2mm未満に薄肉化された場合に、疲労特性を向上させることができない。
なお、本発明者らは、ろう付相当の加熱前後で、45°方向のCube方位の面積率が大きく変化しないこと、したがって、ろう付前の素材での45°方向のCube方位の面積率を10%以上とすることにより、ろう付加熱後にも同様の組織が維持され、疲労破壊抑制効果が得られることを明らかにしている。
(Cube方位の制御方法)
本発明では、Al−Mn系(3000系)の心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を10%以上に発達させるために、後述する通り、常法に比して、特に、中間焼鈍前の前半の冷間圧延工程における圧下率を93%以上に著しく高める。冷間加工率93%以上と加工ひずみを高めることにより、中間焼鈍時に45°Cube方位の発達の起点となる核が発生しやすくなり、45°Cube方位が発達する。
(アルミニウム合金組成)
以下、本発明に係る積層板を構成する各部材のアルミニウム合金組成を説明する。先ず、本発明に係る心材アルミニウム合金板2は、前記した通り、3000系アルミニウム合金組成からなる。ただ、本発明心材アルミニウム合金板はチューブ材およびヘッダー材などの熱交換器用部材として、後述する本発明組織とするためだけでなく、それ以外にも、成形性、ろう付け性あるいは溶接性、強度、耐食性などの諸特性が要求される。
このため、本発明に係る心材アルミニウム合金板は、質量%で、Si:0.2〜1.5%、Cu:0.05〜1.2%、Mn:0.3〜1.8%、Ti:0.03〜0.3%を各々含有するとともに、Fe:1.0 %以下に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成とする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
ここで、前記アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。また、Mgを0.5 質量%以下に規制することが好ましい。
上記Fe、Mgおよび上記記載元素以外の元素は基本的には不純物である。ただ、Al合金板のリサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用した場合には、これらの元素が混入される。そして、これら元素を例えば検出限界以下に低減すること自体コストアップとなり、ある程度の含有の許容が必要となる。したがって、本発明目的や効果を阻害しない範囲での含有を許容する。例えば、B等、上記以外の元素はそれぞれ0.05%以下であれば含有されていてもかまわない。
Si:0.2〜1.5%
SiはFeと金属間化合物を形成して心材Al合金板の強度を高める。このため、前記積層板やろう付け相当加熱後の積層板としての必要な強度を確保するためには、下限0.2%以上含有させる。一方、Si含有量が多過ぎると、心材中に粗大な化合物を形成して、前記積層板やろう付け相当加熱後の積層板としての耐食性が低下するため、上限は1.5%以下とする。したがって、Siの含有量範囲は0.2〜1.5%の範囲とする。
Cu:0.05〜1.2%
Cuは固溶状態にてAl合金板中に存在し、心材Al合金板の強度を向上させる。このため、前記積層板やろう付け相当加熱後の積層板としての必要な強度を確保するためには、下限0.05%以上含有させる。一方、Cu含有量が多過ぎると、前記積層板やろう付け相当加熱後の積層板としての耐食性が低下するため、上限は1.2%以下とする。したがって、Cuの含有量範囲は0.05〜1.2%の範囲とする。
Mn:0.3〜1.8%
Mnは、規定している析出物などの金属間化合物をAl合金板中に分布させ、心材Al合金板の、耐食性を低下させることなく、強度を向上させるための元素である。また、結晶粒径を微細化させ、疲労特性を高める効果もある。このため、前記積層板やろう付け相当加熱後の積層板としての必要な強度を確保し、疲労特性を高めるためには、下限0.3%以上含有させる。
一方、Mn含有量が多過ぎると、却って、析出物の数密度が規定よりも多くなりすぎ、耐振動疲労特性や耐疲労破壊性を低下させる。また、アルミニウム合金積層板の成形性が低下し、部品形状への組付け等の加工時にアルミニウム合金積層板が割れてしまう恐れがある。このため、Mn含有量の上限は1.8%以下とする。したがって、Mnの含有量範囲は0.3〜1.8%の範囲とする。
Ti:0.03〜0.3%
Tiは、アルミニウム合金板中で微細な金属間化合物を形成し、心材アルミニウム合金板の耐食性を向上させる働きを有する。このため、前記積層板やろう付け相当加熱後の積層板としての必要な耐食性を確保するためには、下限0.03%以上含有させる。一方、Ti含有量が多過ぎると、アルミニウム合金積層板の成形性が低下し、部品形状への組付け等の加工時にアルミニウム合金積層板が割れてしまう恐れがある。このため、Ti含有量の上限は0.3%以下とする。したがって、Tiの含有量範囲は0.03〜0.3%の範囲とする。
Fe:1.0 %以下
Feは、不純物としてスクラップをAl合金溶解原料として使用する限り、心材Al合金板に必然的に含まれる。Feには、前述のようにSiと金属間化合物を形成して心材Al合金板の強度を高めるとともに、結晶粒径を微細化し、さらに心材の溶接性を高める効果がある。しかし、その含有量が多すぎると、心材Al合金板の耐食性が著しく低下する。このためFe含有量は1.0%以下に規制する。
Mg:0.5 %以下
Mgは心材Al合金板の強度を高めるが、その含有量が多いとフッ化物系フラックスを用いるノコロックろう付け法などにおいてろう付け性が低下する。このため、Mgによってろう付け性が低下するようなろう付け条件による熱交換器向けには、Mg含有量は0.5%以下に規制することが好ましい。
Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上
Cr、Zn、Zrは、心材Al合金板の疲労特性を高める効果がある。この効果を発揮させたい場合には、Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%の各含有量範囲で、1種または2種以上を含有させる。
(ろう材合金)
次に、心材Al合金板2にクラッドされるろう材合金4は、従来から汎用されているJIS4043、4045、4047などの4000系のAl−Si系合金ろう材など公知のろう材Al合金が使用できる。但し、前記した通り、ろう材合金はろう付けされる場合にのみ、選択的に必要で、一方の面にアルミニウム合金犠牲防食材(板)3と、他面にアルミニウム合金ろう付け材(板)4とをクラッドしたブレージングシートとして構成される。これに対して、溶接される場合には、一方の面にアルミニウム合金犠牲防食材(板)3のみをクラッドしたクラッドシートとして構成される。
(犠牲防食材)
更に、心材アルミニウム合金板2にクラッドされる犠牲防食材合金3は、従来から汎用されているAl−1質量%Zn組成のJIS7072などの7000系アルミニウム合金等、Znを含む公知の犠牲防食材アルミニウム合金が使用できる。このような犠牲防食材は、冷却水がチューブ内面側に存在する自動車用熱交換器では必須となる。即ち、前記した冷却水が存在するチューブ内面側の腐食性に対する防食、耐蝕性確保のためには必須となる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。表1に示すA〜Jの組成のAl合金心材2を有する積層板(ブレージングシート)1を作成して、心材2部分の組織を調査した。更に、この積層板1を、ろう付けを模擬して、600℃の温度に3分間ろう付け相当の加熱、保持を実施した後、平均冷却速度100℃/分で冷却し、このろう付け相当加熱後の積層板の心材部分の組織を調査した。また、この加熱後の積層板1の機械的な特性と、疲労特性を測定、評価した。これらの結果を表2、3に示す。
(積層板の製造)
積層板の製造は以下の通りとした。表1に示すA〜Jの組成の3000系Al合金組成を溶解、鋳造してAl合金心材鋳塊を製造とした。この心材鋳塊の一方の面に、Al−1質量%Zn組成からなるJIS7072アルミニウム合金板を犠牲防食材3として、他面にAl−10質量%Si組成からなるJIS4045アルミニウム合金板をろう付け材4として、各々クラッドした。
このクラッド材を、均熱処理した後、熱間圧延、荒鈍処理、中間焼鈍を施しながらの冷間圧延、最終焼鈍の製造工程で、H14調質材の積層板とした。各例とも共通して、積層板(ブレージングシート)1は、心材アルミニウム合金板2の板厚が0.16mmであり、この心材の各々の面に、それぞれ積層されたろう材4、犠牲防食材3ともに、その厚さは20〜30μmの範囲とした。
そして、この素材クラッド材から、この積層板を製造するに際して、表2に示すように、各例とも、熱延板(熱間圧延上がりの板)の厚みt(mm)と、冷間圧延工程における、中間焼鈍前の前半の冷間圧延における圧下率を変え、Al−Mn系の心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を制御した。また、この前半の冷間圧延における圧下率と同時に、中間焼鈍温度、中間焼鈍後の後半の冷間圧延における圧下率を、表2に示すように、変えて、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を制御した。
即ち、発明例では、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を10%以上に発達させるために、前半の冷間圧延における圧下率を96%以上高くした。このため、各例とも、前半の冷間圧延における圧下率と後半の冷間圧延における圧下率、中間焼鈍温度などが各々異なる。
なお、積層板を製造するための、上記した冷間圧延条件以外の、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延、最終焼鈍の製造工程や各工程条件は、常法により作成し、各例とも同じとした。均熱処理は40℃/hrの昇温速度で加熱した上で、均熱を450℃で4時間行い、その後熱間圧延を行った。中間焼鈍は280℃、3時間保持で行い、その後仕上げ圧延を行い、積層板の素材を得た。この積層板素材をに600℃、3分のろう付相当加熱を施し、ろう付後の疲労特性評価に供試した。
(組織)
前記した測定方法を各々用いて、上記冷延クラッド板である各積層板の心材部分と、上記ろう付け相当加熱後の各積層板(組み立て後の熱交チューブ部材を模擬)の心材部分の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率(%)を各々求めた。45°方向のCube方位の面積率は、上記短時間のろう付け加熱では変化しない。クラッド板(積層板)素材の心材部分と、上記ろう付相当加熱後の各積層板の心材部分の両方について、各々表2、3に示す。
ここで、上記ろう付け加熱後の心材アルミニウム合金板の粗大な分散粒子の平均数密度は、上記短時間のろう付け加熱条件では、むしろ減少する。このため、上記ろう付け加熱前の1μm以上の粗大な分散粒子の平均数密度が少ない結果は、上記ろう付け加熱後の心材アルミニウム合金板にも当てはまる。
(機械的特性)
上記ろう付け相当加熱後の各積層板の引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、を測定した。これらの結果を表3に示す。
試験条件は、各積層板から圧延方向に対し垂直方向のJISZ2201の5号試験片(25mm×50mmGL×板厚)を採取し、引張り試験を行った。引張り試験は、JISZ2241(1980)(金属材料引張り試験方法)に基づき、室温20℃で試験を行った。また、クロスヘッド速度は、5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
(疲労特性)
上記ろう付け相当加熱後の各積層板の疲労特性の評価は、図3に示す、前記特許文献5にも記載された、公知の片振り型平面曲げ疲労試験機によって、常温にて行った。即ち、上記加熱後の各積層板から、圧延方向と平行となるように、10mm×60mm×板厚の試験片を切り出して試験片を作製した。この試験片の一端を、図3の右側に示すように、片振り平面曲げ疲労試験機の固定側に取り付けた。そして、この試験片の他端を、図3の左側に示すように、駆動側のナイフエッジで挟持した。
曲げ疲労試験は、このナイフエッジの位置を移動させることで、試験片セット長さを変化させつつ、片振り幅一定(図3の上下方向に5mm)となるように、試験片の平面曲げを繰り返し行った。このとき、本発明が課題とする亀裂発生が支配的な疲労を再現するために、付加曲げ応力を、破断部の歪量が比較的低い最大0.008程度となるように試験片セット長さを調節した。このような条件で、各試験片が破断するまでの平面曲げの繰り返し数を求めた。
評価は、13000回以上を疲労寿命非常に良好:◎、10000回以上を疲労寿命良好:○、10000回未満を疲労寿命不十分:×とした。これらの結果を表3に示す。
なお、破断部の歪量については歪ゲージを破断部位に直接貼ることができないため、破断部位から少し離れた2、3箇所の所定の位置に歪ゲージを貼り、各試験片長さ時の歪ゲージの歪値から破断部位の歪量を内挿することにより破断部位の歪量を推計し、これを元に負荷応力、すなわち、試験片セット長さを調節した。
表1〜3に示す通り、発明例1〜13は、心材アルミニウム合金板が本発明成分組成範囲内で、かつ、好ましい均熱条件範囲で製造している。このため、表2に示す通り、心材アルミニウム合金板の集合組織は、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率が10%以上である。
この結果、発明例1〜13は、所定の強度を有し、曲げ疲労試験におけるろう付け相当材の破断までの、曲げ繰り返し数が多く、疲労寿命が長い。したがって、発明例1〜13は、積層板の板厚(主として心材アルミニウム合金板の板厚)が0.2mm未満であっても、疲労特性に優れていることが分かる。
これに対して、比較例14〜16は、前半の冷間圧延の圧下率が96%未満と各々低すぎる。このため、心材アルミニウム合金板が本発明成分組成範囲内(B)ではあるが、心材アルミニウム合金板の集合組織は、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率が10%未満と少ない。この結果、所定の強度を有しているものの、曲げ疲労試験におけるろう付け相当材の破断までの繰り返し数が少なく、疲労寿命が短い。
比較例17〜22は、心材アルミニウム合金板が本発明範囲から外れる成分組成N、O、P、Q、R(表1)を有している。即ち、Si、Cu、Mn、Ti,Feの含有量が各々上限を超えており、多すぎる。この結果、各心材アルミニウム合金板や上記ろう付け相当加熱後の各積層板は、曲げ疲労試験におけるろう付け相当材の破断までの繰り返し数が少なく、疲労寿命が短い。
したがって、以上の実施例の結果から、熱交換器用積層板あるいはろう付け相当加熱後の積層板としての、疲労特性に優れるための、本発明各要件の持つ臨界的な意義乃至効果が裏付けられる。
Figure 0005452027
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本発明によれば、アルミニウム合金ラジエータチューブなどのろう付け相当加熱後の積層板や、アルミニウム合金ブレージングシートなどの積層板の薄肉化が可能な、疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板やろう付け相当加熱後の積層板を提供できる。したがって、本発明は、ラジエータチューブの薄肉化とともに、疲労特性に優れることが求められる、自動車用などのアルミニウム合金製熱交換器に用いられて好適である。
1:熱交換器用アルミニウム合金積層板、2:心材、3:皮材、4:ろう材、10:ラジエータ(熱交換器)、11:チューブ(積層部材)、12:放熱フィン、13:ヘッダ

Claims (10)

  1. 少なくとも心材アルミニウム合金板とアルミニウム合金犠牲防食材とをクラッドし、ろう付けによって熱交換器とされるアルミニウム合金積層板であって、前記心材アルミニウム合金板が、質量%で、Si:0.2〜1.5%、Cu:0.05〜1.2%、Mn:0.3〜1.8%、Ti:0.03〜0.3%を各々含有するとともに、Fe:1.0 %以下に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成を有し、この心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率が10%以上、15%以下であることを特徴とする、疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  2. 前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有する請求項1に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  3. 前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、Mgを0.5 質量%以下に規制した請求項1または2に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  4. 前記積層板における心材アルミニウム合金板の板厚が0.25mm未満の薄肉である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  5. 前記積層板の板厚が0.3mm未満の薄肉である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  6. 少なくとも心材アルミニウム合金板とアルミニウム合金犠牲防食材とがクラッドされ、前記心材アルミニウム合金板が、質量%で、Si:0.2〜1.5%、Cu:0.05〜1.2%、Mn:0.3〜1.8%、Ti:0.03〜0.3%を各々含有するとともに、Fe:1.0 %以下に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成を有し、更に、600℃、3分間の加熱後の組織として、この心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率が10%以上、15%以下であることを特徴とする、疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  7. 前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有する請求項6に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  8. 前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、Mgを0.5質量%以下に規制した、請求項6または7に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  9. 前記積層板における心材アルミニウム合金板の板厚が0.25mm未満の薄肉である請求項6乃至8のいずれか1項に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
  10. 前記積層板の板厚が0.3mm未満の薄肉である請求項6乃至9のいずれか1項に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。
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