JP5841719B2 - アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車熱交換器用として好適なアルミニウム合金クラッド材に関する。
近年、自動車熱交換器のラジエータなどにおいて冷却水が流れるチューブの内面に凹凸形状の突起を形成し、チューブの内部を流れる冷媒に乱流が生じることを促進することで、熱交換器としての性能を向上させる技術が提供されている。
しかし、熱交換器用のチューブは年々薄肉化が進められているので、チューブの内面に凹凸部を形成するためには、薄肉のアルミニウム材にプレス加工などの塑性加工を施す必要があり、薄肉のアルミニウム材に塑性加工を施すと、凹凸形成部分では減肉を伴った比較的大きな変形が生じる。このような減肉部分を生じると、薄肉化されたチューブの構造において部分的に更に薄肉の部分が生じるので、この薄肉部分において腐食が進行すると熱交換器としての耐食性に問題を生じるおそれがある。このため、薄肉化されたチューブを形成するためのアルミニウム合金素材には、凹凸形成部分においても減肉を生じないような高い伸びが必要とされる。
従来一般的なアルミニウム合金板材は、鋳造、熱間圧延、冷間圧延を経て製造されるが、最終圧延前に焼鈍がなされた場合、焼鈍に伴う再結晶後、20〜30%程度の圧下がかけられているので、基本的には再結晶組織とされており、再結晶粒内部に歪が残存した組織状態とされている。この再結晶粒内に歪が残存された組織状態にあっては、アルミニウム合金素材として伸びが不十分になることが多いとされている。
そこで、この種のアルミニウム合金に対し、良好な伸びを有し、かつ、耐食性に優れさせたチューブ用板材を提供するために、芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系のろう材をクラッド圧着したアルミニウム合金クラッド材であって、芯材としてMn、Cu、Si、Feを規定の範囲含有させたアルミニウム合金芯材で構成し、犠牲陽極材としてZn、In、Sn、Si、Feを規定量含有したアルミニウム合金で構成し、芯材のマトリクス組織を繊維状組織としてなり、管形状に曲成し、突き合わせ溶接して溶接偏平管に成形し、作動流体通路用としたクラッド材が知られている。(特許文献1参照)
特許第4424569号公報
先の特許文献1に記載されている技術に従い、芯材の結晶粒組織を繊維状組織として熱交換器用のチューブを構成するならば、ある程度の素材伸びと耐食性を得ることができるが、特許文献1に記載された技術のみでは、特に近年の薄肉化されたチューブにおいて更にその内面に凹凸部を形成したチューブを形成した場合、更なる伸びの向上と耐食性の向上効果が望まれる。
なお、アルミニウム合金の組織を繊維状とするためには、最終圧延前の焼鈍で再結晶させることなく最終圧延を行えば良く、繊維状組織とすることで従来の再結晶組織のアルミニウム合金よりも伸びを向上させたアルミニウム合金を提供することは可能であるが、更に伸びを良好とする技術については提供されていないのが現状である。
この点について本発明者らがアルミニウム合金材料の研究を行ったところ、伸びを向上させるためには、アルミニウム合金の結晶粒組織よりもよりミクロな組織である転位下部組織を制御することが有効であるとの知見を得た。また、アルミニウム合金においては一見、同じような繊維状組織であっても、転位下部組織が異なると、伸びの値が大きく異なることが判明した。
本発明は、上述の背景に基づきなされたものであり、熱交換器用のアルミニウム合金クラッド材について、伸びに優れ、薄肉形状として凹凸などを形成しても減肉が生じ難いクラッド材を提供することを目的とする。
本発明者らが、上述した熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の研究により得た知見に基づき、アルミニウム合金の転位下部組織について更に研究したところ、転位下部組織を均一な亜結晶粒組織とした上に、その平均結晶粒径を所定のサイズ以下に揃えることで、アルミニウム合金の特に局部伸びが向上し、これによって全伸びを向上できることが判明した。
更に、アルミニウム合金のクラッド材を構成する主体となる芯材中の晶出相を除く第2相粒子の平均サイズを所定値以下にすることによって、均一伸びが向上するため、より一層の全伸びの向上効果を得られることが判明した。
ここで、均一伸びとは、材料を引っ張った場合に材料が均一に変形する伸び量、局部伸びとは材料が局部的に減肉しながら変形する伸び量を意味する。
本発明は、かかる知見に基づいて成されたものであって、以下の構成を有する。
本発明の成形性に優れた自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、少なくとも芯材の一方の面に皮材をクラッドしてなるアルミニウム合金クラッド材であって、芯材が、Mn:0.5%以上2.0%以下(質量%、以下同じ)、Si:0.2%以上1.3%以下、Fe:0.05%以上0.5%以下、Cu:0.3%以上1.5%以下を含有し、残部アルミニウムおよび不可避不純物からなり、前記芯材の結晶粒組織が圧延方向平行断面の結晶粒組織として繊維状組織であり、さらに、前記繊維状組織が亜結晶粒からなり、圧延方向平行断面において後方散乱電子線回折法により測定された亜結晶粒径の平均が1.5μm以下であることを特徴とする。
本発明の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材に更にMg:0.05%以上0.5%以下を含有してなる。
本発明の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材に更にTi:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下のうち1種または2種以上を含有してなる。
本発明の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材中の晶出物を除く第2相粒子のうち、Al−Mn系、Al−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の平均直径が0.05μm以上0.5μm以下の範囲とされてなる。

本発明のアルミニウム合金クラッド材は、芯材の結晶粒組織が繊維状組織であり、さらに、転位下部組織が亜結晶粒組織であって、その亜結晶粒径の平均が1.5μm以下であるので、伸びに優れ、成形性に優れる。この伸びと成形性に優れたアルミニウム合金クラッド材は、薄肉構造としてチューブを構成し、その内面に塑性加工により凹凸を形成した場合であっても、凹凸形成部周囲に減肉を起こし難いので、チューブの肉厚を均一化することができ、腐食を生じた場合であっても、減肉部が腐食することに起因する腐食貫通孔が生じ難い特徴を有する。
本発明のアルミニウム合金クラッド材において芯材中の晶出物を除く第2相粒子のうち、Al−Mn系、Al−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の平均直径が0.05μm以上0.5μm以下の範囲とするならば、伸びに優れ、成形性の良好なチューブを提供できる。
本発明に係るアルミニウム合金クラッド材の一例を示す断面図である。 同アルミニウム合金クラッド材からなるチューブの一例を示す斜視図である。 同チューブを用いたラジエータの一例を示す斜視図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。
図1は本発明に係るアルミニウム合金クラッド材の一実施形態を示すもので、この実施形態のアルミニウム合金クラッド材1はアルミニウム合金からなる芯材2と、この芯材2の一面2a側に被着されたろう材層(第1の皮材)3と、芯材2の他面2b側に被着された犠牲陽極材層(第2の皮材)4とを主体として構成されている。図1に示す実施形態の構造では、ろう材層3の外面がアルミニウム合金クラッド材1の表面(一面)1aとされ、犠牲陽極材層4の外面がアルミニウム合金クラッド材1の裏面(他面)1bとされている。
図1に示す構造のアルミニウム合金クラッド材1を用いて例えば図2に示す如く熱交換器用の偏平薄型のチューブ10を構成することができる。このチューブ10において内面側に犠牲陽極材層4が配置され、チューブ10において外面側にろう材層3が配置されている。
また、図2に示す構造のチューブ10を用いて例えば図3に示す如くラジエータ20を構成することができる。
図3に示すラジエータ20は、例えば自動車のラジエータ等に用いられる構造とされ、チューブ10と、ヘッダー21と、フィン22と、サイドサポート23とから概略構成されている。ラジエータ20は、ろう付接合によってチューブ10、ヘッダー21及びフィン22が各々一体化され、更に樹脂タンク24が機械的接合(かしめ加工)により取り付けられて製造される。
そして、ラジエータ20において、ヘッダー21とチューブ10とは、ヘッダー21の下面に複数整列形成されたスロット(差込孔)21aに各チューブ10の端部を差し込み、差込部分の周りに配置したろう材を用いて両者を相互にろう付するとともに、チューブ10とフィン22は、チューブ10の表面に塗布されたろう材層3を用いて、両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。
図3に示す如くチューブ10がラジエータ20に組み込まれるので、ラジエータ20における熱交換効率を向上させるために、チューブ10の内面側には図示略の凹凸が形成される。
チューブ10の内面側に凹凸を形成するためには、アルミニウム合金クラッド材1からチューブ10を形成する際あるいはその前にアルミニウム合金クラッド材1にプレス加工などの塑性加工により凹凸を形成しておく。
このように凹凸を有するチューブ10を用いるならば、内部に冷媒を循環させて使用する場合、熱交換器としてのラジエータ20の熱交換効率が良好となる。
以下、前記ラジエータなどの熱交換器用チューブ10の構成材料として使用されるアルミニウム合金クラッド材1を構成するアルミニウム合金の芯材2の組成について説明する。
芯材2は、Mn、Cu、Si、Feを含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金によって構成されている。各成分の含有量は質量%において、Mn:0.5%以上2.0%以下、Cu:0.3%以上1.5%以下、Si:0.2%以上1.3%以下、Fe:0.05%以上0.5%以下を含有し、
前記組成のアルミニウム合金に加え、Mgを含有する場合は0.05%以上0.5%以下の範囲で含有することが好ましい。
前記組成のアルミニウム合金に加え、Ti、Zr、Crを添加する場合は、Ti:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下を1種または2種以上の範囲とすることが好ましい。
Mn:Mnは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の芯材2の強度を向上させる作用がある。また、Al−Mn−Si系化合物を形成することにより、アルミニウムマトリックスのSi固溶度を低くし、マトリックスの融点を向上させる効果がある。
Mnの含有量が0.5質量%未満であると、これらの効果が十分に得られない。また、Mnの含有量が2.0質量%を超えると、鋳造時に粗大な晶出物が形成され、アルミニウム合金素材の伸びが低下してしまう。
Si:Siは、Al−Mn−Si系化合物として分散あるいはアルミニウムマトリックスに固溶して存在し、芯材2の強度を向上させる作用がある。
Siの含有量が0.2質量%未満であると、このような効果が十分に得られない。また、Siの含有量が1.3質量%を超えると、芯材2の融点が低下し、ろう付時に芯材2が溶融する可能性がある。
Cu:Cuは、マトリックス中に固溶して存在し、芯材2の強度を向上させる作用がある。
Cuの含有量が0.3質量%未満であると、このような効果が十分に得られない。また、Cuの含有量が1.5質量%を超えると、Cuは後述する電位勾配層の犠牲陽極効果を低減させ、その防食効果を損なってしまう。また、Cuの含有量が多過ぎると、芯材2の融点が低下し、ろう付時に芯材2が溶融する可能性がある。
Fe:Feは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の芯材2の強度を向上させる作用がある。また、Al−Fe−Si系、Al−Mn−Fe−Si系の化合物を形成することによって、アルミニウムマトリックス中のSi固溶度を低下させ、アルミニウムマトリックスの融点を向上させる効果がある。
Feの含有量が0.05質量%未満であると、これらの効果が十分に得られない。また、Feの含有量が0.5質量%を超えると、芯材2の腐食速度が速くなって耐食性が劣化してしまう。また、巨大晶出物が出現し、これによってアルミニウム合金素材の鋳造性や圧延性が低下してしまう。
Mg:Mgは芯材2の強度を高めるように作用する。Mgの好ましい含有量は、0.05%以上0.5%以下であるが、その含有量が0.05%未満では十分な効果が得られ難く、0.5%を超えて含有させると、ろう付時にフラックスと反応してろう付性を顕著に劣化させるおそれがある。
Ti、Zr、Cr:TiおよびZr、Crは、組織の微細化に寄与し、ろう付後に微細な金属間化合物として分散し、芯材2の強度を向上させる作用がある。
これらの含有率が0.05質量%未満であると、このような効果が十分に得られない。また、これらの含有率が0.3質量%を超えた場合、芯材2の自己耐食性および加工性が低下してしまう。
また、芯材中の晶出物を除く第2相粒子のうち、Al−Mn系、Al−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の平均直径が0.05μm以上0.5μm以下の範囲とされてなることが好ましい。
芯材中の晶出物を除く第2相粒子のうち、前記金属間化合物の平均直径が0.05μm未満であると、金属間化合物が微細なことでろう付時の再結晶が遅延されるため、ろう付後の芯材の結晶粒径が粗大となってろう付後の強度が低下する。また、0.5μmを超えると伸びが低下する。
<クラッド材の製造工程>
本実施形態では、芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用アルミニウム合金を鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理を施し、熱間圧延によりアルミニウム合金板とした後、焼鈍し、続いて冷間圧延により目的の板厚より若干厚い程度の薄板状のアルミニウム合金板を得た後、中間焼鈍を行い、目的の板厚になるように冷間圧延を施してクラッド材1を得る製造方法において、均質化処理を低温温度域において行う。均質化温度の範囲として上述の範囲、400℃以上530℃以下の範囲、より好ましくは420℃以上500℃以下の範囲を選択できる。
次に、熱間圧延後の焼鈍条件として、再結晶温度以下、例えば150℃以上300℃以下の温度範囲、より好ましくは200℃以上270℃以下の温度範囲において、1〜10時間程度焼鈍を行う。
この後、冷間圧延を施して目的の板厚より若干大きな板厚まで圧延した後、再結晶温度以下の温度、例えば150℃以上300℃以下の温度範囲、より好ましくは200℃以上270℃以下の温度範囲に1〜10時間程度、中間焼鈍を行う。
以上説明した製造方法により、圧延方向平行断面の結晶粒組織として繊維状の金属組織を有するとともに、伸びを向上させたアルミニウム合金からなる芯材2を得ることができる。なお、焼鈍については絶対温度で示す再結晶温度をTとして、0.85T以上、より好ましくは0.9T程度で行うことが望ましく、冷間圧延後の中間焼鈍についても、0.85T以上、より好ましくは0.9T程度で行うことが望ましい。
ろう材層(第1の皮材)3は、チューブ10とヘッダー21、および、フィン22とチューブ10をろう付するろう材を供給する。
ろう材層3は一例として、SiおよびZnを含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金ろう材によって構成されている。SiおよびZnの含有量は一例としてSi:4.5%〜11.0質量%、Zn:0.5〜5.0質量%である。
犠牲陽極材層(第2の皮材)4はAl−Zn系合金層からなることが好ましい。犠牲陽極材層4がチューブ10の内面側に存在することにより、チューブ内面側の耐孔食性が向上し、チューブ内を流れる冷媒による孔食進行を防止できる。
Al−Zn系合金層として、Znを0.5質量%以上7.0質量%の範囲で含有することが好ましい。さらに必要により、Mgを1〜2質量%の範囲で、Mnを0.5〜2.0質量%の範囲で、Siを0.1〜1.0質量%の範囲で、Tiを0.05〜0.3質量%の範囲で添加することもできる。
前記クラッド材1にあっては、一方の面にろう材層3がクラッド圧着され、他方の面に犠牲陽極材層4がクラッド圧着されているが、クラッド材1として両方必須として備えている必要はなく、どちらか一方であって良い。クラッド材としてのろう材層3を略した場合は、別途塗布型のろう材層を芯材2の一方の面に塗布しても良い。また、熱交換器20として耐食性の面で必要ない場合は、チューブ10を構成する場合に犠牲陽極材層4を略しても良い。
前記芯材2の金属組織において、転位下部組織を均一な亜結晶粒組織とした上に、その平均結晶粒径を所定のサイズ以下に揃えることで、アルミニウム合金の局部伸びを向上させることができ、これによって全伸びを向上できる。
更に、アルミニウム合金のクラッド材を構成する主体となる芯材2中の晶出相を除く第2相粒子の平均サイズを所定値以下にすることによって、均一伸びが向上するため、より一層の全伸びの向上効果を得られる。
ここで、均一伸びとは、材料を引っ張った場合に材料が均一に変形する伸び量、局部伸びとは材料が局部的に減肉しながら変形する伸び量を意味する。従って、材料の伸び(全伸び)=均一伸び+局部伸びの関係を有する。
本実施形態で説明する亜結晶粒とは、結晶粒組織を更に微細に観察して認識できる組織で、材料中に歪がどのように蓄積されているかの目安となる。材料を加工すると歪が導入されるが、歪は無秩序に導入されるので、この状態で材料に熱を加えると、歪が特定の場所に整列して結晶粒のようになり、歪の多い場所と少ない場所に分かれる。これを本実施形態では亜結晶粒と称する。本明細書において亜結晶粒の粒径とは、圧延方向に沿って切断した面において測定した粒径を示す。
アルミニウム合金板の均一伸びは析出物の分散状態によって変化し、析出物が微細、高密度に分布するほど均一伸びは向上する。
次に、局部伸びは亜結晶粒のサイズによって変化し、亜結晶粒が微細、均一なほど、向上する。亜結晶粒径は、均質化処理条件と熱間圧延後の焼鈍条件の両方によって変化するが、焼鈍条件の影響がより顕著である。均質化処理温度は低温なほど、焼鈍は未実施、もしくは、再結晶温度以下とすることで亜結晶粒径は均一、微細となり、局部伸びは向上する。
以下に、本発明の具体的実施例について説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用アルミニウム合金(JIS4045合金)を鋳造した。得られた鋳塊は前述した範囲内の所定温度で均質化処理を施した。
次に芯材の鋳塊の片面に犠牲材鋳塊を、さらにその反対面にろう材鋳塊を組合わせて熱間圧延しクラッド材とした。熱間圧延により所定の厚さにした後、コイル焼鈍し、続いて冷間圧延により目的の板厚より若干厚い程度の薄板状のアルミニウム合金板を得た後、中間焼鈍を前述した範囲内で行い、最終の冷間圧延により厚さ0.2mmのH14調質の板材を作製した。
得られたクラッド材に対して、伸びの測定、芯材の結晶粒組織、芯材の転位下部組織、および芯材中の化合物の分散状態の調査を以下の手順で行った。伸びが5%未満であるものを×、5%から7.4%のものを○、7.5%以上のものを二重丸とした。
(伸びの測定)
作製したクラッド材から圧延方向と平行にサンプルを切り出し、JIS13号B試験片を作製し引張試験を実施した。破断後のサンプルを突合せ法で伸びを測定した。
(芯材の結晶粒組織の観察)
作製したクラッド材から圧延方向平行断面を樹脂埋め後、鏡面に研磨した後、Barker氏(バーカー氏)液法で結晶粒を現出させ、偏光顕微鏡で写真撮影し結晶粒組織を調査した。
(芯材の転位下部組織の観察)
作製したクラッド材の芯材中央部を透過電子顕微鏡観察(機械研磨にて板厚中央部を露出後、ツインジェット法により中央部を露出させてから観察)した。
(亜結晶粒サイズの測定)
亜結晶粒の平均粒径は、電解研磨法によって露出させた圧延方向平行断面の板厚中心部を後方散乱電子線回折法(EBSD)により5000倍の倍率で測定した。更に、EBSDに付属した解析装置(例えばTSL社の0IM解析装置)を用いて亜結晶粒の平均粒径を測定した。
(芯材中の第二相粒子の分散状態の調査)
晶出相を除く第2相粒子の分散状態の測定として、作製したクラッド材に400℃×15sのソルトバス焼鈍を行って変形ひずみを除去し、化合物を観察しやすくした後、苛性ソーダによるアルカリエッチングによって芯材を露出させ、通常の方法で機械研磨、および電解研磨によって薄膜を作製し、透過型電子顕微鏡にて20000倍で写真撮影した。同時にエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて第2相粒子の組成を調査し、Al−Mn系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系化合物のみについて画像解析し、第2相粒子の平均粒径を測定した。ここで、平均粒径2μm以上の化合物については晶出物であるのでカウントしないようにした。また、これら金属間化合物の平均粒径を規定する場合、円相当径を示す。
(ろう付後の強度)
作製したクラッド材を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理を施した。熱処理後のサンプルから圧延方向と平行にサンプルを切り出し、JIS13号B試験片を作製し、引張試験を実施して引張強さを測定した。引張強さが160MPa未満のものを×、160〜174MPaの範囲のものを○、175MPa以上のものを二重丸とした。
(内部耐食性)
ろう付熱処理後のサンプルから30×50mmのサンプルを切り出し、ろう材側についてはマスキングし、犠牲材側について、Cl:195ppm、SO 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含む水溶液中で80℃×8時間→室温×16時間のサイクルで浸漬試験を8週間実施した。腐食試験後のサンプルを沸騰させたリン酸クロム酸混合溶液に浸漬して腐食生成物を除去した後、最大腐食部の断面観察を実施して腐食深さを測定した。その腐食深さが総板厚の半分以上であったものを×、腐食深さが総板厚の半分未満であったものを○とした。
(耐ろう侵食性(エロージョン深さ))
作製した材料を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理を施した。ろう付相当熱処理を実施したサンプルを樹脂埋めし、圧延方向平行断面を鏡面研磨し、バーカー氏液で組織を現出後、光学顕微鏡で観察してろう侵食深さ(ろう材表面からの深さ)を測定した。侵食深さが50μm以上であったものを×、50μm未満であったものを○とした。
以上の試験結果を以下の表1、表2に示す
Figure 0005841719
Figure 0005841719
表1と表2に示す結果から、亜結晶粒径の平均が1.5μmを超えたNo.5、6の試料は伸びが低くなった。
また、Mn含有量が少ないNo.12の試料はろう付け後の強度が低下し、Mn含有量が多いNo.13の試料では鋳造時に発生した巨大晶出物の影響で伸びが低下した。Si含有量が少ないNo.14の試料はろう付け後の強度が低下し、Si含有量が多いNo.15の試料はエロージョン深さが増加した。Cu含有量が少ないNo.16の試料はろう付け後の強度が低下し、Cu含有量が多いNo.17の試料では耐食性が低下した。Fe含有量の少ないNo.19の試料はろう付け後の強度が低下し、Fe含有量の多いNo.20の試料は耐食性が低下した。
また、化合物の平均直径が小さいNo.7の試料は同一成分のNo.1〜No.6、No.8〜No.11に比べてろう付け後の強度が若干低下する傾向となり、化合物の平均直径が大きいNo.10の試料は伸びが若干低下する傾向となった。No.11の試料は、亜結晶粒と転位セルが混在した組織となったので、伸びが低下した。
1…アルミニウム合金クラッド材、2…芯材、3…ろう材層(第1の皮材)、4…犠牲陽極材層(第2の皮材)、10…チューブ、20…熱交換器。

Claims (4)

  1. 少なくとも芯材の一方の面に皮材をクラッドしてなるアルミニウム合金クラッド材であって、芯材が、Mn:0.5%以上2.0%以下(質量%、以下同じ)、Si:0.2%以上1.3%以下、Fe:0.05%以上0.5%以下、Cu:0.3%以上1.5%以下を含有し、残部アルミニウムおよび不可避不純物からなり、前記芯材の結晶粒組織が圧延方向平行断面の結晶粒組織として繊維状組織であり、さらに、前記繊維状組織が亜結晶粒からなり、圧延方向平行断面において後方散乱電子線回折法により測定された亜結晶粒径の平均粒径が1.5μm以下であることを特徴とする成形性に優れた自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  2. 芯材に更にMg:0.05%以上0.5%以下を含有してなる請求項1に記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  3. 芯材に更にTi:0.05%以上0.3%以下、Zr:0.05%以上0.3%以下、Cr:0.05%以上0.3%以下を含有してなる請求項1または請求項2に記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  4. 芯材中の晶出物を除く第2相粒子のうち、Al−Mn系、Al−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の平均直径が0.05μm以上0.5μm以下の範囲とされてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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