JP5449742B2 - 有機el素子 - Google Patents

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本発明は、有機EL素子に関する。
特許文献1,2に示すように、一対の電極層で挟まれる発光層を含む有機機能層を支持基板の主面に設け、光の取り出し効率を高めるための有機キャッピング層をさらにその上に重ねて設けた有機EL素子が提案されている。特許文献1,2は、有機キャッピング層をα−NPD、TPD又はm−MTDATAで構成すること、有機キャッピング層の有機材料のガラス転移点Tgを有機機能層を構成する各層の有機材料よりも低くし、有機キャッピング層の有機材料を蒸着した後に有機機能層を流動化させずに有機キャッピング層を流動化させることに言及している。
特開2008−108628号公報 特開2008−159438号公報
一般的に、分子性物質の融点Tmは、分子形状の対称性が低くなると小さくなる。これは、分子形状の対称性が低くなると、固体を構成する分子間の隙間が多くなり、固体を構成する分子間に働く分子間力が弱くなるからである。
このため、有機キャッピング層の有機材料の融点Tm又はガラス転移点Tgを小さくしようとすると、分子形状の対称性が低くなる分子性物質すなわちモル質量が大きい分子性物質からなる有機材料を選択することになる。実際、特許文献1,2が言及しているα−NPD、TPD及びm−MTDATAのモル質量は、それぞれ、589g/mol、517g/mol及び622g/molであり、特許文献1,2の有機EL素子では、モル質量がかなり大きい分子性物質からなる有機材料で有機キャッピング層を構成している。
しかし、モル質量が大きい分子性物質からなる有機材料で有機キャッピング層を構成する場合、有機材料を蒸着するときの回り込み性が低下するため、蒸着すべき箇所に有機材料が回り込むことができず、有機キャッピング層にピンホール等の欠陥が生じやすくなる。
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、有機キャッピング層のステップカバレッジを良好にすることができる有機EL素子を提供することを目的とする。
請求項1に記載の有機EL素子は、支持基板と、前記支持基板上に形成され、電荷輸送材料を含有し、正孔と電子とを結合させて発光する有機機能層と、前記支持基板上であって、前記有機機能層と空隙を介して併設される絶縁層と、前記有機機能層上から前記空隙を介して前記絶縁層上にまで連続して形成され、モル質量が前記電荷輸送材料のモル質量よりも小さい分子性物質を含む有機キャッピング層と、を備える。
請求項2に記載の有機EL装置は、請求項1に記載の有機EL素子において、前記分子性物質のモル質量が429g/mol以下である。
請求項3に記載の有機EL装置は、請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子において、前記分子性物質がナフタレン、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴフェニル誘導体、リチウム錯体及び亜鉛錯体、並びにナフタレンにさらに別の環がオルト縮合又はペリ縮合したナフタレン誘導体からなる群より選択される。
請求項4に記載の有機EL装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の有機EL素子において、前記有機キャッピング層が前記分子性物質を25重量%以上含む。
請求項5に記載の有機EL装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の有機EL素子において、前記有機キャッピング層の融点が175℃以下である。
請求項6に記載の有機EL装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の有機EL素子において、前記有機キャッピング層が混合物である。
請求項7に記載の有機EL素子は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の有機EL素子において、前記有機キャッピング層の吸収ピーク波長が321nm以下である。
請求項8に記載の有機EL装置は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の有機EL素子において、前記有機キャッピング層のエネルギーギャップが3.3eV以上である。
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の有機EL素子において、前記有機キャッピング層が電子輸送性材料からなる。
請求項10に記載の有機EL素子は、支持基板と、前記支持基板上に形成される第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、電荷輸送材料を含有し、正孔と電子とを結合させて発光する有機機能層と、前記有機機能層を被覆する第2電極層と、モル質量が前記有機機能層を構成する電荷輸送材料のモル質量よりも小さい分子性物質を含む有機キャッピング層と、を備え、平面視して前記有機機能層と前記第2電極層とが重なる領域に凹部が形成され、前記有機キャッピング層が前記凹部を充填する。
本発明によれば、有機キャッピング層のステップカバレッジを良好にすることができる有機EL素子を提供することができる。
<1 有機EL素子102の構造>
(1.1)有機EL素子102の概略;
図1及び図2は、本発明の実施形態の有機EL素子102の模式図である。図1は、有機EL素子102の平面図、図2は、有機EL素子102の断面図となっている。図1及び図2に示す有機EL素子102は、画像を表示する画像表示装置に用いられる。
図1及び図2に示すように、有機EL素子102は、支持基板104の上面に複数の層を備える積層体106を設け、積層体106が設けられていない周辺部において支持基板104の上面と封止基板108の下面とをシール体110で接合し、支持基板104の上面と封止基板108の下面との間隙に積層体106を収容した構造を有する。
(1.2)支持基板104及び封止基板108;
有機EL素子102は、光が封止基板108を透過して上方に向けて出射される上面発光型である。したがって、封止基板108は、少なくとも有機EL素子102が発光する光の波長において透明であるべきであるが、支持基板104は、不透明であってもよい。支持基板104及び封止基板108は、例えば、ガラス・樹脂等の材料で構成される。
(1.3)シール体110;
図1に示すように、シール体110の平面形状は環状となっている。シール体110は、積層体106が設けられている領域を途切れなく囲む。これにより、積層体106が支持基板104、封止基板108及びシール体110によって封止され、大気中の水分等から積層体106が保護される。シール体110は、例えば、光硬化性又は熱硬化性のアクリル樹脂・エポキシ樹脂・あるいは低融点の合金・低融点ガラス等の材料で構成される。図2において、積層体106と封止基板108との間には空隙が設けられており、キセノン、クリプトン、アルゴン又はネオン等の第18族元素、或いは酸素を除去した窒素又はフルオロカーボン・ハロゲン化炭素等の不活性なガスを充填することが好ましい。
また、この空隙に、シール体110と同一または異なる組成からなるアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はシリコン樹脂等の硬化性樹脂、或いはハイドロフルオロエーテル・フロリナート等の不活性液体を充填することが好ましい。この場合、支持基板104又は封止基板108が撓んでも積層体106が局所的に圧迫されることが無くなり、積層体106の損傷を防止できる。更に、積層体106の表面、或いは封止基板108の表面における光の屈折率の差によって生じる光の反射又は光の干渉を抑えて、光の取り出し効率を高めることができる。
<2 積層体106>
(2.1)積層体106の概略;
図3は、支持基板104及び積層体106を拡大した模式図である。図3は、支持基板104及び積層体106の断面図となっている。なお、図3に示す積層体106の積層構造は一例に過ぎず、必要に応じて変形される。特に、後述する有機キャッピング層128と支持基板104との間の積層構造は、有機電界発光装置102の仕様に応じて変形される。
図3に示すように、積層体106は、駆動信号を伝達する回路層112と、回路層112を保護する絶縁保護膜114と、回路層112及び絶縁保護膜114による凹凸を緩和する平坦化層116と、正孔を供給する陽極層118と、正孔を輸送する正孔輸送層120と、正孔と電子とを結合させて光を発する発光層122と、電子を輸送する電子輸送層124と、電子を供給する陰極層126と、界面における光の反射を抑制し下の層を保護する有機キャッピング層128と、下の層を保護する無機パッシベーション層130と、陽極層118と陰極層126とを絶縁する絶縁層132と、陰極層126と回路層112とを導通させる陰極コンタクト層134と、陰極層126を分割する隔壁136とを備える。
(2.2)回路層112、絶縁保護膜114及び平坦化層116;
回路層112、絶縁保護膜114及び平坦化層116は、支持基板104の上面にこの順序で下側から上側へ向かって重ねて設けられる。ただし、各画素にひとつある陰極コンタクトホール位置181においては、回路層112を露出させる開口1140が絶縁保護膜114に形成され、上面及び下面を貫通する陰極コンタクトホール1160が平坦化層116に形成される。このため、陰極コンタクトホール位置181においては、陰極コンタクトホール1160の底に回路層112が露出する。陰極コンタクトホール1160の断面形状はテーパ状となっており、陰極コンタクトホール1160の径は上側から下側へ向かって小さくなる。これにより、陰極コンタクトホール1160の内壁は、斜め上方を向く。このことは、陰極コンタクトホール1160の内壁への陰極コンタクト層134の被着を容易にする。
回路層112は、薄膜トランジスタ又はキャパシタ等の回路素子を備える。
絶縁保護膜114は、例えば、SiNx(窒化ケイ素)、SiOx(酸化ケイ素)又はSiOxy(酸化窒化ケイ素)等の絶縁材料で構成し、平坦化層116は、例えば、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂等の絶縁材料で構成する。平坦化層116の厚みは、例えば0.5μm以上10μm以下に設定されている。
(2.3)陽極層118及び陰極コンタクト層134;
第1電極層としての陽極層118は、平坦化層116の上面に設けられる。陰極コンタクト層134は、陰極コンタクトホール1160の底に露出している回路層112から陰極コンタクトホール1160の内壁を経て平坦化層116の上面の陰極コンタクトホール1160を囲む領域までの範囲に延在する。陽極層118と陰極コンタクト層134との間には間隙がある。このため、陽極層118と陰極コンタクト層134とは絶縁される。
陽極層118及び陰極コンタクト層134は、例えば、Al(アルミニウム)、Ag(銀)又はRh(ロジウム)等の金属を主成分とする合金等の導電材料で構成される。陽極層118の可視光に対する光反射率は、例えば30%以上100%以下となるように設定されている。
(2.4)絶縁層132;
絶縁層132は、前述した支持基板104、回路層112、絶縁保護膜114、平坦化層116、陽極層118及び陰極コンタクト層134からなる構造体の上面に設けられる。画素として機能する発光領域182においては、開口1320が絶縁層132に形成され、各画素にある陰極コンタクト位置183においては、開口1322が絶縁層132に形成される。開口1320,1322の断面形状はテーパ状となっており、開口1320,1322の径は、上側から下側へ向かって小さくなる。これにより、開口1320,1322の内壁は、斜め上方を向く。このことは、開口1320から開口1322にかけて陰極層126又有機キャッピング層128等を容易に段切れすることなく連続して成膜することができる。絶縁層132は、陽極層118と陰極コンタクト層134及び陰極層126とを絶縁する。
(2.5)正孔輸送層120、発光層122及び電子輸送層124(有機機能層138);
正孔輸送層120、発光層122及び電子輸送層124は、陽極層118の上面にこの順序で下側から上側へ向かって重ねて設けられる。陽極層118から供給された正孔は、正孔輸送材料によって構成された正孔輸送層120によって発光層122へ輸送され、陰極層126から供給された電子は、電子輸送材料によって構成された電子輸送層124によって発光層122へ輸送される。これにより、発光層122において正孔と電子とが再結合し、光を発する。
正孔輸送層120、発光層122及び電子輸送層124からなり電子及び正孔を輸送及び再結合させる機能を有する有機機能層138は、開口1320上に形成される。理想的な状態においては、有機機能層138の両端は開口1320の内壁の上にある。これにより、陰極層126を設ける面の段差が小さくなり、陰極層126並びにその上面に重ねて設けられる領域において、有機キャッピング層128及び無機パッシベーション層130が段切れすることなく連続して成膜される。
正孔輸送層120は、例えば、α−NPD(4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル)等の芳香族ジアミン化合物、又はポリエチレンジオキシチオフェン等の正孔輸送性の材料で構成される。
電子輸送層124は、例えば、Alq3、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、テトラヒドロイミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、スチルベン誘導体又はピラゾリン誘導体等の電子輸送性の材料で構成される。
発光層122は、例えば、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体)等の発光性の材料で構成される。発光効率を高めるために、ビス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)(2,4−ペンタンジオナト−O,O)イリジウム、トリス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)イリジウム等の有機金属化合物又クマリン等の色素をドーパント材料として、正孔輸送性又は電子輸送性を有するホスト材料にドープして発光層122を構成してもよい。
発光層122を構成するドーパント材料の濃度は、例えば、0.5質量%以上20質量%以下とする。正孔輸送性を有するホスト材料の例としては、α−NPD、TPD又はm−MTDATA等がある。電子輸送性を有するホスト材料の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,4−フェニレンビス(トリフェニルシラン)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゼン、CBP、Alq3又はSDPVBi等がある。なお、発光層122の各層を構成する材料は、発する光の色に応じて、適当な材料が選択される。赤色の光を発するドーパント材料の例としては、トリス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)イリジウム又はDCJTB等がある。緑色の光を発するドーパント材料の例としては、トリス[ピリジニル−kN−フェニル−kC]イリジウム又はビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)等がある。青色の光を発するドーパント材料の例としては、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体又はアゾメチン亜鉛錯体等がある。
なお、有機機能層の電荷輸送材料とは、正孔輸送性材料、電子輸送性材料又はホスト材料のことであリ、ドーパント材料とは異なる。
なお、有機機能層138は、少なくとも発光層122を備える必要はあるが、必ずしも正孔輸送層120、発光層122及び電子輸送層124からなる3層構造である必要はない。例えば、発光層のみからなる1層構造又は正孔輸送層と発光層とからなる若しくは発光層と電子輸送層とからなる2層構造であってもよい。また、陽極層118と正孔輸送層122との間にさらに正孔注入層を挿入してもよいし、電子輸送層124と陰極126との間にさらに電子注入層を挿入してもよい。必要があれば、さらに別の層を挿入することも許される。ここで、正孔注入層として、例えば、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、パラジウム又は白金等のVIII族金属元素、銅又は銀等のIB族金属元素、或いはレニウム等のVII族金属元素からなる高導電性遷移金属の薄膜、銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン誘導体、フッ化炭素のオリゴマー、ポリマー(CFx)、4,4′,4″−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)又は2−TNATA等のスターバースト型芳香族アミン等を用いることができる。また、電子注入層として、例えば、フッ化リチウム又はフッ化セシウム等のアルカリ金属元素を含むイオン結合性物質を用いることができる。
表1は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を構成する材料の融点Tm及びガラス転移点Tgの一例を示している。
(2.6)隔壁136;
隔壁136は、絶縁層132の上面に設けられる。隔壁136の断面形状はテーパ状となっており、隔壁136の径は、下側から上側へ向かって大きくなる。これにより、隔壁136の側面及び根元付近への陰極層126の被着が妨げられ、陰極層126が分割される。陰極層126を画素列ごとに分割する場合は、隔壁136の平面形状は縞状となり、陰極層126を画素ごとに分割する場合は、隔壁136の平面形状は格子状になる。陰極層126をどのように分割すべきかは、駆動の仕方によって異なる。陰極層126を共通電極とし、陽極層118に供給する駆動電流を制御するコモンカソード型駆動回路によって駆動する場合等において、隔壁136を設けないようにしてもよい。隔壁136を設けない場合において、蒸着マスクを用いて発光層を形成するには、蒸着マスクと発光層との間に空隙を設けることによって機械的接触を避ける目的で、突起部を設けることが好ましい。隔壁136は、例えば、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂又はアクリル樹脂等の有機絶縁材料、或いはSiNx(窒化ケイ素)、SiOx(酸化ケイ素)又はSiOxy(酸化窒化ケイ素)等の無機絶縁材料からなる。突起部は、例えば、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂又はアクリル樹脂等の有機絶縁材料、或いはSiNx(窒化ケイ素)、SiOx(酸化ケイ素)又はSiOxy(酸化窒化ケイ素)等の無機絶縁材料からなる。
(2.7)陰極層126、有機キャッピング層128及び無機パッシベーション層130;
第2電極層としての陰極層126、有機キャッピング層128及び無機パッシベーション層130は、上述した支持基板104、回路層112、絶縁保護膜114、平坦化層116、陽極層118、陰極コンタクト層134、絶縁層132、隔壁136及び有機機能層138からなる構造体の上面にこの順序で下側から上側に重ねて設けられる。ただし、隔壁136の側面及びその根元付近以外には陰極層126、有機キャッピング層128及び無機パッシベーション層130が重ねて設けられる。
陰極層126は、発光領域182において有機機能層138の上面に接触する。これにより、有機機能層138を挟んで陽極層118と陰極層126とが対向する発光体が形成される。また、陰極層126は、陰極コンタクト位置183において陰極コンタクト層134の上面に接触する。これにより、回路層112から陰極コンタクト層134を経て陰極層126へ駆動電流が供給される。
陰極層126は、例えば、酸化亜鉛含有酸化インジウム又はITO(酸化スズドープ酸化インジウム)等の透明導電材料で構成される。又は、Mg(マグネシウム)等のアルカリ土類金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含む合金等の仕事関数が小さい半透明導電材料で構成される。無機パッシベーション層130は、例えば、SiNx(窒化ケイ素)、SiOx(酸化ケイ素)又はSiOxy(酸化窒化ケイ素)等の無機材料で構成される。なお、無機パッシベーション層130の厚みは、例えば0.5μm以上10μm以下に設定されている。
半透明導電材料で陰極層126を構成する場合、陰極層126の膜厚は、光を透過しやすくするために薄くすることが望ましく、例えば、10nm以上200nm以下に設定されている。有機キャッピング層128の層厚は、概ね、50nm以上500nm以下に設定されている。
(2.8)有機キャッピング層128を構成する有機材料;
(a)モル質量;
有機キャッピング層128を構成する有機材料は、モル質量が有機機能層138を構成する電荷輸送材料のモル質量よりも小さい分子性物質を含む材料から構成されている。ここで、有機機能層138を構成する電荷輸送材料とは、分子性物質であって、正孔輸送層120を構成する正孔輸送材料、発光層122を構成する正孔輸送性を有するホスト材料または電子輸送性を有するホスト材料、電子輸送層124を構成する電子輸送材料を意味する。蒸着源から陽極層118に向けて気化した有機材料は、陽極層118上に形成される隔壁等の構造物によって遮られ、所望の領域にまで到達しないことがある。有機キャッピング層128として、モル質量が有機機能層138を構成する電荷輸送材料のモル質量よりも小さい分子性物質を用いることによって、隔壁によって遮られた領域まで有機材料の回り込む量を多くすることができる。有機キャッピング層128としては、特に、モル質量が429g/mol以下の分子性物質を含む有機材料を好適に用いることができる。モル質量を小さくすることにより、回り込み性が向上するのは、モル質量が小さくなると気相における自由工程が長くなるからである。
有機キャッピング層128の有機材料が2種類以上の物質の混合物である場合、有機キャッピング層128の有機材料が含む物質の全てが、モル質量が小さい分子性物質である必要はない。これは、有機キャッピング層128の有機材料が、モル質量が小さい分子性物質を25重量%以上、望ましくは34重量%以上含んでいれば、実用上十分な回り込み性が得られるからである。
(b)モル質量と回り込み性との関係;
図4及び図5は、それぞれ、モル質量が小さい分子性物質を含まない有機材料で有機キャッピング層928を構成した場合及びモル質量が小さい分子性物質を含む有機材料で有機キャッピング層128を構成した場合の支持基板104及び積層体906,106を示す模式図である。図4及び図5は、図3に相当する断面図であるが、図3に示すように有機機能層138の両端が開口1320の内壁の上にある理想的な状態ではなく、有機機能層138の一端が開口1320の内壁の上にない非理想的な状態を示している。このような非理想的な状態は、有機機能層138を蒸着するときに使用する蒸着マスクの位置ずれ、膨張、収縮又は変形により起こる。また、図6及び図7は、それぞれ、図4及び図5の矢印184が指す箇所付近の拡大図である。
図4〜図7に示すように、非理想的な状態においては、有機キャッピング層928の有機材料を蒸着すべき面に下方に向けて深く食い込む空隙(矢印184が指す箇所を参照)ができ、有機キャッピング層928の有機材料が回り込みにくくなる。この原因としては、有機機能層138と絶縁層132との間に空隙が存在する場合、該空隙が存在することによってできた溝内にまで有機材料が被着しにくくなったり、有機材料が隔壁136によって遮られ、所望する箇所に有機材料が被着しにくくなったりすることによる。このとき、モル質量が小さい、分子性物質を含まない有機材料で有機キャッピング層928を構成すると、図4及び図6に示すように、有機材料が空隙に十分に回り込まず、有機キャッピング層928及びその上面に重ねて設けられる無機パッシベーション層130に欠陥が生じる。一方、モル質量が小さい分子性物質を含む有機材料で有機キャッピング層128を構成すると、図5に示すように、有機材料が空隙の内部に十分に回り込み、有機キャッピング層128及びその上面に重ねて設けられる無機パッシベーション層130に欠陥は生じない。このように、モル質量が小さく回り込み性が十分な分子性物質を含む有機材料で有機キャッピング層128を構成すれば、無機パッシベーション層130の欠陥が抑制される。このように、有機キャッピング層のステップカバレッジを良好にすることができる有機EL素子を提供することができる。
なお、有機キャッピング層928を構成する有機材料が回り込みにくい箇所は、パーティクル等の異物が付着している周囲にも生じる。仮に、異物が、陽極層118上であって、平面視して発光領域182と重なる領域に存在する場合には、異物の周囲に蒸着材料が被着しにくい。そして、異物の周囲に蒸着材料が被着しにくい一方、異物の直上には蒸着材料が異物の周囲よりも厚く被着するため、両箇所の成膜状況の違いにより、平面視して異物の周囲には、凹部が形成される。かかる凹部にも有機キャッピング層928を構成する有機材料が回り込みにくい。
(c)融点Tm及びガラス転移点Tg;
有機キャッピング層128は、有機機能層138よりも低い温度で融解又は流動化することが望ましい。すなわち、有機キャッピング層128の有機材料の融点Tm及びガラス転移点Tgは、有機機能層138を構成する各層の有機材料の融点Tm及びガラス転移点Tgより温度が低いことが望ましい。これにより、有機キャッピング層128を融解又は流動化させても有機機能層138が融解及び流動化しないので、有機機能層138を熱で損傷することなく有機キャッピング層128を融解又は流動化させ異物の包理を行うことができる。さらには、層同士の間に加わる層間応力の緩和を行うことができる。なお、融点Tmが175℃以下の有機材料で有機キャッピング層128を構成することが望まれる。このように構成することにより、有機機能層138を構成する各層の有機材料の融点Tmより低い温度で有機キャッピング層128を融解又は流動化させ異物の包理を行うことができる。さらには、層同士の間に加わる層間応力の緩和を行うことができる。
表1に例示する正孔注入層の材料HI−A、正孔輸送層の材料HT−A、赤発光層ホストの材料RH−B及び電子輸送層の材料ET−Aを採用する場合、有機機能層138を構成する各層のガラス転移温度Tgはいずれも140℃以上になる。したがって、融点Tm又はガラス転移点Tgが140℃未満の有機材料で有機キャッピング層128を構成し、有機キャッピング層128を140℃未満で融解又は流動化させる。例えば、融点が139℃のブチルPBDで有機キャッピング層128を構成し、有機キャッピング層128を139℃以上140℃未満で融解させる。ブチルPBDと他の物質との混合物で有機キャッピング層128を構成してもよい。凝固点降下により融点Tmが低下するからである。又は、融点Tmが279℃、ガラス転移点Tgが85℃のCBP又は融点Tmが296℃、ガラス転移点Tgが128℃のテトラメチルCBPで有機キャッピング層128を構成し、有機キャッピング層128を85℃又は128℃以上140℃未満で流動化させる。CBP又はテトラメチルCBP等のカルバゾール誘導体と他の物質との混合物で有機キャッピング層128を構成してもよい。
また、表1に例示する正孔注入層の材料HI−A、正孔輸送層の材料HT−A、赤発光層ホストの材料RH−A及び電子輸送層の材料ET−Aを採用する場合、有機機能層138を構成する各層のガラス転移温度Tgはいずれも114℃以上になる。したがって、融点Tm又はガラス転移点Tgが114℃未満の有機材料で有機キャッピング層128を構成し、有機キャッピング層128を114℃未満で融解又は流動化させる。例えば、融点Tmが279℃、ガラス転移点Tgが85℃のCBPで有機キャッピング層128を構成し、有機キャッピング層128を85℃以上114℃未満で流動化させる。CBP等のカルバゾール誘導体と他の物質との混合物で有機キャッピング層128を構成してもよい。
(d)光吸収ピーク波長及びエネルギーギャップ;
有機キャッピング層128は、吸収ピーク波長が321nm以下又はエネルギーギャップが3.3eV以上の物質からなる有機材料で構成することが望ましい。これにより、有機キャッピング層128による長波長紫外線の吸収が抑制されるので、有機キャッピング層128が黄色〜褐色に着色することによる有機キャッピング層128の光透過率の低下及び有機キャッピング層128の緻密さが失われることによる有機キャッピング層128の封止性能の低下並びに有機キャッピング層128からのアウトガスによる有機EL素子102の劣化が抑制される。
有機キャッピング層128による長波長紫外線の吸収の抑制は、有機機能層138を熱で損傷することを防ぐために温度の上昇を抑制しやすいプラズマCVD(化学気相蒸着)法で無機パッシベーション層130を形成する場合に特に意義を有する。すなわち、CVD法で用いるプラズマは、波長が可視光に近い長波長紫外線、例えば、波長が325nm以上400nm以下の長波長紫外線を多く含むので、有機キャッピング層128による長波長紫外線の吸収を抑制すれば、無機パッシベーション層130をプラズマCVD法で形成するときに有機キャッピング層128が吸収する紫外線は、CVD法で用いるプラズマにわずかしか含まれない波長が可視光から遠い短波長紫外線、例えば、波長が250nm以上324nm以下の短波長紫外線のみとなる。短波長紫外線の強度は、長波長紫外線の強度と比較して、通常は0.1倍未満である。従って、有機キャッピング層128を吸収ピーク波長が321nm以下の物質からなる有機材料で構成することにより、プラズマCVDの工程において、有機キャッピング層128が強度の大きい長波長紫外線を吸収することによって引き起こされる劣化は、光吸収が弱いために軽微になる。また、プラズマCVDの工程において、有機キャッピング層128が短波長紫外線を吸収することによって引き起こされる劣化は、短波長紫外線の強度が小さいので軽微になる。
(e)導電型;
有機キャッピング層128は、電子輸送層と同様の電子輸送性の物質からなる有機材料で構成することが望ましい。これにより、有機キャッピング層128の有機材料が電子輸送層124へ拡散しても電子輸送層124の電子移動度を低下させたり正孔の陰極への漏洩を助長したりすることがないので、有機EL素子102の発光効率の低下及び駆動電圧の上昇が抑制される。このような電子輸送性の物質は、共役電子系を有する分子からなる物質に多く存在する。
なお、有機機能層138が電子輸送層を備えない層構造を採用したとしても、発光層の陰極層寄りの部分は電子輸送性を有していなければならない。このため、有機機能層138が電子輸送層を備えない層構造を採用したとしても、電子輸送性の物質からなる有機材料で有機キャッピング層128を構成すれば、有機キャッピング層の有機材料が電子輸送性を有する部分へ拡散しても、有機EL素子102の発光効率の低下及び駆動電圧の上昇が抑制される。
有機キャッピング層128を電子輸送性の物質からなる有機材料で構成することは、陰極層126の光透過性を向上するために陰極層126を非常に薄く、例えば、陰極層126の層厚を15nm以上20nm以下にした場合に特に意義を有する。陰極層126を薄くすると、有機キャッピング層の有機材料が電子輸送層124へ拡散しやすくなるからである。
(f)分子形状の対称性と融点Tmとの関係;
固体状態において分子間に強い分子間力が働く分子性物質は、結晶が壊れにくいため、高い融点Tmを有する場合が多い。また、固体状態において分子の配列に隙間が少なくパッキングがよい分子性物質は、固体状態において分子間に強い分子間力が働くことが多い。さらに、分子形状の対称性が高い分子性物質は、固体状態における分子の配列に隙間が少なくパッキングがよい場合が多い。したがって、分子形状の対称性が高い分子性物質は、高い融点Tmを有する場合が多い。
例えば、モル質量が等しくメチル基の位置だけが異なるメタキシレン、オルトキシレン及びパラキシレンの融点Tmは、それぞれ、−48℃,−25℃及び+13℃であり、分子形状の対称性が高くなるほど融点Tmが高くなる。また、メタキシレン、オルトキシレン及びパラキシレンの沸点は、それぞれ、139℃,144℃及び138℃とほぼ同じであり、分子形状の対称性が高くなるほど融点Tmが高くなるのは、固体状態における分子の配列の寄与が大きいことがわかる。
また、ベンゼン環数が2の縮合環化合物であるモル質量128.18g/molのナフタレンの融点Tmは80℃、沸点は218℃である。ベンゼン環数が2の非縮合環化合物であるモル質量が154.21g/molのビフェニルの融点Tmは69℃、沸点は254℃である。ベンゼン環数が3の縮合環化合物であるモル質量が178.23g/molのアントラセンの融点Tmは218℃、沸点は342℃である。ベンゼン環数が3の非縮合環化合物であるモル質量が230.31g/molのp−テルフェニルの融点Tmは211℃、沸点は389℃である。これらの物質においては、モル質量が大きくなるほど沸点が高くなる傾向があるが、ベンゼン環数が2のナフタレンとビフェニルとを対比すると、又は、ベンゼン環数が3のアントラセンとp−テルフェニルとを対比すると、モル質量が大きく分子形状の対称性が低いビフェニルやp−テルフェニルの方が融点Tmは低い。このことから、分子形状の対称性が融点Tmに強く影響することがわかる。
本願発明では、このことを利用して、モル質量が小さく融点Tm又はガラス転移点Tgが低い物質を見い出し、有機キャッピング層128を当該物質を含む有機材料で構成している。
(g)有機キャッピング層128の有機材料に含まれる分子性物質の望ましい例;
有機キャッピング層128の有機材料に含まれるモル質量が429g/mol以下、融点Tmが175℃以下で電子輸送性の分子性物質の望ましい例を説明する。
当該分子性物質の第1の例は、オキサジアゾール誘導体である。望ましいオキサジアゾール誘導体には、化学式(1)に示す融点Tmが168℃、モル質量が298.3g/molの2−(4−ビフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、化学式(2)に示す融点Tmが150℃、モル質量が364.4g/molの2,5−ビス(4′−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、化学式(3)に示す融点Tmが139℃、モル質量が222.2g/mol、吸収ピーク波長282nmの2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、化学式(4)に示す融点Tmが139℃、モル質量が354.4g/mol、吸収ピーク波長305nmの2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(ブチルPBD)等がある。
当該分子性物質の第2の例は、オキサゾール誘導体である。望ましいオキサゾール誘導体には、化学式(5)に示す融点Tmが101℃、モル質量が222.2g/mol、吸収ピーク波長321nmの5−フェニル−2−(4−ピリジル)オキサゾール、化学式(6)に示す融点Tmが73℃、モル質量が221.25g/mol、吸収ピーク波長303nmの2,5−ジフェニルオキサゾール等がある。
当該分子性物質の第3の例は、融点Tmが80℃、モル質量が128.2g/molのナフタレンである。ナフタレンにさらに別の環がオルト縮合又はペリ縮合したナフタレン誘導体も採用しうる。オルト縮合又はペリ縮合する環は、炭素環であってもよいし複素環であってもよい。ナフタレン誘導体には、化学式(7)に示す融点Tmが100℃、モル質量が178.2g/molのフェナンスレン等がある。
当該分子性物質の第4の例は、オリゴフェニル誘導体である。望ましいオリゴフェニル誘導体には、融点Tmが69℃、モル質量が154.2g/molのビフェニル等がある。
当該分子性物質の第5の例は、リチウム錯体である。望ましいリチウム錯体には、化学式(8)に示すモル質量が151.1g/mol、吸収ピーク波長261nmの(8−ヒドロキシキノリナト)リチウム等がある。
当該分子性物質の第6の例は、亜鉛錯体である。望ましい亜鉛錯体には、化学式(9)に示す融点Tmが127℃、モル質量が263.6g/molのビス(2,4−ペンタンジオナト)亜鉛(II)等がある。
有機キャッピング層128の有機材料は、前述した物質から選択した1種類の分子性物質からなる有機材料であってもよいし、前述した物質から選択した2種類以上の分子性物質からなる有機材料であってもよい。また、前述した分子性物質以外の物質を含んでいてもよい。
(h)結晶化しやすさ;
有機キャッピング層128の有機材料は、結晶化しにくい有機材料であることが望ましい。有機キャッピング層128の内に大きな結晶が生じると、かかる結晶中を物質が通過しやすくなるので、有機キャッピング層128の封止性能が低下する傾向が見られるからである。有機キャッピング層128の封止性能が低下すると、CVD法で用いられるプラズマに含まれる化学的反応性の高いラジカル種又は原料ガスが、陰極層126、電子輸送層124、発光層122、正孔輸送層120又は陽極層118の少なくとも一部に侵入し、これらの層の機能を損なう可能性がある。また、有機EL素子102の使用時に、有機EL素子102を構成する部材からのアウトガス、水分又は酸素等が、陰極層126から陽極層118の少なくとも一部に侵入し、これらの層の機能を損なう可能性がある。また、有機キャッピング層128の中に大きな結晶が生じると、結晶で光が散乱し、有機キャッピング層128の光の透過性が低下する傾向が見られるからである。したがって、有機キャッピング層128の有機材料は、結晶が小さい微結晶となりやすい有機材料であることが望ましく、結晶がない非晶質となりやすい有機材料であることが望ましい。
図8は、各種有機材料の結晶化しやすさを説明する図である。図8は、一のガラス基板の上で有機材料の粉末を融点Tmまで加熱して融解させた後に一のガラス基板と他のガラス基板との空隙に融液を挟んで薄膜状態としたものを徐々に室温まで冷却し凝固させることにより得られた膜を24時間又は240時間後に顕微鏡で観察したときの像を示している。図8において、試料1の有機材料はCBPのみからなり、試料2の有機材料は50重量%のブチルPBD及び50重量%のCBPからなり、試料3の有機材料はブチルPBDのみからなり、試料4の有機材料は50重量%のブチルPBD及び50重量%のテトラメチルCBPからなり、試料5の有機材料はテトラメチルCBPのみからなる。CBP及びテトラメチルCBPは、それぞれ、化学式(10)及び(11)であらわされる。CBP及びテトラメチルCBPのガラス転移点Tgは、それぞれ、85℃及び128℃である。CBP及びテトラメチルCBPの融点Tmは、それぞれ、279℃及び296℃である。CBP及びテトラメチルCBPは、いずれも電子輸送性の物質である。CBP及びテトラメチルCBPのモル質量は、それぞれ486g/mol及び542g/molである。
有機材料がCBPのみからなる試料1では、凝固させた直後には透明な膜が得られたが、図8に示すように72時間後には有機材料が結晶化し、膜の一部が白濁した。
有機材料がブチルPBD及びCBPからなる試料2では、ブチルPBDの融点Tmを超える150℃まで材料を加熱し、ブチルPBDの融液にCBPを溶解させている。試料2では、図8に示すように240時間後にも有機材料は非晶質のままであり、膜は透明であった。
有機材料がブチルPBDのみからなる試料3では、凝固させた直後には透明な膜が得られたが、図8に示すように72時間後には有機材料に微結晶が生じ、膜の一部が白濁した。
有機材料がブチルPBD及びテトラメチルCBPからなる試料4では、ブチルPBDの融点Tmを超える150℃まで有機材料を加熱し、ブチルPBDの融液にテトラメチルCBPを溶解させている。試料4では、図8に示すように240時間後にも有機材料は非晶質のままであり、膜は透明であった。
有機材料がテトラメチルCBPのみからなる試料5では、図8に示すように72時間後には有機材料の一部が結晶化し、膜の一部が白濁した。
有機材料が2種類の物質の混合物である試料2,4で特に良好な結果が得られたのは、一方の物質が他方の物質の不純物となり、結晶化が妨げられるからである。結晶化を妨げる不純物として物質を働かせるためには、その含有量が25重量%以上であることが望ましく、34重量%以上であることがさらに望ましい。有機材料が2種類の物質の混合物である場合は、2種類の物質の含有質量比を1:1付近とすることが特に望ましい。
なお、これらの有機材料で有機キャッピング層128を構成した場合は、有機機能層138の上に有機キャッピング層128が設けられるので、ガラス基板の上の場合よりも結晶化しにくいが、相対的な結晶化しやすさはここで説明したのと同様である。
<3 有機EL素子102の製造>
図9は、有機EL素子102の製造の流れを示すフローチャートである。なお、以下で説明する各層の形成は、公知のPVD(Physical Vapor Deposition)法・CVD法・スピンコート法・インクジェット法等の成膜技術及びフォトリソグラフィ法等のパターニング技術を材料に応じて適宜採用して行う。
図9に示すように、有機EL素子102の製造にあたっては、まず、有機機能層138を挟んで陽極層118と陰極層126とが対向する積層構造体を支持基板104の上に作製する。
当該積層構造体の作製にあたっては、まず、回路層112、絶縁保護膜114及び平坦化層116を順次形成する(ステップS101〜S103)。続いて、陽極層118及び陰極コンタクト層134を形成する(ステップS104)。陽極層118及び陰極コンタクト層134を別々に形成してもよい。さらに続いて、絶縁層132及び隔壁136を順次形成する(ステップS105,S106)。最後に、有機機能層138及び陰極層126を順次形成する(ステップS107,108)。
このようにして作製した積層構造体の上面に有機キャッピング層128の有機材料を蒸着する(ステップS109)。有機キャッピング層128の有機材料の融点Tmが低い場合、有機材料を蒸着源から飛散させるときに有機材料を融解させることは容易である。また、有機キャッピング層128の有機材料の融点Tmが低い場合、有機材料の飛散が固体からの昇華ではなく液体からの蒸発により行われるので、有機材料を収容するルツボの内部の温度が均一になって有機材料の突沸が抑制される。有機材料の突沸が抑制されることには、蒸着膜の膜厚にバラツキが生じることや蒸着膜にピンホールが生じることが抑制されるという利点がある。さらに、有機キャッピング層128の有機材料の融点Tmが低い場合、有機材料の飛散が液体からの蒸発により行われるので、有機材料を収容するルツボの内部の材料の分布が均一になって、長時間連続で蒸着を行っても蒸着レートが不安定にならない。蒸着レートが安定していることには、蒸着膜の膜厚が設計からずれたり膜厚にバラツキが生じることが抑制されるという利点がある。
続いて、このようにして得られた蒸着膜を流動化又は融解させる(ステップS110)。蒸着膜を流動化又は融解させるときには、有機機能層138を構成する各層を流動化及び融解させないようにする。すなわち、仕掛品を、有機キャッピング層128の有機材料の融点Tm又はガラス転移点Tg以上の温度であって、有機機能層138を構成する各層の有機材料の融点Tm及びガラス転移点Tgより低い温度に加熱する。これにより、有機機能層138を熱で損傷することなく、異物の包理や層間応力の緩和を行うことができる。このことは、有機機能層138の周辺にある積層構造の乱れを緩和し、発光体の内部に残留する酸素で発光体を構成する物質が酸化されて発光体を劣化することに役立つ。
さらに続いて、蒸着膜を再び固化して有機キャッピング層128を完成する(ステップS111)。
次に、無機パッシベーション層130を形成する(ステップS112)。無機パッシベーション層130は、有機機能層138を熱で損傷することを防ぐために、温度の上昇を抑制しやすいプラズマCVD法または触媒化学気相成長(cat−CVD法)で形成することが望ましい。なお、プラズマCVD法またはcat−CVD法で無機パッシベーション層130を形成してもある程度の温度の上昇は起こるが、有機キャッピング層128の有機材料の融点Tm又はガラス転移点Tgが有機機能層138を構成する各層の有機材料の融点Tm及びガラス転移点Tgより低ければ、有機キャッピング層128が流動化又は融解するときに熱を吸収するので、熱による有機機能層138の損傷は回避される。
最後に、シール体110及び封止基板108で封止を行って有機EL素子102を完成する(ステップS113)。シール体110を、低融点の合金・低融点ガラス等の材料で形成する場合、有機機能層138の温度が高くなり、熱によって有機機能層138が損傷する場合がある。有機キャッピング層128の有機材料の融点Tm又はガラス転移点Tgが有機機能層138を構成する各層の有機材料の融点Tm及びガラス転移点Tgより低ければ、有機キャッピング層128が流動化又は融解するときに熱を吸収するので、熱による有機機能層138の損傷は回避される。
なお、蒸着膜の流動化又は融解(ステップS111)を無機パッシベーション層130の形成(ステップS112)のときに行うようにしてもよい。あるいは、蒸着膜の流動化又は融解(ステップS111)をシール体110の形成(ステップS113)のときに行うようにしてもよい。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。例えば、有機EL素子102は、光が支持基板104を透過して下方に向けて出射される下面発光型であってもよい。
有機EL素子の平面図である。 有機EL素子の断面図である。 有機機能層が理想的な状態の支持基板及び積層体の断面図である。 有機機能層が非理想的な状態の支持基板及び積層体の断面図である。 有機機能層が非理想的な状態の支持基板及び積層体の断面図である。 図4の矢印が指す箇所付近の拡大図である。 図5の矢印が指す箇所付近の拡大図である。 各種有機材料の結晶化しやすさを説明する図である。 有機EL素子の製造の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
102 有機EL素子
104 支持基板
106 積層体
110 シール体
108 封止基板
120 陽極層
122 発光層
126 陰極層
128 有機キャッピング層
130 無機パッシベーション層
136 有機機能層

Claims (4)

  1. 支持基板と、
    前記支持基板上に形成され、電荷輸送材料を含有し、正孔と電子とを結合させて発光する有機機能層と、
    前記支持基板上であって、前記有機機能層と空隙を介して併設され絶縁層と、
    前記有機機能層上から前記空隙を介して前記絶縁層上まで連続して形成され、モル質量が前記電荷輸送材料のモル質量よりも小さい分子性物質を25重量%以上含む有機材料からなる有機キャッピング層と、を備え、
    前記分子性物質は429g/mol以下のモル質量と175℃以下の融点を有する電子輸送性物質からなり、かつオキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴフェニル誘導体、リチウム錯体及び亜鉛錯体からなる群より選択されたものであることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記有機キャッピング層の吸収ピーク波長が321nm以下である請求項に記載の有機EL素子。
  3. 前記有機キャッピング層のエネルギーギャップが3.3eV以上である請求項1又は2に記載の有機EL素子。
  4. 支持基板と、
    前記支持基板上に形成され第1電極層と、
    前記第1電極層上に形成され、電荷輸送材料を含有し、正孔と電子とを結合させて発光する有機機能層と、
    前記有機機能層を被覆する第2電極層と、
    モル質量が前記有機機能層を構成する電荷輸送材料のモル質量よりも小さい分子性物質を25重量%以上含む有機材料からなる有機キャッピング層と、を備え、
    前記分子性物質は429g/mol以下のモル質量と175℃以下の融点を有する電子輸送性物質からなり、かつオキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴフェニル誘導体、リチウム錯体及び亜鉛錯体からなる群より選択されたものであり、
    平面視して前記有機機能層と前記第2電極層とが重なる領域に凹部が形成され、前記有機キャッピング層が前記凹部を充填していることを特徴とする有機EL素子。
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