JP5448979B2 - Ipmモータのロータ鉄心用鋼板、その製造方法およびipmモータのロータ鉄心 - Google Patents

Ipmモータのロータ鉄心用鋼板、その製造方法およびipmモータのロータ鉄心 Download PDF

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Description

本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車、工作機械などに主に使用される永久磁石埋め込み型モータ(IPMモータ)のロータ鉄心用鋼板、その製造方法およびそれを用いたIPMモータのロータ鉄心に関するものである。
一般に、IPMモータは、誘導電動機モータと比べ、高価な永久磁石を使用するため、コストは高くなるものの、高効率であり、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用モータや発電用モータ、さらには各種工作機械用のモータとして広く使用されてきている。
IPMモータの鉄心は、ステータ(固定子)とロータ(回転子)とに分けられるが、ステータには巻線を通じて、交流磁界が直接付与されるため、高効率化のためには、鉄心には高透磁率であることが求められるとともに、体積抵抗率を高めて、鉄損を低減する必要があった。そのため、ステータ用の鉄心には、極低炭素鋼にSiを添加して軟磁気特性を改善した電磁鋼板が用いられている。
一方、ロータには、永久磁石が埋め込まれ、鉄心は主にヨークとして磁束密度を高める役割を担っており、ステータ側から発生する僅かな交流磁界の影響は受けるものの、その影響は限定的である。しかし、ステータのみに電磁鋼板を使用すると、電磁鋼板の製品歩留りが低下して、モータの製造コストが高くなることもあって、通常はステータ側と全く同じ電磁鋼板を素材として用いていた。
一般に、モータの効率は、ロータの回転速度を高くするほど良好となるが、ロータには永久磁石が埋め込まれているため、回転速度が速くなりすぎると、永久磁石に働く遠心力によって突極部が変形してステータと接触し、最終的にはモータの破損に至る。
回転速度の限界は、ロータ用鉄心の板厚や形状が同一の場合には、ロータ用鉄心の降伏強度に依存する。例えば3質量%程度のSiを含有する無方向性電磁鋼板(35A300)の場合、磁性焼鈍後の降伏強度は約400N/mm程度であり、現状ではせいぜい15,000rpm程度までが回転速度の限界と考えられている。これまでも、電磁鋼板をベースに鉄心の降伏強度を高くする検討が種々行われている。
例えば、特許文献1には、磁気特性および耐変形性に優れた電磁鋼板およびその製造方法が開示されている。また、特許文献2には、鉄損特性の内、ヒステリシス損よりも渦電流損失の改善に着目し、高強度化との両立を図った電磁鋼板およびその製造方法が開示されている。特許文献2に開示される製造方法は、Cを通常の電磁鋼板よりも高め、連続焼鈍設備にて変態強化することを特徴とする。さらに、特許文献3には、C:0.06質量%超〜0.90質量%以下、Si:0.05質量%〜3.0質量%、Mn:0.2質量%〜2.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.02質量%以下、酸可溶Al:0.005質量%〜4.95質量%を、Si+Al:5.0質量%以下なる条件で含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する熱延鋼板を1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して所定の板厚とし、その後、200〜500℃の温度まで加熱することを特徴とするIPMモータのロータ鉄心用鋼板の製造方法が開示されている。
特開2005−133175号公報 特開2005−60811号公報 特開2009−46738号公報
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、軟磁気特性の改善に力を注いでいるため、十分な強度を確保することができない。また、特許文献2に開示される方法では、焼入れままではヒステリシス損が大きくなり過ぎて交流磁界を付与しても十分に励磁することができず、磁束密度が低くなる。そのため、IPMモータのリラクタンストルクが低下してモータ効率が低下する。なお、特許文献2の図2において、焼入れままの電磁鋼板は、同じ体積抵抗率の従来技術による電磁鋼板よりも渦電流損失が低い値となっているが、これは、同じ条件で励磁しても、磁壁の移動が磁界の変化に追随できず、磁界の変化幅が見かけ上小さくなったためと考えられる。すなわち、特許文献2に開示される電磁鋼板では、鋼中の転位密度が非常に高く、しかも複雑に絡み合っているために、励磁しても磁壁の移動が磁界の変化に追随できず、結果的に磁束密度の値が低くなっている。また、特許文献3に開示される鋼板は、強度を必要とする梁部以外の部分も高強度化するため、全体的に磁気特性が低下する。また、十分な強度を確保する代わりに打抜き性が低下し、破断面率が増えて端面形状が安定しないため、高速回転時の破壊強度が劣化する。
従って、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、打抜き加工性が良好であり、ロータ鉄心としたときに高い降伏強度を有しかつ磁気特性に優れるIPMモータのロータ鉄心用鋼板を提供することを目的とする。
また、本発明は、そのようなIPMモータのロータ鉄心用鋼板の製造方法およびそれを用いたロータ鉄心を提供することも目的とする。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋼材の成分組成、金属組織の調整法等を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.05質量%〜0.35質量%、Si:0.05質量%〜1.0質量%、Mn:0.2質量%〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.02質量%以下、酸可溶Al:0.005質量%〜2.95質量%かつSi+Al:3.0質量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、炭化物の平均粒径が0.4μm〜1.0μmであり、炭化物の球状化率が80%以上の金属組織を有し、引張試験による降伏強度が590N/mm以下、磁界の強さが2,000A/mのときの磁束密度B2,000が1.2T以上であることを特徴とするIPMモータのロータ鉄心用鋼板である。
上記IPMモータのロータ鉄心用鋼板の少なくとも片方の表面には、有機材料からなる絶縁皮膜、無機材料からなる絶縁皮膜または有機・無機複合材料からなる絶縁皮膜を形成してもよい。
また、本発明は、上記IPMモータのロータ鉄心用鋼板の打抜き片を積層させた積層体に焼入れ処理を施して得られ、引張試験による降伏強度が780N/mm以上であることを特徴とするIPMモータのロータ鉄心である。焼入れ処理は、ロータの梁部のみに施されていることが好ましい。
また、本発明は、C:0.05質量%〜0.35質量%、Si:0.05質量%〜1.0質量%、Mn:0.2質量%〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.02質量%以下、酸可溶Al:0.005質量%〜2.95質量%かつSi+Al:3.0質量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して所定の板厚とし、Ac−50℃〜Ac未満の温度範囲で0.5時間以上保持する1段目の熱処理、Ac〜Ac+100℃の温度範囲で0.5時間〜20時間保持する2段目の熱処理およびAr−80℃〜Arの温度範囲で2時間〜60時間保持する3段目の熱処理を含みかつ2段目の熱処理温度から3段目の熱処理温度への冷却速度を5℃/h〜30℃/hとする3段焼鈍を施すことを特徴とするIPMモータのロータ鉄心用鋼板の製造方法である。
本発明によれば、打抜き加工性が良好であり、ロータ鉄心としたときに高い降伏強度を有しかつ磁気特性に優れるIPMモータのロータ鉄心用鋼板を提供することができる。
IPMモータのロータの端面図である。
本発明のIPMモータのロータ鉄心用鋼板は、C:0.05質量%〜0.35質量%、Si:0.05質量%〜1.0質量%、Mn:0.2質量%〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.02質量%以下、酸可溶Al:0.005質量%〜2.95質量%かつSi+Al:3.0質量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、炭化物の平均粒径が0.4μm〜1.0μmであり、炭化物の球状化率が80%以上の金属組織を有し、引張試験による降伏強度が590N/mm以下、磁界の強さが2,000A/mのときの磁束密度B2,000が1.2T以上であることを特徴とするものである。鋼材の成分には、Ti、NbおよびVからなる群から選択される1種以上の成分が、合計で0.01質量%〜0.20質量%含有されてもよく、また、Cr:0.1質量%〜2.0質量%、Ni:0.1質量%〜1.8質量%およびB:0.0005質量%〜0.005質量%からなる群から選択される1種以上の成分が含有されてもよい。
成分組成を限定した理由は以下の通りである。
<C:0.05質量%〜0.35質量%>
焼入れ処理後に780N/mm以上の降伏強度を得るためには、0.05質量%以上のCを添加することが必要である。しかし、0.35質量%超のCを添加すると、十分な延性が得られず、また磁束密度も低下する。
<Si:0.05質量%〜1.0質量%>
Siは、高強度化に有効である上に、体積抵抗率を高め、渦電流損を小さくするのに有効な元素である。その効果を得るためには、0.05質量%以上のSiを添加することが必要である。しかし、1.0質量%超のSiを添加すると、鋼板の靭性が劣化する。
<Mn:0.2質量%〜1.5質量%>
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、高強度化に有効な元素である。その効果を得るためには、0.2質量%以上のMnを添加することが必要である。しかし、1.5質量%超のMnを添加すると、強度の向上効果は飽和するとともに、かえって磁束密度の低下を招く。
<P:0.05質量%以下>
Pは、高強度化に有効な元素であるが、鋼の靭性を著しく低下させる。0.05質量%までは許容できるため、上限を0.05質量%とする。
<S:0.02質量%以下>
Sは、高温脆化を惹起する元素であり、多量に添加すると、熱間圧延時に表面欠陥を生じ、表面品質を劣化させる。そのため、できるだけ低減することが望まれる。0.02質量%までは許容できるため、上限を0.02質量%とする。
<酸可溶Al:0.005質量%〜2.95質量%、Si+Al:3.0質量%以下>
Alは、脱酸剤として添加されるほか、Siと同様に鋼の体積抵抗率を上昇させるのに有効な元素である。その効果を得るためには、0.005質量%以上のAlを添加することが必要である。しかし、AlをSiとの合計で3.0質量%を超えて添加すると、磁束密度の低下が大きくなり、モータの性能が低下する。
<Ti、NbおよびVの少なくとも1種:0.01質量%〜0.20質量%>
Ti、NbおよびVは、鋼中で炭窒化物を形成し、析出強化による高強度化に有効な元素である。その効果を得るためには、Ti、NbおよびVの少なくとも1種を、合計で0.01質量%以上添加することが好ましい。しかし、それらの元素を0.20質量%を超えて添加しても、析出物の粗大化により強度上昇は飽和するとともに、製造コストの増大を招く。
<Cr:0.1質量%〜2.0質量%、Ni:0.1質量%〜1.8質量%、B:0.0005質量%〜0.005質量%>
Cr、NiおよびBは、鋼の焼入れ性を高め、高強度化に有効な元素である。その効果を得るためには、それぞれ単独で、設定した下限値以上添加することが好ましい。しかし、それらの元素を、それぞれの上限値を超えて添加してもその効果は飽和するととともに製造コストの増加を招く。なお、それらの元素を単独で添加しても組み合わせて添加してもその効果は認められるが、組み合わせて添加する場合は、それぞれ設定した上限値の1/2を超える量を添加すると、その効果に比して製造コストの上昇が大きくなるので、それぞれ設定した上限値の1/2以下の量を添加することが望ましい。
金属組織を限定した理由は以下の通りである。
<炭化物の平均粒径:0.4μm〜1.0μm>
炭化物の平均粒径を大きくすることで、鋼中の炭素量は一定であることから、炭化物総数は減少する。これにより、炭化物を起点として生成したミクロボイドの連結を抑制し、良好な打抜き性が得られるため、炭化物の平均粒径を0.4μm〜1.0μmとした。なお、本発明における炭化物の平均粒径は、鋼板断面の金属組織を観察するとき、観察視野にある個々の炭化物の面積を画像解析により測定し、円相当径を算出して全測定炭化物について平均したものである。
<炭化物の球状化率:80%以上>
球状化が不十分な炭化物がミクロボイドの起点となるため、炭化物の球状化率を80%以上とした。なお、本発明における炭化物の球状化率は、鋼板断面の金属組織を観察するとき、観察視野で最大長さpとそれに直行する方向の最大長さqの比p/qが3未満の炭化物を球状化した炭化物とし、全炭化物数に占める割合を算出したものである。
機械的特性を限定した理由は以下の通りである。
<降伏強度:590N/mm以下>
鋼板を高強度化すると、磁気特性は劣化する傾向にある上に、打抜き性が悪くなるため、鋼板の降伏強度は590N/mm以下とした。なお、本発明における降伏強度は、JIS5号引張試験片を用い、JIS Z2241に準拠した引張試験方法により測定されるものである。
磁気特性を限定した理由は以下の通りである。
<磁界の強さが2,000A/mのときの磁束密度B2000:1.2T以上>
ロータ鉄心に用いられる鋼板は、主にヨークの役割を果たしており、従来の鋼板と同等以上のトルク性能を発揮するためには、磁界の強さが2,000A/mのときの磁束密度が1.2T以上であることが必要である。
次に、本発明のIPMモータのロータ鉄心用鋼板の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、上記した成分組成を有する鋼材を用いることと、熱延鋼板に冷間圧延を施した後の3段階の焼鈍処理に特徴がある。上記した成分組成を有する熱延鋼板を冷間圧延して得られた鋼板を、予めAc点未満の特定温度域で一定時間以上加熱することで、Ac点以上の温度域において未溶解炭化物を適量残存させることができる。さらにその後の冷却速度を遅くすることで、オーステナイト中に固溶したCがパーライトを生成せず、未溶解炭化物を核として析出するので、それによって鋼板の磁気特性や打抜き加工性と密接な関わりのある焼鈍後の炭化物の球状化率を高くすることができる。具体的には、冷間圧延して得られた鋼板に、Ac−50℃〜Ac未満の温度範囲で0.5時間以上保持する1段目の熱処理を施し、次に、Ac〜Ac+100℃の温度範囲で0.5時間〜20時間保持する2段目の熱処理を施し、最後に、Ar−80℃〜Arの温度範囲で2時間〜60時間保持する3段目の熱処理を施す。ただし、2段目の熱処理温度から3段目の熱処理温度への冷却速度は5℃/h〜30℃/hとする必要がある。なお、本発明におけるAc変態点およびAr変態点は、直径5mm×長さ10mmの試験片を、10℃/hで900℃まで昇温し、900℃で10分間保持して完全にオーステナイト化した後、10℃/hで冷却するヒートパターンで、試験片の収縮・膨張を測定し、その収縮・膨張曲線の変化から求めたものである。
3段階の焼鈍処理の条件を限定した理由は下記の通りである。
<1段目の熱処理>
1段目の熱処理の目的は、Ac点未満の温度に鋼板を保持し、熱間圧延で生成したパーライト(熱延パーライト)を分断して、炭化物(セメンタイト)の球状化を図ることである。熱延パーライトの分断および炭化物の球状化を促進するためには、Ac点未満の温度範囲でなるべく高温が望ましい。加熱温度がAc−50℃より低温では、炭化物の球状化が十分に進まない。一方、加熱温度がAc点以上になると界面面積の大きい熱延パーライトは容易にオーステナイトに固溶してしまう。従って、加熱温度はAc−50℃〜Ac未満の範囲とした。また、Ac−50℃〜Ac未満の温度を保持する時間は0.5時間以上であることが必要である。保持時間が0.5時間未満であると、十分な球状化組織が得られない可能性がある。
<2段目の熱処理>
2段目の熱処理の目的は、1段目の熱処理を経た鋼板をAc点以上の温度に保持し、オーステナイト化した部分において微細な炭化物を固溶・消失させるとともに、続く3段目の熱処理で炭化物析出の核となる比較的大きな球状炭化物を未溶解のまま残すことである。加熱温度がAc点未満ではオーステナイトが生成しない。一方、加熱温度がAc+100℃の温度を超えると、1段目の加熱で球状化した炭化物がオーステナイト中に固溶・消失し、未溶解炭化物が少なくなりすぎてしまう。従って、加熱温度はAc〜Ac+100℃の範囲とした。また、Ac〜Ac+100℃の温度を保持する時間は0.5時間〜20時間であることが必要である。保持時間が0.5時間未満であると、十分な球状化組織が得られない可能性がある。20時間を越えて処理しても、微細な炭化物を固溶・消失させる効果は飽和し、生産性を低下させてしまうので、保持時間は20時間を上限とするのが好ましい。
<2段目の熱処理温度から3段目の熱処理温度への冷却>
この冷却速度が速いとオーステナイトの過冷度が大きくなり、再生パーライトが生成しやすくなる。再生パーライトの生成を十分抑制するためには冷却速度を30℃/h以下とする必要がある。一方、冷却速度を5℃/h以下にしても、再生パーライトの抑制効果は飽和し、工業的メリットがない。従って、冷却速度は5℃/h〜30℃/hの範囲とした。
<3段目の熱処理>
3段目の熱処理の目的は、1段目〜2段目の熱処理を経た鋼板をAr点以下の温度に保持し、2段目の温度からの冷却でオーステナイト→フェライト変態に伴ってオーステナイトから吐き出されるCを、未溶解炭化物を核として析出させるとともに、これらの炭化物をオストワルド成長させることである。加熱温度がAr点以下でないとオーステナイト→フェライト変態が起こらない。一方、加熱温度がAr−80℃より低温では、オストワルド成長が十分進まない。従って、加熱温度はAr−80℃〜Arの範囲とした。また、Ar−80℃〜Arの温度を保持する時間は2時間〜60時間であることが必要である。保持時間が2時間未満であると、十分な球状化組織が得られない可能性がある。60時間を越える処理を行っても、未溶解炭化物を核とした析出の効果が飽和する。
本発明では、ロータに発生する渦電流損失の低減を目的として、IPMモータのロータ鉄心用鋼板の少なくとも片方の表面に、有機材料からなる絶縁皮膜、無機材料からなる絶縁皮膜または有機・無機複合材料からなる絶縁皮膜を形成することが好ましい。無機材料からなる絶縁皮膜の例としては、六価クロムのような有害物質を含まず、リン酸二水素アルミニウムを含有する無機質系水溶液が挙げられるが、良好な絶縁が得られれば、有機材料からなる絶縁皮膜または有機・無機複合材料からなる絶縁皮膜を用いてもよい。絶縁被膜は、上記で例示した材料を鋼板の表面に塗布することにより形成することができる。
上記製造方法により得られた鋼板を所定の形状に打抜いて打抜き片とし、これを複数枚積層させた積層体に焼入れ処理を施すことにより、IPMモータのロータ鉄心を得ることができる。焼入れ処理としては、例えば、焼入すべき部分をレーザーまたは高周波により850℃以上に加熱した後、空冷する方法や、平らな水冷金型でプレスして急冷する方法が挙げられる。
図1は、本発明のIPMモータのロータ鉄心を用いたIPMモータのロータの端面図である。図1において、ロータ1は、複数の磁石埋め込み収容孔2および軸孔3を有するロータ鉄心4と、磁石埋め込み孔2に埋め込まれた複数の永久磁石5とから構成されている。このように構成されたロータ1が回転すると、永久磁石5に働く遠心力はロータ鉄心4の梁部6に応力集中する。ロータの回転速度を20,000rpmまで高速化することを想定すると、永久磁石5の受ける遠心力に耐える強度を得るためには、少なくとも梁部6には、780N/mm以上の降伏強度が必要である。ヒステリシス損を抑えつつ高強度化を図るために、積層体に焼入れ処理を施す必要がある。特に、打抜き加工後に、高強度を必要とする梁部6だけに焼入れ処理(部分焼入れ処理)を施すことが有効である。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
表1に示す成分組成を有する鋼を真空溶解し、これらの鋳造片を1,250℃に加熱し、860℃で仕上げ圧延して560℃で巻取り、板厚2.0mmの熱延鋼板を得た。これらの熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延して板厚0.5mmの冷延鋼板を得た。得られた冷延鋼板を690℃に加熱して4時間保持し、次いで730℃に加熱して5時間保持した後、20℃/hで680℃まで冷却し、引き続いて680℃で5時間保持する3段焼鈍を施した。なお、表1に示す変態点AcおよびArは、直径5mm×長さ10mmの試験片を用いて、10℃/hで900℃まで昇温し10分間保持して完全にオーステナイト化した後10℃/hで冷却するヒートパターンで、試験片の収縮・膨張を測定し、その収縮・膨張曲線の変化から求めた値である。
Figure 0005448979
3段焼鈍後の鋼板について、炭化物の平均粒径測定、炭化物の球状化率測定、引張試験、切欠引張試験、磁化測定および打抜き性試験を実施した。結果を表2に示した。
引張試験は、JIS5号引張試験片を用い、平行部の標点間距離を50mmとして行った。
切欠引張試験は、JIS5号引張試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両サイドに開き角45°、深さ2mmのVノッチを形成した試験片を用い、引張試験を行った。Vノッチを含む標点間距離5mmに対する伸び率を破断後に求め、その伸び率を切欠引張伸び(Elv)とした。Elvが30%以上であれば、IPMモータのロータ鉄心へ加工しやすいと言える。
磁化測定は、内径33mmおよび外径45mmのリング状の試験片を打抜きにより作製し、磁界の強さが2,000A/mのときの磁束密度B2,000を測定した。
打抜き性試験は、鋼板100枚を直径80mmのロータ鉄心形状に打抜き、それぞれのバリ高さを測定し、その算術平均を平均バリ高さとした。ロータ鉄心は、通常、鋼板を積層して作製するため、打抜き後のバリ高さが大きいと占積率が低下し、モータ性能も劣化する。そのため、打抜き後の平均バリ高さは小さい程、ロータ鉄心用鋼板として好ましいと言える。
Figure 0005448979
表2から分かるように、C、SiまたはMnの添加量が本発明の範囲外であるNo.2、3、11および12鋼は、B2,000が1.2T未満であり、磁気特性が劣っていた。また、No.11および12鋼は、平均バリ高さが30μm以上であり、打抜き加工性が劣っていた。
一方、本発明例であるNo.4〜10鋼は、磁気特性および打抜き加工性がともに良好であった。
更に、3段焼鈍後の鋼板を高周波加熱により900℃まで加熱し、平らな水冷金型でプレスすることにより焼入れ処理を施した。焼入れ処理後の鋼板について、引張試験およびビッカース硬さ測定を実施した。結果を表3に示した。
引張試験は、JIS5号引張試験片を用い、平行部の標点間距離を50mmとして行った。
ビッカース硬さは、JIS Z2244に準拠して測定した。
Figure 0005448979
Cの添加量が本発明の範囲外であるNo.1鋼は、焼入れ後の降伏強度が780N/mm未満であり、ロータの回転速度を20,000rpmまで高速化することを想定すると強度が不十分であった。
一方、本発明例であるNo.4〜10鋼は、780N/mm以上の降伏強度を有しており、ロータの高速回転化に十分耐え得る強度を有するものであった。
<実施例2>
表1のNo.6鋼について、3段焼鈍の条件を表4に示すAまたはBに変更する以外は、実施例1と同様にして鋼板を得た。
Figure 0005448979
3段焼鈍後の鋼板について、実施例と同様にして炭化物の平均粒径測定、炭化物の球状化率測定、引張試験、切欠引張試験、磁化測定および打抜き性試験を実施した。結果を実施例1のNo.6鋼の結果とともに表5に示した。
Figure 0005448979
表5から分かるように、3段焼鈍の条件AおよびBで得られた鋼板では、未溶解炭化物を適量残存させることができなかったため炭化物の球状化率が低く、Elvが30%未満と低く加工性が悪いと言える。本発明例の鋼板では、炭化物が十分に球状化されていたため炭化物の球状化率が高く、また、良好な加工性を示した。
1 ロータ、2 磁石埋め込み収容孔、3 軸孔、4 ロータ鉄心、5 永久磁石、6 梁部。

Claims (7)

  1. C:0.05質量%〜0.35質量%、Si:0.05質量%〜1.0質量%、Mn:0.2質量%〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.02質量%以下、酸可溶Al:0.005質量%〜2.95質量%かつSi+Al:3.0質量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、炭化物の平均粒径が0.4μm〜1.0μmであり、炭化物の球状化率が80%以上の金属組織を有し、引張試験による降伏強度が590N/mm以下、磁界の強さが2,000A/mのときの磁束密度B2,000が1.2T以上であることを特徴とするIPMモータのロータ鉄心用鋼板。
  2. Ti、NbおよびVからなる群から選択される1種以上の成分を合計して0.01質量%〜0.20質量%さらに含有することを特徴とする請求項1に記載のIPMモータのロータ鉄心用鋼板。
  3. Cr:0.1質量%〜2.0質量%、Ni:0.1質量%〜1.8質量%およびB:0.0005質量%〜0.005質量%からなる群から選択される1種以上の成分をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のIPMモータのロータ鉄心用鋼板。
  4. 鋼板の少なくとも片方の表面に、有機材料からなる絶縁皮膜、無機材料からなる絶縁皮膜または有機・無機複合材料からなる絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のIPMモータのロータ鉄心用鋼板。
  5. C:0.05質量%〜0.35質量%、Si:0.05質量%〜1.0質量%、Mn:0.2質量%〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.02質量%以下、酸可溶Al:0.005質量%〜2.95質量%かつSi+Al:3.0質量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して所定の板厚とし、Ac−50℃〜Ac未満の温度範囲で0.5時間以上保持する1段目の熱処理、Ac〜Ac+100℃の温度範囲で0.5時間〜20時間保持する2段目の熱処理およびAr−80℃〜Arの温度範囲で2時間〜60時間保持する3段目の熱処理を含みかつ2段目の熱処理温度から3段目の熱処理温度への冷却速度を5℃/h〜30℃/hとする3段焼鈍を施すことを特徴とするIPMモータのロータ鉄心用鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のIPMモータのロータ鉄心用鋼板の打抜き片を積層させた積層体に焼入れ処理を施して得られ、引張試験による降伏強度が780N/mm以上であることを特徴とするIPMモータのロータ鉄心。
  7. 前記焼入れ処理が、ロータの梁部のみに施されていることを特徴とする請求項6に記載のIPMモータのロータ鉄心。
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