JP5448710B2 - 表面粗化銅板の製造方法および製造装置 - Google Patents

表面粗化銅板の製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、メタルコア回路基板のメタルコア等に使用される表面粗化銅板の製造方法および製造装置に関するものである。
メタルコア回路基板は、絶縁基板の内部に熱伝導性に優れた金属板を埋め込むことで、均熱性および放熱性を高めたものである。金属板の埋め込みにより基板の熱的特性が向上することで、同じ回路パターンでもより大きな電流を流すことが可能となる。
図7は、メタルコア回路基板の一例を示す断面図である。同図に示すメタルコア回路基板900において、901は絶縁基板(プリプレグを加圧加熱して硬化させたもの)、902は絶縁基板901内に埋め込まれた金属板、903は絶縁基板901の表面に形成された回路パターン、904はスルーホール、および905はソルダーレジストをそれぞれ示している。
メタルコア回路基板900のコアとなる金属板902としては、銅板、銅合金板、アルミ板、またはアルミ合金板が使用されるが、熱伝導性の点で銅板が好ましい。メタルコア回路基板900が十分な均熱性、放熱性を発揮するためには、金属板902に銅板を用いた場合でも100〜500μm程度の厚さが必要とされる。
メタルコア回路基板900は、部品実装工程でリフロー炉等によるハンダ付けが行われるが、その際の加熱によって金属板902と絶縁基板901との界面に剥離が生じないことが要求される。また、メタルコア回路基板900に形成された回路を使用中に発生する熱に対しても、金属板902と絶縁基板901とが剥離しない十分な接着性(密着性)が求められる。このように、金属板902と絶縁基板901との接着性を高めるために、金属板902の両面を粗化する処理が行われる。
また、メタルコア回路基板900の金属板902には、両面に配置された回路パターン903間を導通させるスルーホール904を設けるための穴が多数形成されることが多い。穴が形成されていない銅板の両面に粗化処理を行い、その後に穴あけ加工を行うと、穴あけ加工時に粗化面を損傷させてしまう可能性が高く、かつ穴あけ加工時に加工油が付着するため再洗浄しなければならない等の問題がある。これらの点を考慮すると、コア用金属板902にスルーホール904用の穴を形成した後に、その両面を粗化処理するのが望ましい。
メタルコア回路基板900のコアに好適な厚さ略100μm以上の銅板として、ロール圧延により比較的安価に製造できる圧延銅板を用いることができれば、大幅なコスト低減を図ることができる。しかし、圧延銅板は両面が平滑であることから、これを絶縁基板内に埋め込んで用いるためには、絶縁基板材料(ガラスエポキシ基板)との接着性を高めるために、圧延銅板の両面を粗化する処理を行う必要がある。
銅板の表面を粗化する手段として、プリント回路基板用銅箔のように、銅板(銅箔)の表面に高電流密度で銅めっき処理を行う方法が知られている(例えば特許文献1)。このような銅めっき処理により、銅板の表面に微細瘤状突起を形成して粗化状態にすることができる。銅めっき処理を用いた従来の方法では、図8に示すように、前処理後の複数の銅板911を端部で重なるように水平に並べ、これをロール912で水平方向に移動させながらめっき槽の中を水平方向に移動させてめっき処理している。
上記のめっき処理の工程では2種類のめっき液が用いられ、第1のめっき液を注入しためっき槽を通過する間に銅板911の表面に微細瘤状突起が形成され、その後第2のめっき液を注入しためっき槽でコートめっきが行われる。各めっき槽には、それぞれ1つの電極が設けられている。微細瘤状突起はアンカー効果があるため、エッチングや化学処理で銅板表面を粗化する場合より、絶縁基板材料との接着性を高めるのに極めて有効である、
特開2005−8973号公報
しかしながら、銅めっき処理により銅板の表面を粗化する従来の方法では、高電流密度で銅めっき処理を行うため、銅めっき液の銅イオンの減少が激しく、多量の銅めっき液を消費してコスト高になるという問題があった。また、銅板の周囲に未粗化領域が形成されてしまい、また端部に銅粉が多数付着するため、銅粉が剥落して製造工程を汚してしまうといった問題もあった。とくに、スルーホール部分には銅粉の付着量が多く、短絡の原因となっていた。
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、銅板の表面を低コストで効率よく粗化できる表面粗化銅板の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
本発明の表面粗化銅板の製造方法の第1の態様は、銅板の表面を粗化する表面粗化銅板の製造方法であって、めっき液が注入されためっき槽に前記銅板を導入し、前記めっき槽の内部に対向配置された2段以上の陰極電極のいずれか1段の間に前記銅板を非接触に挟み、前記銅板を陽極とし前記陰極電極を陰極として電気分解を行い、前記電気分解を前記2段以上の陰極電極のそれぞれで順次行う第一工程と、前記銅板を前記めっき槽からこれに連通して前記めっき液が注入された別のめっき槽に移動させ、前記別のめっき槽の内部に対向配置された1段以上の陽極電極のいずれか1段の間に前記銅板を非接触に挟み、前記銅板を陰極とし前記陽極電極を陽極として銅めっきを行い、前記銅めっきを前記1段以上の陽極電極のそれぞれで順次行う第二工程と、を有することを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板の製造方法の他の態様は、前記第一工程では、少なくとも1段の前記銅板と前記陰極電極との間の電圧が所定値となるように定電圧制御し、前記第二工程では、前記銅板と前記陽極電極との間の電流が所定値となるように定電流制御することを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板の製造方法の他の態様は、前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧のうち少なくとも一部を個別に定電圧制御し、前記第二工程では、前記1段以上の陽極電極と前記銅板との間の電流を一括または個別に定電流制御することを特徴とする。この態様では、第一工程において、2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧をすべて定電圧制御するか、あるいは一部を定電圧制御とし他を定電流制御としてもよい。また、第二工程では、1段以上の陽極電極と前記銅板との間の電流を一括して定電流制御するか、または個別に定電流制御してもよい。
本発明の表面粗化銅板の製造方法の他の態様は、前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧がすべて所定の同じ電圧値となるように定電圧制御することを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板の製造方法の他の態様は、前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧のすべてを各段で個別に決定された電圧値となるように定電圧制御することを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板の製造方法の他の態様は、前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧が、前記銅板を移動させる方向に順次高くなるように定電圧制御することを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板の製造方法の他の態様は、前記第一工程と前記第二工程とを1サイクルとし、これを1サイクル以上行うことを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板製造装置の第1の態様は、銅板の表面を粗化する表面粗化銅板製造装置であって、めっき液が注入されためっき槽と、前記銅板を陽極としてこれを非接触に挟むように前記めっき槽の内部に対向配置された陰極電極とを有する第一工程部と、前記めっき槽と連通されて前記めっき液が注入された別のめっき槽と、前記銅板を陰極としてこれを非接触に挟むように前記別のめっき槽の内部に対向配置された陽極電極を有する第二工程部と、を備え、前記銅板の1つを挟む前記陰極電極を1段としてこれが前記第一工程部の内部に2段以上縦列配置され、前記陰極の銅板の1つを挟む前記陽極電極を1段としてこれが前記第二工程部の内部に1段以上縦列配置されていることを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板製造装置の他の態様は、前記第一工程部は、少なくとも1段の前記銅板と前記陰極電極との間の電圧が所定値となるように定電圧制御する定電圧制御手段を備え、前記第二工程部は、前記銅板と前記陽極電極との間の電流が所定値となるように定電流制御する定電流制御手段を備えることを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板製造装置の他の態様は、前記第一工程部は、前記2段以上縦列配置された前記陰極電極の電圧のうち少なくとも一部を個別に制御する2以上の前記定電圧制御手段を備え、前記第二工程部は、前記1段以上縦列配置された前記陰極電極の電流を一括または個別に制御する1つの前記定電流制御手段を備えることを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板製造装置の他の態様は、前記第一工程部と前記第二工程部からなる組が、2組以上縦列に接続されていることを特徴とする。
本発明の表面粗化銅板製造装置の他の態様は、表面を粗化する前の前記銅板を洗浄する前処理部と、表面を粗化した後の前記銅板を洗浄する後処理部とをさらに備え、前記銅板が、前記前処理部、前記第一工程部、前記第二工程部、および前記後処理部を連続して移動可能に連結されていることを特徴とする。
本発明によれば、銅板の表面に微細瘤状突起を形成して定着させることで粗化する表面粗化銅板の製造方法および製造装置を提供することが可能となる。
本発明の第1実施形態の表面粗化銅板製造装置の第一工程部および第二工程部の詳細な構成を示す平面図および側面図である。の構成を示すブロック図である。 第1実施形態の表面粗化銅板製造装置の概略構成を示す構成図である。 第1実施形態の第一工程部における定電圧制御を説明するための説明図である。 第2実施形態の第一工程部における定電圧多段制御を説明するための説明図である。 第3実施形態の表面粗化銅板製造装置の概略構成を示す構成図である。 第3実施形態の2つのめっき槽および2つの別のめっき槽における制御方法の一例を示すグラフである。 メタルコア回路基板の一例を示す断面図である。 従来のめっき処理方法を説明するための説明図である。
本発明の好ましい実施の形態における表面粗化銅板の製造方法および製造装置の構成について、図面を参照して以下に詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示および説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る表面粗化銅板の製造方法および製造装置を、図1、2を用いて説明する。図2は、本実施形態の表面粗化銅板製造装置100の概略構成を示す構成図であり、図1は、図2に示す表面粗化銅板製造装置100のうち、第一工程部120および第二工程部130の詳細な構成を示す平面図および側面図である。但し、第一工程部120および第二工程部130の側面図については、それぞれめっき槽121および別のめっき槽131の側面を除いた構成を示している。
表面粗化銅板製造装置100は、前処理部110、第一工程部120、第二工程部130、および後処理部140を備えている。本実施形態の表面粗化銅板の製造方法は、前処理部110で行われる前処理工程、第一工程部120で行われる第一工程、第二工程部130で行われる第二工程、および後処理部140で行われる後処理工程からなり、各工程を連続して行うことが可能となるように、前処理部110、第一工程部120、第二工程部130、および後処理部140が連続した構成となっている。
また、本実施形態では、第一工程を行うめっき槽121と第二工程を行う別のめっき槽131が連通されており、各槽内に注入されるめっき液も1種類だけとしている。このような構成とすることで、めっき槽121内のめっき液と別のめっき槽131内のめっき液とが混合されるようにしている。第一工程では銅板から析出した銅がめっき液中の銅イオン濃度を高める一方、第二工程では銅イオンがめっきに使用されて減少していく。そこで、本実施形態ではめっき槽121と別のめっき槽131とを連通させた構成とすることで、第一工程で増加した銅イオンが第二工程で減少する銅イオンを補給するようにしている。これにより、めっき液中の銅イオンの減少を大幅に低減することができ、めっき液の消費を抑えて低コスト化を図ることができる。
本実施形態の表面粗化銅板製造装置100は、粗化処理する表面が移動方向と平行となるように銅板101を上部からラックに吊下げた縦型構造となっており、銅板101を垂直方向に吊下げた状態で各工程間を移動させている。これは、一般のめっき処理装置と同じ構造であることから、一般のめっき設備を本実施形態の表面粗化銅板製造装置100に流用することが可能となる。前処理部110および後処理部140では、銅板101を垂直方向に移動させる上下動作と水平方向に移動させるスライド動作があるが、第一工程部120および第二工程部130では、銅板101を水平方向に移動させるスライド動作のみの移動が行われる。
前処理工程は、粗化対象の銅板101の表面を洗浄する工程であり、第一工程を開始するための準備を行う手段が設けられている。
前処理部110において洗浄された銅板101は、次に第一工程部120に移動されて第一工程の処理が行われる。第一工程部120の構成を、図1を用いて説明する。第一工程部120は、電極122を複数備えており、銅板101を陽極、電極122を陰極とする電気分解により、銅板101の左右両面に微細瘤状突起を形成するのに必要な量の銅微粒子を生成させる陽極処理を行う。ここで、銅板101の左右両面とは、銅板101を垂直方向に吊下げてスライド動作させる方向を前方としたときの左右の面を示しており、メタルコア回路基板に用いたときに絶縁基板と最も大きな面積で接する面に相当する。
図1では、1つの銅板101を挟んでその左右に陰電極122を3つずつ配置した構成を示している。陰極に用いる電極122は、これに限定されず、銅板101の左右面に対向して各面を覆うように配置するのがよい。すなわち、銅板101の左右面の面積以上の対向面積を有する電極をそれぞれの面に対向させて配置させてもよく、あるいは図1に示すように、銅板101の左右面より小さい面積の電極を銅板101の左右面の面積以上の対向面積となるような領域に複数並べてもよい。
本実施形態の表面粗化銅板製造装置100の第一工程部120は、1つの銅板101を挟む左右の電極122(図1では、左右3つずつの電極122)を1つのステーション123として、これを2以上備えた多段構成とするのを特徴としている。1つのステーション123に対しては、1台の整流器(図示せず)を設けて左右3つずつの電極122を同時に制御している。図1に示す第一工程部120では、1つのめっき槽121に5つのステーション123を設けており、5台の整流器をそれぞれのステーション123に1台ずつ個別に設けている。なお、ここではステーション123を5段設ける構成としたが、これに限らず、例えば6段以上としてもよい。
上記のようにステーション123毎に個別に整流器を設けることで、本実施形態の第一工程部120では、陽極の銅板101と陰極の電極122との間の電圧をステーション123毎に個別に制御できるようにしている。従来の第二工程では、めっき厚が電流値に依存することから、定電流制御が行われるのが一般である。定電流制御の場合には、銅イオンの移動による銅板101の電気抵抗の変化により、電圧が変化する。
これに対し、銅板表面を粗化処理する場合には、銅板表面のめっき厚より粗化形状が重要となり、発明者は、粗化形状が第一工程における電圧変化の影響を受けることを見出した。そこで、第一工程を2段以上に分け、各段で定電圧制御するのが好ましい。本実施形態では、ステーション123毎に設けられた整流器を個別に定電圧制御する定電圧制御手段を第一工程部120に設けている。本実施形態の定電圧制御手段は、各ステーション123で同じ電圧値となるように制御している。
第一工程部120の全てのステーション123を通過してきた銅板101は、次に第二工程部130に移動されて第二工程の処理が行われる。第二工程部130も電極132を複数備えているが、ここでは極性を反転させて銅板101を陰極、電極132を陽極とする陰極処理を行っている。この陰極処理により、銅板101の左右両面に形成された微細瘤状突起に電気めっきを施して各面に定着させている。
第一工程部120と同様に、第二工程部130も、1つの銅板101を挟んでその左右に陽電極132を3つずつ配置した構成を有している。陽極に用いる電極132は、これに限定されず、銅板101の左右面に対向して各面を覆うように配置するのがよい。すなわち、銅板101の左右面の面積以上の対向面積を有する電極をそれぞれの面に対向させて配置させてもよく、あるいは図1に示すように、銅板101の左右面より小さい面積の電極を銅板101の左右面の面積以上の対向面積となるような領域に複数並べてもよい。
第二工程部130では、1つの銅板101を挟む左右の電極132(図1では、左右3つずつの電極132)を1つのステーション133として、これを1段だけ備える構成とすることができ、あるいは2以上備えた多段構成としてもよい。第二工程は定電流制御で行われることから、第二工程部130を1段のステーション133だけで構成することができる。図1では、第二工程部130を5つのステーション133で構成する多段構成の例を示している。
第二工程の処理が終了すると、後処理工程の処理が行われる。後処理部140では、前処理工程と同様に、表面粗化された銅板101の洗浄が行われる。後処理工程の処理が終了した銅板101は、表面粗化銅板製造装置100から排出される。
上記のように、本実施形態の表面粗化銅板製造装置100では、第一工程部120における陽極処理を定電圧制御で行い、第二工程部130における陰極処理を定電流制御で行うことにより、銅板の表面を効率よく粗化することができる。これにより、絶縁基板材料等との接着性に優れた微細瘤状突起を表面に定着させた銅板を提供することができる。一例として、図3に示すように、第一工程部120における陽極処理を、銅板101と電極122との間の電圧が各ステーション123とも2Vとなるような定電圧制御で行い、第二工程部130における陰極処理を、各ステーション133の電流が72Aとなるような定電流制御で行うことができる。
また、めっき槽121と別のめっき槽131とを連続した1つの槽で形成することで、槽内の同じ電気めっき液の中で陽極処理と陰極処理を行わせており、これによりめっきによる銅イオンの消費を電気分解による銅イオンの供給で補うことができ、銅イオンの消費を低減してめっき液を長時間使用可能とすることができるといった低コスト化を実現できる。
図1に示す実施形態では、第一工程部120における陽極処理を5つのステーション123で行い、第二工程部130における陰極処理も5つのステーション133で行う構成としている。このように、第一工程部120および第二工程部130のステーションの数を調整することで、同時に処理できる銅板101の数を調整できるとともに、銅板101を移動させる周期、すなわちタクトタイムを調整することができる。このタクトタイムは、銅板101を水平方向に移動させるスライド動作に要する時間とは独立して決めることができる。
例えば、第一工程部120および第二工程部130のステーション数を増やすことで、同時に処理できる銅板101の数を増やすとともに、タクトタイムを短くすることができる。図1に示すように、第一工程部120を5つのステーション123で構成し、第二工程部130も5つのステーション133で構成することで、タクトタイムを1分程度とすることができる。
本実施形態では、銅板101の周囲の未粗化領域を低減することができ、銅板101の大部分を粗化して有効に利用することができる。また、銅板101の端部やスルーホール部分に付着する銅粉を少なくして、銅粉の剥落による製造工程の汚染を低減するとともに、短絡の発生を低減することができるといった効果も得られ、表面粗化銅板の品質向上を図ることができる。
(第2実施形態)
本発明の第2の実施の形態に係る表面粗化銅板の製造方法および製造装置を、以下に説明する。本実施形態の表面粗化銅板製造装置は、第1の実施形態と同様の図1、2に示す構成を有しており、第一工程部120及び第二工程部130がそれぞれ複数のステーション123、133からなる多段構成となっている。
本実施形態の表面粗化銅板の製造方法は、第一工程部120における定電圧制御の方式が第1の実施形態と異なる。すなわち、第一工程部120における定電圧制御として、第1の実施形態では第一工程部120内の全てのステーションに対し同じ電圧値となるように制御していたのに対し、本実施形態では銅板101の左右面の処理状態に応じて、それぞれで最適な電圧値となるように多段の定電圧制御を行っている。
銅板101は、第一工程部120における陽極処理である電気分解の進行に従って、左右両面に形成される微細瘤状突起の形成状態が変化し、それに応じて電気抵抗も変化していく。そこで、本実施形態では、陽極処理の進行状態に応じて銅板101と電極122との間に適切な大きさの電流が流れるように、ステーション123毎に好適な電圧を設定して多段に定電圧制御するようにしている。
銅板101の電気抵抗は、電解処理していない銅板101では小さく、電解処理の進行とともに上昇していく。そのため、すべてのステーションを同じ電圧値で定電圧制御すると、ステーション123を先に進むほど電流値が低下していく。そこで、第一工程部120の複数のステーション123に対し、銅板101の移動方向に向けて、各ステーション123の電圧を順次高くしていくのがよい。これにより、各ステーション123の電流値をほぼ均一にすることができる。このように、銅板101の左右両面の状態に応じて、銅板101と電極122との間の電圧を適切に設定して多段に定電圧制御することで、銅板101の左右両面に好適な形状の微細瘤状突起を効率よく形成することができる。
本実施形態の第一工程部120における定電圧多段制御の一例を図4に示す。図1に示す表面粗化銅板製造装置100では、第一工程部120に5つのステーション123が設けられている。本実施形態の表面粗化銅板の製造方法によれば、各ステーション123を多段に定電圧制御する一例として、それぞれに対し順次高くなる電圧値で定電圧制御することができる。このように、銅板101の移動方向に向けて、銅板101と電極122との間の電圧値を順次高くしていく定電圧多段制御を行うことで、銅板101の左右両面に好適な形状の微細瘤状突起を形成することができる。
上記では、銅板101の移動方向に向けて、銅板101と電極122との間の電圧値を順次高くしていく定電圧多段制御について説明したが、銅板101の表面状態によっては、最初に電圧を高くし、徐々に低下させていくのが好ましい場合もある。あるいは、最初に低い電圧として徐々に高くして行き、中央のステーションで最も高くした後再び低下させていくような定電圧多段制御も考えられる。
さらに、各ステーションの電圧をあらかじめ設定する代わりに、1つ前のステーションにおける電圧、電流、および電気抵抗等をフィードバックして当該ステーションの電圧設定値を決定するようにすることも可能である。これにより、微細瘤状突起をステーション毎に最適な条件で形成させるようにすることができる。
(第3実施形態)
本発明の第3の実施の形態に係る表面粗化銅板の製造方法および製造装置を、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態の表面粗化銅板製造装置200の概略構成を示す構成図である。本実施形態の表面粗化銅板製造装置200は、第1の実施形態と同じ第一工程部120および第二工程部130を2組備えており、第一工程部120における陽極処理および第二工程部130における陰極処理を2回繰り返している。このように、陽極処理と陰極処理を繰り返し行うことにより、微細瘤状突起を銅板表面に安定化させるとともに、絶縁基板等との接着性を高めるのに好適な表面粗化を効率よく行うことができる。
表面粗化銅板製造装置200を用いた本実施形態の表面粗化銅板の製造方法を、図6を用いて説明する。図6は、2つの第一工程部120および2つの第二工程部130における制御方法の一例を示すグラフであり、銅板101と電極122、132との間の電圧(符号11で示す)、電流(符号12で示す)、および銅板の電気抵抗(符号13で示す)の変化を示している。第一工程部120における陽極処理では、銅板101と電極122との間の電圧が所定値となるように定電圧制御を行っており、第二工程部130における陰極処理では、各ステーション133の電流が所定値となるように定電流制御を行っている。
図6において、横軸は、銅板101が第1の第一工程部120に投入されてからの経過時間を示しており、グラフの上部には、時間の経過とともに第1の第一工程部120から第1の第二工程部130、第2の第一工程部120、および第2の第二工程部130へと銅板101が順次移動されていく状態を示している。
図6に示す例では、銅板101が第一工程部120を通過する間は電圧11が2Vに定電圧制御され、第二工程部130を通過する間は電流12が72Aに定電流制御されている。定電圧制御が行われる第一工程部120では、未処理状態のときに低い値を示していた銅板101の電気抵抗13が、微細瘤状突起が形成されるに伴って徐々に高くなることが示されている。また、銅板101の電気抵抗13が高くなるのに従って、電流12が低下していくことがわかる。微細瘤状突起の形状が電圧変化の影響を受けることから、電流12が図6に例示するような変化を示すのにかかわらず、電圧11を一定にする定電圧制御を行うことで、微細瘤状突起を好適な形状に形成することが可能となる。
これに対し第二工程部130では、電流12を一定にする定電流制御を行うことで、第一工程部120で形成された微細瘤状突起にほぼ均一にめっきを施すことができ、微細瘤状突起を銅板101の表面に安定化させることができる。なお、第二工程部130では、電圧11及び電気抵抗13が変化するが、その変化量は比較的小さい。
上記説明のように、本実施形態では、陽極処理と陰極処理を2回繰り返し行うことにより、微細瘤状突起を銅板表面に安定化させることができ、絶縁基板等との接着性を高めるのに好適な表面粗化を効率よく行うことができる。なお、ここでは、第一工程部120と第二工程部130を2組設けて陽極処理と陰極処理を2回繰り返す実施形態を示したが、さらに、第一工程部120と第二工程部130を3組以上設けて陽極処理と陰極処理を3回以上繰り返し行うようにすることも可能であり、本実施形態と同様に、銅板101に好適な表面粗化を効率よく行うことができる。
(第4実施形態)
本発明の第4の実施の形態に係る表面粗化銅板の製造方法および製造装置を、以下に説明する。本実施形態の表面粗化銅板製造装置は、第3の実施形態と同様に、第2の実施形態と同じ第一工程部120および第二工程部130を2組備えており、第一工程部120における陽極処理および第二工程部130における陰極処理を2回繰り返している。本実施形態の第一工程部120は、第2の実施形態と同様に、複数有するステーション123のそれぞれで異なる電圧値を設定して多段の定電圧制御を行っている。一例として、第2の実施形態の第一工程部120と同様に、5つのステーション123のそれぞれに対し、順次高くなる電圧値を設定して多段的に定電圧制御することができる。
このように、本実施形態では、第一工程部120における陽極処理と第二工程部130における陰極処理を2回繰り返し行い、かつ第一工程部120で電圧を適切に変えた多段の定電圧制御を行うことにより、微細瘤状突起を銅板表面に安定化させることができ、絶縁基板との接着性を高めるのにさらに好適な表面粗化を効率よく行うことができる。なお、ここでは、第一工程部120と第二工程部130を2組設けて陽極処理と陰極処理を2回繰り返す実施形態を示したが、さらに、第一工程部120と第二工程部130を3組以上設けて陽極処理と陰極処理を3回以上繰り返し行うようにすることも可能であり、本実施形態と同様に、銅板101に好適な表面粗化を効率よく行うことができる。
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る表面粗化銅板の製造方法および装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における表面粗化銅板の製造方法および装置の細部構成および詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
100、200 表面粗化銅板製造装置
101 銅板
110 前処理部
120 第一工程部
121 めっき槽
122、132 電極
123、133 ステーション
130 第二工程部
131 別のめっき槽
140 後処理部
900 メタルコア回路基板
901 絶縁基板
902 金属板
903 回路パターン
904 スルーホール
905 ソルダーレジスト
911 銅板
912 ロール

Claims (10)

  1. 銅板の表面を粗化する表面粗化銅板の製造方法であって、
    めっき液が注入されためっき槽に前記銅板を導入し、前記めっき槽の内部に対向配置された2段以上の陰極電極のいずれか1段の間に前記銅板を非接触に挟み、前記銅板を陽極とし前記陰極電極を陰極として電気分解を行い、前記電気分解を前記2段以上の陰極電極のそれぞれで順次行う第一工程と、
    前記銅板を前記めっき槽からこれに連通して前記めっき液が注入された別のめっき槽に移動させ、前記別のめっき槽の内部に対向配置された1段以上の陽極電極のいずれか1段の間に前記銅板を非接触に挟み、前記銅板を陰極とし前記陽極電極を陽極として銅めっきを行い、前記銅めっきを前記1段以上の陽極電極のそれぞれで順次行う第二工程と、を有し、
    前記第一工程では、少なくとも1段の前記銅板と前記陰極電極との間の電圧が所定値となるように定電圧制御し、
    前記第二工程では、前記銅板と前記陽極電極との間の電流が所定値となるように定電流制御する
    ことを特徴とする表面粗化銅板の製造方法。
  2. 前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧のうち少なくとも一部を個別に定電圧制御し、
    前記第二工程では、前記1段以上の陽極電極と前記銅板との間の電流を一括または個別に定電流制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の表面粗化銅板の製造方法。
  3. 前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧がすべて所定の同じ電圧値となるように定電圧制御する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の表面粗化銅板の製造方法。
  4. 前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧のすべてを各段で個別に決定された電圧値となるように定電圧制御する
    ことを特徴とする請求項2に記載の表面粗化銅板の製造方法。
  5. 前記第一工程では、前記2段以上の陰極電極と前記銅板との間の電圧が、前記銅板を移動させる方向に順次高くなるように定電圧制御する
    ことを特徴とする請求項4に記載の表面粗化銅板の製造方法。
  6. 前記第一工程と前記第二工程とを1サイクルとし、これを1サイクル以上行う
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表面粗化銅板の製造方法。
  7. 銅板の表面を粗化する表面粗化銅板製造装置であって、
    めっき液が注入されためっき槽と、前記銅板を陽極としてこれを非接触に挟むように前記めっき槽の内部に対向配置された陰極電極とを有する第一工程部と、
    前記めっき槽と連通されて前記めっき液が注入された別のめっき槽と、前記銅板を陰極としてこれを非接触に挟むように前記別のめっき槽の内部に対向配置された陽極電極を有する第二工程部と、を備え、
    前記銅板の1つを挟む前記陰極電極を1段としてこれが前記第一工程部の内部に2段以上縦列配置され、
    前記陰極の銅板の1つを挟む前記陽極電極を1段としてこれが前記第二工程部の内部に1段以上縦列配置されており、
    前記第一工程部は、少なくとも1段の前記銅板と前記陰極電極との間の電圧が所定値となるように定電圧制御する定電圧制御手段を備え、
    前記第二工程部は、前記銅板と前記陽極電極との間の電流が所定値となるように定電流制御する定電流制御手段を備える
    ことを特徴とする表面粗化銅板製造装置。
  8. 前記第一工程部は、前記2段以上縦列配置された前記陰極電極の電圧のうち少なくとも一部を個別に制御する2以上の前記定電圧制御手段を備え、
    前記第二工程部は、前記1段以上縦列配置された前記陰極電極の電流を一括または個別に制御する1つの前記定電流制御手段を備える
    ことを特徴とする請求項7に記載の表面粗化銅板製造装置。
  9. 前記第一工程部と前記第二工程部からなる組が、2組以上縦列に接続されている
    ことを特徴とする請求項7または8に記載の表面粗化銅板製造装置。
  10. 表面を粗化する前の前記銅板を洗浄する前処理部と、表面を粗化した後の前記銅板を洗浄する後処理部とをさらに備え、
    前記銅板が、前記前処理部、前記第一工程部、前記第二工程部、および前記後処理部を連続して移動可能に連結されている
    ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の表面粗化銅板製造装置。

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