JP5448241B2 - ボールエンドミル及びそれを用いた切削加工方法 - Google Patents
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Description
また本発明は、前記ボールエンドミルを用いた3次元曲面加工等に好適な高効率の切削加工方法に関する。
特許文献1には、非鉄金属材料を切削するために切屑排出性を向上させたボールエンドミルが開示されている。従来、ボールエンドミルの刃底丸みの半径は、刃径に対して0.15〜0.30倍に形成されていた。しかしながら、本発明者が検討したところ、従来構成のボールエンドミルでは、本発明の対象とするプラスチック金型材料等の高速切削等において、前記問題が顕在化していることがわかった。
即ち、近年の金型加工では、高能率かつ安定した高精度切削が要求されるため、荒加工から仕上げ加工までを等高線加工で彫り込む加工方法が実用性の点から採用されている。そうなると、従来主として切削性や切屑排出性について検討され、改良がなされてきたボール刃の外周側における切削だけでなく、ボールエンドミルのチゼル近傍でも切削を行うことが必要になる。しかし、従来のものでは、特にチゼル近傍における切り屑排出性と切削性が極めて不十分であり、この問題の解決が望まれている。
本発明のボールエンドミルの構成を採用したことにより、特にボール刃先端部での切屑排出性が改善され、長寿命のボールエンドミルが得られる。
上記ギャッシュ深さとは、ギャッシュ溝直角断面における二番逃げ面とすくい面との交差部とギャッシュ面との距離をいう。
また、上記チゼル端部すくい角とは、ギャッシュ溝直角断面でのすくい面と回転軸とのなす角度をいう。
当該ボールエンドミルの工具先端から刃径Dの10%までの範囲であるボール刃先端部での、前記ボール刃のすくい面と前記ギャッシュ面との境界部分であるギャッシュ底部に直角な断面における前記ボール刃のすくい面から前記ボール刃のすくい面と前記逃げ面のうちの二番逃げ面との交差部に沿って引いた接線と当該ボールエンドミルの回転軸とのなす角度であるチゼル端部すくい角が−45〜−15°であり、前記ボール刃先端部での、前記ギャッシュ底部に直角な断面における前記ボール刃のすくい面と前記ギャッシュ面との間の接続部の曲率半径であるすくい面曲率半径が前記刃径Dの3%以下であり、及び前記交差部と前記ギャッシュ面との距離であるギャッシュ深さが前記刃径Dの0.5〜1%の範囲にあるボールエンドミルを用いた切削加工方法であって、被削材を前記ボールエンドミルにより切削加工するにあたり、前記ボールエンドミルの刃先端部において切り屑排出性及び切削性を具備しつつ切削加工を行うことを特徴とする。
本発明の切削加工方法によれば、高効率かつ安定に高精度加工ができるとともにボール刃先端部での最大逃げ面磨耗幅を従来に比べて顕著に抑制することができる。
(2)本発明の切削加工方法によれば、高効率かつ高精度加工を安定に行うことができるとともに、使用したボールエンドミルが長寿命になり、トータルの切削加工コストを低減することができる。
特に限定されないが、本発明のボールエンドミルの基材は超硬合金製とするのが好ましい。またCBN製のボールエンドミルとした場合にも本発明の有利な効果を奏することができる。さらにその他の公知の基材製としてもよい。
特に限定されないが、本発明のボールエンドミルに被覆する硬質皮膜として、AlCrSiN系、CrSiN系、TiSiN系、TiBON系、TiC系、TiN系、TiCN系、TiAlN系及びAl2O3系皮膜のうちの1種または2種以上から構成される単層皮膜若しくは積層皮膜が例示される。
本発明のボールエンドミルは略半球状のボール刃を有する。図2に例示するように、略半球状とは、半径方向に突出した最外周部10、11等の部分を含むことが許容されるものをいう。即ち、全体としてはボールエンドミルの軸方向にボール刃3が突出し、もって本発明に係る略半球状のボール刃が構成される。
特に限定されないが、本発明による有利な効果を奏するために、刃径Dは1〜20mmであり、1.5〜16mmとするのが好ましい。刃径Dが1mm未満のものは工業生産性に乏しく、20mm超のものは被削材の加工仕様の小寸法化、複雑形状化に適合しない。
本発明のボールエンドミルを用いた切削加工方法において、被削材である金型材料等の難削性の金属材料としては、例えばJISG4051〜4053に規定されるS55C、SCM440及びSNCM439など、及びJISG4202等に規定されるSACM645など、インコネルまたはハステロイ等の鉄鋼材料、チタン合金、またはアルミニウム合金のうちのいずれかが挙げられる。
前記の難削性金属材料のロックウェル硬さ(HRC)として、25以上であり、好ましくは30〜60であり、より好ましくは32〜60のものが例示される。前記の難削性金属材料のシャルピー衝撃値として、10J/cm2以上であり、好ましくは20〜80J/cm2であり、より好ましくは30〜80J/cm2のものが例示される。
前記特定範囲のロックウェル硬さ及びシャルピー衝撃値を有する被削材に対し、特に本発明の切削加工方法による有利な効果を奏することができる。
また本発明のボールエンドミルを用いた切削加工方法に係る高切り込み切削の条件として、乾式切削において、軸方向切り込み量が0.2mm以上及びピッチ方向切り込み量が0.1mm以上であり、好ましくは軸方向切り込み量が0.3〜10mm及びピッチ方向切り込み量が0.15〜5mmであり、より好ましくは軸方向切り込み量が0.4〜10mm及びピッチ方向切り込み量が0.2〜5mmである場合が例示される。
本発明例1〜5および比較例1として、超硬合金を基材とした二枚刃のボールエンドミルで、すくい面曲率半径をそれぞれ変化させた以外は、刃径D6mm、全長90mm、シャンク径6mm、ギャッシュ深さを刃径Dの0.75%(0.045mm)、チゼル端部すくい角が−30°であって、Al−Cr−Si系窒化物皮膜を施した状態に仕様を統一した工具を作製し、切削試験を行った。すくい面曲率半径は、本発明例1〜5において、刃径Dの0.8%(0.05mm)、刃径Dの1.0%(0.06mm)、刃径Dの1.5%(0.09mm)、刃径Dの2.0%(0.12mm)、刃径Dの3.0%(0.18mm)とし、比較例1においては、刃径Dの3.5%(0.21mm)とした。
被削材はプラスチック用金型材料(日立金属株式会社製、商品名:HPM−MAGIC、HRC=41、厚さ65mmにおける2mmUノッチシャルピー衝撃値=63J/cm2のもの)を用いた。
切削条件としては、軸方向切り込み量0.4mm、ピック方向切り込み量0.2mm、回転数20000回転/min、軸方向切り込み深さでの切削速度は188m/minとなる。テーブル送り速度4000mm/min、冷却方法としてエアブローを用いた乾式切削で、底面切削加工を行った。
評価方法として、加工長2000m切削後に逃げ面摩耗幅を測定し、最大逃げ面摩耗幅が0.05mm以下のものを評価良(表内では○印)、0.05mmを超えるものまたは欠損したものを評価不良(表内では×印)とした。各試料の仕様および評価結果を表1に示す。
上記結果から、すくい面曲率半径は刃径Dの3%以下であることが必要であり、すくい面曲率半径が上記範囲よりも大きい場合には逃げ面摩耗が大きくなることが分かる。これは、すくい面曲率半径が大きいとチゼル近傍での切屑排出性が低下し、切屑つまりによって摩耗が進行しやすくなるためである。尚、図6中の斜線は断面を示す。
本発明例6〜8および比較例2、3として、超硬合金を基材とした二枚刃のボールエンドミルで、ギャッシュ深さをそれぞれ変化させた以外は、すくい面曲率半径を刃径Dの1.5%(0.09mm)として実施例1と同仕様の工具を作製し、切削試験を行った。ギャッシュ深さは、本発明例6〜8において、刃径Dの0.50%(0.030mm)、刃径Dの0.75%(0.045mm)、刃径Dの1.00%(0.060mm)とし、比較例2、3においてはそれぞれ刃径Dの0.30%(0.018mm)、刃径Dの1.50%(0.090mm)とした。切削条件、被削材および評価は実施例1と同様で行った。各試料の仕様および評価結果を表2に示す。
上記結果から、ギャッシュ深さは刃径Dの0.5〜1%の範囲にあることが必要であり、ギャッシュ深さが上記範囲よりも小さい場合には逃げ面摩耗が大きくなり、上記範囲よりも大きい場合には欠損が発生することが分かる。これは、ギャッシュ深さが小さいとチゼル近傍での切屑排出性が低下し、切屑つまりによって摩耗が進行しやすくなり、またギャッシュ深さが大きすぎると工具剛性が低下してしまうためである。
本発明例9〜13および比較例4、5として、超硬合金を基材とした二枚刃のボールエンドミルで、チゼル端部すくい角をそれぞれ変化させた以外は、すくい面曲率半径を刃径Dの1.5%(0.09mm)として実施例1と同仕様の工具を作製し、切削試験を行った。チゼル端部すくい角は、本発明例9〜13において、−15°、−20°、−30°、−40°、−45°とし、比較例4、5においてはそれぞれ−13°、−47°とした。
切削評価は実施例1と同様の条件で行った。各試料の仕様および評価結果を表3に示す。
上記結果から、チゼル端部すくい角は−45〜−15°の範囲にあることが必要であり、チゼル端部すくい角が上記範囲よりも大きい場合には欠損が生じ、上記範囲よりも小さい場合には逃げ面摩耗が大きくなることが分かる。これは、チゼル端部すくい角が大きいと工具剛性が低下し、またチゼル端部すくい角が小さいとチゼル近傍での切屑排出性が低下し、切屑つまりによって摩耗が進行しやすくなるためである。
具体的な適用分野は、例えば携帯電話及び自動車部品などのプラスチック金型材料の荒加工から仕上げ加工である。また、プラスチック金型に存在するような深リブ溝の加工においても適している。そして、本発明のボールエンドミルは、プラスチック金型材料に代表される高硬度でかつ高靭性な難削性の金属材料の底面切削加工に特に好適である。
2 切れ刃
3 ボール刃
4 外周刃
5 シャンク部
6 チゼル刃
7 ギャッシュ面
8 二番逃げ面
9 三番逃げ面
10 最外周部
11 最外周部
12 直線
13 すくい面
14 ギャッシュ底部
15 工具先端
16 交差部
17 ギャッシュ深さ
18 すくい面曲率半径
19 チゼル端部すくい角
D 刃径
O 回転軸
Claims (2)
- 略半球状のボール刃と外周刃とから構成される二枚の切れ刃と、前記二枚の切れ刃をつなぐチゼル刃と、前記切れ刃に沿って切屑を逃がすためのギャッシュ面と、前記切れ刃に沿うすくい面及び逃げ面とを有するボールエンドミルであって、
当該ボールエンドミルの工具先端から刃径Dの10%までの範囲であるボール刃先端部での、前記ボール刃のすくい面と前記ギャッシュ面との境界部分であるギャッシュ底部に直角な断面における前記ボール刃のすくい面から前記ボール刃のすくい面と前記逃げ面のうちの二番逃げ面との交差部に沿って引いた接線と当該ボールエンドミルの回転軸とのなす角度であるチゼル端部すくい角が−45〜−15°であり、
前記ボール刃先端部での、前記ギャッシュ底部に直角な断面における前記ボール刃のすくい面と前記ギャッシュ面との間の接続部の曲率半径であるすくい面曲率半径が前記刃径Dの3%以下であり、
及び前記交差部と前記ギャッシュ面との距離であるギャッシュ深さが前記刃径Dの0.5〜1%の範囲にあることを特徴とするボールエンドミル。 - 略半球状のボール刃と外周刃とから構成される二枚の切れ刃と、前記二枚の切れ刃をつなぐチゼル刃と、前記切れ刃に沿って切屑を逃がすためのギャッシュ面と、前記切れ刃に沿うすくい面及び逃げ面とを有し、
当該ボールエンドミルの工具先端から刃径Dの10%までの範囲であるボール刃先端部での、前記ボール刃のすくい面と前記ギャッシュ面との境界部分であるギャッシュ底部に直角な断面における前記ボール刃のすくい面から前記ボール刃のすくい面と前記逃げ面のうちの二番逃げ面との交差部に沿って引いた接線と当該ボールエンドミルの回転軸とのなす角度であるチゼル端部すくい角が−45〜−15°であり、
前記ボール刃先端部での、前記ギャッシュ底部に直角な断面における前記ボール刃のすくい面と前記ギャッシュ面との間の接続部の曲率半径であるすくい面曲率半径が前記刃径Dの3%以下であり、
及び前記交差部と前記ギャッシュ面との距離であるギャッシュ深さが前記刃径Dの0.5〜1%の範囲にあるボールエンドミルを用いた切削加工方法であって、
被削材を前記ボールエンドミルにより切削加工するにあたり、前記ボールエンドミルの刃先端部において切り屑排出性及び切削性を具備しつつ切削加工を行うことを特徴とするボールエンドミルを用いた切削加工方法。
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