JP5447804B2 - テトラホスフィンテトラオキシド、その製造方法、並びにその用途 - Google Patents

テトラホスフィンテトラオキシド、その製造方法、並びにその用途 Download PDF

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Description

本発明は、新規テトラホスフィンテトラオキシド、その製造方法、並びにその用途に関する。
ホスフィンオキシドは産業上有用なファインケミカルズであり、さらに高付加価値のファインケミカルズ合成用の触媒原料、機能性材料等に用いられている。また、ホスフィンオキシドは、公知の方法(例えば、クロロシラン及びアルキルアミンの混合物を用いる方法等)により、産業上有用なホスフィンに容易に変換できるため、ホスフィンを合成するための中間体としても利用されている。
特に、近年、エレクトロルミネッセンスや白色LED照明の分野では、希土類金属酸化物、窒化物等の無機化合物蛍光体に代わり、ホスフィンオキシド配位子を持つ希土類金属錯体を含有する蛍光体が注目を集めている。前記蛍光体は、例えば、LED又は半導体レーザーと組み合わせることにより発光装置を提供することができる。
前記錯体は、前記無機化合物蛍光体と同様にf軌道の電子遷移に基づく発光が可能である。また、ホスフィンオキシド配位子の構造制御や分子設計を行うことによって、光物性の精密制御を行うことができる。さらに、前記錯体は、有機溶媒及びシリコーン樹脂、フッ素樹脂等の液状ポリマーに均一に溶解するため、透明性の高い蛍光体材料を提供することができる。従来用いられていた無機化合物蛍光体は、前記液状ポリマーに溶解せず、液状ポリマー中で分散する傾向がある。そのため、得られる蛍光体材料は、光散乱して光取り出し効率が低下する問題があった。
ホスフィンオキシド配位子を持つ希土類金属錯体として、例えば、特許文献1には、単座配位子のホスフィンオキシドが希土類金属に配位してなる錯体が開示されている。
しかしながら、特許文献1の希土類金属錯体は、有機媒体中で、ホスフィンオキシド単座配位子が希土類金属から解離しやすいため、高い発光強度を安定して発揮できる蛍光体を実現できない。
そこで、錯体の安定性向上のため、2座配位子のビスホスフィンジオキシドを希土類金属に配位させた錯体が提案されている(特許文献2〜4)。
また、さらなる錯体の安定性向上等を目的として、特許文献5には、4座配位子である大環状テトラホスフィンテトラオキシドを配位子として用いた希土類金属錯体についても報告されている。
しかしながら、特許文献2〜5のホスフィンオキシド配位子を有する希土類金属錯体は、液状ポリマー中での安定性が未だ不十分であり、且つ、該錯体が本来有する蛍光強度も低い。しかも、特許文献1〜5及び非特許文献1の配位子を有する希土類金属錯体は、液状ポリマー等の有機媒体に対する溶解度が低い。そのため、希土類金属錯体を有機媒体中に十分に溶解させることができず、結果的に高発光の材料を実現できない。
加えて、特許文献5及び非特許文献1に記載の大環状テトラホスフィンテトラオキシドは、合成に際して多段階反応を要し、低収率でしか得られないため、量産化が困難である。
従って、簡便かつ高収率で製造でき、且つ、蛍光体が高い発光強度を安定して発揮することを可能にする新規ホスフィンオキシド配位子の開発が切望されている。
ところで、希土類金属は、現代産業になくてはならない重要な物質であり、磁気材料、光機能材料、エレクトロニクス分野で利用される材料として注目されている。例えば、カラーPDP用蛍光体、白色LED用蛍光体、エレクトロルミネッセンス等の分野で希土類金属が用いられている(非特許文献2)。
この希土類金属は希少金属であるため、近年では、リサイクル技術によりこの希土類金属を再利用する試みがなされている。例えば、希土類金属抽出剤を用いた溶媒抽出法により、希土類金属を抽出する技術が注目されている。特に、希土類金属に配位しやすい等の観点から、ホスフィン酸やホスフィンオキシドが希土類金属抽出剤として使用されている(特許文献6〜11)。
しかしながら、特許文献6〜11の抽出剤は、希土類金属の抽出効率の点で未だ改善の余地がある。
特開2003−81986号公報 特開2004−262909号公報 特開2005−82529号公報 特開2005−15564号公報 特開2007−1880号公報 特許第3310728号公報 特許第3096731号公報 特許第3848271号公報 特許第3533438号公報 国際公開第2003/074538A1号パンフレット 特開平7−26336号公報
M. Vincens, et al., Tetrahedron, 1991, 47, 403. 足立吟也監修、「希土類の機能と応用」CMC出版(2006)
本発明は、簡便に且つ高収率で製造でき、高い発光強度を長期間発揮できる錯体を実現するための新規ホスフィンオキシド及びその製造方法を提供し、さらに、希土類金属を効率よく抽出するため希土類金属抽出剤及び希土類金属抽出方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造のテトラホスフィンテトラオキシド及び特定のプロセスを採用した前記テトラホスフィンテトラオキシドの製造方法が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記のテトラホスフィンテトラオキシド、その製造方法、及びその用途に係る。
1. 一般式:
Figure 0005447804
(式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよい飽和炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基を示すか、或いは、同一リン原子上のR及びRが結合して環を形成していてもよく、nは2以上の整数を示す。)
で表されるテトラホスフィンテトラオキシド。
2. 一般式(1)中、R及びRが、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよい炭素数3〜20の飽和炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基を示し、nが3〜12の整数を示す上記項1に記載のテトラホスフィンテトラオキシド。
3. 一般式(1)中、R及びRが、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示し、nが3〜12の整数を示す上記項1又は2に記載のテトラホスフィンテトラオキシド。
4. 一般式(1)中、R及びRが、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基を示し、nが4〜8の整数を示す上記項1〜3のいずれかに記載のテトラホスフィンテトラオキシド。
5. 希土類金属錯体の配位子である上記項1〜4のいずれかに記載のテトラホスフィンテトラオキシド。
6. 上記項1〜4のいずれかに記載のテトラホスフィンテトラオキシドを含む希土類金属抽出剤。
7. 希土類金属イオンを含む水溶液と上記項6に記載の抽出剤とを接触させることにより、該水溶液から希土類金属イオンを抽出する希土類金属抽出方法。
8. 一般式:
Figure 0005447804
(式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよい飽和炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基を示すか、或いは、同一リン原子上のR及びRが結合して環を形成していてもよく、nは2以上の整数を示す。)
で表されるテトラホスフィンテトラオキシドの製造方法であって、
触媒存在下、一般式:
Figure 0005447804
(式中、nは前記に同じ。)
で表されるホスフィンオキシドと、一般式:
Figure 0005447804
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表されるリン化合物及び/又は、一般式:
Figure 0005447804
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表されるリン化合物とを反応させることを特徴するテトラホスフィンテトラオキシドの製造方法。
9. 前記触媒が、ラジカル開始剤型触媒である、上記項8に記載の製造方法。
10. 前記ホスフィンオキシド(4)が、一般式:
Figure 0005447804
(式中、Xはハロゲン原子を示し、nは前記に同じ。)
で表されるハロゲン化物から調製される有機金属反応剤と、一般式:
Figure 0005447804
(式中Y、Y及びYは、それぞれ同一又は異なって、ハロゲン原子、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
で表されるリン化合物とを反応させることにより得られる上記項8又は9に記載のテトラホスフィンテトラオキシドの製造方法。
11. 前記有機金属反応剤がグリニャール反応剤である、上記項10に記載の製造方法。
本発明の新規テトラホスフィンテトラオキシド(1)は、希土類金属に配位して希土類金属錯体を形成することができる。前記錯体を含む蛍光体は高い発光強度を示す。また、前記錯体は、有機溶媒、液状ポリマー等の有機媒体中で希土類金属と配位子(テトラホスフィンテトラオキシド(1))とが解離しにくい。そのため、前記錯体を含む蛍光体は、高い発光強度を長期間示すことができる。また、前記蛍光体は、前記有機媒体に対する溶解度が大きいため、透明性の高い高発光材料を提供できる。
また、前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)は、希土類金属抽出剤として用いることにより、高い抽出率で目的の希土類金属を抽出することができる。特に、抽出対象の水溶液のpH値が6〜8程度の場合であっても、乳化せずに高い抽出率を奏し、かつ、逆抽出により希土類金属を効率よく回収することができる。
さらに、前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)は、簡便に且つ高収率で製造できるため、工業的に大量生産しやすい。
テトラホスフィンテトラオキシド(1)
本発明のテトラホスフィンテトラオキシド(1)は、一般式:
Figure 0005447804
(式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよい飽和炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基を示すか、或いは、同一リン原子上のR及びRが結合して環を形成していてもよく、nは2以上の整数を示す。)
で表される。
置換されていても良い飽和炭化水素基の飽和炭化水素基としては、特に限定されず、例えば、C〜C20の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基、C〜C12シクロアルキル基等が挙げられる。
〜C20の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イコシル基等を例示できる。
〜C12シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロドデシル基等を例示できる。
置換されていてもよい飽和炭化水素基の置換基としては、特に限定されないが、例えばフルオロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
フルオロアルキル基としては、例えば、C1−6ぺルフルオロアルキル基が挙げられる。C1−6ぺルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリデカフルオロヘキシル基等を例示できる。
アルコキシ基としては、例えば、C1−6アルコキシ基が挙げられる。C1−6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等を例示できる。
アリールオキシ基としては、例えば、C6−12アリールオキシ基が挙げられる。C6−12アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を例示できる。
シロキシ基としては、トリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ、トリイソプロピルシロキシ、tert−ブチルジメチルシロキシ等を例示できる。
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等を例示できる。
置換されていてもよい飽和炭化水素基の置換基の置換位置及び置換基の数は、特に限定されない。
特に、置換されていても良い飽和炭化水素基としては、置換されていてもよいC3〜20の飽和炭化水素基が好ましく、C4〜18がより好ましい。
置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、特に限定されず、例えば、C6−14アリール基が挙げられる。C6−14アリール基としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、アンスリル等を例示できる。
置換されていてもよいアリール基の置換基としては、特に限定されず、例えばC1−6アルキル基、C1−6ぺルフルオロアルキル基、C6−14アリール基、5〜10員芳香族複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
1−6アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
1−6ぺルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、トリデカフルオロヘキシル等が挙げられる。
6−14アリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等が挙げられる。
5〜10員芳香族複素環基としては、例えば、2−又は3−チエニル、2−,3−又は4−ピリジル、2−,3−,4−,5−又は8−キノリル、1−,3−,4−又は5−イソキノリル、1−,2−又は3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル等が挙げられる。
1−6ぺルフルオロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基及びジアルキルアミノ基については、前記飽和炭化水素基の置換基として述べたアルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基及びジアルキルアミノ基と同じである。
置換されていてもよいアリール基の置換基の置換位置及び置換基の数は、特に限定されない。
置換されていてもよいヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、特に限定されず、例えば、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれる原子を1〜3個含む、縮環していてもよい5〜14員芳香族複素環基が挙げられる。
前記芳香族複素環基としては、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、カリボリニル、フェナンスリジニル、アクリジニル等を例示できる。
置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基としては、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基と同じである。
前記置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基の位置及び置換基の数は、特に限定されない。
置換されていてもよいアラルキル基のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
置換されていてもよいアラルキル基の置換基としては、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基と同じである。
前記置換されていてもよいアラルキル基の置換基の位置及び置換基の数は、特に限定されない。
同一リン原子上のR及びRが結合して形成する環としては、例えば、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
nは、2以上の整数であればよいが、好ましくは3〜12の整数、より好ましくは4〜8の整数である。
テトラホスフィンテトラオキシド(1)の製造方法
本発明の製造方法は、前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)の製造方法であって、触媒存在下、一般式:
Figure 0005447804
(式中、nは前記に同じ。)
で表されるホスフィンオキシドと、一般式:
Figure 0005447804
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表されるリン化合物及び/又は、一般式:
Figure 0005447804
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表されるリン化合物とを反応させることを特徴する。
前記ホスフィンオキシド(4)と前記リン化合物(5)及び/又は前記リン化合物(6)とを反応させることにより、簡便に且つ高収率で前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)を製造できる。
前記ホスフィンオキシド(4)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、一般式:
Figure 0005447804
(式中、Xはハロゲン原子を示し、nは前記に同じ。)
で表されるハロゲン化物から調製される有機金属反応剤と、一般式:
Figure 0005447804
(式中Y、Y及びYは、それぞれ同一又は異なって、ハロゲン原子、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
で表されるリン化合物とを反応させることにより製造する方法が好ましい。かかる方法により、高い収率で前記ホスフィンオキシド(4)を製造できる。
即ち、本発明の製造方法としては、特に、下記反応式1に示す一連のプロセス(下記第1工程を経た後、下記第2工程を経る一連のプロセス)を採用する方法が好ましい。かかる方法を採用することにより、自由に分子設計しつつ、簡便に、且つ、高収率でテトラホスフィンテトラオキシド(1)を製造できる。
[反応式1]
Figure 0005447804
(式中、n、X、Y、Y、Y、R及びRは前記に同じ)
以下、上記反応式1に示す方法を代表例として本発明の製造方法について具体的に説明する。
第一工程
第一工程では、前記ハロゲン化物(2)から調製される有機金属反応剤と、前記リン化合物(3)とを反応させることにより前記ホスフィンオキシド(4)を製造する。例えば、下記工程(a)及び工程(b)に従ってホスフィンオキシド(4)を製造できる。
(a)前記有機金属反応剤にリン化合物(3)を添加する又はリン化合物(3)に前記有機金属反応剤を添加することにより反応液を得る工程。
(b)工程(a)で得られた反応液に水を添加する又は水に工程(a)で得られた反応液を添加することにより有機層及び水層を形成させた後、該有機層からホスフィンオキシド(4)を得る工程。
工程(a)
工程(a)では、前記有機金属反応剤に、リン化合物(3)を添加する又はリン化合物(3)に前記有機金属反応剤を添加することにより反応液を得る。
<有機金属反応剤>
前記ハロゲン化物(2)を用いて有機金属反応剤を調製する。
一般式(2)(及び一般式(4))中、nは、2以上の整数であればよいが、好ましくは3〜12の整数、より好ましくは4〜8の整数である。
一般式(2)中、Xで表されるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、I等が挙げられる。この中でも特に、反応性及び経済性の観点からCl及びBrが好ましい。
前記ハロゲン化物(2)は、市販品又は公知の方法に従って製造することにより容易に入手できる。
前記有機金属反応剤としては、例えば、グリニャール反応剤、有機リチウム反応剤、有機亜鉛反応剤等が挙げられる。特に、前記有機金属反応剤としては、グリニャール反応剤が好ましい。
グリニャール反応剤は、公知の方法により容易に調製できる。例えば、不活性ガス雰囲気下、前記ハロゲン化物(2)と金属マグネシウムとを非プロトン性溶媒中で攪拌しながら反応させることにより調製できる。
前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。これらの不活性ガスは、一種単独で又は二種以上からなる混合ガスとして使用できる。
金属マグネシウムとしては、切削状、箔状、粒状等いずれの形状のものを用いてもよい。
金属マグネシウムの使用量は、特に限定されないが、ハロゲン化物(2)1molに対し、0.2〜5mol程度が好ましく、0.5〜2mol程度がより好ましく、0.8〜1.2mol程度がさらに好ましい。
前記非プロトン性溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミン系溶媒等が挙げられる。特に、エーテル系溶媒が好ましい。
エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アニソール等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。
アミン系溶媒としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
前記非プロトン系溶媒は、一種単独で又は二種以上を混合した混合溶媒として使用できる。
前記非プロトン性溶媒の使用量は、特に限定されないが、ハロゲン化物(2)1molに対し、通常100〜2000ml程度、好ましくは200〜1000ml程度である。
撹拌は、例えば、回転軸に攪拌翼を取り付けたモーター、マグネチックスターラー等の公知の撹拌装置を用いて行えばよい。
反応圧力は、特に限定されず、通常、常圧〜100kg/cm程度であればよい。
反応温度は、ハロゲン化物(2)の種類、反応スケール等に応じて適宜設定すればよいが、−40〜200℃程度が好ましく、−20℃〜150℃程度がより好ましい。例えば、常圧で反応する場合は、−20℃から前記溶媒の還流温度までの範囲が好ましい。
反応時間は、反応温度等に応じて適宜設定すればよいが、15分〜48時間程度が好ましく、1時間〜24時間程度がより好ましい。
有機リチウム反応剤及び有機亜鉛反応剤もまた公知の方法に従って容易に製造できる。例えば、有機リチウム反応剤は、不活性ガス雰囲気下、前記ハロゲン化物(2)と金属リチウムとを非プロトン性溶媒中で攪拌しながら反応させることにより調製できる。また、有機亜鉛反応剤は、不活性ガス雰囲気下、前記ハロゲン化物(2)と金属亜鉛とを非プロトン性溶媒中で攪拌しながら反応させる方法や不活性ガス雰囲気下、前記グリニャール反応剤及び/又は有機リチウム反応剤と塩化亜鉛とを非プロトン性溶媒中で攪拌しながら反応させる方法により調製できる。
<リン化合物(3)>
一般式(3)中のY、Y及びYは、それぞれ同一又は異なって、ハロゲン原子、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。
ハロゲン原子としては、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。ハロゲン原子としては、反応性及び経済性の観点からClが好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
特に、リン化合物(3)としては、一般式(3)中のY、Y及びYが塩素原子であるオキシ塩化リンが好ましい。
リン化合物(3)は、市販品又は公知の方法に従って製造することにより容易に入手できる。
<反応液の調製>
前記有機金属反応剤に、前記リン化合物(3)を添加する又はリン化合物(3)に前記有機金属反応剤を添加することにより反応液を調製する。
前記反応液の調製に際して、前記リン化合物(3)は、そのままの状態で使用してもよいし、溶媒に溶解させた状態で使用してもよい。
前記溶媒としては、例えば、前記非プロトン性溶媒を使用できる。
特に、工程(a)では、前記有機金属反応剤に、前記リン化合物(3)の溶液を滴下する又は溶媒に溶解させたリン化合物(3)の溶液に対して前記有機金属反応剤を滴下することが好ましい。前記溶液中のリン化合物(3)の濃度は、前記有機金属反応剤と前記リン化合物(3)との反応が好適に進行する範囲内であればよく特に限定されるものではない。
滴下速度は、特に限定されないが、前記リン化合物(3)の溶液が、通常5分〜12時間程度、好ましくは15分〜6時間程度かけて滴下されるように設定することが望ましい。
前記滴下は、得られる反応液の温度が通常−20〜150℃程度、好ましくは0〜80℃程度となる条件下で行うことが望ましい。
滴下終了後、必要に応じて、通常−20〜150℃程度、好ましくは0℃から前記非プロトン性溶媒の還流温度の範囲でさらに反応させてもよい。
以上の方法により、反応液を調製することができる。
工程(b)
工程(b)では、工程(a)で得られた反応液に水を添加する又は水に工程(a)で得られた反応液を添加することにより有機層及び水層を形成させた後、該有機層からホスフィンオキシド(4)を得る。
工程(b)は、公知の分液処理装置を用いて公知の分液方法に従って行えばよい。
水の添加量は、有機層と水層とを好適に形成できる範囲内であればよく特に限定されない。また、水の代わりに、希硫酸、希塩酸、酢酸水溶液等の酸性水溶液、塩化アンモニウム水溶液等の弱酸性水溶液、塩化ナトリウム水溶液等の中性水溶液を使用しても良い。
有機層と水層とを分離した後、必要に応じて、該水層に有機溶媒を添加することにより、該水層を有機層と水層とに分離し、該有機層を最初に分離して得られた有機層と合わせる操作を行ってもよい。
前記有機溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
前記炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。
前記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、一種単独で又は二種以上を混合して使用できる。
得られた有機層を必要に応じて脱水処理してもよい。脱水処理には、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等の公知の脱水剤を用いればよい。
得られた有機層を濃縮することにより、ホスフィンオキシド(4)を得ることができる。
なお、有機層を濃縮した後、必要に応じて、公知の精製方法に従って精製してもよい。公知の精製方法としては、例えば、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
以上の方法により、ホスフィンオキシド(4)が得られる。
第二工程
第二工程では、触媒存在下、第一工程で得られたホスフィンオキシド(4)とリン化合物(5)及び/又はリン化合物(6)とを反応させることによりテトラホスフィンテトラオキシド(1)を製造する。
前記触媒としては、例えば、ラジカル開始剤型触媒、遷移金属錯体触媒、塩基性触媒等が挙げられる。これらは、一種又は二種以上で用いることができる。この中でも特に、ラジカル開始剤型触媒が好ましい。ラジカル開始剤型触媒を用いることにより、目的のテトラホスフィンテトラオキシド(1)をより良好な収率で製造できる。
ラジカル開始剤型触媒としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、トリアルキルボラン等が挙げられる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等を例示できる。有機過酸化物としては、ジベンゾイルパーオキシド(BPO)、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキシド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジイソブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーブチル−O)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカネート等を例示できる。トリアルキルボランとしては、トリエチルボラン、トリブチルボラン等のトリアルキルボラン等を例示できる。これらラジカル開始剤型触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
遷移金属錯体触媒としては、例えば、Fe錯体、Ni錯体、Pd錯体等が挙げられる。
Fe錯体としては、[CpFe(CO)、Fe(CO)等を例示できる。Ni錯体としては、NiCl(PPh、NiBr(PPh等を例示できる。Pd錯体としては、PdCl(PPh、PdCl(PhCN)、PdCl(CHCN)等を例示できる。これら遷移金属錯体触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
塩基性触媒としては、 例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド、イソプロピルマグネシウムイソポロポキシド、t−ブチルマグシウムメトキシド等が挙げられる。これら塩基性触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
特に、前記触媒としては、ラジカル開始剤型触媒が好ましく、アゾ化合物及び有機過酸化物が好ましい。
前記触媒の使用量は限定的ではないが、前記ホスフィンオキシド(4)1molに対し、通常、0.01〜5mol程度、好ましくは0.02〜3mol程度、より好ましくは0.05〜1mol程度である。
前記リン化合物(5)は、下記反応式2のように、互変異性体のリン化合物(6)との平衡状態で存在する。
[反応式2]
Figure 0005447804
前記リン化合物(5)及び(6)は、市販品又は公知の方法に従って製造することにより容易に入手できる。例えば、R. Hays, J. Org. Chem., 1968, 33, 3691. に記載の方法、すなわち、ジエチルホスファイト1molに対して、3molのグリニャール反応剤を反応させることによりR及びRが同一の前記リン化合物(5)を製造できる。また、G. M. Kosolapoff, et al., J. Chem. Soc. (C), 1967, 1789. に記載の方法によりR及びRが異なるリン化合物(5)を製造することができる。
一般式(5)及び(6)中のR及びRについては、前記一般式(1)において説明したR及びRと同様である。特に、R及びRとしては、それぞれ置換されていてもよい炭素数3〜20の飽和炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基又は置換されていてもよいアラルキル基が好ましい。特に反応性の点からは、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基が好ましい。
第2工程におけるリン化合物(5)(及び/又はリン化合物(6))の使用量は限定的でないが、前記ホスフィンオキシド(4)1molに対して、通常2〜6mol程度、好ましくは2.5〜4mol程度、より好ましくは3〜3.5mol程度である。
前記ホスフィンオキシド(4)と前記リン化合物(5)及び/又は前記リン化合物(6)との反応は、触媒存在下、例えば、攪拌しながら無溶媒下又は溶媒中で行う。
前記溶媒は、触媒機能を効果的に発現できるものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。前記芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等を例示できる。前記脂肪族炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリン等を例示できる。前記アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、オクタノール等を例示できる。前記エーテル系溶媒としては、THF、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等を例示できる。前記エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等を例示できる。前記アミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等を例示できる。スルホキシド系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で又は二種以上の混合溶媒として使用できる。
溶媒中で反応させる場合、反応効率の観点から、前記ホスフィンオキシド(4)、前記リン化合物(5)(及び/又は前記リン化合物(6))並びに前記触媒を溶媒に完全に溶解させることが好ましい。この際、前記ホスフィンオキシド(4)等を反応させながら溶解させてもよい。
前記ホスフィンオキシド(4)と前記リン化合物(5)及び/又は前記リン化合物(6)との反応は、バッチ式又は連続式のいずれの反応形式で行ってもよい。
反応圧力は、特に限定されず、通常、常圧〜100kg/cm程度であればよい。
反応温度は、前記触媒の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常−20℃〜200℃程度、好ましくは0℃〜150℃程度である。例えば、常圧で反応する場合は、0℃〜溶媒の還流温度の範囲が好ましい。
反応時間は、特に限定されず、反応温度及び反応の進行程度に応じて適宜設定すればよいが、通常15分間〜72時間程度、好ましくは1時間〜36時間程度である。
反応後、必要に応じて、公知の精製方法により精製してもよい。公知の精製方法としては、上記工程(b)にて例示した方法を採用できる。
以上、第一工程及び第二工程を経ることにより、本発明のテトラホスフィンテトラオキシド(1)が得られる。
テトラホスフィンテトラオキシド配位子
前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)は、希土類金属(中心原子)に配位し希土類金属錯体を形成することができる。即ち、本発明のテトラホスフィンテトラオキシド(1)は、希土類金属錯体の配位子として用いることができる。
前記希土類金属としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuが挙げられる。この中でも特に、前記希土類金属錯体が高い赤色発光強度を有する点でEuが好ましい。また、前記希土類金属錯体が高い緑色発光強度を有する点でTbが好ましい。
前記希土類金属錯体は、中心原子として前記希土類金属を有し、且つ、配位子として前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)を有する限り特に限定されるものではない。前記希土類金属錯体中の希土類金属(中心原子)の数は特に限定されないが、一つ又は二つが好ましく、二つがより好ましい。希土類金属を一つ有する錯体としては、例えば、一つの希土類金属に対してテトラホスフィンテトラオキシド(1)の四つの酸素原子が配位原子として配位した錯体が挙げられる。希土類金属を二つ有する錯体としては、例えば、一方の希土類金属に対してテトラホスフィンテトラオキシド(1)の二つの酸素原子が配位し、且つ、他方の希土類金属に対して該テトラホスフィンテトラオキシド(1)の残り酸素原子二つが配位した錯体が挙げられる。
前記希土類金属錯体には、前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)以外の配位子がさらに配位していてもよい。前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)以外の配位子としては、特に限定されず、例えば、スルホニルイミド配位子、カルボキシレート配位子、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、エーテル系配位子、アミン系配位子、クラウンエーテル系配位子、アザクラウンエーテル系配位子等が挙げられる。これらの配位子は、一種単独で又は二種以上で前記希土類金属に配位していてよい。
前記希土類金属錯体の製造方法としては、例えば、希土類金属イオン及び希土類金属塩から選ばれる少なくとも一種と前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)とを溶媒中で反応させる方法が挙げられる。
希土類金属イオンとしては、上述した希土類金属のイオンが挙げられる。
希土類金属塩としては、例えば、希土類金属ハロゲン化物、希土類金属硝酸塩、希土類金属カルボキシレート、希土類金属アルコキシド、希土類金属アリールオキシド、スルホニルイミド希土類金属錯体等が挙げられる。
前記溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン、ニトロベンゼン等の芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、オクタノール等のアルコール系溶媒;水等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で又は二種以上の混合溶媒として使用できる。
反応形式は、バッチ式又は連続式のいずれであってもよい。
反応圧力は、特に限定されず、通常、常圧〜100kg/cm程度であればよい。
反応温度は、適宜設定すればよいが、通常−20〜200℃程度、好ましくは20〜150℃程度である。例えば、常圧で反応する場合は、20℃〜溶媒の還流温度の範囲が好ましい。
反応時間は、特に限定されず、反応温度等に応じて適宜設定すればよいが、通常15分〜24時間程度、好ましくは30分〜12時間程度である。
反応後、必要に応じて、公知の精製方法により精製してもよい。公知の精製方法としては、例えば、再結晶、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)を配位子として有する前記希土類金属錯体は、1)従来の発光材料よりも発光強度が高く、2)有機媒体に対する溶解度が高く、3)有機媒体中において前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)が希土類金属から解離しにくい性質を持つ。
従って、前記錯体を含有する蛍光体は、高い発光強度を安定して発揮することができる。また、前記錯体は、有機媒体(特に、液状ポリマー、有機溶媒)に溶解しやすいため、透明性の高い高発光材料を提供できる。
このような蛍光体を実現するための前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)としては、特に、R及びRが、それぞれ置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良いヘテロアリール基、nが3〜12であるテトラホスフィンテトラオキシドが好ましく、R及びRが、それぞれ置換されていても良い炭素数6〜15のアリール基、nが4〜8であるテトラホスフィンテトラオキシドがより好ましい。
希土類金属抽出剤
本発明の希土類金属抽出剤は、前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)を含む。前記テトラホスフィンテトラオキシド(1)は、希土類金属に配位しやすく、且つ、配位後安定して錯体の状態を維持できるため、希土類金属抽出剤として好適に使用できる。
特に、希土類金属抽出剤に含まれるテトラホスフィンテトラオキシド(1)としては、一般式(1)中、R及びRが置換されていてもよいアリール基であり、nが3〜12であるテトラホスフィンテトラオキシド(1)が好ましく、R及びRが置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基であり、nが4〜8であるテトラホスフィンテトラオキシド(1)がより好ましい。
本発明の希土類金属抽出剤としては、前記テトラホスフィンオキシド(1)をそのまま用いてもよいし、前記テトラホスフィンオキシド(1)を有機溶媒に溶解させたものを用いてもよい。特に、本発明の希土類金属抽出剤としては、前記テトラホスフィンオキシド(1)を有機溶媒に溶解させてなる溶液が好ましい。有機溶媒としては、後述する溶媒抽出法を効率よく実行できるものであればよく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ニトロベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒;オクタノール等の高級アルコール等が挙げられる。
これらの溶媒は、一種単独で又は二種以上の混合溶媒として使用できる。
前記溶液中におけるテトラホスフィンテトラオキシド(1)の濃度は、0.0001〜0.4mol/l程度が好ましく、0.001〜0.1mol/l程度がより好ましい。
前記抽出剤には、必要に応じて、公知の添加剤を含有させてもよい。前記添加剤としては、例えば、リン酸トリブチル等のトリアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
希土類金属抽出方法
本発明の希土類金属抽出方法は、希土類金属イオンを含む水溶液と前記希土類金属抽出剤とを接触させることにより、該水溶液から希土類金属イオンを抽出する方法である。本発明の抽出方法によれば、溶液(特に、水溶液)中の希土類金属(希土類金属イオン)を効率よく抽出できる。特に、本発明の抽出方法によれば、前記溶液のpHが6〜8程度(特にpHが7)の場合であっても、乳化現象を防止又は抑制しつつ、希土類金属を精度良く抽出できる。
本発明の抽出方法は、前記抽出剤を用いる以外は、公知の抽出方法に従って行えばよいが、例えば、下記工程(a)及び工程(b)を経る方法が好ましい。
工程(a):希土類金属を含む水溶液と前記希土類金属抽出剤とを接触させて混合液1を得ることにより、該混合液中の有機層に希土類金属イオンを抽出する工程。
工程(b):前記有機層を分離した後、前記希土類金属イオン含有水溶液よりもpHが低い酸性水溶液と、該有機層とを接触させて混合液2を得ることにより、該混合液2中の水層に希土類金属イオンを逆抽出する工程。
以下、かかる方法により希土類金属を抽出する場合について具体的に説明する。
工程(a)
工程(a)では、希土類金属を含む水溶液と前記希土類金属抽出剤とを接触させて混合液1を得ることにより、該混合液1中の有機層に希土類金属イオンを抽出する。
前記水溶液に含まれていてもよい希土類金属イオンとしては、Scイオン、Yイオン、Laイオン、Ceイオン、Prイオン、Ndイオン、Pmイオン、Smイオン、Euイオン、Gdイオン、Tbイオン、Dyイオン、Tbイオン、Dyイオン、Hoイオン、Erイオン、Tmイオン、Ybイオン及びLuイオンが挙げられる。これら希土類金属は一種単独で又は二種以上で含まれていてもよい。
前記水溶液中における希土類金属イオンの濃度は、0.00001〜0.4mol/l程度が好ましく、0.0001〜0.1mol/l程度がより好ましい。
前記水溶液には、Naイオン、Kイオン、Mgイオン等の希土類金属イオン以外の金属イオンが含まれていてもよい。本発明の抽出方法によれば、希土類金属イオン以外の金属が含まれる場合においても、希土類金属イオンを選択的に抽出することができる。
前記水溶液のpH値は、3〜7程度が好ましく、4〜7程度がより好ましい。
本発明の抽出方法では、前記水溶液のpH値を前記範囲内に設定するために、前記水溶液に酸または塩基を添加してもよい。酸としては、公知の無機酸及び有機酸を使用できる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、シュウ酸、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等が挙げられる。これらの酸は、一種単独で又は二種以上を併用して使用できる。酸の添加量は、前記水溶液が目的のpH値を示すように適宜調節すればよい。また、塩基としては、公知の無機塩基及び有機塩基を使用できる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。有機塩基しては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等が挙げられる。これらの塩基は、一種単独で又は二種以上を併用して使用できる。塩基の添加量は、前記水溶液が目的のpH値を示すように適宜調節すればよい。
前記抽出剤の添加量は、抽出対象の希土類金属イオン1molに対して1〜1000mol程度が好ましく、10〜500mol程度がより好ましい。前記抽出剤の添加量が、抽出対象の希土類金属イオン1molに対して10〜500mol程度である場合、希土類金属を効率よく抽出できる。
工程(a)では、例えば、前記水溶液に前記抽出剤を添加し混合液1を得た後、該混合液1を公知の分液操作に従って振盪させることにより、該混合液1中の有機層に希土類金属イオンを抽出することができる。
前記水溶液と前記抽出剤とを接触させる際、必要に応じて有機溶媒を添加してもよい。前記有機溶媒としては、上記希土類金属抽出剤の項にて示した溶媒を好適に使用できる。例えば、前記抽出剤が有機溶媒を含まない又は有機溶媒を少量しか含まない場合には、有機溶媒を添加することにより、工程(a)において有機層を好適に形成させ、希土類金属イオンを有機層中に効率よく抽出することができる。
工程(a)では、必要に応じて公知の添加剤を前記混合液1にさらに添加してもよい。公知の添加剤としては、例えば、リン酸トリブチル等のトリアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
前記混合液1の温度は、通常、0℃程度以上であり、好ましくは10℃程度以上である。前記温度の上限値は、通常、有機層中に含まれる有機溶媒の沸点より5℃程度低い温度であり、好ましくは、該有機溶媒の沸点より10℃程度低い温度である。
工程(b)
工程(b)では、工程(a)で有機層に希土類金属イオンを抽出した後、該有機層を分離し、工程(a)で使用した希土類金属イオン含有水溶液よりもpHが低い酸性水溶液と、分離した有機層とを接触させて混合液2を得ることにより、該混合液2中の水層に希土類金属イオンを逆抽出する。
前記有機層の分離は、分液操作により行えばよい。
前記酸性水溶液のpHは、1〜3程度が好ましく、1〜2程度がより好ましい。pH値が3程度以下の場合、希土類金属イオンを効率よく水層に逆抽出できる。
前記酸性水溶液は、水に公知の無機酸や有機酸を溶解させることにより調製できる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、シュウ酸、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等が挙げられる。これらの酸は、一種単独で又は二種以上を併用して使用できる。酸の添加量は、前記水溶液が目的のpH値を示すように適宜調節すればよい。
工程(b)では、例えば、前記有機層に前記酸性水溶液を添加し混合液2を得た後、該混合液2を公知の分液操作に従って振盪させることにより、該混合液2中の水層に希土類金属イオンを逆抽出することができる。
逆抽出後の水層から水を除去することにより、純粋な希土類金属を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
テトラホスフィンテトラオキシド(1)の合成
実施例1
(1)第一工程
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた200ml四ツ口フラスコにマグネシウム3.3g(0.136mol)、THF5gを仕込み、攪拌しながら、ハロゲン化物(2)に対応する4−ブロモ−1−ブテン18.0g(0.133mol)をTHF50.0gに溶解させた溶液を全体量の約1/30添加し、65℃まで加熱した。その後、残りのハロゲン化物(2)溶液を65℃〜70℃で1時間かけて滴下し、続いて、加熱還流下、3時間攪拌することにより、グリニャール反応剤を調製した。得られたグリニャール反応剤を窒素雰囲気下、100ml滴下漏斗に移送した。
次に、窒素雰囲気下、別途用意した攪拌機、温度計及び冷却器を備えた200ml四ツ口フラスコに、リン化合物(3)に対応するオキシ塩化リン6.4g(0.042mol)をTHF25.0gに溶解させた溶液を添加し内温を5℃まで冷却した。前記フラスコの内温を5〜25℃の範囲に維持しつつ、前記グリニャール反応剤を1時間かけて滴下し、25℃でそのまま2時間攪拌することにより、ホスフィンオキシド(4)に対応するトリス(3−ブテニル)ホスフィンオキシドを含む反応溶液を得た。
さらに、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた300ml四ツ口フラスコに水90g、硫酸0.4gを加え、攪拌しながら前記混合溶液を滴下した。その後、前記フラスコを内温90℃になるまで加熱することにより、前記フラスコ中の溶媒を常圧濃縮した。
その後、前記フラスコにトルエン100gを加えて有機層及び水層に分離した後、有機層をさらに5%重曹水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、有機層を減圧濃縮した。
得られた濃縮物をクーゲルロール蒸留装置で減圧蒸留(圧力267Pa、オーブン温度
170〜180℃)することにより、トリス(3−ブテニル)ホスフィンオキシド6.7g(0.031mol)を得た。収率は75%であった。
(2)第二工程
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた100ml四ツ口フラスコに、前記トリス(3−ブテニル)ホスフィンオキシド1.83g(8.62mmol)、リン化合物(5)に対応するジフェニルホスフィンオキシド5.23g(25.9mmol)、AIBN0.71g(4.3mmol)、トルエン20gを添加し、前記フラスコを内温75℃まで加熱し同温で24時間攪拌した。その後、攪拌しながら前記フラスコを30℃まで冷却し減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン、酢酸エチル)で精製し、テトラホスフィンテトラオキシド(1)に対応する化合物3.64g(4.45mmol)を得た。収率は52%であった。
結果を表1に示す。
実施例2〜10
実施例1の方法に準じて、表1の原料及び反応条件を採用することによりテトラホスフィンテトラオキシドを製造した。結果を表1−1及び表1−2に示す。
Figure 0005447804
Figure 0005447804
テトラホスフィンテトラオキシド配位子と希土類金属塩との反応組成物、及びその発光強度
<錯体の合成>
実施例11
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた100ml四ツ口フラスコに実施例1で合成した(1)に対応するテトラホスフィンテトラオキシド327mg(0.40mmol)、希土類錯体として硝酸ユーロピウム5水和物86mg(0.20mmol)、及びエタノール50gを仕込み、攪拌しながら加熱し、加熱還流下4時間反応させた。攪拌しながら30℃まで冷却し、ナス型フラスコに移してそのままエバポレーターで減圧濃縮した。その後、真空ポンプで減圧乾燥した。
以上の方法により、Eu原子一つに対してテトラホスフィンテトラオキシド配位子が二つ配位してなる希土類金属錯体を合成した(収量390mg、収率99%)。具体的に、得られた希土類金属錯体は、中心原子としてEuを一つ有し、Eu原子一つに対して、テトラホスフィンテトラオキシド配位子の酸素原子が合計八つ配位したものである。
実施例12
表2に記載のテトラホスフィンテトラオキシドと希土類金属塩を表2に記載の割合で用い、実施例11の方法に準じて反応し希土類金属錯体を合成した。得られた希土類金属錯体は、中心原子としてEuを一つ有し、Eu原子一つに対して、テトラホスフィンテトラオキシド配位子の酸素原子が合計八つ配位したものである。
比較例1〜2
表2に記載のホスフィンオキシド及び希土類金属塩を表2に記載の割合で用い、実施例
11の方法に準じて、希土類金属錯体を合成した。得られた希土類金属錯体は、いずれも中心原子としてEuを一つ有し、Eu原子一つに対して、ホスフィンオキシド配位子の酸素原子が合計八つ配位したものである。
実施例13
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた100ml四ツ口フラスコに実施例1で合成した(1)に対応するテトラホスフィンテトラオキシド327mg(0.40mmol)、希土類錯体として硝酸テルビウム5水和物87mg(0.20mmol)、及びエタノール50gを仕込み、攪拌しながら加熱し、加熱還流下4時間反応させた。攪拌しながら30℃まで冷却し、ナス型フラスコに移してそのままエバポレーターで減圧濃縮した。その後、真空ポンプで減圧乾燥した。
以上の方法により、Tb原子一つに対してテトラホスフィンテトラオキシド配位子が二つ配位してなる希土類金属錯体を合成した(収量390mg、収率99%)。具体的に、得られた希土類金属錯体は、中心原子としてTbを一つ有し、Tb原子一つに対して、テトラホスフィンテトラオキシド配位子の酸素原子が合計八つ配位したものである。
比較例3
表3に記載のホスフィンオキシド及び希土類金属塩を表3に記載の割合で用い、実施例
13の方法に準じて、希土類金属錯体を合成した。得られた希土類金属錯体は、いずれも中心原子としてTbを一つ有し、Tb原子一つに対して、ホスフィンオキシド配位子の酸素原子が合計八つ配位したものである。
<蛍光強度測定試験>
実施例11〜12及び比較例1〜2で得られた希土類金属錯体を、Eu濃度が2×10−5mol/lとなるように、それぞれクロロホルムに溶解させた。波長395nmの光で励起したときの前記試料の発光強度を室温下で測定した。測定には、分光蛍光光度計(商品名「F−7000」日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。なお、前記各試料の発光強度は、硝酸ユーロピウムのみを前記溶媒に溶解させた試料(Eu濃度2×10−5mol/l)の赤色発光強度を1とする相対値で示した。
結果を表2に示す。
Figure 0005447804
また、実施例13及び比較例3で得られた希土類金属錯体を、Tb濃度が2×10−5mol/lとなるように、クロロホルムに溶解させた。波長329nmの光で励起したときの前記試料の発光強度を室温下で測定した。なお、前記各試料の発光強度は、硝酸テルビウムのみを前記溶媒に溶解させた試料(Tb濃度2×10−5mol/l)の緑色発光強度を1とする相対値で示した。
結果を表3に示す。
Figure 0005447804
テトラホスフィンテトラオキシドによる希土類金属抽出
<希土類金属抽出試験>
実施例14
まず、Laを1×10−4mol/l含み、且つ、pH7のLa含有水溶液を調製した。前記pHは、水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより調整した。次いで、表4に示すテトラホスフィンテトラオキシドを含むクロロホルム溶液(濃度5×10−3mol/l)を調製後、前記La含有水溶液に前記クロロホルム溶液を該La含有水溶液と同体積混合し、25℃で30分間振とうさせることにより有機層中にLaイオンを抽出した。抽出後、層分離した水層のpHが7であることを確認した。
その後、水層に残存するLaイオンの濃度を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法で測定し、有機層中に抽出したLaイオンの割合(抽出率)を算出した。なお、ICP発光分光分析法での測定には、ICP発光分析装置(商品名「ULTIMA2」堀場製作所製)を用いた。
なお、表4中の抽出率は、下記式により算出した値である。
抽出率(%)=(層分離後の有機層中に存在するLaイオンのモル数/前記La含有水溶液中に含まれるLaイオンのモル数)×100
Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuについても、上記と同様の方法により水溶液を調製し、抽出率(%)を算出した。
結果を表4に示す。
実施例15
表4に記載のテトラホスフィンテトラオキシドを用いて、実施例14と同様の方法により各種希土類金属イオンの抽出率を算出した。
結果を表4に示す。
比較例4
テトラホスフィンテトラオキシドの代わりに、ジ(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸(以下、「D2EHPA」と略する)を用いる以外は、実施例14と同様の方法により希土類金属の抽出操作を行った。
しかしながら、抽出対象である希土類金属含有水溶液のpHが7の場合、希土類金属の種類にかかわらず、振とう後に全て乳化してしまい、希土類金属を抽出することができなかった。
Figure 0005447804
<逆抽出試験>
実施例16
実施例14において抽出されたEuを含む有機層に対して、pH2の塩酸水溶液を前記有機層と同体積加えた後、25℃で30分間振とうさせることにより、逆抽出を行った。その後、水層に含まれるEuイオンの濃度を実施例14と同様の方法で測定することにより、Euイオンの逆抽出率を算出した。
結果を表5に示す。
比較例5
まず、テトラホスフィンオキシドの代わりにD2EHPAを用い、さらにEu含有水溶液のpHを3.5に調整する以外は実施例14と同様の方法で抽出率を算出した。
次いで、抽出されたEuイオンを含む有機層に対して、実施例16と同様の方法で逆抽出を行い、逆抽出率を測定した。
結果を表5に示す。
なお、表5中の逆抽出率は、下記式により算出した値である。
逆抽出率(%)=(逆抽出後の水層中に存在するEuイオンのモル数/前記有機層中に含まれるEuイオンのモル数)×100
Figure 0005447804

Claims (8)

  1. 一般式:
    Figure 0005447804
    (式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基を、nは4〜8の整数を示す。)
    で表されるテトラホスフィンテトラオキシド。
  2. 希土類金属錯体の配位子である請求項1に記載のテトラホスフィンテトラオキシド。
  3. 請求項1のテトラホスフィンテトラオキシドを含む希土類金属抽出剤。
  4. 希土類金属イオンを含む水溶液と請求項に記載の抽出剤とを接触させることにより、該水溶液から希土類金属イオンを抽出する希土類金属抽出方法。
  5. 一般式:
    Figure 0005447804
    (式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基を、nは4〜8の整数を示す。)
    で表されるテトラホスフィンテトラオキシドの製造方法であって、
    触媒存在下、一般式:
    Figure 0005447804
    (式中、nは前記に同じ。)
    で表されるホスフィンオキシドと、一般式:
    Figure 0005447804
    (式中、R及びRは前記に同じ。)
    で表されるリン化合物及び/又は、一般式:
    Figure 0005447804
    (式中、R及びRは前記に同じ。)
    で表されるリン化合物とを反応させることを特徴するテトラホスフィンテトラオキシドの製造方法。
  6. 前記触媒が、ラジカル開始剤型触媒である、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記ホスフィンオキシド(4)が、一般式:
    Figure 0005447804
    (式中、Xはハロゲン原子を示し、nは前記に同じ。)
    で表されるハロゲン化物から調製される有機金属反応剤と、一般式:
    Figure 0005447804
    (式中Y、Y及びYは、それぞれ同一又は異なって、ハロゲン原子、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
    で表されるリン化合物とを反応させることにより得られる請求項又はに記載のテトラホスフィンテトラオキシドの製造方法。
  8. 前記有機金属反応剤がグリニャール反応剤である、請求項に記載の製造方法。
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