JP5447240B2 - マグネトロンスパッタリング装置および透明導電膜の製造方法 - Google Patents

マグネトロンスパッタリング装置および透明導電膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、透明導電膜を成膜するためのマグネトロンスパッタリング装置及びこのマグネトロンスパッタリング装置を用いた透明導電膜の製造方法に関し、特に、透明導電膜の膜厚分布および比抵抗分布の均一化を可能とし、かつ、これら均一な領域をターゲットの長尺方向長さに対して従来よりも拡大することを可能とするマグネトロンスパッタリング装置およびそのマグネトロンスパッタリング装置を用いた透明導電膜の製造方法に関する。
透明導電膜は、液晶ディスプレイなどの電子機器の透明電極として今や欠かせないものとなっている。使用されている透明導電膜の多くは、酸化インジウムにスズをドープしたITOである。ITOは、スズのドーピング効果によって、キャリヤ濃度が著しく高められ、低抵抗を実現している。
しかし、最近の電子機器が多岐にわたるのに伴って、用いられる透明導電膜への要求特性も多様化し、ITOでは満足できないケースが見られるようになってきた。近年、酸化インジウムにチタンをドープした新規な透明導電膜(In−Ti−O膜、以下ITiOと記す場合がある)が報告されている(例えば、特許文献1参照)。ITiOで特徴的な点は、著しく高いキャリヤ移動度である。この特性によりITOと同等の低抵抗が得られている。一方で、ITiOは、そのキャリヤ濃度が比較的低いため、赤外域において高い透過率を示す特徴を合わせ持っている。このようにITiOは、ITOと同等の低抵抗と可視〜赤外域での高い透過率を持ち合わせることから、太陽電池や光通信デバイス用の電極として有用であることが確認されている。
上記した透明導電膜の形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法などがよく用いられている。その中でも、スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料を用いて基材上に膜を形成する場合や、精密な膜厚制御が必要とされる場合に有効な手法であり、操作が非常に簡便であり、成膜の再現性がよいため、工業的に広範に利用されている。
スパッタリング法は、一般に、約10Pa以下のアルゴンガス圧のもとで、基材を陽極とし、ターゲットを陰極としてこれらの間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のターゲットに衝突させ、これによってターゲット成分の粒子をはじき飛ばし、該粒子を基材上に堆積させて成膜するというものである。
スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いるものは高周波スパッタリング法といい、直流プラズマを用いるものは直流スパッタリング法という。また、ターゲットの裏側にマグネットを配置してアルゴンプラズマをターゲット直上に集束させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法をマグネトロンスパッタリング法という。通常、上記の酸化物透明導電膜の製造法には直流マグネトロンスパッタリング法が採用されている。
マグネトロンスパッタリング装置では、成膜速度向上のためターゲット裏側にマグネットを配置し、磁場によってプラズマを高密度に集束させている。そのため、ターゲット上には強くスパッタリングされる部分、すなわちエロージョン部が形成される。エロージョン部では、ターゲット材(例えばIn等)とは別に、電界によって基材側に引っ張られたOイオンといった高速粒子が直線的に放出され、エロージョン部の直上に形成される膜には上記高速粒子が衝突し、それによってダメージを受ける。また、酸素の取り込量も多くなるため、形成される膜の特性は、エロージョン部と非エロージョン部では大きく異なったものとなる。以上のようなメカニズムから、マグネトロンスパッタリング装置を用いて透明導電膜を成膜する場合には、ターゲットのエロージョン部と基材の相対的位置関係によって、膜厚、比抵抗が不均一となる。その結果、膜厚、比抵抗が均一に成膜できる領域は、ターゲット中央部付近に限られ、一般的にターゲット長尺方向の長さに対して、30%から50%程度の領域となることが知られている。
透明導電膜の膜厚、比抵抗を均一化する手段として、ターゲットと基材の間の空間に、スパッタリング粒子の一部を遮蔽する補正板を配置して成膜する方法がある。この方法ではスパッタリング粒子の一部を遮蔽することから、ターゲット利用効率や成膜速度が低下してしまう問題があった。
特許文献2(特開平5−190032号公報)には、直流マグネトロンスパッタリング装置を用いたスパッタリング時に、ターゲットに生成するエロージョン部と基材との間に、該エロージョン部に対向するリング状遮蔽板を配置して、膜厚と抵抗値の分布が一様な透明導電膜を形成する方法が開示されている。マグネトロンスパッタリング装置において、スパッタリング粒子は、主にエロージョン部から放出されており、膜に損傷を与える高速粒子を遮蔽するために、エロージョン部のほぼ全面に遮蔽板を設置することは、膜形成に必要なスパッタリング粒子をも遮蔽することになり、ターゲット利用効率や成膜速度の低下を引き起こす問題があり、生産性向上の観点から好ましくない。
また、特許文献2には、丸型ターゲットを用いて静止した基材に成膜する方法についても示しているが、これを、平面形状が長方形の角型ターゲットを用いて、その幅方向に移動する基材に成膜する方法に適用することは容易ではない。
また、特許文献3(特開2000−96224号公報)には、マグネトロンスパッタリング装置において、角型ターゲットを用いて、移動する基材上に成膜する際に、ターゲットのエロージョン部から離れた、スパッタリングターゲットと対向する基材との間の空間に基材と接しない位置であって、かつ、ターゲットよりも基材側に近い位置に、基材と略平行に遮蔽板を設置することによって、良好な膜が得られることが開示されている。しかし、透明導電膜の成膜においては、エロージョン直上に形成される膜は高速粒子によって損傷を受けるため、エロージョン領域のみからのスパッタリング粒子を使って成膜することは好ましくない。
特許文献4(特開2001−123268号公報)には、マグネトロンスパッタリング装置において、移動する基材上に、丸型ターゲットを用いてAZO膜あるいはITO膜を成膜する場合が開示されている。スパッタリング時に、ターゲットに生成するエロージョン部から放たれる粒子のうち、その粒子の飛行軌跡の、ターゲット面に対する角度が80degを超える粒子を遮蔽することで、高透明性で低抵抗な膜が得られることが開示されている。上記スパッタリング方法は、電子写真感光体などの幅が狭い基材を対象としたものであり、幅の広い基材に対しては複数のターゲットを用いることとしており、装置構成が複雑になり、装置も高価なものとなってしまう。また、ターゲット面の垂直上方面のほとんどを遮蔽することは、ターゲット利用効率や成膜速度の低下を引き起こす結果となり、生産性向上の観点から好ましくなかった。
以上のように、透明導電膜の成膜において、膜厚分布及び比抵抗分布の均一化を目的とした補正板は、ターゲットの利用効率や成膜速度が低下してしまう問題があり、これを解決する方法は未だ得られていない。
特開2004−207221号公報 特開平5−190032号公報 特開2000−96224号公報 特開2001−123268号公報
本発明は、上記事情に鑑み、マグネトロンスパッタリング装置を用いた透明導電膜の成膜において、膜厚分布および比抵抗分布の均一化を可能とし、かつ、均一な領域をターゲットの長尺方向の長さに対して従来よりも拡大することを可能とする透明導電膜を成膜するためのマグネトロンスパッタリング装置および透明導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、角型ターゲットに対向し、該ターゲットの長尺方向に対して垂直方向に移動する基材に、透明導電膜を成膜できるマグネトロンスパッタリング装置において、各種の補正板を用いて、得られる透明導電膜の膜厚分布、比抵抗分布について調査を行ったところ、該角型ターゲットに形成されたエロージョン領域から放出されるスパッタリング粒子の一部を選択的に遮蔽する構造を有する補正板を用いることによって、膜厚および膜の比抵抗の均一化を可能とし、かつ、均一な領域をターゲットの長尺方向の長さに対して従来よりも拡大することを可能とするマグネトロンスパッタリング装置ならびに透明導電膜の製造方法を見出し、本発明に至った。
上記目的を達成するための本発明のマグネトロンスパッタリング装置は、平面形状が長方形の角型ターゲットに対向して該ターゲットの幅方向に移動する基材に、該ターゲットを用いて透明導電膜を成膜するマグネトロンスパッタリング装置において、
(1)前記ターゲットの面に対して所定角度以下の角度で放出されるスパッタリング粒子が前記基材に到達しないように遮蔽する補正板を備えたことを特徴とするものである。
ここで、上記目的を達成するための本発明の他のマグネトロンスパッタリング装置は、平面形状が長方形の角型ターゲットに対向して該ターゲットの幅方向に移動する基材に、該ターゲットを用いて透明導電膜を成膜するマグネトロンスパッタリング装置であって、
(2)前記角型ターゲットのうち他の部分よりも強くスパッタリングされるエロージョン部から放出されたスパッタリング粒子の一部が前記基材に到達しないように遮蔽する補正板を備えたことを特徴とするものである。
ここで、前記エロージョン部は、
(3)前記角型ターゲットの長手方向に互いに平行に延びる2本の直線状部と、
(4)この2本の直線状部の長手方向両端部それぞれをつないだ2つの円弧状部とからなるレーストラック状のものであり、
(5)前記補正板は、前記2本の直線状部のうち幅方向の外側部分を覆う外側遮蔽部と、前記円弧状部の円弧方向中央部を覆う中央遮蔽部と、前記角型ターゲットのうち前記エロージョン部ではない四隅部分を覆う四隅遮蔽部とを備えたものであってもよい。
また、前記補正板は、
(6)前記外側遮蔽部、前記中央遮蔽部、及び前記四隅遮蔽部で囲まれた開口部を有し、
(7)該開口部は、前記補正板の上方から見て、前記エロージョン部のうち2本の直線状部の内側部分と2つの円弧状部をつなぐ4つの部分を露出させているものであってもよい。
さらに、前記補正板は、
(8)前記角型ターゲットと前記基材の間でこれら両者に対して略平行に配置されると共に、前記角型ターゲットから前記基材までの距離に対して前記角型ターゲットからの距離が20%以上である位置に配置されたものであってもよい。
さらにまた、
(9)前記補正板と前記ターゲットの間であって該補正板の前記中央遮蔽部と前記四隅遮蔽部の直下に、該補正板に固定された支持部材により保持されて配置された、前記中央遮蔽部に略同面積の板状補助中央遮蔽部材と前記四隅遮蔽部に略同面積の板状補助四隅遮蔽部材とを備えてもよい。
また、上記目的を達成するための本発明の透明導電膜製造方法は、平面形状が長方形の角型ターゲットに対向して該ターゲットの幅方向に移動する基材に、マグネトロンスパッタリング装置を用いて透明導電膜を形成する透明導電膜製造方法において、
(10)前記ターゲットの面に対して所定角度以下の角度で放出されるスパッタリング粒子が前記基材に到達しないように遮蔽することを特徴とするものである。
ここで、上記目的を達成するための本発明の他の透明導電膜製造方法は、平面形状が長方形の角型ターゲットに対向して該ターゲットの幅方向に移動する基材に、マグネトロンスパッタリング装置を用いて透明導電膜を形成する透明導電膜製造方法は、
(11)前記角型ターゲットのうち他の部分よりも強くスパッタリングされるエロージョン部から放出されたスパッタリング粒子の一部が前記基材に到達しないように遮蔽することを特徴とするものである。
また、前記エロージョン部は、
(12)前記角型ターゲットの長手方向に互いに平行に延びる2本の直線状部と、
(13)この2本の直線状部の長手方向両端部それぞれをつないだ2つの円弧状部とからなるレーストラック状のものであり、
(14)前記スパッタリング粒子の一部が前記基材に到達しないように遮蔽する際に、前記2本の直線状部のうち幅方向の外側部分を覆う外側遮蔽部と、前記円弧状部の円弧方向中央部を覆う中央遮蔽部と、前記角型ターゲットのうち前記エロージョン部ではない四隅部分を覆う四隅遮蔽部とを備えた補正板を使用してもよい。
ここで、
(15)前記補正板は、前記外側遮蔽部、前記中央遮蔽部、及び前記四隅遮蔽部で囲まれた開口部を有し、
(16)該開口部は、前記補正板の上方から見て、前記エロージョン部のうち2本の直線状部の内側部分と2つの円弧状部をつなぐ4つの部分を露出させているものであってもよい。
さらに、
(17)前記角型ターゲットと前記基材の間でこれら両者に対して略平行に前記補正板を配置すると共に、前記角型ターゲットから前記基材までの距離に対して前記角型ターゲットからの距離が20%以上である位置に前記補正板を配置しておいてもよい。
さらにまた、
(18)前記補正板と前記ターゲットの間であって該補正板の前記中央遮蔽部と前記四隅遮蔽部の直下に、該補正板に固定された支持部材によって保持されて配置された、前記中央遮蔽部に略同面積の板状補助中央遮蔽部材と前記四隅遮蔽部に略同面積の板状補助四隅遮蔽部材とを使用して成膜してもよい。
本発明のマグネトロンスパッタリング装置は、平面形状が長方形状の角型ターゲットに対向し、このターゲットの長尺方向に対して垂直方向(このターゲットの幅方向)に移動する基材に、このターゲットを用いて透明導電膜を成膜することができる。また、基材上に成膜された透明導電膜の、この基材の移動方向に直交する方向(ターゲットの長手方向)における膜厚分布及び比抵抗分布において、相対標準偏差が2%以下となる領域を、このターゲットの長尺方向の長さに対して60%以上となるように、このターゲットのエロージョン領域から放出されるスパッタリング粒子の一部を遮蔽することができる補正板を本発明のマグネトロンスパッタリング装置は備えている。
この結果、本発明のマグネトロンスパッタリング装置では、膜厚分布および比抵抗分布の均一化を可能とし、かつ、均一な領域をターゲットの長尺方向の長さに対して従来よりも拡大(長く)することが可能となる。従って、従来よりも大型の基材に成膜することや、従来よりも一度に多くの基材に成膜することが可能となることから、透明導電膜を安価に製造することができる。また、膜厚および比抵抗の分布が均一で、さらに低抵抗な透明導電膜を製造できることから、優れた透明導電膜として液晶ディスプレイなどの電子機器の透明電極に利用でき、工業的に有用である。
本発明のマグネトロンスパッタリング装置の全体を示す概略図である。 角型ターゲットが配置されるカソード内部のマグネット配置を示す概略図(上面図)である。 角型ターゲットに形成されたエロージョン領域の形状を示す概略図(上面図)である。 補正板などを使用しない場合における基材の進行方向に直交する方向の膜厚分布、および比抵抗分布を示す図である。 一般的な補正板を使用した場合における基材の進行方向に直交する方向の膜厚分布、および比抵抗分布を示す図である。 遮蔽部を拡大した補正板を使用した場合における基材の進行方向に直交する方向の膜厚分布、および比抵抗分布を示す図である。 本発明の補正板を使用した場合における基材の進行方向に直交する方向の膜厚分布、および比抵抗分布を示す図である。 一般的な補正板の形状を示す概略図(上面図)である。 膜厚分布と比抵抗分布を同時に改善する目的で遮蔽部を拡大した補正板の形状を示す概略図(上面図)である。正板の形状を示す概略図(上面図)である。 本発明の補正板の形状を示す概略図(上面図)である。 本発明の補正板と補助遮蔽部材の形状を示す概略図(斜視図)である。 膜厚分布と比抵抗分布の均一性を表す図である。
本発明のマグネトロンスパッタリング装置は、ターゲットのエロージョン領域(部)から放出されるスパッタリング粒子の一部を遮蔽する構造を有する補正板を、ターゲットと基材の間の空間に備えている。本発明のマグネトロンスパッタリング装置では、この補正板によって、平面形状が長方形の角型ターゲットに対向し、このターゲットの長尺方向に対して垂直方向に(このターゲットの幅方向に)移動する基材に、該ターゲットを用いて透明導電膜を成膜することができる。上記のようにターゲットと基材の間の空間に補正板を配置することにより、基材上に成膜された透明導電膜の、この基材の進行方向に直交する方向の膜厚分布および比抵抗分布において、相対標準偏差が2%以下となる領域を、該ターゲットの長尺方向の長さに対して60%以上となるようにできる。また、上記の構成とすることによって、膜厚分布および比抵抗分布の均一化を可能とし、かつ、均一な領域をターゲットの長尺方向の長さに対して従来よりも拡大することが可能となる。
1.マグネトロンスパッタリング装置
図1を参照して、本発明のマグネトロンスパッタリング装置の一例を説明する。図1は、本発明のマグネトロンスパッタリング装置の全体構成を示す概略図である。
本発明のマグネトロンスパッタリング装置1では、真空に排気できる成膜室3に配置されたカソード上に角型ターゲット7が配置されており、膜が形成される基材6は、ターゲット7の長尺方向に対して垂直方向(矢印H方向であり、ターゲット7の幅方向)に移動し、ターゲット7に対向する領域付近を通過しているときに成膜される(図1参照)。
本発明のマグネトロンスパッタリング装置1は、基材6を移動させながら成膜できるものであればよく、本発明を適用できるスパッタリング装置の形式には、インライン式、インターバック式、リターンバック式、カルーセル式、巻き取り式などが挙げられる。
本発明のスパッタリング装置では、成膜速度向上のためマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜する。マグネトロンスパッタリング法では、上記角型ターゲット7が配置されるカソード内部にマグネットを含む磁気回路が構成され、該角型ターゲット7の表面に発生するプラズマを磁場によって高密度に集束させて、局所的に強くスパッタリングされる領域を形成し、成膜速度の向上を図っている。上記カソードは、成膜室とは電気的に絶縁され、スパッタリング電源と接続されている。スパッタリング電源は、DC(直流)電源あるいは13.56MHzなどの工業用電源周波数のRF(高周波)電源が用途に応じて使用される。
強くスパッタリングされる領域はマグネットの配置や磁力の強さに依存する。本発明のマグネトロンスパッタリング装置においては、マグネットの配置が、図2に示すようにカソード中央にS極9が配置され、それを取り囲むようにN極10が配置されている。このようにマグネットが配置されたカソードでは、強くスパッタリングされる領域は、ターゲット7の長尺方向に平行に形成された2本の直線部の両端が弧状部でつながれたレーストラック状の形状となる(図3の黒い太線で示す部分11)。このように強くスパッタリングされる領域を、本発明ではエロージョン部(領域)11と記す。
2.基材
マグネトロンスパッタリング装置1においては、膜が形成される基材6が角型ターゲット7に対向し、ターゲット7の長尺方向に対して垂直方向(すなわち、角型ターゲット7の幅方向、矢印H方向)に移動し、基材6がターゲット7に対向する領域付近を通過しているときに基材6上に成膜される。
基材6としては、ガラス、金属、合成樹脂などが使用できる。基材6が、ガラス、金属などの場合やシート状の合成樹脂フィルムの場合は、基材6を支持部材(図示せず)に固定、あるいはトレイ状などの基材搬送部材(図示せず)に設置して、支持部材あるいは基材搬送部材をターゲット7の長尺方向に対して垂直方向に移動させながら成膜する。また、長尺の合成樹脂フィルムなどの場合は、巻き出し巻き取りロールによってターゲット7の長尺方向に対して垂直方向に搬送させながら成膜する。
3.ターゲット
本発明のマグネトロンスパッタリング装置1(図1参照)では、ターゲットとして、平面形状が長方形の角型ターゲットを用いて透明導電膜を成膜する。
上記透明導電膜としては、酸化物透明導電膜であればよく、たとえばITO(錫ドープ酸化インジウム)、ITiO(チタン添加酸化インジウム)、GIO(ガリウム添加酸化インジウム)、IWO(タングステン添加酸化インジウム)などが挙げられるが、透明性、導電性を有する酸化物膜であれば良く、酸化物透明導電膜に限定されるものではない。
上記した透明導電膜を形成するために用いられるターゲットとしては、構成する元素が含まれているものであればよく、金属酸化物の焼結体からなる金属酸化物ターゲット、または金属ターゲットを用いることが好ましい。このうち、膜の組成制御の容易さなどから金属酸化物ターゲットを用いることが好ましい。用いるターゲットが金属ターゲットの場合は、スパッタリングガスに酸素を導入する反応性スパッタリングによって透明導電膜を形成する。金属酸化物ターゲットの場合は、スパッタリングガスへの酸素導入は必要に応じて行われるが、少量の酸素を導入することにより良質な透明導電膜を形成できる。
4.補正板
本発明のマグネトロンスパッタリング装置1(図1参照)を使用して、上記した角型の金属酸化物ターゲット7を用いて、基材6をこのターゲット7の長尺方向に対して垂直方向に(即ち、基材6をターゲット7の幅方向に)移動させながら透明導電膜を基材上に形成する場合、補正板8を使用しないときは、基材6の搬送方向に直交する方向に対して、膜厚分布が、ターゲットの長尺方向の中央付近に対応する部分(長尺方向中央部分)で厚くなる傾向があることが判明している(図4参照)。また、比抵抗分布は、膜厚分布と逆の傾向を示し、ターゲットの長尺方向の中央付近に対応する部分で低くなることが判明している(図4参照)。
この不均一な膜厚分布を改善するために用いられる方法として補正板8を使用するのであり、膜厚の厚くなる部分に対応するターゲット18の長尺方向の中央付近を遮蔽する補正板8をターゲット18と基材6の間の空間に配置して成膜する方法が一般的である。例えば、図8に示すような補正板8を用いて、膜厚の厚くなる部分に対応するターゲット18の長尺方向Lの中央付近LCを遮蔽して成膜した場合、膜厚分布を均一にすることは可能であるが、比抵抗分布については、ターゲット18の長尺方向の両端部付近で逆に悪化してしまうことがある(図5参照)。
膜厚分布と比抵抗分布を同時に改善するには、補正板の遮蔽面積をさらに拡大することが必要である。しかしながら、図9のような補正板19を用いて成膜した場合、膜厚分布のみを均一化する場合に比べて、均一に成膜できる領域が縮小してしまう(図6参照)。
本発明のマグネトロンスパッタリング装置で用いられる角型ターゲットのエロージョン部(領域)は、図3に示すように、ターゲット7の長尺方向(長手方向)Lに互いに平行に延びる2本の直線状部11−1,11−2と、この2本の直線状部の長手方向両端部それぞれをつないだ2つの円弧状部12−1,12−2からなるレーストラック状となる。この理由は、上記したように、本発明のマグネトロンスパッタリング装置においては、マグネットの配置が、図2に示すようにカソード中央にS極9が配置され、それを取り囲むようにN極10が配置されたカソードであるからであり、この結果、強くスパッタリングされる領域(部分)は、ターゲット7の長尺方向Lに平行に形成された2本の直線状部11−1,11−2の両端が円弧状部でつながれたレーストラック状の形状となる(図3参照)。
図10は、本発明の補正板の一例である。この補正板28は、平面形状が長方形の角型ターゲット7に形成されたエロージョン領域(部)の2本の直線状部11−1,11−2のうち幅方向(W方向)の外側部分Aを覆う外側遮蔽部Aと、円弧状部12−1,12−2の円弧方向中央部Bを覆う中央遮蔽部Bと、角型ターゲット7のうちエロージョン部ではない四隅部分Cを覆う四隅遮蔽部Cとを備えたものである。
補正板28は、外側遮蔽部A、中央遮蔽部B、及び前記四隅遮蔽部Cで囲まれた開口部28aを有し、この開口部28aは、補正板28の上方から見て、エロージョン部のうち2本の直線状部11−1,11−2の内側部分と2つの円弧状部12−1,12−2をつなぐ4つの部分を露出させている。このような補正板28を用いることにより、膜厚分布と比抵抗分布を同時に均一化し、かつ、均一に成膜できる領域を拡大することを可能としている。
補正板28が配置される位置について説明する。
補正板28は、角型ターゲット7と基材との間でこれら両者に対して略平行に配置される。且つ、角型ターゲット7から基材までの距離に対して角型ターゲット7からの距離が20%以上である位置に配置されることが好ましい。ターゲット7からの距離が20%未満では、補正板28を通過したスパッタリング粒子が、基材に到達するまでに拡散してしまい、膜厚分布や比抵抗分布を改善する効果が低下する。また、異常放電を引き起こす場合もあり、好ましくない。
また、図11に示すように、補正板28とターゲット7の間における、補正板28の中央遮蔽部B及び前記四隅遮蔽部Cの直下に、補正板28に固定された支持部材(図示せず)により保持されて配置された、中央遮蔽部B及び前記四隅遮蔽部Cとそれぞれ略同面積の補助遮蔽部材B’と補助遮蔽部材C’を備える構造にすることで、遮蔽部の面積を必要以上に広くすることなく、膜の比抵抗を悪化させるスパッタリング粒子を遮蔽することができ、均一に成膜できる領域を拡大することが可能となった(図7参照)。
膜厚分布の均一化については、角型ターゲットに形成されたエロージョン領域の2本の直線状部11−1,11−2のそれぞれの一部の領域を遮蔽することで可能である。
膜厚分布と比抵抗分布の均一性を両立し、かつ、均一に成膜できる領域を拡大するための補正板の形状は、分布を均一にするために必要な遮蔽面積を持ち、かつ、基材の進行方向に直交する方向の露出面積を広くする必要がある。
比抵抗分布の均一性を、膜厚分布と両立させることが可能な補正板28の遮蔽部の形状を決定するため、補正板28を使用せずに基材をターゲットに対向する位置に静止させて成膜し、成膜面を縦横1cm間隔に区切って膜の比抵抗を調べた。その結果、スパッタリング粒子が膜の比抵抗に与える影響は、ターゲット面の位置ごとに異なることがわかった。上記結果から比抵抗に対して悪影響を与えている位置を特定し、その部分を選択的に遮蔽するように、補正板28の遮蔽部形状を決定した。すなわち、上記の角型ターゲット7に形成されたエロージョン領域の2つの弧状部のターゲット7の短尺方向の中心線を含む領域を遮蔽し、エロージョン領域の直線部と弧状部をつなぐ4つの領域を露出させ、かつ、これらの露出領域のうち、ターゲット7の四隅付近を遮蔽する構造とすることで、膜厚分布と比抵抗分布を同時に均一化し、かつ、均一に成膜できる領域を拡大することを可能としている。
マグネトロンスパッタリング装置では、スパッタリング粒子は、ある程度の広がりを持って放出され、基板に堆積していく。この放出されるスパッタリング粒子のうち、ターゲットの面に対して低角度で放出されるスパッタリング粒子は、膜の比抵抗を悪化させる場合があるので、より比抵抗分布を均一にするためにはスパッタリング粒子の放出される角度についても考慮して遮蔽板を作製する必要がある。
本発明においては、補正板28のターゲットに対向する面側に、補助遮蔽部材を配置することで上記目的を満たすことができる。すなわち、ターゲット7に形成されたエロージョン領域の2つの円弧状部の、ターゲットの短尺方向の中心線を含む領域の遮蔽部と、ターゲットの四隅付近の遮蔽部のターゲットに対向する面側に、補助遮蔽部材を配置する構造とすることで、遮蔽部の面積を必要以上に広くすることなく、膜の比抵抗を悪化させるスパッタリング粒子を遮蔽することができ、均一に成膜できる領域を拡大することが可能となる。上記補助遮蔽部材は、補正板28の直下に補正板28から吊り下げるように、補正板28に固定されて配置されていればよい。
また、補助遮蔽部材は、ターゲット7との距離を短くする必要があるため、補助遮蔽部材のターゲット7に対向する面側が突起状などの構造となっていると異常放電を引き起こす場合があるため、異常放電防止の観点から、ターゲットに対向する面側をターゲット面に平行な平らな構造とすることが好ましい。
膜厚分布や比抵抗分布は、ターゲットの材質や成膜条件などによって変化するため、補正板の遮蔽部の形状は、膜厚分布や比抵抗分布が相対標準偏差で2%以下となるように適時変更すればよい。補正板28は、ターゲット7の材質や成膜条件などに合わせて専用の物を作製しても良いし、形状を変更できる構造として多種の材質のターゲットに適用しても良い。形状を変更できる補正板の例としては、遮蔽部を短冊状に区切りそれぞれ個別に伸縮できる構造とすることで、遮蔽部の遮蔽形状を細かく調節することできる構造が例示される。
補正板28や補助遮蔽部材の材質は、耐熱性があり脱ガスの少ない材料が好ましく、たとえばステンレス、アルミニウムなどの金属や耐熱性のある合成樹脂が利用できる。
補正板28や補助遮蔽部材の表面は、成膜を重ねることによって膜の堆積が進む。この堆積した膜が成膜中に剥がれることによる成膜室内の汚染や、剥がれた膜がターゲットに付着することによって引き起こされる異常放電や成膜不良を防ぐために、定期的に補正板28を交換、あるいは洗浄などのメンテナンスが必要である。また、補正板28の表面をブラスト処理などによって梨地に加工することで、堆積した膜が剥がれ難くなり、メンテナンス周期の延長を図ることができる。
5.透明導電膜の製造方法
本発明の透明導電膜は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置1(図1参照)を用いて、マグネトロンスパッタリング法によって成膜される。
スパッタリング法により透明導電膜を成膜する場合のスパッタリング条件は、ターゲットの組成、用いる装置の特性などによって変わってくるために、一概に規定することは困難であるが、金属酸化物ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法で成膜する場合は、例えば下記のように設定することが好ましい。
まず、成膜室3(図1参照)を排気し、その後、成膜室3にスパッタリングガスを導入する。スパッタリング時のガス圧は、ターゲットの組成、用いる装置の特性などによって変わってくるため、特に限定されないが、一般的には、0.01Pa〜5Pa、好ましくは0.1Pa〜1.0Paが好ましい。ガス圧が0.01Pa未満では、スパッタリング粒子の運動エネルギーが高すぎて、スパッタリング粒子による膜へのダメージが大きく良質な透明導電膜が得られない。また、5.0Paを超えると、基材に到達するときのスパッタリング粒子の運動エネルギーが低すぎて膜の密度が低下したり、成膜速度が低下したりするため好ましくない。
スパッタリングガスには、アルゴン等の不活性ガス、または、アルゴン等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。アルゴン等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いる場合、混合ガス中の酸素ガスの比率は、体積比で0.5%〜2.5%が好ましい。0.5%〜2.5%の範囲外では、透明でかつ比抵抗の小さい透明導電膜を得ることができない。
スパッタリング時の投入電力は、ターゲットの組成、用いる装置の特性などによって変わってくるため、特に限定されないが、一般的には、0.2W/cm〜2.0W/cmが好ましい。0.2W/cm未満では、良質な膜が得られなかったり、成膜速度が低下したりするため好ましくない。また、2.0W/cmを超えると、製造コストが上昇するため、好ましくない。
得られる透明導電膜の目的用途により結晶性(結晶質膜、あるいは非晶質膜)を制御する必要があり、膜の結晶性を制御するため、基材温度は、基材の耐熱性も考慮して、該基材が熱により変形や変質を起こさない範囲内で適宜選択される。基材温度を高温に加熱するにしたがって製造コストが上昇するため、室温〜300℃の範囲で行うことが好ましい。
基材とターゲット間の距離は、スパッタリング粒子による膜へのダメージ、成膜速度等を考慮して適宜選択される。例えば、12.7cm×38.1cmサイズのターゲットを用いる場合は、基材からターゲットまでの距離は40〜100mmが好ましい。40mm未満では、スパッタリング粒子による膜へのダメージが大きくて良質な膜が得られない。また、100mmを超えたときは、成膜速度が低下するため好ましくない。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、透明導電膜の諸特性は、下記の方法により測定した。
膜厚は、段差計(KLA−Tencor製Alpha−Step IQ)を使用して測定した。
膜の比抵抗は、抵抗率計(三菱化学製Loresta−EP MCP−T360)を使用して、四端子法により測定した。
膜厚分布、ならびに比抵抗分布の評価は、成膜した基板の進行方向に直交する方向に対して、1cmごとに膜厚、ならびに比抵抗を測定し、膜厚分布、比抵抗分布を求め、それぞれの相対標準偏差が2%以下となる領域を均一領域と定義し、長さと、ターゲットの長尺方向の長さに対する割合で表した。
(実施例1)
この実施例1では、請求項1の補正板を使用した例を示す。
補正板28は、図10に示すように、角型ターゲットに形成されたエロージョン部(領域)の2本の直線状部のそれぞれの一部の領域を遮蔽する2つの遮蔽部Aと、上記角型ターゲットに形成された該エロージョン領域の2つの円弧状部の、ターゲットの短尺方向の中心線を含む領域を遮蔽する2つの遮蔽部Bと、該ターゲットの四隅付近を遮蔽する4つの遮蔽部CがA−C−B−C−A−C−B−C−Aの順に連結して形成されており、中央に開口部を有し、かつ、開口部は、補正板28の上部から見て、エロージョン部(領域)の直線部と円弧状部をつなぐ4つの領域を露出させている形状(構造)である。補正板28は、厚さ2mmのSUS304を用い、その表面にはブラスト処理が施されている。
InにTiOを0.5wt%添加した焼結体ターゲット(12.7cm×38.1cm×6mmtの形状、住友金属鉱山(株)製)を、In系合金を用いて無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングしたものをスパッタリング用ターゲットとして用いた。
インターバック式マグネトロンスパッタリング装置(ULVAC製SIH−3030)のカソードに上記スパッタリング用ターゲットを配置した。上記の補正板28をターゲット面に対向させて基板との距離が20mmになる位置に配置した。基板は50mm×297mm×1.1mmtの形状に加工したガラス基板(コーニング社製1737)を用い、ターゲット面と平行になるように基材搬送部材に設置した。
成膜条件は、スパッタリングガスをアルゴンガスと酸素ガスとを混合した混合ガスとし、酸素ガスの比率を体積比で0.5%とした。ガス圧を0.6Pa、投入電力はDC200W、ターゲット−基板間距離を65mmとした。成膜室の真空度が2.0×10−4Paに到達した後、ガラス基板が設置された基板搬送部材をターゲットの長尺方向に対して垂直方向に毎分25mmの速度で移動させながら、上記の成膜条件によってガラス基板上に室温で透明導電膜を成膜し、成膜後、真空度を2.0×10−4Pa以下に保った成膜室内で、300℃で30分間加熱処理を施した。膜厚は、基板中央部が約150nmであった。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が63%、比抵抗分布の均一領域が63%を示した。
(実施例2)
この実施例2では、請求項3の補正板を使用した例を示す。
補正板の形状を実施例1の補正板28と同じにしておき、この補正板28とターゲットの間の、補正板28の中央遮蔽部Bと四隅遮蔽部Cの直下に、補正板28に固定された支持部材(図示せず)により保持された、中央遮蔽部Bと四隅遮蔽部Cとそれぞれ略同面積の補助遮蔽部材B’と補助遮蔽部材C’が配置されている構造とした。これらの全体構成の概略図を図11に示す。他の点については実施例1と同様にして、基板中央部の膜厚が約150nmの透明導電膜を得た。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が63%、比抵抗分布の均一領域が74%を示した。
(実施例3)GIOの場合
この実施例3では、請求項1の補正板を使用した例を示す。
スパッタリング用ターゲットを、InにGaを原子数比で50%添加した焼結体ターゲット(12.7cm×38.1cm×6mmtの形状、住友金属鉱山(株)製)とした以外は実施例1と同様にして、基板中央部の膜厚が約150nmの透明導電膜を得た。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が63%、比抵抗分布の均一領域が63%を示した。
(実施例4)GIOの場合
この実施例4では、請求項3の補正板を使用した例を示す。
スパッタリング用ターゲットを、InにGaを原子数比で50%添加した焼結体ターゲット(12.7cm×38.1cm×6mmtの形状、住友金属鉱山(株)製)とした以外は実施例2と同様にして、基板中央部の膜厚が約150nmの透明導電膜を得た。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が63%、比抵抗分布の均一領域が68%を示した。
(比較例1)補正板を使用しない例
補正板を使用しない以外は実施例1と同様にして、基板中央部の膜厚が約180nmの透明導電膜を得た。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が42%、比抵抗分布の均一領域が26%を示した。
(比較例2)従来の一般的な補正板(膜厚分布は均一、比抵抗分布はかえって悪化)
補正板の形状を、角型ターゲットに形成されたエロージョン領域の2本の直線部のそれぞれの一部の領域を遮蔽する構造とした。補正板の概略図を図8に示す。それ以外は実施例1と同様にして、基板中央部の膜厚が約150nmの透明導電膜を得た。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が68%、比抵抗分布の均一領域が10%を示した。
(比較例3)左右遮蔽(均一だが、均一領域が狭い例)
補正板の形状を、図9に示すように、上記の角型ターゲットに形成されたエロージョン部の2本の直線状部のそれぞれの一部の領域(外側の一部分)と、上記の角型ターゲットに形成されたエロージョン部の2つの円弧状部を遮蔽する構造とした。それ以外の点は実施例1と同様にして、基板中央部の膜厚が約150nmの透明導電膜を得た。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が37%、比抵抗分布の均一領域が47%を示した。
(比較例4)補正板を使用しない例(GIOの場合)
スパッタリング用ターゲットを、InにGaを原子数比で50%添加した焼結体ターゲット(12.7cm×38.1cm×6mmtの形状、住友金属鉱山(株)製)とした以外は比較例1と同様にして、基板中央部の膜厚が約200nmの透明導電膜を得た。
得られた膜は、図12に示すように膜厚分布の均一領域が26%、比抵抗分布の均一領域が21%を示した。
「評価」
実施例1は、補正板を使用しない比較例1に比べて、膜厚分布、比抵抗分布ともに均一領域が拡大し、本発明の効果が確認された。また、実施例2では、実施例1と比べて、補正板に加えて補助遮蔽部材を使用することによって、比抵抗分布の均一領域が拡大している。また、膜厚分布の均一領域については、長さは同等であるが、均一領域の相対標準偏差が小さくなり、均一性が向上している。補正板に加えて補助遮蔽部材を使用することによって、さらに優れた分布の改善効果が得られることがわかる。
実施例3、4、比較例4はGIOターゲットを用いた例で、実施例1、2、比較例1はITiOターゲットを用いた例である。補正板を使用しない比較例1と比較例4は、膜厚分布、比抵抗分布が悪いが、比較例1と比較例4を比べると比較例4の方が膜厚分布と比抵抗分布の均一性を得ることがより難しいことがわかる。本発明の補正板と補助遮蔽部材を使用した実施例1、2、3、4はいずれも膜厚分布、比抵抗分布の均一領域が拡大し、ターゲットの種類が異なっても同様の優れた分布の改善効果が得られることがわかる。また、補正板を使用しない比較例1と比較例4に比べて、本発明の補正板と補助遮蔽部材を使用した実施例1、2、3、4は、いずれも比抵抗が低く、より優れた透明導電膜を製造できることがわかる。
1 マグネトロンスパッタリング装置
6 基材
7,18 ターゲット
8,19,28 補正板
11−1,11−2 2本の直線状部
12−1,12−2 円弧状部
A 外側遮蔽部
B 中央遮蔽部
B’,C’ 補助遮蔽部材
C 四隅遮蔽部
L ターゲットの長尺方向
W ターゲットの幅方向

Claims (6)

  1. 平面形状が長方形の角型ターゲットに対向して該ターゲットの幅方向に移動する基材に、該ターゲットを用いて透明導電膜を成膜するマグネトロンスパッタリング装置において、
    前記角型ターゲットの長手方向に互いに平行に延びる2本の直線状部と、
    この2本の直線状部の長手方向両端部それぞれをつないだ2つの円弧状部とからなるレーストラック状のエロージョン領域のうち、
    前記2本の直線状部のうち幅方向の外側部分を覆う遮蔽部Aと、前記円弧状部の円弧方向中央部を覆う遮蔽部Bと、前記角型ターゲットのうち前記エロージョン部ではない四隅部分を覆う遮蔽部Cとを備え、かつ、前記遮蔽部A、前記遮蔽部B、及び前記遮蔽部Cで囲まれた開口部を有し、該開口部は、前記補正板の上方から見て、前記エロージョン部の円弧状部のうち前記遮蔽部Bで覆われない4つの部分を露出させた構造の補正板を備えたものであることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
  2. 前記補正板は、
    前記角型ターゲットと前記基材の間でこれら両者に対して略平行に配置されると共に、前記角型ターゲットから前記基材までの距離に対して前記角型ターゲットからの距離が20%以上である位置に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  3. 前記補正板と前記ターゲットの間であって該補正板の前記遮蔽部Bと前記遮蔽部Cの直下に、該補正板に固定された支持部材により保持されて配置された、前記遮蔽部Bに略同面積の板状補助遮蔽部材B’と前記遮蔽部Cに略同面積の板状補助遮蔽部材C’とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  4. 平面形状が長方形の角型ターゲットに対向して該ターゲットの幅方向に移動する基材に、マグネトロンスパッタリング装置を用いて透明導電膜を形成する透明導電膜製造方法において、
    前記角型ターゲットの長手方向に互いに平行に延びる2本の直線状部と、
    この2本の直線状部の長手方向両端部それぞれをつないだ2つの円弧状部とからなるレーストラック状のエロージョン領域のうち、
    前記2本の直線状部のうち幅方向の外側部分を覆う遮蔽部Aと、前記円弧状部の円弧方向中央部を覆う遮蔽部Bと、前記角型ターゲットのうち前記エロージョン部ではない四隅部分を覆う遮蔽部Cとを備え、かつ、前記遮蔽部A、前記遮蔽部B、及び前記遮蔽部Cで囲まれた開口部を有し、該開口部は、前記補正板の上方から見て、前記エロージョン部の円弧状部のうち前記遮蔽部Bで覆われない4つの部分を露出させた構造の補正板を使用することを特徴とする透明導電膜製造方法。
  5. 前記角型ターゲットと前記基材の間でこれら両者に対して略平行に前記補正板を配置すると共に、前記角型ターゲットから前記基材までの距離に対して前記角型ターゲットからの距離が20%以上である位置に前記補正板を配置しておくことを特徴とする請求項4に記載の透明導電膜製造方法。
  6. 前記補正板と前記ターゲットの間であって該補正板の前記遮蔽部Bと前記遮蔽部Cの直下に、該補正板に固定された支持部材によって保持されて配置された、前記遮蔽部Bに略同面積の板状補助遮蔽部材B’と前記遮蔽部Cに略同面積の板状補助遮蔽部材C’とを使用して成膜することを特徴とする請求項4または5に記載の透明導電膜製造方法。
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