JP3778501B2 - スパッタリング装置およびスパッタリング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリングによる製膜技術に関し、より詳細には異常放電を抑制することにより、堆積効率を向上させることを可能とするスパッタリング装置および該スパッタリング装置を使用したスパッタリング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリング技術は、金属、無機非金属材料、有機材料などの被膜を形成するために広く使用されている技術である。スパッタリング技術は、概ね減圧可能な容器内に放電プラズマを生成させ、放電プラズマ内に生成された電子、イオンといった荷電粒子により、堆積させるための材料から形成されたターゲットを衝撃・加熱して堆積材料の蒸気を得て、基板上にターゲット材料の膜を製膜する。
【0003】
放電プラズマの生成は、通常ではRF波放電、マイクロ波放電、マグネトロンを使用して高周波を発生させ、磁場の作用下で放電プラズマを発生させ、イオンサイクロトロン運動を使用して高効率で堆積を可能とするマグネトロン放電を使用する。このうち、マグネトロン放電を使用したスパッタリングを行うマグネトロン放電は、イオン・サイクロトロン運動によりターゲットを効率的に加熱でき、高い効率の堆積を可能とするため、いわゆるマグネトロン・スパッタリングとして多用されている。
【0004】
さらに、近年では生産効率の向上、スパッタリング・コストの低下といった目的から、さらに高い効率での堆積を行うことが要求されている。この目的のため、放電プラズマの密度または電子温度を高めるべく、可能な限り高出力の高周波を使用してプラズマを生成する試みがなされている。堆積効率を向上させるために放電プラズマを生成する出力を高めると、いわゆる異常放電が生じてしまい、ピンホール、スプラッシュなどの膜欠陥などが発生しがちとなる。このような異常放電は、堆積速度の増加により得られる効果を減少させてしまったり、かえって生産歩留まりを低下させることにつながっていた。
【0005】
上述した異常放電を減少させるためには、ターゲットの浸食される領域をできる限り広げて、非浸食領域を減少することが有効であることが知られている。このため、マグネットを揺動させる方法や、磁場の水平成分を小さくすると共に、磁場の水平成分をできるだけ均一にすることが試みられている。
【0006】
これまで異常放電に伴う不都合を改善するための試みとして、たとえば特開平2−47539号公報においては、ターゲット部材の境界側面において電界の向きと磁界の向きとを平行にさせて、マグネトロン・スパッタリングを行う方法を開示している。特開平2−47539号公報に開示された方法は、確かに異常放電を防止することにより放電出力の向上を可能とする。しかしながら、そのために使用するスパッタリング装置がきわめて複雑となり、制御も複雑で、装置も高価となり、そのために設備投資を必要とするという不都合がある。
【0007】
特開平3−158462号公報では、マグネットをターゲットの表面とほぼ同一平面とし、さらにマグネットをアース電位または正電位に保持したマグネトロン・スパッタリング装置を開示している。特開平3−158642号公報に開示された装置では、マグネットをターゲットの表面とほぼ同一の平面となる位置まで露出させた構成を用いることにより、ターゲットの全面を電離ガスで叩くことを可能とさせている。特開平3−158642号公報では、上記構成により、ターゲット上に電荷の堆積を防止することで、放電出力の増加を可能としている。しかしながら、特開平3−158642号公報に記載のマグネトロン・スパッタリング装置も,マグネットの位置を変更することなど、大がかりな装置の変更を要する。このため、特開平3−158642号公報に開示されている装置では、装置の変更を行うことによる設備投資のため、生産歩留まりの向上により得られるメリットを低減させてしまうという、不都合を生じさせる。また、マグネット上にカーボン膜を堆積させた後設置を行ったり、その後交換などのメンテナンスが煩雑であるという不都合もある。
【0008】
また、特公平4−7531号公報においては、複数のターゲット部材の主面の高さを異なる平面内に配置し、ターゲット部材間の境界に対応する部分での磁界の方向を主面の方向とほぼ並行にすることで、境界をターゲット材の非浸食領域に配置させるマグネトロン・スパッタリング電極構造体を開示している。しかしながら、特公平4−7531号公報において開示されたマグネトロン・スパッタリング電極構造体についても複雑な構造を有している。このため、特公平4−7531号公報においても、複雑な構造のマグネトロン・スパッタリング電極を含むマグネトロン・スパッタリング装置を得るための投資が必要とされることになる。
【0009】
さらに、特開平4−183858号公報においては、マグネトロン・スパッタリング用のカソードが開示されている。特開平4−183858号公報では、ターゲットを載置するバッキングプレートに水平磁場の磁場分布を広範囲に広げることが開示されている。上述した構成を用いることで、特開平4−183858号公報では、スパッタされない部分を低下させることにより、ターゲットの片掘を防止して異常放電の発生を防止することが可能とされている。しかしながら、特開平4−183858号公報に開示の装置においても、スパッタリング装置自体を大きく変更する必要があり、設備投資を必要とし、その結果、異常放電の抑制による生産効率の向上という魅力を低減することとなる。
【0010】
特開平9−41136号公報では、ターゲットの背後に磁石を設け、水平磁場強度が0となる位置がターゲットの外径よりも内側になるように構成したマグネトロン・スパッタリング装置が開示されている。特開平9−41136号公報に記載のマグネトロン・スパッタリング装置では、ターゲットの背後に磁石を設けた磁石により、低圧で放電を開始させることを可能とし、さらにターゲットの全面をスパッタリングさせることが可能とされている。しかしながら、特開平9−41136号公報に記載の装置は、基板に設けられた穴内部にまでスパッタリングを行うことを目的としており、異常放電の抑制による放電出力の増大およびそれに伴う生産性の向上といった課題を目的としたものではない。
【0011】
上述したように、これまで、マグネトロン・スパッタリング装置においてターゲット近傍における水平磁場成分を制御することにより、スパッタリング特性を改善する試みがなされているものの、いずれもマグネトロン・スパッタリング装置を大きく変更する必要があるか、または追加の部材、磁石を使用する必要があり、新たな設備投資を必要とするという不都合があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、本発明は、マグネトロン・スパッタリング装置の変更や追加の部材を必要とすること無く、低コストで異常放電の発生を最低限に抑制して、スパッタリング効率を向上させることが可能な、マグネトロン・スパッタリング装置、およびマグネトロン・スパッタリング方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、放電出力を高くしてゆく場合にもっとも異常放電が発生しやすくなる部分がターゲットの端部であることを見出した。ターゲットの端部は、電界が集中しやすく、通常の条件においても放電が発生しやすいことに加え、堆積プロセスにおいて不均一な堆積が生じやすい。このため、本発明においては、ターゲットの端部、またはターゲット端部からターゲット中心に向かって内側に磁場の水平成分が0を横切る位置を配置する。本発明者は、上記構成を用いることで、異常放電の発生するまでの時間的および放電出力における余裕を著しく増大させることができ、この結果スパッタリング・プロセスの効率を向上することができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
さらに、本発明者は、ターゲット端部における磁場特性を制御することにより、ターゲット端部の位置合わせのずれについても充分に対応可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明によれば、排気可能な容器と、
前記容器内に収容されたターゲットと、
前記容器内に生成される放電プラズマに対して磁場を加えるためのマグネットとを含むスパッタリング装置であって、
前記マグネットは、前記ターゲット表面に対して水平成分と、垂直成分とを含む磁場を加えており、
前記ターゲットの端部は、前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置、または前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置よりも前記ターゲットの中心側に配置されたスパッタリング装置が提供される。
【0016】
本発明のスパッタリング装置では、前記放電プラズマは、DCマグネトロン放電により生成される。本発明のスパッタリング装置では、前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置は、前記ターゲットの端部とされる。本発明のスパッタリング装置では、前記磁場は、前記ターゲットの端部において前記磁場の水平成分よりも大きな垂直成分を含む。本発明においては、前記ターゲットの端部における前記磁場の水平成分と垂直成分との比の絶対値|H/H|が、0.2以下であることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、排気可能な容器と、
前記容器内に収容されたターゲットと、前記容器内に生成される放電プラズマに対して磁場を加えるためのマグネットとを含むスパッタリング装置を使用するスパッタリング方法であって、
前記マグネットからターゲット表面に対して水平成分と、垂直成分とを含む磁場を、前記ターゲットの端部を超えた位置で前記磁場の水平成分が0を横切って変化するように加えるステップと、
前記磁場の作用下で放電プラズマを発生させてターゲット材料を基板に堆積するステップと、
を含むスパッタリング方法が提供される。
【0018】
本発明のスパッタリング方法では、前記放電プラズマは、DCマグネトロン放電により生成される。本発明のスパッタリング方法では、前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置を、前記ターゲットの端部に形成する。本発明のスパッタリング方法では、前記磁場は、前記ターゲットの端部において前記磁場の水平成分よりも大きな垂直成分を含む。本発明においては、前記磁場を、前記磁場の水平成分と垂直成分との比の絶対値|H/H|を、0.2以下となるように生成することが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明のマグネトロン・スパッタリング装置の概略側面図である。図1に示す装置は、減圧可能な容器10と、この容器10を排気するための排気装置12と、ターゲット材料を堆積させるための基板14と、基板14を保持するための基板保持手段16と、ターゲット取付部18とを含んで構成することができる。容器10の外部には、マグネット20a、20b、20cが配置されていて、生成されたプラズマに対して磁場を作用させることができる構成とされている。
【0020】
ターゲット取付部18は、適切な手段により容器10から絶縁されている。このターゲット取付部18には、本発明における好適な実施の形態においては、直流(DC)電源が接続されて放電によるプラズマを発生させることができる構成とされている。ターゲット取付部18に取り付けられたターゲット22の材料は、DC放電により生成した放電プラズマにより加熱され、ターゲット材料が基板14に対してスパッタリングされる構成とされている。本発明において用いるターゲット22としては、焼結炭素ターゲット、金属酸化物ターゲット、有機化合物ターゲットなどを挙げることができる。本発明は、上述したターゲット材料に限定されるものではなく、たとえば金属材料よりも高抵抗であって、放電の持続時間と共に異常放電が顕著になる材料であれば、特に材料に限定されることなく有効に適用することができる。
【0021】
また、図1に示した本発明のマグネトロン・スパッタリング装置10には、Arといった適切な不活性なキャリアガスを供給するためのガス供給源24が接続されている。キャリアガスは、容器10内に導入された後、図示しないマグネトロン管からの高周波が供給されて、高周波放電により放電プラズマを形成する。放電プラズマ中に保持された荷電粒子は、ターゲット材料を衝撃して、蒸発させ、基板14へとターゲット材料を堆積させる構成とされている。
【0022】
図1に示す本発明のマグネトロン・スパッタリング装置では、マグネット20a、20b、20cが、ターゲット22の端部22a、22bにおいて磁場の水平方向の成分が概ね0となる配置で設けられている。なお、本発明において磁場の水平方向の強度は、ターゲット22の表面で測定される強度を意味する。また、ターゲット22と基板14との相対的位置関係については特に制限はないが、基板14がターゲット22に比較して大きすぎる場合には、基板14において堆積が行われない領域が増え、スパッタリング効率を低下させることになるので好ましくない。
【0023】
図2は、図1に示したマグネトロン・スパッタリング装置の図1の矢線A−Aに沿った断面図を示した図である。図2に示されるように、マグネット20a、20cは、放電プラズマ24を生成する領域を概ね取り囲むようにして配置されている。また、マグネット20a、20cはそれぞれの端部が複数のマグネット20d〜20fを組み合わせることで連結されていて、放電プラズマ26をマグネットで囲まれた領域付近に閉じこめ、スパッタリングの効率を高めることができる構成とされている。放電プラズマ26は、容器10の内部においてサイクロトロン運動を行っており、図2に示した実施の形態においては、例えば矢線で示される向きに移動している。
【0024】
ターゲット22は、概ね図2の波線で示される位置にターゲット端部22a、22cが配置されている。また、ターゲット22は、マグネット20a、20bの下側においてターゲット取付部18を介して容器10内に配置されている。図2に示されるように、波線で示された磁場28は、中央に配置されたマグネット20bから、それぞれ周囲に配置されたマグネット20a、20c〜20fへと略対称的に延びている。本発明の特定の実施の形態においては、図2に示すターゲット22の端部において、磁場28は、磁場28の水平成分がターゲット端部において、0を横切って方向を変えるか、または水平磁場が0を横切って方向を変える位置がターゲットの中心に向かった位置となるように生成される。
【0025】
図3は、本発明のターゲット取付部18と、ターゲット22と、磁場28との関係を拡大して示した図である。本発明においては、本質的にはターゲット22の端部において磁場が垂直成分のみとなるように配置することが好ましい。すなわち、ターゲット端部において磁場28の水平成分が0を横切って方向を変えるように磁場28を形成することが好ましい。しかしながら、マグネットが有限の大きさを有していること、および複数のマグネット群から磁場が形成されることなどから、ターゲット22の端部において完全に磁場の水平成分を0とすることは現実的なものではない。このため、本発明者は、鋭意検討した結果、ターゲット端部から中心方向にずれた位置において磁場28の水平成分の方向を逆転させることによっても、充分に異常放電を抑制することができることを見出した。
【0026】
また、本発明者は、磁場28が全く存在しなくなるような位置にターゲット端部を配置するのではなく、ターゲット端部における磁場の垂直成分をできるだけ大きく、かつ水平成分が小さくなるようなマグネット配置およびマグネット−ターゲット間距離とすることにより、ターゲット端部の位置決めのばらつきに対して充分対応可能であることが見出された。
【0027】
図4には、本発明におけるターゲット22と、磁場の垂直成分および水平成分の関係を示す。本発明においては磁場の強度は、ターゲット22の放電プラズマにさらされる側の表面22cにおける値を使用する。また、磁場の水平成分Hとは、表面22cの面に沿った方向の成分であり、また垂直成分Hとは、表面22cに垂直な成分として定義される。
【0028】
以下、本発明のマグネトロン・スパッタリング方法を詳細に説明する。本発明では、マグネトロン・スパッタリングを行うため、交流または直流放電を使用することができる。しかしながら、本発明において、ターゲット端部における磁場の特性を制御するという点からは、磁場が振動しない直流放電を使用する場合、具体的にはDCマグネトロン・スパッタリングを行う場合に、本発明が特に有効であることが見出された。本発明のDCマグネトロン・スパッタリング方法は、まず基板14を、図1に示した容器10内の基板保持部材14上に載置して、容器10を密閉した後、排気装置12を起動して容器10内を排気する。ついで、Arといった適切なキャリアガスを供給して、所定の圧力とした後、DC電源から電流を供給してDCマグネトロン放電を生じさせ、容器10内に配置されたターゲット22を放電プラズマにより衝撃し、マグネット20a、20b、20cによる磁界の作用下で荷電粒子に対してサイクロトロン運動を生じさせつつ成膜を行う。
【0029】
この際、DCマグネトロン・スパッタリングの条件としては、例えば、ターゲットを焼結炭素ターゲットとし、キャリアガスとしてArを用い、圧力を0.5〜2Paとし、放電出力を1〜4kWとして行うことができる。また、本発明においては、磁場を発生させるためのマグネットとしては、永久磁石または電磁石を使用することができ、磁束密度は、0.01Tから0.2Tの範囲とすることができる。
【0030】
本発明におけるキャリアガスとしては、Arの他、He、Ne、Ar、Kr、Xeといった不活性ガス、またはこれらの混合物を使用することができる。また、必要に応じて、H、CH、C、Cといったハイドロカーボン類、CF、C、C、Cといったハイドロフロロカーボン類、パーフロロカーボン類などを、水素源、フッ素源などとして用いることができる。
【0031】
上述した成膜プロセスにおいては、基板14に対して均一に堆積を行うため、基板保持部材16に対して、往復運動、一方向への並進運動といったように運動させることができる。また、基板保持部材16と、基板14とを加熱して、堆積効率を制御することもできる。この際、本発明においてはターゲットとして図2に示した矩形の形状を採用することもできるし、また円形のターゲットを使用することもできる。また、これらのターゲットを回転させる場合には、適宜堆積が均一になるように移動させることが可能である。
【0032】
表1には、実測された磁場の垂直成分および水平成分の値を示す。表1に示されるように、本発明においては、磁場の垂直成分Hは、ターゲット端部に向かって大きくなるように生成されており、垂直磁場がターゲット端部において加えられる配置とされている。また、表1に示した本発明の実施の形態においては、ターゲットとして幅110mmのものを使用しており、磁場の水平方向の成分は、ターゲット端部において0を横切って方向を変化させる構成とされている。
【0033】
【表1】
Figure 0003778501
図5は、ターゲット表面において測定された表1に示した磁場のターゲットの幅方向の分布を、垂直成分と水平成分とについて示した図である。本発明においては、図5に示されるように、磁場の垂直成分Hは、ターゲットの中心において極大を形成し、中心からの距離が大きくなるにつれて減少してゆき、ターゲットの端部付近で極小を形成するのが示されている。なお、図5では、ターゲットの端部の位置を、塗りつぶした三角形で示している。また、図5に示されるように、本発明においては、磁場の水平方向の成分Hは、これとは逆に、ターゲットの中心部においてほぼ0となり、その後中心からの距離が大きくなるとその絶対値を増加させターゲット端部付近で再度0となってその方向を変化させているのが示されている。
【0034】
図6は、図5に示した磁場の垂直成分と水平成分との比(H/H)をターゲットの幅手方向について示した図である。なお、図6においてもターゲットは、110mmのものを使用し、その端部を塗りつぶした三角形で示している。図6に示されるように、本発明においては、ターゲットの端部において、水平成分を可能な限り小さくして、水平成分を0を横切って反転させる。同時に、さらに端部付近での垂直成分と水平成分との比(H/H)の変化割合を小さくすることで、再現性の良い良好なDCマグネトロン・スパッタリングを行うことができる。
【0035】
以下、本発明を詳細な実施例を用いて説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0036】
(実施例)
本発明の図1に示すマグネトロン・スパッタリング装置を使用して、液晶表示装置の配向膜として使用する炭素膜を製膜した。放電は、DC電源から直流電流を供給することにより、DCマグネトロン放電を使用して行った。放電出力は、実施例および比較例において2J/cm/sとした。ターゲットを、マグネットにより形成される磁場の形状に適合する形状に左右対称の形状として形成した。また、マグネットにより形成される磁場の水平成分を予め測定しておき、ターゲットを、ターゲット端部がマグネットにより形成される磁場の水平成分が0を横切る位置に配置されるようにした。磁界の測定は、ターゲット表面に磁場測定ヘッドを取り付けて測定を行った。
【0037】
以下にDCマグネトロン・スパッタリング条件を示す。
ターゲット: 焼結炭素ターゲット
キャリア : Ar、圧力1Pa
ガス流量 : Ar:H=30:10sccm
DC放電出力: 2J/cm/s(可変)
マグネット間隔: 6cm
磁石/基板間隔: 5cm
磁石の磁束密度: 0.0250T
【0038】
上述した条件の下でDCマグネトロン・スパッタリングを行い、それぞれ異常放電が生じるまでの時間を測定することにより、本発明について検討を加えた。
【0039】
(比較例)
従来の構成のDCマグネトロン・スパッタリング装置を使用して、ターゲット端部における磁場特性を変化させたことを除き、同一条件の下で放電を生成させ、異常放電が発生するまでの時間をモニタした。用いた磁場特性を表2にまとめて示す。
【0040】
【表2】
Figure 0003778501
【0041】
上述した表2の条件を使用して異常放電が発生するまでの時間を測定した結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
Figure 0003778501
【0043】
その結果を、図7にまとめて示す。表3および図7に示すように、本発明によれば、ターゲット端部における磁場特性を変化させることにより、最大で約3.5倍異常放電が発生するまでの時間を延長させることができることが示される。また、表2に示される実施例1および比較例1を比較することにより、ターゲット内側において磁場の水平成分の方向を反転させた場合のほうが、異常放電の発せするまでの時間を長くする効果が顕著であることがわかる。
【0044】
また、図8には、ターゲット端部における磁場の水平成分と、垂直成分との比の絶対値に対して、異常放電が開始するまでの時間をプロットして示した図である。図8に示されるように、ターゲット端部においては磁場の水平成分が小さいほど異常放電が発生するまでの時間が長くなっていることが示される。また、図8に示されるように、本発明の特定の実施の形態においては、|H/H|が、0.2以下の領域にターゲット端部を配置することにより、適切にターゲット端部位置の位置あわせのずれ、または磁場の変動に対して安定して異常放電を延長することが可能であることが示されている。
【0045】
(実施例3)
実施例1で示した磁場の条件を使用して、放電出力を0.6〜3.1J/cm/sの範囲で変化させて、同様の検討を加えた。概ね放電出力が高くなれば、異常放電が発生するまでの時間が短縮される傾向にはあるものの、良好なマグネトロン・スパッタリングによる炭素膜の堆積を行うことができた。
【0046】
上述したように、本発明によれば、マグネトロン・スパッタリング装置の大がかりな変更や追加の部材を必要とすること無く、低コストで異常放電の発生を最低限に抑制して、スパッタリング効率を安定して向上させることが可能な、マグネトロン・スパッタリング装置およびマグネトロン・スパッタリング方法を提供することが可能となる。
【0047】
これまで、本発明を実施の形態および詳細な実施例を例に取り説明してきたが、本発明は上述した実施の形態および実施例に制限されるものではない。また、本発明のマグネトロン・スパッタリング装置およびマグネトロン・スパッタリング方法は、絶縁性材料を含む種々の材料の堆積のために使用することができる。たとえば、本発明は、液晶表示装置に使用されるDLCといった配向膜、画素電極、有機EL材料などを堆積させるために好適に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマグネトロン・スパッタリング装置を示した図。
【図2】本発明のマグネトロン・スパッタリング装置の上面図。
【図3】本発明のマグネトロン・スパッタリング装置におけるターゲット端部近傍での磁場特性を示した概略拡大図。
【図4】本発明における磁場と、ターゲット表面との関係を示した模式図。
【図5】本発明において測定されたターゲット表面における磁場特性を示した図。
【図6】本発明における磁場の水平成分と垂直成分との比を、ターゲットを横断する方向に沿って示した図。
【図7】本発明における異常放電の発生時間を、水平磁場が0となる位置とターゲット端部との距離に対してプロットした図。
【図8】本発明におけるターゲット端部での磁場の水平成分と垂直成分との比と、異常放電開始までの時間を示した図。
【符号の説明】
10…容器
12…排気装置
14…基板
16…基板保持手段
18…ターゲット取付部
20a〜20f…マグネット
22…ターゲット
24…ガス供給源
26…放電プラズマ
28…磁場

Claims (6)

  1. 排気可能な容器と、
    前記容器内に収容されたターゲットと、
    前記容器内に生成される放電プラズマに対して磁場を加えるためのマグネットとを含むスパッタリング装置であって、
    前記マグネットは、前記ターゲット表面に対して水平成分と、垂直成分とを含む磁場を加えており、
    前記ターゲットの端部は、前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置、または前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置よりも前記ターゲットの中心側から見て外側に配置され、かつ、
    前記ターゲットの端部における前記磁場の水平成分と垂直成分との比の絶対値 |H H | が、0.2以下である、
    スパッタリング装置。
  2. 前記放電プラズマは、DCマグネトロン放電により生成される、
    請求項1に記載のスパッタリング装置。
  3. 前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置は、前記ターゲットの端部である、
    請求項1または2に記載のスパッタリング装置。
  4. 排気可能な容器と、
    前記容器内に収容されたターゲットと、前記容器内に生成される放電プラズマに対して磁場を加えるためのマグネットとを含むスパッタリング装置を使用するスパッタリング方法であって、
    前記マグネットからターゲット表面に対して水平成分と、垂直成分とを含む磁場を加えるステップであって、前記磁場を、前記ターゲット端部における磁場の水平成分と垂直成分との比の絶対値 |H H | が、0.2以下となるように生成し、前記ターゲットの端部、または該端部より前記ターゲットの中心側に向かって内側の位置で前記磁場の水平成分が0を横切って変化するように加えるステップと、
    前記磁場の作用下で放電プラズマを発生させてターゲット材料を基板に堆積するステップと、
    を含むスパッタリング方法。
  5. 前記放電プラズマは、DCマグネトロン放電により生成される、
    請求項に記載のスパッタリング方法。
  6. 前記磁場の水平成分が0を横切って変化する位置を、前記ターゲットの端部に形成する
    請求項またはに記載のスパッタリング方法。
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