JP5441855B2 - 検査素子、検査キット、検査装置、および検査方法 - Google Patents
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Description
この様な検査素子においては、乾燥状態の試薬類を含んだ反応部に検体液を導入し、検体液と試薬類とが反応して生成された反応生成物を発色剤に導入することで生じる吸光度変化量を測定するようにしている。
図1は、本実施の形態に係る検査素子について例示をするための模式断面図である。
図1に示すように、検査素子1には、基部2、光導波路部3、光学要素部4、検出部5、保持部6、保護部7が設けられている。
膜形成体は、多孔質組織を有するものとすることができ、多孔質組織内の空孔に発色剤を保持するようにしたものなどを例示することができる。膜形成体の材料としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)やポリエチレングリコール(PEG)などを例示することができる。
検出部5は、例えば、水とアルコールなどの水溶性有機溶媒との混合溶媒に、発色剤、造膜用高分子などを均質に混合した前駆溶液を膜状に乾燥させることで形成するようにすることができる。
また、反応生成物としてNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)などが生成される場合には、検出部5に含まれる発色剤をテトラゾリウム塩などとすることができる。
この場合、酵素活性を定量化するような反応系においては、2段階以上の素反応を経て最終的に生成された物質を定量する必要がある。
そのため、複数の試薬類を高濃度で用いることになり、複数の試薬類を検出部に含ませることが必要となる。
しかしながら、複数の試薬類を検出部に含ませるようにすることは困難である。
何故なら複数の試薬類を検出部に含ませることができたとしても試薬類の量が多いので、試薬類が結晶化、析出するなどして散乱体が形成されるおそれがある。そして、散乱体が形成されると後述する吸光度変化量の測定において測定誤差が大きくなるおそれがある。
反応生成物としてNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)などが生成される場合には、例えば、発色反応促進剤をジアホラーゼなどとすることができる。
なお、発色剤、発色反応促進剤は例示をしたものに限定されるわけではなく、測定対象に応じて適宜変更することができる。
保持部6は、枠状を呈し、検出部5を囲むようにして設けられている。保持部6の一方の端部は光導波路部3の主面に液密に設けられ、他方の端部は検出部5の主面から突出するようにして設けられている。そのため、検出部5の上方に後述する溶液を保持する保持空間6aが形成されることになる。
そのため、保持空間6aの体積は10μL(マイクロリットル)以上とすることができる。すなわち、保持部6の一端は、検出部5の上方に10μL以上の体積の空間(保持空間6a)が形成されるように検出部5の主面より突出している。
保護部7は、光導波路部3を形成する材料よりも低屈折率の材料から形成されている。また、保持部6に保持される液に対する耐性の高い材料から形成されている。保護部7は、例えば、フッ素樹脂などから形成されるものとすることができる。
すなわち、溶液を反応場とすることができるので、試薬類の量が多い場合であっても試薬類が結晶化、析出するなどして散乱体が形成されることを抑制することができる。そのため、測定精度を向上させることができる。
また、溶液を反応場とすることができるので、溶媒の粘性などによって変化する反応生成物の拡散速度の影響を抑制することができる。そのため、反応生成物の拡散速度を速くすることができるので、酵素活性に関する検査の時間を大幅に短縮することができる。
また、検出部5には、発色剤、または発色剤と発色反応促進剤が含まれているだけのため、測定対象となる所定の酵素に対して検査素子1の共通化を図ることができる。
本実施の形態に係る検査キットは、前述した検査素子1と、少なくとも測定対象となる酵素に対する基質と緩衝液とを含む溶液と、を個別に備えたキットとすることができる。 なお、溶液を構成する要素(例えば、測定対象となる酵素に対する基質、素反応をさせる際に用いられる試薬類、緩衝液など)が個別に組み合わされたものが溶液の代わりに備えられたキットとすることもできる。例えば、前述した検査素子1と、測定対象となる酵素に対する基質と、緩衝液と、を個別に備えたキットとすることもできる。また、素反応をさせる際に用いられる試薬類をさらに備えたものとすることもできる。
この場合、緩衝液の水素イオン指数は、pH3.5〜10.0、好ましくはpH4.5〜9.0の範囲となるようにすることができる。
例えば、緩衝液は、フタル酸水素カリウム/水酸化ナトリウム緩衝液、クエン酸二ナトリウム/塩酸緩衝液、クエン酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム緩衝液、コハク酸/四ホウ酸ナトリウム緩衝液、クエン酸水素カリウム/四ホウ酸ナトリウム緩衝液、リン酸水素二ナトリウム/クエン酸緩衝液、酢酸ナトリウム/塩酸緩衝液、酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液などとすることができる。
表1は、測定対象となる酵素に対する基質、素反応をさせる際に用いられる試薬類、発色剤、発色反応促進剤を例示するためのものである。
なお、図2は、一例として、3段階の反応を経て反応生成物が生成される場合を例示するものである。
測定対象となる酵素を含む検体液が溶液中に導入されると、表1の上段から順に素反応が進行し、反応生成物(表1、図2に例示をしたものでは生成物3)が生成される。
すなわち、測定対象となる酵素と測定対象となる酵素に対する基質とが反応して生成物1が生成される。次に、生成された生成物1と試薬1とが反応して生成物2が生成される。次に、生成された生成物2と試薬2とが反応して生成物3(反応生成物)が生成される。そして、生成された生成物3(反応生成物)により発色剤が発色する。この際、発色反応促進剤により発色剤の発色が促進される。
この発色により生じる吸光度変化量を測定することで酵素活性を定量化することができる。
図3に例示をしたものにおいては、市販の標準血清(リキッドアブノーマル、デンカ生研(株))を0.2Mリン酸バッファ(pH6.2)で20倍あるいは100倍に希釈した液に、ALT(GPT)に対する基質であるL−アラニン、α-ケトグルタル酸を最終濃度で200mM、素反応をさせる際に用いられる試薬類であるピルビン酸オキシダーゼを最終濃度で10mM添加した。また、酵素活性が2U/L、0.4U/Lとなるように混合したものを用いた。なお、酵素活性が0U/Lの液(ブランクの液)は、血清の代わりに同量の生理食塩水を用いた液とした。
そこで、液供給から30秒後における吸光度と、60秒後における吸光度との差から、吸光度変化量ΔAと酵素活性(ALT(GPT)活性)との関係を求めるようにした。
図4に示すように、酵素活性(ALT(GPT)活性)と吸光度変化量との間には所定の関係がある。そのため、発色により生じる吸光度変化量を測定することで酵素活性を定量化することができる。この場合、各酵素における酵素活性と吸光度変化量との関係を予め求めて検量線としておけば、吸光度変化量の測定値から各酵素における酵素活性を容易に定量化することができる。
すなわち、溶液を反応場とすることができるので、試薬類の量が多い場合であっても試薬類が結晶化、析出するなどして散乱体が形成されることを抑制することができる。そのため、測定精度を向上させることができる。
また、溶液を反応場とすることができるので、溶媒の粘性などによって変化する反応生成物の拡散速度の影響を抑制することができる。そのため、反応生成物の拡散速度を速くすることができるので、酵素活性に関する検査の時間を大幅に短縮することができる。
また、検出部5には、発色剤、または発色剤と発色反応促進剤が含まれているだけのため、測定対象となる所定の酵素に対して検査素子1の共通化を図ることができる。
図5は、本実施の形態に係る検査装置について例示をするための模式図である。
図5に示すように、検査装置100には、検査部20、溶液反応部30、制御部40が設けられている。
この場合、検査素子1は、使い捨てとすることができ、検査毎に交換されるものとすることができる。
検査部20には、投光部21、受光部22が設けられている。すなわち、検査素子1に設けられた一方の光学要素部4に光を入射させる投光部21と、他方の光学要素部4からの光を受光して光の強度に応じた電気信号に変換する受光部22と、が設けられている。 投光部21は、例えば、レーザダイオードなどとすることができる。受光部22は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
ここで、投光部21から出射し基部2を介して光学要素部4に入射した光は、光学要素部4と光導波路部3との界面で回折され、さらに光導波路部3と基部2および検出部5との界面で複数回反射しながら伝播する。この様に入射した光は、光導波路部3内を反射して伝搬するが、その際、エバネッセント波(evanescent wave)が生じる。エバネッセント波とは、光が光導波路部3と外部との界面において全反射する際、その界面に発生して表面だけを伝わる電磁波をいう。このエバネッセント波が到達する距離は、光導波路部3の表面から波長程度(1μm以下)の長さである。
この様にして光導波路部3内を伝播した光は、他方の光学要素部4から基部2を介して外部に出射される。外部に出射された光は、受光部22により受光され、受光された光の強度に応じた電気信号に変換される。変換された電気信号は、制御部40に送られる。
供給部31には、ノズル31aが設けられ、ノズル31aには可撓生の配管31cを介してポンプなどの吸引部31bが接続されている。また、図示しない移動部によりノズル31aの位置を変化させることができるようになっている。この場合、図中の破線に示すようにノズル31aを移動させて、溶液収納部32、検体液収納部33、混合部34、保持空間6aにおいて溶液などの液体の吸引、吐出をさせることができるようになっている。
検体液収納部33は、測定対象となる酵素を含む検体液を収納する。例えば、希釈された血液や血清などの検体液を収納する。
収納部34aには、供給部31により所定量の溶液と、検体液とが供給され、攪拌部34bにより溶液と検体液とが攪拌される。
すなわち、混合部34は、少なくとも測定対象となる酵素に対する基質と、緩衝液と、酵素を含む検体液と、を混合する。
そして、前述したように、予め求められた検量線などに基づいて、吸光度変化量ΔAから酵素活性を求めるようにすることができる。
ここで、A(t1)はt=t0を初期値とした場合のt1秒後の吸光度、I(t0)は時間t0における光検出強度(例えば、受光部22の出力値)、I(t1)はt=t0を初期値とした場合のt1秒後の光検出強度(例えば、受光部22の出力値)である。
まず、作業者などにより溶液収納部32に溶液が供給され、検体液収納部33に希釈された血液や血清などの検体液が供給される。また、検査部20に検査素子1が装着される。
次に、図示しない移動部によりノズル31aを移動させて、ノズル31aの先端部を収納部34a内に入れる。そして、吸引部31bを作動させることで溶液を収納部34a内に吐出する。
次に、図示しない移動部によりノズル31aを移動させて、ノズル31aの先端部を収納部34a内に入れる。そして、吸引部31bを作動させることで検体液を収納部34a内に吐出する。
次に、図示しない移動部によりノズル31aを移動させて、ノズル31aの先端部を保持空間6aの直上に位置決めする。そして、吸引部31bを作動させることで反応生成物が含まれている液体を保持空間6a内に吐出する。保持空間6a内に吐出された液体に含まれている反応生成物により検出部5に設けられた発色剤が発色する。この際、発色反応促進剤が含まれている場合には発色反応促進剤により発色剤の発色が促進される。
また、制御部40も必ずしも必要ではなく、例えば、受光部22から送られてきた電気信号を別途設けられた演算手段などで演算するようにしてもよい。
すなわち、溶液を反応場とすることができるので、試薬類の量が多い場合であっても試薬類が結晶化、析出するなどして散乱体が形成されることを抑制することができる。そのため、測定精度を向上させることができる。
また、溶液を反応場とすることができるので、溶媒の粘性などによって変化する反応生成物の拡散速度の影響を抑制することができる。そのため、反応生成物の拡散速度を速くすることができるので、酵素活性に関する検査の時間を大幅に短縮することができる。
また、検出部5には、発色剤、または発色剤と発色反応促進剤が含まれているだけのため、測定対象となる所定の酵素に対して検査素子1の共通化を図ることができる。
本実施の形態に係る検査方法においては、前述した検査素子1、検査キット、検査装置100を用いることができる。
ここでは一例として、前述した検査キットを用いる場合を例示する。
まず、前述した溶液を分注する。
この場合、溶液は、少なくとも測定対象となる酵素に対する基質が緩衝液に溶解されたものとすることができる。また、溶液は、測定対象となる酵素に対する基質の他に、素反応をさせる際に用いられる試薬類を緩衝液にさらに溶解させたものとすることもできる。また、検体液中に含まれる測定対象となる酵素以外の物質によって、素反応が過大となり、あるいは素反応が阻害されるような場合には、その影響を最小限化するための添加剤をさらに追加することもできる。
溶液を構成する要素(例えば、測定対象となる酵素に対する基質、素反応をさせる際に用いられる試薬類、緩衝液など)が個別に組み合わされたものが溶液の代わりに備えられたキットである場合には、これらを用いて溶液を作成する。
検体液は、例えば、測定対象となる酵素が含まれた血液や血清などを所定の倍率に希釈したものとすることができる。
溶液に検体液を導入すると、素反応が進行して反応生成物が生成される。
この場合、溶液に検体液を導入した後に攪拌することで、素反応の進行を促進させるようにすることができる。
吸光度変化量は、例えば、前述した検査部20を用いて光検出強度を検出することで吸光度を求め、所定の時間における吸光度の差から求めるようにすることができる。
すなわち、少なくとも測定対象となる酵素に対する基質と、緩衝液と、酵素を含む検体液と、を混合し、検査素子1に設けられた保持部6の内部に混合された液体を所定量供給し、検査素子1の検出部5に設けられた発色剤が発色することで生じる吸光度変化量を求め、吸光度変化量に基づいて酵素活性を求めるようにすることができる。
なお、吸光度変化量の演算、検量線に基づいて吸光度変化量から酵素活性を求めることなどは、前述したものと同様のため詳細な説明は省略する。
すなわち、溶液を反応場とすることができるので、試薬類の量が多い場合であっても試薬類が結晶化、析出するなどして散乱体が形成されることを抑制することができる。そのため、測定精度を向上させることができる。
また、溶液を反応場とすることができるので、溶媒の粘性などによって変化する反応生成物の拡散速度の影響を抑制することができる。そのため、反応生成物の拡散速度を速くすることができるので、酵素活性に関する検査の時間を大幅に短縮することができる。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、検査素子1、検査キット、検査装置100が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
Claims (10)
- 酵素活性を定量化する検査素子であって、
透光性を有する基部と、
前記基部の主面に互いに距離をあけて配設された一対の光学要素部と、
前記基部の主面に設けられた光導波路部と、
前記光導波路部の前記基部が設けられた側とは反対側の主面であって、前記光学要素部同士の間に設けられた検出部と、
一端が前記検出部の主面より突出して設けられ、内部に測定対象となる酵素が反応して生成された反応生成物を含む液体が投入される枠状の保持部と、
を備え、
前記検出部は、発色剤と、前記発色剤を保持する膜形成体と、を有し、
前記発色剤は、ベンジジン系発色剤またはテトラゾリウム塩を含み、前記膜形成体の空孔に保持されていることを特徴とする検査素子。 - 前記保持部の一端は、前記検出部の上方に10μL以上の体積の空間が形成されるように前記検出部の主面より突出したこと、を特徴とする請求項1記載の検査素子。
- 前記検出部は、発色反応促進剤をさらに有し、前記膜形成体により前記発色剤と前記発色反応促進剤とが保持されたことを特徴とする請求項1または2に記載の検査素子。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の検査素子と、
測定対象となる酵素に対する基質と、緩衝液と、を含む溶液と、
を備えたことを特徴とする検査キット。 - 前記溶液は、素反応をさせる際に用いられる試薬類をさらに含んだこと、を特徴とする請求項4記載の検査キット。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の検査素子と、
測定対象となる酵素に対する基質と、
緩衝液と、
を備えたことを特徴とする検査キット。 - 素反応をさせる際に用いられる試薬類をさらに備えたこと、を特徴とする請求項6記載の検査キット。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の検査素子に設けられた一方の光学要素部に光を入射させる投光部と、他方の光学要素部からの光を受光して光の強度に応じた電気信号に変換する受光部と、を備えたことを特徴とする検査装置。
- 少なくとも測定対象となる酵素に対する基質と、緩衝液と、前記酵素を含む検体液と、を混合する混合部をさらに備えたこと、を特徴とする請求項8記載の検査装置。
- 少なくとも測定対象となる酵素に対する基質と、緩衝液と、前記酵素を含む検体液と、を混合し、請求項1〜3のいずれか1つに記載の検査素子に設けられた保持部の内部に前記混合された液体を所定量供給し、前記検査素子の検出部に設けられた発色剤が発色することで生じる吸光度変化量を求め、前記吸光度変化量に基づいて酵素活性を求めること、を特徴とする検査方法。
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