以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。これらの図は、乗用車用ラジアルタイヤを示している。なお、図1では、キャップトレッドゴムにハッチングを付してある。
この空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16とを備える(図1参照)。一対のビードコア11、11は、環状構造を有し、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。カーカス層13は、単層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。ベルト層14は、積層された一対のベルトプライ141、142から成り、カーカス層13のタイヤ径方向外周に配置される。これらのベルトプライ141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを配列して圧延加工して構成され、ベルトコードをタイヤ周方向に相互に異なる方向に傾斜させることによりクロスプライ構造を構成する。トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。
また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21〜23と、これらの周方向主溝21〜23に区画されて成る複数の陸部31〜34とをトレッド部に備える(図2参照)。なお、周方向主溝とは、3[mm]以上の溝幅を有する周方向溝をいう。また、陸部31〜34は、ブロック列であっても良いし(図2参照)、リブであっても良い(図示省略)。
また、一方のトレッド端部からトレッドパターン展開幅PDWの35%の領域を内側領域と呼ぶ。また、他方のトレッド端部からトレッドパターン展開幅PDWの35%の領域を外側領域と呼ぶ。なお、内側領域と外側領域との構成上の相異点については、後述する。なお、トレッドパターン展開幅PDWとは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に無負荷状態とされたときのタイヤのトレッド模様部分の展開図における両端の直線距離をいう。
また、空気入りタイヤ1は、内側領域を車幅方向内側にして車両に装着すべき装着方向の指定(図示省略)を有する。この装着方向の指定は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸、あるいはタイヤに添付されたカタログによって表示され得る。
例えば、この実施の形態では、空気入りタイヤ1が、左右対称なトレッドパターンを有している。また、空気入りタイヤ1が、3本の周方向主溝21〜23を有している。また、中央の周方向主溝22が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。また、これらの周方向主溝21〜23により、2つのセンター陸部32、33と、左右一対のショルダー陸部31、34とが区画されている。ここでは、3本の周方向主溝21〜23および4つの陸部31〜34を、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって順に、第一陸部31、第一周方向主溝21、第二陸部32、第二周方向主溝22、第三陸部33、第三周方向主溝23および第四陸部34と呼ぶ。
また、各陸部31〜34が、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝311〜341をそれぞれ有している。また、これらのラグ溝311〜341が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されている。また、第二陸部32のラグ溝321および第三陸部33のラグ溝331が、それぞれオープン構造を有し、第二陸部32および第三陸部33をタイヤ幅方向に横断して左右のエッジ部にそれぞれ開口している。これにより、第二陸部32および第三陸部33がタイヤ周方向に分断されて、ブロック列が形成されている。一方、第一陸部31のラグ溝311および第四陸部34のラグ溝341が、セミクローズド構造を有し、タイヤ幅方向外側の端部にてトレッド端部にそれぞれ開口し、タイヤ幅方向内側の端部にて陸部内に終端している。したがって、第一陸部31および第四陸部34が、タイヤ周方向に連続したリブとなっている。
[サイプ構成とゴム硬度]
また、この空気入りタイヤ1では、各陸部31〜34が、複数のサイプ312〜342をそれぞれ有する(図2参照)。また、内側領域に配置されたサイプ312、322の90[%]以上が三次元サイプから成ると共に、外側領域に配置されたサイプ332、342の90[%]以上が二次元サイプから成る。
ここで、サイプとは、陸部に形成された切り込みをいう。また、二次元サイプとは、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて、直線形状のサイプ壁面を有するサイプをいう。また、三次元サイプとは、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて、サイプ幅方向に屈曲した形状のサイプ壁面を有するサイプをいう。三次元サイプは、二次元サイプと比較して、対向するサイプ壁面の噛合力が強いため、陸部の剛性を補強する作用を有する。
例えば、この実施の形態では、各陸部31〜34が、複数のサイプ312〜342をそれぞれ有している。また、これらのサイプ312〜342が、タイヤ幅方向に延在するストレート形状を有し、タイヤ周方向に並列かつ所定間隔でそれぞれ配置されている。また、これらのサイプ312〜342が、クローズド構造を有し、陸部31〜34内にてそれぞれ終端している。また、第一陸部31のサイプ312および第二陸部32のサイプ322が、すべて三次元サイプであり、第三陸部33のサイプ332および第四陸部34のサイプ342が、すべて二次元サイプとなっている。したがって、三次元サイプ312、322と二次元サイプ332、342との剛性差により、車幅方向内側にある第一陸部31および第二陸部32の剛性が高く、車幅方向外側にある第三陸部33および第四陸部34の剛性が低く設定されている。
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド部がキャップゴム151およびアンダーゴム152を有する(図1参照)。内側領域におけるキャップゴム151_inの−10[℃]におけるゴム硬度H1_inおよび20[℃]におけるゴム硬度H2_inと、外側領域におけるキャップゴム151_outの−10[℃]におけるゴム硬度H1_outおよび20[℃]におけるゴム硬度H2_outとが、H1_in>H1_outかつH2_in>H2_outの関係を有する(図1参照)。
なお、ゴム硬度とは、JIS−K6263に準拠したJIS−A硬度をいう。所定領域(センター領域あるいはショルダー領域)におけるキャップゴムあるいはアンダーゴムが複数のゴム材料から成る場合には、ゴム硬度が以下の数式(1)により平均ゴム硬度として算出される。数式(1)において、Skは、タイヤ子午線方向の断面視における各ゴム材料の断面積を示し、Hkは、各ゴム材料のゴム硬度を示し、Saは、タイヤ子午線方向の断面視における所定領域の断面積を示している。
ゴム硬度H=(ΣSk×Hk)/Sa (k:1、2、3、…、n) …(1)
例えば、この実施の形態では、キャップゴム151が、内側キャップゴム151_inと、外側キャップゴム151_outとから構成されている。また、内側キャップゴム151_inが内側領域に配置され、外側キャップゴム151_outが外側領域にそれぞれ配置されている。このとき、内側キャップゴム151_inと外側キャップゴム151_outとの境界が、タイヤ赤道面CL上にある第二周方向主溝22の溝底下方に位置している。そして、内側キャップゴム151_inのゴム硬度H1_in、H2_inと、外側キャップゴム151_outのゴム硬度H1_out、H2_outとが、H1_in>H1_outかつH2_in>H2_outの関係を有している。したがって、これらのキャップゴム151_in、151_outのゴム硬度差により、内側領域にある第一陸部31および第二陸部32の剛性が高く、外側領域にある第三陸部33および第四陸部34の剛性が低く設定されている。
この空気入りタイヤ1では、三次元サイプ312、322が内側領域に配置され、二次元サイプ332、342が外側領域に配置されるので、内側領域の剛性が高く、外側領域の剛性が低く設定される(図2参照)。また、内側領域のゴム硬度H1_in、H2_inと、外側領域のゴム硬度H1_out、H2_outとが、H1_in>H1_outかつH2_in>H2_outの関係を有するので、内側領域の剛性が高く、外側領域の剛性が低く設定される。したがって、内側領域の剛性が相乗的に高くなり、また、外側領域の剛性が相乗的に低くなる。すると、空気入りタイヤ1が内側領域を車幅方向内側にして車両に装着されたときに、内側領域がドライ操安性の向上に大きく寄与し、また、外側領域がスノー操安性の向上に大きく寄与する。これにより、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とが高次元で両立する。
また、かかる構成では、内側領域の剛性が高いので、空気入りタイヤ1が大きなキャンバ角を有する車両に対して内側領域を車幅方向内側にして装着されたときに、トレッド部の剛性が高く維持される。これにより、タイヤの高速耐久性能が向上する。また、かかる装着状態では、タイヤ接地長が車幅方向内側にて長くなる。このとき、上記のように内側領域の剛性が高いので、タイヤのドライ性能がさらに向上する。
この点において、この空気入りタイヤ1は、−4[deg]≦δ≦0[deg]のキャンバ角δ(図示省略)を有する車両に装着すべき指定を有することが好ましい。空気入りタイヤ1が、かかるキャンバ角δを有する車両に装着されることにより、高い剛性を有する内側領域の機能が適正に発揮されて、タイヤの高速耐久性能が効果的に向上する。なお、かかる指定は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸、あるいはタイヤに添付されたカタログによって表示され得る。
なお、図1の構成では、内側キャップゴム151_inと外側キャップゴム151_outとの境界が、タイヤ赤道面CL上にある第二周方向主溝22の溝底下方に位置している。しかし、これに限らず、内側キャップゴム151_inと外側キャップゴム151_outとの境界が、第二周方向主溝22の溝底下方から外れた位置に配置されても良い(図示省略)。かかる構成では、内側領域におけるキャップゴムのゴム硬度H1_in、H2_inと、外側領域におけるキャップゴムのゴム硬度H1_out、H2_outとが、上記の数式(1)に基づいて算出される。
図3および図4は、三次元サイプの一例を示す説明図である。これらの図は、三次元サイプの壁面の斜視図を示している。
図3の三次元サイプでは、サイプ壁面が、三角錐と逆三角錐とをサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、サイプ壁面が、トレッド面側のジグザグ形状と底部側のジグザグ形状とを互いにタイヤ幅方向にピッチをずらせ、該トレッド面側と底部側とのジグザグ形状の相互間で互いに対向し合う凹凸を有する。また、サイプ壁面が、これらの凹凸において、タイヤ回転方向に見たときの凹凸で、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凹屈曲点との間、トレッド面側の凹屈曲点と底部側の凸屈曲点との間、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凸屈曲点とで互いに隣接し合う凸屈曲点同士の間をそれぞれ稜線で結ぶと共に、これら稜線間をタイヤ幅方向に順次平面で連結することにより形成される。また、一方のサイプ壁面が、凸状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有し、他方のサイプ壁面が、凹状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有する。そして、サイプ壁面が、少なくともサイプの両端最外側に配置した凹凸面をブロックの外側に向けている。なお、このような三次元サイプとして、例えば、特許第3894743号公報に記載される技術が知られている。
また、図4の三次元サイプでは、サイプ壁面が、ブロック形状を有する複数の角柱をサイプ深さ方向に対して傾斜させつつサイプ深さ方向およびサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、サイプ壁面が、トレッド面においてジグザグ形状を有する。また、サイプ壁面が、ブロックの内部ではタイヤ径方向の2箇所以上でタイヤ周方向に屈曲してタイヤ幅方向に連なる屈曲部を有し、また、該屈曲部においてタイヤ径方向に振幅を持ったジグザグ形状を有する。また、サイプ壁面が、タイヤ周方向の振幅を一定にする一方で、トレッド面の法線方向に対するタイヤ周方向への傾斜角度をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で小さくし、屈曲部のタイヤ径方向の振幅をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で大きくする。なお、このような三次元サイプとして、例えば、特許第4316452号公報に記載される技術が知られている。
なお、上記の構成では、内側領域におけるゴム硬度H1_in、H2_inおよび外側領域におけるゴム硬度H1_out、H2_outが、68≦H1_in≦78、65≦H2_in≦75、65≦H1_out≦75および62≦H2_out≦72、ならびに、3≦H1_in−H1_out≦10および3≦H2_in−H2_out≦10の条件を満たすことが好ましい。これにより、内側領域のゴム硬度H1_in、H2_inと外側領域のゴム硬度H1_out、H2_outとの関係が適正化される。
また、上記の構成では、内側領域におけるサイプ密度D_inと、外側領域におけるサイプ密度D_outとが、1.2≦D_out/D_in≦2.0の関係を有することが好ましい(図2参照)。すなわち、内側領域のサイプ密度D_inが、外側領域のサイプ密度D_outよりも低いことが好ましい。これにより、内側領域のサイプ密度D_inと外側領域のサイプ密度D_outとの関係が適正化される。
なお、サイプ密度とは、サイプ長さと陸部の接地面積との比をいう。サイプ長さは、例えば、サイプを屈曲形状とすることにより大きくできる。また、サイプ密度は、例えば、サイプ長さ、サイプ本数などの調整により、容易に調整できる。
上記のように、この空気入りタイヤ1では、三次元サイプ312、322および二次元サイプ332、342の配置と、内側領域のキャップゴム151_inおよび外側領域のキャップゴム151_outのゴム硬度差とによって、内側領域の陸部31、32の剛性が高く、外側領域の陸部33、34の剛性が低く設定される。したがって、上記したサイプ密度D_in、D_outの差が設けられることにより、内側領域の陸部31、32の剛性がさらに高く、外側領域の陸部33、34の剛性がさらに低く設定される。
また、上記の構成では、タイヤ接地面における内側領域の溝面積比S_inと外側領域の溝面積比S_outとが、1.2≦S_out/S_in≦2.0の関係を有し、且つ、タイヤ接地面における総溝面積比S_tが、0.25≦S_t≦0.38の範囲内にあることが好ましい(図2参照)。これにより、内側領域の溝面積比S_inと外側領域の溝面積比S_outとの比S_out/S_inおよび総溝面積比S_tが適正化される。
また、この空気入りタイヤ1では、内側領域のラグ溝311の溝幅W1(図示省略)と、外側領域のラグ溝341の溝幅W2(図示省略)とが、0.5[mm]≦W2−W1≦2.0[mm]の関係を有することが好ましい。かかる構成では、内側領域のラグ溝311が狭いので、タイヤのドライ操安性および高速耐久性能が向上する。また、外側領域のラグ溝341が広いので、タイヤのスノー性能が向上する。
また、この空気入りタイヤ1では、内側領域のラグ溝311の溝深さHd1(図示省略)と、外側領域のラグ溝341の溝深さHd2(図示省略)とが、1.0[mm]≦Hd2−Hd1≦3.0[mm]の関係を有することが好ましい。かかる構成では、内側領域のラグ溝311の溝Hd1が浅いので、特に、タイヤの高速耐久性能が向上する。また、外側領域のラグ溝341が深いので、タイヤのスノー性能が向上する。
なお、溝面積比とは、溝面積/(溝面積+接地面積)により定義される。溝面積とは、接地面における溝の開口面積をいう。また、溝とは、トレッド部の周方向溝およびラグ溝をいい、サイプやカーフを含まない。また、接地面積とは、タイヤと接地面との接触面積をいう。また、溝面積および接地面積は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。また、タイヤ接地面は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面をいう。
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
[変形例1]
図5は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例1を示す説明図である。
図2の構成では、3本の周方向主溝21〜23が配置されている。しかし、これに限らず、3本以上の周方向主溝21〜24が配置されても良い(図5参照)。
例えば、図5の変形例1では、4本の周方向主溝21〜24がタイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域に、左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝21〜24により、3つのセンター陸部32〜34と、左右一対のショルダー陸部31、35とが区画されている。ここでは、4本の周方向主溝21〜24および5つの陸部31〜35を、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって順に、第一陸部31、第一周方向主溝21、第二陸部32、第二周方向主溝22、第三陸部33、第三周方向主溝23、第四陸部34、第四周方向主溝24および第五陸部35と呼ぶ。
また、タイヤ赤道面CL上に、第三陸部33があり、第二陸部32および第四陸部34上に、内側領域の境界および外側領域の境界がそれぞれ位置している。したがって、第一陸部31および第二陸部32の一部が内側領域に属し、第四陸部34の一部および第五陸部35が外側領域に属している。また、第二陸部32〜第四陸部34が、複数のラグ溝321、331、341をそれぞれ有することにより、ブロック列となっている。
また、各陸部31〜35が、複数のサイプ312、322、332、342、352をそれぞれ有している。また、内側領域にある第一陸部31および第二陸部32に配置されたすべてのサイプ312、322が三次元サイプであり、外側領域にある第四陸部34および第五陸部35に配置されたすべてのサイプ342、352が二次元サイプとなっている。
なお、タイヤ赤道面CL上にある第三陸部33に配置されるサイプ332は、二次元サイプであっても良いし、三次元サイプであっても良い。あるいは、二次元サイプおよび三次元サイプが混在して配置されても良い。第三陸部33に配置されるサイプ332がすべて二次元サイプとなる構成では、タイヤのスノー操安性が向上し、逆に、すべて三次元サイプとなる構成では、タイヤのドライ操安性が向上する。
また、内側領域にある第一陸部31および第二陸部32が内側キャップゴム151_in(ゴム硬度H1_in、H2_inが68≦H1_in≦78かつ65≦H2_in≦75)から構成され、外側領域にある第四陸部34および第五陸部35が外側キャップゴム151_out(ゴム硬度H1_out、H2_outが65≦H1_out≦75かつ62≦H2_out≦72)から構成されている。このため、第一陸部31および第二陸部32の剛性が高く、第四陸部34および第五陸部35の剛性が低く設定されている。
なお、タイヤ赤道面CL上にある第三陸部33は、内側キャップゴム151_inにより構成されても良いし、外側キャップゴム151_outにより構成されても良い(図示省略)。第三陸部33が内側キャップゴム151_inから成る構成では、タイヤのスノー操安性が向上し、逆に、外側キャップゴム151_outから成る構成では、タイヤのドライ操安性が向上する。
なお、図5の空気入りタイヤ1では、各センター陸部32〜34がオープン構造のラグ溝321〜341を有することにより、ブロック列となっている。また、左右のショルダー陸部31、35がセミクローズド構造のラグ溝311、351を有することにより、リブとなっている。しかし、これに限らず、任意の陸部は、オープン構造、セミクローズド構造のラグ溝およびクローズド構造のいずれのラグ溝を有しても良い(図示省略)。また、各陸部は、ブロック列およびリブのいずれであっても良い(図示省略)。さらに、任意の陸部が、傾斜溝を有しても良い(図示省略)。
また、図5の空気入りタイヤ1では、各陸部31〜35のサイプ312〜352が、いずれもクローズドサイプとなっている。しかし、これに限らず、任意のサイプ312〜352が、オープンサイプであっても良いし、セミクローズドサイプであっても良い(図示省略)。
[変形例2]
図6は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例2を示す説明図である。同図は、非対称トレッドパターンを有する乗用車用ウィンタータイヤを示している。
図2の構成では、空気入りタイヤ1が、左右対称なトレッドパターンを有し、そのサイプ構成およびゴム硬度が左右非対称となっている。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ1が、左右非対称なトレッドパターンを有しても良い(図6参照)。
例えば、図6の変形例2では、空気入りタイヤ1が、タイヤ周方向に延在する3本の周方向主溝21〜23と、これらの周方向主溝21〜23に区画されて成る4つの陸部31〜34とをトレッド部に備えている。また、内側領域にある第一陸部31の接地幅が、外側領域にある第四陸部34の接地幅よりも広い。また、この第一陸部31が、タイヤ周方向に対して傾斜する複数の傾斜溝313と、タイヤ接地面の外側からタイヤ幅方向に延在して傾斜溝313に連通する複数の第一ラグ溝314_a、314_bと、タイヤ幅方向に延在して傾斜溝313と第一周方向主溝21とを繋ぐ複数の第二ラグ溝315_a〜315_cとを備えている。また、1本の傾斜溝313に対して3本の第一ラグ溝314が連通している。なお、第一ラグ溝314の本数は、3本以上6本以下の範囲内にあれば良い。
また、図6の変形例2では、第二ラグ溝315_a〜315_cのタイヤ周方向の配置間隔が第一ラグ溝314_a、314_bのタイヤ周方向の配置間隔よりも狭くなっている。これにより、第一陸部31の排水性およびスノートラクション性が高められる。また、傾斜溝313のタイヤ周方向に対する傾斜角φ(図示省略)が10[deg]≦φ≦40[deg]の範囲内にある。これにより、傾斜溝313の傾斜角φが適正化される。また、複数の第二ラグ溝315_a〜315_cのうちの全部あるいは一部の第二ラグ溝315_b、315_cが、溝底を底上げする底上部(図示省略)をそれぞれ有している。これにより、底上部が陸部31の剛性を補強する。
また、第二ラグ溝315_a〜315_cの溝幅W3(図示省略)が、2[mm]≦W3≦6[mm]の範囲内に設定されている。これにより、第二ラグ溝315_a〜315_cの溝幅W3が適正化される。また、第二陸部32および第三陸部33が、各陸部32、33をタイヤ幅方向に貫通する複数のラグ溝321、331をそれぞれ有している。また、これらのラグ溝321、331のうちの全部あるいは一部のラグ溝が溝底を底上げする底上部(図示省略)をそれぞれ有している。これにより、底上部が陸部32、33の剛性を補強する。
また、タイヤ赤道面CLを基準としたタイヤ接地端Tまでの距離DEと、第一陸部31を区画する第一周方向主溝21(の溝中心線)までの距離D1と、第四陸部34を区画する第三周方向主溝23までの距離D3とが、0.10≦D1/DE≦0.30(好ましくは、0.15≦D1/DE≦0.25)かつ0.55≦D3/DE≦0.75の関係を有している。このとき、第一周方向主溝21および第三周方向主溝23がタイヤ赤道面CLを挟んで配置されることが、前提となる。これにより、左右の第一陸部31および第四陸部34の接地幅の関係が適正化される。なお、図6の変形例2では、タイヤ赤道面CLを基準とした第二周方向主溝22の距離D2が、D2=D1となっている。
また、第一陸部31が、傾斜溝313とタイヤ接地端Tとの間に配置されてタイヤ周方向に延在する周方向細浅溝25を有している。また、この周方向細浅溝25の溝幅W4(図示省略)および溝深さHd3(図示省略)が、2[mm]≦W4≦4[mm]かつ2[mm]≦Hd3≦4[mm]の範囲内に設定されている。これにより、周方向細浅溝25のエッジ成分により、スノートラクション性が増加する。なお、図6の変形例2では、タイヤ赤道面CLを基準とした周方向細浅溝25の距離D4が、0.50≦D4/DE≦0.90となっている。
図6の変形例2では、上記のように、内側領域にある第一陸部31が幅広構造を有し、且つ、この第一陸部31が複数の傾斜溝313と複数の第一ラグ溝314_a、314_bと複数の第二ラグ溝315_a〜315_cとを備えることにより、この幅広な第一陸部31の剛性が低減され、また、第一陸部31の排水性が確保される。さらに、1本の傾斜溝313に対して3本以上の第一ラグ溝314_a、314_bが連通することにより、第一陸部31の排水性およびスノートラクション性が向上する。これらにより、タイヤのドライ性能、ウェット性能およびスノー性能を両立できる。
また、図6の変形例2では、各陸部31〜34が、複数のサイプ312〜342をそれぞれ有している。また、第一陸部31では、傾斜溝313、第一ラグ溝314_a、314_bおよび第二ラグ溝315_a〜315_cに区画された各ブロックが、複数のサイプ312をそれぞれ有している。また、第一陸部31に配置されたサイプ312の90[%]以上が三次元サイプから構成され、また、第三陸部33および第四陸部34に配置されたサイプ322の90[%]以上が二次元サイプから構成されている。また、第一陸部31におけるキャップゴム151_inのゴム硬度H1_in、H2_inと、第三陸部33および第四陸部34におけるキャップゴム151_outのゴム硬度H1_out、H2_outとが、H1_in>H1_outかつH2_in>H2_outの関係を有している。
なお、タイヤ赤道面CL上にある第二陸部32に配置されるサイプ322は、二次元サイプであっても良いし、三次元サイプであっても良い。あるいは、二次元サイプおよび三次元サイプが混在して配置されても良い。第二陸部32に配置されるサイプ322がすべて二次元サイプとなる構成では、タイヤのスノー操安性が向上し、逆に、すべて三次元サイプとなる構成では、タイヤのドライ操安性が向上する。
また、内側領域にある第一陸部31が内側キャップゴム151_in(ゴム硬度H1_in、H2_inが68≦H1_in≦78かつ65≦H2_in≦75)から構成され、外側領域にある第三陸部33および第四陸部34が外側キャップゴム151_out(ゴム硬度H1_out、H2_outが65≦H1_out≦75かつ62≦H2_out≦72)から構成されている。このため、第一陸部31の剛性が高く、第三陸部33および第四陸部34の剛性が低く設定されている。
また、タイヤ赤道面CL上にある第二陸部32は、内側キャップゴム151_inにより構成されても良いし、外側キャップゴム151_outにより構成されても良い(図示省略)。第三陸部33が内側キャップゴム151_inから成る構成では、タイヤのスノー操安性が向上し、逆に、外側キャップゴム151_outから成る構成では、タイヤのドライ操安性が向上する。
また、図6の変形例2では、空気入りタイヤ1が、広い接地幅を有する第一陸部31を車幅方向内側にして車両に装着すべき指定を有する。一般的な高性能車両では、キャンバーアングルがネガティブ方向に大きく設定されるため、車幅方向内側領域におけるタイヤ接地長が長くなる。そこで、空気入りタイヤ1が第一陸部31を車幅方向内側にして車両に装着されることにより、スノートラクション性が効果的に向上する。また、上記のように、第一陸部31の剛性が高いので、第一陸部31を車幅方向内側にして装着されることにより、トレッド部の剛性が高く維持される。これにより、タイヤの高速耐久性能が向上する。
なお、タイヤ接地端Tおよびタイヤ接地幅は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、規定あるいは測定される。
[変形例3]
図7は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例3を示す説明図である。同図は、方向性トレッドパターンを有する乗用車用ウィンタータイヤを示している。
図7に示すように、この空気入りタイヤ1は、方向性トレッドパターンを有しても良い。なお、かかる空気入りタイヤ1は、一般に、車両に対するタイヤの装着方向の指定を有することにより、車両の前進方向を基準とした回転方向の指定を有する。
また、図7の変形例3では、空気入りタイヤ1が、タイヤ周方向に延在する2本の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画されて成る3つの陸部31〜33とを備えている。具体的には、2本の周方向主溝21、22が、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域に、左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝21、22により、1つのセンター陸部32と、左右一対のショルダー陸部31、33とが区画されている。また、内側領域の境界および外側領域の境界が、センター陸部32上にある。このため、左右の周方向主溝21、22が、内側領域および外側領域にそれぞれ配置されている。
なお、ここでは、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の周方向主溝21、22を最外周方向主溝と呼ぶ。また、左右の最外周方向主溝の溝中心線を境界とするトレッド部のタイヤ幅方向内側の領域をセンター領域と呼び、タイヤ幅方向外側の左右の領域をショルダー領域と呼ぶ。
また、タイヤ赤道面CLが、センター陸部32の中央部に位置している。また、タイヤ赤道面CLから一方の周方向主溝21(他方の周方向主溝22)の溝中心線までの距離D5と、タイヤ赤道面CLから左右のタイヤ接地端Tまでの距離DEとが、0.40≦D5/DE≦0.60の関係を有している。
また、センター陸部32が、リブ状構造を有し、また、複数の主傾斜溝323と複数の副傾斜溝324とを有している。
また、主傾斜溝323が、タイヤ周方向の一方向に向かってタイヤ赤道面CLから離隔する態様でタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在している。また、複数の主傾斜溝323が、タイヤ周方向に所定間隔で配置され、また、タイヤ赤道面CLの両側にてタイヤ周方向に向かって交互に配置されている。また、各主傾斜溝323の一方の端部(タイヤ回転方向に対して後側の端部)が、左右の周方向主溝21、22のいずれか一方にそれぞれ連通している。また、この一方の端部における主傾斜溝323と周方向主溝21とのなす角θ1が、56[deg]≦θ1≦76[deg]の範囲内にある。また、各主傾斜溝323の他方の端部(タイヤ回転方向に対して前側の端部)が、タイヤ赤道面CLを越えて他の主傾斜溝323に連通している。また、この他方の端部における主傾斜溝323と副傾斜溝324とのなす角θ2が、37[deg]≦θ2≦57[deg]の範囲内にある。また、複数の主傾斜溝323が、タイヤ赤道面CL上にて、タイヤ周方向に沿って延在するジグザグ形状の中央溝を形成している。また、各主傾斜溝323が、この中央溝となる部分にて、2[mm]以上6[mm]以下の溝幅を有し、また、2[mm]以上6[mm]以下の溝深さを有している。
また、副傾斜溝324が、タイヤ周方向の一方向に向かってタイヤ赤道面CLから離隔する態様でタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在している。また、副傾斜溝324が、2つの主傾斜溝323に対して交差しつつ、センター陸部32内で両端部を終端させている。なお、副傾斜溝324が、3つ以上の主傾斜溝323に対して交差しても良い(図示省略)。また、複数の副傾斜溝324が、タイヤ周方向に所定間隔で配置され、また、タイヤ赤道面CLの両側にてタイヤ周方向に向かって交互に配置されている。また、タイヤ赤道面CLから副傾斜溝324のタイヤ幅方向内側の端部までの距離D6と、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離DEとが、0.05≦D6/DE≦0.25の関係を有している。また、タイヤ赤道面CLから副傾斜溝324のタイヤ幅方向外側の端部までの距離D7と、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離DEとが、0.25≦D7/DE≦0.45の関係を有している。
また、左右のショルダー陸部31、33が、複数のラグ溝311、331と、周方向細溝316、333とをそれぞれ有している。
また、各ラグ溝321(331)が、一方の端部にて周方向主溝21(22)に連通すると共に、他方の端部にてタイヤ接地端Tを越えてタイヤ幅方向に延在している。また、各ラグ溝321(331)が、周方向主溝21(22)を間において主傾斜溝323に連通している(周方向主溝21(22)に対して開口部を対向させている)。
また、図7の変形例3では、各周方向細溝316、333が、タイヤ周方向に延在するストレート形状の細溝となっている。また、各周方向細溝316、333の溝幅が、2[mm]以上4[mm]以下の範囲内に設定されている。また、各周方向細溝316、333の溝深さが、2[mm]以上4[mm]以下の範囲内に設定されている。
また、センター領域における接地幅D_ceが、左右の周方向主溝21、22に区画されたセンター陸部32の幅に一致する(図7参照)。また、センター領域における接地幅D_ce内の溝面積には、主傾斜溝323および副傾斜溝324の溝面積が含まれ、周方向主溝21の溝面積が含まれない。一方、タイヤ接地面における総溝面積には、左右の周方向主溝21の溝面積および主傾斜溝323および副傾斜溝324の溝面積が含まれる。そして、これらに基づいて、タイヤ接地面におけるセンター領域の接地幅D_ce内の溝面積比S_ceと、タイヤ接地面における総溝面積比S_tとが算出されて、上記の範囲に適正化されている。
図7の変形例3では、上記のように、センター陸部32が、タイヤ赤道面CL付近からタイヤ幅方向外側に向かって延在する主傾斜溝323および副傾斜溝324を備えるので、タイヤの排水性能および排雪性能が向上する。これにより、ドライ操安性およびスノー操安性が向上する利点がある。また、副傾斜溝324が、少なくとも2つの主傾斜溝323に対して交差しつつセンター陸部32内で両端を終端させ、また、主傾斜溝323および副傾斜溝324がタイヤ周方向で交互に配置されることにより、トレッド部の剛性が維持される。これにより、ドライ操安性を適正に確保しつつスノー操安性を向上できる。
また、図7の変形例3では、センター陸部32と、左右のショルダー陸部31、33とが、複数のサイプ312、322をそれぞれ有している。また、内側領域にあるショルダー陸部31に配置されたすべてのサイプ312が三次元サイプであり、外側領域にあるショルダー陸部33に配置されたすべてのサイプ332が二次元サイプとなっている。これにより、内側領域にあるサイプ312、322の90[%]以上が三次元サイプから構成され、また、外側領域にあるサイプ332、322の90[%]以上が二次元サイプから構成されている。
なお、センター陸部32に配置されるサイプ322は、二次元サイプであっても良いし、三次元サイプであっても良い。あるいは、二次元サイプおよび三次元サイプが混在して配置されても良い。センター陸部32に配置されるサイプ322がすべて二次元サイプとなる構成では、タイヤのスノー操安性が向上し、逆に、すべて三次元サイプとなる構成では、タイヤのドライ操安性が向上する。
また、内側領域にあるショルダー陸部31が内側キャップゴム151_in(ゴム硬度H1_in、H2_inが68≦H1_in≦78かつ65≦H2_in≦75)から構成され、外側領域にあるショルダー陸部33が外側キャップゴム151_out(ゴム硬度H1_out、H2_outが65≦H1_out≦75かつ62≦H2_out≦72)から構成されている。このため、内側領域にあるショルダー陸部31の剛性が高く、外側領域にあるショルダー陸部33の剛性が低く設定されている。
なお、センター陸部32は、内側キャップゴム151_inにより構成されても良いし、外側キャップゴム151_outにより構成されても良い(図示省略)。センター陸部32が内側キャップゴム151_inから成る構成では、タイヤのスノー操安性が向上し、逆に、外側キャップゴム151_outから成る構成では、タイヤのドライ操安性が向上する。
また、図7の変形例3では、空気入りタイヤ1が、内側領域を車幅方向内側にして車両に装着すべき指定を有する。一般的な高性能車両では、キャンバーアングルがネガティブ方向に大きく設定される。このとき、上記のように、第一陸部31の剛性が高いので、空気入りタイヤ1が第一陸部31を車幅方向内側にして装着されることにより、トレッド部の剛性が高く維持される。これにより、タイヤの高速耐久性能が向上する。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21〜23と、これらの周方向主溝に区画されて成る複数の陸部31〜34とをトレッド部に備える(図2参照)。また、複数の陸部31〜34が複数のサイプ312〜342をそれぞれ有する。また、内側領域に配置されたサイプ312、322の90[%]以上が三次元サイプから成ると共に、外側領域に配置されたサイプ332、342の90[%]以上が二次元サイプから成る。また、トレッド部がキャップゴム151およびアンダーゴム152を有する。また、内側領域におけるキャップゴム151_inの−10[℃]におけるゴム硬度H1_inおよび20[℃]におけるゴム硬度H2_inと、外側領域におけるキャップゴム151_outの−10[℃]におけるゴム硬度H1_outおよび20[℃]におけるゴム硬度H2_outとが、H1_in>H1_outかつH2_in>H2_outの関係を有する(図1参照)。
かかる構成では、三次元サイプ312、322が内側領域に配置され、二次元サイプ332、342が外側領域に配置されるので、内側領域の剛性が高く、外側領域の剛性が低く設定される(図2参照)。また、内側領域のゴム硬度H1_in、H2_inと、外側領域のゴム硬度H1_out、H2_outとが、H1_in>H1_outかつH2_in>H2_outの関係を有するので、内側領域の剛性が高く、外側領域の剛性が低く設定される。したがって、内側領域の剛性が相乗的に高くなり、また、外側領域の剛性が相乗的に低くなる。すると、空気入りタイヤ1が内側領域を車幅方向内側にして車両に装着されたときに、内側領域がドライ操安性の向上に大きく寄与し、また、外側領域がスノー操安性の向上に大きく寄与する。これにより、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とが高次元で両立する利点がある。
また、かかる構成では、上記のように内側領域の剛性が高いので、空気入りタイヤ1が大きなキャンバ角を有する車両に対して内側領域を車幅方向内側にして装着されたときに、トレッド部の剛性が高く維持される。これにより、タイヤの高速耐久性能が向上する利点がある。また、かかる装着状態では、タイヤ接地長が車幅方向内側にて長くなる。このとき、上記のように内側領域の剛性が高いので、タイヤのドライ性能がさらに向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側領域におけるゴム硬度H1_in、H2_inおよび外側領域におけるゴム硬度H1_out、H2_outが、68≦H1_in≦78、65≦H2_in≦75、65≦H1_out≦75および62≦H2_out≦72、ならびに、3≦H1_in−H1_out≦10および3≦H2_in−H2_out≦10の条件を満たす。かかる構成では、内側領域のゴム硬度H1_in、H2_inおよび外側領域のゴム硬度H1_out、H2_outの範囲、ならびに、内側領域と外側領域とのゴム硬度差が適正化されるので、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とがさらに高次元で両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側領域におけるサイプ密度D_inと、外側領域におけるサイプ密度D_outとが、1.2≦D_out/D_in≦2.0の関係を有する。かかる構成では、内側領域のサイプ密度D_inと外側領域のサイプ密度D_outとの比D_out/D_inが適正化されるので、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とがさらに高次元で両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ接地面における内側領域の溝面積比S_inと外側領域の溝面積比S_outとが、1.2≦S_out/S_in≦2.0の関係を有し、且つ、タイヤ接地面における総溝面積比S_tが、0.25≦S_t≦0.38の範囲内にある。かかる構成では、内側領域の溝面積比S_inと外側領域の溝面積比S_outとの比S_in/S_outおよび総溝面積比S_tが適正化されるので、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とがさらに高次元で両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、タイヤ接地端Tに開口するラグ溝311、341を内側領域および外側領域にそれぞれ備える(図2参照)。また、内側領域のラグ溝311の溝幅W1と、外側領域のラグ溝341の溝幅W2とが、0.5[mm]≦W2−W1≦2.0[mm]の関係を有する。かかる構成では、内側領域のラグ溝311が狭いので、タイヤのドライ操安性および高速耐久性能が向上する利点がある。また、外側領域のラグ溝341が広いので、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側領域のラグ溝311の溝深さHd1と、外側領域のラグ溝341の溝深さHd2とが、1.0[mm]≦Hd2−Hd1≦3.0[mm]の関係を有する。かかる構成では、内側領域のラグ溝311が浅いので、特に、タイヤの高速耐久性能が向上する利点がある。また、外側領域のラグ溝341が深いので、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、3本の周方向主溝21〜23と、4つの陸部31〜34とをトレッド部に備える(図6参照)。また、内側領域の接地端T上にある第一陸部31の接地幅が、外側領域の接地端T上にある第四陸部34の接地幅よりも広い。また、第一陸部31が、タイヤ周方向に対して傾斜する複数の傾斜溝313と、タイヤ接地面の外側からタイヤ幅方向に延在して傾斜溝313に連通する複数の第一ラグ溝314_a、314_bと、タイヤ幅方向に延在して傾斜溝313と周方向主溝21とを繋ぐ複数の第二ラグ溝315_a〜315_cとを備える。また、1本の傾斜溝313に対して3本以上の第一ラグ溝314_a、314_bが連通する。
かかる構成では、内側領域にある第一陸部31が幅広構造を有し、且つ、この第一陸部31が複数の傾斜溝313と複数の第一ラグ溝314_a、314_bと複数の第二ラグ溝315_a〜315_cとを備えることにより、この幅広な第一陸部31の剛性が低減され、また、第一陸部31の排水性が確保される。さらに、1本の傾斜溝313に対して3本以上の第一ラグ溝314_a、314_bが連通することにより、第一陸部31の排水性およびスノートラクション性が向上する。これらにより、タイヤのドライ性能、ウェット性能およびスノー性能を両立できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、左右の最外周方向主溝21、22に区画されて成る1つのセンター陸部32をセンター領域に備える(図7参照)。また、センター陸部32が、タイヤ周方向に配列された複数の主傾斜溝323および複数の副傾斜溝324を有する。また、複数の主傾斜溝323が、タイヤ周方向の一方向に向かってタイヤ赤道面CLから離隔する態様でタイヤ周方向に対して傾斜しつつそれぞれ延在する。また、複数の主傾斜溝323が、一方の端部にて、左右の最外周方向主溝21、22のいずれか一方にそれぞれ連通する。また、複数の主傾斜溝323が、タイヤ赤道面CLの両側にてタイヤ周方向に向かって交互に配置される。また、複数の副傾斜溝324が、タイヤ周方向の一方向に向かってタイヤ赤道面CLから離隔する態様でタイヤ周方向に対して傾斜しつつそれぞれ延在する。また、複数の副傾斜溝324が、2つの主傾斜溝323、323に対して交差しつつセンター陸部32内で両端部を終端させる。また、複数の副傾斜溝324が、タイヤ赤道面CLの両側にてタイヤ周方向に向かって交互に配置される。
かかる構成では、センター陸部32が、タイヤ赤道面CL付近からタイヤ幅方向外側に向かって延在する主傾斜溝323および副傾斜溝324を備えるので、タイヤの排水性能および排雪性能が向上する。これにより、ドライ操安性およびスノー操安性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、内側領域を車幅方向内側にして車両に装着すべき装着方向の指定を有する(図2参照)。かかる構成では、高い剛性を有する内側領域が車幅方向内側に配置され、低い剛性を有する外側領域を車幅方向外側に配置される。これにより、内側領域がドライ操安性の向上に大きく寄与し、また、外側領域がスノー操安性の向上に大きく寄与して、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とが高次元で両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、−4[deg]≦δ≦0[deg]のキャンバ角δを有する車両に装着すべき指定を有する。これにより、高い剛性を有する内側領域の機能が適正に発揮されて、タイヤの高速耐久性能が効果的に向上する利点がある。
図8は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)ドライ操安性、(2)スノー操安性および(3)高速耐久性能に関する評価が行われた(図8参照)。これらの性能試験では、タイヤサイズ235/45R19の空気入りタイヤがリムサイズ19×8Jのリムに組み付けられ、この空気入りタイヤに250[kPa]の空気圧およびETRTO規定の「LOAD CAPACITY」の85[%]の荷重が付与される。また、試験車両として、排気量3.0[L]のセダンタイプの四輪駆動車が用いられる。
(1)ドライ操安性に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両が平坦な周回路を有するテストコースを60[km/h]〜240[km/h]で走行する。そして、テストドライバーがレーチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について官能評価を行う。この評価は比較例1を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
(2)スノー操安性に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両が雪路試験場のハンドリングコースを速度40[km/h]で走行して、テストドライバーが官能評価を行う。この評価は比較例1を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
(3)高速耐久性能に関する評価では、室内ドラム試験機が用いられる。また、キャンバ角δがδ=−3[deg]に設定される。そして、走行速度300[km/h]の試験条件下にて、タイヤが破壊するまでの走行距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
実施例1〜7の空気入りタイヤ1は、図1の構造および図2のトレッドパターンを有し、3本の周方向主溝21〜23と、4つの陸部31〜34とをトレッド部に備える。また、内側領域にある第一陸部31および第二陸部32のすべてのサイプ312、322が三次元サイプから成り、外側領域にある第三陸部33および第四陸部34のすべてのサイプ332、342が二次元サイプから成る。また、内側領域におけるキャップゴム151_inのゴム硬度H1_in、H2_inが、外側領域におけるキャップゴム151_outのゴム硬度H1_out、H2_outよりも大きい(H1_in>H1_outかつH2_in>H2_out)。また、内側領域におけるサイプ密度D_inと、外側領域におけるサイプ密度D_outとの関係が調整されている。また、各陸部31〜34のラグ溝の溝面積あるいは配置間隔の調整により、タイヤ接地面における内側領域の溝面積比S_inと外側領域の溝面積比S_outとが調整されている。
また、実施例8の空気入りタイヤ1は、図6のトレッドパターンを有する。また、内側領域のキャップゴム151_inと外側領域のキャップゴム151_outとの境界が第一周方向主溝21上にある。また、第一陸部31のすべてのサイプ312が三次元サイプから成り、第二陸部32〜第四陸部34のすべてのサイプ322〜342が二次元サイプから成る。また、実施例9の空気入りタイヤは、図7のトレッドパターンを有する。また、内側領域のキャップゴム151_inと外側領域のキャップゴム151_outとの境界がタイヤ赤道面CL上にある。また、タイヤ赤道面CLを境界とする内側領域側の領域にあるすべてのサイプ312、322が三次元サイプから成り、外側領域側の領域にあるすべてのサイプ332、322が二次元サイプから成る。
従来例の空気入りタイヤは、3本の周方向主溝と、4つの陸部とをトレッド部に備える。また、各陸部のサイプが、いずれも二次元サイプである。また、内側領域にある陸部のキャップゴムのゴム硬度H1_in、H2_inが、外側領域にある陸部のキャップゴムのゴム硬度H1_out、H2_outよりも大きい。また、内側領域におけるサイプ密度D_inが、外側領域におけるサイプ密度D_outよりも小さい。
試験結果に示すように、実施例1〜9の空気入りタイヤ1では、従来例の空気入りタイヤと比較して、タイヤのドライ操安性およびスノー操安性が向上することが分かる(図8参照)。また、実施例1、2を比較すると、内側領域と外側領域とのゴム硬度差が適正化されることにより、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とが両立することが分かる。また、実施例1、3〜5を比較すると、内側領域のサイプ密度D_inと外側領域のサイプ密度D_outとの比D_in/D_outが適正化され、また、内側領域の溝面積比S_inと外側領域の溝面積比S_outとの比S_in/S_outおよび総溝面積比S_tが適正化されることにより、タイヤのドライ操安性とスノー操安性とが両立することが分かる。また、実施例1、6〜8を比較すると、内側領域のラグ溝の溝幅W1および溝深さHd1と、外側領域のラグ溝の溝幅W2および溝深さHd2との関係が適正化されることにより、タイヤの高速耐久性能が向上することが分かる。