JP5438309B2 - 信号送受信装置、nmrプローブおよび核磁気共鳴装置 - Google Patents
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Description
このような送受分離型コイルでは、送信側のコイルと、分離型のコイルとが、電気的、磁気的に結合してしまい、送信側のコイルと、分離型のコイルとに接続されている共振回路との整合をとることが困難となる。また、送信信号である振動磁場照射時に送信側のコイルから受信側のコイルへ磁場が漏れる場合があるが、このような場合、照射した振動磁場が受信コイルに接続されたプリアンプを飽和させ、このプリアンプを一時的、または恒久的に使用不可能な状態としてしまう。
このような問題を解決するために、送受分離型コイルにおける結合を低下させる必要がある。
その他の解決手段については、実施形態中で適宜記載する。
高周波送受信回路100(信号送受信回路)は、サンプルに対し、振動磁場(送信信号)を照射したり、サンプル内で励起されるNMRの電磁波信号(受信信号)を受信したりする同調整合回路3と、一方が同調整合回路3に接続しており、他方が高周波端子5に接続されている信号伝達線4を有してなる。NMR測定で用いられる送受信信号は、100MHz以上の高周波信号であることが多いので、送受信信号を適宜、高周波信号と記載する。信号伝達線4は、送信信号や、受信信号を伝達する導線である。高周波コイル1を含む同調整合回路3は、高周波コイル1を所定の共振周波数に共振させ、信号伝達線4を用いて高周波コイル1と外部回路とで高周波信号の送受信を行う。なお、同調整合回路3は、高周波コイル1と可変コンデンサ2の組み合わせによる回路であるが、高周波コイル1と可変コンデンサ2の組み合わせは自由であるため、図1では、同調整合回路3の具体的な構成は図示していない。同調整合回路3の構成例は、図2および図3で後記する。
λ/4線11の長さは、後記するように、高周波送受信回路100が設置される強磁場の影響を受けないような長さに調節される。ただし、長さLは以下の式(1)に従って調節される。なお、式(1)において、λは、高周波信号の波長である。
λ/4線11は、波長がλの信号または波長がλの奇数倍の信号に対しては、λ/4線11の一端の電圧振幅がゼロの場合もう一端の電圧振幅は最大となる。逆に、一端の電圧振幅が最大の場合もう一端の電圧振幅はゼロとなる。
λ/4線11のスイッチ部12側の一端をスイッチ部12で非接地としている場合は、この一端の電圧振幅は最大となるため、反対側の一端、すなわち接続点10の電圧振幅はゼロとなる。これは、あたかも接続点がGNDになることと等しく、波長がλの信号または波長がλの奇数倍の信号は接続点10を通過できなくなる。よって本実施形態では、この状態を接続点10をBEF(Band Eliminated Filter)として働かせると記載する。
これに対し、λ/4線11のスイッチ部12側の一端をスイッチ部12で接地している場合は、この一端の電圧振幅はゼロとなるため、反対側の一端、すなわち接続点10の電圧振幅は最大となる。これは、あたかも接続点にはλ/4線11が接続されていないことと等しく、波長がλの信号または波長がλの奇数倍の信号は接続点10を自由に通過できる。よって本実施形態では、この状態を接続点10をBPF(Band Pass Filter)として働かせると記載する。
このとき、高周波送受信回路100は、送信側回路および受信側回路において共通の構造を有する。ただし、送信側回路と受信側回路では、使用するタイミングが異なる。送信側回路として用いる場合は、送信時が使用状態、受信時が非使用状態となる。受信側回路として用いる場合は逆になり、送信時が非使用状態、受信時が使用状態となる。
そこで、例えば受信時の送信側回路における損失を抑えるためには、受信時において、λ/4線11における一方の端部を強制的に非接地とすることで、同調整合回路3と信号伝達線4の接続点10を強制的に接地し、この接続点10をBEFとして働かせることで、少なくとも信号伝達線4における損失を防ぐことができる。これにより、受信時に送信側回路で発生する損失を防ぐことが可能となる。
同調整合回路3と信号伝達線4の接続点10をBEFとして働かせるためには、スイッチ部12を非接地側に切り替えればよい。
送信時には、λ/4線11の一端を接地することで、前記した理由により送信側回路101はλ/4線11が同調整合回路3に接続されていない回路と等価となり、送信回路のQ値はおよそλ/4線11が接続される前の回路のまま維持される。
なお、λ/4線11の一端を接地・開放するためには、例えばλ/4線11の一端にスイッチ部12部としてダイオード13(図2および図3)を含む回路を接続し、このダイオード13に制御信号を送ればよい。
また、λ/4線11が、同調整合回路3と、信号伝達線4との間の接続点10に接続することにより、非使用時における信号伝達線4での損失を防ぐことができる。
高周波送受信装置110a(110:信号送受信装置)、送信側回路101のみに高周波送受信回路100a(100)を搭載した例を示す。
高周波送受信装置110aは、高周波送受信対象9(サンプル)に対し、高周波信号を照射(送信)する送信側回路101(送信装置)と、高周波送受信対象9(サンプル)からの高周波信号を受信する受信側回路102(受信装置)とを備えている。同調整合回路3a(3)は、送信側回路101および受信側回路102ともに、高周波コイル1と、可変コンデンサ2が直列に接続された第1回路および可変コンデンサ2が備えられた第2回路が並列接続されている。第1回路および第2回路は、ともに接地されている。
なお、図2の同調整合回路3aでは、1つの高周波コイル1、および2つの可変コンデンサ2を有しているが、必要に応じて高周波コイル1や可変コンデンサ2を追加してもよい。
高周波端子17(5)は、図示しない送信信号生成回路などの外部回路が接続される端子である。
なお,図が煩雑になるのを防ぐため,高周波コイル1と高周波送受信対象9は別々に図示したが,実際には高周波コイル1の中に高周波送受信対象9が装填される形態となる。
なお、λ/4線11における波長短縮率の代表的な値は66%〜70%である。
図3に示す高周波送受信装置110b(110)は、送信側回路101および受信側回路102bともに高周波送受信回路100aを有している構成となっている。
送信側回路101および受信側回路102bに搭載される高周波送受信回路100aの構成は、図2と同様であるので説明を省略する。さらに、送信側回路101における高周波送受信回路100aの動作は、図2と同様であるので説明を省略する。
また、受信側回路102bの高周波送受信回路100aでは、高周波信号受信時(送信回路非使用状態かつ受信回路使用状態時)に受信側制御端子20に電圧を印加することでダイオード13がON状態となり、図1のスイッチ部12における接地状態と等価となる。また、受信側回路102bの高周波送受信回路100aでは、高周波信号送信時(送信回路使用状態かつ受信回路非使用状態時)には受信側制御端子20に電圧を印加しないので、ダイオード13がOFF状態となり、図1のスイッチ部12における非接地状態と等価となる。
なお、高周波端子19(5)は、図示しない受信信号解析回路などの外部回路が接続される端子である。
図4に示すNMRプローブ200は、筐体201の中に高周波送受信回路100b(100)が内蔵されている。高周波送受信回路100bは、図1の高周波送受信回路100と同様の構成を有している。また、スイッチ部12として、ダイオード13が備えられた構成となっている。なお、図2および図3におけるコンデンサ14および抵抗15は記載を省略されている。
NMR測定システム300(核磁気共鳴装置)は、静磁場発生用磁石301における測定用空間305に高周波送受信回路100bが挿入された構造となっている。測定用空間305はボア307によって区切られている。静磁場発生用磁石301は、冷媒中に設置されており、ボア307と、静磁場発生用磁石301との間(空間306)も、冷媒で満たされている。なお、ボア307と冷媒の間には,真空断熱層などが配置されるが、図5では省略している。
高周波送受信回路100bの構成は、図4で示した高周波送受信回路100bの構成と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。なお、図4と同様に高周波送受信回路100bにおいて信号伝達線4(図1)や、高周波端子5(図1)などが省略されている。また、高周波送受信回路100bは、図4で示すような筐体201で覆われたプローブ200内に設置されるが、図5〜図7では、煩雑になるのを避けるためプローブ200の構造は省略する。
ここで、NMR測定システム300aが、図5におけるNMR測定システム300と異なる点は、測定用空間404が十字形をしており、静磁場方向403に対して平行方向にも、垂直方向にも高周波送受信回路100bを挿入できるようになっていることである。
本実施形態によれば、使用状態・非使用状態の切り替えが可能な高周波送受信回路100において、使用状態・非使用状態の切り替え手段として弱磁場中でしか確実に動作できないダイオード13を用いる場合でも、λ/4線11の先にこのダイオード13を接続することにより、確実に動作できる領域にダイオード13を設置することができる。これにより、強磁場中に配置された高周波送受信回路100の送信・受信を余分な損失を発生させずに切り替えることを可能としつつ、スイッチ部12としてのダイオード13を確実に動作させることが可能となる。すなわち、送受信を一つの高周波コイル1で行う高周波送受信回路100よりも送信能力や受信能力に優れた高周波送受信回路100を提供できることに加え、スイッチ部12としてのダイオード13を確実に動作させることが可能な高周波送受信回路100を提供することができる。
また、送信用回路101・受信用回路102のように、それぞれの役割に特化した回路となることで、溶液NMR、固体NMRにおける測定感度を総合的に上げることが可能となる。
4 信号伝達線
11 λ/4線
12 スイッチ部
13 ダイオード
100,100a,100b 高周波送受信回路
101 送信側回路
102,102b 受信側回路
110,110a,110b 高周波送受信装置
200 プローブ
300,300a,300b NMR測定システム(核磁気共鳴装置)
Claims (10)
- 核磁気共鳴を励起するための励起信号の送信を行う送信装置と、前記励起信号によって励起される核磁気共鳴信号の受信を行う受信装置とを有する信号送受信装置であって、
前記受信装置は、
磁場中に設置され、前記核磁気共鳴に関する信号を送受信する同調整合回路と、前記信号を伝達する信号伝達線と、前記信号の波長をλとしたとき、式(1)で規定される長さLによって長さが調節されているλ/4線と、接地された接続先および接地されていない接続先を切り替えるスイッチ部と、
を有し、
前記同調整合回路と、前記信号伝達線とは、互いに接続されており、
前記λ/4線は、一方の端部が、前記同調整合回路と前記信号伝達線との間に接続しており、他方の端部が、前記スイッチ部に接続され、
前記λ/4線の長さLは、前記スイッチ部の動作が保証される磁場強度の領域に設置される長さであり、
前記受信装置は、
前記信号を受信するとき、前記スイッチ部を接地するよう切り替え、
前記信号を受信しないとき、前記スイッチ部を接地しないよう切り替える
ことを特徴とする信号送受信装置。
L=λ/4+(N・λ)/2(N=0,1,2,3,・・・)・・・(1) - 前記スイッチ部は、ダイオードを含む回路である
ことを特徴とする請求項1に記載の信号送受信装置。 - 前記受信装置は、
使用状態のとき、前記スイッチ部を接地するよう切り替え、
非使用状態のとき、前記スイッチ部を接地しないよう切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の信号送受信装置。 - 前記同調整合回路が冷却される場合、前記λ/4線の長さLは、前記スイッチ部の動作が保証される温度の領域に設置される長さである
ことを特徴とする請求項1に記載の信号送受信装置。 - 前記信号は、100MHz以上の周波数を有する電磁波信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の信号送受信装置。 - 前記信号伝達線は、一方の端部が前記同調整合回路および前記λ/4線に接続され、他方の端部が出力端子または入力端子となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の信号送受信装置。 - 核磁気共鳴を励起するための励起信号の送信を行う送信装置と、前記励起信号によって励起される核磁気共鳴信号の受信を行う受信装置とを有するNMRプローブであって、
前記受信装置は、
磁場中に設置され、前記核磁気共鳴に関する信号を送受信する同調整合回路と、前記信号を伝達する信号伝達線と、前記信号の波長をλとしたとき、式(1)で規定される長さLによって長さが調節されているλ/4線と、接地された接続先および接地されていない接続先を切り替えるスイッチ部と、
を有し、
前記同調整合回路と、前記信号伝達線とは、互いに接続されており、
前記λ/4線は、一方の端部が、前記同調整合回路と前記信号伝達線との間に接続しており、他方の端部が、前記スイッチ部に接続され、
前記λ/4線の長さLは、前記スイッチ部の動作が保証される磁場強度の領域に設置される長さであり、
前記受信装置は、
前記信号を受信するとき、前記スイッチ部を接地するよう切り替え、
前記信号を受信しないとき、前記スイッチ部を接地しないよう切り替える
ことを特徴とするNMRプローブ。
L=λ/4+(N・λ)/2(N=0,1,2,3,・・・)・・・(1) - サンプルに核磁気共鳴信号を励起するための信号を照射する送信装置と、前記信号によって前記サンプル内で励起される核磁気共鳴の信号を受信する受信装置と、前記サンプルに静磁場を与える静磁場発生用磁石と、を有する核磁気共鳴装置であって、
前記受信装置は、
磁場中に設置され、前記核磁気共鳴に関する信号を送受信する同調整合回路と、前記信号を伝達する信号伝達線と、前記信号の波長をλとしたとき、式(1)で規定される長さLによって長さが調節されているλ/4線と、接地された接続先および接地されていない接続先を切り替えるスイッチ部と、
を有し、
前記同調整合回路と、前記信号伝達線とは、互いに接続されており、
前記λ/4線は、一方の端部が、前記同調整合回路と前記信号伝達線との間に接続しており、他方の端部が、前記スイッチ部に接続され、
前記λ/4線の長さLは、前記スイッチ部の動作が保証される磁場強度の領域に設置される長さであり、
前記受信装置は、
前記信号を受信するとき、前記スイッチ部を接地するよう切り替え、
前記信号を受信しないとき、前記スイッチ部を接地しないよう切り替える
ことを特徴とする核磁気共鳴装置。
L=λ/4+(N・λ)/2(N=0,1,2,3,・・・)・・・(1) - 前記静磁場発生用磁石は、前記静磁場の方向が鉛直方向または水平方向となるよう設置されている
ことを特徴とする請求項8に記載の核磁気共鳴装置。 - 前記送信装置および前記受信装置は、前記静磁場に対し、水平方向または垂直方向に挿入されているとともに、前記静磁場発生用磁石内側の空間を、測定空間と、前記測定空間以外の空間とに区切るためのボアが、前記静磁場に対し、水平方向および垂直方向に設置されている
ことを特徴とする請求項8に記載の核磁気共鳴装置。
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