JP5434998B2 - 負極活物質、負極及び電池 - Google Patents

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Description

本発明はリチウムに対する電位が低い負極活物質に関する。
近年、地球環境保護の観点から、低公害車としての電気自動車やハイブリッド自動車等に適用するべく、高出力かつ高容量な電源が必要とされている。また、自動車等以外の分野においても、情報関連機器や通信機器等のモバイルツールの世界的な普及によって、当該モバイルツールを高性能化可能な電源が必要とされている。高性能電源として有望なものの一つに、エネルギー密度が高く、高電圧で作動させることが可能なリチウム電池がある。
リチウム電池の電圧は、用いる正極材料のリチウムに対する電位と、負極材料のリチウムに対する電位との差に相当する。すなわち、負極材料(特に負極活物質)の電位を低くすることで、電池から高電圧・高出力を得ることができ、エネルギー密度も向上する。しかしながら、負極活物質のリチウムに対する電位を低くし過ぎると、電池内での金属リチウムの析出が懸念される。例えば、リチウムに対する電位が0Vであるグラファイトは使用とともに金属リチウムが析出する。
金属リチウムの析出を抑える観点から、作動電圧を金属リチウムが析出しない電圧にまで上昇させること(すなわち、リチウムに対する電位が高い負極活物質を用いること)が考えられる。このようなものとして、負極活物質としてスピネル型チタン酸リチウム(LiTi12)、或いはその一部置換体を用いたものがあり(特許文献1〜3)、用途によっては既に実用化されている。
特開2009−199798号公報 特開2011−086464号公報 特開平10−251020号公報
上述したスピネル型チタン酸リチウムは、リチウムに対する電位が1.5Vであり、金属リチウムの析出は抑制されているものの、負極活物質としては電位が高すぎる。すなわち、スピネル型チタン酸リチウムを負極活物質として用いた電池は、高電圧・高出力を得るには適していないものであった。
スピネル型チタン酸リチウム以外の遷移金属酸化物の負極活物質候補としては、例えば、TiOやFeが挙げられるが、これらもリチウムに対する電位が1.8V、1.3V程度と高い値となる。すなわち、TiO或いはFeを負極活物質として用いた電池についても、高電圧・高出力を得るには適していないものであった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、リチウムに対する電位が低い負極活物質を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を進めたところ、以下の知見を得た。
(1)負極活物質は、活物質中の遷移金属−酸素間の結合がイオン性を示すほど、誘起効果によって酸化還元電位が高くなる傾向がある。すなわち、スピネル型チタン酸リチウムやTiOは、Ti−O間のイオン結合性が高く、Feは、Fe−O間のイオン結合性が高いと推察される。
(2)負極活物質中に、充放電反応に寄与する或いは相対的に寄与し易い遷移金属原子(A)以外に、充放電反応に寄与しない或いは相対的に寄与し難い陽イオン(B)を含ませると、負極活物質のリチウムに対する電位を低下させることができる。負極活物質において、陽イオン(B)と酸素原子との間でイオン結合が形成され、遷移金属原子(A)と酸素原子との間のイオン結合性を弱めることができ、結果として遷移金属原子(A)−酸素原子間の共有結合性が強まり、これにより、負極活物質の酸化還元電位を低下させることができたと考えられる。
(3)より具体的には、負極活物質として2種の陽イオンを含む擬ブルッカイト(pseudobrookite)構造を有する化合物を用いると、上記の原理から、リチウムに対する電位の低い負極活物質を得ることができる。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、
本発明の第1の態様は、擬ブルッカイト構造を有する化合物を含む負極活物質である。
ここで、「擬ブルッカイト構造」とは、空間群がBBMM、CCMM、CMCM、PNMA、PBCNに属する構造をいい、少なくとも2種の陽イオンを含んでなるものである。当該少なくとも2種の陽イオンのうち、少なくとも1種は相対的に充放電反応に寄与し易いもので、それ以外は相対的に充放電反応に寄与し難いものである。
本発明の第1の態様において、上記の化合物は組成式ABOで表される化合物であることが好ましい。すなわち、組成式ABOで表される化合物を含む負極活物質とすることが好ましい。「組成式ABOで表される化合物を含む」とは、A:B=2:1で混合・焼成して単相の化合物ABOを得て、これを含ませた形態の他、A:B=1:x(x=0.5〜1.5)で混合・焼成して、化合物ABOを含むとともに、AとBとからなるその他の複合酸化物、或いはAの酸化物やBの酸化物を含むような化合物(複合体)を得て、これを含ませた形態をも包含する概念である。負極活物質中に擬ブルッカイト構造を有する化合物が含まれているか否かは、例えばX線回折測定によって容易に確認することができる。
尚、ABOの具体例としては以下のようなものがある。すなわち、Aが2価の陽イオン(例えば、Ba)である場合、Bは6価の陽イオン(例えば、W)となる。Aが3価の陽イオン(例えば、Al、Cr、Fe、Sc、Ga、In又はBi)である場合は、Bは4価の陽イオン(例えば、Si、Ti、V又はGe)となる。Aが4価の陽イオン(例えば、Ti、V、Se、Zr又はTe)である場合は、Bは2価の陽イオン(例えば、Mg、Ba、Cr、Cu、Mn又はCo)となる。
本発明の第1の態様において、上記の化合物はFeTiOであることが好ましい。
或いは、本発明の第1の態様において、上記の化合物はScTiOであることが好ましい。
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る負極活物質を備える負極である。
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に係る負極を備える電池である。
本発明によれば、リチウムに対する電位が低い負極活物質を提供することができる。当該負極活物質を用いた負極は容量が大きく、さらには当該負極を用いた電池は、高出力・高電位で、エネルギー密度が高い。尚、本発明に係る負極活物質は、リチウムに対する電位がグラファイトよりも大きいため、例えばリチウム電池とした場合において、使用時に金属リチウムの析出が防止されている。
(A)は従来の遷移金属酸化物系負極活物質を説明するための図であり、(B)は本発明に係る負極活物質を説明するための図である。 (A)は実施例にて用いたScTiOのX線回折測定結果を示す図であり、(B)は実施例にて用いたFeTiOのX線回折測定結果を示す図である。 実施例にて用いたコイン型電池を説明するための概略図である。 (A)はScTiOの充放電試験結果を示す図であり、(B)はスピネル型チタン酸リチウム(LiTi12)の充放電試験結果を示す図である。 (A)はFeTiOの充放電試験結果を示す図であり、(B)はFeの充放電試験結果を示す図である。
1.負極活物質
一般的に、遷移金属酸化物を負極活物質として用いた場合、遷移金属−酸素間の結合がイオン性を示すほど、誘起効果によって酸化還元電位が高くなる傾向がある。すなわち、図1(A)に示すように、遷移金属Aと酸素とがイオン結合してなる負極活物質にあっては、酸化還元電位が高いものとなる。従来のスピネル型チタン酸リチウムやTiO或いはFeがこれに相当し、これらはTi−O間、Fe−O間のイオン結合性が高く、リチウムに対する電位がそれぞれ1.5V、1.8V、1.3Vと高い値となる。これに対し、本発明に係る負極活物質においては、図1(B)に示すように、酸化還元反応に寄与する遷移金属原子(A)以外の陽イオン(B)を加えることで、陽イオン(B)と酸素原子間でイオン結合を形成させ、遷移金属原子(A)と酸素原子とのイオン結合性を意図的に弱めている。これにより、遷移金属原子(A)と酸素原子との間の共有結合性が強まり、誘起効果が抑えられると考えられ、負極活物質の酸化還元電位を低下させることができる。本発明はこのような技術思想に基づいてなされたもので、負極活物質において擬ブルッカイト構造を有する化合物を含ませたことに特徴を有する。
「擬ブルッカイト構造」とは、空間群がBBMM、CCMM、CMCM、PNMA、PBCNに属する構造をいい、少なくとも2種の陽イオンを含んでなるものである。当該少なくとも2種の陽イオンのうち、少なくとも1種は相対的に充放電反応に寄与し易いもので、それ以外は相対的に充放電反応に寄与し難いものである。
本発明に係る負極活物質は、少なくとも一部に擬ブルッカイト構造を有するものであればよく、特に、組成式ABOで表される化合物を含むものであることが好ましい。「組成式ABOで表される化合物を含む」とは、A:B=2:1で混合・焼成して単相の化合物ABOを得て、これを含ませた形態の他、A:B=1:x(x=0.5〜1.5)で混合・焼成して、化合物ABOを含むとともに、AとBとからなるその他の複合酸化物、或いはAの酸化物やBの酸化物を含むような化合物(複合体)を得て、これを含ませた形態をも包含する概念である。負極活物質中に擬ブルッカイト構造を有する化合物が含まれているか否かは、例えばX線回折測定によって容易に確認することができる。
ここで、Aが2価の陽イオン(例えば、Ba)である場合、Bは6価の陽イオン(例えば、W)となる。Aが3価の陽イオン(例えば、Al、Cr、Fe、Sc、Ga、In又はBi)である場合は、Bは4価の陽イオン(例えば、Si、Ti、V又はGe)となる。Aが4価の陽イオン(例えば、Ti、V、Se、Zr又はTe)である場合は、Bは2価の陽イオン(例えば、Mg、Ba、Cr、Cu、Mn又はCo)となる。この中でも、FeTiO、ScTiO、TiBaO、BiGeO、BiVO、BaWO、SeCoO、SeCuO、InTiO、FeSiO、TiMgO、TiCoOが好ましく、FeTiO、ScTiOがより好ましい。特に、FeTiOは、酸化鉄と酸化チタンとから合成可能であるため、安価であり好ましい。
本発明に係る負極活物質の製造方法としては、例えば、少なくとも一部が、好ましくは全体が擬ブルッカイト構造となるように、所望の酸化物(例えば、FeとTiOや、ScとTiO等)を調整・混合し、空気雰囲気下で焼成することによって得ることができる。焼成温度、焼成時間については特に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。例えばFeTiOやScTiOを製造する場合は、酸化物原料を混合してプレス成形(例えば、プレス圧5kN以上で成形)してペレット化し、これを空気雰囲気下で焼成(例えば、1000℃以上)し、当該焼成温度にて所定時間(例えば、10時間)保持した後、自然放冷等によって冷却するとよい。得られた負極活物質は、ボールミル等によって粉砕し、微細化したのち用いるとよい。
本発明に係る負極活物質は、特にリチウム電池用負極活物質として用いることが好ましいが、ナトリウム電池、カリウム電池、マグネシウム電池、カルシウム電池等の各種電池用負極活物質として用いることも可能である。
本発明に係る負極活物質は、擬ブルッカイト構造を有する化合物を含んでなることによって、酸化還元反応に寄与しない、或いは相対的に寄与し難い陽イオンが、酸素とイオン結合を形成し、酸化還元反応に寄与する陽イオンの共有結合性を強めることができる。これにより活物質の酸化還元電位が低下し、リチウムに対する電位が低い負極活物質となる。また、後述の実施例にて示すように、本発明者が鋭意研究したところ、本発明に係る負極活物質は容量が大きいことも知見した。このような負極活物質を電池に用いることで、電池から高電圧・高出力を得ることができ、電池のトータルとしてのエネルギー密度を向上させることができる。
2.負極
本発明に係る負極活物質を備えた負極は、高容量であるとともに、リチウムに対する電位が低い。そのため、これを用いて電池を構成すれば、高電圧・高出力な電池とすることが可能である。当該負極は、特にリチウム電池用負極として用いることが好ましいが、ナトリウム電池、カリウム電池、マグネシウム電池、カルシウム電池等の各種電池用負極として用いることも可能である。
負極は本発明に係る負極活物質を備えるものであればその形態は特に限定されるものではない。例えば、負極活物質以外に任意に導電助剤や結着剤を含む負極材料を用いて負極層を形成し、当該負極層に負極集電体を任意に設けることより、負極を構成することができる。
導電助剤としては、従来から負極において用いられているものを、特に限定されることなく用いることができる。例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、炭素繊維、黒鉛等の炭素材料を好適に用いることができる。導電助剤は微細化されたものを用いることが好ましい。例えば、平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.1μm以上1μm以下のものを用いるとよい。これにより導電性をさらに向上させることができる。導電助剤の含有量は、電池とした場合において電池性能を阻害しない範囲であれば特に限定されるものではない。例えば、負極材料全体を100質量%とした場合において、1質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、2質量%以上40質量%以下とすることがより好ましい。
結着剤としては、従来から負極において用いられているものを、特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有樹脂、或いは、アクリル樹脂等を好適に用いることができる。結着剤の含有量は、電池とした場合において電池性能を阻害しない範囲であれば特に限定されるものではない。例えば、負極材料全体を100質量%とした場合において、10質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。
負極集電体についても公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、ステンレス鋼、銅、ニッケル、或いはカーボン等を挙げることができる。負極集電体の形状は特に限定されるものではなく、板状、箔状、メッシュ状等を例示できる。
負極の製造方法についても、本発明に係る負極活物質を用いる以外は特に限定されるものではない。例えば、上記負極材料を加圧成形することで負極層を形成し、任意に負極集電体の表面に配置する形態や、負極材料を負極集電体とともに加圧成形する形態、或いは、上記負極材料を溶媒に分散させて負極形成用塗布液を作製し、当該塗布液を負極集電体の表面に塗工し乾燥させる形態等、様々な手法により製造することができる。負極の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。
3.電池
本発明に係る電池は、正極、電解質層、及び、上記本発明に係る負極を備えている。電池構成は、正極と負極との間に電解質層を介在させ、正極−負極間のイオンの伝導を可能としたものであれば、特に限定されるものではない。
3.1.負極
負極は、上記本発明に係る負極を用いればよい。詳細については上述した通りであるため、説明は省略する。
3.2.正極
正極は、正極活物質等を含む正極層を備え、正極の集電のための正極集電体を任意に備えている。正極層は少なくとも正極活物質を含む層であり、必要に応じて、導電助剤及び結着剤の少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。正極活物質としては、例えば、リチウム電池とする場合は、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO等の層状正極活物質、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn等のスピネル型正極活物質、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等のオリビン型正極活物質等を用いることができる。正極層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば40質量%〜99質量%の範囲内であることが好ましい。
正極層は、さらに導電助剤及び結着剤の少なくとも一方を含んでいてもよい。導電助剤及び結着剤については、負極層に用いられるものとして例示したものを適宜選択して用いることができる。
正極には任意に正極集電体が備えられる。正極集電体としては公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン及びカーボン等を挙げることができる。正極集電体の形状は特に限定されるものではなく、板状、箔状、メッシュ状等を例示できる。
正極は、上記負極と同様の手法で製造することができる。例えば、上記正極活物質等を加圧成形することで正極層を形成し、任意に正極集電体の表面に配置する形態や、正極活物質等を正極集電体とともに加圧成形する形態、或いは、上記正極活物質等を溶媒に分散させて正極形成用塗布液を作製し、当該塗布液を正極集電体の表面に塗工し乾燥させる形態等、様々な手法により製造することができる。正極の厚みは、例えば、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。
3.3.電解質層
電解質層は、上記正極層と負極層との間に配置される層であり、少なくとも電解質を含む層である。電解質層に含まれる電解質を介して、正極活物質と負極活物質との間の金属イオン伝導を行う。電解質層の形態は、特に限定されるものではないが、液体電解質層とすることが好ましい。ただし、固体電解質層とすることも可能であり、さらには、液体電解質層と固体電解質層との組み合わせとしてもよい。
液体電解質層は、通常、電解液を用いてなる層である。電解液は、通常、金属塩と水或いは非水溶媒とを含有する。金属塩の種類は、電池の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム電池に用いられる金属塩としては、LiPF、LiBF、LiClOおよびLiAsF等の無機リチウム塩;およびLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機リチウム塩等を挙げることができる。非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびこれらの混合物等を挙げることができる。非水電解液における金属塩の濃度は、例えば0.5mol/L〜3mol/Lの範囲内が好ましい。なお、本発明においては、非水電解液として、例えばイオン性液体等の低揮発性液体を用いても良い。また、正極層および負極層の間には、セパレータが配置されていても良い。電解質層の厚さは、電解質の種類および電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば0.1μm〜1000μm、中でも0.1μm〜300μmであることが好ましい。
電池は、本発明に係る負極活物質を含む負極を備えるほかは、従来と同様の形態とすることができる。例えば、負極と正極とを個別に製造し、負極層と正極層との間に電解質層が介在するようにして、電池ケース内に収容することで電池を製造することができる。或いは、負極、電解質層及び正極がこの順で構成されるように、材料を積層・プレス成形し、電池ケース内に収容する形態であってもよい。或いは、材料を積層の後、積層体を捲回してなる形態であってもよい。尚、電池ケースの材質、形状については、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明に係る電池としては、リチウム電池の他、ナトリウム電池、カリウム電池、マグネシウム電池、カルシウム電池等としてもよい。本発明に係る電池は、例えば車載用電池として好適に用いることができる。電池の形状としては、特に限定されないが、コイン型、ラミネート型、円筒型、角型等が例示できる。
このように、本発明に係る電池は、本発明に係る負極活物質を含む負極が備えられているため、負極の容量が大きいとともに、高電圧・高出力でエネルギー密度が高い電池とすることができる。また、負極活物質のリチウムに対する電位が、グラファイトほど低過ぎるものではないため、使用時において金属リチウムの析出も防止することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明に係る負極活物質について詳述するが、本発明は以下の具体的な形態に限定されるものではない。
1.活物質の作製
1.1.実施例1
活物質としてScTiOを作製した。具体的には、酸化スカンジウム(Sc、アルドリッチ社製)と酸化チタン(TiO−ルチル型、アルドリッチ社製)とを、ScTiOの化学両論比となるように秤量・混合し、混合物を30MPaでプレス成形してペレットとし、当該ペレットを空気雰囲気下で焼成した。焼成条件は、1100℃まで3時間で昇温し、当該温度で10時間保持した後、自然放冷するものとした。
1.2.実施例2
活物質としてFeTiOを作製した。具体的には、酸化鉄(Fe、和光純薬工業株式会社製)と酸化チタン(TiO−ルチル型、アルドリッチ社製)とを、FeTiOの化学両論比となるように秤量・混合し、混合物を30MPaでプレス成形してペレットとし、当該ペレットを空気雰囲気下で焼成した。焼成条件は、1100℃まで3時間で昇温し、当該温度で10時間保持した後、自然放冷するものとした。
2.作製した活物質の評価
2.1.X線回折測定
実施例1に係る活物質、実施例2に係る活物質それぞれについて、X線回折装置(リガク社製)を用いて単結晶X線回折パターンを得た。結果を図2に示す。図2(A)が実施例1に係る活物質の単結晶X線回折パターンであり、図2(B)が実施例2に係る活物質の単結晶X線回折パターンである。
図2(A)に示すとおり、実施例1に係る活物質は、17.5°、24.8°、31.5°、35.4°、36.2°、39.7°、44.5°、47.2°、54.2°及び57.9°付近に回折ピークを有するものであり、X線回折パターンから擬ブルッカイト構造のScTiOであることが確認できた。また、図2(B)に示す通り、実施例2に係る活物質は、18.1°、25.5°、32.5°、36.7°、37.4°、41.1°、46.0°、48.8°、56.1°及び60.2°付近に回折ピークを有するものであり、X線回折パターンから擬ブルッカイト構造のFeTiOであることが確認できた。
2.2.充放電試験
2.2.1.評価用コインセルの作製
図3に示すようなコインセル(SUS316L製2032型コインセル、京浜理化工業社製)において、実施例に係る活物質の充放電試験を行い、活物質のリチウムに対する電位等を測定した。コインセルの作製条件としては以下の通りとした。すなわち、正極1として、実施例1又は実施例2に係る活物質:導電助剤(HS−100、電気化学工業社製):結着剤(PTFE)を重量比で70:25:5となるように混合したものを用いた。負極2として金属リチウム箔(本城金属社製)を用いた。電解質層3として、セパレータ(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層)を設置し、ここに電解質としてDST3(EC:DMC:EMC=3:4:3、三菱化学社製)を含ませた。これらを積層しスペーサー4を介してスプリング5で押付けた状態で正極缶6及び負極缶7内に設置し、ガスケット8を用いて密封するものとした。
2.2.2.充放電試験の条件及び試験結果
上記のコインセルを用いて、電流:0.2mA、終止電圧:1〜3V、終止条件:cc、放電スタートの条件で充放電試験を行った。結果を図4、5に示す。
図4(A)は、ScTiOの充放電試験結果を示す図である。図4(A)から明らかなように、ScTiOは、約1Vで充放電反応を示した。一方、図4(B)にスピネル型チタン酸リチウム(LiTi12)の充放電試験結果を示す。図4(B)から明らかなように、スピネル型チタン酸リチウムは、約1.5Vで充放電反応を示した。以上の結果から、ScTiOは、スピネル型チタン酸リチウムよりもリチウムに対する電位が低く、低電位で充放電反応が進行することを確認できた。
図5(A)は、FeTiOの充放電試験結果を示す図である。図5(A)から明らかなように、FeTiOは、0.8V以下で放電反応を示し、0〜1.5Vで充電反応を示した。一方、図5(B)にFeの充放電試験結果を示す。図5(B)から明らかなように、Feは、1.0V付近で放電反応を示し、1.5〜1.7V付近で充電反応を示す。以上の結果から、FeTiOは、Feよりもリチウムに対する電位が低く、低電位で充放電反応が進行することを確認できた。
すなわち、ScTiO、FeTiOともに、負極活物質として電池を作動させた場合、リチウムの析出が懸念されない程度にまで、作動電圧を上昇させることができる一方で、スピネル型チタン酸リチウムやTiO、或いはFeよりも高電圧・高出力な電池とすることができることが分かる。また、充放電試験結果から明らかなように、ScTiO、FeTiOともに電池として十分な容量を有するものであった。
実施例に係る活物質がいずれも低電位にて充放電反応が進行したことは、いずれも、活物質において、相対的に酸化還元反応に寄与し難い陽イオン(ScTiOの場合はSc、FeTiOの場合はTi)が酸素とイオン結合を形成し、酸化還元反応に寄与する陽イオン(ScTiOの場合はTi、FeTiOの場合はFe)と酸素との共有結合性を強めることができたためと考えられる。上記実施例により、擬ブルッカイト構造を有する化合物の負極活物質としての優位性が示された。
本発明に係る負極活物質は、種々の電池用負極活物質として利用できる。本発明に係る負極活物質を負極に含ませ、電池を構成することで、高出力・高電位でエネルギー密度の高い電池とすることができ、携帯機器、電気自動車、ハイブリッド車等の電源として好適に用いることができる。
1 正極
2 負極
3 電解質層
4 スペーサー
5 スプリング
6 正極缶
7 負極缶
8 ガスケット
10 評価用コインセル

Claims (6)

  1. 擬ブルッカイト構造を有する化合物を含む負極活物質。
  2. 前記化合物が組成式ABOで表される化合物である、請求項1に記載の負極活物質。
    (ここで、Aが2価の陽イオン(Ba)である場合、Bは6価の陽イオン(W)であり、Aが3価の陽イオン(Al、Cr、Fe、Sc、Ga、In又はBi)である場合は、Bは4価の陽イオン(Si、Ti、V又はGe)であり、Aが4価の陽イオン(Ti、V、Se、Zr又はTe)である場合は、Bは2価の陽イオン(Mg、Ba、Cr、Cu、Mn又はCo)である。)
  3. 前記化合物がFeTiOである、請求項1に記載の負極活物質。
  4. 前記化合物がScTiOである、請求項1に記載の負極活物質。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の負極活物質を備える負極。
  6. 請求項5に記載の負極を備える電池。
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